説明

微細ゼオライトの製法

【課題】ゼオオライトを粉砕して粒径が0.5μm以下の微細なゼオライト結晶を製造しようとすると、非晶質化し、結晶性が低下して、ゼオライト本来の性能を発揮できなくなる。非晶質の無い又は非常に少ない微細なゼオライトを製造する方法を提供する。
【解決手段】一旦ゼオライトを粉砕して得られる粒径が0.5μm以下の微細なゼオライトを、特定組成のシリケート溶液に分散させ、再結晶させることにより、非晶質の無い又は非常に少ない微細なゼオライトを製造する。得られたゼオライト微粒子は、結晶性が向上し、触媒特性などの性能に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細なゼオライトを製造する方法に関し、より詳細には、非晶質が無い又は非常に少ない微細なゼオライトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトはイオン交換特性、吸着特性、触媒特性に優れ、民生、工業分野で幅広く用いられている。通常、イオン交換材、吸着材、触媒として用いられるゼオライトの粒径は0.5〜数μmであるが、対象分子のゼオライト細孔内拡散が各種用途反応の律速となる場合がある。そこで近年、拡散の向上、反応速度向上のため粒径100nm以下のゼオライトナノ粒子合成に関する研究が盛んになされている(例えば、非特許文献1、得られたゼオライトは初期は40-80nm位だが、水熱合成を続けると200-400nmまで粒成長している。)。
従来のゼオライトナノ粒子合成に関する研究は主にボトムアップ法、すなわち4級アンモニウム塩や特殊な有機物を用い、核発生・結晶成長を制御することにより達成されている。しかし、ゼオライト合成は極めて安価な水酸化ナトリウムなどのアルカリ源、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどを原料とするため、少量であっても有機物の使用は最終コストに大きく影響する。よって、合成時に有機物を使用しない新規ナノゼオライト製造プロセスの確立が望まれている。
このような微粒のゼオライトを製造する方法として、粒径のより大きなゼオライトを粉砕することが行われているが、粉砕の衝撃によりゼオライトが非晶質化して、細孔内拡散が阻害され各種特性が低下する(特許文献1)。このようにして粉砕したゼオライト中の非晶質の割合は通常30%以上に達すると見積もられている。
一方、本発明者らは、ゼオライト表面の非晶質層がアルミノシリケート溶液によって溶解除去されることを確かめている(非特許文献2)。
更に、本発明者らは、粉砕したゼオライトをアルミノシリケート溶液中で再結晶することにより非晶質の少ない微細ゼオライトを得ることができることを発表している(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−146649
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Science vol. 283, 958-960 (1999)
【非特許文献2】Microporous and Microporous Material 70, 17-13 (2004)
【非特許文献3】Cryst. Growth & Design 11, 955-958 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゼオライトを粉砕して粒径が0.5μm以下の微細なゼオライト結晶を製造しようとすると、非晶質化し、結晶性が低下して、ゼオライト本来の性能を発揮できなくなる。本願発明は、非晶質の無い又は非常に少ない微細なゼオライト結晶を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ゼオライトの粉砕などにより得られる粒径が0.5μm以下の微細なゼオライトを、特定組成のシリケート溶液中に分散させ、再結晶化させることにより、非晶質の無い又は非常に少ない微細なゼオライトを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記組成式
aMO・bSiO・Al・cMeO
(式中、Mは、アルカリ金属、プロトン、又はアンモニウムイオン(NH)を表し、Meはアルカリ土類金属を表し、a=0.01〜1、b=20〜80、c=0〜1)
で表されるゼオライト(出発物質)を、下記組成式
AMO/BSiO/CH
(式中、Mはアルカリ金属を表し、A/C(モル比)は、0.003〜0.010であり、B/Cは、0.006〜0.025である。)のシリケート溶液に分散させ、再結晶化させることから成る平均粒径が0.01〜0.5μmの微細ゼオライトの製法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1で得られた再結晶化処理後のゼオライトのSEM写真を示す。
【図2】実施例1で粉砕されたゼオライト及び再結晶化処理後のゼオライトのX線回折スペクトルを示す。
【図3】実施例1で粉砕されたゼオライト及び再結晶化処理後のゼオライトのTEM写真を示す。斜線に見える部分(斜線部)は再結晶により生成した結晶を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ゼオライト(出発物質)を、特定組成のシリケート溶液に分散させ、再結晶化させることから成る微細ゼオライトの製法である。
【0009】
この出発物質であるゼオライトは下記一般式(組成式)で表される。
aMO・bSiO・Al・cMeO
式中、MOとMeOはゼオライト骨格中に電荷補償のため存在しているカチオンを表す。
は、アルカリ金属、プロトン、又はアンモニウムイオン(NH)を表す。アルカリ金属としては、K又はNaが好ましい。
Meはアルカリ土類金属、好ましくはMg、Caを表す。
とMeはゼオライト骨格中に存在するカチオンを表すが、ゼオライト作製時には、原料の関係から、このカチオンはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であることが好ましい。このゼオライトを触媒等に使用する場合には、このアルカリ金属やアルカリ土類金属をプロトン(H)やアンモニウムイオン(NH)、好ましくはプロトンに交換して用いる場合が多い。しかし、本願発明の出発物質としては、これらいずれのゼオライトをも使用することができる。
【0010】
aは0.01〜1を表す。
bは20〜80(即ち、Si/Al=10〜40)、好ましくは30〜60(即ち、Si/Al=15〜30)を表す。
Si/Al比が比較的低い(1〜30)ゼオライトの再結晶のためにはアルミノシリケート溶液を用いることが適当であるのに対し(非特許文献3、特願2010-118304)、Si/Al比が比較的高い(10〜40)ゼオライトの再結晶のためにはシリケート溶液を用いるのが適当であると考えられる。
cは0〜1を表す。
このゼオライトの構造には、特に限定は無く、例えば、FAU、CHA、BEA、MFI、MOR、FER(国際ゼオライト協会(International zeolite association)で定められている各ゼオライト構造)のいずれでもよい。
【0011】
このゼオライトは、同じ組成式で表わされるゼオライトを粉砕したものであってもよいし、異なる組成式で表わされる複数のゼオライトを粉砕したものであってもよい。通常この粉砕前のゼオライトのサイズ(例えば、レーザー回折法で測定した平均粒径)は0.15μm以上、例えば、0.15〜15μm程度である。
この粉砕方法はいかなる方法でもよいが、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどを用いて行なうことができる。このなかでビーズミルは、ゼオライトの非晶質化を最低限に抑えることができる。ビーズミルは、通常50〜500μmのセラミックビーズを用い、解砕・粉砕を行う装置である。粉砕メディアに微小ビーズを用いるため、ボールミルや遊星ボールミルと異なり、処理する粉末がビーズや他の粒子と衝突する頻度が多く、また一回の衝突の際、粒子に与える力が少ないため、表面を非晶質化させることなく効率よく粉砕できる。しかし、ビーズミルを用いたとしてもゼオライトはある程度非晶質化する。
この粉砕の結果、ゼオライトの平均粒径を0.01〜0.5μm程度にして、本願発明の製法に用いる。
【0012】
本発明の製法においては、このゼオライトを下記組成(溶液中の成分とその混合比を表す。)のシリケート溶液に分散させる。
AMO/BSiO/CH
式中、Mはアルカリ金属、好ましくはK又はNaを表す。
A/C(モル比、以下同じ)は、0.003〜0.01であり、B/Cは、0.006〜0.025である。この範囲外の組成条件では再結晶が困難となる場合がある。
なお、このシリケート溶液は、MOH(式中、Mは上記のとおり。)及びSiOを上記組成を与える混合比で水に溶かすことにより得られる。再結晶化処理は該当するゼオライトが生成する合成温度に近い場合が多いため、水温は100〜230℃程度が好ましい。
【0013】
上記ゼオライトをこのシリケート溶液に分散させると、非晶質層がこの溶液に溶解し(非特許文献2)、溶解したゼオライトが、残ったゼオライト結晶上に再結晶するものと考えられる。
このシリケート溶液処理の条件は以下のとおりである:
温度:100〜230℃
処理時間:1〜24時間、通常2時間程度である。
容器:特に制限は無いが、100℃以上では水分が沸騰するため、密封型オートクレーブを用いることが好ましい。
シリケート溶液中のゼオライトの量は、100mlのシリケート溶液に対し、通常0.5〜10g程度である。例えば、MFI型ゼオライトの場合1〜3g程度が好ましい。
【0014】
この処理の結果、得られたゼオライト結晶の非晶質部分は全く無いか又は非常に少なくすることができる。この非晶質部分の消失と再結晶によるゼオライト結晶の増分は、この処理の程度による。その処理を徹底すれば(例えば、処理を長時間行うなど)非晶質部分をほぼ無くして更に再結晶によりゼオライト結晶を増やすことも出来る。一方、非晶質部分をある程度低減することができればよいのであれば、この処理を途中で止めれば(例えば、処理を短時間で止めるなど)よい。
【0015】
生成するゼオライトは出発物質と同様に下記一般式(組成式)で表される。
aMO・bSiO・Al・cMeOで表される。
a〜cは出発物質と同様に定義されるが。以下説明するように出発物質と完全に同じではない。MはMとMの混合したものとなる。また、ゼオライト中に入っていたMeはそのままか、又は溶液に放出され、その一部若しくは全部が再結晶することになるので、cは出発物質のcと同じ又はそれ以下になる。
【0016】
AlとSiが混在する溶液中でゼオライトを核として再結晶化を行う場合、この溶液中のAlが核のゼオライト結晶と同じ構成になるようにSiを取り込みながら再結晶すると考えられている。
本願発明のように再結晶化のための溶液としてシリケート溶液を用いた場合には、その溶液中に存在するAlは全てゼオライトの非晶質部分が溶解したものであり、溶解した非晶質部分がそのまま再結晶化するものと考えられる。その結果、再結晶化した結晶の組成は、核の結晶の組成に極めて近似したものになり、その結果組成(Si/Al比等)は均一になる。また、微量なりともAlが存在しないと結晶化が進行せず、Siのみがゼオライトに取り込まれながら粒成長することは無い。そのため、溶液中に存在するAlがなくなれば結晶化の進行は止まり、結果として微細なまま結晶化を高めることができるものと考えられる。
一方、再結晶化のための溶液としてアルミノシリケート溶液を用いた場合には、この溶液中には、ゼオライトの非晶質部分が溶解したもの以上のAlが存在するため、過剰なAlがSiを取り込みながら結晶化するため、その組成は、シリケート溶液を用いた場合に比べて、核の結晶の組成よりもAlリッチになる傾向が有り、その結果Si/Al比等の組成が不均一になる(後述の表1参照)。また、溶液中のSiとAlの双方を取り込みながら成長するためサイズもより大きくなる傾向が有ると考えられる。
【0017】
なお、処理後のゼオライトのSi/Al比は、低すぎると酸点であるAlの量が増えてしまいコーキングにより所望の触媒反応が進まなくなり、また高すぎると副生成物として層状化合物が析出してしまうため、処理前と比較して-15〜+50%以内程度となることが好ましい。また、処理後のゼオライトの結晶化度は、結晶の存在割合と比例するため、処理前と比較して、90%以上であることが望ましい。
また、上記処理の結果得られるゼオライトの平均粒径は、処理前の平均粒径とほぼ同じになる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
なお、X線写真は走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立製作所製S5200)、X線回折(XRD)は自動X線回折装置((株)リガク社製RINT2500)、誘導結合プラズマ分析はIPC発光分析装置((株)島津製作所製ICPE-9000)を用いて測定した。ゼオライトの平均粒径は、ゼオライトを水に分散させて(濃度0.01wt%以下)、レーザー回折粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD-7000)を用いてレーザー回折法により測定した。
【0019】
実施例1
エタノール100mlに分散剤(中京油脂株式会社製 セルナE503)1.2gを加え、そこにMFI型ゼオライト(NH4Si19AlO40、東ソー株式会社製 840NHA、平均粒径2.5μm)60gを投入し、スラリーを調整した。一方、φ300μmのZrO2ビーズを用いたビーズミル(アシザワファインテック株式会社製 MiniCer)をエタノールで満たし、回転数3000rpmで回転軸を回転させ、上記スラリー432gを8分かけて投入した。投入後30〜480分粉砕処理したスラリーを回収し、磁性皿で150℃で3時間乾燥させ、粉末を回収した。
原料及び得られた粉砕ゼオライトのSEM写真を図1に示す。原料ゼオライトは、120分粉砕後に平均粒径が200nm以下まで、480分粉砕後に平均粒径が50nmまで粉砕された(図1左)。
また原料及び得られた粉砕ゼオライトのX線回折スペクトルを図2に示す。480分粉砕後は、MFI結晶由来のピーク強度(2θ=22〜25度にみられる複数の回折ピーク)が低下している。X線回折スペクトルのピーク面積比からゼオライト中の非晶質の割合は約90wt%と見積もられる。このことから、粉砕時間の進行に伴ってゼオライト粒子の非晶質化が進行していることがわかる。
【0020】
次に、NaOHとSiO2(いずれも和光純薬工業株式会社製)を水に溶解させて、下記組成の6種類のシリケート溶液を用意した。
0.292Na2O:xSiO2:55.5H2O(S1:x=0.400、S2:x=0.650、S3:x=0.800、S4: x=1.00)
yNa2O:0.650SiO2:55.5H2O(S5:y=0.165, S6:y=0.55)
上記で得た粉砕試料を、このシリケート溶液中で、180℃で2〜24時間、処理した(以下「S処理」という。)。試料を含んだ溶液は、遠心分離器を用いて回転数3500rpmで30分間遠心分離し、沈殿物(ゼオライト)と溶液とを分離した。沈殿物(ゼオライト)を回収し、イオン交換水に分散させ、同様の遠心分離を繰り返すことによって充分に試料を洗浄した。洗浄されたものを300℃で4時間乾燥させ、無水状態にした。
【0021】
S2の組成のシリケート溶液を用いて得られたゼオライト(以下「S2ゼオライト」という。)のSEM写真を図1に示す。この写真から粒径が30〜300nm程度、平均で60nmであることが分かる(図1右)。
また、S2ゼオライト微粒子のX線回折スペクトルを図2に示す。ピーク強度(2θ=22〜25度の回折ピーク面積の合計)が上昇しており、再結晶化が進んだことを示している。また、S2ゼオライト微粒子のX線回折スペクトルのピーク面積比(2θ=22〜25度の回折ピーク面積の合計)からゼオライト中の非晶質の割合は2wt%と見積もられ、S処理により非晶質が減少していることが分かる。
また、S2ゼオライトのTEM写真を図3に示す。再結晶化後は、非晶質層が無い又は極めて少ない、結晶性の高い微粒子が得られていることが分かる。
また、得られた原料、480分粉砕サンプル、S2ゼオライトのBET表面積(細孔中の表面積と粒子表面積の合計)を窒素吸着測定により測定したところそれぞれ443 m2g-1、223 m2g-1、497m2g-1であった。粉砕後は微細化により表面積が大きくなるものの細孔が粉砕により非晶質化したため、BET表面積は443 m2g-1から223 m2g-1へと低下したと考えられる。一方、再結晶化後は、非晶質化したゼオライトが結晶に変化したため、BET表面積は223 m2g-1から497m2g-1へと大きくなったと考えられる。
【0022】
比較例1
Al(OH)3、NaOH及びSiO2(いずれも和光純薬工業株式会社製)を水に溶解させて、下記組成のアルミノシリケート溶液を用意した。
0.292Na2O::0.650SiO2:zAl(OH)3:55.5H2O(AS1:z=0.05、AS2:z=0.10)
次に、実施例1と同様にして得た粉砕ゼオライトを、このアルミノシリケート溶液中で、180℃で2〜24時間、処理し(以下「AS処理」という。)、実施例1と同様にしてゼオライト微粒子を得た。
【0023】
実施例1と比較例1で得たゼオライト微粒子のSi/Al比、回収率、及びX線回折から計算した原料を100%とした相対的な結晶化度を下表に示す。回収率はS処理又はAS処理前後のゼオライトの乾燥重量を比較、計算して求めた。Si/Al比はICP発光分析装置で求めた。
【表1】

【0024】
実施例1で得たゼオライトのSi/Al比は、処理時間のほぼすべてに渡って、比較例1で得たゼオライトのSi/Al比よりもより原料ゼオライトに近い。このことは、再結晶により形成されたゼオライト結晶が、粉砕前のゼオライト結晶と結晶構造が同じ又は近似していることを示している。一方アルミノシリケート溶液を用いて再結晶したゼオライトは、粉砕前のゼオライト結晶とは異なるSi/Al比のゼオライトを含み、不均一な結晶構造のゼオライトであると考えられる。
【0025】
実施例2
実施例1で得たゼオライト(S2)は、S処理後、Naイオンがゼオライト細孔中に存在している。酸触媒能を評価するため、細孔中に存在するカチオンをすべてH+にイオン交換させた。具体的には、ゼオライト1gを室温の1mol/lの硝酸アンモニウム溶液(和光純薬工業株式会社)中で1時間攪拌させ、遠心分離によりゼオライトを回収した。この操作を3回行った。この攪拌操作後はゼオライト細孔中のカチオンはすべてNH4+となっているが、これを400度1時間で焼成させることにより下記の反応により、H+カチオンのみが存在するゼオライトを得た。
NH → NH + H
【0026】
このゼオライト(触媒)10mgを反応管につめ、400℃で1時間流量25ccmin-1のヘリウム流通下に静置した。その後触媒の温度を300℃に下げてから、同様のヘリウム流通条件において1.0μlのクメン(和光純薬工業株式会社製)を注入し、クメンのベンゼンとプロピレンへのクラッキング反応(下式)によりゼオライトの触媒特性の評価を行った。
【化1】

得られたベンゼンをTCDガスクロマトグラフ((株)島津製作所製GC-6A)を使用して追跡し、得られたベンゼンのピーク面積からクメンの転化率を計算した。この操作を10回行い、10回目の反応時のクメン転化率を比較した。
その結果、クメン転化率は95.6%であった。
なお、比較のため、上記ゼオライトの代わりに、実施例1で用いた原料ゼオライト、及び実施例1でこれを480分粉砕したゼオライトを用いて同様の反応を行った。これらのクメン転化率は、原料ゼオライトを用いた場合は70.2%、480分粉砕したゼオライトを用いた場合は68.8%であった。
【0027】
比較例2
比較例1で得たゼオライトを用いて実施例2と同様の反応を行った。クメン転化率は83%であった。シリケート溶液を用いて再結晶化させた実施例1の転化率が高く優れた触媒が得られたことが分かる。
このような違いの理由は、以下のように推察される:即ち、上記のように本願発明のシリケート溶液中で再結晶化したゼオライトのSi/Al比等の組成は、バラツキが小さく、核のゼオライトの組成に近い(表1)。このことは、再結晶化したゼオライトの結晶構造はより均一であると考えられる。一方、アルミノシリケート溶液を再結晶のための溶液として用いて得られたゼオライトの組成はより不均一であり、全体としては同じ結晶構造をもっているものの、表層ほどAlを多く含むゼオライトであると考えられる。ゼオライトの触媒活性はゼオライトの結晶構造及び組成に大きく依存しているため、本願発明による組成がより均質で微細なゼオライトの触媒活性は高いと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式
aMO・bSiO・Al・cMeO
(式中、Mは、アルカリ金属、プロトン、又はアンモニウムイオン(NH)を表し、Meはアルカリ土類金属を表し、a=0.01〜1、b=20〜80、c=0〜1)
で表されるゼオライト(出発物質)を、下記組成式
AMO/BSiO/CH
(式中、Mはアルカリ金属を表し、A/C(モル比)は、0.003〜0.010であり、B/Cは、0.006〜0.025である。)のシリケート溶液に分散させ、再結晶化させることから成る平均粒径が0.01〜0.5μmの微細ゼオライトの製法。
【請求項2】
前記ゼオライト(出発物質)が、平均粒径が0.15μm以上であって上記組成式で表わされるゼオライトを粉砕したものである請求項1に記載の製法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49602(P2013−49602A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188254(P2011−188254)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月8日発行の「CRYSTAL GROWTH & DESIGN」に発表
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】