説明

微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造

【課題】 長手方向を水平方向から所定の角度傾斜させて配置する気体溶解タンクを備えた微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造を提供する。
【解決手段】長手方向を水平方向ロから傾斜させて配置する気体溶解タンク1を備えた微細気泡発生装置の浴槽2への取付け構造。気体溶解タンク1に接続される管の少なくとも一部をフレキシブル配管8で構成し、微細気泡発生装置の気体溶解タンク1以外の部分を浴室床F又は/及び浴槽壁に固定し、気体溶解タンク1の長手方向の二箇所にそれぞれ、多数の玉41を該玉41の径よりも小径で変形可能な紐状部材42で数珠繋ぎ状に連結した吊下げ部材4の一端部を取付け、浴槽壁又はフランジ20の下面に、前記吊下げ部材4の玉41間の紐状部材42の部分に引っ掛け係止する係止部5をそれぞれ設け、前記係止部5に吊下げ部材4の任意の玉41間の紐状部材42の部分を選択的に引っ掛け係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体溶解タンク内に気体と液体とが混合した気液混合流体を噴射して攪拌させることで気体を液体に溶解させ、気液混合流体を浴槽内に吐出して溶解している気体を析出させる微細気泡発生装置を設けた浴槽が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
これは、略円筒状の気体溶解タンクを気液混合流体の流路の途中に備え、ポンプにより高圧にした状態で気体溶解タンク内に気体と液体とを貯留すると共に、気体溶解タンク内に気体と液体とが混合した気液混合流体を噴射して攪拌させることで気体を液体に溶解させて、この気体が溶解した気液混合流体を浴槽の浴水内に吐出して、微細気泡を発生させるものである。
【0004】
ところで、このような気体溶解タンクを備えた微細気泡発生装置にあっては、略円筒状をした気体溶解タンクをその長手方向が水平となるように配置すると、気体と液体との界面が長手方向の全域に亘って形成されて界面の面積が大きくなるものの、貯留している液体の深さは気体溶解タンクの半径程度と浅くなり、液体に大きな気泡が多数存在する状態で流出されてしまい、また、気体溶解タンクをその長手方向が鉛直となるように配置する場合は、貯留している液体の深さが深くなるものの、気体と液体との界面が気体溶解タンクの断面積程度にしかならず、混合攪拌の効率が低い、という問題があった。
【0005】
そこで、気体溶解タンクを傾斜して浴槽に取付けることが考えられるが、この場合、例えば特許文献2に示すような吊持部材を用いて取付けようとすると、ボルト・ナットの締結をし直して試行錯誤で角度を調整することとなって、作業が煩雑となると共に締結力によって角度が変わってしまって所望の角度が得られないものであった。
【0006】
また、図6に示すように、気体溶解タンク1を括ったインシュロック9を浴槽2の壁面に固定した固定木6に取付けて支持しようとすると、気体溶解タンク1を動かし易いものの所望の角度で固定せずに角度が不安定となってしまうものであった。
【特許文献1】特開2004−290803号公報
【特許文献2】特開平8−308757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、略円筒状をしてその長手方向を水平方向から所定の角度傾斜させて配置する気体溶解タンクを備えた微細気泡発生装置において前記角度の調節を容易に行うことができる微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、略円筒状をしてその長手方向を水平方向ロから傾斜させて配置する気体溶解タンク1を備え、気体溶解タンク1内に気体と液体とを貯留すると共に、気体溶解タンク1内に気体と液体とが混合した気液混合流体を噴射して攪拌させることで気体の液体への溶解を促進させ、前記気体溶解タンク1内の気液混合流体を圧力開放部38により減圧して浴水へ吐出することで浴水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置の浴槽2への取付け構造であって、気体溶解タンク1に接続される管の少なくとも一部をフレキシブル配管8で構成し、微細気泡発生装置の気体溶解タンク1以外の部分を浴室床F又は/及び浴槽壁に固定し、気体溶解タンク1の長手方向の二箇所にそれぞれ、多数の玉41を該玉41の径よりも小径で変形可能な紐状部材42で数珠繋ぎ状に連結した吊下げ部材4の一端部を取付け、浴槽壁又はフランジ20の下面に、前記気体溶解タンク1の二箇所に取付けた吊下げ部材4の玉41間の紐状部材42の部分に引っ掛け係止する係止部5をそれぞれ設け、前記係止部5に気体溶解タンク1に取付けた吊下げ部材4の任意の玉41間の紐状部材42の部分を選択的に引っ掛け係止して成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、気体溶解タンク1に取付けた吊下げ部材4の玉41間の紐状部材42の部分を任意に選択して、浴槽2に設けた係止部5に引っ掛け係止することで、気体溶解タンク1の取付け角度の調節を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、気体溶解タンクの取付けの際の水平方向からの角度の調節を、係止部の係止溝に挿入する吊下げ部材の玉(紐状部材)の位置をいずれにするか選択して、吊下げ部材の玉間の紐状部材の部分を係止部の係止溝に挿入するだけで行われて、微調節の作業が容易に行われるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基いて説明する。
【0012】
本発明は、気体溶解タンク1を備え、浴水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置の浴槽2への取付け構造であって、まず、気体溶解タンク1を備えた微細気泡発生装置について説明する。
【0013】
図4に微細気泡発生装置を設けた浴槽2の構成を示す。これは、浴槽2の内側面に吸込口21と吐出口22とが設けてある。吸込口21は接続管31を介してポンプ32の吸い込み側に接続され、ポンプ32の吐出側は流入管33を介して気体溶解タンク1の吸込側の後述する噴射口13に接続されている。流入管33には、途中に逆止弁34を有する接続管35を介して空気吸込口36が設けてある。ポンプ32は遠心ポンプ32を利用したもの等が用いられるが特に限定されない。気体溶解タンク1の吐出側の後述する流出口14は流出管37を介して圧力開放部38となる減圧弁又はベンチュリ(図4に示す例ではベンチュリ)の一端に接続され、圧力開放部38の他端は接続管39を介して浴槽2の側面に設置された上記吐出口22に接続されている。気体が溶解した湯水が吐出口22より浴槽2の浴水中に吐出されると、浴水中で溶解気体が析出して微細気泡が発生するものである。
【0014】
気体溶解タンク1は、図5に示すように、断面円形の直筒状をした側壁部11と、前記側壁部11の両側の端部を閉塞する端壁部12とで主体が構成される。気体溶解タンク1は、長手方向すなわち略円筒状をした側壁部11の中心軸イ(図5一点鎖線)が水平方向ロ(図5矢印)に対して10〜45°傾斜する姿勢で配置される。そして、傾斜した気体溶解タンク1は、上方側の端部が上流側Aの端部となると共に下方側の端部が下流側Bの端部となり、上流側Aに気液混合流体を気体溶解タンク1内に噴射するための噴射口13を形成すると共に下流側Bに液体を気体溶解タンク1内から流出する流出口14を形成してあり、この流出口14に流出管37の端部が接続されている。
【0015】
気体溶解タンク1内には、溶質となる例えば空気等の気体と、溶媒となる例えば水等の液体とが貯留されるもので、略円筒状をした側壁部11の上下方向の略中央付近に前記気体と液体との界面17が位置し、界面17より上部の上流側Aの部分が気体が貯留される気体貯留部15となると共に、界面17より下部の下流側Bの部分が液体が貯留される液体貯留部16となる。上記噴射口13は、気体貯留部15の内壁面(界面17より上流側Aの側壁部11または端壁部12の内壁面)か、界面17の位置か、あるいは界面17より若干下側の液体貯留部16の内壁面(界面17より下流側Bの側壁部11の内壁面)に形成され、流出口14は、液体貯留部16の端部付近の内壁面(界面17より下流側Bの側壁部11または端壁部12の内壁面)に形成される。
【0016】
また気体溶解タンク1の側壁部11には、弁(図示せず)を設けた空気抜き口18が形成してあり、この空気抜き口18の位置が上記気体貯留部15に貯留される気体と液体貯留部16に貯留される液体の界面17のレベルとなる。
【0017】
気体溶解タンク1内には、液体貯留部16に液体が貯留されると共に気体貯留部15に気体が貯留されており、噴射口13から前記気体溶解タンク1内に貯留されているのと同じ液体および気体が混合した気液混合流体が噴射される。噴射口13は、上述したように界面17より若干下側の液体貯留部16の上端付近の底面に形成されているため、噴射口13から噴射される気液混合流体は液体貯留部16に貯留されている液体によって勢いを大きく減殺されることなく噴射されて、噴射口13と対向する側壁部11の上側の内壁面に衝突し、この内壁面で跳ね返って界面17にて液体貯留部16に貯留されている液体に衝突して攪拌される。また液体貯留部16に貯留されている液体は、前記のように気液混合流体が界面17に衝突して攪拌される他に、噴射口13から気体溶解タンク1内に噴射される気液混合流体によって攪拌される。
【0018】
このように、気液混合流体の側壁部11の内壁面との衝突や界面17での衝突による攪拌、噴射される際の液体の攪拌等により、気体溶解タンク1内に貯留している気体および液体、気液混合流体中の気体および液体が混合され、気体の液体への溶解が促進される。すなわち、混合攪拌によるせん断により、液体に混合している気泡(気体)が細分化されて、液体と接する総表面積が大きくなるのに加えて、液体の気体との界面17付近における気体の溶解濃度が混合攪拌による均一化により低減されて、気体の液体への溶解速度が上昇するため、気体の液体への溶解が促進される。
【0019】
気体の溶解が進行した液体は気体溶解タンク1の液体貯留部16に貯留されるが、貯留されている液体には未溶解の気泡も数多く混合し、このような気泡は上方へ行くほど密に存在しており、液体貯留部16の下端部近傍では気泡はあまり存在せず、大きな気泡は殆ど存在しない。そして、気体の溶解が進行して大きな気泡が殆ど存在しない液体貯留部16の下端部の液体を流出口14から気体溶解タンク1外に流出させる。そして、気体溶解タンク1をその側壁部11の中心軸イが水平方向ロに対して傾斜する姿勢で配置してあるため、気体と液体との界面17の面積を大きく取って混合攪拌の効率を向上させることができると共に、液体貯留部16に貯留している液体の深さを深くして気泡が気体溶解タンク1外に流出するのを抑えることができる。これにより、微細気泡発生装置から吐出される微細起泡の白濁濃度が薄くなったり、微細気泡のサイズにバラつきが生じたりすることがなく、高濃度の微細気泡により湯の熱を肌に深く伝える効果や、肌表面で微細気泡がはじけることによる肌の汚れの除去の効果、保湿効果等の効果が得られるものである。
【0020】
次に、気体溶解タンク1の浴槽2への取付けについて図1乃至図3に基づいて説明する。
【0021】
浴槽壁には、本実施形態では吸込口21と吐出口22と圧力開放部38とが収納された一体型のケーシングが固定してある。ポンプ32は支持脚7を介して浴室床F上に載置される。そして、気体溶解タンク1は、本実施形態では流入管33及び流出管37の途中から気体溶解タンク1側の部分をフレキシブル配管8としてあり、気体溶解タンク1に接続される管の少なくとも一部をフレキシブル配管8で構成すればよい。気体溶解タンク1は微細気泡発生装置の気体溶解タンク1以外の部分により支持されない状態となっていて、浴槽2へ取付けるものである。
【0022】
気体溶解タンク1は、長手方向の二箇所にそれぞれ吊下げ部材4を取付けるもので、本実施形態では長手方向の両端部にそれぞれ吊下げ部材4を金具一体成型モールディングやビス等により設けてある。
【0023】
吊下げ部材4は図3に示すように、多数の玉41を、該玉41の径よりも小径で変形可能な紐状部材42で数珠繋ぎ状に連結することで構成してあり、SUSをはじめ金属で形成するのが好ましい。なお、紐状部材42は、各玉41間を連結する紐状部材42をそれぞれ別々に形成すれば、特に紐状部材42自体が変形性を備えていなくても、玉41と紐状部材42との連結部で角度が容易に可変となって、吊下げ部材4全体で変形が自在となる。
【0024】
そして浴槽2側には、平面視において気体溶解タンク1の二箇所にそれぞれ取り付けた吊下げ部材4に対応する位置に、紐状部材42を係止する係止部5を設けるものである。
【0025】
係止部5は、吊下げ部材4の玉41の径よりも幅狭で紐状部材42よりも幅広の係止溝51を有し、浴槽壁又はフランジ20の下面等に固定されるもので、本実施形態では、浴槽2のフランジ20の下面に係止部5を設けた合成木材や樹脂、ベニヤ板等からなる固定木6を瞬間接着剤やシリコンコーキング、ホットメルト等により貼り付けてある。なお、係止部5の形状は、略S字をしたもの等、特に限定されないものである。
【0026】
吊下げ部材4と係止部5との係止は、吊下げ部材4の任意の玉41間の紐状部材42の部分を選択的に係止部5の係止溝51に挿入して引っ掛け係止するもので(図3(b)参照)、いずれかの玉41の部分が係止部5に載置された状態となって係止されるものである。
【0027】
これにより、気体溶解タンク1の取付けの際の水平方向からの角度の調節を、係止部5の係止溝51に挿入する吊下げ部材4の玉41(紐状部材42)の位置をいずれにするか選択して、吊下げ部材4の玉41間の紐状部材42の部分を係止部5の係止溝51に挿入するだけで行われて、微調節の作業が容易に行われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の要部側面図である。
【図2】同上の要部斜視図である。
【図3】(a)は吊り下げ部材及び係止部の斜視図であり、(b)は(a)の係止状態の斜視図である。
【図4】同上における浴槽装置の構成図である。
【図5】気体溶解タンクの斜視図である。
【図6】従来の要部側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 気体溶解タンク
2 浴槽
20 フランジ
38 圧力開放部
4 吊下げ部材
41 玉
42 紐状部材
5 係止部
8 フレキシブル配管
F 浴室床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状をしてその長手方向を水平方向から傾斜させて配置する気体溶解タンクを備え、気体溶解タンク内に気体と液体とを貯留すると共に、気体溶解タンク内に気体と液体とが混合した気液混合流体を噴射して攪拌させることで気体の液体への溶解を促進させ、前記気体溶解タンク内の気液混合流体を圧力開放部により減圧して浴水へ吐出することで浴水中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造であって、気体溶解タンクに接続される管の少なくとも一部をフレキシブル配管で構成し、微細気泡発生装置の気体溶解タンク以外の部分を浴室床又は/及び浴槽壁に固定し、気体溶解タンクの長手方向の二箇所にそれぞれ、多数の玉を該玉の径よりも小径で変形可能な紐状部材で数珠繋ぎ状に連結した吊下げ部材の一端部を取付け、浴槽壁又はフランジの下面に、前記気体溶解タンクの二箇所に取付けた吊下げ部材の玉間の紐状部材の部分に引っ掛け係止する係止部をそれぞれ設け、前記係止部に気体溶解タンクに取付けた吊下げ部材の任意の玉間の紐状部材の部分を選択的に引っ掛け係止して成ることを特徴とする微細気泡発生装置の浴槽への取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−5779(P2009−5779A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168233(P2007−168233)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(505154956)パナソニック電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】