説明

微細多孔性ポリマーの製造方法、並びに微細多孔性ポリマーを製造するために用いられるマイクロリアクターの使用方法

【課題】 ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を有するポリマーを出発物質から、簡単に、連続的に生成(製造)する製造方法と、前記微細多孔性ポリマーを製造するために用いられるマイクロリアクターの使用方法を提供する。
【解決手段】 ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を備えたポリマーを出発物質から生成する製造方法に関し、マイクロリアクター(3)を用いた連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせるか、又はマイクロリアクター(3)内での連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を有するポリマーを出発物質から生成する製造方法に関し、前記微細多孔性ポリマーを製造するために用いられるマイクロリアクターの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に大きな自由体積があるポリマーで既に公知となっているポリマーの種類は僅かである。例えば、ポリアセチレンやテフロンの共重合体が非常に大きな自由体積があるポリマーとして知られている。
【0003】
上記以外の非常に大きな自由体積があるポリマーとしては、微細多孔性ポリマーと呼ばれるポリマーが複数の刊行物に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/012397号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】バッド(Budd)、他による「微細多孔性を有するポリマー(PIMs):堅牢であって溶液処理可能な有機ナノサイズ細孔材料」,ケミカルコミュニケーション,2004,230−231頁
【非特許文献2】バッド(Budd)、他による「溶液処理された微細多孔性を有するポリマーから派生した有機物親和性のメンブレン」,アドバンストマテリアル vol.16,2004,456頁
【非特許文献3】クリチェルドルフ(Kricheldorf)、他による「テトラヒドロキシテトラメチルスピロビスインダンと1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼンから誘導した環状及びテレケリックはしご状重合体」,J.Polym.Sci.Pol.Chem.vol.44,2006,5344−5352頁
【非特許文献4】エヌ.ドウ(N.Du)、他による「巨大高分子」,RapidCommun.vol.29,2008,783−788頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらポリマーは、概して、「微細多孔性を有するポリマー(PIMs)」であり、すなわち、「固有の微細多孔性を有するポリマー(微細多孔性ポリマー)」である。
【0007】
上述の刊行物には、標準的な合成条件として、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又は、スルホランを溶剤として用いており、24から72時間に亘って合成する期間、前記溶剤の温度を60から70℃として使用する。この反応は次の図式で表される。
【0008】
【化1】

【0009】
上述の刊行物によれば、テトラヒドロキシ化合物(ここでは、スピロビスインダン)が、炭酸カリウム固体塩基(KCO)によって、テトラフルオロ化合物の1,4−ジオキサン閉環へと導かれて、カリウム塩中間体が形成される。このことは、テトラヒドロキシ化合物を選択し、堅牢な、はしご状ポリマーが生成されるまで重合を続けることで、その結果、非常に大きな自由体積があるポリマーとなるということである。
【0010】
さらに、上記非特許文献3によれば、標準的な条件下にて、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又は、スルホランを溶剤として用いることによって、組成や構造が若干異なるポリマーへと導かれるのである。
【0011】
ポリマー合成中のすべての溶剤からの沈殿物ポリマーは、モル質量が自動的に上限となるか、又は固体沈殿物の上で重合が継続されるが、それは非常に遅いペースである。
【0012】
標準条件下では、ポリマー合成中の高い温度は、高分子量へと導くことがなく、分岐や架橋といった副反応へと導くこととなり、それによっては何も改善されない。立体的思考に至るまでは、他のモノマーは鎖剛性の増大をなすべきとの考え方に基づいていたので、重合溶液から沈殿した沈殿物のモル質量が小さすぎてフィルムを形成するポリマーへとは導かれない。よって、従来の方法は、技術的に実行がし難い方法である。
【0013】
標準的な合成反応では、強い発熱が生じるので、合成の爆発的な進行を防止するために、最初の室温段階から設定時間までかき混ぜることが推奨される。
【0014】
その上、標準的な合成では、非常に長い反応時間となるので、大変な努力と費用を費やして、ポリマーへと導くための処理をしなければならない。標準的な合成では、反応時間が2ないし3日であることに関連し、除去しなければならない低分子量の環化合物が生成されてしまうため、相当の時間の努力と費用を費やして、低分子量の環化合物を処理しなければならない。
【0015】
他方、上記非特許文献4には、ジメチルアセトアミド(DMAC)が非常に高い温度である155℃の溶剤として用いられることが記載されている。ジメチルアセトアミド(DMAC)が添加された2分後には、粘度が非常に増大し、その結果、ポリマーの沈殿が開始されるとの記述がある。
【0016】
ジメチルアセトアミド(DMAC)が添加された2分後と、4分後の2回に分けて、トルエンを添加することで沈殿物の形成が遅らされ、トルエンによる希釈によって反応溶液の粘度が減じられる。ジメチルアセトアミド(DMAC)が添加された8分ないし11分後に反応溶液全体の温度がおよそ155℃となり、メタノールが反応溶液に注がれて反応が中断される。これにより、標準的な合成に匹敵する機械的特性を示す、低い多分散性を伴った非常に高い分子量のポリマーが得られる。
【0017】
上記の製造方法によれば、低分子量の部分がない状態であり、フィルム(高分子膜)を形成するための高分子量のポリマーを得るために要する合計の反応時間として、従来は2日ないし3日要していたものが、およそ10分にまで短縮される。
【0018】
そして上記の製造方法によれば、後処理の必要もない。しかしながら、このポリマー合成は、研究室での少量の合成の場合にのみ達成されるのであって、大きな寸法のポリマーに対しては、短時間で指定された温度に達することができないことや、大きな数量のポリマーに対しては、短時間で突然重合を完了させられないことから、スケールアップができない。
【0019】
その結果、上記非特許文献4に記載の方法では、大きなバッチスケールに対応できず、その上、強い爆発的な反応をコントロールできないという危険がある。
【0020】
このような実情に鑑みて、本発明の目的は、ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を有するポリマーを出発物質から、簡単に、連続的に生成(製造)することを目的とし、同じシステム又は装置にて、1gないし10gの製造ができ、また、数10kg/日ないし数100kg/日の製造ができ、非常に高い純度が期待できる微細多孔性を有するポリマーを得るための製造方法を提供するものであり、前記微細多孔性ポリマーを製造するために用いられるマイクロリアクターの使用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る微細多孔性ポリマーの製造方法は、ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を備えたポリマーを出発物質から生成する製造方法に関し、マイクロリアクターを用いた連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせるか、又はマイクロリアクター内での連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせることを特徴とする。
ここで、マイクロリアクターとは、マイクロ空間を反応場とする反応装置のことである。マイクロリアクターのマイクロ空間では、分子や熱の移動距離が短いため、分子の衝突頻度の増加と速やかな熱の移動が可能となり、反応の選択性と収率が向上し、また、通常スケールでは暴走して危険であるため実現できなかったプロセスを行うことができる。なお、マイクロリアクターの一種として、混合機能を有するマイクロミキサーがある。
【0022】
本発明において、微細多孔性を有するポリマー(PIM)の合成とは、重縮合の閉環によるモノマーから1,4−ポリエーテルを伴うはしご状重合体が発生する合成のことであり、マイクロリアクター内(又は複数のマイクロリアクターからなるマイクロリアクター装置内)でポリエーテル合成が成される。本発明によれば、前記ポリマー合成における反応生成物の中で、環状ポリマー部分やオリゴマー部分がなく、低い多分散性を伴った固有の微細多孔性を有するポリマーが生成されるか、又は生成される準備ができ、この固有の微細多孔性を有するポリマーは、大きなモル質量を有し、絡み合うことでフィルムを形成することができる。本発明では、1つ以上のマイクロリアクターを用いることで、1gないし10gの製造ができ、また、数100kg/日の製造ができ、バッチスケールに対応して前記微細多孔性を有するポリマーを得ることができる。
【0023】
前記マイクロリアクター内でのポリエーテル合成に係る重縮合反応は、強い発熱で高分子ポリマーへと導かれるという特徴があり、それは、反応時間が10分未満での重縮合反応であり、特に反応時間が1分未満か、2分未満か、3分未満か、4分未満か、5分未満での重縮合反応である。さらに、六員環としての高エネルギー安定性があることから、前記重縮合反応は、非可逆である。
【0024】
マイクロ加工技術に基づいて前記重縮合反応過程を最適制御することで、溶解した反応生成物は、前記重縮合反応の反応時間が1分未満で設定温度又は要求温度としての反応温度となり、特に反応時間が30秒未満で設定温度又は要求温度としての反応温度となる。そして、マイクロ加工技術に基づいたマイクロミキサー内で前記重縮合反応の反応温度にて前記反応生成物は、その混合時間が1分未満で混合され、特に混合時間が30秒未満で混合される。
【0025】
前記マイクロミキサー内での典型的な混合時間(及び反応時間)は、その混合時間が0.01秒ないし10秒であり、特に混合時間が0.05秒ないし5秒であり、とりわけ混合時間が0.1秒ないし0.5秒である。
【0026】
本発明に係るマイクロリアクターは、マイクロシステム技術に基づき、マイクロリアクター(マイクロミキサーを含む)を複数配置した装置を構成し、その典型的な処理量(及び/又は内部容積)は、その処理量が0.5mlないし25ml(ミリリットル)であり、特に処理量が0.5mlないし15ml(ミリリットル)である。なお、ここでの処理量とは、前記マイクロリアクター内で能動的に調節される容量である。前記マイクロリアクターの構成は、その構成が要求や設定された反応時間に基づいて変更可能な方法にて構成することができ、その構成が大きな容積の構成とすることもできる。そして例えば、マイクロミキサーは、その典型的な内部容積を0.5ml(ミリリットル)とすることができる。
【0027】
前記マイクロリアクター内の反応溶液は、反応の期間中、連続的に混合され、重縮合され、ポリマー合成される。
【0028】
本発明では、前記マイクロリアクターを連続的に操作する。これによって、前記反応溶液は、前記マイクロリアクターでの反応液量の連続的な流れとなる。例えば、エハフェルド マイクロテクニック BTS社(Ehrfeld Mikrotechnik BTS GmbH)の型番号が0216のカスケード接続されたマクロリアクターの反応液量は0.06mlないし0.15mlである。このカスケード接続されたマクロリアクターは、液体/液体の反応液のみならず、粒子を含む懸濁液にも適用できる。
【0029】
本発明は、前記マイクロリアクター内での連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせるものであり、前記重縮合反応によって生成された反応生成物を、前記マイクロリアクターの出口で、温度管理された沈殿液に沈殿させることを特徴とする。
また本発明は、前記沈殿させた反応生成物を、少なくとも1回以上濾過するか、又は少なくとも1回以上乾燥させるか、若しくは少なくとも1回以上濾過し乾燥させることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、前記反応生成物(又は反応混合物)から前記固有の微細多孔性を備えたポリマーが作られ、分離される。
【0031】
本発明は、前記出発物質が、テトラヒドロキシ含有化合物とテトラフルオロ含有化合物との混合物であり、これら化合物のうちいずれか一方又は両方を、予め設定された反応温度で前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする。つまり本発明は、反応体である前記出発物質を、テトラヒドロキシ含有化合物又はテトラヒドロキシ化合物(4−OH)のいずれか一方又は両方と、テトラフルオロ含有化合物又はテトラフルオロ化合物(4−F)のいずれか一方又は両方との混合物とし、これら化合物のうちいずれか一方又は両方を予め設定された反応温度で供給することを特徴とする。
また本発明は、マイクロミキサーを用いて、前記テトラヒドロキシ含有化合物とテトラフルオロ含有化合物を、マイクロミキサー内の溶液中の別の反応物質とマイクロミキサー内で混合し、前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、前記重縮合反応のための前記出発物質(又は出発流体)を作り、前記マイクロリアクターに供給することができる。ここで、前記マイクロミキサー内での溶液の混合時間は、数ミリ秒以内である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態としては、マイクロミキサーを用いて、マイクロミキサー内で前記出発物質に塩基を添加し懸濁させた反応溶液を得た後、前記マイクロリアクターに供給することが好ましい。
また本発明は、マイクロミキサーを用いて、マイクロミキサー内で前記出発物質に溶解性の塩基を添加し懸濁させた反応溶液を得た後、前記マイクロリアクターに供給することが好ましい。
本発明によれば、前記出発物質に塩基を添加し懸濁させた反応溶液を得た後、前記マイクロリアクターに供給することで、前記ポリマー合成(及び/又は重縮合)の反応が開始され、前記出発物質に塩基を添加し懸濁させた反応溶液が、その後、前記マイクロリアクターに供給される。
【0034】
本発明では、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)とテトラフルオロ化合物(4−F)の混合物を有する前記出発溶液(又は出発物質)に、基本的な触媒を添加することで、前記塩基の添加によって前記反応溶液中で前記ポリマー合成反応(及び/又は重縮合反応)を開始する準備が整う。前記マイクロリアクター内の設定温度における滞留時間は、モノマー及び塩基の所望のモル質量の設定に応じて、その滞留時間が3分ないし120分となる。
【0035】
本発明では、例えば、前記ポリマー合成のため、炭酸カリウム塩基(KCO)を余剰の塩基として用いられる。この塩基は、余剰の塩基として用いるときには、特別なポンプによって懸濁して前記マイクロリアクターに添加することができる。
【0036】
前記塩基は、前記反応溶液に溶解する強い有機塩基に置き換えることができる。このことにより、より良い重合反応の制御ができるようになり、前記重合反応の全体が均質相中で続行されるようになる。
【0037】
本発明における微細多孔性を有するポリマー(PIM)の合成(製造)のためには、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)をさらに反応性の高い塩に変換してから、変換後のテトラヒドロキシ化合物(4−OH)を活性化されたテトラフルオロ化合物(4−F)と反応させる。炭酸塩又はヒドロゲン炭酸塩の形態中のアルカリ金属塩は、前記反応性の高い塩として適している。炭酸カリウム塩基(KCO)と共に、セシウム炭酸塩も本発明にとって特に有利な効果が確認されている。
【0038】
本発明における反応過程では、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)のOH基と前記塩基との反応体として、例えばテトラフェノールが、1,4−ジオキサン環の形態を伴って、非常に速く、この活性化された形態中の対応する塩と反応体を形成する。そして、前記微細多孔性を有するポリマーが合成される。
【0039】
本発明では、適切な大きさの孔(ボアホール)とマイクロポンプとを備えたマイクロリアクターが用いられることで、前記塩基の懸濁液が確実に送液されることとなり、前記出発物質(及び/又は出発液)に前記塩基の懸濁液が添加されることとなる。さらには、フッ化セシウム(CsF)、又はフッ化カリウム(KF)といったフッ化物が、触媒作用を発現させるために前記塩基の懸濁液に添加される。
【0040】
本発明では、前記懸濁液中の可溶性の塩基が、前記懸濁させた反応溶液を前記マイクロリアクターへ連続的に導入するために用いられる。
【0041】
本発明では、前記可溶性の塩基をジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶剤に溶解させ、前記懸濁させた反応溶液とし、ポリマー合成に用いる。
【0042】
さらに、本発明では、非常に強い塩基性の窒素化合物を用いることが、本発明における触媒反応には好適である。特に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メトキシル−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、ジイソプロピルエチルアミン、又は、トリス−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン(TDA−1)が好適である。これらの塩基は、無機塩基と共に用いられる点においても有利である。
【0043】
本発明では、前記固有の微細多孔性を備えたポリマーの生成(製造)のために、マイクロ反応技術用の方法及び機器が、適切に用いられる。
【0044】
本発明によれば、マイクロ反応技術用の機器(マイクロミキサー、マイクロリアクターなど)を用いることで、前記反応溶液等を非常に速くかつ効率的に混合することができ、非常に速い温度調節(強い爆発的な反応を伴う加熱と冷却の両方での温度調節)ができ、一定温度における滞留時間を可変設定できる。
【0045】
本発明によれば、1つの基台に、対応した前記マイクロ反応技術用の機器をモジュール式に設計配置し、この装置を複数用いるか又は同様の機器設計を行うことによって、前記ポリマーの生産量を直線的に増大させることができ、産出量が数100kg/日のポリマーの製造ができ、前記固有の微細多孔性を備えたポリマーが、この連続した工程にて標準的に製造されることとなる。
【0046】
本発明によれば、前記マイクロ反応技術を用いることで、簡単なモノマーのバリエーションによって、実験段階での少量の新しいポリマーを作ることもでき、それに応じた共重合体を作ることもできる。
【0047】
さらに好ましくは、マイクロ加工技術のマイクロミキサー内で、溶液に溶解された塩基が前記出発物質に添加され、前記反応溶液が得られる。
【0048】
本発明は、前記反応溶液とするために、溶剤をさらに加えることが好ましい。これによって、前記反応溶液中の前記ポリマー合成を制御することができる。
【0049】
本発明は、前記反応溶液とするために、有機塩基が溶解された溶剤をさらに加えてもよい。
【0050】
本発明は、前記反応溶液とするための前記溶剤が高沸点の非プロトン性極溶剤であり、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N,N,N−テトラメチル尿素、又は、スルホランを前記溶剤として用いることが好ましい。なお代替溶剤として、前記反応温度よりも高い沸点を有する芳香族の溶剤を同様に前記反応溶液とするための前記溶剤として用いることができる。
【0051】
本発明の好ましい条件は、前記マイクロリアクター内で、前記反応溶液の連続的な流れとするか、又は前記反応溶液の滞留時間を予め設定するか、若しくは前記反応溶液の滞留時間を調節するかのうち、いずれか一つ以上ないし全部を条件とすることである。このことによって、前記固有の微細多孔性を備えたポリマーが前記マイクロリアクターを通過した後、前記マイクロリアクターの出口で前記反応溶液に含有された反応生成物となる。
【0052】
本発明のマイクロリアクターの使用方法は、上述の本発明の微細多孔性ポリマーの製造方法によって固有の微細多孔性を備えたポリマーを出発物質から生成するために用いられるマイクロリアクターの使用方法に関し、マイクロリアクター内での連続的な反応操作によって、ポリエーテル合成に係る重縮合反応の反応溶液を生成するか、又はポリエーテル合成に係る重縮合反応の反応溶液が生成されるようにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、ポリマー合成のコスト効率が良く、数100kg/日の製造ができ、汚染物質である低分子量の環化合物がない最終物質としての微細多孔性を有するポリマー(PIM)の合成ができる。
【0054】
本発明によれば、ポリエーテル合成に係る重縮合反応が、マイクロリアクター内での連続的な反応によって、強い爆発的な反応が、速く実行されることとなる。
【0055】
微細多孔性を有するポリマー(PIM)は、経験的に(BET法による)比表面積が少なくとも200m/gであり、好ましくは、比表面積が少なくとも500m/gである。そして特に微細多孔性を有するポリマーのうち、(BET法による)比表面積が少なくとも700m/gであるポリマーが、非常に大きな自由体積があるポリマーといえる。本発明による微細多孔性を有するポリマーは、標準的な比表面積が700m/gないし1600m/gである。
【0056】
微細多孔性を有するポリマーは、その細孔の直径の平均値が100nm未満であり、特に、その細孔の直径の平均値が20nm未満で微細多孔性を形成する。本発明による微細多孔性を有するポリマーは、その細孔の直径の平均値が0.2以上かつ20nm未満である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における固有の微細多孔性を備えたポリマーを生成するための模式的な配置図である。
【図2】本発明の他の実施形態における固有の微細多孔性を備えたポリマーを生成するための模式的な配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態や図に限定されるものではない。また、上述の説明にてすでに明らかである事柄については、繰り返しその詳細を説明することを省略する。
【0059】
(第1の実施形態)
図1に示す第1の実施形態では、反応剤若しくは反応準備剤として、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)とテトラフルオロ化合物(4−F)とを用い、出発溶液を形成すべく、符号1のマイクロミキサー内にて混合し、混合とほぼ同時に、数秒以内に設定反応温度となる。
【0060】
そして、マイクロミキサー1内の前記出発溶液と、前記出発溶液を反応溶液とすべく準備された塩基とが、符号2のマイクロミキサーに加えられる。マイクロミキサー2内に前記塩基が加えられることで前記反応溶液となり、前記反応溶液中で反応が開始される。
【0061】
そして前記反応溶液が、マイクロミキサー(2)からマイクロリアクター(3)へと搬送又は送液される。マイクロリアクター(3)内での前記反応溶液の滞留時間とそれによる重合反応の時間は、設定された液量の流れとマイクロリアクター(3)の長さ寸法とによって決まる。
【0062】
マイクロリアクター(3)の出口では、前記重縮合反応からの反応生成物が生じているか、又は、マイクロリアクター(3)内でのポリマー合成の前記反応溶液に攪拌され調整された沈殿媒体が加わっているか、のいずれかないしはこれらの両方の状態となっている。この重合反応、又はポリマー合成反応、のいずれかないしはこれらの両方の反応の停止の後、沈殿した(中間の)生成物が、濾過されて乾燥されることによって、分離される。
【0063】
(第2の実施形態)
図2に示す第2の実施形態では、反応剤若しくは反応準備剤として、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)とテトラフルオロ化合物(4−F)が用いられ、出発溶液を形成すべく、マイクロミキサー1内にて混合され、混合とほぼ同時に、数秒以内に設定反応温度となる。そして、マイクロミキサー(1)内の前記出発溶液と、前記出発溶液を反応溶液とすべく準備された塩基とが、マイクロミキサー(2)に加えられる。マイクロミキサー(2)内に前記塩基が加えられることで、前記反応溶液となり、前記反応溶液中で反応が開始される。
【0064】
そして、マイクロミキサー(2)内の前記反応溶液がマイクロミキサー(4)に加えられ、別途準備された純度の高い溶剤(溶液)か、或いは別途準備された可溶性の塩基を溶解させた溶剤(溶液)が、マイクロミキサー(4)内の前記反応溶液に加えられる。前記溶剤(溶液)は、前記反応溶液を希釈することで、前記反応溶液の粘度の増大超過によってリアクター(3)で目詰まりする不具合を防止するための溶剤である。そして、希釈された前記反応溶液がマイクロリアクター(3)に加えられる。
【0065】
図2に示す第2の実施形態では、要求された重合度を得るために、前記反応溶液をマイクロリアクター(3)内での液量の連続的な流れによって、反応をさせる滞留時間が設定されている。マイクロリアクター(3)の終端部は、トルエンやキシレンといった低沸点の溶剤を液相状態に保つ圧力弁を備えることができる。またトルエンやキシレンの代替溶剤として、灯油、ディーゼル、ベンゼン等の前記反応温度よりも高い沸点を有する芳香族の溶剤を同様に用いることができる。
【0066】
マイクロリアクター(3)内における前記反応溶剤は、高沸点の非プロトン性極溶剤であり、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N,N,N−テトラメチル尿素、又は、スルホランを前記溶剤として用いることができる。
【0067】
マイクロリアクター(3)は、圧力を2,000,000Pa(20bar)に上げた状態で操作することができる。また、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)とテトラフルオロ化合物(4−F)を予め混合する場合には、マイクロミキサーを単体で用いてもよい。前記反応による危険を伴わない場合には、前記塩基を、一度に加えてもよい。例えば、1つのマイクロミキサーを省いて、工程設計を簡略化することもできる。
【0068】
以下、本発明の製造方法によって、マイクロリアクター内で重縮合反応やポリマー合成反応を行った実施例1ないし3について説明する。
【0069】
(実施例1)
メスフラスコ内に、その重さが10.213g(30mmol)の5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3’,3,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン(4−OH)と、その重さが5.252g(26.25mmol)のテトラフルオロテレフタル酸ジニトリル(4−F)とを一緒に入れた状態で、ジメチルアセトアミドを上記メスフラスコの内容積が50.0mlとなるまで注いで、上記化合物を溶解させる。これによる溶解液(溶解液A)は、体積モル濃度が0.60mmol/mlのテトラヒドロキシ化合物(4−OH)と、体積モル濃度が0.525mmol/mlのテトラフルオロ化合物(4−F)を含有する。
【0070】
メスフラスコ内に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを入れておき、無水キシレンを上記メスフラスコの内容量が50.0mlとなるまで注いで、上記化合物を溶解させる。これによる溶解液(溶解液B)は、体積モル濃度が1.32mmol/mlとなる。溶解液Aと溶解液Bは、酸化防止のため、アルゴンで脱気されている。
【0071】
脱気された溶解液Aと脱気された溶解液Bは、シリンジポンプを用いて、圧力センサを伴った流路上を再送液される。これは、脱気された溶解液Aや脱気された溶解液Bの粘度増大が許容範囲内か、又はマイクロリアクター内で詰まることがないか、検知するためである。テフロン管がマイクロリアクターの入口へと繋がる。
【0072】
エハフェルド マイクロテクニック BTS社(Ehrfeld Mikrotechnik BTS GmbH)のマイクロリアクターをポリマー合成に用いた。このマイクロリアクターは、A5用紙サイズの基台と所望の複数のモジュールから構成され、入口と、出口と、栓が付属している。
【0073】
溶液Aが、その温度が150℃で平衡状態となっているカスケードリアクターに、加えられた。それと同時に、溶液Bが2番目に開くリアクターに加えられた。2番目に開くリアクターの出口は、その温度が150℃で平衡状態となっているサンドイッチリアクターに直接、接続されている。
【0074】
滞留時間が75分経過したが、メタノール中には、何ら沈殿物がなかった。そのため、カスケードリアクターの出口をサンドイッチリアクターに接続した。これら両方のリアクターの滞留時間が15分経過後に、メタノール中の沈殿物として黄色で、蛍光性の粉が得られた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によれば、ポリマーのモル質量Mwの値が、約4000g/モルであった。
【0075】
溶液Aの送液速度が、0.5ml/分であったことから、塩基の化学量論的数量を少なくとも作るために、溶液Bの送液速度を1.0ml/分とした。テトラフルオロ化合物(4−F)を考慮し、テトラヒドロキシ化合物(4−OH)を若干多めに使用した。これは、周縁部がリニアな機能を果すポリマー、又はヒドロキシ基(−OH)を伴うテレケリックポリマーを産出するためである。
【0076】
(実施例2)
実施例2は、トリス−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン(TDA−1)を塩基として用い、それ以外は、実施例1とほぼ同様のことを行った。周縁部がリニアな機能を果すポリマー、又はヒドロキシ基(−OH)を伴うテレケリックポリマーのモル質量Mwの値が、約4000g/モルであった。
【0077】
(実施例3)
その重さが7.65g(12.16mmol)のシリル化された5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3’,3,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン(4−OTMS)と、その重さが5.252g(26.25mmol)のテトラフルオロテレフタル酸ジニトリル(4−F)とを、ジメチルアセトアミドに溶解させて、0.60モル溶液(溶液C)とした。これら2つのモノマー(4−OTMSと4−F)は、化学量論的比率が1対1である。トリス−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン(1.32モル)を、ジメチルアセトアミドに溶解したフッ化セシウム(CsF)の飽和溶液中に入れて、塩基(溶液D)とした。
【0078】
実施例3では、実施例1の装置を使用したが、2つのリアクターは、両方とも速やかに液が流れる構成とした。塩基の化学量論的数量を少なくとも作るために、溶液Cの送液速度を0.5ml/分とし、溶液Dの送液速度を1.0ml/分とした。これは、塩基を10%超過させることに対応する。
【0079】
モノマー(4−OTMS)がシリル化副次物質ガスを形成する反応が生じ、リアクターの出口でガスが生成される。その15分後に、両方のリアクターが反応溶液で満たされ、リアクターの出口でポリマーが沈殿した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によれば、ポリマーのモル質量Mwの値が、約19,000g/モルであった。
【0080】
マイクロリアクターの出口と繋がったテフロン管の中に、沈殿物が得られ、無水キシレンが、送液量が0.5ml/分にて、1番目のリアクターの出口の後のマイクロミキサーを経由して、上記テフロン管の中に、加えられた。これにより、ポリマーのモル質量Mwの値が、約11,000g/モルまで低下したが、沈殿物の溶解が緩やかとなった。
【符号の説明】
【0081】
1、2、4 マイクロミキサー、
3 マイクロリアクター



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル合成に係る重縮合反応を行うことによって固有の微細多孔性を備えたポリマーを出発物質から生成する製造方法に関し、マイクロリアクターを用いた連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせるか、又はマイクロリアクター内での連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせることを特徴とする微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロリアクター内での連続的な反応操作によってポリエーテル合成に係る重縮合反応をさせるものであり、前記重縮合反応によって生成された反応生成物を、前記マイクロリアクターの出口で、温度管理された沈殿液に沈殿させることを特徴とする請求項1記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記沈殿させた反応生成物を、少なくとも1回以上濾過するか、又は少なくとも1回以上乾燥させるか、若しくは少なくとも1回以上濾過し乾燥させることを特徴とする請求項2記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記出発物質が、テトラヒドロキシ含有化合物とテトラフルオロ含有化合物との混合物であり、これら化合物のうちいずれか一方又は両方を、予め設定された反応温度で前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
マイクロミキサーを用いて、前記テトラヒドロキシ含有化合物とテトラフルオロ含有化合物を、マイクロミキサー内の溶液中の別の反応物質とマイクロミキサー内で混合し、前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする請求項4記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
マイクロミキサーを用いて、マイクロミキサー内で前記出発物質に塩基を添加し懸濁させた反応溶液を得た後、前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項7】
マイクロミキサーを用いて、マイクロミキサー内で前記出発物質に溶解性の塩基を添加し懸濁させた反応溶液を得た後、前記マイクロリアクターに供給することを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記反応溶液とするために、溶剤をさらに加えることを特徴とする請求項6または7に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記反応溶液とするために、有機塩基が溶解された溶剤をさらに加えることを特徴とする請求項6ないし8のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記反応溶液とするための前記溶剤が高沸点の非プロトン性極溶剤であり、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N,N,N−テトラメチル尿素、又は、スルホランを前記溶剤として用いることを特徴とする請求項8または9記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項11】
前記マイクロリアクター内で、前記反応溶液の連続的な流れとするか、又は前記反応溶液の滞留時間を予め設定するか、若しくは前記反応溶液の滞留時間を調節するかのうち、いずれか一つ以上ないし全部を条件とすることを特徴とする請求項1ないし10のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のうちいずれか一項に記載の微細多孔性ポリマーの製造方法によって固有の微細多孔性を備えたポリマーを出発物質から生成するために用いられるマイクロリアクターの使用方法に関し、マイクロリアクター内での連続的な反応操作によって、ポリエーテル合成に係る重縮合反応の反応溶液を生成するか、又はポリエーテル合成に係る重縮合反応の反応溶液が生成されるようにすることを特徴とするマイクロリアクターの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126728(P2010−126728A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269618(P2009−269618)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508368530)ゲーカーエスエス・フォルシュユングスツェントルウム ゲーエストハフト ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】