説明

微細繊維質樹脂被覆・封止方法

【課題】障害性微細繊維やその微粉末の飛散を防止のため、ポリマーで該繊維質を被覆すると同時に繊維間を結合させ、さらにそれを密閉・封止する方法を提供する。
【解決手段】障害性微細繊維やその微粉末の飛散を防止のために、1.繊維質の樹脂含浸、2.崩落防止補強および3.封止工程からなる。第1工程は、微細繊維質に対し優れた接着性を有し、且つ主に水性または水分散性で、高い伸び率を有する樹脂からなるプライマーで極微細繊維を被覆すると同時に繊維間を該樹脂にて結合させ飛散防止をする。第2工程は、崩落防止強度付与と密閉性と平滑性を付与するため網目状布の張り付け、およびアンカーボルトを打ち込みからなる。第3工程は、主に水性、水分散性または無溶剤で、高い伸び率が有する樹脂からなるトップコートを塗装し、完全密閉し、飛散防止することを特徴とする、障害性繊維質の障害予防と半永久的再生使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極微細無機繊維質、特にアスベスト表面を被覆する方法に関し、特定組成と性質をもつ樹脂による微細無機繊維質の表面を被覆すると同時に該繊維質間を結合させ、さらに樹脂処理繊維質層を、物性が優れ高い伸び率を有するコーティングで塗布し密閉・封止することにより、該有害性繊維質を無害化すると同時に大気中への飛散を完全に防止し、既設老朽化した該有害繊維質を障害なく安全に解体または再生使用することが可能となり、半永久的に環境の汚染を防止し、人体への障害を防止するための極微細繊維質表面を処理することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来の方法として、特許第2043618号では、アスベストを完全密閉式の空間の中で、水により湿潤させた状態で解体すると同時に集塵装置に吸入して、安全に解体処理する方法を開示している。また、封じ込めの場合もアスベストを有機樹脂または水ガラスなどの無機質バインダーにより凝結させて飛散防止する方法などがあるが、本発明による無害化に要する条件を満たしておらす、本質的無害飛散防止になっていないのが実状である。さらにまた、無害化の方法として、特許出願平5−145792では、アスベスト等産業廃棄物を水溶性または有機溶剤と混合粉砕し、凝固剤または架橋剤により固化させて、飛散しない産業廃棄物に変換する組成物と方法を開示している。最近では、アスベスト繊維にフロン分解物の炭酸カルシウムやフッ化カルシウムを混合し、600℃に加熱熔融して粒状化することにより無害化する方法も提案されている。しかし上記の方法は解体後の無害化方法であり、解体時および解体後の粉塵を雰囲気に漏洩しないことは完全に保証できるものではない。また完全に粉砕または溶解するために極めて大がかりな設備、または労力とコストを要する。また封じ込めによる再使用する方法も、凝固させたポリマーが微細繊維質を完全に被覆し、無害化と飛散防止が保証されるものではない。
【発明の開示】
【0003】
極微細無機繊維質表面を高い伸び率を有するポリマーで被覆すると同時に繊維間を結合させ、繊維やその微粉末の飛散を防止し、さらにそれら繊維質層を完全密閉し、長期でかつ安全確実な障害性繊維質の無害化するための樹脂およびコーティング方法に関するもので、1.繊維質の樹脂含浸、2.崩落防止補強および3.封止工程からなる。
第1の樹脂含浸工程は、極微細繊維質に対し優れた接着性を有し、且つ主に水性または水分散性で、高い伸び率を有する樹脂からなるプライマー(A)を繊維質層下面より塗布し、次いで繊維質層内部に極細特殊多孔ノズルを挿入し、同プライマーを噴霧し、極微細繊維を被覆すると同時に繊維間を該樹脂にて結合させ飛散防止をする。第2の補強工程は、崩落防止強度付与と密閉性と平滑性を付与するため網目状布を張り付ける。次いで天井コンクリートにアンカーボルトを打ち込み、その下端に固定板を取り付ける。第3の封止工程では、プライマーに対し優れた接着性をもち、且つ主に水性、水分散性または無溶剤のポリマーまたはプレポリマーからなり、高い伸び率が有する樹脂からなるトップコート(B)として塗装し、完全密閉することを特徴とする、半永久的アスベスト障害予防と再生使用方法に関する。
【発明が解決させようとする課題】
【0004】
現在のアスベスト災害は、製造者、取扱者、および周辺の住民の既発症者および潜在発症者(1次災害)が対象になっているが、既設老朽化アスベストの処理過程および未処理期間に生じると考えられる2次災害を可及的に抑止することが最も重要な課題となっている。また、障害防止のための処理が法的に義務づけられているが、解体するに要する費用は莫大なもので、封じ込め工法に頼らざるを得ない中零細企業および一般住宅などが、信頼できる長期保証再生処理方法が見あたらないことに、不安が高まっているのが現状である。そのような信頼すべき工法が強く求められている。
【課題を解決させようとするための手段】
【0005】
本発明は、アスベストを解体または再生利用する場合、有害な微細アスベストダストの飛散を可及的に抑制し、再生利用の場合には完全封止密封して、長年月にわたり安全で確実な機能を保持する方法に関する。発明者らは、この目的に適する被覆用樹脂および封じ込め用材料特性ならびにその工法鋭意研究の結果、全く新しい機能と耐久性を持つ材料を開発し、本処理システムの完成に至った。また解体処理に要する費用をより低く抑え、封止の場合には自然災害または建物自体の耐用年数後の解体処理の場合のアスベスト微粉末の飛散を最小限に止め、その障害が人体の及ばないことを保証できる新規工法に関する。また従来該繊維質の封じ込めに使用されるプライマーおよびトップコートは、有機溶剤を多量に含んだ塗布材料が使用されてきたが、近年、大気汚染防止のために有機溶剤規制法によりこれらの塗布材料の使用が禁止されてきた。そのため、従来の水性塗料では塗膜物性が劣り、アスベスト等の毒性を有する繊維質層を封止し、長期にわたりその機能を発揮するための充分な物理的強度を得ることができなくなってきた。
【発明の効果】
【0006】
本発明による工法は、有害な微細粉末の無害化にある。これには2つの効果がある。1つは、繊維質表面を柔軟な有機樹脂により被覆して繊維そのものを破損し難くする。いま微細繊維の表面を柔軟かつ接着性の良好な樹脂により被覆すれば、繊維は破損し難くなるばかりでなく、断面は樹脂により濡れが生じ、端面を覆い人体の細胞への損傷を著しく低下させることは明白である。すなわち、該樹脂で微細繊維質を被覆することは、繊維間を結合したり、破損しにくくしたりして飛散し難くするばかりでなく、繊維そのものを無害化する効果があることがわかった。生体に及ぼす影響は、臨床医学の研究をまたねばならないが、顕微鏡下の形態変化の観察から以上のことが推定できるのである。ポリマーの被覆のさらなる効果は、その伸び率と接着性にある。プライマーの伸び率が300%以下では繊維が外力により折り曲げられ、破損した場合に、飛散する。しかし、それ以上の伸び率では、繊維が折れた場合にもばらばらにならず、飛散しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によるプライマーは、繊維表面を被覆し、繊維と繊維間を連結させる役割を果たし、一体化しており飛散を防止する役割を果たす。伸び率は300−1000%の範囲にある。好ましくは400−800%で、さらに好ましくは500−700%である。伸び率が1000%を越えると、凝集力が低下し、繊維を連結させるに充分ではない。そのため微細繊維は飛散の恐れが生じる。繊維表面の樹脂による被覆、および繊維間の連結には、繊維重量に対して3%以上、20%以下で、好ましくは5%以上15%以下、さらに好ましくは7%以上、10%以下である。樹脂比率が3%以下では、アスベストの全表面を被覆できないので、所期の目的を達成できない。また20%以上では繊維と樹脂が塊状となり、その断熱作用に障害をきたす。
以上の施工上の特徴から、本発明による封じ込め作業における作業環境条件は、従来の解体作業の厳しい密閉空間は必要でなく、簡易外界遮断等の設備で充分安全が確保され、また工期も大幅に短縮されるので、利用者数の多い公共施設などの日常の活動に対する支障を最小限に止めることは大きなメリットである。
プライマー噴霧用全方向性噴霧ノズルは、アスベスト層への挿入の際、該繊維質を破損させないように、できるだけ細い管であることが必要である。しかし極細管では塗出量が制限され、作業効率が低下する。外径は5mm以下、3mm以上1mm以上、好ましくは4mm以下、2mm以上である。内径は4mm以下、0.5mm以上で、好ましくは3mm以下、0.5mm以上である。孔の位置はノズル先端部より下方0.5mmから30mmの位置にノズルと直角の面で1個以上の噴霧孔をもち、その孔は0.1mm以上、1.0mm以下、好ましくは0.2mm以上、0.8mm以下の直径をもつことを特徴とする。また作業効率を上げるため、このノズルを複数組み合わせて用いることもできる。ノズル全体側面を図1に、噴霧孔拡大平面を図2示す。噴霧孔の位置をノズル先端部より一定間隔を置いたのは、ノズル挿入時にコンクリート下面に突き当たり、噴霧孔の位置が容易に固定される、いわばセンサーの役割を果たしている。噴霧孔の位置が0.5mmより上部に付けられると、主にコンクリート面への噴霧になり、逆に30mm以上になればアスベスト層の上部部分の噴霧が均一に行われなくなる。噴霧孔の直径が0.1mm以下になると、プライマーの噴霧液滴を微細化することができるが、作業効率が低下する。また0.4mm以上になれば霧化が困難となる。
繊維層下面より天井コンクリートに打ち込むアンカーボルトの材質は、強度と防食性があれば材質に制限はない。強度は吊り下げに要する引っ張り張力は10kg/cm以上であること。ボルトの下端に取り付ける傘の形状は円形、角形いずれでもよいが、直径は、好ましくは30〜120mmの傘である。この直径が30mm以下になると該繊維層およびトップコートの自重を支えることが困難となる。逆に120mm以上になると、過剰性能となり、コストアップになる。
補強と密閉に用いられる網目状布は、天然繊維またはポリエステル等の化学繊維の何れででもよいが、厚さは0.2〜1.0mm、重量は30〜150g/m強靱かつ柔軟でプライマーおよびトップコートとの接着性が優れることが重要である。
さらに好ましくは厚さが0.4〜0.8mm、重量は40〜120g/mである。厚さと重量がそれぞれ0.2mm、30g/m以下になると崩落防止のための強度が低下する。また厚さと重量がそれぞれ1.0mm、150g/m以上になると、強度が充分であるが、アスベスト層の表面の凹凸に不織布が追随し難くなり、作業性が著しく悪くなる。
トップコートの伸び率は、300%以上、1000%以下で、好ましくは350%以上、750%以下で、さらに好ましくは400%以上、700%以下である。伸び率が300%以下では建物が衝撃を受けたときに塗膜に亀裂を生じる危険性がある。これが1000%以上では凝集力、剛性に欠け封じ込めの効果が完全にならない。膜厚は建物の構造や状態、アスベスト層の厚さや老朽化の程度により変えられるが、一般に最低30μmで、それ以下の場合では封じ込め強度が充分でない。また50mm以上ではトップコートの自重自体が重くなり、封じ込めは完全でも落下の危険性が生じる。
【実施例】
【0008】
本発明の特徴を説明するため、具体的実施例により説明する。
【実施例1】
【0009】
作業環境は、予めアスベスト予防規則に準拠した外部との遮蔽隔壁をつくり、
作業員は防塵服およびマスクを着用して作業を行った。この条件は、全実施例について共通であり、実施例2以降は記載を省略する。
コンクリート天井の下面に30mm厚に吹き付けられたアスベストに対して30%不揮発分を含有するアクリルエマルジョンのプライマーをアスベスト下面よりエアスプレーにて200g/m(ポリマー/アスベスト比=8.5%)で塗布した。このプライマーの乾燥塗膜の伸び率は500%であった。次に、アスベスト層の下面より噴霧ノズルを挿入して300X300mmに一カ所の割合で不揮発分20%を含有する該プライマーを一カ所あたり20g(ポリマー/アスベスト比=5.5%)で噴霧した。次いで下側全面を不織布(ポリエステル製0.2mm厚、30g/m)で覆い、該プライマー(30%エマルション)をシリコーンローラーで塗布圧着した。アンカーボルトは1平方米当たり1本の割合で打ち付けた。その先端部はアスベスト層の下面に合わせ、一辺が50mmの角形の金属製傘を取り付けた。3時間乾燥後、600%の伸び率をもつ発泡性ウレタンをスプレーにより2mm厚に全面被覆して封じ込めを完了した。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS K3850「空気中の繊維乗粒子測定法」(以下JIS法)により試料採取し、繊維の計数はISO14966−1998「環境大気−無機繊維状粒子の濃度分析−走査型電子顕微鏡法」(以下ISO法)で測定した。JIS法およびISO法で測定した結果、施工前では6f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【実施例2】
【0010】
アスベストを下面に吹き付けたコンクリート天井と吊り天井板との間隔が300mmの空間があり、吊り天井の下部より該ノズルをその先端部が空間の中間部にあたる150mmまで挿入し、不揮発分20%を含有する該プライマーを1000X1000mmに一カ所の割合で一カ所あたり50g(ポリマー/アスベスト比=8.0%)の割合で噴霧した。
1時間後、吊り天井を外し、アスベスト層下面と吊り天井上面に堆積した樹脂結合微粉塵を真空吸引器により吸引除去した。それ以後の工程は、アンカーボードを打ち込まないことを除外して実施例1と同じ工程で封止を完了した。最後に、吊り天井を取り付け封じ込め作業を完了した。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS法およびISO法で測定した結果、施工前では3f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【実施例3】
【0011】
コンクリート天井の下面に35mm厚に吹き付けられたアスベストに対して、30%不揮発分を含有するゴム系(NBR)ラテックスプライマーをアスベスト下面よりエアスプレーにて200g/m(ポリマー/アスベスト比=5.5%)で塗布した。噴霧ノズルにより300X300mmに一カ所の割合で不揮発分15%を含有する該プライマーを一カ所あたり20gで噴霧した。次に直ちにスクレーパーにより、アスベスト層を掻き落とした。天井裏を真空吸引機により残余微粉末を吸引し、掻き落とした樹脂被覆アスベストとともに除去した。天井裏全面に該プライマーを300X300mmあたり20g(厚さ30μm)をエアスプレーして除去を完了した。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS法およびISO法で測定した結果、施工前では5f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【実施例4】
【0012】
コンクリート天井の下面に50mm厚に吹き付けられたアスベストに対して、800%伸び率をもち、30%不揮発分を含有するアクリルウレタンエマルジョンのプライマーをアスベスト下面よりエアスプレーにて20μm厚で塗布した。次いで噴霧ノズルにより300X300mmに一カ所の割合で不揮発分20%の該プライマーを一カ所あたり30g(ポリマー/アスベスト比=5.5%)で噴霧した。次に該アンカーボルトを1平方米当たり1本の割合で打ち付けた。その先端部はアスベスト層の下面に合わせ、直径30mmのポリカーボネート製の傘を取り付けた。次いで下側全面を不織布(ポリエステル製0.3mm厚、40g/m)で覆い、該プライマー(30%エマルション)をシリコーンローラーで塗布圧着した。3時間乾燥後、600%の伸び率をもつ超速乾ウレタンコーティング((株)カワタ社製超速乾ウレタン)をエアスプレーにより2mm厚にて全面被覆して封じ込めを完了した。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS法およびISO法で測定した結果、施工前では10f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【実施例5】
【0013】
水平および垂直部を有する鉄骨構造材に吹き付け塗布された吹付けアスベスト層(30mm)に対して、プライマーに実施例3のNBRラテックスを用いる以外は実施例1と同じ材料および方法により微細繊維の被覆と凝結を施工したのち、補強と密封のための不織布を張り付けた。つぎに該プライマーの40%液を全面に30μmの厚さでエアスプレーして施工を完了した。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS法およびISO法で測定した結果、施工前では3f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【実施例6】
【0014】
スレート上面および下面に実施例1のプライマーで(40%不揮発分を含有)する樹脂液をエアスプレーで40μmの厚さで塗布した。3時間乾燥後、上面のみ実施例4のウレタンコーティングを2mm厚に塗布して補強と飛散防止施工を行った。無害化施工前後の雰囲気中のアスベスト繊維数をJIS法およびISO法で測定した結果、施工前では3f/lであったのに対し、処理後ではゼロで全く検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0015】
近年、極微細無機繊維、特にアスベスト障害による多数の犠牲者が全国的にでてきたため、極めて深刻な社会問題になっている。アスベストの微粉末が空気中に飛散すると、人体、特に呼吸器に吸収された場合、中皮腫、や肺ガンの発生原因となり極めて危険である。石綿製造業者およびその取扱い関連業者のみならず、公共施設や工場の既設の石綿から飛散する微粉繊維は、一般住民にとっても生命の脅威となっている。
そのため、大部分のアスベストの新規使用はすでに10年前(1995年)禁止されているが、解体または封じ込めに関しても法規により厳しく規定されるようになった。厚生労働省令第21号の労働安全衛生法に基づき、「石綿障害予防規則」(平成17年2月24日制定)がある。発症するまでの期間が数十年という長期の潜伏期間のため、「静かな時限爆弾」ともいわれ、潜在的罹患者は数十万人ともいわれている。しかしそれは、毒性のある微細繊維をすでに吸入している人間の数を表してしているのであって、これから吸入する人間を含めていないことに注意しなければならない。
既設の老朽化したアスベストおよびスレートなどアスベスト含有製品は早晩処置することが義務づけられているが、その処置方法についてのガイドラインは示されているものの、具体的、抜本的処理方法に欠けていることが大きな問題である。このため、解体または封じ込め再利用等の技術が業者の手に委ねられている情況であるが、その方法が法律に準拠している場合にも、微細繊維質の人体への障害の危険性、その耐用年数、自然災害によって再び飛散される事態の障害がおこる危険性が極めて高い。
本発明は、極微細無機繊維質の表面を有機ポリマーにより被覆し、繊維質を障害なく安全に解体または再生使用するための繊維表面処理およびその密閉方法に関するもので、作業時の繊維質のダストを可及的に飛散することを抑制し、柔軟でかつ接着性に優れたポリマーにより繊維質を包埋し、繊維質間を強固に結合させるとともに、樹脂の剛性により強靱な複合材料に変質させて、有害なアスベストを弊害なく解体、もしくは再生利用できる工法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】「ノズル全体側面を示した図である」
【図2】「噴霧孔拡大した平面図である」
【符号の説明】
【0017】
1:ノズル本体、2:エア取入口、3:ホースジョイント、4:シリコーンパッキン、5:噴霧孔、6:噴霧孔、7:ノズル管外周、8:ノズル管内周

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業中にアスベスト粉塵、微細繊維の飛散防止と繊維質の樹脂被覆を兼ねて、繊維質層下面からエアスプレーによりプライマーを塗装する。この際、毛管現象により繊維質の下面から、中央部にわたり樹脂被覆と相互凝集が達成される。繊維質層内部の天井コンクリート近傍の繊維質に対しては、微細繊維層下部より先端部に多穴を有する極細全方向性噴霧ノズルを挿入し、該プライマーを噴霧することにより天井コンクリート下面より繊維質に流下し、同時に直接繊維表面を湿潤・被覆し、さらに繊維質同士を該プライマーの樹脂により連結させることを特徴とする有害性繊維質の無害化と飛散防止方法。
【請求項2】
全方向性噴霧ノズルは、外径5mm以下、1mm以上、内径4mm以下、0.5mm以上で、先端部より0.5mmから30mmの位置にノズル本体と直角の面で1個以上の噴霧孔をもち、その孔は0.1から1.0mmの直径をもつことを特徴とする請求項1のプライマー噴霧用ノズル。
【請求項3】
微細繊維吹きつけ天井コンクリートと吊り天井との空間の中間位置に該ノズルを挿入し、プライマーを噴霧し、繊維質層下面および吊り天井上面に堆積した繊維質微粉末を凝集・固定化することを特徴とする請求項1および2の有害性繊維質の無害化方法と飛散防止方法。
【請求項3】
プライマー(A)の成分は、水溶性、エマルションまたはラテックスで、その物理特性は、繊維質およびトップコートとの接着性がすぐれ、300%以上、1000%以下の伸び率をもつことを特徴とする該被覆処理に適する請求項1のプライマー。
【請求項4】
補強と平滑化および密閉に用いられる網目状布は、天然繊維またはポリエステル等の化学繊維からなる織布または不織布で、厚さは0.2〜1.0mm、重量は30〜150g/mの、強靱かつ柔軟でプライマーおよびトップコートとの接着性が優れることを特徴とする請求項1、2および4の織布または不織布。
【請求項5】
吊り下げ力補強のため繊維層下面より天井コンクリートにアンカーボルトを打ち込む。アンカーボルトの材質は、強度と防食性があれば材質に制限はない。強度は吊り下げに要する引っ張り張力は10kg/cm以上であること。ボルトの下端は直径30〜120mmの傘をとりつけることを特徴とする該繊維層およびトップコートの自重にたえる請求項1のアンカーボルト。
【請求項6】
トップコートは、無溶剤または水系で、該プライマーと物理的または化学的に接着のすぐれた樹脂で、エアスプレーまたはローラー塗装に適する粘性を有し、膜厚は0.3−3.0mmである。硬化または乾燥後の塗膜物性は300−1000%の伸び率をもつことを特徴とする請求項1、2,4および5のアスベスト密閉用トップコート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−71004(P2007−71004A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292944(P2005−292944)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(505373638)
【出願人】(503084543)睦商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】