心室性不整脈を検出しかつ治療するための装置
【課題】例えば不整脈のような心臓の状態を長期間にモニタするためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】本発明は、不整脈を検出するための手段を含むパルス発生器を具備する。このパルス発生器は、除細動ショックおよび/またはペーシングパルスを供給するために、少なくとも1個の皮下電極または電極アレイも接続されている。この電気的刺激は、複数の皮下電極間、またはこのような電極の1個、またはそれ以上とパルス発生器のハウジング間に供給することができる。1実施例では、このパルス発生器は、容器から絶縁された1個またはそれ以上の電極を含む。これらの電極は心臓信号を検出するために使用することができる。
【解決手段】本発明は、不整脈を検出するための手段を含むパルス発生器を具備する。このパルス発生器は、除細動ショックおよび/またはペーシングパルスを供給するために、少なくとも1個の皮下電極または電極アレイも接続されている。この電気的刺激は、複数の皮下電極間、またはこのような電極の1個、またはそれ以上とパルス発生器のハウジング間に供給することができる。1実施例では、このパルス発生器は、容器から絶縁された1個またはそれ以上の電極を含む。これらの電極は心臓信号を検出するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心室性不整脈を治療するための方法および装置に関し、特に、不整脈の長期間に亘るモニタと、さらに皮下刺激デバイスを使用する重篤な頻脈性不整脈および徐脈性不整脈の治療方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生死にかかわる不整脈のリスクを負った患者を守るために、植込み型システムを使用することが、昔から知られている。例えば、一般に頻脈性不整脈として言及される高心拍は、共にMedtronic社から商業的に入手可能なMedtronic・Model7237GEM・II・DRまたは7229・GEM・II・SRのような植込み型デバイスを用いて治療される。これらのシステムは、電気的および機械的な心臓の活動(心筋内圧力、血圧、インピーダンス、一回拍出量または心臓の動き)および/または心電図の速度をモニタすることによって、頻脈性不整脈の存在を検出する。これらのデバイスは、一個またはそれ以上の徐細動電極が、本心内膜リード配置技術を用いる患者の心臓の心房および/または心室内にあることが必要である。このようなシステムを使用することによって、一貫した長期間のモニタ能力および生死にかかわる頻脈性不整脈に対する比較的良好な保護が提供される。
【0003】
同様に、心拍が非常に遅い徐脈性不整脈は、通常、植込み型のパルス発振器を用いて治療される。このようなデバイスは、例えば、本発明の譲渡人に譲渡された特許文献1乃至3に記載されている。頻脈性不整脈を治療するデバイスと共に、このような型の状態を治療する殆どの埋め込み型パルス発振器は、通常、一個またはそれ以上の心腔内に植え込まれたリードを必要とする。
【0004】
患者の心臓の心腔内に配置された心内膜リードの使用は比較的信頼性のある、長期間に亘る不整脈治療を実行する能力を提供するが、このような治療に関連した欠点も存在する。即ち、このようなリードの設置は、比較的時間消費型で費用のかかる処置を必要とし、この処置により患者は感染、血管穿孔およびタンポナーゼの危険がある。
【0005】
さらに、ある人々は心内膜リードの候補者ではない。例えば、人工の機械的三尖弁を有する患者は、殆どの右心室心内膜リードの場合と同じ様に、普通は、右心房からこの弁を通って右心室に延びるリードの候補者ではない。これは、このようなリードの使用が弁の適正な機械的機能を損なうからである。心内膜リード設置の候補者ではないその他の患者は、閉塞静脈血アクセスまたは先天的な心臓欠陥を有する患者を含む。
【0006】
心内膜リード設置に対して禁忌を示す患者は、心臓の外表面にリードを取り付けるための処置を頻繁に受ける必要がある。このタイプの心外膜リード設置は、より侵襲的な処置を含み、それにより、より長い回復時間を必要とし、事後の処置を非常に難しくし、かつ伝染病に感染する機会を増加させることを含む患者のリスクを増加させる。
【0007】
心内膜および心外膜リードの両者に関連する別の問題は、患者の成長である。具体的に説明すると、子供の心臓の血管内に配置されたリードは、その子供の成長に伴って往々にして再設置あるいは交換する必要がある。このようなリードの交換処置は、特に、以前に設置されたリードが体内に残された場合よりもむしろ取り出される場合の方が危険である。
【0008】
心内膜および心外膜リードの代替物として、皮下設置電極システムがある。例えば、Mirowski等による特許文献4において、徐細動システムは、患者に高電圧治療を施すために、心室心内膜電極と、心臓に直接に、皮下に、あるいは皮膚に取り付けられたプレート電極とを使用する。本発明の譲渡人に譲渡されたBardyへの特許文献5に開示されている類似のリードシステムは、冠状静脈洞/大動脈電極と、任意に徐細動器ハウジングの表面の形を取る、左胸部に位置する皮下プレート電極とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,158,078号
【特許文献2】米国特許第4,958,632号
【特許文献3】米国特許第5,318,593号
【特許文献4】米国特許Re27,652号
【特許文献5】米国特許第5,314,430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、種々のタイプの不整脈に対する長期モニタを提供し、必要な時に患者に治療を施し、さらに心内膜および心外膜両者のリード交換に関連した問題を克服するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、不整脈の長期間モニタのためのシステムおよび方法を提供する。この発明は、不整脈を検出する手段を含むパルス発振器を含む。パルス発振器は患者に電気的刺激を提供するための少なくとも1個の電極または電極アレイに接続されている。刺激は、電気的徐細動/徐細動ショックおよび/またはペーシングパルスを含み得る。電気的刺激は複数の電極間または一個またはそれ以上の電極とパルス発生器のハウジング間に提供される。一実施例では、パルス発振器は、容器から分離された一個またはそれ以上の電極を含む。これらの電極は心臓信号を検出するために使用することができる。
【0012】
本発明の一実施例によれば、患者の心臓信号をモニタするための装置が設けられている。この装置は、密封されたハウジング、このハウジング内に含まれる検出(センサ)手段、およびこの検出手段に接続された第1および第2の電極セットを含む。第1の電極セットは、患者の身体中の第1の位置において、皮下組織の近くに位置しうるハウジングの表面に隣接する、少なくとも1個の電極を含んでいる。第2の電極セットはハウジング上のコネクタに接続され、第1の位置とは異なる位置において患者の身体中に、皮下において位置しうる1個の電極アレイを構成する。
【0013】
本発明のその他の実施例によって、治療方法が提供される。この方法は、不整脈のような状態に対して患者の心臓信号をモニタし、更にその後その状態が検出されると皮下電極アレイを介して患者に治療を施す段階を含んでいる。本発明のその他の特徴は、図面およびそれに伴う記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によって使用することができる皮下電極およびパルス発生器の一例を示す図。
【図2】本発明によって使用することができるパルス発生器の例示的な実施例の機能ブロック図。
【図3A】本発明によって使用することができる電極アレイ300の上面図。
【図3B】本発明の他の実施例の電極アレイの上面図。
【図4A】デバイスハウジング上に配置された電極A、BおよびCの配置を示すパルス発生器の側面図。
【図4B】複数の電極の内の少なくとも1個が延長リードを介してパルス発生器から延びる、パルス発生器の側面図。
【図4C】複数の電極の内の少なくとも1個がリードの近接端部に配置されている、パルス発生器の側面図。
【図4D】デバイスハウジングの一端に複数の電極が配置されている、パルス発生器の側面図。
【図4E】電極アレイを含むデバイスハウジングの更に他の実施例の側面図。
【図4F】第1の代替形状を有するデバイスの側面図。
【図4G】第2の代替形状を有するデバイスの側面図。
【図5】徐脈性不整脈のモニタの間において使用される検出方法の一実施例を示すタイミング図。
【図6】患者の背中に延びる電極コイルを伴った、患者の横腹周辺に配置される電極アレイを示すブロック図。
【図7】より優れた位置において患者の背中に配置された電極アレイを示すブロック図。
【図8】より後の位置において患者の背中に伸びるコイル電極を伴った、患者の横腹周辺に配置された電極アレイを示すブロック図。
【図9】患者の背中に配置される電極アレイと、患者の胸部に配置される第2の皮下ディスク電極を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、不整脈の長期モニタのためのシステムおよび方法を提供する。本発明は更に、不整脈の期間が発生した場合に、急激な治療を提供する。本発明の一実施例において、皮下パルス発生器が提供される。このパルス発生器は、共にMedtronic社から商業的に入手可能なGemDRTM・Model7271あるいはGEM・II・VR・Model7229のような経胸腔的な植込み型除細動器(ICD)である。このパルス発生器は少なくとも1個の皮下設置電極または電極アレイに接続されている。除細動器パルスおよび/またはペーシングパルスは、電極およびデバイスの容器との間、あるいは2個の皮下設置電極間に提供される。
【0016】
図1は、本発明にかかる植込み型パルス発生器10および典型的な関連リードシステムを示す。パルス発生器10はデバイスハウジング12を含み、さらにリード14に接続されており、このリード14は以下で議論するように左胸部あるいは背中に皮下植込みすることができる。リード14は皮下プレート電極16を含み、これは種々の既知皮下プレート電極のいずれかであり得る。この型の皮下電極は、患者の胸部上、患者の横腹または背中上あるいは心臓に電気的刺激を提供するために適した身体のその他の部位上の、左心室近くに設置することができる。類似の電極が、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第4,392,407号、5,261,400号および5,292,338号に開示されており、これらは参照によって本件に組み入れられる。使用中、電極16とデバイスハウジング12間の心臓18に電気的刺激が提供される。
【0017】
図2は、本発明にしたがって使用することができるパルス発生器の説明的な実施例の機能ブロック図である。図示するように、このデバイスは、マイクロプロセッサベースの刺激デバイスである。しかしながら、他のデジタル回路の実施例およびアナログ回路の実施例も共に本発明の範囲内であると信じられる。例えば、Bocek等に与えられた米国特許第5,251,624号、Gilliに与えられた米国特許第5,209,229号、Langer等に与えられた米国特許第4,407,288号、Haefner等に与えられた米国特許第5,662,688号、Olson等に与えられた米国特許第5,855,893号、Baker等に与えられた米国特許第4,821,723号あるいはCarroll等に与えられた米国特許第4,967,747号に示すように一般的な構造を有するデバイスは本発明と共に有効に使用することができる。なお、これらの特許のすべては、参照によって本件に組み入れられる。図1は従って、本発明の範囲に関して限定的であるよりもむしろ例示的なものであると考えるべきである。
【0018】
図2に示す機器の主要な要素は、マイクロプロセッサ100、リードオンリーメモリ(ROM)102、ランダム−アクセスメモリ(RAM)104、デジタルコントローラ106、入力増幅回路110、2個の出力回路108と109、およびテレメトリ/プログラミングユニット120である。リードオンリーメモリは、ソフトウエアおよび/またはデバイスのファームウエアを、このデバイスによって使用される種々のタイミング間隔を導出するために実施される計算を定義する主要命令セットを含んで、記憶する。RAM104は一般に、可変制御パラメータを格納するように動作し、このようなパラメータは、例えばプログラムされたペーシング速度、プログラムされた除細動間隔、パルス幅、パルス振幅等であって、医者によってデバイス中にプログラムされている。ランダム−アクセスメモリ104は、頻脈性パルスと対応する高速ペーシング間隔を分離する記憶された時間間隔のような、導出された値を格納する。
【0019】
コントローラ106は、デバイスの全ての基本的制御およびタイミング機能を実行する。コントローラ106は、少なくとも1個のプログラマブルタイミングカウンタを含み、このカウンタは本発明の場面内においてタイミング間隔を測定するために使用される。ペーシング補充収縮間隔のタイムアウトにおいて、または除細動またはペーシングパルスを送出するとの決定に応答して、コントローラ106は、以下に議論するように、高電圧出力ステージ108からの適当な出力パルスをトリガする。一実施例では、コントローラは、除細動ショックに関係したエネルギと同様、ペーシングパルスの振幅を制御する。
【0020】
刺激パルスの生成に続いて、コントローラ106はマイクロプロセッサ100に向かう制御ライン132上に対応する割り込みを生成するために使用することができ、その結果マイクロプロセッサ100が全ての必要な数学的計算を実行することを可能とする。この計算には、復帰サイクル時間の評価および本発明に従った反頻脈性不整脈治療の選択に関係する全ての演算が含まれる。コントローラ106中のタイミング/カウンタ回路も同様に、この技術分野で知られている心室不能期のようなタイミング間隔を制御することができる。時間間隔は、RAM104に格納されたプログラム可能な値あるいはROMに格納された値によって決定することができる。
【0021】
コントローラ106はさらに、心室の脱分極または収縮を検出した場合、マイクロプロセッサ100に対する割り込みを生成する。検出した心臓波形のタイミングおよび形態は、マイクロプロセッサ100によって、不整脈が発生しておりそのため治療が以下に詳細に示すように施されるか否かを決定するために、使用されることがある。
【0022】
出力ステージ108は、除細動パルスを生成することが可能な高出力パルス発生器を含んでいる。本発明によれば、これらのパルスは、皮下電極または端子134に接続された電極アレイとパルス発生器の容器との間に印加され得る。あるいは、このパルスは、端子134に接続された電極と第2の皮下電極または端子136に接続された電極アレイ間に供給され得る。典型的には、高出力パルス発生器は1個またはそれ以上の高電圧コンデンサ、充電回路および使用した電極に単相または二相の電気的除細動または除細動パルスの送出を可能とするスイッチセット、を含んでいる。出力回路108はさらに、コントローラ106の制御下で心臓にペーシングパルスを供給する。振幅が50から150ボルトであり得るこれらのペーシングパルスは、1個またはそれ以上の皮下設置電極を介して供給され得る。
【0023】
心室脱分極(収縮)の検出は入力回路110によって実行され、この回路110は電極138および電極140と142の一方に接続されている。この回路は、増幅、およびノイズ検出および保護回路を含みうる。一実施例では、信号検出は過剰ノイズ期間において実施することができない。この分野で知られているように、ノイズ除去フィルタおよび類似の回路が同様に含まれ得る。入力回路110は、信号線128を介してコントローラ106に、固有の心室収縮およびペーシングが作られた心室収縮の両者の発生を示す信号を供給する。コントローラ106は、信号線132を介してマイクロプロセッサ100にこのような心室収縮の発生を示す信号を、割り込みの形で供給する。これにより、マイクロプロセッサが必要な全ての計算を実行しまたはRAM104に格納された値を更新することが可能となる。
【0024】
1個またはそれ以上の皮下あるいは皮膚上に設置された生理的センサ148を、オプションとしてデバイスに含ませることも可能である。このセンサ148は植込み刺激器と共に使用される種々の既知センサのいずれかであってもよい。この技術分野で既知のこのタイプの全てのセンサを本発明において使用することが可能である。更に、若し希望する場合は、心臓血管システム内に位置するセンサを利用することができる。センサ148は、Chirifeに与えられた米国特許第4,865,036号に開示されているインピーダンスセンサのような血行動態センサ、または、Cohenに与えられた米国特許第5,330,505号に開示されている圧力センサであり得る。なお、これらの特許は、参照によってその全体を本件に組み入れる。あるいは、センサ148は、心臓出力パラメータを測定するための、例えばErickson等に与えられた米国特許第5,176,137号に開示されている酸素飽和センサのような、要求センサであっても良く、またはAnderson等に与えられた米国特許第4,428,378号に開示されているような身体的活動センサであっても良い。尚、これらの特許もその全体を参照によって本件に組み込む。
【0025】
センサ処理回路146は、不整脈の検出と治療に関連して使用するために、センサ出力をデジタル値に変換する。これらのデジタル信号はコントローラ106とマイクロプロセッサ100によってモニタされ、それ単独であるいは検出した電気的心臓信号との組み合わせにおいて使用され、不整脈の開始またはその他の心臓状態の決定のために用いられる診断情報を提供する。これらの信号は、更に、ショック供給の最適時間を決定するために使用され得る。例えば、インピーダンスセンサは、患者が何時息を吐くかを決定するために使用し、それによってショックの供給を肺が比較的収縮した場合に発生するようにする。これは、この場合に除細動の閾値(DFTs)がより低くなるためである。センサ信号は、後の診断における使用のためにRAM104に格納することができる。
【0026】
植込み型除細動器の外部制御は、植込み型心変換器/ペースメーカと外部デバイス121間の通信を制御するテレメトリ/制御ブロック120を介して実行される。全ての通常のプログラミング/テレメトリ回路は本発明において動作可能であると信じられる。外部デバイスから心変換器/ペースメーカへ情報が提供され、制御ライン130を介してコントローラ106に送られる。同様に、心変換器/ペースメーカからの情報は制御ライン130を介してテレメトリブロック120に供給され、その後外部デバイスに転送される。
【0027】
一実施例では、外部デバイス121はプログラムデバイスであり、これは患者の状態を診察し何らかの必要な再プログラミング機能を提供するために利用される。別の実施例では、外部デバイスは、患者に情報を提供し、および/または患者からコマンドを受信するために使用される患者インターフェースであり得る。例えば、患者インターフェースは、差し迫ったショックに関して患者に警告を与えるリストバンドのような身体外部に身に付けるデバイスであっても良い。そのショックが間違って処方されたものであると患者が信じる場合、その患者はそのショックをキャンセルすることが可能である。これは、例えば、ボタンを押すことによって、あるいは音声コマンドによって実行することができる。患者インターフェースは、医学的な注意が必要であるとの警告および/または低電源に関する表示を含む、追加の情報を供給することができる。希望する場合、患者インターフェースは、無線リンクを介して緊急電話を自動的に掛けることができ、および/または全地球位置発見システム(GPS)を介して患者の位置情報を発行することができる。
【0028】
頻脈性不整脈の検出および処置のためのその他の如何なるシステムおよび方法も、本発明内に組み込むことができる。このようなシステムおよび方法は、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,849,031号、5,193,535号および5,224,475号に記載されている。一実施例において、システムは、このデバイスによって検出された不整脈のタイプに基づいて治療を実施するための“階段式治療”を含み得る。このアプローチによれば、不整脈は、検出された心臓信号の速度および形態を分析することによって差別化することができる。心室頻脈(VTs)のようにより危険でないとみなされる不整脈は、心臓に、一連の低出力で比較的高速のペーシングパルスを供給することにより、治療され得る。この治療は、しばしば、反頻脈性不整脈ペーシング治療(ATP)として言及される。反対に、心室細動(VFs)のようなより危険な不整脈は、より積極的なショック治療を早急に実施することにより処置することができる。このタイプのシステムは、本発明の譲渡人に譲渡された、Mehraに与えられた米国特許第5,193,536号、Olsonに与えられた第5,458,619号、DeGrootに与えられた第6,167,308号およびOlson等に与えられた第6,178,350号に記載されており、これらは全て参照によって本件に組み入れられる。本発明の文意内で、ATP治療は、以下に示す方法によって1個またはそれ以上の皮下電極を用いて供給される。本発明の一実施例では、ATP治療を実施するために、皮下電極アレイ内に1個の独立した電極が設けられる。
【0029】
本発明のシステムの別の特徴によれば、デバイスは高電圧ショックに関連する不快感を減少させる手段を含んでいる。高電圧ショックが患者にとって苦痛に満ちたものであることは良く知られている。この不快感はショックに関係するエネルギ量を減少させることによって最小とすることができる。これを実現する一つの機構は、Krollに与えられた米国特許第5,366,485号に記載されているように、プレショックパルス波形を供給することを含む。一実施例では、このタイプの波形は、RAM104内に格納されたパラメータを介してコントローラ106によって制御されるプログラム可能な構造で有り得る。
【0030】
更にその他の実施例では、植込み型デバイスは、図2に示すように薬剤ポンプ150を含む。このポンプは、不快感を減らすためにショックの提供に先立って患者に鎮痛剤のような生物学的に活性な薬剤を提供するために使用することができる。薬剤の提供は、患者の血管系内に皮下植込みされたカテーテル152を介して実行することができる。類似のシステムが本発明の譲渡人に譲渡された、Elsberryに与えられた米国特許第5,893,881号に記載され、これは参照によって本件に組み込まれる。代替的にまたは付加的に、このポンプは、ディサロトール(D−salotol)、プロカインアミド(Procainamide)またはキニジン(Quinidine)のような薬剤を提供して、必要とされるショックの除細動閾値を下げ、それによって痛みを減少させるようにすることも可能である。さらに複雑な実施例において、2個の独立した薬剤ポンプを使用して閾値低下薬剤のみを供給し、または鎮痛剤と共に供給することも可能である。
【0031】
脊髄刺激(SCS)を提供することによってペインコントロールを実行することもできる。例えば、Medtronic・Itrel・II植込み型神経刺激システムは、治療と頑固な痛みの緩和のために広く植込まれている。臨床報告および研究によって、SCSが、高電圧ショックに関係する不快感を減少させることが示されている。このタイプのシステムは、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,119,832号、5,255,691号または5,360,441号に記載されたリードシステムを利用することができる。Medtronic・Model3487Aまたは3888リードと同様にこれらのリードは複数の間隔を置いて離れた末端電極を含み、これらの電極は、痛みの緩和のためのSCS刺激を提供するために、脊髄断片T1−T6に隣接する硬膜上腔上に配置されるように適合されている。この実施例において、細動の検出および確認の後、知覚異常を形成するための硬膜上神経刺激を行う。その後、ショックを提供する。電気的除細動ショックが有効でないことが証明されると、電気的除細動治療が効果があることが証明されるまで、あるいは疲れ果てるまでそのプロセスが繰り返される。有効な除細動が確認されると、脊髄SCS刺激は停止される。SCS治療に加えて、例えば経皮的神経刺激(TENs)のような他のタイプの刺激が、患者の身体表面上に設置した電極片を介して提供される。皮下設置電極は、痛みを低下させるための皮下電極刺激を提供するために、T1−T6エリアあるいは身体のその他のエリアに配置することが可能である。本発明の主旨において、皮下配置電極アレイは、患者の不快感を減少させるために、ショックの提供に先立って皮下刺激を提供するための、特殊電極を含み得る。
【0032】
本発明に使用される電極システムの更に詳細な議論に移ると、この電極は図1に示すタイプのものであり得る。あるいは、この電極アレイは、Medtronic社から商業的に入手可能なModel6996SQに似ていても良い。
【0033】
図3Aは、本発明によって使用され得る電極アレイ300の上面図である。電極アレイ300は、リード302の遠心端に接続されている。アレイは、複数の指状構造体304Aから304Eを含んでいる。指状構造体は、より多くてもあるいはより少なくても良い。それぞれの指は、306Aから306Eとして示す除細動コイル電極を含んでいる。コネクタ308がパルス発生器に接続されている場合、除細動パルスを電極306Aから306Eの一個またはそれ以上を介して提供することも可能である。一実施例では、活性化される電極は、リードによって提供されるスイッチを介して選択され得る。
【0034】
電極アレイ300は、電極310のような心臓信号を検出するための一個またはそれ以上の検出(センサ)電極を有していても良い。この電極は単極モードにおいて使用することが可能で、このモードでは電極とデバイスハウジング間で信号が検出される。あるいは、検出は電極310と、コイル電極306またはその他の検出電極の一方との間で実施される。
【0035】
使用において、電極アレイの指304は患者の胸部、横腹、背中あるいは必要とされる身体のその他の点の皮膚の下に配置される。希望する場合、指の間に絶縁性のスペーサを配置して、コイル電極306A−Eが互いにショートするのを防ぐようにしても良い。希望する場合、本発明において、複数のこのような電極を使用することができる。例えば、1個の電極アレイを左心室上の胸部上に配置し、別の電極アレイを背中において左心室の背後に設置することもできる。この2個の電極アレイ間に、除細動ショックまたはペーシングパルスを供給することができる。あるいは、1個または複数の電極アレイとデバイスハウジング間に、電気的刺激を提供することもできる。上述したように、患者の心臓信号の検出は、皮下電極アレイおよびデバイス容器との間で実施することができる。
【0036】
図3Bは、アレイ300Aとして示す電極アレイの別の実施例の上面図である。この実施例において、指320Aから320Cは曲がりくねった形状を有している。より多くのあるいは少ない指を設けることができる。この形のアレイは、コイル電極322Aから322Cによって供給される電流を大きな組織エリアに向かわせ、それによってある場合には除細動閾値を低下させる。この実施例は1個またはそれ以上の検出電極322を含むことができる。電極アレイとして他のどのような形状も利用することができる。本発明で使用される電極は、電気刺激の皮下供給のために現在知られている、あるいは将来において知られる全てのタイプの電極であり得る。このような電極は生物学的に活性な薬剤によって被覆することができる。このような薬剤としては、糖質コルチコイド(例えばデキサメタゾン、ベクラメタゾン(beclamethasone))、ヘパリン、ヒルジン、トコフェロール、アンジオペプチン、アスピリン、ACE阻害物質、成長因子、オリゴヌクレオチド、更に一般的には、抗血小板薬、抗血液凝固剤、酸化防止剤、代謝拮抗剤および抗炎症剤等がある。このような電極はさらにTiNのような低分極被膜を含むことがある。あるいは、この電極は感染および炎症を防止するために使用される抗生物質あるいはその他の生物学的に活性な薬剤で被覆される場合がある。
【0037】
別の実施例において、容器自体は、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,331,966号に記載されているタイプの皮下電極アレイを含み、この特許はその全体が参照によって本件に組み込まれる。Medtronic・Model9526Reveal・Plus・Implantable・Loop・Recorderによって提供されるこのタイプのアレイは、心臓信号の検出のために、容器上に、少なくとも2個の検出電極を含んでいる。このような全てのシステムにおいて、ハウジングの表面上の電極A、B、Cは、米国特許第4,310,000号に記載するように、互いに、かつパルス発生器ハウジング10の導電性表面から適当な絶縁バンドおよび電気的フィードスルーを介して電気的に分離されている。なおこの米国特許は、参照によって本件に組み入れられる。可能な電極配置および3電極を含む3電極システムの構成事例は、図4Aから4Gに記載されている。
【0038】
図4Aは、1個のパルス発生器の側面図であって、2個の電極をコネクタブロック418上に、1個の電極をパルス発生器のケース410上に有する、直交配置された電極A、BおよびCの配置を示す。図4Aから4Gのそれぞれに示された配置における電極A、BおよびCの間隔は、約2.54cm(1インチ)のオーダーであるが、デバイスの正確なサイズに応じてこれよりも大きくても小さくても良い。デバイスが小さくかつ間隔が狭いと、より大きいな増幅が必要である。
【0039】
図4Bは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、少なくとも1個の電極が、希望する場合より大きな電極間間隔を達成するために、リード延長部材420によってパルス発生器から離れて延びている。
【0040】
図4Cは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、電極230の少なくとも1個がリード432の近接端部に位置しており、このリードは皮下電極あるいは電極アレイへの遠心端に接続されたリードであり得る。
【0041】
図4Dは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、デバイスハウジングのエッジに複数の電極が配置されている。パルス発生器ケースのエッジ上に配置された電極は、ケースの壁を通して延びるフィードスルーの絶縁ピンを構成し得ることを理解すべきである。図4Cから4Dに記載するように、電極の相対的配置は、図4Aおよび4Bに示す直交配列とは幾分異なっている。
【0042】
図4Eは、電極アレイを含むデバイスハウジングの更に他の実施例の側面図である。
【0043】
図4Fは、第1の代替的“T”形状を有するデバイスの側面図である。この形状は、少なくとも2個の電極AおよびCを互いに最大距離に配置することを可能とし、これによって2個の電極間で信号の受信を最適化することができる。
【0044】
図4Gは、第2の代替的“ブーメラン”形状を有するデバイスの側面図であり、この形状はよりすぐれた信号受信を達成することができるように電極配置を最適化するために使用することができる。
【0045】
図4Aから4Gに示すデバイスの形状、サイズおよび電極構成は、単に例示的なものであって、その他の想像しうる形状、サイズあるいは電極構成も本発明の範囲内であることが理解される。より大きな電極間距離を可能とするこれらの構成が一般に、より優れた信号受信を提供することを、当業者は理解するであろう。このように、電極をデバイスの少なくとも2個の象現に配置することが常に望ましい。
【0046】
上述したように、1実施例では、本発明は1個またはそれ以上の皮下電極または電極アレイに接続されたパルス発生器を提供する。この電極は、検出された心臓信号に基づいて患者に電気的刺激を提供する。検出信号は、選択された一対の検出電極を使用して得ることができ、図4Aから4Gに示すように、この一対の電極はパルス発生器10に接続された1個またはそれ以上のリード上またはデバイスハウジングそれ自身の上に存在する。
【0047】
上述の全ての例は3個の電極を含むハウジングを示しているが、3個以上の電極を設けることも可能である。1実施例では、4個以上の電極をデバイスに接続しあるいは隣接させることができ、さらに医者が、与えられた患者に対してどの電極を活性化するかを選択することができる。1実施例では、心臓信号は、電極の選択された一対間で信号最適化方法に基づいて検出される。このタイプの方法の1実施例が、2000年11月22日出願の米国特許出願第09/721,275号に開示され、その全体は参照によって本件に組み入れられる。モニタ目的のために、どの1個またはそれ以上の電極あるいは電極対が選択されるかにかかわらず、検出された心臓信号は不整脈の存在を検出するために分析され得る。不整脈検出システムおよび方法は、例えば、Medtronic社から商業的に入手可能なMedtronic・Model9526Reveal・Plusデバイスによって採用されているシステムおよび方法であり得る。あるいは、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,354,316号または第5,730,142号に記載されている検出方法を使用することも可能である。不整脈が検出されると、適正な治療が施される。上述したように、本発明の1実施例は少なくとも1個の皮下除細動電極アレイを含んでいる。モニタリングが、頻脈性不整脈あるいは心房細動の存在を示すと、高電圧ショックが1個またはそれ以上の皮下除細動電極と容器のショッキング表面または容器上の1個またはそれ以上の電極との間に提供される。この代わりに、複数の除細動電極間にショックを施すことが可能である。モニタシステムは、その後不整脈あるいは細動が終了したか否かを決定する。終了していない場合、もう1個のショックが施される。この治療は正常なリズムが復活するまで続けられる。1実施例では、検出した心臓波形を示す信号がRAM10中に格納され、後にテレメトリ回路120のような通信システムを介して外部デバイスに転送される。
【0048】
本発明の他の特徴によれば、検出電極は、容器のショッキング表面とは異なる容器表面上に配置することができる。このショッキング表面は筋肉組織に隣接していることが好ましく、一方、検出電極は皮下組織に隣接して配置される。
【0049】
上述したように、頻脈性不整脈治療に加えて、あるいはこれに代わって、除脈性不整脈の治療を提供することもできる。この実施例では、図1を参照して上述したように、出力回路108は除脈性不整脈のための経胸腔的ペーシング治療のために、低電圧パルスを提供する能力を有している。これらの低電圧パルスは、例えば50と150ボルトの間のオーダーである。1実施例では、これらのパルスは約100ボルトの振幅を有している。除脈性不整脈のモニタは上述した検出電極を使用して実施される。例えば、デバイスは、予め決められた期間、例えば3秒、より長い収縮不全の期間を検出するようにプログラムされている。この長さより大きい期間が検出されると、デバイスの出力回路はペーシング電圧にチャージされる。経胸腔的単相ペーシングパルスは、その後、容器のショッキング表面と皮下電極あるいは電極アレイとの間に供給され、あるいは2個のこのような電極または電極アレイの間に供給される。検出電極は心臓波形をモニタし、ペーシングパルスが心臓サイクルの予め決められた期間の間にのみ供給されることを保証する。例えば、パルスの供給は、T波の発生の間に起こるべきではない。
【0050】
ペーシングパルスの供給に続いて、出力回路は心臓信号のモニタを続ける一方で、別のパルスの供給準備のために充電を開始する。例えば、患者の心拍数のモニタリングは、例えば一分間に40回の拍動のような予め決められた速度よりも少ないか否かを決定するために、実施する事ができる。もし少ない場合、別の経胸腔的単相ペーシングパルスが供給される。出力回路の充電に引き続くこのパルス供給プロセスは、予め決められた最小の心拍速度よりも大きな本来の心拍速度が検出されるまで、繰り返される。
【0051】
本発明によって提供される経胸腔的ペーシングは、患者にとって不快である場合が多い。したがって、この機能は長期治療を提供するよう意図されるものではない。除脈性不整脈発作に対して一旦治療の提供が起こると、長期治療を提供するためにより伝統的なデバイスを植込む必要がある。1実施例では、デバイスは、ACC/AHAクラスIペーシング表示が検出された除脈性不整脈の事象に合致しているか否かを記録することができる。例えば、3秒よりも大きな収縮不全および/または一分間に40回以下の補充速度(escape rate)が検出されると、これらの表示が記録される。このデータは、医者の指示書を作成するために外部デバイスに転送される。例えばアラームを鳴らすなどのその他のアクションをとっても良い。
【0052】
図5は、除脈性モニタリングの間に使用される検出方法の1実施例を示すタイミング図である。もし収縮不全が、例えば3秒である予め決められた第1の期間500より大きいかあるいは等しい期間検出されると、出力コンデンサの例えば100ボルトである予め決められた電圧への充電が起こる。この充電は、期間502において起こる。時間504において、第1の充電パルスが提供され、時間506でコンデンサの再充電が開始される。予め決められた速度よりも長い補充速度のモニタリングは、期間508中に発生する。この期間は、1実施例では1500ミリ秒である。その後、固有の心拍が発生しない場合、第2のペーシングパルスが、時間510において供給される。時間512において再充電が起こり、補充速度に対するモニタリングが再び進行する。患者固有の正常な心拍が復帰したことによってこのような治療が停止すると、患者には迅速な緊急治療が求められる。これは、このような治療が患者にとって不快であるためである。図5に示すように治療を提供するために使用される時間は、プログラム可能である。
【0053】
上記検討から、治療の繰り返し、さらに特に、高電圧ペーシング刺激の繰り返しによって、例えばバッテリであるし電源が比較的早く消耗することが理解される。したがって、1実施例では、この電源は再充電可能である。例えば、パルス発振器は再充電可能なニッケルカドミウムバッテリである。このようなバッテリは、無線周波数リンクを利用して数時間に亘って再充電される。あるいは、Maurerの米国特許第4,408,607号に開示されているような再充電可能なコンデンサエネルギ源を使用することも可能である。更にその他の実施例では、パルス発生器は、バックアップ用再充電可能電源を組み込んだ植込み無線周波数(RF)受信ユニット(受信器)と米国特許第5,733,313号に開示されているような再充電が不能なバッテリの両者を含むことができる。なお、この特許は、参照によって本件に組み込まれる。再充電可能な電源は、患者が装着する外部RF送信ユニットによって充電される。この技術分野で知られている植込み型医療デバイスと共に使用されるその他の全てのタイプの再充電可能電源を、代替物として使用することができる。
【0054】
1実施例では、本発明で使用するために選択された電源は、閾値テストのために利用し得る付加的な電力と共に、10回までの治療ショックを施す能力がある。しかしながら、電源の容量はデバイスのサイズを決定するものであるため、妥協が必要である。さらに別の実施例では、デバイスは、75立方センチメートルより大きくない体積を有する75ジュールのデバイスである。このデバイスは、電源とこれに関連する充電回路とを含むことが好ましく、この充電回路はデバイスの使用寿命の間3分を越えない充電時間を提供する。更に他の実施例では、デバイスの使用寿命に亘って、1分の充電時間後に35ジュールのショックを施す能力を有するべきである。
【0055】
図6から9は、本発明によって使用可能な電極構成の種々の事例を示す。
【0056】
図6は患者の横腹近辺に設置された電極アレイ300を示すブロック図であって、このアレイは患者の背中に伸びる指304を有している。電極アレイと左心房上に位置するデバイス容器10との間に、電気的刺激が施される。1実施例では検出電極600は、ほぼ皮下組織に対向するようにして配置されている。
【0057】
図7は、図6に示すよりも優れた位置において患者の背中に配置された電極アレイを示すブロック図である。電気的刺激が電極アレイと腹腔中に位置するデバイス容器10との間に供給される。
【0058】
図8は、患者の横腹近辺に配置された電極アレイを示すブロック図であり、このアレイは図6または7に示すものよりも更に優れた位置において患者の背中に延びる指304を有している。電気的刺激は、電極アレイとデバイス容器との間に供給され、この容器は心臓の右側近くに設置されている。
【0059】
図9は、患者の背中に設置された指304と、患者の胸部に配置された電極16(図1)のような第2の皮下ディスク電極306とを有する電極アレイを示すブロック図である。電気的刺激は、電極304または306の一方から他方の電極および/またはデバイスハウジング10へ供給される。あるいは、刺激は、両電極アッセンブリからデバイスハウジングに供給され得る。更に別の実施例では、1個またはそれ以上の付加的な皮下電極あるいは電極アレイが、上記で検討したように、高電圧ショックを提供するため、心臓信号を検出するため、および/またはSCS、TENsまたは皮下低電圧刺激を提供するために、デバイスに接続されている。希望する場合、このデバイスはプログラマブルロジックを含み、与えられた治療供給期間において電極および/または電極アレイを選択的に活性化することができる。例えば、スイッチングネットワークを出力回路108および/または入力回路110(図2)に組み込み、プログラム的に選択されたこのタイプの治療が施されるようにする。1例において、心臓信号の検出を最適化するために1個の電極構造を活性化し、一方他の構造を最適治療の提供のために利用することが望ましい。
【0060】
上述の新規なシステムおよび方法は、経静脈リード治療のリスクを回避する治療を提供する。このようなシステムは不整脈のリスクはあるがまだ確認された不整脈発作を経験していない患者に対して使用することができる。このデバイスはしたがって、必要な介入治療(インターベンション治療)と同様に、必要とされる長期のモニタリング機能を提供する。発作が検出されかつ第1回目の治療が施されると、本システムは、より一般的な植込み型除細動器によって置き換えられることが好ましい。
【0061】
上述したように、この新規なシステムは、ある患者に対しては、その他の一般的なシステムに比べて多くの重要な効果を提供する。静脈または心外膜アクセスの必要が無いのでその処置が速く、したがってその処置はより侵襲的でなく、高度な外科設備およびデバイスを必要とする処置を必要としない。更にその上、植込み処置は透視診断を伴う潜在的に危険な放射に患者をさらすことなく遂行することができる。感染の危険は減少し、さらにより伝統的なデバイスに対して禁忌を有する患者に対してこの処置を提供することができる。更にその上、100パーセントの患者コンプライアンスが達成でき、さらにシステムは外部装着デバイスよりもより快適である。電極の設置により、患者の成長に伴ってリードの長さを容易に延長することができるので、このシステムは小児に対する使用に適している。このシステムは更に、より長期の治療および処置が利用可能では無いような場所、さらに高度な外科技術およびデバイスを容易に得ることができないような世界のある場所で、使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 植込み型パルス発生器
12 デバイスハウジング
14 リード
16 皮下電極プレート
18 心臓
【技術分野】
【0001】
本発明は、心室性不整脈を治療するための方法および装置に関し、特に、不整脈の長期間に亘るモニタと、さらに皮下刺激デバイスを使用する重篤な頻脈性不整脈および徐脈性不整脈の治療方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生死にかかわる不整脈のリスクを負った患者を守るために、植込み型システムを使用することが、昔から知られている。例えば、一般に頻脈性不整脈として言及される高心拍は、共にMedtronic社から商業的に入手可能なMedtronic・Model7237GEM・II・DRまたは7229・GEM・II・SRのような植込み型デバイスを用いて治療される。これらのシステムは、電気的および機械的な心臓の活動(心筋内圧力、血圧、インピーダンス、一回拍出量または心臓の動き)および/または心電図の速度をモニタすることによって、頻脈性不整脈の存在を検出する。これらのデバイスは、一個またはそれ以上の徐細動電極が、本心内膜リード配置技術を用いる患者の心臓の心房および/または心室内にあることが必要である。このようなシステムを使用することによって、一貫した長期間のモニタ能力および生死にかかわる頻脈性不整脈に対する比較的良好な保護が提供される。
【0003】
同様に、心拍が非常に遅い徐脈性不整脈は、通常、植込み型のパルス発振器を用いて治療される。このようなデバイスは、例えば、本発明の譲渡人に譲渡された特許文献1乃至3に記載されている。頻脈性不整脈を治療するデバイスと共に、このような型の状態を治療する殆どの埋め込み型パルス発振器は、通常、一個またはそれ以上の心腔内に植え込まれたリードを必要とする。
【0004】
患者の心臓の心腔内に配置された心内膜リードの使用は比較的信頼性のある、長期間に亘る不整脈治療を実行する能力を提供するが、このような治療に関連した欠点も存在する。即ち、このようなリードの設置は、比較的時間消費型で費用のかかる処置を必要とし、この処置により患者は感染、血管穿孔およびタンポナーゼの危険がある。
【0005】
さらに、ある人々は心内膜リードの候補者ではない。例えば、人工の機械的三尖弁を有する患者は、殆どの右心室心内膜リードの場合と同じ様に、普通は、右心房からこの弁を通って右心室に延びるリードの候補者ではない。これは、このようなリードの使用が弁の適正な機械的機能を損なうからである。心内膜リード設置の候補者ではないその他の患者は、閉塞静脈血アクセスまたは先天的な心臓欠陥を有する患者を含む。
【0006】
心内膜リード設置に対して禁忌を示す患者は、心臓の外表面にリードを取り付けるための処置を頻繁に受ける必要がある。このタイプの心外膜リード設置は、より侵襲的な処置を含み、それにより、より長い回復時間を必要とし、事後の処置を非常に難しくし、かつ伝染病に感染する機会を増加させることを含む患者のリスクを増加させる。
【0007】
心内膜および心外膜リードの両者に関連する別の問題は、患者の成長である。具体的に説明すると、子供の心臓の血管内に配置されたリードは、その子供の成長に伴って往々にして再設置あるいは交換する必要がある。このようなリードの交換処置は、特に、以前に設置されたリードが体内に残された場合よりもむしろ取り出される場合の方が危険である。
【0008】
心内膜および心外膜リードの代替物として、皮下設置電極システムがある。例えば、Mirowski等による特許文献4において、徐細動システムは、患者に高電圧治療を施すために、心室心内膜電極と、心臓に直接に、皮下に、あるいは皮膚に取り付けられたプレート電極とを使用する。本発明の譲渡人に譲渡されたBardyへの特許文献5に開示されている類似のリードシステムは、冠状静脈洞/大動脈電極と、任意に徐細動器ハウジングの表面の形を取る、左胸部に位置する皮下プレート電極とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,158,078号
【特許文献2】米国特許第4,958,632号
【特許文献3】米国特許第5,318,593号
【特許文献4】米国特許Re27,652号
【特許文献5】米国特許第5,314,430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、種々のタイプの不整脈に対する長期モニタを提供し、必要な時に患者に治療を施し、さらに心内膜および心外膜両者のリード交換に関連した問題を克服するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、不整脈の長期間モニタのためのシステムおよび方法を提供する。この発明は、不整脈を検出する手段を含むパルス発振器を含む。パルス発振器は患者に電気的刺激を提供するための少なくとも1個の電極または電極アレイに接続されている。刺激は、電気的徐細動/徐細動ショックおよび/またはペーシングパルスを含み得る。電気的刺激は複数の電極間または一個またはそれ以上の電極とパルス発生器のハウジング間に提供される。一実施例では、パルス発振器は、容器から分離された一個またはそれ以上の電極を含む。これらの電極は心臓信号を検出するために使用することができる。
【0012】
本発明の一実施例によれば、患者の心臓信号をモニタするための装置が設けられている。この装置は、密封されたハウジング、このハウジング内に含まれる検出(センサ)手段、およびこの検出手段に接続された第1および第2の電極セットを含む。第1の電極セットは、患者の身体中の第1の位置において、皮下組織の近くに位置しうるハウジングの表面に隣接する、少なくとも1個の電極を含んでいる。第2の電極セットはハウジング上のコネクタに接続され、第1の位置とは異なる位置において患者の身体中に、皮下において位置しうる1個の電極アレイを構成する。
【0013】
本発明のその他の実施例によって、治療方法が提供される。この方法は、不整脈のような状態に対して患者の心臓信号をモニタし、更にその後その状態が検出されると皮下電極アレイを介して患者に治療を施す段階を含んでいる。本発明のその他の特徴は、図面およびそれに伴う記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によって使用することができる皮下電極およびパルス発生器の一例を示す図。
【図2】本発明によって使用することができるパルス発生器の例示的な実施例の機能ブロック図。
【図3A】本発明によって使用することができる電極アレイ300の上面図。
【図3B】本発明の他の実施例の電極アレイの上面図。
【図4A】デバイスハウジング上に配置された電極A、BおよびCの配置を示すパルス発生器の側面図。
【図4B】複数の電極の内の少なくとも1個が延長リードを介してパルス発生器から延びる、パルス発生器の側面図。
【図4C】複数の電極の内の少なくとも1個がリードの近接端部に配置されている、パルス発生器の側面図。
【図4D】デバイスハウジングの一端に複数の電極が配置されている、パルス発生器の側面図。
【図4E】電極アレイを含むデバイスハウジングの更に他の実施例の側面図。
【図4F】第1の代替形状を有するデバイスの側面図。
【図4G】第2の代替形状を有するデバイスの側面図。
【図5】徐脈性不整脈のモニタの間において使用される検出方法の一実施例を示すタイミング図。
【図6】患者の背中に延びる電極コイルを伴った、患者の横腹周辺に配置される電極アレイを示すブロック図。
【図7】より優れた位置において患者の背中に配置された電極アレイを示すブロック図。
【図8】より後の位置において患者の背中に伸びるコイル電極を伴った、患者の横腹周辺に配置された電極アレイを示すブロック図。
【図9】患者の背中に配置される電極アレイと、患者の胸部に配置される第2の皮下ディスク電極を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、不整脈の長期モニタのためのシステムおよび方法を提供する。本発明は更に、不整脈の期間が発生した場合に、急激な治療を提供する。本発明の一実施例において、皮下パルス発生器が提供される。このパルス発生器は、共にMedtronic社から商業的に入手可能なGemDRTM・Model7271あるいはGEM・II・VR・Model7229のような経胸腔的な植込み型除細動器(ICD)である。このパルス発生器は少なくとも1個の皮下設置電極または電極アレイに接続されている。除細動器パルスおよび/またはペーシングパルスは、電極およびデバイスの容器との間、あるいは2個の皮下設置電極間に提供される。
【0016】
図1は、本発明にかかる植込み型パルス発生器10および典型的な関連リードシステムを示す。パルス発生器10はデバイスハウジング12を含み、さらにリード14に接続されており、このリード14は以下で議論するように左胸部あるいは背中に皮下植込みすることができる。リード14は皮下プレート電極16を含み、これは種々の既知皮下プレート電極のいずれかであり得る。この型の皮下電極は、患者の胸部上、患者の横腹または背中上あるいは心臓に電気的刺激を提供するために適した身体のその他の部位上の、左心室近くに設置することができる。類似の電極が、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第4,392,407号、5,261,400号および5,292,338号に開示されており、これらは参照によって本件に組み入れられる。使用中、電極16とデバイスハウジング12間の心臓18に電気的刺激が提供される。
【0017】
図2は、本発明にしたがって使用することができるパルス発生器の説明的な実施例の機能ブロック図である。図示するように、このデバイスは、マイクロプロセッサベースの刺激デバイスである。しかしながら、他のデジタル回路の実施例およびアナログ回路の実施例も共に本発明の範囲内であると信じられる。例えば、Bocek等に与えられた米国特許第5,251,624号、Gilliに与えられた米国特許第5,209,229号、Langer等に与えられた米国特許第4,407,288号、Haefner等に与えられた米国特許第5,662,688号、Olson等に与えられた米国特許第5,855,893号、Baker等に与えられた米国特許第4,821,723号あるいはCarroll等に与えられた米国特許第4,967,747号に示すように一般的な構造を有するデバイスは本発明と共に有効に使用することができる。なお、これらの特許のすべては、参照によって本件に組み入れられる。図1は従って、本発明の範囲に関して限定的であるよりもむしろ例示的なものであると考えるべきである。
【0018】
図2に示す機器の主要な要素は、マイクロプロセッサ100、リードオンリーメモリ(ROM)102、ランダム−アクセスメモリ(RAM)104、デジタルコントローラ106、入力増幅回路110、2個の出力回路108と109、およびテレメトリ/プログラミングユニット120である。リードオンリーメモリは、ソフトウエアおよび/またはデバイスのファームウエアを、このデバイスによって使用される種々のタイミング間隔を導出するために実施される計算を定義する主要命令セットを含んで、記憶する。RAM104は一般に、可変制御パラメータを格納するように動作し、このようなパラメータは、例えばプログラムされたペーシング速度、プログラムされた除細動間隔、パルス幅、パルス振幅等であって、医者によってデバイス中にプログラムされている。ランダム−アクセスメモリ104は、頻脈性パルスと対応する高速ペーシング間隔を分離する記憶された時間間隔のような、導出された値を格納する。
【0019】
コントローラ106は、デバイスの全ての基本的制御およびタイミング機能を実行する。コントローラ106は、少なくとも1個のプログラマブルタイミングカウンタを含み、このカウンタは本発明の場面内においてタイミング間隔を測定するために使用される。ペーシング補充収縮間隔のタイムアウトにおいて、または除細動またはペーシングパルスを送出するとの決定に応答して、コントローラ106は、以下に議論するように、高電圧出力ステージ108からの適当な出力パルスをトリガする。一実施例では、コントローラは、除細動ショックに関係したエネルギと同様、ペーシングパルスの振幅を制御する。
【0020】
刺激パルスの生成に続いて、コントローラ106はマイクロプロセッサ100に向かう制御ライン132上に対応する割り込みを生成するために使用することができ、その結果マイクロプロセッサ100が全ての必要な数学的計算を実行することを可能とする。この計算には、復帰サイクル時間の評価および本発明に従った反頻脈性不整脈治療の選択に関係する全ての演算が含まれる。コントローラ106中のタイミング/カウンタ回路も同様に、この技術分野で知られている心室不能期のようなタイミング間隔を制御することができる。時間間隔は、RAM104に格納されたプログラム可能な値あるいはROMに格納された値によって決定することができる。
【0021】
コントローラ106はさらに、心室の脱分極または収縮を検出した場合、マイクロプロセッサ100に対する割り込みを生成する。検出した心臓波形のタイミングおよび形態は、マイクロプロセッサ100によって、不整脈が発生しておりそのため治療が以下に詳細に示すように施されるか否かを決定するために、使用されることがある。
【0022】
出力ステージ108は、除細動パルスを生成することが可能な高出力パルス発生器を含んでいる。本発明によれば、これらのパルスは、皮下電極または端子134に接続された電極アレイとパルス発生器の容器との間に印加され得る。あるいは、このパルスは、端子134に接続された電極と第2の皮下電極または端子136に接続された電極アレイ間に供給され得る。典型的には、高出力パルス発生器は1個またはそれ以上の高電圧コンデンサ、充電回路および使用した電極に単相または二相の電気的除細動または除細動パルスの送出を可能とするスイッチセット、を含んでいる。出力回路108はさらに、コントローラ106の制御下で心臓にペーシングパルスを供給する。振幅が50から150ボルトであり得るこれらのペーシングパルスは、1個またはそれ以上の皮下設置電極を介して供給され得る。
【0023】
心室脱分極(収縮)の検出は入力回路110によって実行され、この回路110は電極138および電極140と142の一方に接続されている。この回路は、増幅、およびノイズ検出および保護回路を含みうる。一実施例では、信号検出は過剰ノイズ期間において実施することができない。この分野で知られているように、ノイズ除去フィルタおよび類似の回路が同様に含まれ得る。入力回路110は、信号線128を介してコントローラ106に、固有の心室収縮およびペーシングが作られた心室収縮の両者の発生を示す信号を供給する。コントローラ106は、信号線132を介してマイクロプロセッサ100にこのような心室収縮の発生を示す信号を、割り込みの形で供給する。これにより、マイクロプロセッサが必要な全ての計算を実行しまたはRAM104に格納された値を更新することが可能となる。
【0024】
1個またはそれ以上の皮下あるいは皮膚上に設置された生理的センサ148を、オプションとしてデバイスに含ませることも可能である。このセンサ148は植込み刺激器と共に使用される種々の既知センサのいずれかであってもよい。この技術分野で既知のこのタイプの全てのセンサを本発明において使用することが可能である。更に、若し希望する場合は、心臓血管システム内に位置するセンサを利用することができる。センサ148は、Chirifeに与えられた米国特許第4,865,036号に開示されているインピーダンスセンサのような血行動態センサ、または、Cohenに与えられた米国特許第5,330,505号に開示されている圧力センサであり得る。なお、これらの特許は、参照によってその全体を本件に組み入れる。あるいは、センサ148は、心臓出力パラメータを測定するための、例えばErickson等に与えられた米国特許第5,176,137号に開示されている酸素飽和センサのような、要求センサであっても良く、またはAnderson等に与えられた米国特許第4,428,378号に開示されているような身体的活動センサであっても良い。尚、これらの特許もその全体を参照によって本件に組み込む。
【0025】
センサ処理回路146は、不整脈の検出と治療に関連して使用するために、センサ出力をデジタル値に変換する。これらのデジタル信号はコントローラ106とマイクロプロセッサ100によってモニタされ、それ単独であるいは検出した電気的心臓信号との組み合わせにおいて使用され、不整脈の開始またはその他の心臓状態の決定のために用いられる診断情報を提供する。これらの信号は、更に、ショック供給の最適時間を決定するために使用され得る。例えば、インピーダンスセンサは、患者が何時息を吐くかを決定するために使用し、それによってショックの供給を肺が比較的収縮した場合に発生するようにする。これは、この場合に除細動の閾値(DFTs)がより低くなるためである。センサ信号は、後の診断における使用のためにRAM104に格納することができる。
【0026】
植込み型除細動器の外部制御は、植込み型心変換器/ペースメーカと外部デバイス121間の通信を制御するテレメトリ/制御ブロック120を介して実行される。全ての通常のプログラミング/テレメトリ回路は本発明において動作可能であると信じられる。外部デバイスから心変換器/ペースメーカへ情報が提供され、制御ライン130を介してコントローラ106に送られる。同様に、心変換器/ペースメーカからの情報は制御ライン130を介してテレメトリブロック120に供給され、その後外部デバイスに転送される。
【0027】
一実施例では、外部デバイス121はプログラムデバイスであり、これは患者の状態を診察し何らかの必要な再プログラミング機能を提供するために利用される。別の実施例では、外部デバイスは、患者に情報を提供し、および/または患者からコマンドを受信するために使用される患者インターフェースであり得る。例えば、患者インターフェースは、差し迫ったショックに関して患者に警告を与えるリストバンドのような身体外部に身に付けるデバイスであっても良い。そのショックが間違って処方されたものであると患者が信じる場合、その患者はそのショックをキャンセルすることが可能である。これは、例えば、ボタンを押すことによって、あるいは音声コマンドによって実行することができる。患者インターフェースは、医学的な注意が必要であるとの警告および/または低電源に関する表示を含む、追加の情報を供給することができる。希望する場合、患者インターフェースは、無線リンクを介して緊急電話を自動的に掛けることができ、および/または全地球位置発見システム(GPS)を介して患者の位置情報を発行することができる。
【0028】
頻脈性不整脈の検出および処置のためのその他の如何なるシステムおよび方法も、本発明内に組み込むことができる。このようなシステムおよび方法は、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,849,031号、5,193,535号および5,224,475号に記載されている。一実施例において、システムは、このデバイスによって検出された不整脈のタイプに基づいて治療を実施するための“階段式治療”を含み得る。このアプローチによれば、不整脈は、検出された心臓信号の速度および形態を分析することによって差別化することができる。心室頻脈(VTs)のようにより危険でないとみなされる不整脈は、心臓に、一連の低出力で比較的高速のペーシングパルスを供給することにより、治療され得る。この治療は、しばしば、反頻脈性不整脈ペーシング治療(ATP)として言及される。反対に、心室細動(VFs)のようなより危険な不整脈は、より積極的なショック治療を早急に実施することにより処置することができる。このタイプのシステムは、本発明の譲渡人に譲渡された、Mehraに与えられた米国特許第5,193,536号、Olsonに与えられた第5,458,619号、DeGrootに与えられた第6,167,308号およびOlson等に与えられた第6,178,350号に記載されており、これらは全て参照によって本件に組み入れられる。本発明の文意内で、ATP治療は、以下に示す方法によって1個またはそれ以上の皮下電極を用いて供給される。本発明の一実施例では、ATP治療を実施するために、皮下電極アレイ内に1個の独立した電極が設けられる。
【0029】
本発明のシステムの別の特徴によれば、デバイスは高電圧ショックに関連する不快感を減少させる手段を含んでいる。高電圧ショックが患者にとって苦痛に満ちたものであることは良く知られている。この不快感はショックに関係するエネルギ量を減少させることによって最小とすることができる。これを実現する一つの機構は、Krollに与えられた米国特許第5,366,485号に記載されているように、プレショックパルス波形を供給することを含む。一実施例では、このタイプの波形は、RAM104内に格納されたパラメータを介してコントローラ106によって制御されるプログラム可能な構造で有り得る。
【0030】
更にその他の実施例では、植込み型デバイスは、図2に示すように薬剤ポンプ150を含む。このポンプは、不快感を減らすためにショックの提供に先立って患者に鎮痛剤のような生物学的に活性な薬剤を提供するために使用することができる。薬剤の提供は、患者の血管系内に皮下植込みされたカテーテル152を介して実行することができる。類似のシステムが本発明の譲渡人に譲渡された、Elsberryに与えられた米国特許第5,893,881号に記載され、これは参照によって本件に組み込まれる。代替的にまたは付加的に、このポンプは、ディサロトール(D−salotol)、プロカインアミド(Procainamide)またはキニジン(Quinidine)のような薬剤を提供して、必要とされるショックの除細動閾値を下げ、それによって痛みを減少させるようにすることも可能である。さらに複雑な実施例において、2個の独立した薬剤ポンプを使用して閾値低下薬剤のみを供給し、または鎮痛剤と共に供給することも可能である。
【0031】
脊髄刺激(SCS)を提供することによってペインコントロールを実行することもできる。例えば、Medtronic・Itrel・II植込み型神経刺激システムは、治療と頑固な痛みの緩和のために広く植込まれている。臨床報告および研究によって、SCSが、高電圧ショックに関係する不快感を減少させることが示されている。このタイプのシステムは、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,119,832号、5,255,691号または5,360,441号に記載されたリードシステムを利用することができる。Medtronic・Model3487Aまたは3888リードと同様にこれらのリードは複数の間隔を置いて離れた末端電極を含み、これらの電極は、痛みの緩和のためのSCS刺激を提供するために、脊髄断片T1−T6に隣接する硬膜上腔上に配置されるように適合されている。この実施例において、細動の検出および確認の後、知覚異常を形成するための硬膜上神経刺激を行う。その後、ショックを提供する。電気的除細動ショックが有効でないことが証明されると、電気的除細動治療が効果があることが証明されるまで、あるいは疲れ果てるまでそのプロセスが繰り返される。有効な除細動が確認されると、脊髄SCS刺激は停止される。SCS治療に加えて、例えば経皮的神経刺激(TENs)のような他のタイプの刺激が、患者の身体表面上に設置した電極片を介して提供される。皮下設置電極は、痛みを低下させるための皮下電極刺激を提供するために、T1−T6エリアあるいは身体のその他のエリアに配置することが可能である。本発明の主旨において、皮下配置電極アレイは、患者の不快感を減少させるために、ショックの提供に先立って皮下刺激を提供するための、特殊電極を含み得る。
【0032】
本発明に使用される電極システムの更に詳細な議論に移ると、この電極は図1に示すタイプのものであり得る。あるいは、この電極アレイは、Medtronic社から商業的に入手可能なModel6996SQに似ていても良い。
【0033】
図3Aは、本発明によって使用され得る電極アレイ300の上面図である。電極アレイ300は、リード302の遠心端に接続されている。アレイは、複数の指状構造体304Aから304Eを含んでいる。指状構造体は、より多くてもあるいはより少なくても良い。それぞれの指は、306Aから306Eとして示す除細動コイル電極を含んでいる。コネクタ308がパルス発生器に接続されている場合、除細動パルスを電極306Aから306Eの一個またはそれ以上を介して提供することも可能である。一実施例では、活性化される電極は、リードによって提供されるスイッチを介して選択され得る。
【0034】
電極アレイ300は、電極310のような心臓信号を検出するための一個またはそれ以上の検出(センサ)電極を有していても良い。この電極は単極モードにおいて使用することが可能で、このモードでは電極とデバイスハウジング間で信号が検出される。あるいは、検出は電極310と、コイル電極306またはその他の検出電極の一方との間で実施される。
【0035】
使用において、電極アレイの指304は患者の胸部、横腹、背中あるいは必要とされる身体のその他の点の皮膚の下に配置される。希望する場合、指の間に絶縁性のスペーサを配置して、コイル電極306A−Eが互いにショートするのを防ぐようにしても良い。希望する場合、本発明において、複数のこのような電極を使用することができる。例えば、1個の電極アレイを左心室上の胸部上に配置し、別の電極アレイを背中において左心室の背後に設置することもできる。この2個の電極アレイ間に、除細動ショックまたはペーシングパルスを供給することができる。あるいは、1個または複数の電極アレイとデバイスハウジング間に、電気的刺激を提供することもできる。上述したように、患者の心臓信号の検出は、皮下電極アレイおよびデバイス容器との間で実施することができる。
【0036】
図3Bは、アレイ300Aとして示す電極アレイの別の実施例の上面図である。この実施例において、指320Aから320Cは曲がりくねった形状を有している。より多くのあるいは少ない指を設けることができる。この形のアレイは、コイル電極322Aから322Cによって供給される電流を大きな組織エリアに向かわせ、それによってある場合には除細動閾値を低下させる。この実施例は1個またはそれ以上の検出電極322を含むことができる。電極アレイとして他のどのような形状も利用することができる。本発明で使用される電極は、電気刺激の皮下供給のために現在知られている、あるいは将来において知られる全てのタイプの電極であり得る。このような電極は生物学的に活性な薬剤によって被覆することができる。このような薬剤としては、糖質コルチコイド(例えばデキサメタゾン、ベクラメタゾン(beclamethasone))、ヘパリン、ヒルジン、トコフェロール、アンジオペプチン、アスピリン、ACE阻害物質、成長因子、オリゴヌクレオチド、更に一般的には、抗血小板薬、抗血液凝固剤、酸化防止剤、代謝拮抗剤および抗炎症剤等がある。このような電極はさらにTiNのような低分極被膜を含むことがある。あるいは、この電極は感染および炎症を防止するために使用される抗生物質あるいはその他の生物学的に活性な薬剤で被覆される場合がある。
【0037】
別の実施例において、容器自体は、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,331,966号に記載されているタイプの皮下電極アレイを含み、この特許はその全体が参照によって本件に組み込まれる。Medtronic・Model9526Reveal・Plus・Implantable・Loop・Recorderによって提供されるこのタイプのアレイは、心臓信号の検出のために、容器上に、少なくとも2個の検出電極を含んでいる。このような全てのシステムにおいて、ハウジングの表面上の電極A、B、Cは、米国特許第4,310,000号に記載するように、互いに、かつパルス発生器ハウジング10の導電性表面から適当な絶縁バンドおよび電気的フィードスルーを介して電気的に分離されている。なおこの米国特許は、参照によって本件に組み入れられる。可能な電極配置および3電極を含む3電極システムの構成事例は、図4Aから4Gに記載されている。
【0038】
図4Aは、1個のパルス発生器の側面図であって、2個の電極をコネクタブロック418上に、1個の電極をパルス発生器のケース410上に有する、直交配置された電極A、BおよびCの配置を示す。図4Aから4Gのそれぞれに示された配置における電極A、BおよびCの間隔は、約2.54cm(1インチ)のオーダーであるが、デバイスの正確なサイズに応じてこれよりも大きくても小さくても良い。デバイスが小さくかつ間隔が狭いと、より大きいな増幅が必要である。
【0039】
図4Bは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、少なくとも1個の電極が、希望する場合より大きな電極間間隔を達成するために、リード延長部材420によってパルス発生器から離れて延びている。
【0040】
図4Cは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、電極230の少なくとも1個がリード432の近接端部に位置しており、このリードは皮下電極あるいは電極アレイへの遠心端に接続されたリードであり得る。
【0041】
図4Dは、1個のパルス発生器の側面図であって、この場合、デバイスハウジングのエッジに複数の電極が配置されている。パルス発生器ケースのエッジ上に配置された電極は、ケースの壁を通して延びるフィードスルーの絶縁ピンを構成し得ることを理解すべきである。図4Cから4Dに記載するように、電極の相対的配置は、図4Aおよび4Bに示す直交配列とは幾分異なっている。
【0042】
図4Eは、電極アレイを含むデバイスハウジングの更に他の実施例の側面図である。
【0043】
図4Fは、第1の代替的“T”形状を有するデバイスの側面図である。この形状は、少なくとも2個の電極AおよびCを互いに最大距離に配置することを可能とし、これによって2個の電極間で信号の受信を最適化することができる。
【0044】
図4Gは、第2の代替的“ブーメラン”形状を有するデバイスの側面図であり、この形状はよりすぐれた信号受信を達成することができるように電極配置を最適化するために使用することができる。
【0045】
図4Aから4Gに示すデバイスの形状、サイズおよび電極構成は、単に例示的なものであって、その他の想像しうる形状、サイズあるいは電極構成も本発明の範囲内であることが理解される。より大きな電極間距離を可能とするこれらの構成が一般に、より優れた信号受信を提供することを、当業者は理解するであろう。このように、電極をデバイスの少なくとも2個の象現に配置することが常に望ましい。
【0046】
上述したように、1実施例では、本発明は1個またはそれ以上の皮下電極または電極アレイに接続されたパルス発生器を提供する。この電極は、検出された心臓信号に基づいて患者に電気的刺激を提供する。検出信号は、選択された一対の検出電極を使用して得ることができ、図4Aから4Gに示すように、この一対の電極はパルス発生器10に接続された1個またはそれ以上のリード上またはデバイスハウジングそれ自身の上に存在する。
【0047】
上述の全ての例は3個の電極を含むハウジングを示しているが、3個以上の電極を設けることも可能である。1実施例では、4個以上の電極をデバイスに接続しあるいは隣接させることができ、さらに医者が、与えられた患者に対してどの電極を活性化するかを選択することができる。1実施例では、心臓信号は、電極の選択された一対間で信号最適化方法に基づいて検出される。このタイプの方法の1実施例が、2000年11月22日出願の米国特許出願第09/721,275号に開示され、その全体は参照によって本件に組み入れられる。モニタ目的のために、どの1個またはそれ以上の電極あるいは電極対が選択されるかにかかわらず、検出された心臓信号は不整脈の存在を検出するために分析され得る。不整脈検出システムおよび方法は、例えば、Medtronic社から商業的に入手可能なMedtronic・Model9526Reveal・Plusデバイスによって採用されているシステムおよび方法であり得る。あるいは、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,354,316号または第5,730,142号に記載されている検出方法を使用することも可能である。不整脈が検出されると、適正な治療が施される。上述したように、本発明の1実施例は少なくとも1個の皮下除細動電極アレイを含んでいる。モニタリングが、頻脈性不整脈あるいは心房細動の存在を示すと、高電圧ショックが1個またはそれ以上の皮下除細動電極と容器のショッキング表面または容器上の1個またはそれ以上の電極との間に提供される。この代わりに、複数の除細動電極間にショックを施すことが可能である。モニタシステムは、その後不整脈あるいは細動が終了したか否かを決定する。終了していない場合、もう1個のショックが施される。この治療は正常なリズムが復活するまで続けられる。1実施例では、検出した心臓波形を示す信号がRAM10中に格納され、後にテレメトリ回路120のような通信システムを介して外部デバイスに転送される。
【0048】
本発明の他の特徴によれば、検出電極は、容器のショッキング表面とは異なる容器表面上に配置することができる。このショッキング表面は筋肉組織に隣接していることが好ましく、一方、検出電極は皮下組織に隣接して配置される。
【0049】
上述したように、頻脈性不整脈治療に加えて、あるいはこれに代わって、除脈性不整脈の治療を提供することもできる。この実施例では、図1を参照して上述したように、出力回路108は除脈性不整脈のための経胸腔的ペーシング治療のために、低電圧パルスを提供する能力を有している。これらの低電圧パルスは、例えば50と150ボルトの間のオーダーである。1実施例では、これらのパルスは約100ボルトの振幅を有している。除脈性不整脈のモニタは上述した検出電極を使用して実施される。例えば、デバイスは、予め決められた期間、例えば3秒、より長い収縮不全の期間を検出するようにプログラムされている。この長さより大きい期間が検出されると、デバイスの出力回路はペーシング電圧にチャージされる。経胸腔的単相ペーシングパルスは、その後、容器のショッキング表面と皮下電極あるいは電極アレイとの間に供給され、あるいは2個のこのような電極または電極アレイの間に供給される。検出電極は心臓波形をモニタし、ペーシングパルスが心臓サイクルの予め決められた期間の間にのみ供給されることを保証する。例えば、パルスの供給は、T波の発生の間に起こるべきではない。
【0050】
ペーシングパルスの供給に続いて、出力回路は心臓信号のモニタを続ける一方で、別のパルスの供給準備のために充電を開始する。例えば、患者の心拍数のモニタリングは、例えば一分間に40回の拍動のような予め決められた速度よりも少ないか否かを決定するために、実施する事ができる。もし少ない場合、別の経胸腔的単相ペーシングパルスが供給される。出力回路の充電に引き続くこのパルス供給プロセスは、予め決められた最小の心拍速度よりも大きな本来の心拍速度が検出されるまで、繰り返される。
【0051】
本発明によって提供される経胸腔的ペーシングは、患者にとって不快である場合が多い。したがって、この機能は長期治療を提供するよう意図されるものではない。除脈性不整脈発作に対して一旦治療の提供が起こると、長期治療を提供するためにより伝統的なデバイスを植込む必要がある。1実施例では、デバイスは、ACC/AHAクラスIペーシング表示が検出された除脈性不整脈の事象に合致しているか否かを記録することができる。例えば、3秒よりも大きな収縮不全および/または一分間に40回以下の補充速度(escape rate)が検出されると、これらの表示が記録される。このデータは、医者の指示書を作成するために外部デバイスに転送される。例えばアラームを鳴らすなどのその他のアクションをとっても良い。
【0052】
図5は、除脈性モニタリングの間に使用される検出方法の1実施例を示すタイミング図である。もし収縮不全が、例えば3秒である予め決められた第1の期間500より大きいかあるいは等しい期間検出されると、出力コンデンサの例えば100ボルトである予め決められた電圧への充電が起こる。この充電は、期間502において起こる。時間504において、第1の充電パルスが提供され、時間506でコンデンサの再充電が開始される。予め決められた速度よりも長い補充速度のモニタリングは、期間508中に発生する。この期間は、1実施例では1500ミリ秒である。その後、固有の心拍が発生しない場合、第2のペーシングパルスが、時間510において供給される。時間512において再充電が起こり、補充速度に対するモニタリングが再び進行する。患者固有の正常な心拍が復帰したことによってこのような治療が停止すると、患者には迅速な緊急治療が求められる。これは、このような治療が患者にとって不快であるためである。図5に示すように治療を提供するために使用される時間は、プログラム可能である。
【0053】
上記検討から、治療の繰り返し、さらに特に、高電圧ペーシング刺激の繰り返しによって、例えばバッテリであるし電源が比較的早く消耗することが理解される。したがって、1実施例では、この電源は再充電可能である。例えば、パルス発振器は再充電可能なニッケルカドミウムバッテリである。このようなバッテリは、無線周波数リンクを利用して数時間に亘って再充電される。あるいは、Maurerの米国特許第4,408,607号に開示されているような再充電可能なコンデンサエネルギ源を使用することも可能である。更にその他の実施例では、パルス発生器は、バックアップ用再充電可能電源を組み込んだ植込み無線周波数(RF)受信ユニット(受信器)と米国特許第5,733,313号に開示されているような再充電が不能なバッテリの両者を含むことができる。なお、この特許は、参照によって本件に組み込まれる。再充電可能な電源は、患者が装着する外部RF送信ユニットによって充電される。この技術分野で知られている植込み型医療デバイスと共に使用されるその他の全てのタイプの再充電可能電源を、代替物として使用することができる。
【0054】
1実施例では、本発明で使用するために選択された電源は、閾値テストのために利用し得る付加的な電力と共に、10回までの治療ショックを施す能力がある。しかしながら、電源の容量はデバイスのサイズを決定するものであるため、妥協が必要である。さらに別の実施例では、デバイスは、75立方センチメートルより大きくない体積を有する75ジュールのデバイスである。このデバイスは、電源とこれに関連する充電回路とを含むことが好ましく、この充電回路はデバイスの使用寿命の間3分を越えない充電時間を提供する。更に他の実施例では、デバイスの使用寿命に亘って、1分の充電時間後に35ジュールのショックを施す能力を有するべきである。
【0055】
図6から9は、本発明によって使用可能な電極構成の種々の事例を示す。
【0056】
図6は患者の横腹近辺に設置された電極アレイ300を示すブロック図であって、このアレイは患者の背中に伸びる指304を有している。電極アレイと左心房上に位置するデバイス容器10との間に、電気的刺激が施される。1実施例では検出電極600は、ほぼ皮下組織に対向するようにして配置されている。
【0057】
図7は、図6に示すよりも優れた位置において患者の背中に配置された電極アレイを示すブロック図である。電気的刺激が電極アレイと腹腔中に位置するデバイス容器10との間に供給される。
【0058】
図8は、患者の横腹近辺に配置された電極アレイを示すブロック図であり、このアレイは図6または7に示すものよりも更に優れた位置において患者の背中に延びる指304を有している。電気的刺激は、電極アレイとデバイス容器との間に供給され、この容器は心臓の右側近くに設置されている。
【0059】
図9は、患者の背中に設置された指304と、患者の胸部に配置された電極16(図1)のような第2の皮下ディスク電極306とを有する電極アレイを示すブロック図である。電気的刺激は、電極304または306の一方から他方の電極および/またはデバイスハウジング10へ供給される。あるいは、刺激は、両電極アッセンブリからデバイスハウジングに供給され得る。更に別の実施例では、1個またはそれ以上の付加的な皮下電極あるいは電極アレイが、上記で検討したように、高電圧ショックを提供するため、心臓信号を検出するため、および/またはSCS、TENsまたは皮下低電圧刺激を提供するために、デバイスに接続されている。希望する場合、このデバイスはプログラマブルロジックを含み、与えられた治療供給期間において電極および/または電極アレイを選択的に活性化することができる。例えば、スイッチングネットワークを出力回路108および/または入力回路110(図2)に組み込み、プログラム的に選択されたこのタイプの治療が施されるようにする。1例において、心臓信号の検出を最適化するために1個の電極構造を活性化し、一方他の構造を最適治療の提供のために利用することが望ましい。
【0060】
上述の新規なシステムおよび方法は、経静脈リード治療のリスクを回避する治療を提供する。このようなシステムは不整脈のリスクはあるがまだ確認された不整脈発作を経験していない患者に対して使用することができる。このデバイスはしたがって、必要な介入治療(インターベンション治療)と同様に、必要とされる長期のモニタリング機能を提供する。発作が検出されかつ第1回目の治療が施されると、本システムは、より一般的な植込み型除細動器によって置き換えられることが好ましい。
【0061】
上述したように、この新規なシステムは、ある患者に対しては、その他の一般的なシステムに比べて多くの重要な効果を提供する。静脈または心外膜アクセスの必要が無いのでその処置が速く、したがってその処置はより侵襲的でなく、高度な外科設備およびデバイスを必要とする処置を必要としない。更にその上、植込み処置は透視診断を伴う潜在的に危険な放射に患者をさらすことなく遂行することができる。感染の危険は減少し、さらにより伝統的なデバイスに対して禁忌を有する患者に対してこの処置を提供することができる。更にその上、100パーセントの患者コンプライアンスが達成でき、さらにシステムは外部装着デバイスよりもより快適である。電極の設置により、患者の成長に伴ってリードの長さを容易に延長することができるので、このシステムは小児に対する使用に適している。このシステムは更に、より長期の治療および処置が利用可能では無いような場所、さらに高度な外科技術およびデバイスを容易に得ることができないような世界のある場所で、使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 植込み型パルス発生器
12 デバイスハウジング
14 リード
16 皮下電極プレート
18 心臓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスハウジングを有する植込み型パルス発生器(10)であって、前記デバイスハウジングの一部分は電極として機能するように構成されている植込み型パルス発生器、
前記デバイスハウジング内に位置しかつ前記植込み型パルス発生器に接続された検出回路(146)、および
複数の皮下電極(306、322)をサポートするための少なくとも3個の個別の電極支持指(304、320)を含みかつ前記植込み型パルス発生器に接続された皮下電極アレイ(300、300A)であって、前記検出回路による不整脈の検出によって、該皮下電極アレイ(300、300A)の1個または1個以上の電極と前記デバイスハウジングの前記一部分との間において、患者に電気的刺激を提供するための皮下電極アレイ、を具備し、
前記皮下電極アレイ(300、300A)の前記複数の電極のそれぞれは、電気刺激を提供するために個別に励起可能であり、
前記システムは更に、前記複数の皮下電極の何れの1個又はそれ以上を活性化して電気的刺激を提供するかを選択するためのスイッチを備える、患者に不整脈治療を提供するためのシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記皮下電極アレイは、患者に除細動ショックを提供する除細動電極アレイである、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、徐脈性不整脈の発生を検出する回路を含み、さらに、前記皮下電極アレイは、徐脈性不整脈の発生を検出することによって、少なくとも1個のペーシングパルスを患者に提供するように構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、心臓信号を検出するために、前記デバイスハウジングの少なくとも第1の表面上の少なくとも2個の検出電極を含む、システム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記除細動電極アレイと前記デバイスハウジングを不整脈の検出に利用する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記デバイスハウジングは、電気ショックを提供するための少なくとも1個の表面を含んでいる、システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記デバイスハウジングは、電気ショックを提供するための少なくとも1個の表面を有し、前記電気ショックを提供するための表面は前記デバイスハウジングの前記少なくとも第1の表面とは異なる、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、少なくとも1個の個別電極支持指はさらに、前記検出回路に接続された検出電極をサポートする、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記検出電極と前記デバイスハウジング間で信号を検出するように構成されている、システム。
【請求項10】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記検出電極と前記皮下電極アレイの選択された1個の電極との間で信号を検出するように構成されている、システム。
【請求項1】
デバイスハウジングを有する植込み型パルス発生器(10)であって、前記デバイスハウジングの一部分は電極として機能するように構成されている植込み型パルス発生器、
前記デバイスハウジング内に位置しかつ前記植込み型パルス発生器に接続された検出回路(146)、および
複数の皮下電極(306、322)をサポートするための少なくとも3個の個別の電極支持指(304、320)を含みかつ前記植込み型パルス発生器に接続された皮下電極アレイ(300、300A)であって、前記検出回路による不整脈の検出によって、該皮下電極アレイ(300、300A)の1個または1個以上の電極と前記デバイスハウジングの前記一部分との間において、患者に電気的刺激を提供するための皮下電極アレイ、を具備し、
前記皮下電極アレイ(300、300A)の前記複数の電極のそれぞれは、電気刺激を提供するために個別に励起可能であり、
前記システムは更に、前記複数の皮下電極の何れの1個又はそれ以上を活性化して電気的刺激を提供するかを選択するためのスイッチを備える、患者に不整脈治療を提供するためのシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記皮下電極アレイは、患者に除細動ショックを提供する除細動電極アレイである、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、徐脈性不整脈の発生を検出する回路を含み、さらに、前記皮下電極アレイは、徐脈性不整脈の発生を検出することによって、少なくとも1個のペーシングパルスを患者に提供するように構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、心臓信号を検出するために、前記デバイスハウジングの少なくとも第1の表面上の少なくとも2個の検出電極を含む、システム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記除細動電極アレイと前記デバイスハウジングを不整脈の検出に利用する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記デバイスハウジングは、電気ショックを提供するための少なくとも1個の表面を含んでいる、システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記デバイスハウジングは、電気ショックを提供するための少なくとも1個の表面を有し、前記電気ショックを提供するための表面は前記デバイスハウジングの前記少なくとも第1の表面とは異なる、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、少なくとも1個の個別電極支持指はさらに、前記検出回路に接続された検出電極をサポートする、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記検出電極と前記デバイスハウジング間で信号を検出するように構成されている、システム。
【請求項10】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記検出回路は、前記検出電極と前記皮下電極アレイの選択された1個の電極との間で信号を検出するように構成されている、システム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−104445(P2011−104445A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52087(P2011−52087)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2007−211759(P2007−211759)の分割
【原出願日】平成13年11月21日(2001.11.21)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2007−211759(P2007−211759)の分割
【原出願日】平成13年11月21日(2001.11.21)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
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