微粒子製造装置、微粒子の製造方法、及びトナー
【課題】噴射造粒法において、安価で簡便な構造によってメンテナンス性を確保しつつ、噴射後の液滴同士の合着を防止し、従来工法では得られなかった狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造することができる微粒子製造装置の提供。
【解決手段】少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを有し、前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを有し、前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを有し、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有する微粒子製造装置である。
【解決手段】少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを有し、前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを有し、前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを有し、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有する微粒子製造装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射造粒法における微粒子製造装置及び微粒子の製造方法、並びに、該微粒子の製造方法又は該微粒子製造装置を用いて製造される、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子製造装置及び微粒子の製造方法に関する従来技術として、トナー製造装置及びトナーの製造方法を例に説明する。
従来、電子写真記録方法に基づく複写機、プリンター、ファックス、及びそれらの複合機に使用される静電荷像現像用トナーの製造方法としては粉砕法のみであったが、近年では重合法と呼ばれる、水系媒体中でトナー粒子形成する工法が広く行なわれ、粉砕法を凌駕する勢いである。前記重合法により製造されたトナーは、「重合トナー」又は「ケミカルトナー」と呼ばれている。
前記重合法は、トナー粒子形成時、或いはその過程においてトナー原材料の重合反応を伴うことから、このように称される。重合の方法としては、各種重合方法が実用化されており、懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)、エステル伸長反応などが挙げられる。
【0003】
前記重合法により得られたトナーは、総じて、粉砕法で得られたトナーに比べ、小粒径のものが得やすい、粒径分布が狭い、形状が球形に近いなどの特徴を有している。そのため、重合法により得られたトナーを用いることで、電子写真方式において高画質な画像を得やすいという利点がある。しかしながら、重合過程に長時間を必要とし、更に固化させた後に溶媒とトナー粒子とを分離し、その後洗浄及び乾燥を繰り返す必要が有り、多くの時間、水、及びエネルギーを要するという欠点がある。
【0004】
そのため、トナーの原材料成分を有機溶媒に溶解又は分散した液体(以下、トナー組成液と称することもある)を、様々なアトマイザを用いて微粒子化した後に乾燥させて粉体状のトナーを得る噴射造粒法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの提案によれば、水を用いる必要がなく、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができるため、重合法の欠点を回避することができる。
しかしながら、前記提案で示されたトナーの製造方法においては、トナー組成液を噴霧して形成された液滴が、乾燥する前に液滴同士で合着し、その状態のまま溶媒が乾燥してトナーが得られることがあり、結果として得られるトナーの粒径分布の広がりが避けられず、粒径分布としては十分でないという問題があった。
【0005】
このような問題に対しては、金属板に一定の周波数の振動を付与することにより前記金属板に設けた吐出孔から液滴を吐出させるトナーの製造方法が提案されている(特許文献4参照)。この提案によれば、多量の洗浄液、溶媒と粒子の分離の繰り返しが不要で、非常に製造効率が高く、かつ省エネルギーで、粒径分布の狭いトナーを製造できる。
しかしながら、前記提案では、レイリー分裂を利用しており、吐出孔の内径の2倍程度となる粒径の液滴を形成するため、小粒径のトナーを製造するためには、吐出孔の内径を小さくする必要があり、更には貯留部において液が一方向的に加圧され、トナーの組成によって吐出孔内部にトナー成分が詰まってしまうという問題があった。
【0006】
また、液滴放出方向の一次搬送気流と、一次搬送気流に対して120°未満の角度を持った二次搬送気流を設けることで液滴の合着を防止し、粒径分布の狭いトナーを製造できるトナーの製造方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、液滴の吐出方向に一次搬送気流を形成する方法は、構造が複雑にならざるを得ず、設備が高価になるばかりでなく、吐出部のクリーニングのために複雑な形状の洗浄装置や複雑な形状を分解する装置が必要となるなど、メンテナンス性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、噴射造粒法において、安価で簡便な構造によってメンテナンス性を確保しつつ、噴射後の液滴同士の合着を防止し、もって従来工法では得られなかった狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造することができる微粒子製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段により吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを少なくとも有し、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする微粒子製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、噴射造粒法において、安価で簡便な構造によってメンテナンス性を確保しつつ、噴射後の液滴同士の合着を防止し、従来工法では得られなかった極めて狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造することができる微粒子製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、液滴吐出手段の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、液柱共鳴液滴ユニットの構成の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、液滴吐出手段におけるN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図4】図4は、液滴吐出手段におけるN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図5】図5は、液滴吐出手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図6】図6は、液滴吐出手段での実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図7】図7は、駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。
【図8】図8は、各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図9】図9は、各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。
【図10】図10は、トナー製造装置の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、合着防止できた場合のトナー粒径分布の一例を示したグラフである。
【図12】図12は、合着防止できなかった場合のトナー粒径分布の一例を示したグラフである。
【図13】図13は、液滴合着の機構図である。
【図14】図14は、液滴同士が合着した合着粒子の写真と粒径である。
【図15】図15は、粒子同士が結着した結着粒子の写真である。
【図16】図16は、実施例1のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図17】図17は、実施例2のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図18】図18は、実施例3のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図19】図19は、実施例4のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図20】図20は、比較例2のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図21】図21は、実施例9のトナー製造装置の説明に供する概略断面図である。
【図22】図22は、実施例10のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図23】図23は、実施例11のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図24】図24は、実施例12のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図25】図25は、実施例13のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図26】図26は、実施例14のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(微粒子製造装置及び微粒子の製造方法)
本発明の微粒子製造装置は、液滴吐出手段と搬送固化手段とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
また、本発明の微粒子の製造方法は、液滴吐出工程と搬送固化工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の手段を含む。
以下では、前記微粒子製造装置及び微粒子の製造方法について、その一形態としてトナーに適用したトナー製造装置を例に説明する。
なお、トナー製造装置は、前記微粒子製造装置において、微粒子原料含有液としてトナー組成液を用いたものである。前記トナー組成液は、後述するトナー材料を含む液体であり、例えば、少なくとも樹脂及び着色剤を揮発可能な溶媒に溶解又は分散させた溶解乃至分散液である。
【0012】
<液滴吐出工程及び手段>
前記液滴吐出工程は、少なくとも1つの吐出孔を有する液滴吐出手段からトナー組成液を液滴として吐出させる工程である。
また、前記液滴吐出手段は、少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴として吐出する手段である。
前記液滴吐出手段としては、前記トナー組成液を液滴化できる限り、特に制限はなく、公知の液滴吐出手段を用いることができるが、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された吐出孔から液体を吐出する液柱共鳴タイプの液滴吐出手段が好ましい。
以下、液柱共鳴タイプの液滴吐出手段について図1及び2を用いて解説する。
【0013】
図1は、液滴吐出手段11の構造を示す断面図であり、図2は、液柱共鳴液滴ユニットの構成の一例を示す断面図である。図1に示す前記液滴吐出手段11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有し、前記液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、前記液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出孔19と、該吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0014】
揮発可能な溶媒に、少なくとも樹脂及び着色剤を溶解又は分散させた溶解乃至分散液(以下、単に「トナー組成液」と記すこともある)14は図示されない液循環ポンプにより液供給管を通って、図2に示す液柱共鳴液滴吐出ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図1に示す液滴吐出手段11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19から液滴21が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路17を通過したトナー組成液14は図示されない液戻り管を流れて原料収容器に戻される。液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻る。
【0015】
前記液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図2に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出ユニット10に対して複数配置されていることが好ましい。1つの液滴吐出ユニットに対する液柱共鳴液室の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性と生産性が両立できる点で、100個〜2,000個がより好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17は複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0016】
また、前記液滴吐出手段11における振動発生手段20としては、所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板9に貼りあわせた形態が好ましい。前記弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。前記圧電体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられる。前記圧電セラミックスは、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子;水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが好ましい。また、1つの材質のブロック状の振動部材(圧電体)を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が好ましい。
【0017】
更に、吐出孔19の開口部の直径としては、液滴が吐出できる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜40μmが好ましい。前記直径が、1μm未満であると、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合があり、またトナーの構成成分として着色剤などの固形微粒子が含有された構成の場合、吐出孔19において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下するおそれがある。前記直径が、40μmを超えると、液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて、所望のトナー粒子径3μm〜6μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。また、図2からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することは、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなる点で好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが好ましい。
【0018】
次に、液柱共鳴における液滴吐出ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図1の液柱共鳴タイプの液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式1)
の関係にある。
【0019】
また、図1の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、N:偶数)
【0020】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも前記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、前記式2のNが奇数で表現される。
【0021】
最も効率の高い駆動周波数fは、前記式1と前記式2より、
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:自然数)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0022】
図3にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図4にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図3及び図4のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図3の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度が極大となる端であり、逆に圧力はゼロとなる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図3及び図4のような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、前記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmを用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、前記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、前記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、前記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0023】
図1に示す液滴吐出手段11における液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図3の(b)及び図4の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0024】
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0025】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:自然数)
【0026】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部と該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離Leの比(Le/L)が、下記式6を満たすことが好ましい。
Le/L>0.6 ・・・(式6)
【0027】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図1の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2個〜100個の間であることが好ましい。
100個を超えると、100個の吐出孔19から所望の液滴を形成させるために振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要が生じ、振動発生手段20としての圧電体の挙動が不安定となることがある。
【0028】
複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣あう吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながることがある。
前記ピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒径のトナーを得ることができる点で好ましい。
【0029】
次に、液滴吐出ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象について図5を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、同図において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0030】
図5の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。
また、図5の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図5の(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0031】
そして、図5の(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図5の(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図5の(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0032】
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。この一例は、図1において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を図6に示す。同図からわかるように、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図7は駆動周波数290kHz〜395kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。同図からわかるように、第一から第四の吐出孔において駆動周波数が340kHz付近では各吐出孔からの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図7の特性結果から、第一モードである130kHzにおいての液滴吐出速度ピークと、第二モードである340kHzにおいての液滴吐出速度ピークとの間では液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0033】
また、図8は各吐出孔(ノズル)における印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図であり、図9は各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。両図からわかるように、印加電圧に対して吐出速度も液滴直径も単調増加の傾向にあった。よって、吐出速度及び液滴直径は印加電圧に依存するため、印加電圧を調整することにより、所望の吐出速度、あるいは所望のトナー粒子の径に応じた液滴直径を調整することができる。
【0034】
<搬送固化工程及び搬送固化手段>
前記搬送固化工程は、前記液滴吐出工程において吐出させた液滴を搬送固化手段により搬送固化させる工程である。
前記搬送固化手段は、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを有し、必要に応じてその他の手段を有する。
したがって、先に説明した液滴吐出手段11によって、トナー組成液を気流中に吐出させ、吐出したトナー組成液の液滴を前記搬送固化手段により乾燥固化させた後に捕集することで、本発明のトナーを得ることができる。
なお、ここで固化とは、前記液滴が乾燥し、後述する液滴同士の合着や接着が生じない状態になることをいう。
以下、搬送固化手段について、図10を用いて説明する。
【0035】
図10は、本発明のトナーの製造方法を実施する装置一例の断面図である。トナー製造装置1は、液滴吐出手段2及び搬送固化手段60を含み、必要に応じて更にその他の手段を含む。
前記液滴吐出手段2には、トナー組成液14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を液供給管16を通して液滴吐出手段2に供給し、更に液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とが連結されており、トナー組成液14を随時液滴吐出手段2に供給できる。液供給管16にはP1、搬送固化手段60にはP2の圧力測定器が設けられており、液滴吐出手段2への送液圧力及び、搬送固化手段60内の圧力は圧力計P1、P2によって管理される。このときに、P1>P2の関係であると、トナー組成液1が孔12から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2であることが好ましい。
【0036】
図10に示す搬送固化手段60は、気流発生手段68、搬送気流路(以下、単に「気流路」とも称する)66、液滴吐出手段2、チャンバー61、トナー捕集手段62及びトナー貯留部63を含み、更に必要に応じてその他の手段を含む。
以下、気流路に流した気流を利用して液滴を搬送固化する搬送固化手段について解説する。
前記液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、搬送気流路66内の液滴吐出空間に吐出され、搬送気流路66内に流れる、前記気流発生手段により発生させた搬送気流101によって乾燥固化され、チャンバー61、トナー捕集手段62に搬送される。
【0037】
搬送気流101によって、液滴吐出手段2から吐出された直後の液体の状態から、徐々にトナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行する。これにより、液滴21は液体から固体に変化する。このように固体に変化した状態では、トナー捕集手段62でトナー粉体として捕集することができる。捕集したトナー粉体はその後、トナー貯留部63に格納される。なお、トナー貯留部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
【0038】
このようにして捕集したトナーの粒径分布は、図11のようになる。これは捕集したトナーの一例であるが、ほとんど単一粒径のトナー粒子しか存在しないことがわかる。このような極めて狭い粒径分布は、前述のように吐出された液滴が合着することなく、乾燥された場合に得られる。
【0039】
一方で液敵同士が合着した場合に捕集したトナーの粒径分布を図12に示す。図12は、気流発生手段を用いず、気流を発生させなかった以外は、図11と同じ条件で捕集されたトナーの粒径分布である。液滴の合着は主に、前に吐出された液滴が乾燥する前に、空気の粘性抵抗によって減速し、後に吐出された液滴に追い付いて液滴同士が接触することで発生する。図13に示すように、吐出孔から吐出した液滴同士が合着して合着液滴23となると、乾燥後の粒径も大きくなり粒径分布を広くする原因になる。
また、合着した液滴は空気抵抗が増し、更に別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もある。これが乾燥すると合着粒子となり、得られる粒子の粒径分布は更に広くなる。図12中の基本粒径と示したピークを構成する乾燥粒子は合着しなかった液滴がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子は液滴が吐出後に合着した後に乾燥固化してえられたものである。同様に3倍、4倍、又はそれ以上の合着が進行していることが粒径分布測定結果から推測することができる。前記粒径分布測定は、例えば、フロー式粒子像解析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて行うことができる。図14にFPIA-3000で撮影された合着した粒子の写真を示す。
【0040】
図15では基本粒子が結着した状態を示している。基本粒子同士の結着も機械的強度を与えても粒子間の結着がほぐれないため大きな粒子と振舞うことになり、好ましくない。このように結着した粒子(結着粒子)は、ある程度粒子が乾燥した後に粒子同士が結合した結果得られると考えられる。このような粒子の発生はある程度乾燥が進行した粒子が配管壁面へ付着し、やがて別の乾燥の進んでいない粒子が壁面に付着した粒子と結着した後に乾燥が進行し、配管から剥がれて回収されると考えられる。このような粒子の発生防止は、乾燥を早く確実に実施することや、本発明における搬送固化手段を用いることにより、気流制御によって配管内への粒子付着を抑えることで達成できる。
【0041】
前記粒径分布は、体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーのDv/Dnは、1.15〜1.25程度である。また重合トナーのDv/Dnは、1.10〜1.15程度である。本発明のトナーのDv/Dnは、1.20以下とすることで印刷品質に効果が確認されているが、安定的に高精細な画質を得る観点から、1.15以下が好ましく、より高精細な画像を得る観点から、1.10以下がより好ましい。
【0042】
本発明における搬送固化手段は、液滴同士の合着を防止するために、液滴吐出手段2を壁面に備えた搬送気流路66がチャンバー61の上端部に接続されている。前記気流路66は、下流側端部の一側面に液滴吐出手段2が配置されて(液滴吐出空間を形成し)、前記液滴吐出手段2から吐出される液滴21に対して、その吐出方向と略直交する方向に前記液滴21が搬送されるように気流101を導く第一の気流路67と、前記第一の気流路67の下流端に連なる第二の気流路69とを少なくとも有している。そして、本発明は、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする。
前記搬送気流路66に気流を発生させるための気流発生手段68としては、搬送気流導入口64に送風機などを設けて加圧する方法と、搬送気流排出口65より吸引する方法のいずれを採用することもできる。
前記搬送固化手段を用いることにより、前記搬送固化工程において、前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴を、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に搬送し、更に前記第二の気流路により、前記液滴を壁面に近接させないように搬送することができ、本発明の効果を得ることができる。
【0043】
前記第一の気流路と前記第二の気流路との接続方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、気流の速度及び流量を一定に保つ観点から、密閉して接続されていることが好ましく、また、乱流を発生させず、液滴の気流路壁面への付着を防止する観点から、連続的に接続されていることが好ましい。なお、前記第一の気流路と前記第二の気流路との接続には、接続部材を用いてもよい。
【0044】
ここで、前記液滴吐出手段が配置される前記気流路の壁面とは、例えば、前記気流路が円柱状の場合には、その内側(内径)面を表し、前記気流路が角柱状の場合には、その内側の各面を表す。
また、前記液滴吐出手段の配置する向きは、気流路内に液滴が吐出される向きであり、前記液滴吐出手段の前記吐出孔は、壁面に露出している。このように配置されることで、前記気流路が前記液滴が吐出される空間を形成する。
前記液滴の吐出方向に対して略直交する方向とは、液滴吐出方向となす角度が、70°〜110°であることを指す。
【0045】
本発明のトナー製造装置においては、前記液滴吐出手段と前記搬送固化手段とが上述のように配置されるため、以下に示すようにメンテナンス性を確保することができる。
液滴吐出手段を有するトナー製造装置のメンテナンスを行う場合、前記液滴吐出手段の吐出孔の詰まり(固着物)を除去するために、洗浄剤を用いるのが好ましいが、固着物と洗浄剤の製品への混入を防ぐため、搬送気流を止めて洗浄する必要があり、また、前記液滴吐出手段を洗浄、排出用の洗浄室に移動して洗浄する必要がある。液滴の吐出方向に一次搬送気流を形成する従来のトナー製造装置は、構造が複雑にならざるを得ず、吐出部のクリーニングのために複雑な形状の洗浄装置や複雑な形状を分解する装置が必要となる。
一方、本発明のトナー製造装置においては、液滴吐出手段が第一の気流路の一側面に配置されるという単純な構造であるため、液滴吐出手段が容易に取り出し可能な形状とすることができる。更に、生産性を確保するために、搬送気流を個別に停止可能な、液滴吐出手段を壁面に備えた搬送固化手段を複数有する構造とすることが容易にできる。なお、このときの搬送固化手段の個数としては、必要な生産量に応じて適宜選択できる。
【0046】
前記気流発生手段によって発生させる気流を構成する気体の種類としては、特に制限はなく、空気であっても、窒素等の不燃性気体であってもよい。前述のように、液滴が乾燥することで合着及び結着しなくなる性質があるために、液滴の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。このことから、トナー組成液に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが好ましい。
また、前記気流の温度としては、特に制限はなく、適宜調整可能であるが、生産時において変動のないことが好ましい。
また、チャンバー内に気流の状態、流れを変えるような手段をとってもよく、そのような手段によってチャンバーへの液滴の付着を防止することで、歩留まりが向上し、生産性が向上する。
【0047】
前記第一の気流路では、気流路内(液滴吐出空間)に吐出された液滴の進行方向が気流によって曲げられ、吐出方向に対して直角方向に進行方向を徐々に変える。更に液滴は、気流により搬送速度が増加し、液滴間距離が増加するため、液滴同士が接触し合着する確率が減少する。
液滴吐出方向と直交する前記搬送気流の速度としては、液滴同士の合着を防ぎ、液滴の進行方向を変化させるのに十分な速度を有する必要があり、7m/s〜100m/sが好ましく、15m/s〜60m/sがより好ましい。前記速度が、7m/s未満であると、液滴の進行方向を変化させる前に前後の液滴が合着し合着液滴となるため、乾燥した粒子の粒径分布が広くなることがあり、100m/sを超えると、液滴の分裂が発生し、粒径分布が悪化する可能性がある。一方、前記速度が、前記範囲内であると、液滴が合着する前に液滴の進行方向が変化し、合着確率が低下するため粒径分布が狭い粒子を得ることができる。
【0048】
前記第二の気流路の構造としては、少なくとも上流部において、第一の気流路よりも断面積が拡大された構造であることが好ましく、少なくとも上流部において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造であることがより好ましい。
このような形状を有する第二の気流路では、前記液滴吐出手段から吐出される液滴の吐出方向に対して直角方向に進行方向が変化した液滴に対して、液滴が前記気流路の壁面付近から離され、その結果、液滴が気流路の壁面と接触し、付着又は結着することを防ぐことができる。
【0049】
前記断面積が拡大する方向としては、液滴と気流路の壁面との付着又は結着を防止できる限り、特に制限はなく、前記液滴吐出手段側に拡大してもよいし、前記液滴吐出手段と対向する側に拡大してもよい。
第二の気流路の断面積は、不連続に拡大してもよく、漸次拡大してもよいが、乱流が発生しない点で、漸次拡大することが好ましい。なお、前記不連続とは、例えば、階段状であることを指す。
【0050】
また、必要に応じて、前記第二の気流路の壁面を多孔質体とし圧縮気体を導入すること、又は、前記第二の気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を用いることにより、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げてもよい。
【0051】
前記第二の気流路のその他の形状としては、第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、前記液滴吐出手段が設置された側に湾曲した第一の湾曲部位を有する構造であることが好ましく、更に、前記液滴吐出手段が設置された側とは反対側に湾曲した第二の湾曲部位を第一の湾曲部位の下流側に有する構造であることがより好ましい。
【0052】
このような形状を有する第二の気流路では、前記液滴吐出手段から吐出される液滴の吐出方向に対して直角方向に進行方向が変化した液滴に対して、気流の方向が前記液滴吐出手段側(言い換えれば、液滴吐出方向とは逆方向の成分を有する方向)に転向されることで、液滴と搬送気流の慣性力の差から、液滴が前記気流路の壁面付近から離され、その結果、液滴が気流路の壁面と接触し、付着又は結着することを防ぐことができる。
前記気流の気流方向を前記液滴吐出手段側に転向する方法としては、特に制限はないが、簡便である点で、上述のように第二の気流路を前記液滴吐出手段側に湾曲させることで転向させることが好ましいが、液滴の速度、密度と液滴径に応じて、更に気流発生手段を設け、第二の気流路に補助気流を流すことによって転向の補助をさせてもよい。
また、気流路の曲げ方としては、特に限定はなく、円弧曲線であっても緩和曲線であってもよい。
【0053】
第二の気流路は、前述のように第二の気流路が前記液滴吐出手段側に曲げられている形状であることが好ましく、更に、液滴21が搬送気流路66の壁面付近から離された後、液滴が気流路の壁面と再接近し付着又は結着することを防ぐ形状であることがより好ましい。
前記液滴と気流路の壁面との再接近、付着又は結着を防止するためには、第二の気流路の構造が、前記湾曲部位において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造であることが好ましい。第二の気流路の断面積は、不連続に拡大してもよく、漸次拡大してもよいが、乱流が発生しない点で、漸次拡大することが好ましい。なお、前記不連続とは、例えば、階段状であることを指す。
【0054】
また、更に好ましい形状は、第二の気流路の断面積が、気流の下流側に向かうにつれて、漸次拡大する形状とすることで、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げること、及び/又は第二の気流路が、第一の気流路における気流の方向に対し、前記液滴吐出手段側に前記気流を導き、更に気流の下流側に向かうにつれて第一の気流路における気流の方向に漸次近づくように前記気流を導く(つまり、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく形状とする)ことで前記液滴の進行方向を調整し、液滴と気流路の壁面との距離を保つことによって達成できる。
また、必要に応じて、前記第二の気流路の壁面を多孔質体とし圧縮気体を導入すること、又は、前記第二の気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を用いることにより、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げてもよい。
【0055】
本発明に用いられる第二の気流路の上記好ましい形状は、具体的には図16〜図19及び図21〜図26に示され、例えば、下記パラメーター値により表すことができる。
前記液滴吐出手段2が配置された壁面をX面、対向する壁面をY面とし、X面とY面との距離を気流路高さHとし、第一の気流路の高さをH1、第二の気流路の高さをH2、第二の気流路のX面曲率半径1をRX1、第二の気流路のY面曲率半径1をRY1、第二の気流路のX面中心角1をθX1、第二の気流路のY面中心角1をθY1、第二の気流路のX面曲率半径2をRX2、第二の気流路のY面曲率半径2をRY2、第二の気流路のX面中心角2をθX2、第二の気流路のY面中心角2をθY2として数値化することができる。
それぞれのパラメーター値は、本発明の効果を有する限り特に制限はなく、液滴の大きさ、気流の速度、気流路の断面積などに応じて適宜設定することができる。
【0056】
気流路の長さとしては、前述のように液滴が乾燥することで合着及び結着しなくなる性質があるために、液滴が乾燥し、接触しても合着及び結着しなくなる長さであることが好ましく、液滴と気流の条件によって決定される。
【0057】
前記第一の気流路(液滴吐出空間)の壁面形状としては、気流が整流された流れとなればどのような形状であってもよいが、気流の乱れを防止できる観点から、液滴吐出手段の吐出孔が開口された面の形状に沿った凸凹がない形状が好ましい。
【0058】
また、液滴を連続して吐出する際の液適の初速度V0は、吐出直後の液滴径をd0、駆動周波数をfとしたとき、V0>2d0×fであることが好ましく、より好ましくはV0>3d0×fである。前記V0が、2d0×f以下であると、前後の液滴の間隔が小さくなり液滴の進行方向を変化させる前に合着してしまう。液滴直径及び吐出速度は、吐出孔の径、駆動周波数f及び印加電圧などで調整可能である。
【0059】
図10では、液滴21が水平方向に向かって吐出されるように液滴吐出手段2を配置しているが、必ずしもその必要はなく、吐出させる方向は適宜選択できる。
トナー捕集手段62としては、公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機、バックフィルター等を用いることができる。
【0060】
<乾燥>
図10で示された搬送固化手段によって得られたトナー粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合はこれを低減するために必要に応じて、二次乾燥が行われる。二次乾燥としては流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることができる。有機溶剤がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0061】
<微粒子原料含有液>
本発明の微粒子製造装置及び微粒子の製造方法において用いられる微粒子原料含有液は、微粒子の原料となる成分、つまり微粒子化成分が溶媒に溶解若しくは分散してなるもの、又は微粒子化成分が溶融したものである。
前記微粒子原料としては、溶媒に溶解乃至分散できる限り、特に制限はなく、微粒子を形成することができる公知の原料を用いることができる。
前記微粒子原料として、後述するトナー材料を用い、本発明の微粒子製造装置又は微粒子の製造方法によって本発明のトナーを製造することができる。
前記微粒子原料含有液の粘度としては、前記液滴吐出手段により吐出することができ、前記搬送固化手段により液滴が乾燥できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
(トナー)
次に、前記微粒子の一例として、本発明のトナーについて説明する。
本発明に係るトナーは、上述した本実施の形態に係るトナー製造装置のように、本発明の微粒子製造装置及び微粒子の製造方法をトナーに適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒径分布が単分散なものが得られる。
【0063】
具体的には、前記トナーの粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.20が好ましく、1.00〜1.15がより好ましく、1.00〜1.10が更に好ましい。また、体積平均粒径としては、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。
前記粒径分布及び体積平均粒径の測定は、例えば、フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて行うことができる。
【0064】
次に、本発明で使用できるトナー材料について説明する。
トナー材料としては、従来公知の電子写真用トナー材料が使用できる。即ち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。
【0065】
<トナー材料>
前記トナー材料としては、少なくとも結着樹脂、着色剤を含み、更に必要に応じて、ワックス、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、その他の添加剤などを含む。
【0066】
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0067】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が、50個数%〜90個数%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0068】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0069】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60個数%〜100個数%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0070】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0071】
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0072】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれかに、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するもの、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0073】
また、ポリエステル系重合体及びビニル重合体の少なくともいずれかとその他の結着樹脂とを併用する場合、結着樹脂全体の酸価が、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gである樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0074】
本発明において、トナー材料の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求めることができる。なお、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5g〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mLのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mLを加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とし、以下の式で算出する。ただし、fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0075】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35℃〜80℃であるのが好ましく、40℃〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0076】
本発明のトナーに使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、及び(3)これらの混合物などが用いられる。
【0077】
前記磁性体としては、例えば、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、Fe3O4、γ−Fe2O3の微粉末が好ましい。
【0078】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムなどが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0079】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0080】
前記磁性体の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。
前記磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0081】
また、前記磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性が、それぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0082】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0083】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0084】
本発明のトナーに用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性乃至未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0086】
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0087】
前記マスターバッチ用の樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が、30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、着色剤分散性も不十分となることがある。
また、前記マスターバッチ用の樹脂のアミン価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アミン価が1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、10mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。前記アミン価が、1mgKOH/g未満である、或いは100mgKOH/gを超えると、着色剤分散性が不十分となることがある。
なお、前記酸価は、JIS K0070に記載の方法により測定することができ、前記アミン価は、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0088】
また、分散剤は、着色剤分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)などが挙げられる。
【0089】
前記分散剤の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、着色剤分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましく、5,000〜30,000が最も好ましい。前記分子量が、500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0090】
前記分散剤の含有量は、着色剤100質量部に対して1質量部〜200質量部であることが好ましく、5質量部〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0091】
<<ワックス>>
本発明で用いるトナー組成液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有していてもよい。
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0092】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、更に長鎖のアルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0093】
また、前記ワックスの好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒などの触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸などのビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0094】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0095】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取る観点から、70℃〜140℃が好ましく、70℃〜120℃がより好ましい。前記融点が、70℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0096】
なお、本発明においては、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0097】
前記DSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0098】
また、上記ワックスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるもの、極性基を有する構造のものなどが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、例えば、直鎖構造のもの、官能基を有さない無極性のものなどが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせなどが挙げられる。
【0099】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10℃〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。前記融点の差が、10℃未満であると、機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超えると、相互作用による機能の協調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70℃〜120℃であることが好ましく、70℃〜100℃であることがより好ましい。
【0100】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フ
イシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせなどが挙げられる。
【0101】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70℃〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70℃〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0102】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。
【0103】
<<流動性向上剤>>
本発明のトナーは、更に流動性向上剤を含んでいてもよい。該流動性向上剤は、噴射乾燥して得られたトナー粒子表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0104】
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック;フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ;微粉未酸化チタン;微粉未アルミナ;それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナなどが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0105】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0106】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)などが挙げられる。
【0107】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が、30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的乃至物理的に処理することによって行うことができる。これらの中でも、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が好ましい。
【0108】
前記有機ケイ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2個〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0個〜1個含有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。更に、その他の例としては、メチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
前記流動性向上剤の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均一次粒径として、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
【0110】
前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
【0111】
前記流動性向上剤をBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30m2/g以上が好ましく、60m2/g〜400m2/gがより好ましい。前記流動性向上剤が表面処理された微粉体である場合には、20m2/g以上が好ましく、40m2/g〜300m2/gがより好ましい。
【0112】
前記流動性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー粒子100質量部に対して0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0113】
<<クリーニング性向上剤>>
静電潜像担持体、一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子としては、比較的粒径分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径として、0.01μm〜1μmが好ましい。
【0114】
<<その他の添加剤>>
本発明に係るトナーには、更に必要に応じてその他の添加剤として、静電潜像担持体及びキャリアの保護、熱特性、電気特性、物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん;フッ素系界面活性剤;フタル酸ジオクチル;酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等の導電性付与剤;酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを含んでもよい。前記無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0115】
前記添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0116】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を外添剤として添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。前記外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次外添剤を加えてもよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合機としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
【0117】
得られたトナーの形状を更に調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法などが挙げられる。
【0118】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
【0119】
前記外添剤としては、前記無機微粒子の他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0120】
前記外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい。
【0121】
前記外添剤の一次粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
また、前記外添剤のBET法による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m2/g〜500m2/gが好ましい。
前記外添剤の含有量としては、トナーに対して、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【実施例】
【0122】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0123】
(実施例1)
<着色剤分散液の調製>
着色剤としてのカーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(REGAL400、Cabot社製)17質量部及び着色剤分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。前記着色剤分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ株式会社製)を使用した。
得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いてせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0124】
<ワックス分散液の調製>
カルナバワックス18質量部、及びワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温し、カルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ、最大径が3μm以下になるようにワックス粒子を析出させた。前記ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。
得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いてせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下になるように調製した。
【0125】
<トナー組成液の調製>
結着樹脂、着色剤分散液及びワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、及び前記ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌し、均一に分散させた。なお、溶媒希釈によるショックで着色剤やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0126】
<トナー製造装置>
液滴吐出手段と搬送固化手段を備えた図10に示される構成のトナー製造装置に、図16の構成の搬送気流路を用いてトナーの製造を行った。
以下に液滴吐出手段、搬送固化手段及び搬送気流路のサイズ、条件などを記載する。
【0127】
<<液滴吐出手段>>
図1において、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを使用した。また、吐出孔が開口された面が平面である液柱共鳴タイプの液滴吐出手段を使用した。
駆動信号発生源としては、ファンクションジェネレーター(WF1973、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製)を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。この時の駆動周波数は、液共鳴周波数に合わせて340kHzとなる。
【0128】
<<搬送固化手段>>
気流発生手段としてはルーツブロワを使用し、トナー捕集手段としてはサイクロン捕集機を使用した。チャンバー下端部にサイクロン捕集機を接続し、吸引捕集した。捕集時の搬送気流としては40℃の窒素を使用した。
前記チャンバーは、内径(直径)400mm、高さ2,000mmの円筒形で垂直に固定され、上端部と下端部は絞られていて、上端部は液滴吐出手段を壁面に備えた搬送気流路(第一の気流路)と接続されており、上端部形状は、接続部断面が矩形に絞られているものを使用した。
【0129】
前記気流路の壁面形状は、液滴吐出手段の吐出孔が開口された平面に対して凸凹のない形状とし、断面形状が矩形となるように壁面を設けた。
以下、液滴吐出手段が配置された壁面をX面、対向する壁面をY面とし、X面とY面との距離を気流路高さHとして記載する。
液滴吐出空間を形成し、液滴吐出方向に対して直交する方向に液滴が搬送されるように搬送気流を導く第一の気流路と、該第一の気流路と下流側の末端にて接続して配置され、第一の気流路の気流方向に対して、液滴吐出手段側(液滴吐出方向とは逆方向の成分を有する方向)に搬送気流を導くように第二の気流路を設け、搬送気流路形状を以下の形状とした。
また、第一の気流路(液滴吐出空間)末端からチャンバー上端部までの気流路長さを250mm、図示しない奥行き方向の搬送気流路幅を200mmとした。
−搬送気流路形状を表すパラメータ値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:90°
【0130】
前述のトナー製造装置を用いて前記トナー組成液を吐出させ、搬送気流路及びチャンバー内で乾燥固化したトナー粒子をサイクロン捕集機で捕集した。なお、このときの製造条件としては、入力信号は印加電圧サイン波ピーク値12.0V、周波数340kHzとし、搬送気流速度は15m/sとした。
液滴の吐出直後の様子をレーザーシャドウグラフィ法により撮影し、撮影した画像から液滴径と吐出速度を算出した結果、液滴径は、11.8μm、吐出速度は、20m/sであった。
トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、トナー1を得た。
【0131】
<評価>
得られたトナー1の粒径分布をフロー式粒子像分析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて下記に示す測定方法にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は6.2μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.15であった。
なお、トナー1の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
<<トナーの粒径分布の測定方法>>
フィルターを通して微細なごみを取り除き、10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10mL中にノニオン系界面活性剤(コンタミノンN、和光純薬工業株式会社製)を数滴加え、更に、測定試料としてのトナーを5mg加え、超音波分散器(UH−50、株式会社エスエムテー製)で20kHz、50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行い、更に、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4,000個/10−3cm3〜8,000個/10−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒径分布を測定した。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させた。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着されている。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。
約1分間で、1,200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定した。結果(頻度%及び累積%)は、0.06μm〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができるが、実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行った。
【0132】
(実施例2)
実施例1において、第二の気流路の高さH2を、気流の上流から下流に向かって30mmから90mmまで滑らかに拡大するように変更し、第二の気流路の断面積を漸次拡大させた図17に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー2を得た。
得られたトナー2を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.8μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.09であった。
なお、トナー2の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0133】
(実施例3)
実施例1において、第二の気流路をS字形状となるように変更し、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく図18に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー3を得た。
−搬送気流路形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:45°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:45°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:45mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:15mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:45°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:45°
【0134】
得られたトナー3を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.11であった。
なお、トナー3の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0135】
(実施例4)
実施例1において、第二の気流路の高さH2を滑らかに拡大するように変更し、第二の気流路をS字かつ気流の上流から下流に向かって滑らかに拡大するS字拡大形状となるように変更し、第二の気流路の断面積を漸次拡大させ、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく図19に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー4を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm〜100mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:60°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:72.5mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:30mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:90°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:75°
【0136】
得られたトナー4を実施例1と同様にして、液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.06であった。
なお、トナー4の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0137】
(実施例5)
実施例4において、搬送気流路形状を以下のパラメーター値で表される形状とした以外は、実施例4と同様にして、トナー5を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:15mm
第二の気流路の高さ H2:15mm〜150mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:5mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:20mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:15°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:50mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:15mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:75°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:90°
【0138】
得られたトナー5を実施例1と同様にして、液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.06であった。
なお、トナー5の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0139】
(実施例6)
実施例4において、搬送気流路形状を以下のパラメーター値で表される形状とした以外は、実施例4と同様にして、トナー6を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:45mm
第二の気流路の高さ H2:45mm〜200mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:30mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:75mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:45°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:30°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:0mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:60mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:0°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:30°
【0140】
得られたトナー6を実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー6の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0141】
(実施例7)
実施例4において、搬送気流速度を15m/sから32m/sに変更した以外は、実施例4と同様にして、トナー7を得た。
得られたトナー7を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー7の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0142】
(実施例8)
実施例4において、搬送気流速度を15m/sから9m/sに変更した以外は、実施例4と同様にして、トナー8を得た。
得られたトナー8を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー8の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、搬送気流路に第二の気流路を設けず、即ち、搬送気流路をストレート形状に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー9を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:−
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:−
第二の気流路のX面中心角1 θX1:−
第二の気流路のY面中心角1 θY1:−
【0144】
得られたトナー9を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.31であった。
また、吐出方向に対して直交する搬送気流によって搬送された液滴は壁面に付着乃至結着しており、付着乃至結着のほとんどは、液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
また、フロー式粒子像分析装置で得られた粒子の画像には多くの結着粒子が見られた。
【0145】
(比較例2)
実施例1において、図20に示すように、第一の気流路の気流方向に対して、液滴吐出方向と同方向(液滴吐出手段側と逆側)に搬送気流を導くように湾曲させた第二の気流路を設け、以下の搬送気流路形状に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー10を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:45mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:15mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:90°
【0146】
得られたトナー10を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.33であった。
また、液滴が気流路中央近傍に導入されないため、壁面に付着乃至結着し、付着乃至結着のほとんどは、第二の気流路の液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
また、フロー式粒子像分析装置で得られた粒子の画像には多くの結着粒子が見られた。
【0147】
(実施例9)
下記形状の第一の気流路と第二の気流路とを有する、図21に示されたトナー製造装置を用い、印加電圧サイン波ピーク値を11.2Vに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー11を得た。
<第一の気流路形状>
第一の気流路は、液柱共鳴タイプ液滴吐出手段の吐出面が壁面に凹凸無く固定でき、気流路断面形状が長方形の気流路である。液滴吐出手段が配置された壁面側と対向する壁面側の距離を気流路高さHとすると、第一の気流路高さH1が30mm、図示しない奥行き方向気流路幅W1が80mm、液柱共鳴液室端部から第二の気流路入口までの距離Sが8mmである。
<第二の気流路形状>
第二の気流路は、第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面と対向する壁面側に120mm拡大しており、第二の気流路高さH2が150mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が80mm、第二の気流路入口からチャンバー上端部までの距離Tが500mmである。
なお、液滴の吐出直後の様子をレーザーシャドウグラフィ法により撮影し、撮影した画像から吐出速度を算出した結果、吐出速度は15m/sであった。
このトナーの粒径分布を実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は6.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4μmであり、Dv/Dnの平均は1.20であった。
【0148】
(実施例10)
実施例9において、図22に示したように、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に120mm滑らかに拡大し、第二の気流路高さH2が150mmであるトナー製造装置を用いたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー12を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.2μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.17であった。
【0149】
(実施例11)
実施例10において、図23に示したように、第二の気流路の奥行き方向壁面の、第一の気流路との接続部から200mmまでの壁面材質を多孔質材に変更して補助気流導入口とし、補助気流発生手段を備えたトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとした以外は、実施例10と同様の条件と操作で、トナー13を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.0μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.13であった。
【0150】
(実施例12)
実施例9において、図24に示したように、液滴吐出手段が配置された壁面側に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に120mm滑らかに拡大したトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー14を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.11であった。
【0151】
(実施例13)
実施例9において、図25に示したように、液滴吐出手段が配置された壁面側に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に30mm急拡大し、液滴吐出手段が配置された壁面と対向する壁面側に100mm滑らかに拡大しており、第二の気流路高さH2が160mmであるトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー15を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.08であった。
【0152】
(実施例14)
実施例9において、図26に示したように、第二の気流路壁面に環状スリット状に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において全周方向に急拡大し、第二の気流路高さH2が200mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が200mmの円形断面の円筒形状であるトナー製造装置を用い、補助気流速度を2m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー16を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.06であった。
【0153】
(比較例3)
実施例9において、第二の気流路高さH2が30mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が80mmの気流路断面形状が長方形である気流路とし、即ち、第二の気流路の断面積が拡大しない、ストレート形状であるトナー製造装置を用いたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー17を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、Dv/Dnの平均は1.31であった。
吐出方向に対して直交する搬送気流によって搬送された液滴が第二の気流路壁面に付着・結着し、粒度分布が広くなっている。付着の殆どは、液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
【0154】
上記実施例1〜14及び比較例1〜3の評価結果を以下の表1にまとめた。
【0155】
【表1】
【0156】
表1より、比較例1〜3(トナー9、10及び17)では、液滴の気流路壁面への付着が見られ、多くの結着粒子が見られ、実施例1〜14(トナー1〜8及び11〜16)に比べて粒径分布が広くなっていることが分かる。前記結着粒子は、液滴が気流路の壁面へ付着し乾燥される過程でトナー粒子同士が結着して形成され、これが壁面から剥離し捕集されたものと考えられ、前記結着粒子により製造の長期安定性の低下(粒径分布の悪化)が起きたと考えられる。
一方、実施例1〜14では、液滴の気流路壁面への付着及び結着が見られず、粒径分布が極めて狭いトナーが得られている。
したがって、液滴吐出手段から連続的に吐出された液滴の吐出方向に対して直交する方向に液滴が搬送されるように気流を導く第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有する微粒子の製造装置は、安価で簡便な構造でありながら、微粒子が壁面に付着し、微粒子同士が結着することを抑えることができ、狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造できることが示された。
【符号の説明】
【0157】
1:トナー製造装置
2:液滴吐出手段
9:弾性板
10:液柱共鳴液滴吐出ユニット
11:(液柱共鳴タイプの)液滴吐出手段
13:原料収容器
14:トナー組成液
15:液循環ポンプ
16:液供給管
17:液共通供給路
18:液柱共鳴流路
19:吐出孔
20:振動発生手段
21:液滴
22:液戻り管
23:合着液滴
60:搬送固化手段
61:チャンバ
62:トナー捕集手段
63:トナー貯留部
64:搬送気流導入口
65:搬送気流排出口
66:搬送気流路
67:第一の気流路(液滴吐出空間)
68:気流発生手段
69:第二の気流路
101:搬送気流
201:補助気流
202:補助気流導入口
203:補助気流発生手段
P1:液圧力計
P2:チャンバ内圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0158】
【特許文献1】特許第3786034号公報
【特許文献2】特許第3786035号公報
【特許文献3】特開昭57−201248号公報
【特許文献4】特許第4607029号公報
【特許文献5】特開2011−008229号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射造粒法における微粒子製造装置及び微粒子の製造方法、並びに、該微粒子の製造方法又は該微粒子製造装置を用いて製造される、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子製造装置及び微粒子の製造方法に関する従来技術として、トナー製造装置及びトナーの製造方法を例に説明する。
従来、電子写真記録方法に基づく複写機、プリンター、ファックス、及びそれらの複合機に使用される静電荷像現像用トナーの製造方法としては粉砕法のみであったが、近年では重合法と呼ばれる、水系媒体中でトナー粒子形成する工法が広く行なわれ、粉砕法を凌駕する勢いである。前記重合法により製造されたトナーは、「重合トナー」又は「ケミカルトナー」と呼ばれている。
前記重合法は、トナー粒子形成時、或いはその過程においてトナー原材料の重合反応を伴うことから、このように称される。重合の方法としては、各種重合方法が実用化されており、懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)、エステル伸長反応などが挙げられる。
【0003】
前記重合法により得られたトナーは、総じて、粉砕法で得られたトナーに比べ、小粒径のものが得やすい、粒径分布が狭い、形状が球形に近いなどの特徴を有している。そのため、重合法により得られたトナーを用いることで、電子写真方式において高画質な画像を得やすいという利点がある。しかしながら、重合過程に長時間を必要とし、更に固化させた後に溶媒とトナー粒子とを分離し、その後洗浄及び乾燥を繰り返す必要が有り、多くの時間、水、及びエネルギーを要するという欠点がある。
【0004】
そのため、トナーの原材料成分を有機溶媒に溶解又は分散した液体(以下、トナー組成液と称することもある)を、様々なアトマイザを用いて微粒子化した後に乾燥させて粉体状のトナーを得る噴射造粒法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの提案によれば、水を用いる必要がなく、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができるため、重合法の欠点を回避することができる。
しかしながら、前記提案で示されたトナーの製造方法においては、トナー組成液を噴霧して形成された液滴が、乾燥する前に液滴同士で合着し、その状態のまま溶媒が乾燥してトナーが得られることがあり、結果として得られるトナーの粒径分布の広がりが避けられず、粒径分布としては十分でないという問題があった。
【0005】
このような問題に対しては、金属板に一定の周波数の振動を付与することにより前記金属板に設けた吐出孔から液滴を吐出させるトナーの製造方法が提案されている(特許文献4参照)。この提案によれば、多量の洗浄液、溶媒と粒子の分離の繰り返しが不要で、非常に製造効率が高く、かつ省エネルギーで、粒径分布の狭いトナーを製造できる。
しかしながら、前記提案では、レイリー分裂を利用しており、吐出孔の内径の2倍程度となる粒径の液滴を形成するため、小粒径のトナーを製造するためには、吐出孔の内径を小さくする必要があり、更には貯留部において液が一方向的に加圧され、トナーの組成によって吐出孔内部にトナー成分が詰まってしまうという問題があった。
【0006】
また、液滴放出方向の一次搬送気流と、一次搬送気流に対して120°未満の角度を持った二次搬送気流を設けることで液滴の合着を防止し、粒径分布の狭いトナーを製造できるトナーの製造方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、液滴の吐出方向に一次搬送気流を形成する方法は、構造が複雑にならざるを得ず、設備が高価になるばかりでなく、吐出部のクリーニングのために複雑な形状の洗浄装置や複雑な形状を分解する装置が必要となるなど、メンテナンス性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、噴射造粒法において、安価で簡便な構造によってメンテナンス性を確保しつつ、噴射後の液滴同士の合着を防止し、もって従来工法では得られなかった狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造することができる微粒子製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段により吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを少なくとも有し、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする微粒子製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、噴射造粒法において、安価で簡便な構造によってメンテナンス性を確保しつつ、噴射後の液滴同士の合着を防止し、従来工法では得られなかった極めて狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造することができる微粒子製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、液滴吐出手段の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、液柱共鳴液滴ユニットの構成の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、液滴吐出手段におけるN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図4】図4は、液滴吐出手段におけるN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図5】図5は、液滴吐出手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図6】図6は、液滴吐出手段での実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図7】図7は、駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。
【図8】図8は、各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図9】図9は、各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。
【図10】図10は、トナー製造装置の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、合着防止できた場合のトナー粒径分布の一例を示したグラフである。
【図12】図12は、合着防止できなかった場合のトナー粒径分布の一例を示したグラフである。
【図13】図13は、液滴合着の機構図である。
【図14】図14は、液滴同士が合着した合着粒子の写真と粒径である。
【図15】図15は、粒子同士が結着した結着粒子の写真である。
【図16】図16は、実施例1のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図17】図17は、実施例2のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図18】図18は、実施例3のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図19】図19は、実施例4のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図20】図20は、比較例2のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図21】図21は、実施例9のトナー製造装置の説明に供する概略断面図である。
【図22】図22は、実施例10のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図23】図23は、実施例11のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図24】図24は、実施例12のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図25】図25は、実施例13のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【図26】図26は、実施例14のトナー製造装置の説明に供する搬送気流路断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(微粒子製造装置及び微粒子の製造方法)
本発明の微粒子製造装置は、液滴吐出手段と搬送固化手段とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
また、本発明の微粒子の製造方法は、液滴吐出工程と搬送固化工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の手段を含む。
以下では、前記微粒子製造装置及び微粒子の製造方法について、その一形態としてトナーに適用したトナー製造装置を例に説明する。
なお、トナー製造装置は、前記微粒子製造装置において、微粒子原料含有液としてトナー組成液を用いたものである。前記トナー組成液は、後述するトナー材料を含む液体であり、例えば、少なくとも樹脂及び着色剤を揮発可能な溶媒に溶解又は分散させた溶解乃至分散液である。
【0012】
<液滴吐出工程及び手段>
前記液滴吐出工程は、少なくとも1つの吐出孔を有する液滴吐出手段からトナー組成液を液滴として吐出させる工程である。
また、前記液滴吐出手段は、少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴として吐出する手段である。
前記液滴吐出手段としては、前記トナー組成液を液滴化できる限り、特に制限はなく、公知の液滴吐出手段を用いることができるが、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された吐出孔から液体を吐出する液柱共鳴タイプの液滴吐出手段が好ましい。
以下、液柱共鳴タイプの液滴吐出手段について図1及び2を用いて解説する。
【0013】
図1は、液滴吐出手段11の構造を示す断面図であり、図2は、液柱共鳴液滴ユニットの構成の一例を示す断面図である。図1に示す前記液滴吐出手段11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有し、前記液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、前記液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出孔19と、該吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0014】
揮発可能な溶媒に、少なくとも樹脂及び着色剤を溶解又は分散させた溶解乃至分散液(以下、単に「トナー組成液」と記すこともある)14は図示されない液循環ポンプにより液供給管を通って、図2に示す液柱共鳴液滴吐出ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図1に示す液滴吐出手段11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19から液滴21が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路17を通過したトナー組成液14は図示されない液戻り管を流れて原料収容器に戻される。液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻る。
【0015】
前記液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図2に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出ユニット10に対して複数配置されていることが好ましい。1つの液滴吐出ユニットに対する液柱共鳴液室の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性と生産性が両立できる点で、100個〜2,000個がより好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17は複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0016】
また、前記液滴吐出手段11における振動発生手段20としては、所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板9に貼りあわせた形態が好ましい。前記弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。前記圧電体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられる。前記圧電セラミックスは、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子;水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが好ましい。また、1つの材質のブロック状の振動部材(圧電体)を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が好ましい。
【0017】
更に、吐出孔19の開口部の直径としては、液滴が吐出できる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜40μmが好ましい。前記直径が、1μm未満であると、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合があり、またトナーの構成成分として着色剤などの固形微粒子が含有された構成の場合、吐出孔19において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下するおそれがある。前記直径が、40μmを超えると、液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて、所望のトナー粒子径3μm〜6μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。また、図2からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することは、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなる点で好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが好ましい。
【0018】
次に、液柱共鳴における液滴吐出ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図1の液柱共鳴タイプの液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式1)
の関係にある。
【0019】
また、図1の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、N:偶数)
【0020】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも前記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、前記式2のNが奇数で表現される。
【0021】
最も効率の高い駆動周波数fは、前記式1と前記式2より、
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:自然数)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0022】
図3にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図4にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図3及び図4のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図3の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度が極大となる端であり、逆に圧力はゼロとなる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図3及び図4のような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、前記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmを用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、前記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、前記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、前記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0023】
図1に示す液滴吐出手段11における液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図3の(b)及び図4の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0024】
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0025】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:自然数)
【0026】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部と該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離Leの比(Le/L)が、下記式6を満たすことが好ましい。
Le/L>0.6 ・・・(式6)
【0027】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図1の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2個〜100個の間であることが好ましい。
100個を超えると、100個の吐出孔19から所望の液滴を形成させるために振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要が生じ、振動発生手段20としての圧電体の挙動が不安定となることがある。
【0028】
複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣あう吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながることがある。
前記ピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒径のトナーを得ることができる点で好ましい。
【0029】
次に、液滴吐出ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象について図5を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、同図において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0030】
図5の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。
また、図5の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図5の(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0031】
そして、図5の(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図5の(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図5の(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0032】
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。この一例は、図1において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を図6に示す。同図からわかるように、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図7は駆動周波数290kHz〜395kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。同図からわかるように、第一から第四の吐出孔において駆動周波数が340kHz付近では各吐出孔からの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図7の特性結果から、第一モードである130kHzにおいての液滴吐出速度ピークと、第二モードである340kHzにおいての液滴吐出速度ピークとの間では液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0033】
また、図8は各吐出孔(ノズル)における印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図であり、図9は各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。両図からわかるように、印加電圧に対して吐出速度も液滴直径も単調増加の傾向にあった。よって、吐出速度及び液滴直径は印加電圧に依存するため、印加電圧を調整することにより、所望の吐出速度、あるいは所望のトナー粒子の径に応じた液滴直径を調整することができる。
【0034】
<搬送固化工程及び搬送固化手段>
前記搬送固化工程は、前記液滴吐出工程において吐出させた液滴を搬送固化手段により搬送固化させる工程である。
前記搬送固化手段は、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを有し、必要に応じてその他の手段を有する。
したがって、先に説明した液滴吐出手段11によって、トナー組成液を気流中に吐出させ、吐出したトナー組成液の液滴を前記搬送固化手段により乾燥固化させた後に捕集することで、本発明のトナーを得ることができる。
なお、ここで固化とは、前記液滴が乾燥し、後述する液滴同士の合着や接着が生じない状態になることをいう。
以下、搬送固化手段について、図10を用いて説明する。
【0035】
図10は、本発明のトナーの製造方法を実施する装置一例の断面図である。トナー製造装置1は、液滴吐出手段2及び搬送固化手段60を含み、必要に応じて更にその他の手段を含む。
前記液滴吐出手段2には、トナー組成液14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を液供給管16を通して液滴吐出手段2に供給し、更に液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とが連結されており、トナー組成液14を随時液滴吐出手段2に供給できる。液供給管16にはP1、搬送固化手段60にはP2の圧力測定器が設けられており、液滴吐出手段2への送液圧力及び、搬送固化手段60内の圧力は圧力計P1、P2によって管理される。このときに、P1>P2の関係であると、トナー組成液1が孔12から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2であることが好ましい。
【0036】
図10に示す搬送固化手段60は、気流発生手段68、搬送気流路(以下、単に「気流路」とも称する)66、液滴吐出手段2、チャンバー61、トナー捕集手段62及びトナー貯留部63を含み、更に必要に応じてその他の手段を含む。
以下、気流路に流した気流を利用して液滴を搬送固化する搬送固化手段について解説する。
前記液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、搬送気流路66内の液滴吐出空間に吐出され、搬送気流路66内に流れる、前記気流発生手段により発生させた搬送気流101によって乾燥固化され、チャンバー61、トナー捕集手段62に搬送される。
【0037】
搬送気流101によって、液滴吐出手段2から吐出された直後の液体の状態から、徐々にトナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行する。これにより、液滴21は液体から固体に変化する。このように固体に変化した状態では、トナー捕集手段62でトナー粉体として捕集することができる。捕集したトナー粉体はその後、トナー貯留部63に格納される。なお、トナー貯留部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
【0038】
このようにして捕集したトナーの粒径分布は、図11のようになる。これは捕集したトナーの一例であるが、ほとんど単一粒径のトナー粒子しか存在しないことがわかる。このような極めて狭い粒径分布は、前述のように吐出された液滴が合着することなく、乾燥された場合に得られる。
【0039】
一方で液敵同士が合着した場合に捕集したトナーの粒径分布を図12に示す。図12は、気流発生手段を用いず、気流を発生させなかった以外は、図11と同じ条件で捕集されたトナーの粒径分布である。液滴の合着は主に、前に吐出された液滴が乾燥する前に、空気の粘性抵抗によって減速し、後に吐出された液滴に追い付いて液滴同士が接触することで発生する。図13に示すように、吐出孔から吐出した液滴同士が合着して合着液滴23となると、乾燥後の粒径も大きくなり粒径分布を広くする原因になる。
また、合着した液滴は空気抵抗が増し、更に別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もある。これが乾燥すると合着粒子となり、得られる粒子の粒径分布は更に広くなる。図12中の基本粒径と示したピークを構成する乾燥粒子は合着しなかった液滴がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子は液滴が吐出後に合着した後に乾燥固化してえられたものである。同様に3倍、4倍、又はそれ以上の合着が進行していることが粒径分布測定結果から推測することができる。前記粒径分布測定は、例えば、フロー式粒子像解析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて行うことができる。図14にFPIA-3000で撮影された合着した粒子の写真を示す。
【0040】
図15では基本粒子が結着した状態を示している。基本粒子同士の結着も機械的強度を与えても粒子間の結着がほぐれないため大きな粒子と振舞うことになり、好ましくない。このように結着した粒子(結着粒子)は、ある程度粒子が乾燥した後に粒子同士が結合した結果得られると考えられる。このような粒子の発生はある程度乾燥が進行した粒子が配管壁面へ付着し、やがて別の乾燥の進んでいない粒子が壁面に付着した粒子と結着した後に乾燥が進行し、配管から剥がれて回収されると考えられる。このような粒子の発生防止は、乾燥を早く確実に実施することや、本発明における搬送固化手段を用いることにより、気流制御によって配管内への粒子付着を抑えることで達成できる。
【0041】
前記粒径分布は、体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーのDv/Dnは、1.15〜1.25程度である。また重合トナーのDv/Dnは、1.10〜1.15程度である。本発明のトナーのDv/Dnは、1.20以下とすることで印刷品質に効果が確認されているが、安定的に高精細な画質を得る観点から、1.15以下が好ましく、より高精細な画像を得る観点から、1.10以下がより好ましい。
【0042】
本発明における搬送固化手段は、液滴同士の合着を防止するために、液滴吐出手段2を壁面に備えた搬送気流路66がチャンバー61の上端部に接続されている。前記気流路66は、下流側端部の一側面に液滴吐出手段2が配置されて(液滴吐出空間を形成し)、前記液滴吐出手段2から吐出される液滴21に対して、その吐出方向と略直交する方向に前記液滴21が搬送されるように気流101を導く第一の気流路67と、前記第一の気流路67の下流端に連なる第二の気流路69とを少なくとも有している。そして、本発明は、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする。
前記搬送気流路66に気流を発生させるための気流発生手段68としては、搬送気流導入口64に送風機などを設けて加圧する方法と、搬送気流排出口65より吸引する方法のいずれを採用することもできる。
前記搬送固化手段を用いることにより、前記搬送固化工程において、前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴を、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に搬送し、更に前記第二の気流路により、前記液滴を壁面に近接させないように搬送することができ、本発明の効果を得ることができる。
【0043】
前記第一の気流路と前記第二の気流路との接続方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、気流の速度及び流量を一定に保つ観点から、密閉して接続されていることが好ましく、また、乱流を発生させず、液滴の気流路壁面への付着を防止する観点から、連続的に接続されていることが好ましい。なお、前記第一の気流路と前記第二の気流路との接続には、接続部材を用いてもよい。
【0044】
ここで、前記液滴吐出手段が配置される前記気流路の壁面とは、例えば、前記気流路が円柱状の場合には、その内側(内径)面を表し、前記気流路が角柱状の場合には、その内側の各面を表す。
また、前記液滴吐出手段の配置する向きは、気流路内に液滴が吐出される向きであり、前記液滴吐出手段の前記吐出孔は、壁面に露出している。このように配置されることで、前記気流路が前記液滴が吐出される空間を形成する。
前記液滴の吐出方向に対して略直交する方向とは、液滴吐出方向となす角度が、70°〜110°であることを指す。
【0045】
本発明のトナー製造装置においては、前記液滴吐出手段と前記搬送固化手段とが上述のように配置されるため、以下に示すようにメンテナンス性を確保することができる。
液滴吐出手段を有するトナー製造装置のメンテナンスを行う場合、前記液滴吐出手段の吐出孔の詰まり(固着物)を除去するために、洗浄剤を用いるのが好ましいが、固着物と洗浄剤の製品への混入を防ぐため、搬送気流を止めて洗浄する必要があり、また、前記液滴吐出手段を洗浄、排出用の洗浄室に移動して洗浄する必要がある。液滴の吐出方向に一次搬送気流を形成する従来のトナー製造装置は、構造が複雑にならざるを得ず、吐出部のクリーニングのために複雑な形状の洗浄装置や複雑な形状を分解する装置が必要となる。
一方、本発明のトナー製造装置においては、液滴吐出手段が第一の気流路の一側面に配置されるという単純な構造であるため、液滴吐出手段が容易に取り出し可能な形状とすることができる。更に、生産性を確保するために、搬送気流を個別に停止可能な、液滴吐出手段を壁面に備えた搬送固化手段を複数有する構造とすることが容易にできる。なお、このときの搬送固化手段の個数としては、必要な生産量に応じて適宜選択できる。
【0046】
前記気流発生手段によって発生させる気流を構成する気体の種類としては、特に制限はなく、空気であっても、窒素等の不燃性気体であってもよい。前述のように、液滴が乾燥することで合着及び結着しなくなる性質があるために、液滴の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。このことから、トナー組成液に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが好ましい。
また、前記気流の温度としては、特に制限はなく、適宜調整可能であるが、生産時において変動のないことが好ましい。
また、チャンバー内に気流の状態、流れを変えるような手段をとってもよく、そのような手段によってチャンバーへの液滴の付着を防止することで、歩留まりが向上し、生産性が向上する。
【0047】
前記第一の気流路では、気流路内(液滴吐出空間)に吐出された液滴の進行方向が気流によって曲げられ、吐出方向に対して直角方向に進行方向を徐々に変える。更に液滴は、気流により搬送速度が増加し、液滴間距離が増加するため、液滴同士が接触し合着する確率が減少する。
液滴吐出方向と直交する前記搬送気流の速度としては、液滴同士の合着を防ぎ、液滴の進行方向を変化させるのに十分な速度を有する必要があり、7m/s〜100m/sが好ましく、15m/s〜60m/sがより好ましい。前記速度が、7m/s未満であると、液滴の進行方向を変化させる前に前後の液滴が合着し合着液滴となるため、乾燥した粒子の粒径分布が広くなることがあり、100m/sを超えると、液滴の分裂が発生し、粒径分布が悪化する可能性がある。一方、前記速度が、前記範囲内であると、液滴が合着する前に液滴の進行方向が変化し、合着確率が低下するため粒径分布が狭い粒子を得ることができる。
【0048】
前記第二の気流路の構造としては、少なくとも上流部において、第一の気流路よりも断面積が拡大された構造であることが好ましく、少なくとも上流部において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造であることがより好ましい。
このような形状を有する第二の気流路では、前記液滴吐出手段から吐出される液滴の吐出方向に対して直角方向に進行方向が変化した液滴に対して、液滴が前記気流路の壁面付近から離され、その結果、液滴が気流路の壁面と接触し、付着又は結着することを防ぐことができる。
【0049】
前記断面積が拡大する方向としては、液滴と気流路の壁面との付着又は結着を防止できる限り、特に制限はなく、前記液滴吐出手段側に拡大してもよいし、前記液滴吐出手段と対向する側に拡大してもよい。
第二の気流路の断面積は、不連続に拡大してもよく、漸次拡大してもよいが、乱流が発生しない点で、漸次拡大することが好ましい。なお、前記不連続とは、例えば、階段状であることを指す。
【0050】
また、必要に応じて、前記第二の気流路の壁面を多孔質体とし圧縮気体を導入すること、又は、前記第二の気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を用いることにより、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げてもよい。
【0051】
前記第二の気流路のその他の形状としては、第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、前記液滴吐出手段が設置された側に湾曲した第一の湾曲部位を有する構造であることが好ましく、更に、前記液滴吐出手段が設置された側とは反対側に湾曲した第二の湾曲部位を第一の湾曲部位の下流側に有する構造であることがより好ましい。
【0052】
このような形状を有する第二の気流路では、前記液滴吐出手段から吐出される液滴の吐出方向に対して直角方向に進行方向が変化した液滴に対して、気流の方向が前記液滴吐出手段側(言い換えれば、液滴吐出方向とは逆方向の成分を有する方向)に転向されることで、液滴と搬送気流の慣性力の差から、液滴が前記気流路の壁面付近から離され、その結果、液滴が気流路の壁面と接触し、付着又は結着することを防ぐことができる。
前記気流の気流方向を前記液滴吐出手段側に転向する方法としては、特に制限はないが、簡便である点で、上述のように第二の気流路を前記液滴吐出手段側に湾曲させることで転向させることが好ましいが、液滴の速度、密度と液滴径に応じて、更に気流発生手段を設け、第二の気流路に補助気流を流すことによって転向の補助をさせてもよい。
また、気流路の曲げ方としては、特に限定はなく、円弧曲線であっても緩和曲線であってもよい。
【0053】
第二の気流路は、前述のように第二の気流路が前記液滴吐出手段側に曲げられている形状であることが好ましく、更に、液滴21が搬送気流路66の壁面付近から離された後、液滴が気流路の壁面と再接近し付着又は結着することを防ぐ形状であることがより好ましい。
前記液滴と気流路の壁面との再接近、付着又は結着を防止するためには、第二の気流路の構造が、前記湾曲部位において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造であることが好ましい。第二の気流路の断面積は、不連続に拡大してもよく、漸次拡大してもよいが、乱流が発生しない点で、漸次拡大することが好ましい。なお、前記不連続とは、例えば、階段状であることを指す。
【0054】
また、更に好ましい形状は、第二の気流路の断面積が、気流の下流側に向かうにつれて、漸次拡大する形状とすることで、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げること、及び/又は第二の気流路が、第一の気流路における気流の方向に対し、前記液滴吐出手段側に前記気流を導き、更に気流の下流側に向かうにつれて第一の気流路における気流の方向に漸次近づくように前記気流を導く(つまり、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく形状とする)ことで前記液滴の進行方向を調整し、液滴と気流路の壁面との距離を保つことによって達成できる。
また、必要に応じて、前記第二の気流路の壁面を多孔質体とし圧縮気体を導入すること、又は、前記第二の気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を用いることにより、液滴と搬送気流路の壁面との距離を広げてもよい。
【0055】
本発明に用いられる第二の気流路の上記好ましい形状は、具体的には図16〜図19及び図21〜図26に示され、例えば、下記パラメーター値により表すことができる。
前記液滴吐出手段2が配置された壁面をX面、対向する壁面をY面とし、X面とY面との距離を気流路高さHとし、第一の気流路の高さをH1、第二の気流路の高さをH2、第二の気流路のX面曲率半径1をRX1、第二の気流路のY面曲率半径1をRY1、第二の気流路のX面中心角1をθX1、第二の気流路のY面中心角1をθY1、第二の気流路のX面曲率半径2をRX2、第二の気流路のY面曲率半径2をRY2、第二の気流路のX面中心角2をθX2、第二の気流路のY面中心角2をθY2として数値化することができる。
それぞれのパラメーター値は、本発明の効果を有する限り特に制限はなく、液滴の大きさ、気流の速度、気流路の断面積などに応じて適宜設定することができる。
【0056】
気流路の長さとしては、前述のように液滴が乾燥することで合着及び結着しなくなる性質があるために、液滴が乾燥し、接触しても合着及び結着しなくなる長さであることが好ましく、液滴と気流の条件によって決定される。
【0057】
前記第一の気流路(液滴吐出空間)の壁面形状としては、気流が整流された流れとなればどのような形状であってもよいが、気流の乱れを防止できる観点から、液滴吐出手段の吐出孔が開口された面の形状に沿った凸凹がない形状が好ましい。
【0058】
また、液滴を連続して吐出する際の液適の初速度V0は、吐出直後の液滴径をd0、駆動周波数をfとしたとき、V0>2d0×fであることが好ましく、より好ましくはV0>3d0×fである。前記V0が、2d0×f以下であると、前後の液滴の間隔が小さくなり液滴の進行方向を変化させる前に合着してしまう。液滴直径及び吐出速度は、吐出孔の径、駆動周波数f及び印加電圧などで調整可能である。
【0059】
図10では、液滴21が水平方向に向かって吐出されるように液滴吐出手段2を配置しているが、必ずしもその必要はなく、吐出させる方向は適宜選択できる。
トナー捕集手段62としては、公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機、バックフィルター等を用いることができる。
【0060】
<乾燥>
図10で示された搬送固化手段によって得られたトナー粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合はこれを低減するために必要に応じて、二次乾燥が行われる。二次乾燥としては流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることができる。有機溶剤がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0061】
<微粒子原料含有液>
本発明の微粒子製造装置及び微粒子の製造方法において用いられる微粒子原料含有液は、微粒子の原料となる成分、つまり微粒子化成分が溶媒に溶解若しくは分散してなるもの、又は微粒子化成分が溶融したものである。
前記微粒子原料としては、溶媒に溶解乃至分散できる限り、特に制限はなく、微粒子を形成することができる公知の原料を用いることができる。
前記微粒子原料として、後述するトナー材料を用い、本発明の微粒子製造装置又は微粒子の製造方法によって本発明のトナーを製造することができる。
前記微粒子原料含有液の粘度としては、前記液滴吐出手段により吐出することができ、前記搬送固化手段により液滴が乾燥できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
(トナー)
次に、前記微粒子の一例として、本発明のトナーについて説明する。
本発明に係るトナーは、上述した本実施の形態に係るトナー製造装置のように、本発明の微粒子製造装置及び微粒子の製造方法をトナーに適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒径分布が単分散なものが得られる。
【0063】
具体的には、前記トナーの粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.20が好ましく、1.00〜1.15がより好ましく、1.00〜1.10が更に好ましい。また、体積平均粒径としては、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。
前記粒径分布及び体積平均粒径の測定は、例えば、フロー式粒子像分析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて行うことができる。
【0064】
次に、本発明で使用できるトナー材料について説明する。
トナー材料としては、従来公知の電子写真用トナー材料が使用できる。即ち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。
【0065】
<トナー材料>
前記トナー材料としては、少なくとも結着樹脂、着色剤を含み、更に必要に応じて、ワックス、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、その他の添加剤などを含む。
【0066】
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0067】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が、50個数%〜90個数%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0068】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0069】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60個数%〜100個数%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0070】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0071】
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0072】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれかに、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するもの、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0073】
また、ポリエステル系重合体及びビニル重合体の少なくともいずれかとその他の結着樹脂とを併用する場合、結着樹脂全体の酸価が、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gである樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0074】
本発明において、トナー材料の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求めることができる。なお、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5g〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mLのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mLを加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とし、以下の式で算出する。ただし、fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0075】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35℃〜80℃であるのが好ましく、40℃〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0076】
本発明のトナーに使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、及び(3)これらの混合物などが用いられる。
【0077】
前記磁性体としては、例えば、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、Fe3O4、γ−Fe2O3の微粉末が好ましい。
【0078】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムなどが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0079】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0080】
前記磁性体の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。
前記磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0081】
また、前記磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性が、それぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0082】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0083】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0084】
本発明のトナーに用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性乃至未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0086】
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0087】
前記マスターバッチ用の樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が、30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、着色剤分散性も不十分となることがある。
また、前記マスターバッチ用の樹脂のアミン価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アミン価が1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、10mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。前記アミン価が、1mgKOH/g未満である、或いは100mgKOH/gを超えると、着色剤分散性が不十分となることがある。
なお、前記酸価は、JIS K0070に記載の方法により測定することができ、前記アミン価は、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0088】
また、分散剤は、着色剤分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)などが挙げられる。
【0089】
前記分散剤の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、着色剤分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましく、5,000〜30,000が最も好ましい。前記分子量が、500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0090】
前記分散剤の含有量は、着色剤100質量部に対して1質量部〜200質量部であることが好ましく、5質量部〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0091】
<<ワックス>>
本発明で用いるトナー組成液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有していてもよい。
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0092】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、更に長鎖のアルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0093】
また、前記ワックスの好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒などの触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸などのビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0094】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0095】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取る観点から、70℃〜140℃が好ましく、70℃〜120℃がより好ましい。前記融点が、70℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0096】
なお、本発明においては、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0097】
前記DSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0098】
また、上記ワックスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるもの、極性基を有する構造のものなどが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、例えば、直鎖構造のもの、官能基を有さない無極性のものなどが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせなどが挙げられる。
【0099】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10℃〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。前記融点の差が、10℃未満であると、機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超えると、相互作用による機能の協調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70℃〜120℃であることが好ましく、70℃〜100℃であることがより好ましい。
【0100】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フ
イシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせなどが挙げられる。
【0101】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70℃〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70℃〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0102】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。
【0103】
<<流動性向上剤>>
本発明のトナーは、更に流動性向上剤を含んでいてもよい。該流動性向上剤は、噴射乾燥して得られたトナー粒子表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0104】
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック;フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ;微粉未酸化チタン;微粉未アルミナ;それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナなどが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0105】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0106】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)などが挙げられる。
【0107】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が、30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的乃至物理的に処理することによって行うことができる。これらの中でも、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が好ましい。
【0108】
前記有機ケイ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2個〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0個〜1個含有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。更に、その他の例としては、メチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
前記流動性向上剤の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均一次粒径として、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
【0110】
前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
【0111】
前記流動性向上剤をBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30m2/g以上が好ましく、60m2/g〜400m2/gがより好ましい。前記流動性向上剤が表面処理された微粉体である場合には、20m2/g以上が好ましく、40m2/g〜300m2/gがより好ましい。
【0112】
前記流動性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー粒子100質量部に対して0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0113】
<<クリーニング性向上剤>>
静電潜像担持体、一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子としては、比較的粒径分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径として、0.01μm〜1μmが好ましい。
【0114】
<<その他の添加剤>>
本発明に係るトナーには、更に必要に応じてその他の添加剤として、静電潜像担持体及びキャリアの保護、熱特性、電気特性、物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん;フッ素系界面活性剤;フタル酸ジオクチル;酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等の導電性付与剤;酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを含んでもよい。前記無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0115】
前記添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0116】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を外添剤として添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。前記外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次外添剤を加えてもよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合機としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
【0117】
得られたトナーの形状を更に調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法などが挙げられる。
【0118】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
【0119】
前記外添剤としては、前記無機微粒子の他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0120】
前記外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい。
【0121】
前記外添剤の一次粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
また、前記外添剤のBET法による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m2/g〜500m2/gが好ましい。
前記外添剤の含有量としては、トナーに対して、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【実施例】
【0122】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0123】
(実施例1)
<着色剤分散液の調製>
着色剤としてのカーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(REGAL400、Cabot社製)17質量部及び着色剤分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。前記着色剤分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ株式会社製)を使用した。
得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いてせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0124】
<ワックス分散液の調製>
カルナバワックス18質量部、及びワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温し、カルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ、最大径が3μm以下になるようにワックス粒子を析出させた。前記ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。
得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いてせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下になるように調製した。
【0125】
<トナー組成液の調製>
結着樹脂、着色剤分散液及びワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、及び前記ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌し、均一に分散させた。なお、溶媒希釈によるショックで着色剤やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0126】
<トナー製造装置>
液滴吐出手段と搬送固化手段を備えた図10に示される構成のトナー製造装置に、図16の構成の搬送気流路を用いてトナーの製造を行った。
以下に液滴吐出手段、搬送固化手段及び搬送気流路のサイズ、条件などを記載する。
【0127】
<<液滴吐出手段>>
図1において、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを使用した。また、吐出孔が開口された面が平面である液柱共鳴タイプの液滴吐出手段を使用した。
駆動信号発生源としては、ファンクションジェネレーター(WF1973、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製)を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。この時の駆動周波数は、液共鳴周波数に合わせて340kHzとなる。
【0128】
<<搬送固化手段>>
気流発生手段としてはルーツブロワを使用し、トナー捕集手段としてはサイクロン捕集機を使用した。チャンバー下端部にサイクロン捕集機を接続し、吸引捕集した。捕集時の搬送気流としては40℃の窒素を使用した。
前記チャンバーは、内径(直径)400mm、高さ2,000mmの円筒形で垂直に固定され、上端部と下端部は絞られていて、上端部は液滴吐出手段を壁面に備えた搬送気流路(第一の気流路)と接続されており、上端部形状は、接続部断面が矩形に絞られているものを使用した。
【0129】
前記気流路の壁面形状は、液滴吐出手段の吐出孔が開口された平面に対して凸凹のない形状とし、断面形状が矩形となるように壁面を設けた。
以下、液滴吐出手段が配置された壁面をX面、対向する壁面をY面とし、X面とY面との距離を気流路高さHとして記載する。
液滴吐出空間を形成し、液滴吐出方向に対して直交する方向に液滴が搬送されるように搬送気流を導く第一の気流路と、該第一の気流路と下流側の末端にて接続して配置され、第一の気流路の気流方向に対して、液滴吐出手段側(液滴吐出方向とは逆方向の成分を有する方向)に搬送気流を導くように第二の気流路を設け、搬送気流路形状を以下の形状とした。
また、第一の気流路(液滴吐出空間)末端からチャンバー上端部までの気流路長さを250mm、図示しない奥行き方向の搬送気流路幅を200mmとした。
−搬送気流路形状を表すパラメータ値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:90°
【0130】
前述のトナー製造装置を用いて前記トナー組成液を吐出させ、搬送気流路及びチャンバー内で乾燥固化したトナー粒子をサイクロン捕集機で捕集した。なお、このときの製造条件としては、入力信号は印加電圧サイン波ピーク値12.0V、周波数340kHzとし、搬送気流速度は15m/sとした。
液滴の吐出直後の様子をレーザーシャドウグラフィ法により撮影し、撮影した画像から液滴径と吐出速度を算出した結果、液滴径は、11.8μm、吐出速度は、20m/sであった。
トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、トナー1を得た。
【0131】
<評価>
得られたトナー1の粒径分布をフロー式粒子像分析装置(FPIA−3000、シスメックス株式会社製)を用いて下記に示す測定方法にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は6.2μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.15であった。
なお、トナー1の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
<<トナーの粒径分布の測定方法>>
フィルターを通して微細なごみを取り除き、10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10mL中にノニオン系界面活性剤(コンタミノンN、和光純薬工業株式会社製)を数滴加え、更に、測定試料としてのトナーを5mg加え、超音波分散器(UH−50、株式会社エスエムテー製)で20kHz、50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行い、更に、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4,000個/10−3cm3〜8,000個/10−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒径分布を測定した。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させた。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着されている。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。
約1分間で、1,200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定した。結果(頻度%及び累積%)は、0.06μm〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができるが、実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行った。
【0132】
(実施例2)
実施例1において、第二の気流路の高さH2を、気流の上流から下流に向かって30mmから90mmまで滑らかに拡大するように変更し、第二の気流路の断面積を漸次拡大させた図17に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー2を得た。
得られたトナー2を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.8μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.09であった。
なお、トナー2の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0133】
(実施例3)
実施例1において、第二の気流路をS字形状となるように変更し、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく図18に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー3を得た。
−搬送気流路形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:45°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:45°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:45mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:15mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:45°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:45°
【0134】
得られたトナー3を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.11であった。
なお、トナー3の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0135】
(実施例4)
実施例1において、第二の気流路の高さH2を滑らかに拡大するように変更し、第二の気流路をS字かつ気流の上流から下流に向かって滑らかに拡大するS字拡大形状となるように変更し、第二の気流路の断面積を漸次拡大させ、第二の気流路内を流れる気流の液滴吐出方向とは逆方向の成分が、気流路下流側に向かうにつれて徐々に減少していく図19に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして、トナー4を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm〜100mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:15mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:45mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:60°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:72.5mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:30mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:90°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:75°
【0136】
得られたトナー4を実施例1と同様にして、液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.06であった。
なお、トナー4の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0137】
(実施例5)
実施例4において、搬送気流路形状を以下のパラメーター値で表される形状とした以外は、実施例4と同様にして、トナー5を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:15mm
第二の気流路の高さ H2:15mm〜150mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:5mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:20mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:15°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:50mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:15mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:75°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:90°
【0138】
得られたトナー5を実施例1と同様にして、液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.06であった。
なお、トナー5の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0139】
(実施例6)
実施例4において、搬送気流路形状を以下のパラメーター値で表される形状とした以外は、実施例4と同様にして、トナー6を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:45mm
第二の気流路の高さ H2:45mm〜200mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:30mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:75mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:45°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:30°
第二の気流路のX面曲率半径2 RX2:0mm
第二の気流路のY面曲率半径2 RY2:60mm
第二の気流路のX面中心角2 θX2:0°
第二の気流路のY面中心角2 θY2:30°
【0140】
得られたトナー6を実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー6の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0141】
(実施例7)
実施例4において、搬送気流速度を15m/sから32m/sに変更した以外は、実施例4と同様にして、トナー7を得た。
得られたトナー7を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー7の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0142】
(実施例8)
実施例4において、搬送気流速度を15m/sから9m/sに変更した以外は、実施例4と同様にして、トナー8を得た。
得られたトナー8を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.08であった。
なお、トナー8の製造後、気流路壁面への液滴の付着乃至粒子の結着は見られなかった。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、搬送気流路に第二の気流路を設けず、即ち、搬送気流路をストレート形状に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー9を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:−
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:−
第二の気流路のX面中心角1 θX1:−
第二の気流路のY面中心角1 θY1:−
【0144】
得られたトナー9を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.31であった。
また、吐出方向に対して直交する搬送気流によって搬送された液滴は壁面に付着乃至結着しており、付着乃至結着のほとんどは、液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
また、フロー式粒子像分析装置で得られた粒子の画像には多くの結着粒子が見られた。
【0145】
(比較例2)
実施例1において、図20に示すように、第一の気流路の気流方向に対して、液滴吐出方向と同方向(液滴吐出手段側と逆側)に搬送気流を導くように湾曲させた第二の気流路を設け、以下の搬送気流路形状に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー10を得た。
−搬送気流路の形状を表すパラメーター値−
第一の気流路の高さ H1:30mm
第二の気流路の高さ H2:30mm
第二の気流路のX面曲率半径1 RX1:45mm
第二の気流路のY面曲率半径1 RY1:15mm
第二の気流路のX面中心角1 θX1:90°
第二の気流路のY面中心角1 θY1:90°
【0146】
得られたトナー10を実施例1と同様にして液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8μm、吐出速度は20m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.7μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、粒径分布(Dv/Dn)の平均は1.33であった。
また、液滴が気流路中央近傍に導入されないため、壁面に付着乃至結着し、付着乃至結着のほとんどは、第二の気流路の液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
また、フロー式粒子像分析装置で得られた粒子の画像には多くの結着粒子が見られた。
【0147】
(実施例9)
下記形状の第一の気流路と第二の気流路とを有する、図21に示されたトナー製造装置を用い、印加電圧サイン波ピーク値を11.2Vに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー11を得た。
<第一の気流路形状>
第一の気流路は、液柱共鳴タイプ液滴吐出手段の吐出面が壁面に凹凸無く固定でき、気流路断面形状が長方形の気流路である。液滴吐出手段が配置された壁面側と対向する壁面側の距離を気流路高さHとすると、第一の気流路高さH1が30mm、図示しない奥行き方向気流路幅W1が80mm、液柱共鳴液室端部から第二の気流路入口までの距離Sが8mmである。
<第二の気流路形状>
第二の気流路は、第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面と対向する壁面側に120mm拡大しており、第二の気流路高さH2が150mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が80mm、第二の気流路入口からチャンバー上端部までの距離Tが500mmである。
なお、液滴の吐出直後の様子をレーザーシャドウグラフィ法により撮影し、撮影した画像から吐出速度を算出した結果、吐出速度は15m/sであった。
このトナーの粒径分布を実施例1と同様に測定したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は6.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4μmであり、Dv/Dnの平均は1.20であった。
【0148】
(実施例10)
実施例9において、図22に示したように、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に120mm滑らかに拡大し、第二の気流路高さH2が150mmであるトナー製造装置を用いたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー12を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.2μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.17であった。
【0149】
(実施例11)
実施例10において、図23に示したように、第二の気流路の奥行き方向壁面の、第一の気流路との接続部から200mmまでの壁面材質を多孔質材に変更して補助気流導入口とし、補助気流発生手段を備えたトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとした以外は、実施例10と同様の条件と操作で、トナー13を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.0μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.13であった。
【0150】
(実施例12)
実施例9において、図24に示したように、液滴吐出手段が配置された壁面側に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に120mm滑らかに拡大したトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー14を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.11であった。
【0151】
(実施例13)
実施例9において、図25に示したように、液滴吐出手段が配置された壁面側に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において液滴吐出手段が配置された壁面側に30mm急拡大し、液滴吐出手段が配置された壁面と対向する壁面側に100mm滑らかに拡大しており、第二の気流路高さH2が160mmであるトナー製造装置を用い、補助気流速度を1m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー15を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.08であった。
【0152】
(実施例14)
実施例9において、図26に示したように、第二の気流路壁面に環状スリット状に開口された補助気流導入口と補助気流発生手段を備え、第二の気流路が第一の気流路との接続部において全周方向に急拡大し、第二の気流路高さH2が200mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が200mmの円形断面の円筒形状であるトナー製造装置を用い、補助気流速度を2m/sとしたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー16を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.5μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.06であった。
【0153】
(比較例3)
実施例9において、第二の気流路高さH2が30mm、図示しない奥行き方向気流路幅W2が80mmの気流路断面形状が長方形である気流路とし、即ち、第二の気流路の断面積が拡大しない、ストレート形状であるトナー製造装置を用いたこと以外は、実施例9と同様の条件と操作で、トナー17を得た。
得られたトナーを実施例1と同様の操作で吐出速度および粒径分布を測定したところ、吐出速度は15m/sであった。体積平均粒径(Dv)の平均は7.6μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.8μmであり、Dv/Dnの平均は1.31であった。
吐出方向に対して直交する搬送気流によって搬送された液滴が第二の気流路壁面に付着・結着し、粒度分布が広くなっている。付着の殆どは、液滴吐出手段が配置された壁面側に見られた。
【0154】
上記実施例1〜14及び比較例1〜3の評価結果を以下の表1にまとめた。
【0155】
【表1】
【0156】
表1より、比較例1〜3(トナー9、10及び17)では、液滴の気流路壁面への付着が見られ、多くの結着粒子が見られ、実施例1〜14(トナー1〜8及び11〜16)に比べて粒径分布が広くなっていることが分かる。前記結着粒子は、液滴が気流路の壁面へ付着し乾燥される過程でトナー粒子同士が結着して形成され、これが壁面から剥離し捕集されたものと考えられ、前記結着粒子により製造の長期安定性の低下(粒径分布の悪化)が起きたと考えられる。
一方、実施例1〜14では、液滴の気流路壁面への付着及び結着が見られず、粒径分布が極めて狭いトナーが得られている。
したがって、液滴吐出手段から連続的に吐出された液滴の吐出方向に対して直交する方向に液滴が搬送されるように気流を導く第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有する微粒子の製造装置は、安価で簡便な構造でありながら、微粒子が壁面に付着し、微粒子同士が結着することを抑えることができ、狭い粒径分布を有する微粒子を長時間安定して製造できることが示された。
【符号の説明】
【0157】
1:トナー製造装置
2:液滴吐出手段
9:弾性板
10:液柱共鳴液滴吐出ユニット
11:(液柱共鳴タイプの)液滴吐出手段
13:原料収容器
14:トナー組成液
15:液循環ポンプ
16:液供給管
17:液共通供給路
18:液柱共鳴流路
19:吐出孔
20:振動発生手段
21:液滴
22:液戻り管
23:合着液滴
60:搬送固化手段
61:チャンバ
62:トナー捕集手段
63:トナー貯留部
64:搬送気流導入口
65:搬送気流排出口
66:搬送気流路
67:第一の気流路(液滴吐出空間)
68:気流発生手段
69:第二の気流路
101:搬送気流
201:補助気流
202:補助気流導入口
203:補助気流発生手段
P1:液圧力計
P2:チャンバ内圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0158】
【特許文献1】特許第3786034号公報
【特許文献2】特許第3786035号公報
【特許文献3】特開昭57−201248号公報
【特許文献4】特許第4607029号公報
【特許文献5】特開2011−008229号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段により吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを少なくとも有し、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項2】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、第一の気流路よりも断面積が拡大された構造である請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造である請求項1から2のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、前記液滴吐出手段が設置された側に湾曲した第一の湾曲部位を有する構造である請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
第二の気流路の構造が、前記液滴吐出手段が設置された側とは反対側に湾曲した第二の湾曲部位を第一の湾曲部位の下流側に有する構造である請求項4に記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
第二の気流路の構造が、湾曲部位において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造である請求項4から5のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
第二の気流路が、該気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を有する請求項2から6のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
少なくとも1つの吐出孔を有する液滴吐出手段から微粒子原料含有液を液滴として吐出させる液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程において吐出させた液滴を搬送固化手段により搬送固化させる搬送固化工程とを含み、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記搬送固化工程において、前記第一の気流路により、前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴を、前記液滴の吐出方向に対して略直交する方向に搬送し、更に前記第二の気流路により、前記液滴を壁面に近接させないように搬送することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項9】
液滴吐出手段が、吐出孔が形成された液柱共鳴流路内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する請求項8に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の微粒子製造装置、又は請求項8から9のいずれかに記載の微粒子の製造方法によって製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項1】
少なくとも1つの吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段により吐出された液滴を気流によって搬送固化させる搬送固化手段とを少なくとも有し、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記第二の気流路が、前記液滴を壁面に近接させないように搬送する構造を有することを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項2】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、第一の気流路よりも断面積が拡大された構造である請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造である請求項1から2のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
第二の気流路の構造が、少なくとも上流部において、前記液滴吐出手段が設置された側に湾曲した第一の湾曲部位を有する構造である請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
第二の気流路の構造が、前記液滴吐出手段が設置された側とは反対側に湾曲した第二の湾曲部位を第一の湾曲部位の下流側に有する構造である請求項4に記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
第二の気流路の構造が、湾曲部位において、下流側に向かうにつれて断面積が拡大された構造である請求項4から5のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
第二の気流路が、該気流路の壁面に沿って下流側に流れる補助気流を発生させる補助気流発生手段を有する請求項2から6のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
少なくとも1つの吐出孔を有する液滴吐出手段から微粒子原料含有液を液滴として吐出させる液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程において吐出させた液滴を搬送固化手段により搬送固化させる搬送固化工程とを含み、
前記搬送固化手段が、前記液滴を搬送するための気流の流路となる気流路と、前記気流を発生させる気流発生手段とを少なくとも有し、
前記気流路が、壁面に前記液滴吐出手段が設置され、かつ前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴に対して、前記液滴の吐出方向と略直交する方向に前記気流が導入される第一の気流路と、前記第一の気流路の下流端に連なる第二の気流路とを少なくとも有し、
前記搬送固化工程において、前記第一の気流路により、前記液滴吐出手段から吐出される前記液滴を、前記液滴の吐出方向に対して略直交する方向に搬送し、更に前記第二の気流路により、前記液滴を壁面に近接させないように搬送することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項9】
液滴吐出手段が、吐出孔が形成された液柱共鳴流路内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から微粒子原料含有液を液滴として吐出する請求項8に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の微粒子製造装置、又は請求項8から9のいずれかに記載の微粒子の製造方法によって製造されたことを特徴とするトナー。
【図1】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図21】
【図25】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図21】
【図25】
【公開番号】特開2013−47767(P2013−47767A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203257(P2011−203257)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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