説明

微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法

【課題】歩留まりおよび生産性を損なわずに、面質が良好な微細繊維状セルロース含有シートを低コストで製造できる抄紙用ワイヤーを提供する。
【解決手段】本発明の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーは、紙基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化され且つ表面平滑度が50秒以上の疎水化平滑面とされているシートからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細繊維状セルロースを抄紙法によりシート化する際に使用される抄紙用ワイヤー、その抄紙用ワイヤーを用いた微細繊維状セルロース含有シートの製造方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の代替および環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmのセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品としてこれまでにも幅広く使用されてきた。
また、セルロース繊維としては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られており、その微細繊維状セルロースを含有するシートは機械的強度が高いなどの利点を有し、様々な用途への適用が検討されている。
【0003】
微細繊維状セルロース含有シートの製造方法として、特許文献1〜3には、微細繊維状セルロースを従来の抄紙用ワイヤーで抄紙することが開示されている。しかしながら、この方法では、抄紙用ワイヤーにより微細繊維状セルロースを充分に捕捉できないため、充分な濾過効率が得られず、歩留まりが低かった。特に平均繊維径が2〜200nm、平均繊維長が0.01〜100μmの微細繊維状セルロースは、従来の抄紙用ワイヤーでは殆ど捕捉できず、シート化できなかった。
特許文献4〜6には、微細繊維状セルロース懸濁液をガラス、樹脂板、金属板等に流延し、乾燥してシート化する方法が開示されている。しかし、この方法では、シート化する際の乾燥にエネルギーと時間を要し、コストが高くなる傾向にあった。
また、特許文献7,8では、微細繊維状セルロース含有シートを工業的に生産するために、緻密性(一定の通気度範囲)を有する濾布や有機ポリマー繊維を含んでなる不織布、もしくは織物、または有機ポリマーを含んでなる多孔膜濾布を抄紙用ワイヤーとして用いることが提案されている。しかし、上記の濾布、織物および不織布では、透水性を高めたものにすると、微細繊維状セルロースを充分に捕捉することができず、歩留まりが低くなった。また、上記の濾布、織物および不織布は一度濾過に使用した後にリサイクルすることが難しい上に、高価であるため、使い捨てにすると、製造コストが高くなった。また、上記の濾布、織物および不織布を抄紙用ワイヤーとして用いた場合には、微細織維状セルロースシートの面質が不充分になるおそれがあった。
【0004】
また、微細繊維状セルロース懸濁液を濾過脱水してシート化する方法として、微細な多孔を多数有する濾紙やフィルム状フィルタであるメンブレンフィルタなどを用いる方法も知られているが、微細繊維状セルロースによる目詰まりが発生しやすく、濾過時間が長くなる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3036354号公報
【特許文献2】特開平10−140493号公報
【特許文献3】特開平8−188980号公報
【特許文献4】特開平5−148387号公報
【特許文献5】特開2001−279016号公報
【特許文献6】特開2007−23218号公報
【特許文献7】特開2006−193858号公報
【特許文献8】国際公開第2006/004012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、歩留まりおよび生産性を損なわずに、面質が良好な微細繊維状セルロース含有シートを低コストで製造できる抄紙用ワイヤーおよび微細繊維状セルロース含有シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]紙基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化され且つ表面平滑度が50秒以上の疎水化平滑面とされているシートからなることを特徴とする微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
[2]疎水化平滑面の表面平滑度が200〜800秒である[1]に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
[3]前記紙基材が、一方の面に艶面を有する片艶紙であり、前記艶面が疎水化されて疎水化平滑面にされている[1]または[2]に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
[4]疎水化剤が、シリコーン化合物、フッ素化合物、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アルカリ塩、アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
[5]抄紙用ワイヤーを用いて、微細繊維状セルロースおよび水を含む懸濁液を濾過・脱水して含水ウェブを得る搾水工程と、前記含水ウェブを乾燥する乾燥工程とを有する微細繊維状セルロース含有シートを製造する方法であって、搾水工程では、抄紙用ワイヤーとして、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを用い、前記懸濁液を前記微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーの疎水化平滑面に供給することを特徴とする微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抄紙用ワイヤーおよび微細繊維状セルロース含有シートの製造方法によれば、歩留まりおよび生産性を損なわずに、面質が良好な微細繊維状セルロース含有シートを低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法で使用される製造装置の一実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー>
本発明の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー(以下、「抄紙用ワイヤー」と略す。)は、微細繊維状セルロースを含む懸濁液(以下、「微細繊維状セルロース懸濁液」という。)を濾過脱水して微細繊維状セルロース含有シートを製造する際に使用されるものであり、紙基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化され且つ表面平滑度が50秒以上である疎水化平滑面とされたシートである。
紙基材は、他方の面が平滑化されていない方が透水性を確保しやすい。また、紙基材の他方の面が疎水化されていない方が透水性を確保しやすい。したがって、紙基材の一方の面のみを疎水化平滑面とすることにより、より高い生産性で微細繊維状セルロース含有シートを製造できる。また、経済的な観点からも、紙基材の一方の面のみを疎水化平滑面とすることが好ましい。
【0011】
(紙基材)
紙基材としては、例えば、片艶紙、上質紙、中質紙、コピー用紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、板紙、白板紙、新聞用紙、更紙等が挙げられる。
紙基材の中でも、片艶紙を用い、その艶面を疎水化する面とすることが好ましい。ここで、片艶紙は、抄紙後の湿紙をヤンキードライヤーによって乾燥して得たものであり、一方の面が高光沢化された艶面にされている。また、艶面と反対側の面(更面)側は、艶面側よりも密度が低くなっている。したがって、艶面にて高い平滑性を得ながらも、充分な透気性を確保できるため、疎水化した艶面で微細繊維状セルロースを抄紙すれば、濾過速度を低下させずに面質がより良好な微細繊維状セルロース含有シートを容易に得ることができる。
【0012】
紙基材は、パルプを含む紙料を抄紙機でまたは手抄きで抄造して得られる。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプのいずれであってもよい。木材パルプの原料としては針葉樹や広葉樹が挙げられるが、紙基材の平滑性が高くなる点では、広葉樹を原料としたパルプを多く含むことが好ましい。
また、パルプは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP,蒸解液:NaOHとNaS)、ポリサルファイドパルプ(SP,蒸解液:NaOHとNa)、ソーダパルプ(蒸解液:NaOH)、亜硫酸塩パルプ(蒸解液:NaSO)、炭酸ソーダパルプ(蒸解液:NaCO)、酸素ソーダパルプ(蒸解液:OとNaOH)などがある。これらの中でも、クラフトパルプが平滑性やコストの面で好ましい。
また、パルプは、未晒パルプであってもよいし、晒パルプであってもよい。
また、パルプは未叩解パルプおよび叩解パルプのいずれでも構わないが、紙基材の平滑性が向上する点では、叩解パルプが好ましい。JIS P8121に従って測定された叩解パルプのカナダ標準濾水度は40〜450mlが好ましく、60〜400mlがより好ましく、80〜380mlが特に好ましい。叩解パルプのカナダ標準濾水度が前記下限値以上であれば、紙基材の透気度がより低くなり(透気性が高くなり)、微細繊維状セルロース懸濁液の脱水速度がより高くなり、前記上限値以下であれば、紙基材の平滑性がより高くなる。
【0013】
紙料には、デンプンやポリアクリルアミドなどの紙力剤、ロジン系サイズ剤、アルケニルケテンダイマー系サイズ剤、ASA系サイズ剤、硫酸バンド、ワックスエマルジョンなどの添加剤が含まれてもよい。これらのうち、抄紙用ワイヤーの表面強度が高くなることから、紙力剤を含むことが好ましい。抄紙用ワイヤーの表面強度が高くなると、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース含有シートの剥離性が高くなる。
また、抄紙用ワイヤーの耐水性が向上することから、サイズ剤またはワックスエマルジョンが好ましい。抄紙用ワイヤーの耐水性が高いと、微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース懸濁液の濾過時間が短くなり、また、破れにくくなる。
【0014】
抄造の際に使用される抄紙機としては、通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機が挙げられる。
【0015】
紙基材の、疎水化される少なくとも一方の面の表面平滑度(王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法,No.5−2:2000)で測定)は100秒以上であることが好ましく、150〜700秒であることがより好ましい。紙基材の、疎水化される少なくとも一方の面の表面平滑度が前記下限値以上であれば、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において、面質が良好な微細繊維状セルロース含有シートを容易に得ることができ、表面平滑度が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーを容易に得ることができる。
紙基材の王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)は20〜500秒が好ましく、40〜250秒であることがより好ましい。紙基材の透気度が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースをより捕捉でき、前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーを容易に得ることができる。
紙基材の坪量は30〜300g/mであることが好ましく、50〜250g/mであることがより好ましい。紙基材の坪量が前記下限値以上であれば、充分に微細繊維状セルロースを捕捉できる抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができ、紙基材の坪量が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができる。
紙基材のうち、片艶紙の坪量は15〜300g/mであることが好ましく、20〜200g/mであることがより好ましい。片艶紙の坪量が前記下限値以上であれば、充分に微細繊維状セルロースを捕捉できる抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができ、片艶紙の坪量が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができる。
【0016】
(疎水化剤)
疎水化剤は、水との親和性が低く、水に溶解しにくい又は混合しにくい物質である。具体的には、次のように測定した水の接触角が90°以上になる薬剤である。
・接触角の測定方法
コロナ処理したポリエチレンテレフタレートの表面に薬剤を1g/mの塗工量で塗工し、塗工した薬剤の表面に蒸留水を滴下し、1分後に動的接触計により接触角を測定する。
【0017】
疎水化剤は、ワイヤーの離型性をより高くできることから、シリコーン化合物、フッ素化合物、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アルカリ塩、アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より剥離性に優れることから、シリコーン化合物がより好ましい。本明細書において、「シリコーン化合物」とは、ポリシロキサンのことである。
【0018】
シリコーン化合物の中でも、特に剥離性に優れることから、直鎖状のジメチルポリシロキサンが好ましい。さらに、直鎖状のジメチルポリシロキサンの中でも、結晶性が低く、常温で固体とならないため、熱硬化性、活性エネルギー線硬化性(紫外線硬化性、電子線硬化性)のものが好ましい。熱硬化性のジメチルポリシロキサンとしては縮合型、付加反応型が挙げられる。
縮合型の熱硬化性ジメチルポリシロキサンとしては、両末端シラノール官能性長鎖ジメチルポリシロキサンと、メチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはメチルメトキシポリシロキサンとを有機スズ系触媒の存在下で反応・縮合させるものが挙げられる。
付加反応型の熱硬化性ジメチルポリシロキサンとしては、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを、白金系触媒の存在下で反応させるものが挙げられる。
また、熱硬化性ジメチルシロキサンとしては、トルエンやn−ヘキサンで希釈された溶剤タイプやエマルションタイプ、無溶剤タイプを使用できるが、ポットライフや片艶紙への塗工、含浸のしやすさ点から、エマルションタイプが好ましい。
活性エネルギー線硬化性のジメチルポリシロキサンとしては、アクリロイル基を有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0019】
その他のシリコーン系化合物として、メルカプト基と不飽和二重結合を有するジメチルポリシロキサン系化合物、エポキシ基を有するジメチルポリシロキサン系化合物などが挙げられる。
【0020】
フッ素化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、べへン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸アルカリ塩類としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム等が挙げられる。
アクリル系重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体または共重合体、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、スチレン、ブタジエン等の他のビニル系重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。
上記化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
疎水化剤は、紙基材内の全体に含まれてもよいし、表面側(両面側又は片面側)に偏在していてもよい。少ない疎水化剤使用量で充分な剥離性が得られる点では、疎水化剤は、表面側に偏在することが好ましい。
【0022】
(抄紙用ワイヤーの物性)
抄紙用ワイヤーの疎水化平滑面は、上記のように、表面平滑度(王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法,No.5−2:2000)で測定)が50秒以上である。また、疎水化平滑面の表面平滑度は、好ましくは200〜800秒、より好ましくは200〜700秒である。
疎水化平滑面の表面平滑度が前記下限値未満であると、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース含有シートの剥離性が低くなり、面質が低下する。一方、表面平滑度が前記上限値を超えたものは、紙基材の表面に有する微細孔が繊維や疎水化剤によって塞がれており、微細繊維状セルロース懸濁液の脱水時間が長くなるおそれがある。
【0023】
抄紙用ワイヤーの王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)は50〜300秒が好ましい。抄紙用ワイヤーの透気度が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースをより捕捉でき、前記上限値以下であれば、透水性がより高くなり、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造における濾過時間をより短縮できる。
【0024】
抄紙用ワイヤーの表面平滑度および透気度を前記範囲にするためには、紙基材の表面平滑性、疎水化剤の量を適宜選択すればよい。紙基材の表面平滑性が高い程、疎水化剤の量を多くする程、表面平滑度が高くなり、透気度が小さくなる。
また、抄紙用ワイヤー製造の際にカレンダー処理等の表面処理を施し、その処理条件を調整することにより、抄紙用ワイヤーの表面平滑度および透気度を調整することもできる。例えば、カレンダー圧力を高くする程、表面平滑度が高くなり、透気度が小さくなる。
【0025】
抄紙用ワイヤーの坪量は20〜300g/mであることが好ましく、50〜250g/mであることがより好ましい。抄紙用ワイヤーの坪量が前記下限値以上であれば、充分な強度を確保でき、破断しにくくなる。一方、抄紙用ワイヤーの坪量が前記上限値以下であれば、充分な可撓性を確保でき、取り扱い性が向上する。
【0026】
(抄紙用ワイヤーの製造方法)
上記抄紙用ワイヤーの製造方法は、紙基材の少なくとも一方の面を、疎水化剤により疎水化する疎水化工程を有する。
疎水化方法としては、紙基材の少なくとも一方の面側に、疎水化剤および分散媒を含む塗料(以下、「疎水化剤塗料」という。)を塗工し、乾燥させる方法、サイズプレスのように紙基材に疎水化剤塗料を含浸させ、乾燥させる方法や紙基材を製造する湿紙の段階でその表面に疎水化剤塗料を塗布した後に乾燥させる方法が挙げられる。
疎水化剤塗料に含まれる分散媒は、水、有機溶剤(例えば、炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン等)、水と有機溶剤との混合物のいずれであってもよい。
【0027】
疎水化剤塗料を塗工する場合、塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられる。
疎水化剤の乾燥塗工量は1〜10g/mであることが好ましく、0.1〜5g/mであることがより好ましく、0.2〜2g/mであることがさらに好ましい。塗工量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートを容易に剥離でき、塗工量が前記上限値以下であれば、効果が充分に得られ、コストアップを抑制できる。
紙基材として片艶紙を用いる場合には、艶面に疎水化剤塗料を塗工することが好ましい。片艶紙の艶面を疎水化すれば、面質をより良好にできる抄紙用ワイヤーを得ることができる。また、片艶紙の更面には疎水化剤を塗工せず、艶面のみを疎水化平滑面とすることが好ましい。艶面のみを疎水化平滑面にすることにより、透水性をより向上させることができる。
疎水化剤塗料の乾燥は、通常の熱風による加熱乾燥、赤外線照射による加熱乾燥、真空乾燥、自然乾燥を適用することができる。また、ある程度乾燥させた後に、ヤンキードライヤーで乾燥させてもよい。ヤンキードライヤーを用いて乾燥させることにより、ヤンキードライヤーに接触させた面の平滑性をより向上させることができる。
【0028】
紙基材に疎水化剤塗料を塗工した後には、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げ処理を施してもよい。仕上げ処理を施せば、抄紙用ワイヤーの平滑性が向上し、抄紙用ワイヤーを用いて得た微細繊維状セルロース含有シートの面質がより向上する。
【0029】
紙基材の全体に疎水化剤塗料を含浸させる場合には、サイズプレスや疎水化剤塗料が入れられた槽に紙基材を浸漬する方法が挙げられる。この方法では、紙基材の表面から疎水化剤が浸透するため、両側の表面から疎水化できる。含浸時間を長くした場合には、紙基材全体に疎水化剤が含まれるようになるが、疎水化剤は表面側のみに含まれれば充分であるため、必ずしも含浸時間を長くする必要はない。
疎水化剤の含浸量は、紙基材100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましい。含浸量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートを容易に剥離でき、含浸量が前記上限値以下であれば、効果が充分に得られ、コストアップを抑制できる。
紙基材に疎水化剤塗料を含浸させた後にも、上記仕上げ処理を施してもよい。
【0030】
紙基材を製造する湿紙段階で表面に疎水化剤を塗布した後に乾燥させる場合はサイズプレス方式が好ましく、その際の塗工量は、紙基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様である。乾燥方法についても、紙基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様であるが、艶面を疎水化平滑面とした片艶紙が容易に得られる点で、ヤンキードライヤーを用い、ヤンキードライヤーの周面に疎水化剤を塗布した面が接するように乾燥することができる。
また、疎水化剤塗料塗布後には、紙基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様に、カレンダーを用いた仕上げ処理を施してもよい。
【0031】
(作用効果)
上記抄紙用ワイヤーの疎水化平滑面は剥離性が高い上に表面平滑度が50秒以上で表面平滑性が高いため、その疎水化平滑面にて形成させた微細繊維状セルロース含有シートを破断させることなく、剥離させることができる。これにより、良好な面質の微細繊維状セルロース含有シートを容易に得ることができる。
また、紙基材を主体とした抄紙用ワイヤーは、適度に低い透気性を有するため、濾過膜の役割を果たし、微細繊維状セルロース懸濁液を濾過した際に微細繊維状セルロースを充分に捕捉でき、歩留まりが損なわれにくい。
また、紙基材は安価であるため、これを主体とした抄紙用ワイヤーは使い捨てにでき、常に新しい抄紙用ワイヤーによって微細繊維状セルロース懸濁液を濾過することができる。そのため、充分な濾過速度(生産性)を確保できるし、低コストで濾過できる。
また、抄紙用ワイヤーは一般の紙と同様にリサイクルできる。
【0032】
<微細繊維状セルロース含有シート>
本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法によって得られる微細繊維状セルロース含有シートは、微細繊維状セルロースが抄紙されたシートである。
ここで、微細繊維状セルロースは、走査型または透過型電子顕微鏡の観察により測定した幅(直径)が2nm〜1000nmのセルロース分子の集合体である。このような微細繊維状セルロースは、通常の製紙用途で用いるパルプ繊維よりも幅が大幅に小さい繊維または棒状粒子である。なお、繊維状セルロースの幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解するため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。一方、幅が1000nmを超えると微細繊維とは言えず、通常のパルプに含まれる繊維であるから、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が得られない。
【0033】
微細繊維状セルロースを得る方法としては、例えば、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を微細化する方法が挙げられる。
また、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル(TEMPO)酸化、酵素処理、オゾン処理などの化学処理を施してから微細化してもよい。
微細化するセルロース系繊維としては、植物由来のセルロース、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロースなどが挙げられる。より具体的には、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材系製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻や麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも木材系製紙用パルプや非木材系パルプが入手のし易さという点で好ましい。
【0034】
微細繊維状セルロース含有シートには、必要に応じて、一般的な紙と同様に、サイズ剤、紙力増強剤、填料などが含まれても構わない。
【0035】
<微細繊維状セルロース含有シートの製造方法>
本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法は、微細繊維状セルロース懸濁液を、上記抄紙用ワイヤーを用いて濾過し、脱水して含水ウェブを得る搾水工程と、含水ウェブを乾燥する乾燥工程とを有する。
【0036】
(製造装置)
微細繊維状セルロース含有シートを製造するための装置としては、例えば、図1に示すような、搾水セクション20と、搾水セクション20の下流側に設けられた乾燥セクション40と、乾燥セクションの下流側に設けられた巻取セクション60とを具備する製造装置1を用いることができる。
【0037】
搾水セクション20は、抄紙用ワイヤー10を用いて微細繊維状セルロース懸濁液3aを搾水して含水ウェブ3bを得るセクションである。
搾水セクション20には、抄紙用ワイヤー10を疎水化平滑面が上を向くように繰り出す送出リール21と、微細繊維状セルロース懸濁液3aの吐出部20aおよび分散媒の搾水部30とが設けられている。
吐出部20aには、送出リール21から繰り出された走行中の抄紙用ワイヤー10の疎水化平滑面に微細繊維状セルロース懸濁液3aを吐出する複数のダイヘッド22と、各ダイヘッド22の下流側に配置され、吐出された微細繊維状セルロース懸濁液3aの上面を均すプレート24とが設けられている。
吐出部20aおよび搾水部30には、微細繊維状セルロース懸濁液3aから分散媒を強制的に搾水する吸引装置26,32が設けられている。吸引装置26,32は、抄紙用ワイヤー10の下方に配置され、その上面には真空ポンプ(図示せず)に接続された吸引孔(図示せず)が多数形成されている。ただし、吸引装置26の上流側では吸引孔は形成されず、真空ポンプに接続されていない非吸引孔にされていることが好ましい。上流側に吸引孔が形成されると、微細繊維状セルロース懸濁液3aの塗膜の表面が粗くなるおそれがある。また、下流側では搾水量が少なくなるため、搾水部30における吸引装置32は、下流側に孔が形成されていなくてもよい。
【0038】
乾燥セクション40は、含水ウェブ3bを、ドライヤーを用いて乾燥して微細繊維状セルロース含有シート3cを得るセクションである。
乾燥セクション40には、フード49内に、シリンダードライヤーで構成された第1ドライヤー42および第2ドライヤー52と、第1ドライヤー42の外周に沿って配置されたフェルト布44とが設けられている。第1ドライヤー42は、第2ドライヤー52よりも上流側に配置されている。また、フェルト布44は無端状にされており、ガイドロール46によって、循環走行している。
乾燥セクション40では、含水ウェブ3bを、ガイドロール48によって移送するようになっている。具体的には、まず、含水ウェブ3bの微細繊維状セルロース懸濁液3aが塗布された面A(以下、「塗布面A」という。)が第1ドライヤー42の外周面に接し、含水ウェブ3bの微細繊維状セルロース懸濁液3aが塗布されなかった面B(以下、「非塗布面B」という。)がフェルト布44に接するように移送し、次いで、塗布面Aが第2ドライヤー52の外周面に接するようになっている。
【0039】
巻取セクション60は、抄紙用ワイヤー10から微細繊維状セルロース含有シート3cを分離し、これを巻き取るセクションである。
巻取セクション60には、抄紙用ワイヤー10から微細繊維状セルロース含有シート3cを分離する一対の分離ローラ62a,62bと、微細繊維状セルロース含有シート3cを巻き取る巻取リール64と、使用済みの抄紙用ワイヤー10を巻き取って回収する回収リール66とが設けられている。分離ローラ62bは抄紙用ワイヤー10側に、分離ローラ62aは微細繊維状セルロース含有シート3c側に配置されている。
【0040】
(搾水工程)
搾水工程では、抄紙用ワイヤー10を送出リール21から繰り出し、抄紙用ワイヤー10の疎水化平滑面に微細繊維状セルロース懸濁液3aをダイヘッド22から吐出し、抄紙用ワイヤー10の微細繊維状セルロース懸濁液3aの上面をプレート24によって均す。それと共に、吸引装置26,32により、抄紙用ワイヤー10上の微細繊維状セルロース懸濁液3aに含まれる分散媒を吸引し、搾水して、含水ウェブ3bを得る。
搾水工程において、抄紙用ワイヤー10の走行張力が大きい場合には、抄紙用ワイヤー10が破断するおそれがあるため、通常の抄紙に使用されるワイヤーを抄紙用ワイヤー10の下に配置して抄紙用ワイヤー10を支持してもよい。
【0041】
抄紙用ワイヤー10に微細繊維状セルロース懸濁液3aを供給する前には、予め抄紙用ワイヤー10に水を含浸させて湿潤状態にしてもよい。抄紙用ワイヤー10に微細繊維状セルロース懸濁液3aを吐出すると、ワイヤーの吸水により伸びてシワが発生することがあるが、予め湿潤状態にすれば、そのシワの発生を防止できる。
抄紙用ワイヤー10を湿潤状態にする手段としては、抄紙用ワイヤー10を水に浸漬させる水槽、水の塗工装置が挙げられる。水の塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター等を使用することができる。
【0042】
搾水工程にて抄紙用ワイヤー10に供給する微細繊維状セルロース懸濁液3aは、微細繊維状セルロースおよび水を含有する液である。
また、微細繊維状セルロース懸濁液3aは、樹脂エマルションを含有してもよい。ここで、樹脂エマルションとは、粒子径が0.001〜10μmの天然樹脂あるいは合成樹脂の粒子が水中に乳化したエマルションである。
樹脂エマルションに含まれる粒子状の樹脂としては特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂エマルション、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、分子鎖末端が−SH、−CSSH、−SOH、−(COO) M、−(SO Mおよび−CO−R(なお、前記官能基において、Mはカチオン、xはMの価数に依存する1〜3の整数であり、Rはアルキル基である)の群から選ばれる少なくとも1つの官能基で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体、酸変性、アミン変性、アミド変性、アクリル変性等の変性スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を後乳化法によってエマルション化したものであってもよい。
【0043】
さらに、得られる微細繊維状セルロース含有シート3cの多孔性を向上させるためには、微細繊維状セルロース懸濁液3aに有機溶媒を含有させることが好ましい。有機溶媒を混合する場合、水と有機溶媒との質量比率(水:有機溶媒)を100:10〜10:100にすることが好ましく、100:30〜30:100にすることがより好ましく、100:50〜50:100にすることがさらに好ましい。有機溶媒の混合量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シート3cの多孔性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース懸濁液3aの高粘度化を抑制できる。
【0044】
有機溶媒としては、例えば、ジプロビレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルなどのグライム類、1,2−ブタンジオール 、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの有機溶媒は2種以上を併用してもかまわない。
【0045】
微細繊維状セルロース懸濁液3aの固形分濃度は0.05〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。微細繊維状セルロース懸濁液3aの濃度が前記下限値以上であれば、搾水工程にて充分な生産効率を確保でき、前記上限値以下であれば、高粘度化を防ぎ、取り扱い性を向上させることができる。
【0046】
搾水工程では、得られる微細繊維状セルロース含有シート3cの坪量が、好ましくは10〜900g/m、より好ましくは20〜300g/mとなるように微細懸濁状セルロース懸濁液3aを供給する。坪量が前記下限値以上であると、得られた微細繊維状セルロース含有シート3cを抄紙用ワイヤー10から容易に剥離でき、連続生産に適する。一方、坪量が前記上限値以下であると、脱水時間をより短縮でき、生産性をより高くできる。
【0047】
(乾燥工程)
乾燥工程では、まず、抄紙用ワイヤー10の上面に載置した含水ウェブ3bを、加熱した第1ドライヤー42の外周面の約半周に、第1ドライヤー42の外周面に塗布面Aが接するように巻き掛けて、含水ウェブ3bに残留していた分散媒を蒸発させる。蒸発した分散媒は、抄紙用ワイヤー10の細孔を通ってフェルト布44から蒸発する。
次いで、含水ウェブ3bを、加熱した第2ドライヤー52の外周面の約3/4周に、第2ドライヤー52の外周面に塗布面Aが接するように巻き掛けて、含水ウェブ3bに残留していた分散媒を蒸発させる。
このように含水ウェブ3bを乾燥させて微細繊維状セルロース含有シート3cを得る。
【0048】
(巻取工程)
巻取工程では、抄紙用ワイヤー10および微細繊維状セルロース含有シート3cを一対の分離ローラ62a,62bで挟み込むことにより、微細繊維状セルロース含有シート3cを抄紙用ワイヤー10から分離させて一方の分離ローラ62aの表面に転移する。そして、分離ローラ62aの表面から微細繊維状セルロース含有シート3cを引き離して、巻取りリール64により巻き取る。それと共に、使用した抄紙用ワイヤー10を回収リール66により巻き取る。
上記のように抄紙用ワイヤー10を用いることにより、微細繊維状セルロース含有シートを得ることができる。
【0049】
(作用効果)
上記微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、抄紙用ワイヤー10の疎水化平滑面に微細繊維状セルロース懸濁液3aを供給して抄紙するため、得られた微細繊維状セルロース含有シート3cを抄紙用ワイヤー10から容易に剥離できる。そのため、得られた微細繊維状セルロース含有シート3cの面質が良好になる。
さらに、上記微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、上記抄紙用ワイヤー10を用いるため、微細繊維状セルロースを充分に捕捉でき、歩留まりが高くなる。
その上、抄紙用ワイヤー10によれば、常に新しい抄紙用ワイヤー10によって微細繊維状セルロース懸濁液3aを容易に濾過することができるため、充分な生産性を確保できる。
【0050】
(他の実施形態)
なお、本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法は、上記製造装置1を用いた製造方法でなくてもよく、例えば、上記製造装置1において抄紙用ワイヤー10を無端または有端のベルトの上に載せて移送してもよい。また、本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、一般の紙を製造する際に使用する抄紙機を容易に適用することができる。抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機を適用できる。
また、微細繊維状セルロース含有シート製造は、手抄きで行っても構わない。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」のことである。
【0052】
<紙基材1>
叩解処理して得た、JIS P8121に従って測定されたカナダ標準濾水度(以下、「CSF」という。)が350mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を乾燥した後、片面塗布量が0.8g/mになるように4%の澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)水溶液をサイズプレス方式で両面塗布し、乾燥した。その後、熱カレンダー処理(表面温度:60℃、液圧:100kg/cm)して、両面の表面平滑度52秒、透気度37秒、紙水分5.5%、坪量64g/mの紙基材1を得た。なお、表面平滑度および透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000(王研式)に従って測定した値である(以下の紙基材2,3、片艶紙1〜5も同様である。)。
【0053】
<紙基材2>
叩解処理して得たCSFが150mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を乾燥した後、片面塗布量が1.5g/mになるように4%の澱粉(王子コーンスターチ社製、エースA)水溶液をサイズプレス方式で両面塗布し、乾燥した。その後、熱カレンダー処理(表面温度:75℃、線圧:170kg/cm)して、両面の表面平滑度135秒、透気度115秒、紙水分5.5%、坪量64g/mの紙基材2を得た。
【0054】
<紙基材3>
叩解処理して得たCSFが350mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を乾燥した後、カレンダー処理(表面温度:常温、線圧:50kg/cm)して、両面の表面平滑度38秒、透気度25秒、紙水分5.5%、坪量64g/mの紙基材3を得た。
【0055】
<片艶紙1>
叩解処理して得たCSFが100mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を、ヤンキードライヤーで乾燥後、カレンダー処理(線圧:100kg/cm)して、艶面の表面平滑度575秒、更面の表面平滑度7秒、透気度130秒、紙水分5.5%、坪量30g/mの片艶紙1を得た。
【0056】
<片艶紙2>
叩解処理して得たCSFが180mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を、ヤンキードライヤーで乾燥後、カレンダー処理(線圧:80kg/cm)して、艶面の表面平滑度630秒、更面の表面平滑度8秒、透気度164秒、紙水分5.5%、坪量40g/mの片艶紙2を得た。
【0057】
<片艶紙3>
叩解処理して得たCSFが330mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を、ヤンキードライヤーで乾燥後、カレンダー処理(線圧:50kg/cm)して、艶面の表面平滑度192秒、更面の表面平滑度7秒、透気度50秒、紙水分5.5%、坪量30g/mの片艶紙3を得た。
【0058】
<片艶紙4>
叩解処理して得たCSFが220mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を、ヤンキードライヤーで乾燥後、カレンダー処理(線圧:100kg/cm)して、艶面の表面平滑度385秒、更面の表面平滑度8秒、透気度80秒、紙水分5.5%、坪量30g/mの片艶紙4を得た。
【0059】
<片艶紙5>
叩解処理して得たCSFが150mlのLBKPを100部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、カチオン化澱粉0.5部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4部、歩留まり向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を、ヤンキードライヤーで乾燥後、カレンダー処理(線圧:100kg/cm)して、艶面の表面平滑度610秒、更面の表面平滑度10秒、透気度138秒、紙水分5.5%、坪量30g/mの片艶紙5を得た。
【0060】
(疎水化剤塗料1)
シリコーン系疎水化剤KS3600(信越化学工業社製)100部と、硬化剤PL50T(信越化学工業社製)1部を、トルエン/酢酸エチルが3/1の混合溶媒に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料1を得た。
【0061】
(疎水化剤塗料2)
アルキッド樹脂からなる疎水化剤ピーロイルHT(一方社油脂工業社製)を、トルエン/酢酸エチルが3/1の混合溶媒に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料2を得た。
【0062】
(疎水化剤塗料3)
疎水化剤ハイドリンP−7(中京油脂社製、パラフィンワックス)を水に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料3を得た。
【0063】
(疎水化剤塗料4)
疎水化剤ハイドリンZ−7−30(中京油脂社製、ステアリン酸亜鉛)を水に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料4を得た。
【0064】
(疎水化剤塗料5)
疎水化剤ハイドリンL−271(中京油脂社製、ステアリン酸アミド)を水に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料5を得た。
【0065】
(疎水化剤塗料6)
疎水化剤アサヒガードAG060(旭硝子社製、フッ素系化合物)を水に3%濃度になるように添加し、攪拌して、疎水化剤塗料6を得た。
【0066】
(実施例1)
紙基材1の片面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、120℃で乾燥させて、片面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0067】
(実施例2)
紙基材2の片面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、120℃で乾燥させて、片面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0068】
(実施例3)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0069】
(実施例4)
片艶紙2の艶面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0070】
(実施例5)
片艶紙3の艶面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0071】
(実施例6)
片艶紙4の艶面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0072】
(実施例7)
片艶紙5の艶面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0073】
(実施例8)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料2をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0074】
(実施例9)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料3をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0075】
(実施例10)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料4をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0076】
(実施例11)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料5をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0077】
(実施例12)
片艶紙1の艶面に疎水化剤塗料6をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、艶面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0078】
(比較例1)
紙基材3の片面に疎水化剤塗料1をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、120℃で乾燥させて、片面が疎水化平滑面とされた微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0079】
(比較例2)
片艶紙1を微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーとした。
【0080】
(比較例3)
片艶紙2を微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーとした。
【0081】
(比較例4)
片艶紙3を微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーとした。
【0082】
(比較例5)
片艶紙4を微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーとした。
【0083】
(比較例6)
片艶紙5を微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーとした。
【0084】
(比較例7)
片艶紙1の更面に疎水化剤塗料2をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、更面が疎水化された微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0085】
(比較例8)
片艶紙1の更面に疎水化剤塗料3をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、更面が疎水化された微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0086】
(比較例9)
片艶紙1の更面に疎水化剤塗料4をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、更面が疎水化された微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0087】
(比較例10)
片艶紙1の更面に疎水化剤塗料5をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、更面が疎水化された微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0088】
(比較例11)
片艶紙1の更面に疎水化剤塗料6をバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて、更面が疎水化された微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを得た。
【0089】
<抄紙用ワイヤーの評価>
各実施例および各比較例のワイヤーの疎水化された側の面の表面平滑度および透気度を、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000(王研式)に従って測定した。測定結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
<微細繊維状セルロース含有シートの製造>
(微細繊維状セルロース懸濁液)
繊維幅が10〜100nmに微細化された微細繊維状セルロース(ダイセル化学工業社製、商品名:セリッシュKY−100G、固形分濃度10%)を、セルロース濃度が0.1%になるように水中で再分散させてスラリーを得た。このスラリーに均一分散処理を10分間施した後、固形分濃度0.5%のカチオン性ポリウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス650)を添加した。その際、セルロース固形分を70部に、カチオン性ポリウレタン樹脂固形分を30部にした。これにより、微細繊維状セルロースとカチオン性ポリウレタン樹脂とを含有する微細繊維状セルロース懸濁液を得た。
【0092】
(微細繊維状セルロース懸濁液の濾過)
焼結サイズが30〜50μmのブフナーロート型ガラスフィルタ(アドバンテック株式会社製KG−90)上に、上記抄紙用ワイヤーを載せた。その際、実施例1〜12および比較例1,7〜11の抄紙用ワイヤーは、疎水化された面が上に向くように配置し、比較例2〜6の抄紙用ワイヤーは、艶面が上に向くように配置した。
次いで、抄紙用ワイヤーを載せたガラスフィルタを濾過瓶上に設置した後、微細繊維状セルロース含有シートの坪量が30g/mになるように濃度と質量を調製した上記微細繊維状セルロース懸濁液を、上記フィルタ上の抄紙用ワイヤーに大気圧、温度23℃の条件下で流延した。その際、アスピレーターで吸引圧力が0.08MPa以上になるように濾過瓶を吸引して、濾過した。このとき、濾過時間を測定した。その結果を表1に示す。
その後、ウェット状の微細繊維状セルロース含有シートとワイヤーをガラスフィルタから剥離し、シリンダードライヤーで乾燥後、抄紙用ワイヤーから剥離して、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
【0093】
上記微細繊維状セルロース含有シートの歩留まり、剥離性、面質を以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
【0094】
[歩留まり評価]
微細繊維状セルロース含有シート製造の際の歩留まりを以下の式から求めた。
歩留まり(%)=100×(C−B)/A
A:懸濁液に含まれる微細繊維状セルロースの質量
B:抄紙用ワイヤーの質量
C:抄紙用ワイヤーと微細繊維状セルロース含有シートの合計の質量
【0095】
[剥離性評価]
乾燥した微細繊維状セルロース含有シートと抄紙用ワイヤーとの剥離性を目視で評価した。
◎:微細繊維状セルロース含有シートを抄紙用ワイヤーから剥離する際に、微細繊維状セルロースの毛羽立ちが見られず、かつワイヤーに残ることなく、良好に剥離できた。
○:微細繊維状セルロース含有シートを抄紙用ワイヤーから剥離する際に、微細繊維状セルロースの毛羽立ちが見られるが、微細繊維状セルロースがワイヤーに残ることなく、良好に剥離できた。
△:微細繊維状セルロース含有シートを抄紙用ワイヤーから剥離する際に、微細繊維状セルロースの毛羽立ちが目立ち、微細繊維状セルロースがワイヤーにも僅かに残るが、実用上問題ない程度。
×:微細繊維状セルロース含有シートを抄紙用ワイヤーから剥離する際に、微細繊維状セルロースの毛羽立ちがかなり多く、ワイヤーにも残り、微細繊維状セルロース含有シートが破れる。
【0096】
[微細繊維状セルロース含有シートの面質]
得られた微細繊維状セルロース含有シートの面質を目視で評価した。
◎:面質は極めて良好。
○:わずかに繊維の毛羽立ちが見られるが、面質は良好。
△:繊維の毛羽立ちが目立ち、面質はやや不良。
×:面質は不良。
【0097】
[結果]
表1から明らかなように各実施例にて得た抄紙用ワイヤーを用いた場合には、得られた微細繊維状セルロース含有シートの剥離性および面質に優れていた。また、歩留まりおよび濾過速度も確保されていた。
これに対し、紙基材の片面を疎水化したが、その面の表面平滑度が50秒未満であった比較例1の抄紙用ワイヤーでは、疎水化した面で微細繊維状セルロース含有シートを形成しても、微細繊維状セルロース含有シートの剥離性、面質が共に低かった。
片艶紙からなり、艶面が疎水化されていない比較例2〜6の抄紙用ワイヤーでは、艶面上に微細繊維状セルロース含有シートを形成しても、微細繊維状セルロース含有シートの剥離性、面質が共に低かった。
片艶紙の更面を疎水化し、表面平滑度が50秒未満であった比較例7〜11の抄紙用ワイヤーでは、疎水化した面で微細繊維状セルロース含有シートを形成しても、微細繊維状セルロース含有シートの剥離性、面質が共に低かった。
【0098】
また、上記実施例の結果より、片艶紙の艶面を疎水化して疎水化平滑面とした実施例3〜12では、紙基材の片面を疎水化平滑面とした実施例1,2と比較して、微細繊維状セルロース含有シートの面質がより優れていた。
さらに、片艶紙の艶面にシリコーン化合物を塗工して疎水化平滑面とした実施例3〜7では、微細繊維状セルロース含有シートの剥離性が特に優れていた。
【符号の説明】
【0099】
1 製造装置
3a 微細繊維状セルロース懸濁液
3b 含水ウェブ
3c 微細繊維状セルロース含有シート
10 抄紙用ワイヤー
20 搾水セクション
40 乾燥セクション
60 巻取セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化され且つ表面平滑度が50秒以上の疎水化平滑面とされているシートからなることを特徴とする微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
【請求項2】
疎水化平滑面の表面平滑度が200〜800秒である請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
【請求項3】
前記紙基材が、一方の面に艶面を有する片艶紙であり、前記艶面が疎水化されて疎水化平滑面にされている請求項1または2に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
【請求項4】
疎水化剤が、シリコーン化合物、フッ素化合物、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アルカリ塩、アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤー。
【請求項5】
抄紙用ワイヤーを用いて、微細繊維状セルロースおよび水を含む懸濁液を濾過・脱水して含水ウェブを得る搾水工程と、前記含水ウェブを乾燥する乾燥工程とを有する微細繊維状セルロース含有シートを製造する方法であって、
搾水工程では、抄紙用ワイヤーとして、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを用い、前記懸濁液を前記微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーの疎水化平滑面に供給することを特徴とする微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。

【図1】
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