説明

微細気泡発生装置、これを用いた溶存酸素除去装置およびこれらを用いた溶存酸素除去方法

【課題】構造が簡単で分解洗浄が可能な微細気泡発生装置、これを用いた溶存酸素除去装置、およびこれらを用いた効率的な液中の溶存酸素の除去方法を提供する。
【解決手段】本発明の微細気泡発生装置1は、液体を流通させる流路の断面積を縮小させた絞り部9と、該絞り部9の下流にあって流路の流れ方向に従い断面積が拡大する末広部11と、該絞り部9の下流でかつ該末広部11の上流に位置し該絞り部9の断面積より大きな断面積を有する気液混合部10と、該絞り部9の近傍で管体に穿設したガス導入部14と、該ガス導入部14と連絡し、該ガス導入部14からのガスを受入れる気室16を形成する該管体内部に装着された気室形成部材15と、該絞り部9の下流でかつ該気液混合部10の上流に位置し、放射線状に管の中心線に向かって該気室16に流入する気体を液体流路に導入するスリット部24とを含み構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を発生可能な微細気泡発生装置、これを用いた溶存酸素除去装置およびこれらを用いた液体の溶存酸素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、酸化によって品質が低下するものが多く、酸化を防止することは品質維持の上で大変重要である。液状の食品または飲料品などにおいては、液に溶け込んでいる溶存酸素が酸化を引き起こす原因の一つとなっている。
【0003】
液体中の溶存酸素を取り除く方法の一つに脱気法がある。これは液体を含む系内を減圧にすることにより、液体に溶解可能な溶存酸素を低下させ、溶存酸素を取り除く方法である。脱気法にはガス透過膜を用いる膜脱気法や、減圧した密閉容器中に溶液を噴霧する方法などがある。
【0004】
また液体中に窒素ガスを供給することにより、液体中の溶存酸素を低減させる窒素置換法もよく用いられている。窒素置換法では溶存酸素が酸素分圧の少ない窒素ガス中に移動することで、液中の溶存酸素濃度が低減する。この方法において、少ない窒素ガスで効率よく窒素置換するためには、微細な窒素ガスの気泡を形成させたり、液とこの気泡を効率的に混合させる必要がある。これらに関してはいくつかの技術が開示されている。たとえば液送出管内に不活性ガスを放射線状に噴出させるためのスパージャを設け、スパージャから噴出される不活性ガスと液体とを効率よく混合する技術が開発されている。このときスパージャから噴出させる不活性ガスを微細化するために、ガス噴出部を焼結金属で形成し、さらに気液混合部の混合性能を高めるために、気液混合部に金属製のたわしなどからなる充填物を充填するなどの工夫がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
またエジェクタ効果を利用して溶液中に微細な気泡を発生させる技術も開示されている(例えば特許文献2および特許文献3参照)。この方法は加圧した水を絞り部を有する管路に供給することで、絞り部に負圧部分を発生させ、ガスを吸引させ気泡を発生させるものである。
【0006】
また旋回式微細気泡発生装置を用いて、微細気泡を発生させる技術も開示されている(例えば特許文献4参照)。これは円錐形の容器の内壁円周方向に加圧水を導入し、旋回流を形成させ、円錐容器の先端からこの水を噴出させることで、円錐管軸上に負圧部分が形成される。この負圧部分に気体が吸引され、円錐容器の上部から吸引された気体は、糸状となり円錐容器先端から水といっしょに噴出する。噴出と同時に周囲の静水によりその旋回流が急激に弱められることから、糸状の気体が切断され10〜20μm程度の気泡が発生するとする技術である。
【特許文献1】特開2001−46809号公報
【特許文献2】特開平6−63371号公報
【特許文献3】特開平11−90275号公報
【特許文献4】特開2000−447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脱気法は溶存酸素を低減する方法としては、簡便な操作で溶存酸素を低減することが可能な方法ではあるが、清酒中の溶存酸素を除去するような場合には、アルコール分、香気成分も同時に除去されるおそれがある。
【0008】
特許文献2および特許文献3に記載のエジェクタ効果を利用する方法は、簡便な方法で気泡を形成させることが可能であるが、液体の導入作用でガスの吸引を行うめ、気液割合を調整することができない。また気泡の更なる微細化も求められている。
【0009】
特許文献4に記載の旋回流を利用し微細気泡を発生させ、この微細気泡を液中に供給することで、溶存酸素を低減させる旋回式微細気泡発生装置は、噴出口の液が静水状態であることが望ましいことから、タンク内など使用されるケースが多い。
【0010】
液体状の食品、飲料水、アルコール飲料などにあっては、香気成分を損なわない溶存酸素の除去方法であるとともに、それに使用する装置または方法にあっては、洗浄が容易な装置または方法であることが必要である。このため溶存酸素の除去に使用される装置は、構造が簡単でかつ内部の洗浄が容易な装置であることが必要となる。洗浄の容易性の点において、溶存酸素除去装置は配管途中に装着し使用できるものであることが望ましい。
【0011】
本発明の目的は、構造が簡単で分解洗浄が可能な微細気泡発生装置、これを用いた溶存酸素除去装置およびこれらを用いた効率的な液中の溶存酸素の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、管体に液体とガスとを流通させ微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、
液体を流通させる流路の断面積を縮小させた絞り部と、
該絞り部の下流にあって流路の流れ方向に従い断面積が拡大する末広部と、
該絞り部の下流でかつ該末広部の上流に位置し該絞り部の断面積より大きな断面積を有する気液混合部と、
該絞り部の近傍で管体に穿設したガス導入部と、
該ガス導入部と連絡し、該ガス導入部からのガスを受入れる気室を形成する該管体内部に装着された気室形成部材と、
該絞り部の下流でかつ該気液混合部の上流に位置し、放射線状に管の中心線に向かって該気室に流入する気体を液体流路に導入するスリット部と、
を含むことを特徴とする微細気泡発生装置である。
【0013】
また本発明で、前記管体は略中央部で二つの管体に分離可能に形成され、
前記気室形成部材は、管体から着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置である。
【0014】
また本発明で、前記気室形成部材は、一端に突起物を備え、
前記スリット部は、前記気室形成部材の突起物を管体に当接させることにより形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡発生装置である。
【0015】
また本発明は、前記管体の内部にあって前記絞り部上流側に旋回流を発生させる旋回流発生部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の微細気泡発生装置である。
【0016】
また本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の微細気泡発生装置と、
液中の溶存酸素を除去するための窒素ガスを前記微細気泡発生装置に導入する窒素ガス導入管路と、
前記窒素ガス導入管路の途中に設けられ導入する窒素ガス流量を測定するためのガス流量計と、
該ガス流量計と前記微細気泡発生装置の前記ガス導入部とを接続する前記窒素ガス導入管路の途中に装着される圧力計と、
を含むことを特徴とする溶存酸素除去装置である。
【0017】
また本発明は、請求項5に記載の溶存酸素除去装置を用いたことを特徴とする溶存酸素除去方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管体に液体とガスとを流通させ微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、液体を流通させる流路の断面積を縮小させた絞り部と、絞り部の下流側にあって流路の流れ方向に従い断面積が拡大する末広部と、絞り部の下流側でかつ末広部の上流に位置し絞り部の断面積より大きな断面積を有する気液混合部を有するので、この部分で圧力差を生じさせることで、微細な気泡を発生させることができる。また、ガス導入部と連絡した気室を形成し、放射線状に管の中心線に向かって気室に流入する気体を液体流路に導入するスリット部を有するので、スリット部からガスを円周上均一に液に供給することが可能となり、円周上1箇所からのガスの導入と比較して気泡が微細化される効果を有する。
【0019】
また本発明によれば、管体は略中央部で二つの管体に分離可能に形成され、気室形成部材は、管体から着脱可能であるので、微細気泡発生装置を分解することが容易である。また気室形成部材を管体から着脱することが可能なため、内部まで洗浄することが可能である。食品分野のように、洗浄を頻繁に行う必要がある場合にあっては特に有用である。
【0020】
また本発明によれば、気室形成部材は一端に突起物を備え、スリット部は、気質形成部材の突起物を管体に当接させることにより形成するので、スリット部を容易に形成することができる。また、スリット部のスリット幅は突起物の幅を変更することで調整をすることが可能なので、スリット幅の調整が容易である。
【0021】
また本発明によれば、管体の内部であって、絞り部上流側に旋回流を発生させる旋回流発生部材を備えるので、絞り部上流側の液に旋回流が形成され、より微細な気泡を発生させることができる。また、この旋回流発生部材は着脱可能な構造とすることで、管体内部の洗浄が容易となる。
【0022】
また本発明によれば、請求項1から請求項4のいずれかに記載の微細気泡発生装置と、液中の溶存酸素を除去するための窒素ガスを微細気泡発生装置に導入する窒素ガス導入管路とを含むので、微細気泡発生装置を溶存酸素除去装置として利用することができる。また、窒素ガス導入管路の途中に設けられ導入される窒素ガス流量を測定するためのガス流量計と、ガス流量計と微細気泡発生装置のガス導入部とを接続する窒素ガス導入管路の途中に装着された圧力計とを含むので、窒素ガス流量の調整を容易に行うことができる。また、本溶存酸素除去装置は、管体を含み構成される微細気泡発生装置を備えるので、配管途中に装着して使用することができる。これにより分解、洗浄操作が容易となる。
【0023】
また本発明によれば、溶存酸素除去装置を用いた液中の溶存酸素を除去する方法なので、微細な気泡を発生させることが可能となり、より少ない窒素ガス量で溶存酸素を除去させることができる。これにより溶存酸素除去操作に伴う食品の香気成分などの損失を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の一形態としての微細気泡発生装置1の管体を分離した状態を示す簡略的な断面図である。本微細気泡発生装置1は、管体に液体とガスとを流通させ流路内の圧力変化を利用して微細気泡を発生させる微細気泡発生装置である。
【0025】
微細気泡発生装置1は、液体を流通させるための管体2、3を有する。管体2,3は各々一端にフランジ4、5を有しており、フランジ4、5間にガスケット6を装着し図示を省略した接続部材によって接続して使用する。管体2の内部は液入口部7から液の流れ方向に向かって断面積が減少するテーパ形状8である。一方管体3は管体2と同様、流れ方向に向かって断面積が減少した下流側に流路の断面積が一番小さい絞り部9を有する。絞り部9の下流側には、絞り部9よりも断面積が広い気液混合部10を有し、さらに下流には断面積が流れ方向に向かって拡大する末広部11を有する。テーパ形状部8のテーパ角度θ1および末広部11の拡がり角θ2は略6°が好ましい。
【0026】
ここでは管体2および管体3の一端に他の管体と接続するためのフランジ12、13を備えているが、他の管体との接続にフランジを使用しない場合には、フランジ12、13は必ずしも必要はない。他の管体との接続は、他の管体と接続可能なネジ機構またはテーパ管などであってもよい。
【0027】
また管体3は、絞り部9近傍にガスを導入するためのガス導入口14を有する。ガス導入口14は、管体3に孔を穿設することで形成することができる。また管体3は内部に気室形成部材15を備える。気室形成部材15は、液に導入するガスを円周方向上均一に排出するための気室16を形成し、気室16はガス導入口14と連結している。
【0028】
図2は気室形成部材15の側面図、図3は気室形成部材15の図2のA―A線の方向から見た図である。気室形成部材15は、内部に液が流通するための流路を有し、円筒状の部材17、外部がテーパ形状の部材18および円筒状の部材17に比較して外径の大きい円筒状の部材19からなる。円筒状の部材17の先端には3箇所に突起物20が設けられている。突起物20の数は1または2つであってもよいが、突起物20はスリット部24の幅を決める働きをするので、スリット幅を均一にする点から突起物20を3箇所設けることが望ましい。
【0029】
気室形成部材15は、管体2と接する管体3の一端から着脱可能に装着され、管体3の内壁21と円筒状の部材17の外壁22とで気室16を形成する。気室形成部材15は中央部に外部がテーパ形状の部材18を有するので、気室形成部材15を管体3の中心に容易に配置することができる。また円筒状の部材17の内壁は、絞り部9を形成する。
【0030】
さらに気室形成部材15は円筒状の部材17に設けられる突起物20が管体3の内壁23に当接し、スリット部24を形成する。スリット部24は、気室16と連絡しガス導入口14から導入されるガスを液に供給する。スリット部24は、円周方向に均一に形成されるので、液に対して円周方向上均一にガスを供給することができる。このためガスを円周方向の一箇所から供給する場合に比較して、ガスを分散して供給することが可能であり、発生する気泡径を小さくすることができる。
【0031】
スリット部24の幅(スリット幅)はガス流量との関係を考慮して決定することが望ましく、ガス導入時に大きな圧力損失を発生させない幅であれば狭いことが望ましい。スリット幅が大きくなりすぎると、円周方向から均一にガスを発生させることができなくなるためである。本発明においては、スリット幅を突起物20の厚さとしているので、突起物20の厚さを変更することでスリット幅を容易に調整することができる。
【0032】
また、気室形成部材15は管体3内部へ着脱可能に装着されるので、必要に応じて気室形成部材15を取り外すことができる。これにより気室16またはスリット部24の洗浄を容易に行うことができる。管体3への気室形成部材15の装着は、ねじ構造による装着、勘合による装着など、着脱可能な装着方法であれば特に限定されるものではない。
【0033】
さらに管体2に内部には、供給される液に旋回流を発生させるスパイル状の旋回流発生部材25を装着することができる。図4に旋回流発生部材25の大略的な外観形状を示す。旋回流発生部材25は管体2のテーパ形状8にほぼ一致した径を有しており、旋回流を発生させるために180°のひねりが加えられている。これにより液に旋回流が発生し、より微細な気泡を発生させることができる。旋回流発生部材25は、旋回流を発生させる機能を備えるものであれば、形状は特に限定されるものではない。また旋回流発生部材25は、着脱可能に装着されるので取り外すことで、管体2の内部の洗浄を容易に行うことができる。
【0034】
次に本発明の微細気泡発生装置1の作用について説明する。
【0035】
図示を省略した液供給ポンプなどにより、液が微細気泡発生装置1の液入口部7に供給される。供給された液は管体2の断面積が流れ方向に向かって減少しているため、液流速を上昇させながら、管体3に流入する。管体3に流入した液は断面積が一番小さい絞り部9でさらに液流速を上昇させる。絞り部9では液流が最大となる一方で静圧が低くなる。絞り部9を通過した液は、絞り部9よりも断面積の大きい気液混合部10で液流速を低下させると同時に静圧を上昇させた後、末広部11に流入する。
【0036】
一方ガスは、絞り部9近傍に設けられたガス導入口14に接続された図示を省略したガス供給管を通じて、任意の流量のガスが供給される。供給されたガスはガス導入口14から気室16に導かれ、スリット部24からガスが流出する。スリット部24は絞り部9と気液混合部10との境界に設けられているため、流入したガスは絞り部9と気液混合部10との間の圧力差でせん断力が生じ微細気泡となる。スリット部24は円周方向に均一に設けられているので、ガスは円周方向から均一に流出する。このように一箇所から導入されたガスを円周上均一に排出するので、微細な気泡を発生させることができる。
【0037】
次に上記微細気泡発生装置1を用いた溶存酸素除去装置30を示す。図5は本発明の実施の他の形態としての微細気泡発生装置1を用いた溶存酸素除去装置30の概略的な構成を示す図である。本実施形態で図1の実施形態に対応する部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。溶存酸素除去装置30は、大略的に微細気泡発生装置1と窒素ガス供給系40および架台50とで構成される。窒素ガス供給系40は、ミクロンフィルタ41、脱臭フィルタ42、窒素ガス流量計43および圧力計44を含み構成される。
【0038】
図示を省略した窒素ガスボンベ等を通じて供給される窒素ガスは、樹脂製の窒素ガス導入管路45の一端である入口部46を通じて導入され、ミクロンフィルタ41で微細な異物などが除去される。ミクロンフィルタ41で異物を除去された窒素ガスは、脱臭フィルタ42に流入し、ここで脱臭される。本実施形態では窒素ガス導入管路45に、樹脂製の配管を使用したけれどもステンレス配管などであってもよいことはもちろんである。脱臭フィルタ42は、固定用の部材51を脱臭フィルタ42に取り付け、固定用部材51をネジなどの接合部材52で架台50に接合し固定する。
【0039】
ミクロンフィルタ41および脱臭フィルタ42は、必ずしも使用する必要はなく、溶存酸素除去装置30の使用用途に応じて、使い分ければよい。例えば排液中の溶存酸素を除去するような場合は、ミクロンフィルタ41および脱臭フィルタ42を使用する必要はないが、溶存酸素除去装置30を液状の食品または飲料品の溶存酸素除去に使用するような場合は、ミクロンフィルタ41および脱臭フィルタ42を使用することが望ましい。脱臭フィルタ42を通過した窒素ガスは、架台50に固定された窒素ガス流量計43を経て、微細気泡発生装置1のガス導入口14に導入される。窒素ガス導入管45とガス導入口14とは、フィッティングなどの接続部材46で接続される。
【0040】
窒素ガス流量計43には流量調整弁47が設けられ、これにより供給するガス量を調整することができる。また窒素ガス流量計43とガス導入部14とを接続する窒素ガス導入管路45の途中には、圧力計44が設けられており、管路内の圧力を確認することができる。また窒素ガス流量計43または圧力計44を保護するために、圧力計44とガス導入部14とを接続する窒素ガス導入管路45の途中に、液体の逆流を防止するための逆止弁を設けることが望ましい。なお、微細気泡発生装置1は、架台50に図示を省略した固体部材を用いて固定される。
【0041】
以上のような構成のもと、本溶存酸素除去装置30を使用する場合は、微細気泡発生装置1の入口部に、液供給ポンプなどを接続し液の供給を行うともに、窒素ガス入口部46を通じて窒素ガスを供給し使用する。微細気泡発生装置1により、液中に微細気泡を発生することが可能となり、少ない窒素ガスで液中の溶存酸素を効率的に除去することができる。本溶存酸素装置30は、送液配管の途中に設置し使用することができるので、装置の分解、洗浄を容易に行うことができる。
【0042】
本溶存酸素除去装置30の使用先は特に限定されないけれども、食品加工用水、日本酒、ワインまたは焼酎などのアルコール飲料、ジュースなどの清涼飲料、醤油などの調味料、食用油などの液体状食品、液体状化粧品に使用すれば、香気成分をほとんど排出することなく液中の溶存酸素を除去することができる。さらに上記にように分解、洗浄が容易なため食品、飲料に溶存酸素除去装置30を好適に使用することができる。
【0043】
なお、本実施形態では溶存酸素の除去に窒素ガスを使用した例を示したけれども、溶存酸素の除去に使用可能なガスは窒素ガスに限定されるものではない。使用用途に応じて二酸化炭素、アルゴンガスなどの不活性ガスを使用することもできる。
【実施例1】
【0044】
次に溶存酸素除去装置30を用いた実施例を示す。
【0045】
本実施例1では、貯蔵中の酒に含まれる溶存酸素を溶存酸素除去装置30を用いて除去した。実施例1の酸素除去のプロセスフローを図6に示す。低温貯蔵庫60に貯蔵した一般酒を液ポンプ61を介して溶存酸素除去装置30を構成する微細気泡発生装置1に、毎分100リットルの割合で送った。窒素ガスは窒素ガスボンベ62の出口に減圧弁63を設け、ニードル弁64で流量を毎分30リットルに調整し、微細気泡発生装置1に供給した。窒素ガス流量および圧力の確認は溶存酸素除去装置30の窒素ガス流量計43および圧力計44で行った。微細気泡発生装置1を通じて溶存酸素を除去した酒は常温貯蔵庫65に貯蔵した。低温貯蔵庫60の温度は約2℃、常温貯蔵庫65は室温状態であった。
【0046】
溶存酸素除去に伴う香気成分の変化量を調べるため、溶存酸素除去操作を行った場合と溶存酸素除去操作を行わなかった場合とで、それぞれ香気成分の濃度を測定した。香気成分には酒の代表的な香気成分である酢酸イソアミルとカプロン酸エチルを選定し、濃度測定はガスクロマトグラフィで行った。
【0047】
(実施例1の結果)液量4000リットル移送直後の常温貯蔵庫65内の酒に含まれる溶存酸素濃度は、0.8mg/Lであった。この時の溶存酸素と窒素ガスとの置換効率はほぼ100%であった。また溶存酸素除去操作後の酒に含まれる酢酸イソアミル濃度は、約2.73mg/Lであったのに対し、溶存酸素除去操作を行わなかったときの酢酸イソアミル濃度は、約2.69mg/Lとほぼ同じ値であった。同様に、酒に含まれるカプロン酸エチルの濃度は溶存酸素除去操作を行った場合が約1.42mg/L、溶存酸素除去操作を行わなかった場合が約1.30mg/Lとほぼ同じ値であった。
【実施例2】
【0048】
吟醸酒を使用した場合の実施例を示す。
【0049】
低温貯蔵庫60の貯蔵温度が13℃、移送した酒量が550Lであった以外、条件は実施例1と同一である。実施例2では香気成分の分析のみ行った。
【0050】
(実施例2の結果)溶存酸素除去操作後の酒に含まれる酢酸イソアミル濃度は、約1.70mg/Lであったのに対し、溶存酸素除去操作を行わなかったときの酢酸イソアミル濃度は、約1.83mg/Lとほぼ同じ値であった。同様に、酒に含まれるカプロン酸エチルの濃度は溶存酸素除去操作を行った場合が約1.08mg/L、溶存酸素除去操作を行わなかった場合が約1.22mg/Lとほぼ同じ値であった。
【比較例1】
【0051】
従来から使用されているように窒素ガスを円周方向の一箇所から供給する方式の微細気泡発生装置を使用して、次の条件で微細気泡の発生テストを行った。絞り部の直径を6mm、液供給液量を毎時2000リットル、供給ガス量を毎分10リットルした。
【0052】
(比較例1の結果)ガス側の圧力が十分に低下せず、気泡は十分に微細化しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の一形態としての微細気泡発生装置1の管体を分離した状態を示す簡略的な断面図である。
【図2】本発明の気室形成部材15の側面図である。
【図3】本発明の気室形成部材15の図2のA−A線の方向から見た図である。
【図4】本発明の旋回流発生部材25の大略的な外観形状を示す図である。
【図5】本発明の実施の他の形態としての微細気泡発生装置1を用いた溶存酸素除去装置30の概略的な構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の酸素除去の概略的フローを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 微細気泡発生装置
2、3 管体
9 絞り部
10 気液混合部
11 末広部
14 ガス導入部
15 気室形成部材
16 気室
20 突起物
24 スリット部
25 旋回流発生部材
30 溶存酸素除去装置
43 ガス流量計
44 圧力計
45 窒素ガス導入管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体に液体とガスとを流通させ微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、
液体を流通させる流路の断面積を縮小させた絞り部と、
該絞り部の下流にあって流路の流れ方向に従い断面積が拡大する末広部と、
該絞り部の下流でかつ該末広部の上流に位置し該絞り部の断面積より大きな断面積を有する気液混合部と、
該絞り部の近傍で管体に穿設したガス導入部と、
該ガス導入部と連絡し、該ガス導入部からのガスを受入れる気室を形成する該管体内部に装着された気室形成部材と、
該絞り部の下流でかつ該気液混合部の上流に位置し、放射線状に管の中心線に向かって該気室に流入する気体を液体流路に導入するスリット部と、
を含むことを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記管体は略中央部で二つの管体に分離可能に形成され、
前記気室形成部材は、管体から着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記気室形成部材は、一端に突起物を備え、
前記スリット部は、前記気室形成部材の突起物を管体に当接させることにより形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記管体の内部にあって前記絞り部上流側に旋回流を発生させる旋回流発生部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の微細気泡発生装置と、
液中の溶存酸素を除去するための窒素ガスを前記微細気泡発生装置に導入する窒素ガス導入管路と、
前記窒素ガス導入管路の途中に設けられ導入する窒素ガス流量を測定するためのガス流量計と、
該ガス流量計と前記微細気泡発生装置の前記ガス導入部とを接続する前記窒素ガス導入管路の途中に装着される圧力計と、
を含むことを特徴とする溶存酸素除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の溶存酸素除去装置を用いたことを特徴とする溶存酸素除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−61829(P2006−61829A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247365(P2004−247365)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(305002165)
【Fターム(参考)】