説明

微細藻類連続培養装置およびこの装置を用いた微細藻類連続培養方法

【課題】微細藻類の高速増殖を実現する従属栄養・独立栄養共存型の微細藻類連続培養装置およびこの装置を用いた微細藻類連続培養方法を提供する。
【解決手段】光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を有する光照射装置を内装または外装した密閉型の微細藻類連続培養装置である。前記光照射装置が、培養液中の微細藻類の光合成に必要な光質と光量子を中心波長430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率がそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光を、側壁面、培養液の上面および下面の少なくとも一方より培養液に向かって照射する構造を有し、前記微細藻類の炭素源として水に可溶な炭水化物を含む前記培養液に加熱滅処理を施す加熱装置を内部または外部に保持し、かつ、前記培養液中に内容物を投入するための無菌供給装置またはろ過滅菌装置を備える。またこの微細藻類連続培養装置を用いた連続培養方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類連続培養装置およびこの装置を用いた微細藻類連続培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類の光合成能力を高めるために、太陽光の光質と強度に近い光源をバイオリアクター内部に導入して光合成システムを強化する発明として、バイオリアクター内部に平板状の発光体を回転可能な枠に取り付け、内部の液体が均質に分散する角度に調整可能なバイオリアクター内部の光照射の均一化装置を壁体と攪拌機の間に設置する方式(特許文献1参照)が報告されている。この方式は、バイオリアクター内の光を均一に照射するために光源の制御および攪拌による液体流れに対する光照射の制御が提案されている。
【0003】
しかし、光源をバイオリアクター内部に入れる場合に、光源となる光変換の効率が悪く、投入エネルギーの大部分が熱となって培養液に伝熱され、液体の温度を一定に保つために冷却エネルギーの使用が必要となる。また、変換された光エネルギーの内、光合成に関与しない黄色などの光エネルギーは無駄になる。このために、バイオリアクター内部に設置された光発光体の電力を培養液の体積に比べて小さくできないという欠点があった。また、培養液の温度を下げる目的で伝熱の効率を高めようとして、液体の攪拌強度を高めてしまうと、液体内部の微細藻類の細胞分裂を維持することができなくなるという欠点があった。
【0004】
また、同様の技術として、特許文献2および3に記載されているように、バイオリアクターの光源を液面以下に配置する技術も提案されているが、これらは配線部が複雑になり光源に栄養塩が浸み込む漏電事故が発生しやすいという問題があった。さらに、青色及び赤色のLEDやレーザーダイオードを用いて、微細藻類の光合成速度を高める技術も開発されている(特許文献4、非特許文献1,2参照)。しかし、これらの技術や知見は、微細藻類の光合成反応経路PS IIの波長680nmに適した波長になっておらず、また、青色側の波長と赤色の波長の強度が1:1の場合、青色光の照射強度が高すぎ、微細藻類の細胞膜損傷が発生して、人工光培養では増殖速度が減少し、長期培養に耐えられないという欠点をもっていた。これらの問題点を解決するために、本発明者らは、微細藻類の光合成において光合成の反応システムに有効な光質と必要な光量子量を配分し、かつこの配合した光りを培養装置内に均一に、効率よく供給する必要があるとの知見を得、かかる知見から、特定の波長の光を供給する光発振装置(レーザーダイオード)が取り付けられた光導波路や光発光体(LED)を微細藻類の培養槽に設置したところ、独立栄養条件下で従来の増殖の数倍から数十倍に微細藻類の増殖速度を高めることができた(特許文献5参照)。
【0005】
独立栄養下での微細藻類の増殖速度を律速する他の要因として、炭素源である二酸化炭素を培養液の溶液に溶解させる量に限界があることが挙げられる。特許文献6記載の技術では、通常の散気管(スパージャー)により二酸化炭素の溶解を高めようとしているが、気泡のサイズが大きいために十分とはいえなかった。このために、本発明者らは、特許文献5にあるとおり二酸化炭素をマイクロバブル化して培養液中に瞬時に溶解させることが、二酸化炭素が水中でイオン化した炭酸水素イオンとなって微細藻類の細胞膜内への物質移動を律速することなく、光合成反応速度の向上に反映することを確かめている。
【0006】
さらに、上述の独立栄養条件での二酸化炭素の取り込み以上に炭素源を微細藻類に取り込ませて微細藻類の炭素源取り込み量を高める手段として、炭素源を無機物の二酸化炭素以外の有機物から微細藻類に与え、光を与えない暗の従属栄養条件の状態で培養する方法が知られている。即ち、糖などの溶解性炭素源を微細藻類の細胞内に取り込ませ、従属栄養による微細藻類を培養する発明が提案されている(特許文献7参照)。
【0007】
特許文献7記載の技術の弱点として従属栄養において炭素源を代謝する通性嫌気性菌のバイオリアクター内への侵入があり、これを滅菌してバイオリアクター内での増殖を防止する必要がある。本発明者らは数々の試験を行って、この問題の解決を行なった。その結果、これらの通性嫌気性菌が培地の炭素源を代謝し、微細藻類の炭素源の取り込みと競合し、かつ通性嫌気性菌の代謝に伴って生成した有機酸によるpHの低下による微細藻類の増殖阻害を引き起こし、結果的に微細藻類の増殖速度を著しく低減させることを明らかにした。
【0008】
また、特許文献7記載の技術と類似する技術として、特許文献8には、従属栄養条件で緑藻類を、発生した二酸化炭素を大気に放出し利用していない液の酸素分圧を3段階に分けた回分培養で培養して培養速度の向上を企図した技術が報告されている。具体的には、第1段階で好気培養、第2段階で通性嫌気培養、第3段階で嫌気培養に、それぞれ分けた回分培養法が提案されている。しかし、この回分培養法は暗の状態で回分培養を実施しているが、毎回の滅菌のためにエネルギー損失が大きいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2882622号公報
【特許文献2】米国出願公開2009017677号公報
【特許文献3】米国出願公開2009029445号公報
【特許文献4】国際公開2009/002772
【特許文献5】国際出願PCT/JP2010/71059号
【特許文献6】特開平07−184630
【特許文献7】米国出願公開20100023971号公報
【特許文献8】米国出願2009/0209014 A
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Biochemical Engineering Journal,2007,Vol.37,pp.21−25
【非特許文献2】Eco−Engineering,2007,Vol.19,No.1,pp27−32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、本発明者らは、特許文献5において独立栄養条件下で従来の増殖の数倍から数十倍に微細藻類の増殖速度を高めることができることを提案したが、微細藻類に有機質系の炭水化物を炭素源として供給する従属栄養条件を利用するものではなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、従属栄養条件で微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素を微細藻類の光合成に活用するために従属栄養条件でも微細藻類の光合成における光反応システムに有効な光質と必要な光量子量とを照射する系を成立させ、これにより微細藻類の高速増殖を実現する従属栄養・独立栄養共存型の微細藻類連続培養装置およびこの装置を用いた微細藻類連続培養方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するためには、従属栄養条件で微細藻類が呼吸するために必要な酸素の供給の維持と、この呼吸によって排出される二酸化炭素を独立栄養的に光合成する能力を同一の微細藻類培養装置内で発揮させるために、(1)微細藻類の従属栄養条件で必要な酸素量とその濃度および微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素濃度とをバランスよく制御すること、(2)光合成に有効な光質と必要な光量子量の配合を可能とする光発光体の改良、(3)この光を微細藻類培養装置内に均一に、効率よく供給可能な光照射システムを構築すること、あわせて(4)有機体の炭素源および栄養要素を含む培地の加熱滅菌時に、光照射システムおよび光発光体の性能を損ねることなく実施可能な微細藻類培養装置として構築することが必要である。
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、従属栄養条件で酸素分圧を変化させても必ず好気であれば、糖等の基質を緑藻類がそれを代謝することによって、二酸化炭素の発生が見られ、この二酸化炭素を用い光合成に有効な波長と光量子量を補給することで、光合成を行なうことを確かめた。また、加熱滅菌が完全でなく通性嫌気性菌が存在する場合には、これらのバクテリアの比増殖速度が大きいために、菌の代謝によって生成する低級脂肪酸類が緑藻類の増殖阻害を発生させる。換言すれば緑藻類が感染した状態となり、この感染が緑藻類の増殖速度を低下させることも確かめた。
【0015】
本発明者らは、かかる知見に基づいて、さらに試行錯誤的に多くの実験を行なった結果、微細藻類の培養装置及び培地そのものを加熱滅菌(好適には75〜121℃で15〜60分間)することで緑藻類の増殖速度低下問題を解決することを見出した。さらに、従属栄養条件で微細藻類が糖類の代謝に伴って発生する二酸化炭素、すなわち、微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素の生成に気づき計測した結果、循環ガス中の二酸化炭素濃度が1%から20%まで、かなり幅のあることを突き止めた。この結果、特許文献7および8のような従属栄養条件の暗条件だけの培養では二酸化炭素削減効果を減じ、せっかく生成した二酸化炭素の再利用の機会を失い、物質生産に転換できなくなることが分かった。
【0016】
そこで、本発明者らは、密閉型の微細藻類連続培養装置を改良して、滅菌可能でかつ内部で発生する二酸化炭素を独立栄養的に光合成することが可能な光合成に有効な光質と必要な光量子量とを発生できる光源を開発し、二酸化炭素の再利用を図り、加熱滅菌した培養液(培地)を連続供給する微細藻類連続培養装置及び微細藻類連続培養方法を提案するために、さらに鋭意検討を行った。その結果、特定の波長の光を発する光発光体の波長域として3種を設定し、微細藻類の種類によってやや幅があるものの、そのうちの短波長基準でこれより大きい波長を有する光量子量の比を所定の範囲内に設定することで、従属栄養下での栄養源による光量子の吸収による減衰を防止して、従属栄養下で微細藻類の呼吸によって発生した二酸化炭素を光合成することで微細藻類の光合成反応を高めることに成功した。すなわち、従属栄養状態にするために有機物質の炭素源を培養液(培地)とし、かつ微細藻類の加熱殺菌時の高温による光源の劣化や性能の低下を防止する手段を導入することにより、微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素を光合成させるために光を照射する独立栄養を共存させることができ、これにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の微細藻類連続培養装置は、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を有する光照射装置を内装または外装した密閉型の微細藻類連続培養装置であって、
前記光照射装置が、培養液中の微細藻類の光合成に必要な光質と光量子を中心波長430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率がそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光を、側壁面、培養液の上面および下面の少なくとも一方より培養液に向かって照射する構造を有し、
前記微細藻類の炭素源として水に可溶な炭水化物を含む前記培養液に加熱滅菌処理を施す加熱装置を内部または外部に保持し、かつ、
前記培養液中に内容物を投入するための無菌供給装置またはろ過滅菌装置を備えることを特徴とするものである。この本発明の従属栄養・独立栄養共存型の微細藻類連続培養装置により、微細藻類の高速増殖を実現することが可能となった。
【0018】
本発明の微細藻類連続培養装置の好適実施形態について列挙する。
(1)前記光照射装置に、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の背面に耐熱性断熱材が反転自在に装着され、前記加熱滅菌処理を施すときに、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路が加熱面に対して反対方向に反転可能である細藻類連続培養装置である。これにより、培養装置壁面洗浄や培養装置内の培養液を加熱滅菌するときには光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を加熱面に対して正反対方向に反転させることで、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の加熱滅菌操作中における熱損傷や劣化を防止することができる。
【0019】
(2)前記光照射装置における光発光体または該光発光体を光源とした光導波路が耐熱二重透明管に収納され、該耐熱二重透明管内に冷水または冷風を送ることにより光源を冷却可能である微細藻類連続培養装置である。これにより、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の加熱滅菌操作中における熱損傷や劣化を防止することができる。
【0020】
(3)前記光導波路が耐熱性材料、特にはガラスである微細藻類連続培養装置である。これにより、培養装置壁面洗浄や培養装置内の培養液を加熱滅菌するときにも、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を定置のままとするか、または光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を抜き出すことができる。
【0021】
(4)培養液中に投入する改質ガス濃度を所定の範囲に維持するためのマイクロバブル装置を備える微細藻類連続培養装置である。このマイクロバブル装置は、光照射下の従属栄養条件下で培養するときの培養溶液の液相部の酸化還元電位を+300mV〜−50mVの範囲に保持するのに役立つ。
【0022】
また、本発明の微細藻類連続培養方法は、上記微細藻類連続培養装置に、種となる微細藻類を無菌供給装置またはろ過滅菌装置を介して植種し、光照射装置による光照射により微細藻類を連続培養する微細藻類連続培養方法において、
培養液中に微細藻類の炭素源として水に可溶な炭水化物を投入し、次いで加熱滅菌処理後、冷却を施した後、種となる微細藻類を植種することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の微細藻類連続培養方法の好適実施形態について列挙する。
(1)前記光照射装置による光照射を培養液1立方メートル当り30W〜100Wの光を照射することにより行なう微細藻類連続培養方法である。
【0024】
(2)前記加熱処理を75〜121℃で15〜60分間行なう微細藻類連続培養方法である。
【0025】
(3)培養液の窒素源として、無機態窒素および/または有機態窒素を前記炭水化物の炭素に対して1/10〜1/20の範囲の質量比で無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入する微細藻類連続培養方法である。
【0026】
(4)カリウムおよびリンをそれぞれ前記炭水化物の炭素に対して1/50〜1/200の範囲の質量比で無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入するの微細藻類連続培養方法である。
【0027】
(5)微量金属要素としてMg、Mn、Ca、Feを無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入する微細藻類連続培養方法である。
【0028】
(6)光照射下の従属栄養条件下で培養するときの培養液の液相部の酸化還元電位を+300mV〜−50mVの範囲に保持するために、培養液に送る酸素濃度を15〜30%、外気空気中の窒素ガスの濃度を70〜85%に調整し、かつ送り込むガスを培養液中においてマイクロバブル装置にて10〜30μmに維持する微細藻類連続培養方法である。
【0029】
(7)前記炭素源として、前記水に可溶な炭水化物を、グルコース、フルクトース、キシロース又はキシリトールなど、6単糖および5単糖単独の2種以上混合物、蔗糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、イヌリンなどの2糖または多糖類単独または2種以上の混合物、木質セルロース,竹の茎,ササの葉、バガスやこれらの植物に含まれる多糖類の酸またはアルカリまたは酵素による加水分解物単独または2種以上の混合を用い、特には前記炭素源に必須アミノ酸を含むアミノ酸群および/またはペプチドを10〜500mg/L添加する微細藻類連続培養方法である。
【0030】
(8)前記炭素源としての前記水に可溶な炭水化物を,クエン酸および/またはグリセリンとし、該炭素源に必須アミノ酸を含むアミノ酸群および/またはペプチドを10〜500mg/L添加する微細藻類連続培養方法である。
【0031】
(9)前記炭素源としての前記水に可溶な炭水化物を、ムギワラ、イネワラ、芝生、雑草、野菜屑や果実の皮などのソフトセルロース、およびジャガイモ、サツマイモ、カンナ根茎植物の根や茎の磨砕物などのデンプンを酸またはアルカリまたは酵素による加水分解した六単糖、五単糖の混合物、イヌリンで構成するキクイモの根茎磨砕物を
単独または2種以上の混合とする微細藻類連続培養方法である。
【0032】
(10)前記水に可溶な炭水化物に代わる炭素源および栄養塩や微量金属要素に変わる栄養源として、微細藻類の独立栄養培養液の廃液またはメタン発酵液のメタン消化液を培養液として細胞壁を持つChlorella(クロレラ)属、Scenedesmus(セネデスムス)属またはSpirurina(スピルリナ)属の緑藻類を培養し、この培養液から重力沈降法、遠心分離またはUF膜を用いて分離した固形物を直接または熱処理した後、該固形物を直接または粉砕して微細藻類の栄養源とする微細藻類連続培養方法である。
【0033】
(11)Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属、Scenedesmus(セネデスムス)属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属を単独または混合培養する微細藻類連続培養方法である。
【0034】
(12)培養液の液相部の酸化還元電位を+300mV〜−50mVの範囲に保持するために、外気空気の酸素を20〜30%に調整することを基準に,培養装置内の気相と液相を循環するガス中の二酸化炭素ガス濃度を1〜20%の範囲で保持し、その他ガスとして窒素ガスを監視する装置を配設して、従属栄養下で発生する二酸化炭素を光照射下で光合成させ、不足するときは外部より二酸化炭素を供給する機構により、気相部のガス濃度を制御する微細藻類連続培養方法である。
【0035】
(13)培養液の液相部の水素イオン濃度がpH5.6〜7.8の範囲となるように、酸性の時には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを、アルカリ性の時にはクエン酸またはクエン酸カルシウムを、それぞれ加熱滅菌法またはろ過滅菌法によって培養装置に投入してpHの調整を行う微細藻類連続培養方法である。
【0036】
(14)光源から照射される培養液中の最小光量子量が3〜5μE/s/mの範囲で確保可能な光環境を保持する微細藻類連続培養方法である。
【0037】
(15)従属栄養下で培養した微細藻類を培養液そのもの又は物理的方法で濃縮した培養液を人工光−太陽光併用型の密閉型微細藻類連続培養装置に移植し、二酸化炭素供給と光照射による独立栄養下で1〜3日間Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属またはScenedesmus(セネデスムス)属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属を培養する、従属栄養と独立栄養とを併用する微細藻類連続培養方法である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、従属栄養下で微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素を微細藻類の光合成に活用するために従属栄養下でも微細藻類の光合成における光反応システムに有効な光質と必要な光量子量とを照射する系が成立し、これにより微細藻類の高速増殖を実現する従属栄養・独立栄養共存型の微細藻類連続培養装置およびこの装置を用いた微細藻類連続培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1(a)は本発明の光発光体を有する光照射装置の使用状態を示す説明図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線に沿う断面図である。
【図2】図2は光発光体を直接液に触れさせない方式で光照射装置を組み込んだ密閉型微細藻類連続培養装置の概略図である。
【図3】図3は、光発光体が耐熱二重透明管に収納され、該耐熱二重透明管内に冷水または冷風を送ることが可能な光照射装置の概略図である。
【図4】図4(a)は密閉型微細藻類連続培養装置の外壁に光照射装置を装着した際の概略図であり、図4(b)はこの密閉型微細藻類連続培養装置の水平方向の断面図である。
【図5】図5aは、光発光体を微細藻類連続培養装置の外周付近に取り付けたときの光質強度の変化を示す説明図であり、図5bは光発光体を微細藻類連続培養装置の平底に取り付けたときの発光体の取り付け間隔Dに光質強度が影響を受けることを示す説明図である。
【図6】図6aは、太陽光、人工光併用型の平底型微細藻類連続培養装置に光発光体を配置した状態を示す概略説明図であり、図6bはそのときに用いた光発光体の部分概略図である。
【図7】図7は、従属栄養−独立栄養共存型微細藻類連続培養装置の加熱滅菌システムと種藻を投入するシステムとの関係を示す概略図である。
【図8】図8は厨芥などの食品廃棄物を炭素源として原料とするメタン発酵による生物分解後の窒素や炭素源を藻類培養に活用する従属栄養および独立栄養併用型の微細藻類連続培養装置の活用システムを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
一般に微細藻類の光合成における光反応システム、クロロフィルaに必要な光質は植物のそれと同じく700nm,680nmおよび430nmである。一方、カロテノイドの形成は光合成をクロロフィルbとともに補強するので、490〜620nmの波長が必要であり、所謂グリーンギャップと称して、発光ダイオード(LED)はこの波長域の発光が困難である。本発明では、光ダイオードチップと蛍光物質を一体化したチップを形成することによって、カロテノイドによる光合成を補強する波長をも発生することに成功したことにより、なされたものである。すなわち、この光ダイオードチップは光合成に必要な光質と光量子量を波長域430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準にした光量子量の比率をそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる1固体からなる光発光体LEDである。
【0041】
本発明に係る光発光体であるLEDは一体型にすることで、バイオリアクターへの組込みがより簡単になり、電源からの電力供給の配線も単純化でき、自由なLEDの配置が可能になる。
【0042】
本発明に係る光照射装置の光発光体はダイオードを主体とし、レーザー発振型でなく、光放射面積がレーザーダイオードより大きく、光の放射角度が140度となるので、反射板をつけて光の放射角度を20〜40度として液中を深く照射可能になるように構成することが好ましい。これにより培養液中深く、光照射効果を高めることができる。図1に本発明に好適に使用することができる光照射装置を示す。図1に示す光照射装置においては、反射板付きLEDチップ3をA−A’断面に示すとおり集合させ、光導波路2の上部につけることによって、培養液中に光量子をより多く送り込むことが可能になる。また、光反射材料4および底面光反射材料5を設けることにより、より効率的に培養液中に光量子を送り込むことが可能になる。また、電源1からの電力供給は培養液に光発光体が直接接触することを避けることが可能になる。図中、符号6は、友射光線照射方向を示す。
【0043】
次に、図2に、本発明の好適例である密閉型微細藻類連続培養装置の模式的断面図を示す。図2に示す密閉型微細藻類連続培養装置10においては、電源1に接続された反射板付きLEDチップ数個を平板の上に載せた平板型LED発光体7を一定間隔で並べ、LED装着用放熱板8に設置して、これを耐熱透明管9内に挿入したものである。これにより、密閉型微細藻類連続培養装置10の任意の位置に多数の平板型LED発光体7が設置されて培養液に多くの光量子を送り込むことが可能になる。この場合には、加熱滅菌操作時にこの多数の平板型LED発光体7を抜き取ったり、断熱して熱の伝導を下げたりすることが可能となる。また、図3に示す光照射装置も好適に使用することができる。この光照射装置は、平板型LED発光体7が、水/冷風の入り口12、水/冷風の出口13および結露水ドレイン管14を有する耐熱二重透明管である耐熱ガラス中空管11に収納され、この耐熱ガラス中空管11内に冷水または冷風を送ることよって内部の光発光体7の集合体の熱的保護を図ることができる。これにより、密閉型微細藻類連続培養装置10の設計上の自由度を確保することができる。
【0044】
本発明の密閉型微細藻類連続培養装置10においては、従属栄養条件下でも光合成の光反応システムを刺激することで微細藻類の呼吸によって発生した二酸化炭素を独立栄養的に資化することが可能となる。本発明に係る光照射装置により、培養液中の微細藻類の光合成に必要な光質と光量子を中心波長430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率がそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光を送り込むことにより、従属栄養下での有機炭素源の資化によって発生する二酸化炭素により光合成を行って、暗条件の従属栄養下より高い微細藻類の増殖速度を得ることができる。このためには光量子量を可能な限り均一に供給することが好ましい。なお、微細藻類は均一に密閉型微細藻類連続培養装置10内に分散しているので、二酸化炭素は、ほぼ均一に培養液中に分散していると考えられる。
【0045】
本発明の所望の効果を得る上で、光発光体の設置は図2に示すように側面方向だけの照射では光量子量が不足するおそれがある。本発明者らにより算出された、微細藻類の増殖に必要な最小光量子量は、本発明に係る光発光体の光合成有効放射(PAR)(400nm〜700nmの光量子量)では3〜5μE/s/m以上とすることが好ましいことから、密閉型微細藻類連続培養装置10の側面、底面、天上面や内部などの空間に光発光体をくまなく配置することが好ましい。
【0046】
従属栄養下で独立栄養を実現させるためには、上述の本発明に係る光照射装置を密閉型微細藻類連続培養装置10に装着する必要があるが、光発光体(発光半導体)の特性を保持するために80℃以上の温度にすることができない。光発光体の寿命の維持や劣化を防止するためには60℃以下の温度が必要である。しかし、本発明においては従属栄養下で培養液中に存在する細菌類を加熱滅菌する必要があり、密閉型微細藻類連続培養装置10の内部温度を、好ましくは75〜121℃で15〜60分間保持する必要がある。このため、図3に示す上述の光照射装置の他、図4(a)、(b)に示す光照射装置を使用することが好ましい。図4(b)に示す光照射装置は、平板型LED光発光体7をLED装着用放熱板8に装着して形成されたLED集合体15(または図示はしないが光発光体を光源とした光導波路)の前面に耐熱透明板17が、また背面に反射板兼保護板16が夫々に装着されている。これにより、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の加熱滅菌操作中における熱損傷や劣化を防止することができる。また、かかる光照射装置に、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の背面に耐熱性断熱材を反転自在に装着し、加熱滅菌処理を施すときに、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を加熱面に対して反対方向に反転させても、同様の効果を得ることができる。
【0047】
本発明の微細藻類連続培養方法に好適に用いることができる従属栄養下の炭素源を資化する微細藻類は、Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属、セネデスムス属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属を挙げることができ、これらを含む緑藻類や珪藻類は六単糖や五単糖などを良好に資化することができる。ソフトバイオマスや木質バイオマスのセルロース、植物の根茎に含まれるデンプンや多糖類の加水分解物は六単糖や五単糖を生成しているので、これらの糖類を資化することで多様なバイオマスを原料とすることができる。したがって、非食料バイオマスを微細藻類の生産用原料とすることが可能である。
【0048】
加熱滅菌を施した従属栄養下での培養液中の溶存性ガス濃度の組成は、微細藻類の増殖速度、初期濃度によって大きく異なるので、溶存ガス濃度を測定して密閉型微細藻類連続培養装置10の活性度を評価する方法があるが、測定精度に難点がある。よって、本発明においては、微生物の存在による影響を考慮すると酸化還元電位(ORP)の観測が好ましく、酸化還元電位(ORP)が+300mV〜−50mVの範囲に収まるように酸素、二酸化炭素および窒素濃度を調節することが好ましい。例えば、Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属、セネデスムス属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属の微細藻類の従属栄養下での培養では、酸素を15〜30%、二酸化炭素ガス1〜20%、その他ガスとして窒素ガスを濃度調整に用いた混合ガス組成が好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実験例、実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
先ず、本発明の効果を確認するために予備の実験を行った。
(実験例1)
従属栄養下で微細藻類の呼吸によって発生する二酸化炭素はかなり微細であり、pHによっては溶液に溶解しやすい。その分散は微細藻類の分散と同じと考えることができるので、この二酸化炭素を微細藻類の光合成に活用するために、明の条件において、光合成における光反応システムに必要な光質と光量子とを照射する系を成立させることにある。かかる状況の下、微細藻類の光合成に必要な光質と光量子を波長域430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率をそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光発光体を作出し、このチップを集合させて、入力電力で6WのLEDランプを製作した。
【0051】
このランプから照射される微細藻類培養装置として1Lの三角ガラス容器に培養液を500mL入れ、通気型耐熱栓でふたをして、121℃、45分の加熱滅菌後、常温まで冷却した後、無菌の種藻類としてEuglena gracilisを植種して、攪拌機による攪拌を行い、明:暗野時間を12:12時間として時間タイマーで照射した。対照区には暗24時間の微細藻類培養区を置いた。主要炭素源を、グルコース(1g/L)、キシリトール(1g/L)、およびグルコース(1g/L)とキシリトール(1g/L)をあわせたものの3種の培地の回分培養実験を行った。このときのランプ表面の光量子量は96μE/S/m、3角フラスコの照射側の表面は56.6μE/S/mで、培養液を通過した反対側の光量子量は培養液によって減衰されて1.1μE/S/mであった。
【0052】
かかる実験条件で培養温度を25〜27℃、酸化還元電位(ORP)を+100mV〜−20mVの範囲内とし、酸素および二酸化炭素の濃度を夫々20〜30%、3〜10%に調節して培養した。その結果、暗条件ではグルコース、キシリトール、グルコース+キシリトールの培地で、夫々、0.402g/L/d、0.380g/L/dおよび1.03g/L/dの増殖速度であったのに対し、明条件では0.455g/L/d、0.529g/L/dおよび1.287g/L/dの増殖速度であった。よって、光照射における光合成の効果は、夫々、13%、39%および25%の増殖速度の増加効果として確認することができた。
【0053】
(実験例2)
次に、実験例1で用いた培養容器を5Lに換え、光照射ランプ2個を対称に置き、12WのLEDランプによって実験例1と同じ光条件に近づけ、攪拌機による攪拌と気相部のガスの液相吹込みを時間タイマーで管理する方法でEuglena gracilisの回分培養を行った。培地として蔗糖、キクイモ乾燥粉砕物、竹葉の硫酸加水分解物およびグリセリンの4種を選定して培養を行なったところ、暗条件に対する明条件の増殖速度の増加割合は、夫々、9.0%、18%、187%および25%となった。この結果より、特に竹及びササ葉などの加水分解物によるEuglena gracilisの増殖速度の増加が著しく、分解物の中にキシロースが多く含まれることが寄与したと考えられた。この結果は、実験例1のキシリトールの増加割合の結果とも一致した。
【0054】
実験例1および実験例2の結果から、緑藻類に属する微細藻類は培地および密閉型の培養容器の加熱滅菌を十分に実施し、従属栄養培養と独立栄養培養とを同時に進行させることにより、これまでの増殖速度より大幅に増殖速度を高めることができることが確かめられた。また、光発光体による光照射により従属栄養培養において培養液中の糖類を微細藻類が代謝することによって発生する二酸化炭素を、有効な光質と必要な光量子量を配分した特定の光照射装置によって微細藻類の光合成を行なわせることで、その増殖速度の増加が暗条件の従属栄養増殖と比較して増加することが認められた。
【0055】
各実施例で使用する微細藻類の栄養塩液の組成を下記の表1に示す。
【表1】

※1:組成は下記表2記載のとおりである。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例1)
図4に示す光発光体であって、光質と光量子を波長域430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率をそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光発光体(以下の実施例においても同様のものを用いた)の配置を可能にした10Lガラス容器の外部に平面から見て角度90度ごとに12Wずつ平板型LEDを配置し、攪拌モーターをガス循環型攪拌に置き換え、外気空気を0.2μmフィルターで除菌できるようにして小型空気ポンプで供給可能にした密閉型微細藻類連続培養装置を用いた。この密閉型微細藻類連続培養装置に3種の炭素源として、フルクトース、麦芽糖、トレハトースを乾物でそれぞれ1g/Lになるように入れ、LED照明部を取り外して、121℃で45分の加熱滅菌後、冷却した。次いで、表1に示す無機栄養分を液体用の0.2μmフィルター無菌の種藻類としてEuglena gracilisを植種して、空気による攪拌を行い、明条件での明:暗の時間比を12:12時間として時間タイマーで照射した。
【0058】
対象区には暗24時間の微細藻類培養区をおいて、培養温度を25〜27℃で回分培養を行った。このときのランプ表面の光量子量は580μE/S/mで、滅菌前に測定した液体中心部の光量子量は50.3μE/S/mで、Euglena gracilisが約1g/L濃度のとき、中心部の光量子量は38.6μE/S/mであった。また、この濃度付近での明条件の増殖速度は、暗条件に比べ10〜30%の増加であった。また、Scenedesmus dimorphusについて同様の実験を行ったところ、明条件の増殖速度は暗条件に比べ15〜35%の増加であった。
【0059】
(実施例2)
実施例1と同じ10L容ガラス製密閉型微細藻類連続培養装置を用いて12Wずつ平板型LED(合計48W)を配置した。さらに、電動攪拌機をガス攪拌に置き換えた。空気ポンプで送った外気空気に含まれる雑菌を0.2μmフィルターで除菌可能とし、かつLEDを設置した密閉型微細藻類連続培養装置に、2種の炭素源としてクエン酸およびグリセリンを乾物でそれぞれ1g/Lになるように投入し、さらに窒素、リンおよびカリ成分の補給としてペプトン0.10g/L、乾燥酵母エキス0.05g/L、さらにまた微量要素源として鹿沼土および赤玉土(50%/50%重量比)を煮沸抽出した土壌水1Lを夫々投入した。
【0060】
次いで、密閉型微細藻類連続培養装置からLED照明部を取り外して、121℃で45分の加熱滅菌を行ない、次いで冷却した後、Chlamidomonas rheinhardiiを植種して、0.2μmフィルターで除菌空気による攪拌を行い、明条件の培養において明:暗の時間比を12:12時間として時間タイマーで時間制御してLEDを照射する回分培養を行なった。なお、窒素源のペプトンの替わりにコラーゲン0.05〜1g/Lを入れても同様の効果が得られることは確認されている。
【0061】
対照区には暗24時間の微細藻類培養区をおいて、ガス攪拌による培養温度を25〜27℃で回分培養を行った。このときのランプ表面の光量子量は前記と同じである。0.75g/Lの濃度付近での増殖速度は、暗の条件に比べ、明では20〜30%の増加であった。また、Ankistrodesmus属(種は不明)について同様の実験を行ったところ、明では25〜40%の増加であった。
【0062】
(実施例3)
光発光体の配置を液面上部に設置可能にした1000L液容量のSUS316製密閉型微細藻類連続培養装置に図1に示すLED光発光体48W(照射角度35度)を装着し、密閉型微細藻類連続培養装置内部を90〜100℃で50分間蒸気滅菌を行なった。炭素源としては蔗糖および乾燥キクイモを使用し、これらに121℃で60分間の滅菌処理を施し、無菌的に1g/Lの濃度になるようにして密閉型微細藻類連続培養装置に投入した。次いで、再度、炭素源の入った密閉型微細藻類連続培養装置内部液を90〜100℃で50分間加熱ジャケットによる加熱滅菌を行って、温度27〜28℃に低下した段階でEuglena gracilisを植種した。
【0063】
外気空気を0.2μmフィルターで除菌可能なように空気ポンプで50L/1000l/min.の流量で通気し、ORPを+250mv前後を維持するように気相の酸素濃度を15〜20%に制御した。二酸化炭素濃度は3〜5%で推移した。明条件の明:暗の時間割合を12:12時間として培養した。
【0064】
対照区となる比較実験はLEDを点灯しない暗の状態で細藻類を培養した。培養温度は25〜27℃で連続培養を12日間行った。明のときのランプ表面の光量子量は580μE/S/mで、滅菌前に測定した液体表面の光量子量はガラス透明板を通しているために40.3μE/S/mで、Euglena gracilisが0.75g/L濃度のとき、密閉型微細藻類連続培養装置底面の光量子量は約10μE/S/mであった。この濃度付近での蔗糖およびキクイモを炭素源としたときの増殖速度は、それぞれ、暗の状態で0.778g/L/d、0.356g/L/dであった、明の状態で、それぞれ、1.469g/L/d、0.804g/L/dの増殖速度であった。通気攪拌だけであったので従属栄養条件で発生する二酸化炭素がかなり追い出され、光合成の効果が減退すると予想していたにもかかわらず、光発光体による光量子の供給効果が高かった。LED照射による増殖速度の増加割合は蔗糖では88.8%,キクイモでは126%と、大きな増加が得られた。
【0065】
(実施例4)
実施例2で用いた10L液容量のガラス製密閉型微細藻類連続培養装置にLED光発光体48W(照射角度35度)を図4のように装着し、密閉型微細藻類連続培養装置内部を90〜100℃で、50分間蒸気滅菌を行なった。炭素源として、乾物濃度で5%に調製した芝生、ジャガイモ、サツマイモ、カンナの根茎を夫々10%希硫酸を用いてガラス容器内で100℃で、60分間常圧下で加水分解した。この加水分解物のpHを6.5〜6.8の範囲になるように5%水酸化ナトリウム液で調整した。乾物濃度で0.5%の可溶性乾物量になるように不溶性物を取り除いた原料液をそれぞれ調製した。これらの調製液に、コラーゲンを500mg/Lの濃度になるように追加した。これらを121℃で60分間滅菌し、無菌的に5g/Lの乾物濃度が得られるように、それぞれの原料濃度を調整した。
【0066】
次いで、培養前に装着したLEDを外し、再度炭素源およびコラーゲン入りの密閉型微細藻類連続培養装置を内部液の入ったまま、オートクレーブに入れて90〜100℃で50分間、加熱滅菌を行った後、温度が27〜28℃に低下した段階で無菌培養した種藻の1g/L濃度のChlamidomonas(クラミドモナス)を2L植種した。次いで、0.2μmフィルターで外気空気中の雑菌を除菌するように配設した空気ポンプを用いて5L/min.の流量で循環通気し、10分間/dの時間で新鮮空気を導入した。明条件の明:暗の時間は、16:8時間として培養を行なった。
【0067】
対照区となる比較実験はLEDを点灯しない暗の状態でChlamidomonas(クラミドモナス)を培養した。培養温度は25〜27℃に保持し、15日間の連続培養を行った。このときのランプ表面の光量子量は585μE/S/mで、滅菌前に測定した液体表面の光量子量は62.7μE/S/mで、Chlamidomonas(クラミドモナス)が1.0g/L濃度のとき、密閉型微細藻類連続培養装置底面の光量子量は約10μE/S/mであった。この濃度付近で芝生、ジャガイモ、サツマイモおよびカンナを炭素源としたときの増殖速度は、それぞれ暗の状態で0.368g/L/d、0.711g/L/d、0.776g/L/d、0.556g/L/dであった、また、明の状態で、それぞれ、0.578g/L/d、1.546g/L/d、1.469g/L/d、1.233g/L/dの増殖速度であった。明条件による増殖速度の増加割合は、それぞれ、57%、117%、89%、124%となり、明条件の液体培地の増殖速度および濃度の増加が顕著に示された。
【0068】
密閉型微細藻類連続培養装置外周面に光発光体または光導波路を壁面に取り付けた場合の光強度の確保について、円形および平板の場合についても検討した。図4に示すように、円形の密閉型微細藻類連続培養装置で90度ごとに光発光体または光導波路を壁面に設置した場合でも、前述のとおり明条件の培養で本発明のLEDの効果が相当高いことから、図5で示すように、平板型LED発光体の光放射角度18がαで、光放射補角19がβ(=(180−α)/2)の場合、円形バイオリアクター(図5a)の暗部20は明部22に対し大きな体積を占めていても増殖速度の維持に問題がないことが確かめられた。また、平板底の密閉型微細藻類連続培養装置の場合、図5bに示すように、夫々幅L〜Lを有する平板型LED発光体7の取り付け距離D〜Dの距離21によっては暗部20の体積が大きくなることが予想されるが、培養液体積に対する平板型LED発光体7の入力電源を60W以上に保持し、かつ培養液の水深を平板型LED発光体7の光の減衰限度である600mmを上限とすれば、微細藻類の増殖に対する光量子量の不足はないことが分かった。
【0069】
(実施例5)
図6に示す1800L液容量のSUS316製平底密閉型微細藻類連続培養装置23を用いた。この平底密閉型微細藻類連続培養装置23は太陽光を取り入れるための耐熱透明板26を備えており、この底面と上面にLED集合体15を夫々適宜間隔D〜D等で配置して、120W(照射角度35度)を夫々60Wずつとし、密閉型微細藻類連続培養装置23内部を90〜100℃で50分間蒸気滅菌した。炭素源としては、乾物濃度で5%に調製したキクイモを5割、竹葉、ムギワラおよびバガスの加水分解物をそれぞれ3割、1割、1割として混合し、水に不溶な固形物を沈殿させ、その上澄みを井戸水で10倍に希釈して投入した。乾物濃度では0.43%の可溶性乾物濃度となった。これに対し、100℃の常圧蒸気を送って、液温を90℃で60分間維持する加熱滅菌を行なった。この際、加熱滅菌前に装着したLED集合体15は外した。滅菌後、液温が30℃になった段階でLED集合体15を再装着した
【0070】
このとき用いたLED集合体15は、図6(b)に示すように、平底密閉型微細藻類連続培養装置壁面24に、耐熱透明板26とともに該耐熱透明板26の押さえ板25と反射板兼保護板16との間に透明板枠支え板取り付けボルトナット27により保持することにより形成した。反射板兼保護板16の透明板枠支え板取り付けボルトナット27をはずすことで、LED集合体15を下に下げてLED集合体15を下方に懸垂させることが可能となる。
【0071】
平底密閉型微細藻類連続培養装置23の液温が27〜28℃に低下した段階で、オートクレーブ内で加熱滅菌を行って温度が27〜28℃に低下した段階で無菌培養した種藻の5g/L濃度のEuglena gracilisを50L植種した。次いで、外気空気を0.2μmフィルターで除菌可能にして、空気ポンプで100L/min.の流量にて90分間の循環通気と30分間の新鮮空気を導入する制御法で培養液を通気攪拌した。この際、ORPは+200mV〜−25mVの範囲で変化した。このときの気相の酸素濃度を10〜15%に制御したところ、二酸化炭素濃度は2〜4%で推移した。
【0072】
明条件の明:暗の時間割合を12:12時間として培養した対照区となる比較実験は、LEDを点灯しない暗の状態で、同じ条件で無菌培養した種藻の5g/L濃度Euglena gracilisを50L植種し、明条件での明:暗の時間を16:8時間として培養した。培養温度はそれぞれ25〜27℃とし、不溶性固形物を除いた上記配合の培養原液を乾物濃度で4.5%の可溶性乾物量による10日間の連続培養を行った。このときのランプ表面の光量子量は600μE/S/m、滅菌前に測定した液体底面の光量子量は122.7μE/S/m、液体の表面は72.7μE/S/mであった。Euglena gracilisの濃度が濃度3g/L付近で増殖速度は2.5±0.2g/L/dであり、この増殖速度が培養開始後5日目より可能になった。暗条件の増殖速度は1.5±0.3g/L/dで、定常状態になるまでに7日間を要した。明条件の液体培地の増殖速度の増加は約66%であった。また、Euglena gracilisの濃度は2.85〜3.75g/Lであった。
【0073】
(実施例6)
図7に示す従属栄養−独立栄養共存型の密閉型微細藻類連続培養装置10の加熱滅菌システムと種藻を投入するシステムに従い、電源1に接続された光発光体(LED光発光体または該LED光発光体を光源とした光導波路)39を密閉型微細藻類連続培養装置10の液体内部に設置可能にした。図示する光発光体39は、図2に示すものと同様に、電源1に接続された反射板付きLEDチップ数個を平板の上に載せた平板型LED発光体7を一定間隔で並べ、LED装着用放熱板8に設置して、これを耐熱透明管9内に挿入したものである。これを、1000L液容量のSUS316L製の直径1.5mの密閉型微細藻類連続培養装置10に、入力電力72W(照射角度35度)に装着した。加熱滅菌時には、冷風を耐熱透明管9内のLED照射部に通気してその劣化を防止した。常圧蒸気加熱滅菌は、密閉型微細藻類連続培養装置10の内部を90〜100℃で50分間、図7に示す加熱蒸気入口28および加熱蒸気出口29を使って行なった。なお、密閉型微細藻類連続培養装置10には、原水ろ過装置36を経由して原水37を供給した。
【0074】
炭素源の原料としては、竹葉の希硫酸による加水分解物および乾燥キクイモを重量比で50%:50%に配合した混合物を用いた。この混合物を加熱水蒸気導入口28および加熱水蒸気排出口29を備えた原料混合・蒸気装置35にて121℃で60分間加熱滅菌し、無菌的に密閉型微細藻類連続培養装置10内の固形物濃度が6g/Lの濃度になるように投入した。次いで、再度、この炭素源の入った密閉型微細藻類連続培養装置10内部液を90〜100℃、50分間、高圧蒸気32を取り入れ蒸気34を排出するタイプの外部熱交換器31により加熱滅菌を行った。その後、培養液の温度が27〜28℃に低下した段階で、5g/L濃度のEuglena gracilis 50Lを無菌的に種藻投入口38より植種した。0.2μmエアーフィルター42で外気空気を除菌可能にしたエアーコンプレッサー28から空気を間歇的に供給し、エアーポンプ43により50L/1000l/min.の流量で循環通気とガス循環を併用した。また、ORP40を+300mV前後に維持するように、通気とガス循環を電磁弁44と45とをORP計40の指示に従い制御した。その結果、気相の酸素濃度は15〜20%の間を推移した。このとき、二酸化炭素濃度は4〜6%の範囲で推移した。
【0075】
培養は、明条件の明:暗の時間割合を12:12時間として行なった。対無機栄養塩の投入は液体用フィルター30を介して無菌的に投入した。このとき、明条件での明:暗の時間比を20:4時間として培養した。対照区となる比較実験はLEDを点灯しない暗の状態で、明の条件と同じ5g/L濃度のEuglena gracilis 50Lを無菌的に植種して、同じ通気培養条件で培養した。明暗培養条件ともに培養温度は25〜27℃で、12日間の連続培養を行った。このときのランプ表面の光量子量は550μE/S/mで、滅菌前に測定した液体表面の光量子量はガラス透明管を通しているために減衰して340.3μE/S/mであった。Euglena gracilisが2.75g/L濃度の定常状態のとき、密閉型微細藻類連続培養装置10の中心部の光量子量は約20μE/S/mであった。この濃度付近での増殖速度は、それぞれ暗の状態で1.678±0.032g/L/dであった、明の状態では2.669±0.034g/L/dの増殖速度であった。本発明によるLEDの光照射は1日20時間を与えたことによって、微細藻類平均濃度が2.75g/Lの比較的高い濃度で、光の減衰が大きいにもかかわらず、明条件の時のEuglena gracilisの増殖速度の増加割合は59%となった。また、暗の条件でも比較的高い増殖速度が得られたことは密閉型微細藻類連続培養装置の滅菌効果によるものであり、微細藻類の増殖速度の増加は微細藻類の細菌感染の防止による効果であると考えられた。
【0076】
(実施例7)
図8に示す流れ図に従い、食品リサイクル法でその利活用が重視されている食品工場などで発生する食品加工残渣やレストランなどで発生する厨芥をメタン発酵装置47によってバイオガス化し、メタン発酵装置47で発生する二酸化炭素を微細藻類に吸収させるために、メタン発酵後の消化液48を微細藻類の無機栄養塩補給に使った。図6(a)に示すタイプの、水の浄化を兼ねた太陽光―人工光併用型で独立栄養型の密閉型細藻類連続培養装置49にEuglena gracilisの種藻50Lを投入して培養を試みた。本実施例では、図4に示した従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置51を使った実施例3や実施例6に加え、メタン発酵で生じた消化液中の窒素、カリウム,リンなど肥料成分を栽培圃場52で、キクイモやカンナなどの根茎植物に肥料として還元し、この根茎植物を従属栄養型密閉型微細藻類連続培養装置51の炭素源として使う仕組みである。
【0077】
微細藻類培養装置として、この従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置51の液容量を1mとした。本実施例において本発明に係る板型LED光発光体7は、その入力電力48Wとし、また、太陽光−人工光併用型で独立栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置43としては30mのものを用いた。夜間の照明時間を12時間、合計入力電力1.5KWの平板型LED光発光体7で照射した。30日間の運転で、乾燥微細藻類は530kgが得られた。原料となった厨芥の量は3,500kg(水分90%),メタン消化液で栽培したキクイモは1025kg(水分80%)で、約675kgのキクイモを1m液容量の従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置51で、炭素源として使用した。この結果、水分80%の350kgのキクイモが余剰になったので乾燥して約75kgを保存した。また、水の浄化をかねた太陽光―人工光併用型で独立栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置49による微細藻類Scenedesmus dimorphusの収穫の乾物量は約30kgで、BOD除去率は約65%であった。このScenedesmus dimorphusを加熱滅菌装置50で蒸煮し、そのまま1m液容量の従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置51で培養のEuglena gracilisの炭素源および窒素源として活用した。厨芥やキクイモなどの有機物由来の炭水化物を炭素源にしたときの藻類の乾物量は510kgであった。したがって、この値と乾燥微細藻類の530kgとの差の20kgの約2倍の40kgがメタン発酵由来の二酸化炭素として独立栄養型で密閉型の微細藻類連続培養装置49で消費されたものと推定された。また、従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置51を経て、太陽光−人工光併用型で独立栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置49で可溶性有機物から無機の炭素源である二酸化炭素に代謝の生理を人為的に変更させ、独立栄養的に増殖しているかが、二酸化炭素削減の指標になる。この実施例7の結果より、メタン発酵装置47において下水処理場の活性汚泥処理後の沈殿槽の上澄みを図8中の消化液48に見立て、さらに栽培圃場52において下水処理場の活性汚泥を肥料として活用すれば、下水処理場の処理能力の向上、経費の節減および二酸化炭素排出量削減が期待でき、スケールメリットも反映する可能性が高くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の微細藻類培養装置および微細藻類連続培養方法によって、多様なバイオマスを、しかも非食料バイオマスを原料に使って高速に微細藻類を増殖させ、二酸化炭素の確保の不可能な場所でも培養が可能になり、その収量は農地から農産物収量と比較すると数拾倍〜数百倍の脂質や蛋白の生産が可能になる。さらに、後段に太陽光単独または人工光併用独立栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置との組み合わせを行えば、二酸化炭素を高速度に微細藻類が取り込み、酸素を吐き出すので、地球温暖化防止に極めて効果のある二酸化炭素吸収装置として、森林のような役割を果たし、地球環境の保全に有効である。また、本発明によって生産される微細藻類の乾物はそのまま家畜の飼料や食品原料として有用である。その乾物に含有する油脂は自動車や航空機の代替バイオ燃料として使うことも可能である。また、本発明は微細藻類の培養において、従属栄養と独立栄養とを同じ微細藻類連続培養装置の中で共存させる方法をとっており、しかも加熱滅菌を行っているので食品や飼料生産においても安全な藻類の生産を可能にしている。よって、地球上のいずれの場所でも、または耕作しない原野や休耕地、都会のビルの屋上や空き倉庫内でも、微細藻類の培養が可能である。したがって、日本や東南アジアの人口密度の高い国での土地面積に限りのある場所でも微細藻類の培養が可能である。また、砂漠、海洋およびその沿岸においても汽水または海水性微細藻類生産の可能性が高い。このように、本発明は、エネルギーや食糧不足などの危機に対応可能な人類の存続に貢献するものである。
【符号の説明】
【0079】
1 電源
2 光導波路
3 LEDチップ
4 光反射材料
5 底面光反射材料
6 反射光線照射方向
7 平板型LED発光体
8 LED装着用放熱板
9 耐熱透明管
10 密閉型微細藻類連続培養装置
11 耐熱ガラス中空管
12 水/冷風の入口
13 水/冷風の出口
14 結露水ドレイン管
15 LED集合体
16 反射板兼保護板
17 耐熱性透明板
18 光放射角度 α
19 光放射補角 β=(180−α)/2
20 暗部
21 平板型光発光体取り付け距離D
22 明部(光照射部の重なる領域)
23 平底密閉型微細藻類連続培養装置
24 平底密閉型微細藻類連続培養装置壁面
25 透明板の押さえ板
26 耐熱透明板
27 透明板押さえ板取り付けボルトナット
28 加熱水蒸気導入口
29 加熱水蒸気排出口
30 液体用フィルター(0.2μ以下)
31 外部熱交換器
32 高圧蒸気
33 培養液用原水及び炭素源等入口
34 蒸気出口
35 原料混合・蒸煮装置
36 原水ろ過装置
37 原水
38 種藻投入口
39 LED光発光体又は光ダイオードを光源とする光導波路による照射部
40 酸化還元電位(ORP)
41 エアーコンプレッサー
42 エアーフィルター
43 エアーポンプ
44 電磁弁
45 電磁弁
46 マイクロバブル発生装置
47 メタン発酵装置
48 メタン消化液
49 太陽光−人工光併用型の密閉型微細藻類連続培養装置
50 加熱滅菌装置
51 従属栄養型の密閉型微細藻類連続培養装置
52 根茎栽培圃場
53 根茎の磨砕装置
54 厨芥など食品残渣を炭素源とする原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光発光体または該光発光体を光源とした光導波路を有する光照射装置を内装または外装した密閉型の微細藻類連続培養装置であって、
前記光照射装置が、培養液中の微細藻類の光合成に必要な光質と光量子を中心波長430〜480nm、560〜620nmおよび675〜685nmで、かつ短波長基準の光量子量の比率がそれぞれ0.5〜5および4〜10からなる光を、側壁面、培養液の上面および下面の少なくとも一方より培養液に向かって照射する構造を有し、
前記微細藻類の炭素源として水に可溶な炭水化物を含む前記培養液に加熱滅菌処理を施す加熱装置を内部または外部に保持し、かつ、
前記培養液中に内容物を投入するための無菌供給装置またはろ過滅菌装置を備えることを特徴とする微細藻類連続培養装置。
【請求項2】
前記光照射装置に、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路の背面に耐熱性断熱材が反転自在に装着され、前記加熱滅菌処理を施すときに、光発光体または該光発光体を光源とした光導波路が加熱面に対して反対方向に反転可能である請求項1記載の微細藻類連続培養装置。
【請求項3】
前記光照射装置における光発光体または該光発光体を光源とした光導波路が耐熱二重透明管に収納され、該耐熱二重透明管内に冷水または冷風を送ることにより光源を冷却可能である請求項1記載の微細藻類連続培養装置。
【請求項4】
前記光導波路が耐熱性材料からなる請求項1記載の微細藻類連続培養装置。
【請求項5】
前記耐熱性材料がガラスである請求項4記載の微細藻類連続培養装置。
【請求項6】
培養液中に投入する改質ガス濃度を所定の範囲に維持するためのマイクロバブル装置を備える請求項1〜5のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養装置に、種となる微細藻類を無菌供給装置またはろ過滅菌装置を介して植種し、光照射装置による光照射により微細藻類を連続培養する微細藻類連続培養方法において、
培養液中に微細藻類の炭素源として水に可溶な炭水化物を投入し、次いで加熱滅菌処理後、冷却を施した後、種となる微細藻類を植種することを特徴とする微細藻類連続培養方法。
【請求項8】
前記光照射装置による光照射を培養液1立方メートル当り30W〜100Wの光を照射することにより行なう請求項7記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項9】
前記加熱処理を75〜121℃で15〜60分間行なう請求項7または8記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項10】
培養液の窒素源として、無機態窒素および/または有機態窒素を前記炭水化物の炭素に対して1/10〜1/20の範囲の質量比で無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入する請求項7〜9のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項11】
カリウムおよびリンをそれぞれ前記炭水化物の炭素に対して1/50〜1/200の範囲の質量比で無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入する請求項7〜10のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項12】
微量金属要素としてMg、Mn、Ca、Feを無菌供給装置またはろ過滅菌装置を経由して投入する請求項7〜11のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項13】
光照射下の従属栄養条件下で培養するときの培養液の液相部の酸化還元電位を+300mV〜−50mVの範囲に保持するために、培養液に送る酸素濃度を15〜30%、外気空気中の窒素ガスの濃度を70〜85%に調整し、かつ送り込むガスを培養液中においてマイクロバブル装置にて10〜30μmに維持する請求項7〜12のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項14】
前記炭素源としての前記水に可溶な炭水化物を、グルコース、フルクトース、キシロース又はキシリトールなど、6単糖および5単糖単独の2種以上混合物、蔗糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、イヌリンなどの2糖または多糖類単独または2種以上の混合物、木質セルロース,竹の茎,ササの葉、バガスやこれらの植物に含まれる多糖類の酸またはアルカリまたは酵素による加水分解物単独または2種以上の混合を用いる請求項7〜13のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項15】
前記炭素源に必須アミノ酸を含むアミノ酸群および/またはペプチドを10〜500mg/L添加する請求項14記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項16】
前記炭素源としての前記水に可溶な炭水化物を、クエン酸および/またはグリセリンとし、該炭素源に必須アミノ酸を含むアミノ酸群および/またはペプチドを10〜500mg/L添加する請求項7〜13のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項17】
前記炭素源としての前記水に可溶な炭水化物を、ムギワラ、イネワラ、芝生、雑草、野菜屑や果実の皮などのソフトセルロース、およびジャガイモ、サツマイモ、カンナ根茎植物の根や茎の磨砕物などのデンプンを酸またはアルカリまたは酵素による加水分解した六単糖、五単糖の混合物、イヌリンで構成するキクイモの根茎磨砕物単独または2種以上の混合とする請求項7〜13のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項18】
前記水に可溶な炭水化物に代わる炭素源および栄養塩や微量金属要素に変わる栄養源として、微細藻類の独立栄養培養液の廃液またはメタン発酵液のメタン消化液を培養液として細胞壁を持つChlorella(クロレラ)属、Scenedesmus(セネデスムス)属またはSpirurina(スピルリナ)属の緑藻類を培養し、この培養液から重力沈降法、遠心分離またはUF膜を用いて分離した固形物を直接または熱処理した後、該固形物を直接または粉砕して微細藻類の栄養源とする請求項7〜13のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項19】
Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属、Scenedesmus(セネデスムス)属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属を単独または混合培養する請求項7〜18のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項20】
培養液の液相部の酸化還元電位を+300mV〜−50mVの範囲に保持するために、外気空気の酸素を20〜30%に調整することを基準に,培養装置内の気相と液相を循環するガス中の二酸化炭素ガス濃度を1〜20%の範囲で保持し、その他ガスとして窒素ガスを監視する装置を配設して、従属栄養下で発生する二酸化炭素を光照射下で光合成させ、不足するときは外部より二酸化炭素を供給する機構により、気相部のガス濃度を制御する請求項7〜19のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項21】
培養液の液相部の水素イオン濃度がpH5.6〜7.8の範囲となるように、酸性の時には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを、アルカリ性の時にはクエン酸またはクエン酸カルシウムを、それぞれ加熱滅菌法またはろ過滅菌法によって培養装置に投入してpHの調整を行う請求項7〜21のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項22】
光源から照射される培養液中の最小光量子量が3〜5μE/s/mの範囲で確保可能な光環境を保持する請求項7〜21のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。
【請求項23】
従属栄養下で培養した微細藻類を培養液そのもの又は物理的方法で濃縮した培養液を人工光−太陽光併用型の密閉型微細藻類連続培養装置に移植し、二酸化炭素供給と光照射による独立栄養下で1〜3日間Euglena(ユーグレナ)属、Chlamidomonas(クラミドモナス)属またはScenedesmus(セネデスムス)属またはAnkistrodesmus(アンキストロデスムス)属を培養する、従属栄養と独立栄養とを併用する請求項7〜22のうちいずれか一項記載の微細藻類連続培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−183002(P2012−183002A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46963(P2011−46963)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505112152)株式会社筑波バイオテック研究所 (6)
【Fターム(参考)】