説明

微粒子ワイヤーの製造方法

【課題】所望の組成を有する金属含有化合物からなるマイクロワイヤー、ナノワイヤーを製造するための方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)〜(3)を含む、微粒子が連結した微粒子ワイヤーの製造方法:
(1)有機金属化合物の気体と、必要に応じて光励起可能な有機化合物及び/又は反応性有機化合物の気体を用意する工程、
(2)工程(1)において用意した気体を、反応容器に導入する工程、
(3)工程(2)において反応容器に導入された気体に、前記有機金属化合物及び前記光励起可能な有機化合物の少なくとも1つが吸収する波長の光を照射する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子が連結することによって形成された線状構造体である微粒子ワイヤーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、光化学反応を利用した気相における微粒子ワイヤーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの配線材料等の部品や触媒材料等として、マイクロメートルからナノメートルの太さを有する線条状構造体であるマイクロワイヤー、ナノワイヤーが注目されている。
このようなワイヤーを製造する方法としては、いくつかの方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−161102号公報
【特許文献2】特開2007−55836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現状では、実際に製造できるマイクロワイヤー、ナノワイヤーの種類は限られている。そこで、本発明は、所望の組成を有する金属含有化合物からなるマイクロワイヤー、ナノワイヤーを製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、既に、有機金属化合物の気体に光照射して光化学反応を起こさせることにより、有機金属化合物が複合した球形の微粒子を生成することができることを見出しているが、この微粒子生成についてさらに鋭意検討した結果、微粒子が生成する気相の対流を制御することにより、生成した微粒子同士を数珠繋ぎに連結させて線状構造体(微粒子ワイヤー)を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
以下の工程(1)〜(3)を含む、微粒子が連結した微粒子ワイヤーの製造方法:
(1)有機金属化合物の気体と、必要に応じて光励起可能な有機化合物及び/又は反応性有機化合物の気体を用意する工程、
(2)工程(1)において用意した気体を、反応容器に導入する工程、
(3)工程(2)において反応容器に導入された気体に、前記有機金属化合物及び前記光励起可能な有機化合物の少なくとも1つが吸収する波長の光を照射する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原料となる有機金属化合物の種類を適宜選択することにより、所望の組成を有する化合物からなる金属含有微粒子ワイヤーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明について具体的に説明する。
まず、工程(1)について説明する。
工程(1)においては、微粒子を製造するための原料の気体を用意する。本発明においては、微粒子を製造するための原料として、有機金属化合物を用いる。有機金属化合物の種類を選択することにより、製造される微粒子の組成を所望のものとすることができる。有機金属化合物は、目的とする微粒子の組成に応じて、1種類のみ用いてもよいし、複数種類用いることもできる。
【0009】
本発明において用いる有機金属化合物は、反応温度において気体にすることができるものであれば、いかなるものであってもよく、常温において、固体、液体、気体いずれでもよい。
【0010】
本発明においては、有機金属化合物として、比較的低い温度において蒸発する遷移金属カルボニル化合物を好ましく用いることができる。遷移金属カルボニル化合物の具体例としては、例えば、Co(CO)3NO、Co2(CO)8、Fe(CO)5、Ni(CO)4等が挙げられるが、これに限定されない。
【0011】
本発明においては、生成物の形状の制御、微粒子ワイヤーの強度の向上等の目的で、光励起可能な有機化合物を気相成分に加えることが好ましい。このような光励起可能な有機化合物としては、工程(3)の光照射で用いる波長の光によって一光子吸収による励起が可能で、かつ、反応温度において気体にすることができ、かつ、化学反応性を有するものであれば、いかなる有機化合物を用いてもよく、常温において、固体、液体、気体いずれのものでもよい。
光励起可能な有機化合物を気相成分に加えることにより、球形微粒子が生成されやすくなり、その結果、太さの均一な微粒子ワイヤーを形成することが可能となる。また、光励起可能な有機化合物を気相成分に加えると、ワイヤー中の隣り合う微粒子同士がその接点において化学結合し、微粒子ワイヤーの強度を高めることができる。微粒子間の結合をより強固なものとするために、光励起可能な有機化合物の化学反応性は重合反応性であることが好ましい。
【0012】
光励起可能な有機化合物としては、例えば、二硫化炭素(CS2)を好ましく用いることができる。また、光励起可能な有機化合物として、アクロレイン(CH2=CH−CHO)、アクリル酸メチル(CH2=CH−CO−O−CH3)などのアクリル酸エステル類も用いることができる。
光励起可能な有機化合物は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類用いることもできる。
【0013】
また、本発明においては、光化学反応速度や、生成される微粒子の形状の制御等の目的で、反応性有機化合物を気相成分に加えてもよい。ここで、反応性有機化合物とは、有機金属化合物以外の化学反応性を有する有機化合物であって、工程(3)の光照射で用いる波長の光によって一光子吸収による励起ができないものをいい、このような化合物として、例えば、アリルトリメチルシラン(ATMeSi)やトリメチルシリルアジドが挙げられる。
本発明者らの研究によれば、有機金属化合物の光化学反応に際して反応性有機化合物の気体を共存させると、反応性有機化合物自体は光化学反応にわずかしか参加しないにもかかわらず、光化学反応速度を高めることがあることが判明した。このような傾向は、特に、有機金属化合物としてCo(CO)3NO、反応性有機化合物としてATMeSiを用いた場合に顕著に観察される。
反応性有機化合物は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類用いることもできる。
【0014】
有機金属化合物、光励起可能な有機化合物、反応性有機化合物が固体又は液体である場合、これらを気化して気体とする方法に限定はなく、例えば、加熱や減圧によって昇華又は蒸発させることができる。これらの気相成分が液体である場合には、気化に先立ち、真空蒸留により精製を行い、沸点を低下させておくことが好ましい。
【0015】
次に、工程(2)について説明する。
工程(2)においては、工程(1)において用意した気体を、ガラスセル等の反応容器に導入する。このとき、酸素による反応阻害を避けるため、反応容器から空気を除去しておくことが望ましい。
反応容器の大きさ、形状に限定はなく、生産量等に応じて適宜決定すればよい。反応容器が大きいほど、また、反応容器の高さが高いほど、形成される微粒子ワイヤーの長さは長くなる傾向にある。
【0016】
反応容器に導入する有機金属化合物の量(分圧)により、工程(3)における光化学反応の速度、生成される微粒子(一次粒子)の平均粒径、微粒子ワイヤーの長さ(微粒子の連結個数)等を制御することができる。
有機金属化合物の分圧に限定はないが、高すぎると光化学反応速度が大きくなり過ぎて微粒子の代わりに小さな結晶状生成物が生成してしまうことがある。一方、分圧が低すぎると、微粒子生成に時間がかかる。したがって、有機金属化合物の分圧は、反応容器中に存在する有機金属化合物の総分圧として、0.1〜30Torrであることが好ましく、光励起可能な有機化合物やATMeSiを共存させる場合には、0.1〜10Torrであることが好ましい。
【0017】
気相成分が複数種類からなる場合には、各気体を反応容器に順次封入することによって、混合気体を調製する。混合気体中の各気体の分圧比を調整することにより、工程(3)における光化学反応の速度、生成される微粒子の組成、生成される微粒子(一次粒子)の平均粒径、微粒子ワイヤーの長さ等を制御することができる。
【0018】
光励起可能な有機化合物を気相成分として加える場合、その分圧に限定はないが、高すぎる場合には光励起可能な有機化合物同士の光化学反応速度が大きくなり過ぎて微粒子中の有機金属化合物の含量が少なくなったり、また、微粒子の代わりに膜が生成してしまうことがある。したがって、その分圧の目安としては有機金属化合物の(総)分圧の0.1倍〜10倍程度である。
【0019】
また、反応性有機化合物を気相成分として加える場合、その分圧に限定はないが、高すぎる場合には化学反応速度が大きくなり過ぎて微粒子の代わりに膜が生成してしまう場合がある。したがって、反応性有機化合物の分圧は、有機金属化合物の(総)分圧の1倍〜10倍程度であることが好ましい。
【0020】
次に、工程(3)について説明する。
工程(3)においては、工程(2)において反応容器に導入された気体に、有機金属化合物及び光励起可能な有機化合物の少なくとも1つが吸収する波長の光を照射することにより、有機金属化合物及び/又は有機化合物を励起し、有機金属化合物の光化学反応を起こさせる。
【0021】
このような光化学反応により、有機金属化合物と、場合により、その他の気相成分とが反応し、これらの化合物を構成する元素が複合した微粒子が生成する。
生成した微粒子は反応容器の底に沈降するまでの間、気相中を移動し、その間に気体分子と衝突して成長し、また、微粒子同士が衝突して合一し、より大きな球形の微粒子となる。
最終的に生成する微粒子の一次粒子の平均粒径は、使用する有機金属化合物、有機化合物等の原料の種類、光照射条件等に依存するが、数nm〜1μm程度である。
【0022】
照射光の波長は、混合気体中に存する有機金属化合物、光励起可能な有機化合物の少なくとも1種類の吸収帯に属するものとする。照射光の波長は、使用する有機金属化合物や光励起可能な有機化合物の種類に応じて適宜決定するが、有機金属化合物として遷移金属カルボニル化合物を用いる場合、250〜400nm程度の紫外域であることが好ましい。照射光の波長を調整することにより、光化学反応の速度、生成される微粒子の組成、生成される微粒子(一次粒子)の平均粒径等を制御することができる。
【0023】
照射に使用する光源に限定はなく、例えば、高圧水銀灯をフィルターと組み合わせて用いたり、パルスレーザーであるYAGレーザーの第3高調波(355nm)と第4高調波(266nm)、N2レーザー(337nm)等を用いることができる。
【0024】
照射光の強度に特に限定はないが、光化学反応の速度は、照射光の強度に大きく依存し、光化学反応速度が大きすぎると微粒子の代わりに無定形沈積物や膜が生成してしまう場合がある。したがって、照射光の強度は大きすぎないことが好ましく、光源として高圧水銀灯のような連続波光源を用いる場合には0.1〜100mJ/cm2・s程度とすることが好ましく、より好ましくは1〜10mJ/cm2・s程度である。また、光源としてパルスレーザー光源(周波数1〜100Hz程度)を用いる場合には、パルスレーザー光を凹レンズ等を利用して拡散させるなどして照射光の強度を調整し、0.1〜100mJ/pulse・cm2程度とすることが好ましく、より好ましくは1〜10mJ/pulse・cm2程度である。照射光の強度を調整することにより、光化学反応の速度、生成される微粒子(一次粒子)の平均粒径、粒度分布等を制御することができる。
【0025】
なお、光照射は、工程(2)において反応容器に気体を導入した後、気体が反応容器内に均一に拡散するのに十分な時間経過した後に行うことが好ましい。光照射を行う際に、反応容器内において気体の濃度に偏りがあると、後述する対流制御が困難になったり、微粒子の組成や粒径が不均一になり、微粒子ワイヤーが形成でき難くなり、また、太さが不均一な微粒子ワイヤーが形成される場合がある。
【0026】
本発明においては、工程(3)において反応気相中における対流の流れや速度を制御し、これにより生成した微粒子同士を線状に数珠繋ぎに連結させる。対流を制御することにより、微粒子同士が線状に連結するのは、生成した微粒子が反応容器の内壁や反応容器内に設置された基板等に衝突する際、制御された対流により一定方向から衝突するため、基板上で粒子同士が線状に逐次、衝突して結合していくためと推測される。
このように、微粒子同士の線状の連結は、主に微粒子が容器内壁や基板等に衝突する際に起きると推測されるので、微粒子のワイヤー形成を促進するために、反応容器内に、微粒子が衝突するための衝突場所を確保することが重要である。反応容器の内壁はこのような衝突場所となり得るが、反応気相中の対流は反応容器内壁に沿って流れることが多いため、反応容器がシリンダー型のような形状であると微粒子が内壁に衝突する頻度は低くなる。そこで、反応容器の形状を、内壁の曲率が変化する形状、例えば、内壁の曲率が負又はゼロの部分と正の部分の両方を有する形状や、好ましくは、蒲鉾型等の底面部で曲率が急激に変化する形状にしたり、反応容器内に基板等を設置するなどして衝突場所を増やすことが好ましい。
【0027】
対流の制御方法に限定はなく、反応容器に送風手段や加熱手段を設置して強制的に所望の条件の対流を生じさせてもよいが、本発明者らは、光照射の条件を制御することにより、特別な装置を用いることなく簡単に対流を制御することができることを見出した。
具体的には、光照射を断続的に行うか、照射時間を短くして、すなわち、照射時間を予め決定しておいた所定値以下にして、連続照射を行うことにより、生成した微粒子が配列するような対流を起こすことができることが分かった。
【0028】
光照射条件の制御により対流を制御できる理由は明らかではないが、強制対流のない密閉された反応容器中においては、光化学反応の進行による気相成分からの(緩和)熱放出による温度変化と気相成分の濃度変化により対流が生じると考えられるので、光照射条件を調整して光化学反応及びこれにより生じる温度変化と気相成分の濃度変化を制御することにより、対流の流れや速度を制御できると考えられる。
【0029】
短時間の連続照射により対流を制御する場合、予め決定しておいた所定値以下の時間、連続照射を行う。本発明においては、予め、一定条件の下で連続照射時間のみを徐々に増加させて微粒子の形成を複数回行い、ワイヤーが形成されなくなる照射時間の臨界値を求め、この臨界値を予め決定しておいた所定値とする。
照射時間の臨界値(予め決定しておいた所定値)は、光励起可能な有機金属化合物や有機化合物の種類、組合せ、分圧、反応温度、照射光の強度等によって異なるが、例えば、有機金属化合物として遷移金属カルボニル化合物を用いた場合、概ね、1分〜数十分程度である。
【0030】
断続照射により対流を制御する場合、照射条件は、光励起可能な有機金属化合物や有機化合物の種類、組合せ、分圧、反応温度、照射光の強度等に応じて適切な条件を適宜設定すればよい。例えば、数十秒〜10分の照射間隔を挟んで、数秒〜10分間の照射を複数回、周期的又は非周期的に行うことができる。
断続照射により対流を制御すると、短時間の連続照射により対流を制御した場合と比較して、形成される微粒子ワイヤーの長さが長くなる傾向にある。
【0031】
図1に、本発明の微粒子ワイヤーの製造方法に用いることができる反応装置の一例の概略図を示す。
図1においては、反応容器1として、ガラスセルを用いている。反応容器1中には、基板2を設置し、この基板上で微粒子ワイヤーを製造し、回収を行う。基板に沈積した微粒子ワイヤーを構成する各微粒子の表面は反応性が高い状態にあるので、基板2の材料としては、例えば、銅やアルミニウム、ガラス等、生成した微粒子に対して反応性の低い材料を選択する必要がある。
図1においては、高圧水銀灯3を、ガラスフィルター4を通して反応容器1に照射することにより313nmの紫外光を照射し、反応容器中で光化学反応を起こさせる。
【0032】
本発明により製造された微粒子ワイヤーは、複合有機金属化合物からなるが、例えば、焼成を施すこと等により有機物を除去して、金属、合金からなる導電性ワイヤーに転換することもできる。
また、微粒子ワイヤーに、250〜400nmの光を照射して後露光を行うことにより、微粒子からカルボニルを離脱させ、これにより有機物を除去することもできる。
【0033】
微粒子ワイヤーの長さは、用途に応じて適宜決定すればよい。本発明においては、用いる有機金属化合物、光励起可能な有機化合物、反応性有機化合物の種類、分圧、照射条件、反応容器の形状等を調整することにより、数百μm以上の長さを有する微粒子ワイヤーを製造することも可能である。
微粒子ワイヤー中の微粒子の連結個数もまた、用途に応じて適宜決定すればよいが、ワイヤーとして利用する以上、微粒子が10個以上連結していることが好ましく、より好ましくは20個以上、さらに好ましくは50個以上連結していることである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
Co(CO)3NO、Fe(CO)5、ATMeSiの液体を用意し、それぞれ真空ライン中で凍結、脱気、解凍した後、真空蒸留して精製した。次いで、これらの試料をそれぞれ気化させ、密閉された十字型ガラスセル(長軸 内径35mm、長さ160mm、短軸 内径20mm、長さ80mm)中に試料圧を容量真空計(Edward Barocel Type600)を用いて測定しながら順次封入し、Co(CO)3NO、Fe(CO)5、ATMeSiの分圧がそれぞれ3.5Torr、1.4Torr、8.0Torrである混合気体試料を調製した。
ガラスセルを15分間静置して混合気体を均一に反応容器中に拡散させた後、混合気体に、高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製、UM−452、450W)とガラスフィルター(UV29とUV−D33S)を用いて313nmの光を、照射時間3分で連続照射したところ、光照射により生成した微粒子が連結した長さ数十μmのワイヤー状の固体生成物が得られた。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図2に示す。
また、得られた固体生成物の組成をX線マイクロアナライザー付き走査電子顕微鏡(EDX−SEM)で解析した結果、その化学組成は、Fe、Co、Siが、それぞれ、7.7原子%、13.6原子%、1.1原子%であり、残部は炭素及び酸素であった。
【0035】
[実施例2]
Co(CO)3NO、Fe(CO)5、ATMeSiの分圧をそれぞれ2.6Torr、0.5Torr、3.9Torrとした以外は実施例1と同様にして、長さ数十μmのワイヤー状の固体生成物を得た。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図3に示す。
また、得られた固体生成物の組成をX線マイクロアナライザー付き走査電子顕微鏡(EDX−SEM)で解析した結果、その化学組成は、Fe、Co、Siが、それぞれ、7.6原子%、12.9原子%、0.4原子%であり、残部は炭素及び酸素であった。
【0036】
[実施例3]
Fe(CO)5、CS2、ATMeSiの液体を用意し、実施例1と同様にして、精製、気化し、十字型ガラスセル(長軸 内径35mm、長さ155mm、短軸 内径20mm、長さ80mm)中にFe(CO)5、CS2、ATMeSiの分圧がそれぞれ1.4Torr、3.3Torr、16.0Torrとなるように順次封入し、混合気体試料を調製した。
このようにして調製した混合気体に、実施例1と同様にして313nmの光を、照射時間12分で連続照射したところ、、光照射により生成した直径0.4μmの微粒子が連結した平均長さが17μmのワイヤー状の固体生成物を得た。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図4に示す。
【0037】
[実施例4]
Fe(CO)5、CS2、ATMeSiの分圧を1.7Torr、9.5Torr、16.0Torrにした以外は実施例3と同様にして、直径0.4μmの微粒子が連結した平均長さが850μmのワイヤー状の固体生成物を得た。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図5に示す。
また、得られた固体生成物の組成をX線マイクロアナライザー付き走査電子顕微鏡(EDX−SEM)で解析した結果、その化学組成は、Fe、S、Si、C、Oが、それぞれ、10.0原子%、4.0原子%、0.6原子%、51.9原子%、33.6原子%であった。
【0038】
[実施例5]
Fe(CO)5、CS2、ATMeSiの液体を用意し、実施例1と同様にして、精製、気化し、密閉された十字型ガラスセル(長軸 内径35mm、長さ155mm、短軸 内径20mm、長さ80mm)中に順次封入し、Fe(CO)5、CS2、ATMeSiの分圧がそれぞれ1.7Torr、9.5Torr、16.0Torrである混合気体試料を調製した。
このようにして調製した混合気体に、実施例1と同様にして313nmの光を、照射間隔7分として、照射時間1分を10回、2分を5回、5分を2回の計30分、この順で断続照射したところ、光照射により生成した微粒子が連結した平均長さが80μmのワイヤー状の固体生成物が得られた。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図6に示す。
【0039】
[実施例6]
Co(CO)3NO、ATMeSiの液体を用意し、実施例1と同様にして、精製、気化し、十字型ガラスセル(長軸 内径35mm、長さ160mm、短軸 内径20mm、長さ80mm)中に順次封入し、Co(CO)3NO、ATMeSiの分圧がそれぞれ1.5Torr、1.4Torrである混合気体試料を調製した。
このようにして調製した混合気体に、実施例1と同様にして313nmの光を、照射間隔10分として、照射時間10秒、30秒、80秒、2分、6分、10分の計20分、この順で断続照射したところ、光照射により生成した微粒子が連結した長さが250μm、直径0.2μmのワイヤー状の固体生成物が得られた。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図7に示す。
【0040】
[実施例7]
ATMeSiの分圧を9.8Torrとした以外は実施例6と同様にして混合気体試料を調製し、これに、313nmの光を、照射間隔10分として、照射時間10秒を2回、20秒、30秒、50秒、1分を2回、2分、3分、4分、6分、8分の計27分、この順で断続照射したところ、平均長さが25μm、平均直径0.2μmのワイヤー状の固体生成物を得た。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図8に示す。
【0041】
[実施例8]
Fe(CO)5の液体を用意し、実施例1と同様にして、精製、気化し、密閉された十字型ガラスセル(長軸 内径35mm、長さ155mm、短軸 内径20mm、長さ80mm)中に0.2Torr封入した。このようにして調製した純気体に、実施例1と同様にして313nmの光を、照射間隔7分として、照射時間1分を5回、2分、3分、5分を2回、10分の計30分、この順で断続照射したところ、光照射により生成した微粒子が連結した平均長さが50μmのワイヤー状の固体生成物が得られた。
得られたワイヤー状固体生成物のSEM写真を図9に示す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により製造される微粒子ワイヤーは、各種電子デバイスの部品、例えば、配線等、に用いる導電性ナノワイヤー(マイクロワイヤー)を製造するための材料や、触媒材料、光通信で利用できる発光性ナノワイヤーを製造するための材料等として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の製造方法に使用する反応装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例1で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図3】実施例2で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図4】実施例3で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図5】実施例4で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図6】実施例5で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図7】実施例6で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図8】実施例7で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。
【図9】実施例8で得られた微粒子ワイヤーのSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜(3)を含む、微粒子が連結した微粒子ワイヤーの製造方法:
(1)有機金属化合物の気体と、必要に応じて光励起可能な有機化合物及び/又は反応性有機化合物の気体を用意する工程、
(2)工程(1)において用意した気体を、反応容器に導入する工程、
(3)工程(2)において反応容器に導入された気体に、前記有機金属化合物及び前記光励起可能な有機化合物の少なくとも1つが吸収する波長の光を照射する工程。
【請求項2】
前記有機金属化合物が、Co(CO)3NO及び/又はFe(CO)5である、請求項1に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。
【請求項3】
前記光励起可能な有機化合物が、二硫化炭素である、請求項1又は2に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記反応性有機化合物が、アリルトリメチルシランである、請求項1〜3いずれか1項に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。
【請求項5】
工程(3)において気体に照射する光の波長が、250〜400nmである、請求項1〜4いずれか1項に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。
【請求項6】
工程(3)における光照射が、予め決定しておいた所定の時間以下の連続照射である、請求項1〜5いずれか1項に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。
【請求項7】
工程(3)における光照射が、断続照射である、請求項1〜5いずれか1項に記載の微粒子ワイヤーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−51693(P2009−51693A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219987(P2007−219987)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第87春季年会(2007)講演予稿集」に発表、平成19年5月 ナノ学会発行の「ナノ学会第五回講演予稿集」に発表、平成19年6月26日 フォトポリマー懇話会発行の「Journal of Photopolymer Science and Technology,Vol.20,No.1(2007)」に発表、平成19年6月28日 フォトポリマー懇話会、千葉大学主催の「第24回 フォトポリマーコンファレンス」においてプレゼンテーションデータをもって発表
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】