説明

微細繊維を含むシートの製造装置及び方法

【課題】微細繊維を含むシートを高品質かつ安定に連続生産するための製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】エンドレス加工を施した多層化ワイヤーを抄紙製膜用ベルトとして装着した微細繊維を含むシート製膜用の製造装置であって、該多層化ワイヤーが1層以上の基層と1層以上のバット層からなり、該バット層の1層以上に熱溶融樹脂を含む熱溶融繊維が含まれており、かつ該多層化ワイヤーが該熱溶融樹脂の融点以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする前記装置、及び該製造装置を使用した微細繊維を含むシートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細繊維から成る極めて微細な構造を有するシート材料を連続的に生産するための製造装置、及び該装置を使用した微細繊維を含むシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な繊維を含むシート材料(以下、「シート材料」又は単に「シート」ともいう。)は、近年、ナノネットワーク構造を有する新規な機能性シートとして着目されている(例えば、以下の特許文献1、2参照)。
こうしたシート材料は、蓄電デバイス用のセパレータや機能性フィルター、医療用材料など種々の分野での応用展開が期待されている(以下、特許文献2、3、非特許文献1参照)。また、シート材料の製造方法としては、エレクトロスピニング法が広く知られている(例えば、非特許文献1、2参照)が、抄紙法による製膜も報告されている(以下、特許文献1〜3参照)。
【0003】
抄紙法による製膜では、エレクトロスピニング法に比較して、セルロース繊維のように微細化し易い原料を使用した場合には、より微細な繊維を含むシート又は微細繊維のみからなるシートを低コストで、さらに高い生産性で、製造することが可能となる。以下の特許文献1によれば、特にセルロース繊維においてはパルプの微細化処理により、比較的容易に繊維径が1μm以下の微細繊維を得ることが可能であり、該微細繊維の水分散液からの抄紙法による製膜により、良好に微細繊維を含むシートを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2006/004012号パンフレット
【特許文献2】特開2008−274525号公報
【特許文献3】特開2006−49797号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. Yamashita, Nonwovens Review, 17, 41 (2007)
【非特許文献2】岸本吉則,繊維機械学会誌,61, 49 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
短繊維からの抄紙法による製膜では、繊維が微細になると抄紙法にて使用するワイヤーと呼ばれるフィルターベルトの目の細かさも要求される。特許文献1では、ロール状に捲回された一定の要件を満たす濾布を抄紙製膜時にワイヤー上に設置、走行させ、濾布上で抄紙を行う技術が開示されている。
【0007】
この方法であれば、微細繊維を濾布上で抄紙製膜した後、湿紙又は該湿紙を乾燥させてなる乾燥シートを該濾布から剥離して巻き取る必要があり、濾布そのものをエンドレスに加工しない限り、シートも濾布の長さ以上のものは作れないという制約がある。
また、ロール状に巻かれた濾布を使用する場合には、通常、濾布の厚みが厚すぎると濾水抵抗も増大し、ロールを交換する際の操作性も著しく不利になるため、薄い濾布を用いることが好ましい。しかしながら、抄紙製膜後、ロール状に巻き取られた濾布を再利用しないとコスト上極めて不利になるだけでなく、濾布を何度か再利用する場合には、その消耗性(耐久性)も不安要素となる。
【0008】
通常、抄紙製膜用のワイヤーは、金属性ワイヤー又はプラスチック製(織物系)ワイヤーにエンドレス加工が施されたものであり、抄紙製膜された湿紙を、独立したプレス工程や乾燥工程に搬送することにより、連続的に稼働時間に相当する長さだけのシートを作製することができる。
【0009】
この際のエンドレス加工とは、ワイヤーの末端を接合したものでないことが望ましい。何故ならば、ワイヤーの末端を接合し、エンドレスの構造としたものでは、通常、ワイヤーの継ぎ目の部分に構造上の乱れを生じてしまい、微細繊維を含む分散液からの抄紙法による製膜のケースにおいては、上記継ぎ目の微小な孔から微細繊維が抜け落ちてしまう可能性が大きい。仮に、微細繊維が抜け落ちないレベルの精巧な接合加工を施した場合であっても、ワイヤーの継ぎ目以外の部分と継ぎ目の部分とを精密に濾水抵抗が同じ構造にすることは難しい。ワイヤーの一部に濾水抵抗が異なる部分があれば、その部分で製膜して得たシート部分は他の部分と異なる物性を有することになる。すなわち、ワイヤーの末端を接合加工したものでは、得られるシート製膜における走行方向に周期的に物性上の不均質部が現れることとなる。
【0010】
これを防ぎ、シート材料を安定に製造するためには、接合部をもたないエンドレス加工を施したワイヤー(以下、「エンドレスワイヤー」ともいう。)を使用することが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載されているように、最大繊維径が1500nm以下であるような微細繊維を抄紙法で製膜するためには、極めて孔径サイズの細かいワイヤーが必要であり、特に繊維径が小さくなると、通常使用される抄紙製膜用のワイヤーでは繊維が抜け落ちてしまうケースも多くなる。通常、抄紙製膜用として使用されるワイヤーは、繊維を縦方向、横方向に適宜織り込んだ構造のものか又は金属性メッシュであり、これらを用いて上記の微細繊維を高収率で抄紙(濾過)することは不可能に近かった。仮に、微細繊維を濾過できる微細な織り構造のワイヤーを作るとしてもそのためにはワイヤーを構成する繊維の繊維径を小さくする必要があり、その制約のもとでエンドレス加工することは技術的に極めて困難であった。
【0011】
すなわち、微細繊維だけからなる又は微細繊維を含む連続(長尺可能)かつ均質(継ぎ目による特性の周期的な変化箇所が存在しない)なシート材料を提供するにおいて、連続生産プロセスで該シート材料を低コストかつ安定に製造するためには、微細繊維を歩留まり良く抄紙(濾過)でき、かつ継ぎ目のないエンドレス加工を施したエンドレスワイヤーを用いた製造装置及び製造方法を構築することが望まれていた。したがって、本発明が解決しようとする課題は、微細繊維を含むシートを高品質かつ安定に連続生産するための製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、入手し得る各種ワイヤーの評価を行い、従来抄紙製膜工程で使用されてきた金属ワイヤーや織物系プラスチックワイヤーでは、1)微細繊維を濾過し高い歩留まりで湿紙シートを回収できるだけの微細な孔構造を保有すること、2)ワイヤーのエンドレス加工が可能であること、の2点を同時に満足することは困難であるとの結論を得た。
そこで、ワイヤーの構造を従来の抄紙製膜の技術では使われることのなかった、不織布構造のシートにまで拡大し、その評価を行った。一般に、不織布構造のシート、例えば短繊維のバット繊維をニードルパンチしてなるバット層では、繊維がシート面に対しランダムに面配向しつつ積層しているが、繊維の坪量バラツキが大きく、構造上のむらができ易く、該シートをワイヤーとして用いた場合、構造上のむらがそのままシート材料の膜質不均一性に繋がる傾向がある。
【0013】
本発明では、これを回避すべく、ワイヤーとしては不織布層を含む多層化構造とし、耐久性や濾水性を確保できるようにするとともに、最表層を構成する繊維の繊維径を小さなものにして微細な繊維の抄紙製膜を効率的かつ均質に実施できるよう工夫することを鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の手段により上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]エンドレス加工を施した多層化ワイヤーを抄紙製膜用ベルトとして装着した微細繊維を含むシート製膜用の製造装置であって、該多層化ワイヤーが1層以上の基層と1層以上のバット層からなり、該バット層の1層以上に熱溶融樹脂を含む熱溶融繊維が含まれており、かつ該多層化ワイヤーが該熱溶融樹脂の融点以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする前記装置。
【0015】
[2]前記基層が無端状の織布からなり、かつ、前記バット層が不織布からなる、前記[1]に記載の微細繊維を含むシートの製造装置
【0016】
[3]前記バット層の平均繊度が6dtex以下である、前記[1]又は[2]に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0017】
[4]前記熱溶融繊維が、融点が200℃以下の熱溶融樹脂を含む、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0018】
[5]前記熱溶融繊維が、高分子量ナイロンからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のナイロンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0019】
[6]前記多層化ワイヤーの通気度が5cc/cm/sec以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0020】
[7]前記微細繊維を含むシートが、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を10重量%以上含有する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0021】
[8]前記微細繊維を含むシートが、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を90重量%以上含有する、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0022】
[9]前記製造装置を使用した抄紙による製膜過程において、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の収率が90重量%以上である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【0023】
[10]以下の工程:
前記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造装置を使用して、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の全固形分中に占める割合が10重量%以上である分散液から、前記多層化ワイヤー上で湿紙を形成させる抄紙工程、及び
前記抄紙工程で得た湿紙を、プレス工程、乾燥工程又は溶剤置換工程のいずれかに搬送する工程、
を含む、微細繊維を含むシートの製造方法。
【0024】
[11]以下の工程:
前記全[1]〜[9]のいずれかに記載の製造装置を使用して、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の全固形分中に占める割合が90重量%以上である分散液から、前記多層化ワイヤー上で湿紙を形成させる抄紙工程、及び
前記抄紙工程で得た湿紙を、プレス工程、乾燥工程又は溶剤置換工程のいずれかに搬送する工程、
を含む、微細繊維を含むシートの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の微細繊維を含むシートの製造装置及び製造方法により、微細繊維からなる連続かつ均質な不織布シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の製造装置及び後工程用の装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の製造装置及び後工程用の装置の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の製造装置に用いる多層化ワイヤーの断面模式図である。
【図4】本発明の製造装置に用いる他の多層化ワイヤーの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細繊維を含むシートの製造装置の第一の態様は、エンドレス加工を施した多層化ワイヤーを抄紙製膜用ベルトとして装着した微細繊維を含むシート製膜用の製造装置であって、該多層化ワイヤーが1層以上の基層と1層以上のバット層からなり、該バット層の1層以上に熱溶融樹脂を含む熱溶融繊維が含まれており、かつ該多層化ワイヤーが該熱溶融樹脂の融点以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする前記装置である。
【0028】
本発明は、エンドレス加工を施した多層化ワイヤーを抄紙製膜用ベルトとして装着した微細繊維を含むシートの製膜用製造装置であり、該抄紙製膜用ベルト以外の部分については、工業的に利用可能な任意の連続式抄紙機が使用できる。特に、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、及び円網式抄紙機は、本発明のシートの製膜用製造装置として好適に使用することができる。該製造装置は目的に応じて装置仕様に改良を加えたものであっても構わない。
【0029】
ここで、前記多層化ワイヤーは、前述した理由によりエンドレス加工が施されていることが必要である。エンドレス加工を施した多層化ワイヤーとは、接合部が存在しないように、すなわち多層化ワイヤーのいかなる部分にも接合に伴う不均質部分を含まない仕様として加工された無端状の回転式ベルトであることを意味する。エンドレス化は、まず多層化ワイヤーの基層を製作するときに、例えば製織布を袋織りとして無端状に製織することで実現できる。
【0030】
多層化ワイヤーは、1層以上の基層と1層以上のバット層からなることが好ましい。
基層は多層化ワイヤーの補強層として機能し、かつ濾水抵抗の低いものであることが好ましい。具体的には、1/1平織りで無端状に製織、例えば袋織り製織するとか、3/1 1/3などの二重織で無端状に製織、例えば袋織り製織することができる。基層は1層であっても複数の層が積層化されていても構わない。
【0031】
基層は、ポリアミド繊維やポリエステル繊維から成る、紡績糸やフィラメントの単糸、撚糸又はマルチフィラメントで作られた、織布が用いられるが、特にポリアミドの単糸、撚糸の織布が好ましい。布に使用する糸の繊度は、単糸で200〜2000dtex、撚糸では400〜5000dtex程度の糸材が使われる。基層全体の坪量は300〜800g/m程度の範囲から適宜選択される。
【0032】
バット層は、微細繊維を抄紙する際に実質的なフィルターとして機能する層である。バット層は、微細繊維を濾過できるだけの微細な構造をもつ必要があり、さらに耐久性も併せ持つことが望ましい。バット層についても1層であっても複数の層が積層化されていても構わない。
【0033】
多層化ワイヤーの基層へのバット層の取り付けは、ニードルパンチ、静電気植毛、スパンボンドやスパンレースなどの繊維積層技術が利用できるが、特にニードルパンチの技術が好ましい。ニードルパンチでは、捲縮性の良い短繊維、例えば10〜50山/5cm程度の捲縮を有する短繊維をバット層として使用することができるので、他の繊維積層技術に比べて基層の厚み方向に均一に、しかも絡合性良くバット層を積層することができる。
【0034】
バット層は、短繊維が絡合によりバット層厚み方向に積層されて、微細繊維を濾過する層となるが、微細繊維の繊維径が小さいほどバット層を貫通し易いから、微細繊維シートの歩留が悪くなる。
したがって、本発明では微細繊維の高い歩留を維持するために、バット層に熱溶融繊維を含ませて、該バット層を熱処理することで、バット層内の繊維周囲に溶融固着した小片を形成させ、バット層の細孔径を小さくすることにより、微細繊維の高い歩留が発現されるようにすることが好ましい。
【0035】
本発明では熱溶融繊維を含むバット層の平均繊度が1dtex〜6dtexであることが好ましく、より好ましくは1dtex〜4dtex、更に好ましくは1dtex〜2dtexの範囲である。バット層の平均繊度が6dtexを超えるものは、多層化ワイヤーのバット層の細孔径を小さくできず、したがってこの多層化ワイヤーを使用した抄紙によるシート材料は、その表面平滑性が悪くなるため、シートの品質が良くない場合がある。一方、平均繊度が1dtexよりも細いとニードルパンチ工程での解繊性が悪くなり、多層ワイヤーのバット層が不均一な密度になりやすく抄紙製膜を効率的かつ均質にできなくなる。
【0036】
本発明では、バット層における熱溶融繊維の含有量は、1重量%〜100重量%が好ましく、より好ましくは5重量%〜75重量%、更に好ましくは10重量%〜50重量%の範囲であって、残部は他のバット繊維から成る。
【0037】
本発明では、残部の他のバット繊維は、熱溶融繊維と略同一の繊度の繊維が好ましい。それにより、多層化ワイヤーを使用し、抄紙法により得ることのできる微細繊維を含むシートは、その表面平滑性が良くなるため、品質の良いシートとなる。また、バット層における熱溶融繊維の含有量は多いほど、バット層の細孔径を小さくでき、その結果、抄紙法により得られる前記シートの表面平滑性が良くなるが、多層化ワイヤーの濾水性が悪くなり、抄紙時間が増え、シートの生産効率が下がることとなる。一方、バット層における熱溶融繊維の含有量が少ないほど、前記シート製膜時における微細な繊維の歩留が悪くなり、抄紙効率が下がることとなる。
【0038】
また、バット層は基層の両側(便宜上、多層化ワイヤーにおいて抄紙した湿紙と接触する側を「シート側」と呼び、反対側を「ロール側」と呼ぶものとする。)に設けてもよく、各々のバット層の坪量は、基層のシート側には50〜800g/m、基層のロール側には0〜200g/mが好ましい。バット層の坪量が大きい程、多層化ワイヤーの微細繊維歩留は向上するが、バット層内部への微細繊維の蓄積、いわゆる目詰まりを起こすことがある。また、バット層の坪量が小さいと、多層化ワイヤーの耐久性や微細繊維歩留が悪くなる。
【0039】
前記熱溶融繊維としては、融点が200℃以下の熱溶融樹脂(以下「低融点成分」ともいう。)を含む繊維が好ましく、具体的には融点が200℃以下のポリエチレンやポリプロピレンなどの脂肪族ポリオレフィン、又は融点が200℃以下の共重合ポリアミドや共重合ポリエステルを含む繊維が挙げられる。
熱溶融繊維は前記低融点成分からなる繊維であっても、前記低融点成分を一部含む繊維であってもよい。後者の例としては、前記低融点成分を鞘とし、該低融点線分よりも融点の高い樹脂(「高融点成分」ともいう。)を芯とする芯鞘複合繊維が好ましい。
そして、本発明では、残部の他のバット繊維として、その融点が200℃より高い熱溶融樹脂からなる繊維であって、好ましくはナイロン(ポリアミド)やポリエステル(PET)、又は芳香族ポリアミドなどからなる繊維が使用できる。
なお、熱溶融樹脂の融点は、カットした繊維片の適量をサンプルとし、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度10℃/minで昇温させて得られたプロファイルにおける融解(吸熱)ピークの立ち上がり温度にて規定する。
【0040】
さらに、本発明の製造装置において抄紙製膜用ベルトとして使用する前記多層化ワイヤーを熱処理することで、前記熱溶融繊維又は前記芯鞘複合繊維は、バット層内の繊維周囲に溶融固着した小片を形成し、バット層の細孔径を小さくすることができる。つまり、本発明では、バット層内に繊維によって形成される微細なネットワークが形成され保持されるから、濾過特性(微細繊維の濾別特性と濾水抵抗のバランス)の面で特に好ましい。特に本発明では、熱処理により前記熱溶融繊維又は前記芯鞘複合繊維の繊維表面の接触部が融着結合し、強固な結節点として機能することができる。
【0041】
さらに、本発明の製造装置にて抄紙製膜用ベルトとして使用する前記多層化ワイヤーの通気度が5cc/cm/sec以下、より好ましくは3cc/cm/sec以下、さらに好ましくは、2cc/cm/sec以下であると、微細繊維の歩留まりが高く、微細繊維を含むシートを高い生産性にて製造することができる。
ここで通気度とは、JIS L1096に基づき、東洋精機製「フラジールパーミヤメータ」通気度測定機により、吸込み圧力125Pa(1.27cmAq)時の通気量である。
【0042】
次に、本発明の製造装置に装着する多層化ワイヤーの製造方法について記載する。
本発明の多層化ワイヤーは、例えば、
(1)基層を準備する工程、例えば無端状に製織(袋織り)する工程と、
(2)基層のシート側にバット層を取り付ける工程、例えば短繊維をニードルパンチする工程と、
(3)好ましくは、基層のロール側にもバット層を取り付ける工程、例えば短繊維をニードルパンチする工程と、
(4)該バット層を取り付けた該基層を熱処理する工程、例えば一対の平行なロール間に該基層を架張し、ロールを回転させて該基層を周回させながら、熱風及びおよび/又は熱プレスする工程、
とを、
備えた製造方法で製作される。
【0043】
工程(1)では、織機に整経糸を仕掛けヘルドにより上下する該整経糸と、シャトルに内在する打ち込み糸とで交織することにより、無端状に製織するものである。
工程(2)と(3)では、予め短繊維をカード機械に仕掛けて解繊し、そのウェッブを前記基層のシート側及びロール側に積層しつつニードルパンチして、基層とバット層とを絡合一体化するものである。
工程(4)では、無端状の基層(バット層が付与された基層)を一対の平行なロール間に掛け入れ、張力を与えて緊張した状態で熱風及び/又は熱プレスロールで熱処理するものである。
【0044】
本発明の製造装置は、微細繊維を含むシートを安定に抄紙製膜することを目的とするものであり、抄紙製膜する原料の中に微細繊維が含まれている場合に有効である。
本発明において、微細繊維とは、繊維径が1000nm以下のものを意味し、シートが微細繊維を含む、又は「微細繊維を含むシート」とは、該微細繊維を乾燥シート中に10重量%以上含むこと、及び該シートを意味する。
さらに繊維径とは、走査型電子顕微鏡による該乾燥シートの表面写真から解析して得られる数平均繊維径を意味する。
【0045】
本発明の製造装置を使用して製造することができる微細繊維を含むシートは、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を10重量%以上含有するシートであることが好ましく、より好ましくは繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を50重量%以上含有するシート、さらに好ましくは繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を90重量%以上含有するシートである。本発明の製造装置を使用して、高収率かつ安定にこれらのシートを製膜することが可能である。また、本発明の製造装置を用いれば、10nm以上500nm以下である微細繊維のみからなるシートも好適に製造することが可能となる。乾燥シート中に微細繊維が10重量%よりも少ない含量しか含まれていない場合であっても、本発明の製造装置を用いて製膜することは可能であるが、微細繊維以外の繊維との相互作用により本発明の多層化ワイヤーを使用せず、他の多層化ワイヤーによっても、歩留り良く安定な製膜ができるため本発明の優位性が必ずしも現れない。
【0046】
微細繊維は、抄紙製膜による製造という性格上、短繊維であることが好ましい。近年、繊維径が1000nm以下、又は500nm以下の繊維を、人工的に製造するエレクトロスピニング法や、海島構造の単糸断面をもつ複合繊維から海領域の高分子を溶出洗浄して島部分の微細繊維として抽出する方法が報告されているが、本発明において、これらの方法で製造された長繊維を使用する場合には、一定繊維長にカットした短繊維を使用することが好ましい。
【0047】
本発明の製造装置を用いたシートの製造において、その原料となる微細繊維のより好ましい様態は、微細なフィブリル構造を有する短繊維からの微細化処理により得られる微細繊維である。天然繊維の場合にはセルロースやキチンのように元々ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが生産され、それが高度に集束化して繊維を形成しているものが多いので、天然繊維を水分散体として湿式法による微細化処理を施して得られる微細繊維を好適に使用することができる。この他にも天然繊維として、羊毛、絹、コラーゲン等も微細繊維の原料として使用することができる。これらのうち、極めて汎用性が高く容易に入手でき、比較的容易に500nm以下の繊維径にまで微細化できる点においてセルロース繊維は、本発明の製造装置で生産するシートに含まれる微細繊維の原料として好適に使用することができる。
【0048】
微細セルロース繊維の原料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等のいわゆる木材パルプと非木材パルプを使用することができる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ等を挙げることができる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプとは、コットンリントやコットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のものが多い)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹等の原料を蒸解処理による脱リグニン等の精製工程や漂白工程を経て得られる精製パルプを意味する。
【0049】
この他、海藻由来のセルロースやホヤセルロースの精製物もミクロフィブリル化セルロースの原料として使用することができる。また、ミクロフィブリル化セルロースではないが、セルロースミクロフィブリルとして、酢酸菌のようなバクテリアが産生するバクテリアセルロースを使用してもよい。
これらの中でも、原料調達の容易さ、品質の安定度、セルロース純度の観点から、木材由来パルプ、コットン由来パルプ、麻由来パルプ、竹由来パルプ、バガス由来パルプ、及びケナフ由来パルプの中から選ばれる少なくとも一つを選択するのがより好ましい。
【0050】
次に湿式微細化法による微細セルロース繊維の製造例について記載する。微細セルロース繊維の製造には、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等を用いることができる。これらの装置を用いての微細化処理は、セルロース繊維の水分散体に対して実施される。該水分散体中の固形分濃度(後述するようにセルロース以外の繊維や繊維以外のフィラー材が含まれていてもよい)は、上述した叩解処理に準じ、0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度とすれば、詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
【0051】
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザーなどを挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザーなどの高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同等のレベルで微細化を実施できる装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同等のレベルで微細化を実施できる装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
【0052】
微細化セルロース繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件(装置の選定や操作圧力及びパス回数)又は該微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。例えば、微細化処理として高圧ホモジナイザーを用いる場合には、操作圧は、50MPa以上、好ましくは80MPa以上とし、好ましくは2パス以上、より好ましくは3パス以上の回数、処理を行うと、本発明の製造装置で生産するシート材料の原料としての微細セルロース繊維が水等の溶媒に分散したスラリーを好適に得ることができる。
【0053】
また、原料パルプから微細セルロース繊維への微細化においては、100℃以上の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、叩解処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、原料パルプを微細化し易い状態に前処理しておくことは場合によっては有効である。
これらの処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロースなどの不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、大変有効であることもある。
【0054】
また、叩解処理工程においては、原料パルプを0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、まずビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
【0055】
また、天然繊維ではない再生繊維や合成繊維を微細化繊維の原料として使用することもできる。繊維径が500nm以下になり易い繊維は、高度に繊維軸に配向し、フィブリル化し易い繊維であるが、そのような繊維の例として、キュプラ繊維、リヨセル、テンセル等の再生セルロース繊維、各種ポリアクリロニトリル系繊維、パラ型アラミド繊維等を挙げることができるが、これらに限定されない。合成繊維に関しても、その微細化処理においては前記セルロース繊維の微細化処理に準じることにより微細化繊維を得ることができる。前述した前処理を含む微細化の各工程においては複数種の繊維を混在させて処理を行っても構わない。
【0056】
本発明の製造装置にて生産するシートの原料として、微細繊維以外の短繊維が含まれていても、フィラー材のような繊維以外の材料であっても構わない。このような場合、あるいは前述した複数種の微細繊維が混在する場合には、得られるシートは複合化シートとなる。
微細繊維以外の短繊維としては、前述した微細繊維の原料繊維から得られる繊維径が1000nmよりも大きな短繊維(例えば、平均繊維径が5μmのレーヨン短繊維や木材パルプを叩解工程によってフィブリル化させたフィブリル化セルロース繊維(数μm〜10μm程度の繊維径の幹繊維は残存している))や全く異なる素材の短繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリケトン繊維、ポリスルホン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、セルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等)、該短繊維を叩解処理等によりフィブリル化させた繊維を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
また、前述フィラー材としては無機繊維、無機粒子、高分子粒子を挙げることができる。無機繊維としては、後述する分散媒体に溶解しない繊維であって、ガラス繊維、金属繊維や高分子繊維を焼成、炭化させて得られるカーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどの炭素系繊維を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0058】
無機粒子としては、フュームドシリカ、コロイダルシリカのようなシリカ粒子、スメクタイトのような板状無機粒子、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、チタン酸バリウムのような金属酸化物粒子や金、銀、銅、鉄、ニッケル等の金属粒子を挙げることができる。粒子形状も球状のものだけでなくウィスカー状やその他異形形状を有する粒子も使用することができるが、これらに限定されない。
【0059】
高分子粒子としては、スチレン−ブタジエン系(SB)ラテックス、アクリル系ラテックス、各種ゴム系ラテックス、ポリ塩化ビニリデン系ラテックス、ウレタン系ラテックスをはじめとする各種ラテックスの他に、ポリオレフィン系粒子、ポリメチルメタクリレート系粒子、ポリアミド系粒子、ポリエステル系粒子、全芳香族ポリアミド系粒子、ポリイミド系粒子、ポリカーボネート系粒子、結晶セルロースのようなセルロース系粒子、ポリアセタール系粒子等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
さらに、本発明の製造装置を用いて製造する微細繊維を含むシートには、水溶性高分子、界面活性剤、抄紙用分散液中に金属イオンの形で導入される金属塩のような添加剤類も含まれていても構わない。これらは、抄紙用分散液を安定化させるだけでなく、得られるシートの品質向上(膜質均一性の向上、強度の向上等)にも寄与する場合がある。
【0061】
次に、本発明の製造装置を使用した微細繊維を含むシートの製造方法について記載する。
本発明に係る微細繊維を含むシートの製造方法は、以下の工程:
前記した製造装置を使用して、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の全固形分中に占める割合が10重量%以上である分散液から、前記多層化ワイヤー上で湿紙を形成させる抄紙工程、及び
前記抄紙工程で得た湿紙を、プレス工程、乾燥工程又は溶剤置換工程のいずれかに搬送する工程、
を含む、微細繊維を含むシートの製造方法である。
【0062】
抄紙工程においては前述したエンドレス加工を施した多層化ワイヤーを装着した抄紙機に抄紙用の分散液を供給し、抄紙を行う。このときの抄紙用分散液としては、前記微細繊維を溶媒中に分散させた分散体、又は前記微細繊維と微細繊維以外の材料とを混合して溶媒中に分散させた分散体を用いる。いずれの場合においても微細繊維は単一種であっても複数種であっても構わない。
【0063】
溶媒としては、通常水を用いるが、場合によってエタノール、イソブタノール等の水へ溶解する有機溶媒の水溶液、n−デカン、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール等の水に対し相分離する有機溶媒を含むO/W型エマルジョンを用いても構わない。有機溶媒の水溶液を溶媒に用いる場合には水溶液中に溶解する有機溶媒の重量濃度は80重量%以下、より好ましくは50重量%以下であると、微細な孔径を有する微細繊維を含むシートが得られ易くなる。また、O/W型エマルジョンを溶媒に用いる場合にはエマルジョン中に分散する油滴重量の濃度は、5重量%以下、より好ましくは2重量%以下であると微細な孔径を有しかつ均質性に優れた微細繊維を含むシートを、有機溶媒置換による製造方法よりも低コストで得ることができる。
該分散液中に含まれる微細繊維の全固形分中に占める割合が10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは90重量%以上であると本発明の製造装置を用いて高収率かつ安定に微細繊維を含むシートを製膜することができる。
【0064】
抄紙用の分散液から品質のよいシート材料を得るためには各種成分を配合した後の分散条件も重要である。安定かつ高効率な抄紙製膜を達成するためには、該分散液中の全固形分濃度は好ましくは0.05重量%以上0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上0.4重量%以下、さらに好ましくは0.13重量%以上0.3重量%以下とするとよい。また、分散液を調製する際の分散条件は、ディスパー型の分散機、叩解機、高速ホモジナイザー、グラインダー等を用いた高度な分散処理を適宜施すと均一性に優れたシートを得ることができるので好ましい。また、分散時には、特許文献1にも記載されているように、高度な分散条件により個々の微細繊維が独立分散するような状態よりも微細繊維が緩やかに絡み合った状態の方が、得られるシートの物性面(絡み合い多数のための強度の向上)と生産面(抄紙時の水の抜けるルートが確保され易く、濾水性に優れる)の両面で好適であるので、処方に応じた最適の分散条件を設定することが重要である。
【0065】
抄紙用分散液は本発明の製造装置である前記多層化ワイヤーを装着した抄紙機に前記多層化ワイヤーを介して供給され、該多層化ワイヤー上で抄紙による製膜が進行する。抄紙工程では、サクションによる減圧制御を行うと濾水が効率的に進行し、生産性も向上する。該抄紙工程を経て微細繊維を含む湿紙が得られるが湿紙の固形分率は、好ましくは5重量%以上50重量%以下、より好ましくは8重量%以上40重量%以下とすると湿紙は次の工程へと容易に搬送できるだけの湿紙強度を有するので好ましい。湿紙の固形分率が5重量%よりも小さいと湿紙強度が弱く、次工程への搬送が困難となるので好ましくなく、一方、湿紙の固形分率が50重量%よりも大きいと、抄紙工程において後述する強力な予備乾燥が必要となり、該予備乾燥によって抄紙機に装着された多層化ワイヤーの耐久性が損なわれるため、好ましくない。
【0066】
本発明の製造方法で製造することのできる微細繊維を含むシート(抄紙直後は「湿紙」)は、従来の短繊維から成る湿紙の製造工程とは異なり、極めて微細なネットワーク構造を有しているため、保液性が高い。従って、サクション等による濾過だけでは湿紙は上記固形分率に到達しないこともある。このような場合には、前記多層化ワイヤーが装着された抄紙工程中に予備プレスパートを設け脱水を行う、あるいは加熱ロールによる予備乾燥パートを設け固形分率を向上させることも有効である。但し、予備乾燥パートを設ける場合には、予備乾燥によって加熱ロールに接触する多層化ワイヤーの耐久性に悪影響を及ぼさない条件に設定する必要がある。具体的には、予備乾燥ロールの表面温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下に設定すると、本発明の多層化ワイヤーは寸法安定性が良く熱劣化など悪影響を及ぼすことが少なくなる。なお、予備乾燥が本発明の多層化ワイヤーに影響を与える場合は、基層又はバット層の短繊維の材質を適宜選択することで対応することができる。
以上の抄紙工程で得られた湿紙は、プレス工程、乾燥工程、溶剤置換工程の少なくともいずれか1つに搬送される。搬送はいずれも単純に湿紙を次工程に送るか、又は接触・転写させるかのいずれかによって行う。抄紙工程における前記予備プレスパートにおけるプレスロールに一旦、転写させてピックアップする方法も場合によっては有効である。
【0067】
プレス工程は、さらなる脱水によって湿紙の強度を向上させる、又は湿紙の厚みを制御するために有効である。乾燥工程は、ドラムドライヤーのような乾燥収縮を低減できる乾燥法によるのが好ましいが、シートの組成が微細セルロース繊維のような乾燥収縮が極めて大きな繊維を含まない場合や含んでいても、その分率が比較的少ない場合、さらには抄紙工程の予備乾燥によって湿紙の固形分率が30重量%以上となっている場合には、連続式熱風乾燥機や連続式赤外線乾燥機による乾燥も有効である。
【0068】
さらに、微細セルロース繊維の集合体に見られるように、乾燥収縮が大きな微細繊維を含むシートの製造において、高空孔率で通気性をもつシートとするためには、抄紙工程の後、湿紙の媒体である水をより表面張力の小さな有機溶剤(例えば、エチルアルコール、イソプロパノール、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン等)又は有機溶媒/水の混合溶液へ置換する溶剤置換工程へ搬送し、その後乾燥工程にて有機溶剤を乾燥させシートを製造することも場合によっては有効である。
【0069】
いずれにしても本発明の製造方法を用いた抄紙工程により微細繊維を含むシート(湿紙)を製造した後、湿紙をプレス工程、乾燥工程、溶剤置換工程の少なくともいずれか1つの工程へと搬送、処理し、いずれも最終的には乾燥工程をへてシートを乾燥させて巻き取る。製品要求に応じて、場合によっては加熱カレンダー処理を含むカレンダー処理、スリット処理等を施して製品とする。
【0070】
図1と図2に、微細繊維を含むシートを製造するための本発明の製造装置及び後工程装置の例を示す。
図1の例においては、傾斜ワイヤー式抄紙機の抄紙工程A10にエンドレス加工を施した多層化ワイヤーA21が装着されている。抄紙用分散液は供給パートA22から供給され、液溜りを形成し、ワイヤーの走行と共にウェットサクションパートA23の減圧脱水装置により徐々に脱水され、湿紙を形成する。湿紙はさらにドライサクションパートA24による脱水を経由した後、抄紙工程A10内に設置されたプレスロールA25によるプレス処理によりさらに脱水されると同時に、プレスロール面に転写、ピックアップされる。抄紙工程A10からピックアップされた湿紙は再度、プレスロールA27を含むプレス機A11に渡され、さらなる脱水を施され、乾燥機A12へと送られる。乾燥機A12では、湿紙はフェルト層A28と合わされ、ドラムドライヤーA29と接触し、乾燥シートを形成する。乾燥工程A機を経て、得られた乾燥シートは巻き取り機A13によってロール状に巻き取られる。
【0071】
また、図2の例では、図1と同様、傾斜ワイヤー式抄紙機の抄紙工程A10にエンドレス加工を施した多層化ワイヤーA21が装着されている。抄紙用分散液は供給パートA22から供給され、ウェットサクションパートA23、ドライサクションパートA24による脱水を経由して湿紙を形成するのは図1の例と同じである。その後、予備乾燥ロールA30により湿紙中の固形分率を増大させ、湿紙の自立性を高めた状態にして、乾燥機A12へと搬送する。乾燥工程では、湿紙はフェルト層A28と合わされ、ドラムドライヤーA29と接触し、乾燥シートを形成する。乾燥工程を経て、得られた乾燥シートはカレンダー処理機A14を経て薄膜化と同時に表面平滑性を向上させ、巻き取り機A13によってロール状に巻き取られる。図1および図2に示した製造装置の例は本発明の実施の形態の一例であって、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の製造装置及び製造方法によって提供されるシート材料は、用途目的に応じた仕様として作製することにより、各種蓄電デバイス用のセパレータ、液体フィルターや水処理膜、エアフィルターのような各種機能性フィルター、医療用の分離フィルター、生活製品等における拭き取り用シートをはじめ、各種機能紙、吸収材料、医療材料用の支持体材料としても適用できるだけでなく、エポキシ樹脂等の各種の樹脂と複合化させることにより、半導体デバイスや配線基板用の基板、低線膨張率材料のフレキシブル基材等広範囲の分野で利用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1、2)
図3に示す構造をもつ多層化ワイヤーB10を装着した傾斜ワイヤー型抄紙機を含む図1に示すシート製造装置によって、微細繊維を含むシートを作製した。
【0074】
(1)多層化ワイヤーの作製
図3に示すように、多層化ワイヤーB10は、織布からなる基層B30と、基層のシート側の表面に形成された第1バット層B22と、ロール側(基層のシート側とは反対の側)の表面に形成された第2バット層B23と、前記第1バット層のシート側の表面に配されたシート接触側バット層B21とからなる。
基層B30は、360dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を6本撚りした糸を経糸に、360dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を4本撚りした糸を緯糸に1/1組織で製織した。基層の坪量は350g/mである。
基層B30は、図3では1/1平織り製織布であるが、多重製織布であってもよい。製織布の経糸及び緯糸の材質として、ナイロンやポリエステル(PET)、芳香族ポリアミド、およびポリパラフィニレンスルフィド(PPS)などの中から適宜選択して使用することができる。
【0075】
基層B30のシート側又はロール側に形成されたバット層B21、B22、B23は、ナイロン短繊維(ステープルファイバー)とナイロンの熱溶融繊維(芯鞘複合繊維)から構成され、ニードルパンチにより、それぞれ、基層B30のシート側及びロール側に絡合一体化されている。
それぞれのバット層の坪量、短繊維の平均繊度、バット層における芯鞘複合繊維の含有量等を、以下の表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
芯鞘複合繊維は3.3dtexの太さを用いたが、本発明の芯鞘繊維は、温度25℃での絶対粘度が80mPa・s以上である高分子量ナイロンからなる芯成分(融点225℃)と、この芯成分よりも低融点のナイロン(例えば共重合ナイロン)からなる鞘成分(融点140℃)とから構成されている。
【0078】
無端状に製織した基層B30に、B21、B22、B23のバット層をニードルパンチにて絡合した後、2本のロール間にヒーターとロールプレス装置を備えた、高圧プレスドライヤーに仕掛け、140℃−2m/minで20Kg/cmでプレスした多層化ワイヤーB10−MW1と、140℃−2m/minで40Kg/cmでプレスした多層化ワイヤーB10−MW2を製作した。140℃−20Kg/cm品は、通気度4.3cc/cm/sec、表面平滑度Ra=5.4μm、140℃−40Kg/cm品は、通気度1.8cc/cm/sec、表面平滑度Ra=4.5μmを得た。
【0079】
表面平滑度は、JIS B0601-2001に基づき、東京精密製「サーフコム」表面粗さ測定機により、評価長さ10mm、カットオフ値2.5mm、測定速度0.6mm/秒における表面平滑度である。
【0080】
(2)抄紙用分散液の調製
微細繊維の原料としてコットンリンターパルプ(日本紙パルプ商事(株))を使用し、微細繊維の分散液を調製した。該パルプを固形分1.5重量%となるように水中に分散させて水分散体(400L)とし、叩解装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして400Lの該水分散体に対して、20分間叩解処理を進めた後、引き続いてクリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で20分間叩解処理を続けた。均一かつ粘調な白色の叩解スラリーを得た。得られた叩解スラリーを、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、数平均繊維径が102μmである微細セルロース繊維の水分散体(固形分濃度:1.5重量%)、M1を得た。
【0081】
次に、微細繊維の原料として、パラ系アラミド繊維であるTwaronパルプ1094(帝人テクノプロダクツ(株))を使用し、微細繊維の分散液を調製した。該パルプを固形分1.5重量%となるように水中に分散させて水分散体(400L)とし、上記コットンリンターパルプの場合と同様の叩解装置を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして400Lの該水分散体に対して、20分間叩解処理を進めた後、引き続いてクリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で40分間叩解処理を続け、若干黄色身がかった白色の叩解スラリーを得た。該叩解スラリーを、前記高圧ホモジナイザーを用いて操作圧力100MPa下で10回の微細化処理を実施し、数平均繊維径が187μmである微細アラミド繊維の水分散体(固形分濃度:1.5重量%)、M2を得た。
【0082】
M1のみを水で希釈した場合、及びM1とM2を1:1の重量配合割合として水で希釈した場合の2通りについて、共に分散液中の全固形分濃度を0.2重量%として分散処理を施し、それぞれ、抄紙用分散液D1及びD2とした。すなわち、D1は微細セルロース繊維の0.2重量%水分散液、D2は微細セルロース繊維/微細アラミド繊維=0.1/0.1(重量%/重量%)の混合水分散液とした。分散液は共に、全量400Lに対し、希釈等による組成調製の後、前記叩解装置を分散装置として用い、ディスク間距離をゼロとして20分間処理を行い、抄紙用分散液とした。
【0083】
(3)抄紙機による連続製膜
図1に示す傾斜ワイヤー式抄紙機の抄紙工程A10にエンドレス加工を施した多層化ワイヤーB10−MW1とB10−MW2の各々を装着した場合(それぞれ、実施例1及び実施例2とする)につき、各々、抄紙用分散液D1及びD2を用いた場合のシート製膜性、得られたシートの物性を評価した。
【0084】
ここで、抄紙工程の仕様及び抄紙製膜の条件は以下の通りとした:
抄紙工程における抄紙パートの幅:0.65m、
抄紙パートの長さ(ウェットサクションライン長):1.8m、
抄紙パートの傾斜角度:5°、
抄紙用分散液の抄紙工程への供給速度:32.5L/min、
ワイヤーの走行速度:10m/min、
(分散液の濃度、供給速度、ワイヤーの走行速度の関係から、狙い目付は10g/m)。
【0085】
抄紙工程中でウェットサクション及びドライサクションの設定を適宜コントロールし、さらにプレスロールA25の圧を適圧として湿紙をプレスロールA25に転写させると同時にそこからピックアップして直ちにプレス工程のプレス機へと渡し、さらにプレス脱水させた後、湿紙を表面温度130℃に設定したドラムドライヤーA29にて乾燥させ、巻取り機にてロール状に巻き取った。
【0086】
実施例1と2における抄紙用分散液D1とD2からの製膜性と得られたシートの物性を以下の表2に示す:
【0087】
【表2】

【0088】
実施例1では、より微細な繊維からなるD1からは抄紙工程における繊維の抜けが認められ、抄紙による製膜は実施不可能であったが、抄紙用分散液D2を用いた場合にはワイヤーからの湿紙の転写性(剥離性)は若干悪いものの抄紙による製膜は可能であることが確認された。得られたシートの目付から歩留も良好であった。
一方、実施例2では、実施例1では抄紙による製膜ができなかったD1からも製膜が可能であった。但し、ワイヤーからの湿紙の転写性(剥離性)は良くなく、得られたシートの目付も若干低く、抄紙か転写の過程で微細繊維の抜けが若干あることが分かった。また、経時的に供給パートの液溜り量が増大、減少を繰り返し、安定な抄紙は困難であった。これに対し、D2を用いた場合では、抄紙製膜性、転写性共に良好であり、歩留も良好であって、シート物性も同じD2を用いた実施例1における結果よりも良好であった。すなわち、通気度の低い多層化ワイヤーB10−MW2を装着した装置によって、より良好な微細繊維からなるシートの抄紙製膜が可能であった。
【0089】
(実施例3)
図4に示す構造をもつ多層化ワイヤーB11を装着した傾斜ワイヤー型抄紙機を含む図1に示すシート製造装置によって、微細繊維を含むシートを作製した。
抄紙用分散液としては、実施例1と2で用いたD1とD2を用い、同じ条件での抄紙製膜を実施した。
【0090】
多層化ワイヤーB11は、以下の通りに作製した。
図4では一重織布、240dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を4本撚りした糸を経糸、600dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を緯糸に1/1/組織で製織した。該基層の坪量は200g/mである。
また、図4では二重織布、240dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を6本撚りした糸を経糸、360dtexの6ナイロンモノフィラメント単糸を4本撚りした糸を緯糸に3/1−1/3組織で製織した。該基層の坪量は450g/mである。
図4に示すように、基層B30をシート側第1基層B30a(図4では一重織布)とロール側第2基層B30b(図4では二重織布)を重ねて無端基層化した基層B30上に、シート接触側バット層B21をシート接触側第1バット層B21aと、シート側第1バット層B22に隣接するシート接触側第2バット層B21bの二層構造にし、該シート接触側バット層をプレス側B22からシート側B21aに向かって、芯鞘複合繊維の含有量を段階的に増加させて配置した。これにより、各バット層間の繊度差が減少し、より平滑な表面性が得られた。更にロール側第2バット層B23は芯鞘複合繊維の含有量を減らし、汚れの排出性を高めた。
それぞれのバット層の坪量、短繊維の平均繊度、バット層における芯鞘複合繊維の含有量等を、以下の表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
無端状に製織した基層B30a、B30bに、B21a、B21b、B22、B23のバット層をニードルパンチにて絡合した後、2本のロール間にヒーターとロールプレス装置を備えた高圧プレスドライヤーに仕掛け、140℃−2m/minで40Kg/cmでプレスした多層化ワイヤーB11−MWを製作した。
基層B30bの二重織布は厚みとクッション性で全体の圧縮回復性を向上させ、シート側第1基層30aとロール側第2基層30bのそれぞれの経糸、緯糸は本数が一重織の2.5倍になり、バット層と基層間の固着を向上させ耐摩耗性を向上させた。すなわち実施例1に比べ、厚み保持性の134%の向上が確認された。通気度1.5cc/m/sec、表面平滑度Ra=3.6μmとなった。
なお、厚み保持性とは、15MPaの負荷を10Hz、10万回プレスする扁平化試験を行ったとき、試験前の厚みを100%とした場合に試験後の厚みで定義される値である。
【0093】
多層化ワイヤーをB11−MWを、実施例1と同様に、図1に示す抄紙機に装着し、抄紙用分散液D1とD2からの抄紙製膜を実施した。実施例3における抄紙用分散液D1とD2からの製膜性と得られたシートの物性を表2に示す。表2から、D1とD2のどちらの分散液を用いた場合でも、抄紙性及び湿紙のワイヤーからの転写性双方の観点から、多層化ワイヤーB11−MWを装着した抄紙機は優れていることが判明した。得られたシートの物性も歩留良好であることは言うまでもなく、物性面(透気抵抗度が一定で高強度)において実施例2よりも良好なシートが得られることが分かった。
【0094】
(比較例1)
市販の織物型エンドレスワイヤーの中では極めて微細な織構造を有するLTT−9FE(日本フィルコン(株))(FWと表記)を使用して実施例1と同様の抄紙機に装着し、実施例1と同様に、抄紙用の分散液D1とD2を用いての抄紙製膜を実施した。
その結果、D1からの抄紙では、ワイヤー上に湿紙が残らず、抄紙が不可能であることが判明した。また、D2からの抄紙においても抄紙実験の開始後、しばらくは薄い湿紙がワイヤー上に残るが、経時的に供給パートにおける液溜りの量が増大していき、ワイヤー内に繊維の目詰まりが発生していることが推定された。サクション条件を変動させても前記状況は改善することができなかった。すなわち、D1、D2どちらの分散液からも抄紙による製膜を実施することはできなかった。結果を以下の表4に示す。
【0095】
(比較例2)
次に、本発明に係る多層化ワイヤーでは多層化ワイヤー(SWと表記)を作製し、SWワイヤーを実施例1と同様に、図1に示す抄紙機に装着し、実施例1と同様に、抄紙用の分散液D1とD2を用いての抄紙製膜を実施した。
多層化ワイヤーSWは以下の通り作製した。すなわち、実施例2においてバット層を、高分子量ナイロン(融点225℃)のみからなるバット層とし、短繊維の繊度1.0dtexステープルを400g/m使用して、SWワイヤーを製作した。通気度は5.3cc/cm/sec、表面平滑度Ra=6.6μmであった。
D1とD2によるSWを装着した抄紙機での抄紙製膜の結果を以下の表4に示す。
D1による製膜ではサクション圧を低く設定してもワイヤー上に湿紙はごく少量、不連続にしか残らず、抄紙性に乏しいと判定された。また、D2による抄紙を実施したところ、極めて弱いサクション圧で連続した湿紙が形成されたものの、該湿紙はプレス圧を高く設定しても転写することは不可能であり、ワイヤー内への繊維の食い込みが多数発生していると推定された。すなわち、SWを装着した抄紙機によってD1とD2のどちらからも抄紙による製膜を実施することはできなかった。
【0096】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る微細繊維を含むシート製膜用の製造装置を使用することにより、蓄電デバイス用セパレータ、機能性フィルター、医療用材料等として利用し得る微細繊維を含む微細な構造を有するシート材料を高品質かつ安定に連続生産することが可能となる。
【符号の説明】
【0098】
A10 傾斜ワイヤー式抄紙機の抄紙工程
A11 プレス機
A12 乾燥機
A13 巻き取り機
A14 カレンダー処理機
A21 多層化ワイヤー
A22 抄紙用分散液供給パート
A23 ウェットサクションパート
A24 ドライサクションパート
A25 プレスロール
A26 水洗パート
A27 プレスロール
A28 フェルト層
A29 ドラムドライヤー
A30 予備乾燥ロール
B10 多層化ワイヤー
B11 多層化ワイヤー
B21 シート接触側バット層
B21a シート接触側第1バット層
B21b シート接触側第2バット層
B22 シート側第1バット層
B23 ロール側第2バット層
B30 基層
B30a シート側第1基層
B30b ロール側第2基層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス加工を施した多層化ワイヤーを抄紙製膜用ベルトとして装着した微細繊維を含むシート製膜用の製造装置であって、該多層化ワイヤーが1層以上の基層と1層以上のバット層からなり、該バット層の1層以上に熱溶融樹脂を含む熱溶融繊維が含まれており、かつ該多層化ワイヤーが該熱溶融樹脂の融点以上の温度で熱処理されたものであることを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記基層が無端状の織布からなり、かつ、前記バット層が不織布からなる、請求項1に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項3】
前記バット層の平均繊度が6dtex以下である、請求項1又は2に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項4】
前記熱溶融繊維が、融点200℃以下の熱溶融樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項5】
前記熱溶融繊維が、高分子量ナイロンからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のナイロンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項6】
前記多層化ワイヤーの通気度が5cc/cm/sec以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項7】
前記微細繊維を含むシートが、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を10重量%以上含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項8】
前記微細繊維を含むシートが、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維を90重量%以上含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項9】
前記製造装置を使用した抄紙による製膜過程において、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の収率が90重量%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の微細繊維を含むシートの製造装置。
【請求項10】
以下の工程:
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造装置を使用して、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の全固形分中に占める割合が10重量%以上である分散液から、前記多層化ワイヤー上で湿紙を形成させる抄紙工程、及び
前記抄紙工程で得た湿紙を、プレス工程、乾燥工程又は溶剤置換工程のいずれかに搬送する工程、
を含む、微細繊維を含むシートの製造方法。
【請求項11】
以下の工程:
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造装置を使用して、繊維径が10nm以上500nm以下である微細繊維の全固形分中に占める割合が90重量%以上である分散液から、前記多層化ワイヤー上で湿紙を形成させる抄紙工程、及び
前記抄紙工程で得た湿紙を、プレス工程、乾燥工程又は溶剤置換工程のいずれかに搬送する工程、
を含む、微細繊維を含むシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42903(P2011−42903A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192383(P2009−192383)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】