説明

微粒子結着材

【課題】表面形態保持性に優れた微粒子結着膜が形成可能な微粒子結着材を提供する。
【解決手段】本発明の微粒子結着材は、無機質微粒子の結着膜を形成する微粒子結着材であって、無機質微粒子(a)、カルボキシル基含有化合物(b)、親水性基を有するシラン化合物(c)、疎水性基を有するシラン化合物(d)、及び水(e)を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微粒子結着材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質微粒子を結着させた被膜は、制振性、防音性、通気性、強度、光反射性等の諸性能のいずれかが要求される部位に使用されている。
例えば、特開2005−281368号公報(特許文献1)には、結着材としてアルコキシドを用いて粉体を結着する方法が記載されている。当該公報の方法によって得られる被膜表面には、粉体の粒径に対応した微細な凹凸が形成される。このよう微細な凹凸は、光反射性、とりわけ光拡散性等に寄与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−281368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報の方法で得られた微粒子結着膜では、圧力、摩擦、接触、飛来物等の外的因子によって、その表面における微細な凹凸形態が損われるおそれがある。このように表面形態が損われると、その表面形態に基づく特性も損われてしまう可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、表面形態保持性に優れた微粒子結着膜が形成可能な微粒子結着材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、無機質微粒子に加え、カルボキシル基含有化合物、親水性基を有するシラン化合物、疎水性基を有するシラン化合物、及び水を含む微粒子結着材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.無機質微粒子の結着膜を形成する微粒子結着材であって、
無機質微粒子(a)、
カルボキシル基含有化合物(b)、
親水性基を有するシラン化合物(c)、
疎水性基を有するシラン化合物(d)、及び
水(e)を含むことを特徴とする微粒子結着材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微粒子結着材によれば、圧力、摩擦、接触、飛来物等の外的因子に対する抵抗性が高く、表面形態保持性に優れた微粒子結着膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明の微粒子結着材は、無機質微粒子(a)(以下「(a)成分」ともいう)、カルボキシル基含有化合物(b)(以下「(b)成分」ともいう)、親水性基を有するシラン化合物(c)(以下「(c)成分」ともいう)、疎水性基を有するシラン化合物(d)(以下「(d)成分」ともいう)、及び水(e)(以下「(e)成分」ともいう)を含むものである。このような微粒子結着材は、無機質微粒子(a)の結着膜が形成できるものである。そして、その結着膜は、圧力、摩擦、接触、飛来物等の外的因子に対する抵抗性が高く、表面形態保持性において優れた性能を示すものである。
【0011】
本発明の微粒子結着材が、このような効果を奏する理由は明らかではないが、概ね以下のような作用機構によるものと推測される。
一般に、水中に分散した無機質微粒子(a)に対しシラン化合物を混合すると、シラン化合物は、無機質微粒子(a)の表面に十分には吸着されず、水中で加水分解され、シラン化合物同士で縮合体を生じてしまうおそれがある。
これに対し、本発明では、親水性基を有するシラン化合物(c)、及び疎水性基を有するシラン化合物(d)を併用するため、(c)成分と(d)成分が一体化した状態となる。すなわち、これらは親水基と疎水基を有する形態となることから、界面活性能が発揮され、無機質微粒子(a)の表面に吸着されやすくなる。さらに、(c)成分及び(d)成分の反応は、カルボキシル基含有化合物(b)の触媒作用によって促進される。このような微粒子結着材による結着膜では、無機質微粒子(a)の表面及びその近傍にシロキサン結合が形成されると共に、(a)〜(d)成分が、それぞれの相互作用によって緻密化する。
本発明では、上述のような各成分のはたらきにより、圧力、摩擦、接触、飛来物等の外的因子に対する抵抗性が高く、表面形態保持性において優れた性能を示す結着膜が形成されるものと考えられる。
【0012】
無機質微粒子(a)としては、平均粒子径が500μm以下のものが好ましい。(a)成分の平均粒子径は、より好ましくは0.1〜300μm、さらに好ましくは0.2〜200μm、最も好ましくは0.3〜100μmである。なお、(a)成分の平均粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置によって測定される50%粒子径の値である。
(a)成分の種類については特に限定されず、各種無機質微粒子を使用することができる。(a)成分としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪藻土、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄等、あるいはこれらの焼成品等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用することができる。
【0013】
本発明では、(a)成分として、モース硬度3以下のものを含む場合に、特に有利な効果を得ることができる。このような(a)成分としては、例えば、炭酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸マグネシウム、珪藻土、あるいはこれらの焼成品等が挙げられる。モース硬度3以下の無機質微粒子の含有比率は、(a)成分中に、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0014】
カルボキシル基含有化合物(b)としては、カルボキシル基含有分散剤、カルボキシル基含有水性樹脂等が使用できる。このうち、カルボキシル基含有分散剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸、アミノカルボン酸塩、ポリアクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合物、スチレン−メタクリル酸共重合物、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合物、スチレン−マレイン酸共重合物、アミレン−マレイン酸共重合物等、あるいはこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0015】
カルボキシル基含有水性樹脂としては、カルボキシル基を含有する水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が挙げられる。このような水性樹脂はカルボキシル基を含有するものであり、その樹脂骨格の種類は特に制限されず、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。
【0016】
カルボキシル基含有水性樹脂は、例えば、カルボキシル基含有単量体と、これと共重合可能な単量体との単量体混合物を重合することによって製造できる。カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。カルボキシル基含有単量体の比率は、単量体混合物中、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%である。
【0017】
本発明では、(b)成分として、カルボキシル基含有水性樹脂を含む態様が好適である。このようなカルボキシル基含有水性樹脂を使用することにより、常温(0〜40℃程度)で安定に結着膜を形成させることが可能となる。カルボキシル基含有水性樹脂としては、特にカルボキシル基含有水分散性樹脂が好適である。このような(b)成分の使用は、本発明の効果向上に有効であり、耐久性等の向上にも寄与するものである。このような効果は、(a)〜(d)成分の相互作用が強固となり、結着膜の緻密性が高まることによって奏されるものと考えられる。
【0018】
(b)成分の混合比率は、(a)成分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部である。
【0019】
親水性基を有するシラン化合物(c)としては、親水性基と反応性シリル基を併有する化合物が使用できる。(c)成分における親水性基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン、水素原子等が結合したものが挙げられる。反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基が好適であり、当該アルコキシシリル基中のアルコキシル基としては、特にメトキシ基及び/またはエトキシ基が好適である。このような反応性シリル基の好適な例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0020】
具体的に(c)成分としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−エポキシオクチルトリメトキシシラン、8−エポキシオクチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジイソプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルジイソプロピルトリエトキシシランのアミノ基含有シラン化合物;
一般式 RO(R’O)R’SiR(OR)3−a(Rはアルキル基、R’はアルキレン基、nは1〜10の整数、aは1〜3の整数。)で表されるアルキレンオキサイド基含有シラン化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明における(c)成分としては、アミノ基含有シラン化合物が好適であり、この中でも、1分子中にアミノ基を2つ以上(好ましくは2つ)有するアミノ基含有シラン化合物が好適である。
【0021】
(c)成分の混合比率は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。(c)成分の混合比率が、このような範囲内であれば、表面形態保持性において十分な効果を得ることが可能となる。
【0022】
疎水性基を有するシラン化合物(d)としては、疎水性基と反応性シリル基を併有する化合物が使用できる。(d)成分における疎水性基としては、例えば、長鎖アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。このうち長鎖アルキル基としては、炭素数3以上の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基が挙げられる。反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン、水素原子等が結合したものが挙げられる。反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基が好適であり、当該アルコキシシリル基中のアルコキシル基としては、特にメトキシ基及び/またはエトキシ基が好適である。このような反応性シリル基の好適な例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0023】
具体的に(d)成分としては、例えば、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明における(d)成分としては、ベンゼン環を有するシラン化合物が好適であり、この中でも、フェニル基含有シラン化合物が好適である。
【0024】
(d)成分の混合比率は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。(d)成分の混合比率が、このような範囲内であれば、表面形態保持性において十分な効果を得ることが可能となる。
【0025】
本発明における水(e)は、主に、無機質微粒子(a)等を分散させる媒体として作用するものである。さらに、(e)成分は、上述の(c)成分、(d)成分の反応にも寄与するものである。なお、(e)成分には、他の成分の媒体として用いられる水も包含される。
(e)成分の混合比率は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは30〜300重量部、より好ましくは50〜200重量部である。
【0026】
本発明の微粒子結着材は、上記(a)〜(e)成分を必須成分とするものであるが、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、pH調整剤、粘性調整剤、湿潤剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、着色剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、撥水剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機溶剤、触媒等が挙げられる。本発明の微粒子結着材は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0027】
本発明微粒子結着材の製造においては、無機質微粒子(a)及び水(e)を含む混合液に対し、親水性基を有するシラン化合物(c)及び疎水性基を有するシラン化合物(d)を、同時または連続的に混合することが望ましい。このような製造方法は、本発明の効果発現の点で好適である。カルボキシル基含有化合物(b)を混合するタイミングは任意であり、(c)成分及び(d)成分の混合前及び/または混合後に加えればよい。
【0028】
本発明では、上記微粒子結着材を各種基材の上に塗布することで、結着膜が形成できる。適用可能な基材としては、例えば、金属、ガラス、セメント、石膏、木材、紙、プラスチック等の各種材料からなる板状基材等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理が施されたものでもよく、既に被膜が形成されたもの等であってもよい。
【0029】
微粒子結着材を基材に塗布する際には、公知の方法を採用することができる。塗布方法としては、例えば、拭き塗り、刷毛塗り、ローラーコート、スプレーコート、ディッピング、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート等が挙げられる。
塗布後の成膜は、常温下、加熱下、紫外線照射下等で行うことができる。(b)成分としてカルボキシル基含有水性樹脂を含む場合は、常温下で安定的に微粒子結着膜を得ることができる。微粒子結着膜の膜厚は、概ね500μm以下、好ましくは10〜200μm程度である。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0031】
(微粒子結着材の調製)
微粒子結着材の調製においては、以下の材料を使用した。
・無機質微粒子1:含水珪酸アルミニウム(平均粒子径8μm、モース硬度1)
・無機質微粒子2:含水珪酸マグネシウム(平均粒子径12μm、モース硬度1)
・無機質微粒子3:シリカ(平均粒子径4μm、モース硬度7)
・無機質微粒子4:炭酸カルシウム(平均粒子径3μm、モース硬度3)
・無機質微粒子5:酸化チタン(平均粒子径0.3μm、モース硬度6)
・無機質微粒子6:焼成珪酸アルミニウム(平均粒子径5μm、モース硬度2.5)
・無機質微粒子7:珪藻土(平均粒子径10μm、モース硬度1)
・水分散性樹脂1:カルボキシル基含有水分散性アクリル樹脂(メチルメタクリレート‐2−エチルヘキシルアクリレート‐アクリル酸の共重合体、単量体混合物中のアクリル酸比率2重量%、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%)
・水分散性樹脂2:カルボキシル基含有水分散性アクリルスチレン樹脂(メチルメタクリレート‐スチレン‐n−ブチルアクリレート‐メタクリル酸の共重合体、単量体混合物中のメタクリル酸比率5重量%、ガラス転移温度−5℃、固形分50重量%)
・水分散性樹脂3:水酸基含有水分散性アクリル樹脂(メチルメタクリレート‐2−エチルヘキシルアクリレート‐2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%)
・シラン化合物1:γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
・シラン化合物2:N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
・シラン化合物3:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・シラン化合物4:ヘキシルトリメトキシシラン
・シラン化合物5:フェニルトリメトキシシラン
・分散剤:スルホン酸塩系分散剤
・消泡剤:鉱物油系消泡剤
【0032】
・微粒子結着材1
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物1を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0033】
・微粒子結着材2
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物4を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0034】
・微粒子結着材3
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物3を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0035】
・微粒子結着材4
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0036】
・微粒子結着材5
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を20重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0037】
・微粒子結着材6
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を20重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子5を40重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、水分散性樹脂1を75重量部混合し、20分間攪拌した。
【0038】
・微粒子結着材7
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を30重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子6を30重量部、水分散性樹脂1を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0039】
・微粒子結着材8
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を30重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子6を30重量部、水分散性樹脂1を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.1重量部、シラン化合物5を0.1重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0040】
・微粒子結着材9
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を30重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子6を30重量部、水分散性樹脂1を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.4重量部、シラン化合物5を0.4重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0041】
・微粒子結着材10
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を30重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子6を30重量部、水分散性樹脂1を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を2重量部、シラン化合物5を2重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0042】
・微粒子結着材11
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子2を30重量部、無機質微粒子4を40重量部、無機質微粒子6を30重量部、水分散性樹脂2を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0043】
・微粒子結着材12
水30重量部、分散剤1重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子4を50重量部、無機質微粒子6を30重量部、無機質微粒子7を20重量部、水分散性樹脂1を140重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物2を1.2重量部、シラン化合物5を1.2重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0044】
・微粒子結着材13
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物1を1.6重量部混合した後、20分間攪拌した。
【0045】
・微粒子結着材14
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物4を1.6重量部混合した後、20分間攪拌した。
【0046】
・微粒子結着材15
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂3を75重量部混合した。次いで、得られた分散液に対し、シラン化合物1を0.8重量部、シラン化合物5を0.8重量部、連続的に混合した後、20分間攪拌した。
【0047】
・微粒子結着材16
水43重量部、分散剤0.5重量部、及び消泡剤0.5重量部を容器内に仕込み、この混合液を攪拌しながら、無機質微粒子1を20重量部、無機質微粒子3を40重量部、無機質微粒子5を40重量部、水分散性樹脂1を75重量部混合した後、20分間攪拌した。
【0048】
(1)試験A
(試験例A−1)
アルミニウム板の上に、微粒子結着材1を乾燥膜厚が80μmとなるように塗布し、気温23℃、相対湿度50%下で14日間乾燥させ、結着膜を形成させた。以上の方法で得られた試験板は、光拡散性を有するものであった。
以上の方法で得られた試験板に対し、綿製の布帛を用いて、試験板の結着膜表面を20往復摩擦した後、擦り傷の程度を観察した。評価は、擦り傷が認められなかったものを「A」、著しい擦り傷が認められたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
【0049】
(試験例A−2〜A−16)
微粒子結着材1に代えて、表1に示す微粒子結着材(表中では単に「結着材」と表記)を使用して、試験板を作製した。いずれの試験板も、光拡散性を有するものであった。また、得られた試験板につき、試験例A−1と同様の試験を実施した。
【0050】
試験結果を表1に示す。試験例A−1〜A−12では、試験例A−13〜A−16に比べ、良好な結果が得られた。
【0051】
【表1】

【0052】
(2)試験B
(試験例B−1)
アルミニウム板の上に、微粒子結着材1を乾燥膜厚が80μmとなるように塗布し、気温23℃、相対湿度50%下で14日間乾燥させ、結着膜を形成させた。以上の方法で得られた試験板に対し、蛍光顔料が染み込んだフェルトを、試験板の結着膜表面に接触させ、3分間放置後、水を含んだスポンジで拭き取りを行い、蛍光色の残存状態を観察した。評価は、蛍光色の残存が認められなかったものを「A」、著しく蛍光色が残存していたものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
【0053】
(試験例B−2〜B−10)
微粒子結着材1に代えて、表2に示す微粒子結着材を使用して、試験板を作製した。得られた試験板につき、試験例B−1と同様の試験を実施した。
【0054】
試験結果を表2に示す。試験例B−1〜B−6では、試験例B−7〜B−10に比べ、良好な結果が得られた。
【0055】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質微粒子の結着膜を形成する微粒子結着材であって、
無機質微粒子(a)、
カルボキシル基含有化合物(b)、
親水性基を有するシラン化合物(c)、
疎水性基を有するシラン化合物(d)、及び
水(e)を含むことを特徴とする微粒子結着材。



【公開番号】特開2012−72397(P2012−72397A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190770(P2011−190770)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510114125)株式会社エフコンサルタント (32)
【Fターム(参考)】