説明

微細電極体並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器

【目的】イオン発生効率、狭窄スペースでの取扱性が良好で、しかも低コスト化及び省スペース化が可能な微細電極体並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器を提供する。
【構成】微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成される放電電極と、該放電電極に対向する線状の導電材とを用いて構成される誘導電極と、を誘電体に配設して成る微細電極体であって、丸棒、角棒、小幅板の如き棒状体に、前記微細電極体の1つ以上が配設されていることを特徴とする微細電極体、並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細電極体並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器に関し、詳しくは、効率的なイオン生成が可能であり、狭窄スペースでの取扱性の良好な微細電極体並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な従来のイオン発生器・除電器は、例えば、従来型除電器の場合では、先鋭な針形状のイオン発生電極に高電圧電源より高電圧を印加して、コロナ放電を生じさせ、空気をイオン化する。針形状のイオン発生電極は、対極する接地電極との間で、コロナ放電を効率的に発生する必要があるため、ある一定の絶縁距離を確保することが必要となり、イオン発生を構成するためのスペースに制約があり、効率的なイオン発生器及び除電器の小型化に限界が生じるという課題を有していた。
【0003】
また、長期間の使用により、針形状のイオン発生電極は、チリなどの堆積や物理スパッタリングによる摩耗などの影響により、コロナ放電が生じ難くなり、イオン発生効率が低下する傾向にあった。また、針形状のイオン発生電極と対向し、放電を安定させるために設けられた接地電極についても、高電圧による静電吸着及びイオン発生電極の物理スパッタリングなどにより、チリなどの堆積が生じ表面の汚れが進行し、イオン発生効率を低下させる要因ともなっていた。
【0004】
したがって使用者は定期的に、針形状のイオン発生電極先鋭部の清掃または交換、さらに接地電極及びその周辺の清掃を行ない、イオン発生効率を改善するためのメンテナンス作業を強いられることになる。かかるメンテナンス作業は、先鋭部を有する構造体内部の清掃であり、さらに高電圧が印加されている部分でもあるため、作業は危険かつ煩わしいものとなっている。
【0005】
そこで、イオン発生電極を針形状ではなく板状の誘電体に放電電極と誘導電極を配設した板状のイオン発生素子が開発された(特許文献1〜3参照)。
【0006】
特許文献1〜3に示す技術では、誘電体を介し放電電極と誘導電極との間で高電圧電源を印加して局所的に放電させイオンを発生させるため、物理的な先鋭構造を持たないフラットな形状となっている。また局所部分での放電を利用している為、針形状のイオン発生電極に比べ、低電圧、低消費電力で同等のイオン量を発生させることが可能になり、さらに、放電電極にコーティング層なる絶縁保護層を形成することで、電極の劣化や沿面への電流リーク、更にはメンテナンス性向上が可能になるため、針形状のイオン発生電極が抱えていた問題が低減されている。
【0007】
しかし、上記のような誘電体を介して形成された電極構造によるイオン発生は、比較的高周波な電力を供給しなければ電極間のインピーダンスが大きくなるため、効率が極端に低下しイオンを発生することができなくなる。
【0008】
そして、例えば、AC型電源を印加することで1つのイオン発生素子から正イオンと負イオンを周期的に交互に発生させる構成では、高周波高電圧電源を印加した場合、正イオン及び負イオンの生成時間間隔が非常に短いため、生成されたイオンが次の周期で生成される逆極性のイオンと中和し、電気的に安定となり、非常にイオンが飛び出しにくく、結果的に全体としての発生効率が減少してしまうという欠点を有している。
【0009】
また、イオン濃度の調整が容易な高周波成分を含む直流成分を有する高電圧電源(パルス波など)を印加した場合では、正極性の直流成分を有する高電圧電源を印加することで生成された正イオンがクーロン力による反発作用で、上述の高周波高電圧電源を印加した場合に比べて、広域にイオンが飛び出し中和を防止することが可能となる。しかし、どちらか一極性のみのイオン発生となるため、両極性のイオンを必要とするイオン発生器や除電器の場合、少なくとももう一組の計2組の装置を必要とするので、コスト及び省スペースの点でのメリットが見込めない。
【0010】
また、両極性のイオンを必要とする場合は、例えば、少なくとも2つのイオン発生素子を使用して、正イオン及び負イオンを発生させるが、それぞれのイオン発生素子の取り付け位置関係によってイオン発生能力にバラツキが生じ易い。即ち、夫々のイオン発生素子の距離が比較的近い場合は、生成されたイオン同士の中和により、全体としてのイオン発生効率が低下し、またイオン発生素子の距離が遠い場合は、空間的にイオンのアンバランスした箇所が生じる。そのため、用途・サイズの違うアプリケーションを製品化する際に、イオン発生素子の取り付け位置による能力差を考慮して最適条件を導き出さなくてはならないので、製品展開を考えた上でのコストへの影響は大きい。
【0011】
また、省スペース化させるために2つのイオン発生素子をワンパッケージ化し、各極性の直流高電圧電源を印加することも可能であるが、正イオン発生の放電電極と負イオン発生の放電電極とで、空間的に近接しているため正イオンと負イオンの混ざり合いによる中和が増大し、全体としての発生効率が減少してしまう。また、イオン発生素子の構造をとっても、2つの素子を製造した場合と等価なため、コストメリットも見込めない。
【0012】
本発明者は、上記した従来の課題を解決するために、少なくとも2つの面を有する誘電体と、該誘電体の少なくとも2つの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有してなるイオン発生素子、イオン発生器及び除電器を先に提案した(特願2005−043456)。
【0013】
この先提案技術は、1つのイオン発生素子で正イオンと負イオンの両イオンを発生させることができ、しかも発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、更に低コスト及び省スペース化が可能なものである。さらにイオン発生素子を配設したイオン発生器では、イオン発生素子を気流環境下に配設することにより、発生したイオンを容易に送出することが可能である。
【0014】
更に本発明者は、イオン発生素子をプラグ+ソケット状として脱着可能な構成とすることで交換時や清掃時等のメンテナンス性を向上させたイオン発生素子、イオン発生器及び除電器を次に提案した(特願2005−043488)。
【0015】
【特許文献1】特開2003−323964
【特許文献2】特開2003−249327
【特許文献3】特開2004−105517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、これらの先提案技術について更に研究を続けた結果、イオン生成がより効率的となり、使用時の取扱性、特に狭窄スペースでの使用性をより向上させる必要が生じた。
【0017】
そこで本発明の課題は、イオン発生効率、狭窄スペースでの取扱性が良好で、しかも低コスト化及び省スペース化が可能な微細電極体並びにこれを用いたイオン発生器及び除電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、下記構成を有する。
【0019】
1.微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成される放電電極と、該放電電極に対向する線状の導電材とを用いて構成される誘導電極と、を誘電体に配設して成る微細電極体であって、丸棒、角棒、小幅板の如き棒状体に、前記微細電極体の1つ以上が配設されていることを特徴とする微細電極体。
【0020】
2.前記微細電極体が、棒状体に2つ以上連設されていることを特徴とする上記1に記載の微細電極体。
【0021】
3.前記微細電極体が、前記棒状体の長手方向に沿って配設されていることを特徴とする上記1又は2に記載の微細電極体。
【0022】
4.前記棒状体が、一端に該棒状体と略同様の構成を有する別なる棒状体の他端を接続可能な接続部を有し、他端に該棒状体と略同様の構成を有する別なる棒状体の一端に接続可能な被接続部を有し、2本以上の棒状体を長手方向に接続可能な構成であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の微細電極体。
【0023】
5.前記接続部及び被接続部が通電接点部を有することを特徴とする上記4に記載の微細電極体。
【0024】
6.放電電極及び/又は誘導電極が印刷法又はインクジェット法により形成されていることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の微細電極体。
【0025】
7.上記1〜6のいずれかに記載の微細電極体を配設し、該微細電極体の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体からイオンを発生させる構成であることを特徴とするイオン発生器。
【0026】
8.前記微細電極体が、着脱可能に取り付けられる構成であることを特徴とする上記7に記載のイオン発生器。
【0027】
9.発生したイオンを気流によって送出する気流送出手段が設けられており、該気流送出手段の気流環境下に、前記微細電極体が配設される構成であることを特徴とする上記7又は8に記載のイオン発生器。
【0028】
10.前記微細電極体の棒状体の表面に気流送出手段のエア噴出孔が設けられていることを特徴とする上記9に記載のイオン発生器。
【0029】
11.上記7〜10のいずれかに記載のイオン発生器によって除電する構成であることを特徴とする除電器。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に示す発明によれば、イオン発生効率、狭窄スペースでの取扱性が良好で、しかも低コスト化及び省スペース化が可能な微細電極体が得られる。
【0031】
特に、線状材の放電電極と誘導電極とを有してなる微細電極体を、丸棒、角棒、小幅板の如き棒状体に形成する構成により、物理的な先鋭構造を持たないフラットな形状となると共に棒形状となるので、被イオン化物を接触させた場合でも引掛かったり傷付けることがなく、狭窄スペースにも差し入れることができるので、微細電極体の配設位置・取付手段等の設計自由度が高い。
【0032】
また、微細電極が微細な突起を複数有する線状材の放電電極と線状材の誘導電極とを用いる構成により、イオンの発生が効率的であり、低電力化・低コスト化に寄与し、さらに、丸棒、角棒、小幅板の如き棒状体に微細電極体を配設する構成により、省スペース化に寄与し、特に狭窄スペースでの使用時の取扱性が良好である。
【0033】
請求項2に示す発明によれば、微細電極体の2つ以上が連設されているので、例えば、両極性のイオンを必要とする場合であって、少なくとも2つの微細電極体を要する場合にも、これに対応が可能となる。
【0034】
請求項3に示す発明によれば、微細電極体を棒状体の長手方向に沿って配設する構成により、棒状体の直径を小径化することが可能となるので、狭窄スペースへ差し入れての使用がより容易となる。
【0035】
請求項4に示す発明によれば、棒状体を長手方向に2本以上接続することで所望の長さの微細電極体を得ることができる。
【0036】
請求項5に示す発明によれば、前記接続部及び被接続部に通電接点部を有する構成により、接続した2本以上の棒状体は電気的にも接続されることになる。
【0037】
請求項6に示す発明によれば、放電電極及び/又は誘導電極が印刷法又はインクジェット法により形成されている構成により、従来の針状電極の設置による形成に比して著しく容易に形成が可能となるだけでなく、障害となる表面からの突出を無くし、物理的な先鋭構造を持たないフラットな形状とすることが可能となる。
【0038】
請求項7に示す発明によれば、請求項1〜6のいずれかに記載の微細電極体を配設してイオンを発生させる構成により、効率的に発生したイオンを更に効率よく送出することが可能となる。
【0039】
請求項8に示す発明によれば、微細電極体が、着脱可能に取り付けられる構成により、交換・清掃等のメンテナンス時の取外し・取付けが極めて容易となる。
【0040】
請求項9に示す発明によれば、発生したイオンを気流によって送出する気流送出手段が設けられており、該気流送出手段の気流環境下に微細電極体を配設する構成により、効率的に発生したイオンを更に効率よく送出することが可能となる。
【0041】
請求項10に示す発明によれば、棒状体の表面に気流送出手段のエア噴出孔が設けられている構成により、棒状態を差し入れた被イオン化物の隅々までイオンを効率よく送出することが可能となる。
【0042】
請求項11に示す発明によれば、請求項7〜10のいずれかに記載のイオン発生器によって除電する構成により、イオン発生効率、狭窄スペースでの取扱性が良好で、しかも低コスト化及び省スペース化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の微細電極体の詳細について添付図面に基づき説明する。
【0044】
図1は本発明の微細電極体及び除電器の一実施例を示す斜視図、図2は本発明の微細電極体及び除電器の他の実施例を示す斜視図、図3は本発明の微細電極体の他の実施例を示す斜視図、図4は本発明の微細電極体の他の実施例を示す斜視図、図5は本発明の微細電極体の他の実施例を示す斜視図である。
【0045】
図1〜図5に示すように、本発明に係る微細電極体1は、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成される放電電極2と、該放電電極2に対向する線状の導電材を用いて構成される誘導電極3とを誘電体に配設してなり、棒状体4に微細電極体1が1つ以上(図1では1つ、図2〜図5では2つ以上)配設されている。
【0046】
棒状体4の形状としては、図1及び図2に示すような丸棒、図3及び図4に示すような断面が略楕円状の丸棒、図5に示すような小幅板の他、角棒、断面が流線形を有する棒状体等の種々の形状が挙げられる。また、該棒状体4は、真直ぐな棒状に限らず、カーブ状、蛇行状(例えば、S字状)、クランク状、U字状、V字状、L字状、W字状等の形状、その他の形状等、適用される装置や部位に合わせた形状(例えば、クランク形状やカーブ形状等)等を採ることが好ましい。
【0047】
棒状体4の材質としては、この種の微細電極体の支持体として用いられる公知公用の材質(合成樹脂、金属等)を特別の制限なく用いることができる。また、可撓性を有する材料を用いてもよい。尚、関節部の如き屈曲部分を有する構成とすることで、可撓性を有していない材料を用いることもできる。
【0048】
棒状体4に、1つ以上配設する微細電極体1の配置例としては、図1〜図5に示すように、棒状体4の長手方向に沿って微細電極体1・1・・・を配設することが好ましいが、幅手方向と平行、或いは斜めに配設していてもよい。
【0049】
棒状体4への微細電極体1の配設位置は、図3に示す棒状体4の一方の面に限らず、図4に示すように両方の面に微細電極体1・1・・・を1つ以上配設してもよい。特に、DC電源の場合には両面、AC電源の場合は片面であることが好ましい。
【0050】
本発明の微細電極体1に用いられる放電電極2の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限するものではなく、例えば、チタン、ステンレス、タングステン、導電性セラミックスなどがある。放電電極2は放電により劣化、溶融などし難い材料が望ましい。放電電極2の材質や使用用途などに応じて、表面コーティングなどの絶縁保護層で放電電極2を覆うようにして形成し保護すれば、放電電極2の耐久寿命を延ばすことも可能なり、同時に放電電極2からの発塵の低減及びメンテナンスの簡略化も可能となる。表面コーティングの材料としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜コーティングやエポキシ系の絶縁材などがある。
【0051】
放電電極2の形状としては、微細な突起を複数有する線状のものが望ましく、微細な突起は0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。突起の形状は、イオン発生可能な形状であれば特に制限されるものでなく、例えば、先提案技術(特願2005−043456、特願2005−043488)に示したような形状でもよいし、その他の波状、円状、格子状等の形状でもよい。イオン発生効率は、放電電極2の形状依存に比べ、対極する誘導電極3と放電電極2の微細な突起物との距離及びその突起形状による関係において、最も影響することがわかっている。なお、その形状は電界集中が有効に生じ易い形状であれば、特に制限するものではない。
【0052】
本発明の微細電極体1に用いられる誘導電極3は、放電電極2を囲むように形成した構成となっている。放電電極2と、囲むように形成されている誘導電極3との距離は、0.01〜5mmの範囲が好ましい。また、その形状は、板状、円状、支柱状、円柱状など、その形状に特に制限はない。誘導電極3の材質としては、アルミナ、ガラス、マイカなどの誘電材料が挙げられる。
【0053】
本発明の微細電極体1に用いられる誘電体は、アルミナ、ガラス、マイカなどの誘電材料によって形成される。
【0054】
放電電極2、誘導電極3の形成は、エッチング、放電加工、切削加工、レーザー加工等の公知公用の手段を採ることもできるが、本発明では印刷法又はインクジェット法によって形成することが好ましい。
【0055】
印刷法としては、オフセット印刷、シルク印刷、凸版印刷 、スクリーン印刷 、平版印刷 、凹版印刷 、孔版印刷等が挙げられる。
【0056】
また、インクジェット法の場合は、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式等のオンデマンド型や静電吸引方式などの連続噴射型のインクジェット法等公知の方法が挙げられる。
【0057】
印刷法又はインクジェット法を適用する場合、放電電極2、誘導電極3は、金属微粒子と導電性ポリマーとを含有する流動性材料から形成することが好ましく、このように可撓性支持体上に形成された放電電極2、誘導電極3は、その耐久性が向上し、優れた性能の微細電極体1が得られることとなる。
【0058】
微細電極体1は、ガラス製・樹脂製・金属製の板材やシートないしフィルム等の薄板状体で構成される支持体5に形成され、図3〜図5に示すように、該支持体5を介して前記棒状体4に配設されていることが好ましいが、該支持体5が微細電極体1の誘電体を兼ねていてもよい。また、該支持体5は前記棒状体4に着脱可能に取付けられることが好ましい。支持体5の好ましい材質としては、可撓性を有する合成樹脂製等の薄板状体であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等が挙げられる。
【0059】
放電電極2及び誘導電極3は、図1及び図2に示すように棒状体4の端部に接続された電源部6によって、又は、図3及び図4に示すように棒状体4の端部や表面に設けられている電極接点部7及び通電接点部8を有する電源部6の駆動電圧を印加することでイオンを発生する。駆動電圧の電源としては、公知公用のイオン発生器及び除電器に用いられるものを特別の制限なく用いることができる。
【0060】
以上の構成を有する本発明の微細電極体1によれば、放電電極2と誘導電極3の電極間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、正イオン及び/又は負イオンが発生する。図4に示すような棒状体4の両方の面に微細電極体1・1を配設する態様では、棒状体4の両面においてイオンを発生させることができ、この場合、一方の面で正イオンを発生させ、他方の面で負イオンを発生させれば、棒状体4自体によって正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生するため、中和(相殺)が低減され、イオン発生効率がより高くなる。しかもこの場合、正イオンと負イオンを生成する位置関係が常に一定しているため、イオン発生の能力についても一定となり、微細電極体1・1のそれぞれの極性による干渉影響による能力差が及び難い。
【0061】
尚、電圧印加式のコロナ放電を利用したイオン発生システムにおいては、イオン濃度を高めると同時に、オゾン濃度が高まり問題となる場合がある。本発明の微細電極体1においてもそれは例外ではないものの、放電電極2と誘導電極3との作用において、面と面の電界集中を防止し、電極間の電流値を抑える(電極間の容量結合を小さくするなど)ことで防止できることが分かっている。
【0062】
また、微細電極体1は、図5に示すように、棒状体4が、一端に該棒状体4と略同様の構成を有する別なる棒状体4’の他端を接続可能な接続部9を有し、他端に該棒状体4と略同様の構成を有する別なる棒状体4’の一端に接続可能な被接続部10を有する構成とすることにより、2本以上の棒状体4・4’・・・・を長手方向に接続することができる。この場合、接続部9に電極接点部7を有すると共に被接続部10に通電接点部8を有する構成とすれば、棒状体4・4’・・・を接続すると電気的にも接続されることになり好ましい。
【0063】
接続部9及び被接続部10の接続手段としては、物品の接続手段として公知公用の接続手段を用いることができ、例えば、図5に示すような雄雌嵌入式の他、竿継ぎ式・凹凸ホゾ式等の種々の継ぎ手式、磁石式、ネジやボルト等の固定具を用いた接続、接着テープや面状ファスナー等を用いた接続、その他の接続等が挙げられる。
【0064】
次に、本発明に係るイオン発生器について説明する。
本発明のイオン発生器は、上記説明した微細電極体1の放電電極2と誘導電極3の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電によりイオンを発生させる構成である。本発明のイオン発生器を、例えば、コピーマシンの帯電器・除電器として用いれば、従来の針状の放電電極を用いたものに比して簡易な構成で適用することができ、イオン発生効率、メンテナンス性、安全性等の様々な点での向上を図ることができる。特に針状の放電電極を用いたものでは、被イオン化物を傷付けないように被接触状態でイオン化する必要があったが、本発明のイオン発生器によれば、針状突起を有していないために接触させても何ら問題がなく、より効率的なイオン化が可能となる。
【0065】
被イオン化物まで距離がある場合に用いるイオン発生器では、発生したイオンを気流によって送出する気流送出手段(例えば、ファンの如き送風手段や圧縮空気等)が設けられることが好ましい。気流送出手段を有するイオン発生器では、気流送出手段の気流環境下に微細電極体1を配設することが好ましい。棒状体4の両方の面に微細電極体1・1を配設する態様(図4参照)の場合、該両方の面が、等量の気流環境下となるように、気流方向に直行する両側に両方の面が振り分けられるように微細電極体1を気流方向に沿って配設することが好ましい。かかる構成によって、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生され、中和(相殺)が低減された良好な発生効率を維持した状態で、振り分けられた気流によって、正イオンと負イオンとが運ばれることになる。従って、イオン送出効率が高い。
【0066】
また、イオン発生器には、発生する正イオン及び負イオンの少なくとも一方のイオン量を変化させるイオン濃度調整手段が設けられていることが好ましい。
【0067】
次に、上記イオン発生器によって除電する本発明の除電器について図1及び図2に基き説明する。上記イオン発生器の具体的な構成については、下記する除電器の説明を参照できる。
【0068】
図1及び図2に示す除電器11は、上記の本発明の微細電極体1によりイオンを発生する本発明のイオン発生器を備え、発生したイオンによって除電を行う装置である。
【0069】
図1に示す除電器11は、微細電極体1が1つ配設されている棒状体4と、電源コンセント(図示せず)に接続された電源部6とを有して構成されている。尚、除電器11にはイオンバランスやイオン濃度を調整する調整手段が設けられていることが好ましい。
【0070】
また、図2に示す除電器11は、微細電極体1が2つ以上(本態様では3つ)連設されている棒状体4と、電源コンセント(図示せず)に接続された電源部6とを有して構成されており、微細電極体1により発生したイオンを送出する送出手段に連通するエア噴出孔12が棒状体4の表面に形成されている。尚、除電器11にはイオンバランスやイオン濃度を調整する調整手段が設けられていることが好ましい。
【0071】
除電器11のサイズ・形態・配設する微細電極体1の数・図2に示す気流送出手段の送出能力等、各種構成等は使用目的や設置場所等、用途に応じて適宜設定される。図1及び図2に示す除電器11の態様の場合、例えば、棒状体4の径を数mm〜2cm以内程度とすれば、PETボトルの口部から差し入れることが可能となるので、PETボトル内部のような狭窄スペースの除電も容易に可能となる。
【0072】
本発明の除電器11において、用いられる微細電極体1をカセット式やユニット式とすることで、容易に着脱交換可能とすることが好ましい。また、微細電極体1は、除電器11に対して着脱交換可能とする構成に限らず、棒状体4に対して着脱交換可能であってもよい。この場合、前述した微細電極体1を構成する誘電体5を着脱交換できるように構成することで可能となる。
【0073】
以上説明した本発明の除電器11において、イオンバランス(イオン濃度)を調整する手段としては、出力電圧のONとOFFを制御するような制御方式を使用することが好ましいが、出力電流制御、電源のバイアス制御、誘導電極のバイアス制御などの他の制御方式によりイオンバランスの調整を行ってもよい。また、イオンバランスの精度が要求される用途においては、イオン発生状態をセンシングするなどしてその精度を確保する方法を採ることが好ましい。
【0074】
本発明の除電器11に用いられる微細電極体1は、低電圧での駆動が可能であることから危険性が低減されているため、除電器11の前面や表面側に微細電極体1を露出させた構造を採ることも可能である。微細電極体1を露出させた構造を採ることにより、メンテナンス時の交換や清掃が容易であるだけでなく、発生するイオンを遮る構造材が減るため、イオン発生効率がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の微細電極体及び除電器の一実施例を示す斜視図
【図2】本発明の微細電極体及び除電器の他の実施例を示す斜視図
【図3】本発明の微細電極体の他の実施例を示す部分斜視図
【図4】本発明の微細電極体の他の実施例を示す斜視図
【図5】本発明の微細電極体の他の実施例を示す斜視図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成される放電電極と、該放電電極に対向する線状の導電材とを用いて構成される誘導電極と、を誘電体に配設して成る微細電極体であって、丸棒、角棒、小幅板の如き棒状体に、前記微細電極体の1つ以上が配設されていることを特徴とする微細電極体。
【請求項2】
前記微細電極体が、棒状体に2つ以上連設されていることを特徴とする請求項1に記載の微細電極体。
【請求項3】
前記微細電極体が、前記棒状体の長手方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細電極体。
【請求項4】
前記棒状体が、一端に該棒状体と略同様の構成を有する別なる棒状体の他端を接続可能な接続部を有し、他端に該棒状体と略同様の構成を有する別なる棒状体の一端に接続可能な被接続部を有し、2本以上の棒状体を長手方向に接続可能な構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微細電極体。
【請求項5】
前記接続部及び被接続部が通電接点部を有することを特徴とする請求項4に記載の微細電極体。
【請求項6】
放電電極及び/又は誘導電極が印刷法又はインクジェット法により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微細電極体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細電極体を配設し、該微細電極体の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体からイオンを発生させる構成であることを特徴とするイオン発生器。
【請求項8】
前記微細電極体が、着脱可能に取り付けられる構成であることを特徴とする請求項7に記載のイオン発生器。
【請求項9】
発生したイオンを気流によって送出する気流送出手段が設けられており、該気流送出手段の気流環境下に、前記微細電極体が配設される構成であることを特徴とする請求項7又は8に記載のイオン発生器。
【請求項10】
前記微細電極体の棒状体の表面に気流送出手段のエア噴出孔が設けられていることを特徴とする請求項9に記載のイオン発生器。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載のイオン発生器によって除電する構成であることを特徴とする除電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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