説明

心肺蘇生訓練システム

【課題】実際的な除細動処置を学習することのできる心肺蘇生訓練システムを提供する。
【解決手段】心肺蘇生訓練システム1を、人体の胸部を模した模擬胸部4cを有する人体モデル4と、人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した模擬電極パッド58bと、模擬胸部4cの所定部位に模擬電極パッド58bが当てられているか否かを判断する判断手段(51,52,85)と、判断手段(51,52,85)が、模擬胸部4cの所定部位に模擬電極パッド58bが当てられていると判断したとき、所定の心電図波形を表示する心電図波形表示手段(70,86)とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺蘇生法の習得に供する心肺蘇生訓練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、救命処置としては、救急現場に居合わせた人が心肺蘇生を行うBLS(一次救命処置)と、救急救命士や医師が高度な心肺蘇生を行うALS(二次救命処置)とがある。従来、心肺蘇生を迅速かつ正確に行えるようにするために、人体モデルを用いて心肺蘇生を訓練することが行われており、かかる心肺蘇生訓練に供する人体モデルとして、例えば特許文献1にて提案されているような蘇生訓練用人体模型がある。この蘇生訓練用人体模型は、人体の頭部、首部および胸部をそれぞれ模した模擬頭部、模擬首部および模擬胸部を備え、気道確保や人工呼吸、胸骨圧迫心臓マッサージなどの基本的な心肺蘇生を訓練することができるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特表2006−526172号公報
【0004】
ところで、BLSの処置内容には、気道確保や人工呼吸、胸骨圧迫心臓マッサージなどの基本的な心肺蘇生処置の他に、AED(自動体外式除細動器)を用いた除細動処置が含まれている。AEDを用いた除細動処置においては、AEDの電極パッドを胸部の所定部位に貼り付けると、AEDから「患者から離れてください。患者に触らないでください」などと音声メッセージが発せられ、AEDが心電図を自動的に解析し、除細動が必要であればAEDから指示が出るので、その指示に従って周囲の安全を確認した後に通電ボタンを押して通電するといった手順でもって除細動が実施される。
【0005】
一方、ALSの処置内容には、医師等の判断に基づく除細動処置が含まれている。医師等の判断に基づく除細動処置においては、パドル誘導法もしくはモニタ誘導法(3点誘導法)によって心電図をとり、医師等がその心電図を見て除細動が必要か否かを判断し、除細動が必要と判断した場合、手動式除細動器のパドル本体に組み付けられた電極パッドを胸部の所定部位に押し当て、通電ボタンを押して通電するといった手順でもって除細動が実施される。
【0006】
このように、BLSおよびALSのいずれにおいても、除細動が重要な処置の一つとなっており、除細動処置を迅速かつ正確に行えるようにするために、実際的な除細動処置を学習することのできる訓練システムが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、実際的な除細動処置を学習することのできる心肺蘇生訓練システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による心肺蘇生訓練システムは、
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した模擬電極パッドと、
前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられていると判断したとき、所定の心電図波形を表示する心電図波形表示手段と
を備えることを特徴とするものである。
【0009】
第1発明において、前記判断手段は、前記模擬電極パッドに含有される磁石と、前記模擬胸部の所定部位に埋設され、磁気を検知する磁気検知器と、この磁気検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断部とを備えて構成されるのが好ましい(第2発明)。
【0010】
次に、第3発明による心肺蘇生訓練システムは、
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
前記模擬胸部の所定部位に取り付けられ、心電計電極を模した模擬心電計電極と、
前記模擬心電計電極に着脱自在な端子と、
前記模擬心電計電極に前記端子が装着されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬心電計電極に前記端子が装着されていると判断したとき、所定の心電図波形を表示する心電図波形表示手段と
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
第3発明において、前記判断手段は、前記模擬心電計電極と前記端子とを含む電気的閉回路が形成されているとき、前記模擬心電計電極に前記端子が装着されていると判断する判断部を備えて構成されるのが好ましい(第4発明)。
【0012】
第1発明〜第4発明のいずれかの発明において、前記模擬胸部の圧迫の度合を検知する模擬胸部圧迫度合検知器が設けられ、この模擬胸部圧迫度合検知器からの信号に応じて前記所定の心電図波形を変化させるのが好ましい(第5発明)。
【0013】
第1発明〜第4発明のいずれかの発明において、前記模擬胸部の圧迫の度合を検知する模擬胸部圧迫度合検知器と、この模擬胸部圧迫度合検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の圧迫深度を演算する圧迫深度演算部と、この圧迫深度演算部の演算結果を表示する圧迫深度表示手段とが設けられるのが好ましい(第6発明)。
【0014】
次に、第7発明による心肺蘇生訓練システムは、
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した模擬電極パッドと、
前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられていると判断したとき、被心肺蘇生者に触れない旨の所定指示を発する指示手段と
を備えることを特徴とするものである。
【0015】
第7発明において、前記判断手段は、前記模擬電極パッドに含有される磁石と、前記模擬胸部の所定部位に埋設され、磁気を検知する磁気検知器と、この磁気検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断部とを備えて構成されるのが好ましい(第8発明)。
【0016】
第1発明〜第8発明のいずれかの発明において、前記訓練内容を設定するための訓練内容設定手段が設けられるのが好ましい(第9発明)。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によれば、模擬胸部の所定部位に模擬電極パッドが当てられると、所定の心電図波形が心電図波形表示手段によって表示されるので、ALSにおける手動式除細動器を用いたパドル誘導法での心電図所見に基づく実際的な除細動処置を学習することができる。
【0018】
第2発明の構成を採用することにより、簡易な構成で、模擬胸部の所定部位に模擬電極パッドが当てられているか否かを判断することができる。また、磁気検知器が模擬胸部の所定部位に埋設される構造が採用され、模擬電極パッドを当てるべき模擬胸部の所定部位が一見にして分らないようにされているので、より実際的であり、また訓練者は試行錯誤を経て電極パッドの胸部への正しい接当位置を学ぶことになり、訓練効果をより高めることができる。
【0019】
第3発明によれば、模擬胸部の所定部位に取り付けられた模擬心電計電極に端子が装着されると、所定の心電図波形が心電図波形表示手段によって表示されるので、ALSにおける手動式除細動器を用いたモニタ誘導法での心電図所見に基づく実際的な除細動処置を学習することができる。
【0020】
第4発明の構成を採用することにより、簡易な構成で、模擬心電計電極に端子が装着されているか否かを判断することができる。
【0021】
第5発明の構成を採用することにより、胸骨圧迫心臓マッサージを行うと正確な心電図波形を得ることができないことを訓練者に実感させることができ、除細動要不要判断の際の心電図解析中には胸骨圧迫心臓マッサージを中断すべきことを訓練者に効果的に学習させることができる。
【0022】
第6発明の構成を採用することにより、効果的な胸骨圧迫心臓マッサージ法を習得することができる。
【0023】
第7発明によれば、模擬胸部の所定部位に模擬電極パッドが当てられると、被心肺蘇生者に触れない旨の所定指示が指示手段から発せられるので、BLSにおけるAEDを用いた実際的な除細動処置を学習することができる。また、指示手段から所定指示が発せられたときに電極パッドの胸部への接当位置が正しいことを認識することができるので、胸部のどの部位に電極パッドを当てるべきかを学習することができる。
【0024】
第8発明の構成を採用することにより、簡易な構成で、模擬胸部の所定部位に模擬電極パッドが当てられているか否かを判断することができる。また、磁気検知器が模擬胸部の所定部位に埋設される構造が採用され、模擬電極パッドを当てるべき模擬胸部の所定部位が一見にして分らないようにされているので、より実際的であり、また訓練者は試行錯誤を経て電極パッドの胸部への正しい接当位置を学ぶことになり、訓練効果をより高めることができる。
【0025】
第9発明の構成を採用することにより、模擬救命救急事例をより多く体験することができ、種々の救命救急事例に対応可能な心肺蘇生法を習得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明による心肺蘇生訓練システムの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1には、本発明の一実施形態に係る心肺蘇生訓練システムの全体図が示されている。また、図2には、人体モデルの分解斜視図が示されている。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態の心肺蘇生訓練システム1は、心肺蘇生法の指導者が心肺蘇生の訓練内容等を設定するために使用するインストラクタ用パーソナルコンピュータ2(以下、「インストPC2」と称する。)と、AED(自動体外式除細動器)および手動式除細動器の両方を模した模擬除細動器3と、人体の頭部、首部、胸部および腹部をそれぞれ模した模擬頭部4a、模擬首部4b、模擬胸部4cおよび模擬腹部4dを有する人体モデル4とを備え、インストPC2と模擬除細動器3とが第1ケーブル5によって接続され、模擬除細動器3と人体モデル4とが第2ケーブル6によって接続されて構成されている。
【0029】
図2に示されるように、人体モデル4は、模擬胸部4cおよび模擬腹部4d(図1参照)の基底部を構成するベースプレート10と、ベースプレート10上に設置される腹胸部本体構造物11と、腹胸部本体構造物11を覆う腹胸部上皮構造物12と、頭部骨組構造物13aや喉頭構造物13b、食道構造物13cが一体形成されてなる頭頸部本体構造物13と、頭頸部本体構造物13を覆う頭頸部上皮構造物14とを備えている。
【0030】
頭部骨組構造物13aとベースプレート10とは、可撓性を有する一対の金属製チューブが組み合わされて構成される頸骨構造物15によって接続されており、頭部後屈顎先挙上法等による気道確保の実習が行えるようになっている。
【0031】
腹胸部本体構造物11と腹胸部上皮構造物12との間には、喉頭構造物13bに接続される気管構造物16と、気管構造物16に接続される左肺構造物17および右肺構造物18と、食道構造物13cに接続される胃構造物19とが組み込まれている。こうして、例えば、ALS(二次救命処置)で用いられる気管チューブを正確に挿管し送気した場合には、左右の肺構造物17,18が膨らんで左右胸部が挙上することを確認することができる。なお、左右の肺構造物17,18は、肺送気チューブ20を介して手動式エアポンプ21に接続されており、手動式エアポンプ21の操作によっても左右胸部を挙上させることができるようになっている。一方、気管チューブを誤って食道構造物13cに挿管し送気した場合には、胃構造物19が膨らんで腹部が挙上し誤送気(胃膨満)であることを確認することができる。また、気管チューブを片肺挿管(過送管)した場合は、右肺構造物18のみが膨らんで右胸部のみが挙上し誤送気であることを確認することができる。
【0032】
頭頸部本体構造物13と頭頸部上皮構造物14との間には、頸動脈の拍動を疑似的に出現させるために一対の拍動用スピーカ22が設けられている。
【0033】
腹胸部本体構造物11は、その下半分11aが比較的軟質の部材(例えば、低反発ウレタンフォーム)で構成される一方、その上半分11bが比較的硬質の部材(例えば、無架橋PEフォーム)で構成されている。このように硬質材と軟質材とを組み合わせて腹胸部本体構造物11を構成することにより、人体モデル4に胸骨圧迫心臓マッサージを施す際の感覚が、本物の人体に胸骨圧迫心臓マッサージを施す際の感覚と同等となるようにされている。
【0034】
腹胸部上皮構造物12の表面には、心電計電極を模した第1模擬心電計電極31、第2模擬心電計電極32および第3模擬心電計電極33がそれぞれ固着されている。ここで、第1模擬心電計電極31は右胸右肩寄りに配置され、第2模擬心電計電極32は左胸左肩寄りに配置され、第3模擬心電計電極33は左胸左脇腹寄りに配置されている。
【0035】
腹胸部本体構造物11と腹胸部上皮構造物12との間には、更に、胸骨および肋骨を模した胸部骨組構造物23が気管構造物16および左右の肺構造物17,18を覆うように組み込まれている。
【0036】
胸部骨組構造物23には、第1模擬心電計電極31、第2模擬心電計電極32および第3模擬心電計電極33の各電極に対応するように第1磁気センサ41、第2磁気センサ42および第3磁気センサ43がそれぞれ固着されている。本実施形態では、磁気センサ41〜43として、磁気作用によって抵抗値が変化する構成の磁性体磁気抵抗素子を利用した磁気センサ(MRセンサ)を採用しているが、これに限定されるものではなく、半導体ホール素子もしくは半導体磁気抵抗素子を利用した磁気センサや、電磁誘導形センサなど各種磁気センサを採用することも可能である。また、胸部骨組構造物23には、磁気作用によって接点が閉じる構成の第1リードスイッチ51および第2リードスイッチ52がそれぞれ固着されている。ここで、第1リードスイッチ51は右胸上部に対応する位置に配置され、第2リードスイッチ52は左胸下部に対応する位置に配置されている。さらに、胸部骨組構造物23には、右胸下部に対応する位置に配置される加速度センサ55(例えば、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサ)が埋め込まれている。
【0037】
図3には、模擬除細動器の概略構成図が示されている。
【0038】
模擬除細動器3は、模擬除細動器本体56と、AEDに装備され、人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した一対のAED用模擬電極パッド57と、手動式除細動器に装備されるパドルを模した一対の模擬パドル58とを備え、各AED用模擬電極パッド57がコード59を介して模擬除細動器本体56に接続されるとともに、各模擬パドル58がコード60を介して模擬除細動器本体56に接続されて構成されている。また、模擬除細動器本体56には、第1模擬心電計電極31、第2模擬心電計電極32および第3模擬心電計電極33の各模擬心電計電極に着脱自在な第1端子61、第2端子62および第3端子63がそれぞれコード64を介して接続されている。
【0039】
各AED用模擬電極パッド57は、模擬胸部4cの所定部位、より具体的には模擬胸部4cの右胸上部または左胸下部にぴったりと当てることができる所要の大きさを有する例えばゴム製のパット部材に磁石が含有されて構成されている。
【0040】
各模擬パドル58は、人の手で握ることのできる取っ手部を有する模擬パドル本体58aに、人体に除細動用の電気を通電するためのパドル用電極パッドを模したパドル用模擬電極パッド58bが組み付けられて構成されている。模擬パドル本体58aには、パドル通電ボタン65および充電開始ボタン66がそれぞれ付設されている。パドル用模擬電極パッド58bは、AED用模擬電極パッド57と同様に、模擬胸部4cの右胸上部または左胸下部にぴったりと当てることができる所要の大きさを有する例えばゴム製のパット部材に磁石が含有されて構成されている。
【0041】
各端子61,62,63は、鰐口クリップ構造の端子であって、その鰐口部分と摘み部分との中間部位には磁石67a,67b,67cが付設されている。本実施形態では、図4(a)に示されるように、第1模擬心電計電極31に第1端子(赤色端子)61を、第2模擬心電計電極32に第2端子(黄色端子)62を、第3模擬心電計電極33に第3端子(緑色端子)63をそれぞれ装着すべきものと定められている。図4(b)に示されるように、第1模擬心電計電極31に第1端子61が装着されているとき、第1端子61に付設の磁石67aからの磁気を第1磁気センサ41が検知し、この検知信号を受けて模擬除細動器本体56内の無接点スイッチ回路100aが閉じ、第1模擬心電計電極31と第1端子61とを含む電気的閉回路101aが形成されるようになっている。また、第2模擬心電計電極32に第2端子62が装着されているとき、第2端子62に付設の磁石67bからの磁気を第2磁気センサ42が検知し、この検知信号を受けて模擬除細動器本体56内の無接点スイッチ回路100bが閉じ、第2模擬心電計電極32と第2端子62とを含む電気的閉回路101bが形成されるようになっている。また、第3模擬心電計電極33に第3端子63が装着されているとき、第3端子63に付設の磁石67cからの磁気を第3磁気センサ43が検知し、この検知信号を受けて模擬除細動器本体56内の無接点スイッチ回路100cが閉じ、第3模擬心電計電極33と第3端子63とを含む電気的閉回路101cが形成されるようになっている。そして、後述する判断部85は、各電気的閉回路101a,101b,101cが形成されているとき、各模擬心電計電極31,32,33に各端子61,62,63が装着されていると判断する。
【0042】
ところで、図4(a)に示されるように、各模擬心電計電極31,32,33に各端子61,62,63が装着されている状態において、第1模擬心電計電極31と第2模擬心電計電極32との間での誘導がモニタ誘導法(3点誘導法)の第1誘導(四肢誘導法の第1誘導相当)となる。また、第1模擬心電計電極31と第3模擬心電計電極33との間での誘導がモニタ誘導法(3点誘導法)の第2誘導(四肢誘導法の第2誘導相当)となる。また、第2模擬心電計電極32と第3模擬心電計電極33との間での誘導がモニタ誘導法(3点誘導法)の第3誘導(四肢誘導法の第3誘導相当)となる。
【0043】
図3に示されるように、模擬除細動器本体56は、AED実習コース画面やALS実習コース画面等を表示する表示器70と、音声アナウンス等を発する音声スピーカ71と、AED電源ボタン72と、AED通電ボタン73と、感度切替ボタン74と、誘導切替ボタン75と、除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76と、充電開始ボタン77と、充電解除ボタン78と、パドル通電ボタン79とを備えている。なお、図3において、音声スピーカ71は模擬除細動器本体56の外部にあるように示されているが、これは説明上の都合によるものであって、実際には音声スピーカ71は模擬除細動器本体56内部に組み込まれている。
【0044】
図5には、模擬除細動器の表示器に表示されるAED実習コース画面の説明図が示されている。
【0045】
模擬除細動器本体56におけるAED電源ボタン72をONすると、画面領域80aに示されるボタンがONとなり、充電が自動的に開始される。充電が完了すると、画面領域80bに示される矢印マークが赤く点滅される。同時に、模擬除細動器本体56のAED通電ボタン73部分が点滅する。模擬除細動器本体56におけるAED通電ボタン73のON操作にて通電が実行されると、画面領域80cに示されるイラストが変化し、画面領域80bの矢印マークの点滅が終了する。
【0046】
図6には、模擬除細動器の表示器に表示されるALS実習コース画面の説明図が示されている。
【0047】
画面領域81aには、除細動の様子を示す画面が表示される。画面領域81bには、心電図波形が表示される。模擬除細動器本体56における感度切替ボタン74を押すと、画面領域81cの感度の度合が、×1、×2、×4、×1/2の順に切り替えられる。模擬除細動器本体56における誘導切替ボタン75を押すと、画面領域81dの誘導の種類が、PADDLE(パドル誘導)、LEAD I(第1誘導)、LEAD II(第2誘導)、LEAD III(第3誘導)の順に切り替えられる。画面領域81eには、模擬除細動器本体56における除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76の操作にて設定した除細動エネルギ値が表示される。模擬除細動器本体56における充電開始ボタン77またはパドル本体58aに付設の充電開始ボタン66を押すと、画面領域81fに示される数値が画面領域81eに示される値に向けて上昇され、画面領域81eに示される値に達すると、その値で点滅表示が繰り返される。画面領域81gには、洞調律での設定拍動数が表示され、ハートマークが点滅される。
【0048】
図7には、模擬除細動器本体に内蔵される情報処理装置の機能ブロック図が示されている。
【0049】
模擬除細動器本体56の内部には、マイクロコンピュータを主体に構成される情報処理装置82が組み込まれている。情報処理装置82には、インストPC2、各磁気センサ41〜43、各リードスイッチ51,52、加速度センサ55、AED電源ボタン72、AED通電ボタン73、感度切替ボタン74、誘導切替ボタン75、除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76、模擬除細動器本体56に付設の充電開始ボタン77、パドル本体58aに付設の充電開始ボタン66、パドル充電解除ボタン78、模擬除細動器本体56に付設のパドル通電ボタン79およびパドル本体58aに付設のパドル通電ボタン65からの信号が入力されるようになっている。
【0050】
情報処理装置82は、a)プログラムの実行に関わる各種指令を出力するプログラム指令部83と、b)情報処理装置82の基本動作を制御する基本動作制御プログラムや、図12および図13のフローチャートに示されるアルゴリズムを有するAED実習プログラム、図15のフローチャートに示されるアルゴリズムを有するALS実習プログラム、演算処理等に必要な各種データなどを記憶する記憶部84と、c)各種プログラムに従って入力信号に基づき判断処理を行う判断部85と、d)表示器70に表示させるべき表示内容に応じた表示信号を生成・出力する表示信号出力部86と、e)加速度センサ55からの信号に応じて振動波形データを生成する振動波形データ生成部87と、f)振動波形データ生成部87にて生成される振動波形データと記憶部84に記憶されている心電図波形データとから新たな心電図波形データを作成する心電図波形編集部88と、g)音声スピーカ71から発声させるべき音声内容に応じた音声信号を生成・出力する音声信号出力部89と、h)経過時間を計測する計時部90と、i)拍動用スピーカ22を駆動制御するためのパルスを生成・出力するパルス信号出力部91と、j)加速度センサ55からの信号に基づいて模擬胸部4cの圧迫深度を演算する圧迫深度演算部102とを備えている。記憶部84、判断部85、表示信号出力部86、振動波形データ生成部87、心電図波形編集部88、音声信号出力部89、計時部90、パルス信号出力部91および圧迫深度演算部102の各種機能部は、基本動作制御プログラム、AED実習プログラム、ALS実習プログラムがCPUで実行されることによりその機能が実現される。
【0051】
次に、インストPCでの処理内容を図8のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図8中記号「S」はステップを表わす。
【0052】
CD−ROM等の記録媒体に記録されている心肺蘇生訓練メインプログラムがインストPC2にインストールされることにより、心肺蘇生訓練メインプログラムが自動的に開始される。
【0053】
(ステップS1〜ステップS2の処理内容)
まず、インストPC2は、インストPCモニタ2a(図1参照)に、図9に示される学習選択初期画面を表示する(S1)。次いで、AED実習コースおよびALS実習コースのいずれの実習コースが選択されたかを判断する(S2)。AED実習コースが選択されたと判断した場合には、ステップS3〜ステップS6の処理を実行する。一方、ALS実習コースが選択されたと判断した場合には、ステップS7〜ステップS10の処理を実行する。
【0054】
(ステップS3の処理内容)
インストPC2は、インストPCモニタ2aに、図10に示されるAED実習コース設定画面を表示する。
【0055】
ここで、図10に示されるAED実習コース設定画面において、画面領域92aには、要除細動である否かの心電図を1回解析した後、次の解析が始まるまでの解析間隔の設定画面が表示される。画面領域92bには、除細動のシナリオの設定画面が表示される。画面領域92cには、パルス出力ON/OFFボタンが表示される。画面領域92cのパルス出力ON/OFFボタンをONにすると、パルス信号出力部91からパルス信号が拍動用スピーカ22に向けて出力され、これにより拍動用スピーカ22が駆動されて頸動脈の拍動が再現される。画面領域92dには、画面領域92bの除細動シナリオ設定画面にて設定されたシナリオを開始させるためのシナリオ開始ボタンが表示される。画面領域92eには、設定シナリオを終了させるためのシナリオ終了ボタンが表示される。画面領域92dのシナリオ開始ボタンのON信号および画面領域92eのシナリオ終了ボタンのON信号はそれぞれ情報処理装置82に送信される。
【0056】
(ステップS4〜ステップS6の処理内容)
ステップS4において、インストPC2は、図10に示されるAED実習コース設定画面での設定内容に基づくAED実習プログラムを作成する。次いで、画面領域92dのシナリオ開始ボタンがONされたか否かを判断する(S5)。画面領域92dのシナリオ開始ボタンがONされたと判断した場合には、ステップS4で作成されたAED実習プログラムを情報処理装置82に転送する(S6)。
【0057】
(ステップS7の処理内容)
インストPC2は、インストPCモニタ2aに、図11に示されるALS実習コース設定画面を表示する。
【0058】
ここで、図11に示されるALS実習コース設定画面において、画面領域93aには、表示器70に表示されている心電図と同じ種別の波形が表示されるとともに、感度切替ボタン74、誘導切替ボタン75および除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76の操作にて設定された感度の度合、誘導の種類および除細動エネルギ値がそれぞれ表示される。画面領域93bには、通電前の心電図波形種別を設定するための波形種別(通電前)設定画面が表示される。画面領域93cには、通電後の心電図波形種別を設定するための波形種別(通電後)設定画面が表示される。画面領域93dには、画面領域93cの波形種別設定画面で洞調律を選択した場合における心拍数(洞調律)を設定するための心拍数設定画面が表示される。画面領域93jの通電ボタンONでパルス60の洞調律になる。画面領域93eには、画面領域93bの波形種別(通電前)設定画面で選択した心電図波形が表示される。画面領域93fには、画面領域93cの波形種別(通電後)設定画面で選択した心電図波形が表示される。画面領域93gには、除細動有効/無効の切替ボタンが表示される。画面領域93hには、パルス出力ON/OFFボタンが表示される。この画面領域93hのパルス出力ON/OFFボタンをONにすると、パルス信号出力部91からパルス信号が拍動用スピーカ22に向けて出力され、これにより拍動用スピーカ22が駆動されて頸動脈の拍動が再現される。画面領域93iには、設定内容に基づき作成されたALS実習プログラムを情報処理装置82に転送するための転送ボタンが表示される。
【0059】
(ステップS8〜ステップS10の処理内容)
ステップS8において、インストPC2は、図11に示されるALS実習コース設定画面での設定内容に基づくALS実習プログラムを作成する。次いで、画面領域93iの転送ボタンがONされたか否かを判断する(S9)。画面領域93iの転送ボタンがONされたと判断した場合には、ステップS8で作成されたALS実習プログラムを情報処理装置82に転送する(S10)。
【0060】
次に、AED実習プログラムによる情報処理装置82の処理内容を図12および図13のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図12および図13中記号「T」はステップを表わす。
【0061】
インストPC2から転送されたAED実習プログラムが記憶部84に格納され、プログラム指令部83からの指令により、AED実習プログラムが開始される。
【0062】
(ステップT1〜ステップT3の処理内容)
まず、判断部85は、図10のAED実習コース設定画面における画面領域92dのシナリオ開始ボタンがONされたか否かを判断する(T1)。シナリオ開始ボタンがONされたと判断部85が判断したとき、表示信号出力部86は、図5のAED実習コース画面を表示させる表示信号を表示器70に向けて出力する(T2)。これにより、表示器70には、図5のAED実習コース画面が表示される。そして、音声信号出力部89は、音声アナウンス(1):「電源を入れてください」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T3)。これにより、音声スピーカ71から「電源を入れてください」の音声アナウンスが発声される。
【0063】
(ステップT4〜ステップT5の処理内容)
次いで、判断部85は、模擬除細動器本体56におけるAED電源ボタン72がON操作されたか否かを判断する(T4)。AED電源ボタン72がON操作されたと判断部85が判断したとき、音声信号出力部89は、音声アナウンス(2):「パッドを患者の胸にはってください」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T5)。これにより、音声スピーカ71から「パッドを患者の胸にはってください」の音声アナウンスが発声される。なお、AED電源ボタン72がON操作されていないと判断部85が判断している間は、音声アナウンス(1):「電源を入れてください」が音声スピーカ71から繰り返し発声される。
【0064】
(ステップT6〜ステップT8の処理内容)
次いで、判断部85は、各リードスイッチ51,52からの信号に基づいて各AED用模擬電極パッド57が模擬胸部4cの適正位置、つまり右胸上部および左胸下部に当てられているか否かを判断する(T6)。各AED用模擬電極パッド57が模擬胸部4cの適正位置に当てられていると判断部85が判断したとき、音声信号出力部89は、音声アナウンス(3):「患者から離れてください」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T7)とともに、音声アナウンス(4):「患者にさわらないでください。心電図を調べています」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T8)。これにより、音声スピーカ71から「患者から離れてください」、「患者にさわらないでください。心電図を調べています」の音声アナウンスが発声される。なお、各AED用模擬電極パッド57が模擬胸部4cの適正位置に当てられていないと判断部85が判断している間は、音声アナウンス(2):「パッドを患者の胸にはってください」が音声スピーカ71から繰り返し発声される。
【0065】
(ステップT9〜ステップT16の処理内容)
次いで、判断部85は、図10のAED実習コース設定画面の画面領域92bのシナリオ設定画面で設定されたシナリオ選択内容を判断する。シナリオ選択内容が〔要ショック→要ショック〕の場合は、ステップT10の〔要ショック→要ショック〕シナリオ処理プログラムを実行し、シナリオ選択内容が〔要ショック→ショック不要〕の場合は、ステップT11の〔要ショック→ショック不要〕シナリオ処理プログラムを実行し、シナリオ選択内容が〔ショック不要→要ショック〕の場合は、ステップT12の〔ショック不要→要ショック〕シナリオ処理プログラムを実行し、シナリオ選択内容が〔ショック不要→ショック不要〕の場合は、ステップT13の〔ショック不要→ショック不要〕シナリオ処理プログラムを実行し、シナリオ選択内容が〔任意設定〕の場合は、ステップT14の〔任意設定〕シナリオ処理プログラムを実行する。ステップT10〜ステップT14のいずれかのステップのシナリオ処理プログラム実行後において、音声信号出力部89は、音声アナウンス(10):「ショック不要」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T15)とともに、音声アナウンス(11):「胸骨圧迫と人工呼吸を続けてください」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(T16)。これにより、音声スピーカ71から「ショック不要」、「胸骨圧迫と人工呼吸を続けてください」の音声アナウンスが発声される。
【0066】
(ステップT17の処理内容)
次いで、判断部85は、図10のAED実習コース設定画面における画面領域92eのシナリオ終了ボタンがONされたか否かを判断する。シナリオ終了ボタンがONされたと判断部85が判断したとき、プログラム指令部83はAED実習プログラムを終了させる指令を発する。これにより、AED実習プログラムが終了される。なお、シナリオ終了ボタンがONされていないと判断部85が判断している間は、音声アナウンス(11):「胸骨圧迫と人工呼吸を続けてください」が音声スピーカ71から繰り返し発声される。
【0067】
次に、ステップT10〜ステップT14のシナリオ処理プログラムのうち、代表として、ステップT11の〔要ショック→ショック不要〕シナリオ処理プログラムについて、図14のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図14中記号「R」はステップを表わす。
【0068】
(ステップR1〜ステップR5の処理内容)
まず、ステップR1において、音声信号出力部89は、音声アナウンス(5):「通電が必要です」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(R1)。これにより、音声スピーカ71から「通電が必要です」の音声アナウンスが発声される。次いで、計時部90は、経過時間の計測を開始する(R2)。次いで、音声信号出力部89は、音声アナウンス(6):「ピー」「ピー」「ピー」「ピー」「ピー」を発声させる音声信号、音声アナウンス(7):「充電が完了しました。通電を実行します。患者から離れてください。点滅しているボタンを押して下さい」を発生させる音声信号、および音声アナウンス(8):「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて順次出力する(R3〜R5)。これにより、音声スピーカ71から、「ピー」「ピー」「ピー」「ピー」「ピー」、「充電が完了しました。通電を実行します。患者から離れてください。点滅しているボタンを押して下さい」、「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」の音声アナウンスが順次発声される。
【0069】
(ステップR6の処理内容)
次いで、判断部85は、図10のAED実習コース設定画面における画面領域92aの解析間隔設定画面で設定された解析間隔設定時間と、計時部90による計測時間と比較して、計測時間がその解析間隔設定時間内にあるか否かを判断する。計測時間がその解析間隔設定時間内にあると判断した場合には、ステップR7に進む。一方、計測時間がその解析間隔設定時間を超えたと判断した場合には、ステップR10に進む。
【0070】
(ステップR7〜ステップR8の処理内容)
ステップR7において、判断部85は、模擬除細動器本体56におけるAED通電ボタン73がON操作されたか否かを判断する(R7)。AED通電ボタン73がON操作されたと判断部85が判断したとき、音声信号出力部89は、音声アナウンス(11):「胸骨圧迫と人口呼吸を続けてください」を発声させる音声信号を音声スピーカ71に向けて出力する(R8)。これにより、音声スピーカ71から「胸骨圧迫と人口呼吸を続けてください」の音声アナウンスが発声される。なお、AED通電ボタン73がON操作されていないと判断部85が判断している間は、解析間隔設定時間を上限として、音声アナウンス(7):「充電が完了しました。通電を実行します。患者から離れてください。点滅しているボタンをおして下さい」と、音声アナウンス(8):「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」「ピ」とが繰り返し音声スピーカ71から発声される。
【0071】
(ステップR9〜ステップR11の処理内容)
次いで、判断部85は、図10のAED実習コース設定画面における画面領域92aの解析間隔設定画面で設定された解析間隔設定時間と、計時部90による計測時間と比較して、計測時間がその解析間隔設定時間に達したか否かを判断する。計測時間がその解析間隔設定時間に達したと判断部85が判断したとき、音声信号出力部89は、音声アナウンス(4):「患者にさわらないでください。心電図を調べています」を発声させる音声信号、および音声アナウンス(9):「通電は不要です。すぐに胸骨圧迫と人口呼吸をはじめてください」を発生させる音声信号を音声スピーカ71に向けて順次出力する(R10〜R11)。これにより、音声スピーカ71から、「患者にさわらないでください。心電図を調べています」、および「通電は不要です。すぐに胸骨圧迫と人口呼吸をはじめてください」の音声アナウンスが順次発声される。なお、計測時間が解析間隔設定時間に達していないと判断部85が判断している間は、解析間隔設定時間を上限として、音声アナウンス(11):「胸骨圧迫と人口呼吸を続けてください」が音声スピーカ71から繰り返し発声される。
【0072】
次に、ALS実習プログラムによる情報処理装置82の処理内容を図15のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図15中記号「K」はステップを表わす。
【0073】
インストPC2から転送されたALS実習プログラムが記憶部84に格納され、プログラム指令部83からの指令により、ALS実習プログラムが開始される。
【0074】
(ステップK1〜ステップK2の処理内容)
まず、表示信号出力部86は、図6のALS実習コース画面を表示させる表示信号を表示器に向けて出力する(K1)。なお、このステップK1で出力される表示信号には、画面領域81a〜81gに表示させるべき具体的な表示内容に関する信号は含まれていない。こうして、表示器70には、画面領域81a〜81gに具体的な表示内容が示されていない状態のALS実習コース画面が表示される。次いで、判断部85は、誘導切替ボタン75の操作にて設定される誘導の種類がパドル誘導であるかモニタ誘導(第1誘導、第2誘導、第3誘導)であるかを判断する(K2)。設定された誘導の種類がパドル誘導であると判断部85が判断したときには、ステップK3に進む。一方、設定された誘導の種類がモニタ誘導であると判断部85が判断したときには、ステップK4に進む。
【0075】
(ステップK3の処理内容)
ステップK3において、判断部85は、各リードスイッチ51,52からの信号に基づいて一対のパドル58におけるそれぞれのパドル用模擬電極パッド58bが模擬胸部4cの適正位置、つまり右胸上部および左胸下部に当てられているか否かを判断する。各パドル58が模擬胸部4cの適正位置に当てられていると判断部85が判断したときには、ステップK5に進む。
【0076】
(ステップK4の処理内容)
ステップK4において、判断部85は、モニタ誘導法における第1誘導(LEAD I)、第2誘導(LEAD II)および第3誘導(LEAD III)を実施するうえで、第1模擬心電計電極31、第2模擬心電計電極32および第3模擬心電計電極33の各模擬心電計電極に対して第1端子61、第2端子62および第3端子63の各端子が適正に装着されているか否か判断する。すなわち、判断部85は、各電気的閉回路101a,101b,101c(図4(b)参照)が形成されているか否かに基づいて、各模擬心電計電極31,32,33に対して装着されるべき各端子61,62,63が適正に装着されているか否かを判断する。各電気的閉回路101a,101b,101cが形成されているとき、各模擬心電計電極31,32,33に対して各端子61,62,63が適正に装着されていると判断し、ステップK5に進む。
【0077】
(ステップK5の処理内容)
ステップK5において、表示信号出力部86は、図11に示されるALS実習コース設定画面における画面領域93bの波形種別(通電前)設定画面で設定された通電前の心電図の波形データを記憶部84から読み出し、読み出した波形データに基づく表示信号を表示器70に向けて出力する。これにより、図11に示される設定内容例では、受講者が見ている表示器70の画面に、図16(a)または同図(b)に示されるような除細動が必要な心室細動(Vf)を示す心電図波形(以下、この心電図波形を「Vf波形」と称する。)が表示される。ここで、図16(a)にはパドル誘導で測定されたVf波形の一例が、同図(b)には第2誘導で測定されたVf波形の一例が、それぞれ示されている。この場合、受講者は、表示器70に表示されたVf波形から除細動が必要か否かを判断することになる。なお、受講者が見ている表示器70の画面に、除細動が必要なpulseless VTやvery fine Vfを示す心電図波形(いずれも図示省略)を表示させることも勿論可能である。
【0078】
(ステップK6〜ステップK8の処理内容)
次いで、判断部85は、除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76の操作にて除細動エネルギが設定されたか否か(K6)、模擬除細動器本体56に付設の充電開始ボタン77またはパドル本体58aに付設の充電開始ボタン66がON操作されたか否か(K7)、模擬除細動器本体56に付設のパドル通電ボタン79またはパドル本体58aに付設のパドル通電ボタン65がON操作されたか否か(K8)を順次判断する。
【0079】
(ステップK9の処理内容)
そして、除細動エネルギ設定ロータリスイッチ76の操作にて除細動エネルギが設定され、充電開始ボタン66または充電開始ボタン77がONされ、パドル通電ボタン65またはパドル通電ボタン79がONされたと判断部85が判断したとき、表示信号出力部86は、図11に示されるALS実習コース設定画面における画面領域93cの波形種別(通電後)設定画面で設定された通電後の心電図の波形データを記憶部84から読み出し、読み出した波形データに基づく表示信号を表示器70に向けて出力する。これにより、図11に示される設定内容例では、受講者が見ている表示器70の画面に、図17(a)または同図(b)に示されるような洞調律を示す心電図波形(以下、この心電図波形を「洞調律波形」と称する。)が表示され、また心拍数が表示されるとともにハートマークが点滅される。なお、図17(a)にはパドル誘導で測定された洞調律波形の一例が、同図(b)には第2誘導で測定された洞調律波形の一例が、それぞれ示されている。なお、本実施形態では、図11に示されるALS実習コース設定画面の設定内容例のように、通電後の心電図波形として洞調律波形が選択されている場合、かかる洞調律波形の表示器70への表示と同期させて、パルス信号出力部91が、図11のALS実習コース設定画面における画面領域93dの心拍数設定画面で設定された心拍数を記憶部84から読み出し、読み出した設定心拍数データに基づくパルス信号を拍動用スピーカ22に向けて出力する。これにより、図11に示されるALS実習コース設定画面の設定内容例では、人体モデル4において、心拍数60bpm相当の頸動脈の拍動が疑似的に出現される。
【0080】
以上に述べた本実施形態の心肺蘇生訓練システム1によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)パドル誘導が選択された状態で、模擬胸部4cの右胸上部および左胸下部にそれぞれパドル用模擬電極パッド58bが当てられると、図11に示されるALS実習コース設定画面における画面領域93bの波形種別(通電前)設定画面で設定された通電前心電図波形が表示器70に表示されるので、ALSにおける手動式除細動器を用いたパドル誘導法での心電図所見に基づく実際的な除細動処置を学習することができる。
(2)モニタ誘導法における第1誘導、第2誘導または第3誘導を実施するうえで、第1模擬心電計電極31、第2模擬心電計電極32および第3模擬心電計電極33の各模擬心電計電極に対する第1端子61、第2端子62および第3端子63の各端子の装着位置が適正であるときに、図11に示されるALS実習コース設定画面における画面領域93bの波形種別(通電前)設定画面で設定された通電前心電図波形が表示器70に表示されるので、ALSにおける手動式除細動器を用いたモニタ誘導法での心電図所見に基づく実際的な除細動処置を学習することができる。
(3)模擬胸部4cの右胸上部および左胸下部にそれぞれAED用模擬電極パッド57が当てられると、被心肺蘇生者に触れない旨の所定指示として、音声アナウンス(4):「患者にさわらないでください。心電図を調べています」が音声スピーカ71から発声されるので、BLSにおけるAEDを用いた実際的な除細動処置を学習することができる。また、音声スピーカ71から音声アナウンス(4)が発せられたときにAED用模擬電極パッド57の胸部への接当位置が正しいことを認識することができるので、胸部のどの部位に電極パッドを当てるべきかを学習することができる。
(4)各AED用模擬電極パッド57(または各パドル用模擬電極パッド58b)に含有される磁石の磁気作用を受けて各リードスイッチ51,52から出力されるON信号に基づいて模擬胸部4cの右胸上部および左胸下部のそれぞれにAED用模擬電極パッド57(またはパドル用模擬電極パッド58b)が当てられているか否かを判断部85が判断するようにされているので、簡易な構成で、模擬胸部4cの適正位置に各AED用模擬電極パッド57(または各パドル用模擬電極パッド58b)が当てられているか否かを判断することができる。
(5)各リードスイッチ51,52が模擬胸部4cの右胸上部および左胸下部に埋設される構造が採用され、各AED用模擬電極パッド57(または各パドル用模擬電極パッド58b)を当てるべき模擬胸部4cの適正位置が一見にして分らないようにされているので、より実際的であり、また訓練者は試行錯誤を経て各AED用模擬電極パッド57(または各パドル用模擬電極パッド58b)の胸部への正しい接当位置を学ぶことになり、訓練効果をより高めることができる。
(6)加速度センサ55からの信号に基づいて振動波形データ生成部87が振動波形データを生成し、この振動波形データ生成部87にて生成される振動波形データと記憶部84に記憶されている心電図波形データとから心電図波形編集部88が新たな心電図波形データを作成し、この新たな心電図波形データに基づく表示信号を表示信号出力86が表示器70に向けて出力することにより、図18に示されるように、胸部圧迫の影響による心電図波形変化(図中記号A矢印で示される波形部分)を盛り込んだ心電図波形を表示器70に表示させることができるので、胸骨圧迫心臓マッサージを行うと正確な心電図波形を得ることができないことを訓練者に実感させることができ、除細動要不要判断の際の心電図解析中には胸骨圧迫心臓マッサージを中断すべきことを訓練者に効果的に学習させることができる。
(7)インストPC2にてAED実習コースの訓練内容やALS実習コースの訓練内容を設定することができるようにされているので、受講者に模擬救命救急事例をより多く体験させることができ、受講者は種々の救命救急事例に対応可能な心肺蘇生法を習得することができる。
【0081】
さらに、本実施形態の心肺蘇生訓練システム1においては、効果的な胸骨圧迫心臓マッサージ法を受講者に習得させるために、人体モデル4に対して胸骨圧迫心臓マッサージが施されているとき、加速度センサ55からの信号に基づいて圧迫深度演算部102が模擬胸部4cの圧迫深度を演算し、その演算結果に基づいて振動波形データ生成部87が振動波形データを生成し、この振動波形データに基づく表示信号を表示信号出力86が表示器70に向けて出力することにより、図19に示されるように、胸骨圧迫深度の時間的変化の様子を表わす波形103を表示器70(ALS実習コース画面の画面領域81b:図6参照)に表示させることができるようにされている。なお、波形103は、ALS実習コース設定画面の画面領域93a(図11参照)にも表示される。
図19において、破線ラインLは、胸骨圧迫が完全に解除されたときの基準を示す胸骨圧迫解除ラインであり、破線ラインLは、胸骨圧迫の適正深度(本例では40mm)を示す適正圧迫深度ラインである。
図19に示される波形103から以下のことが分かる。
(1)時刻t−t間の胸骨圧迫動作は圧迫が不十分である。
(2)時刻tおよび時刻tの胸骨圧迫動作は圧迫が不十分である。
(3)時刻t−t間の胸骨圧迫動作は圧迫解除が不十分である。
(4)時刻t−t間の胸骨圧迫動作は圧迫および圧迫解除が共に不十分である。
まとめると、約18秒間に約30回の胸骨圧迫動作中、10回程は適正深度40mmに達しておらず、圧迫解除(リコイル)も不十分なものが9回程みられる。
受講者が行った胸骨圧迫心臓マッサージの胸骨圧迫深度の時間的変化の様子を表わす波形103を基にして、インストラクタは良かった点、改善すべき点を受講者に適切に指導することができるとともに、受講者は胸骨圧迫の力加減や圧迫動作の最適ペース(約100回/1分:2005年救急蘇生ガイドライン)、圧迫と圧迫解除のバランス(1:1)を効率良く体得することができる。
【0082】
なお、磁気センサ41〜43およびリードスイッチ51,52が本発明における「磁気検知器」に相当する。また、加速度センサ55が本発明における「模擬胸部圧迫度合検知器」に相当する。また、表示信号出力部86および表示器70を含む構成が本発明における「心電図波形表示手段、圧迫深度表示手段」に相当する。また、音声信号出力部89および音声スピーカ71を含む構成が本発明における「指示手段」に相当する。また、インストPC2が本発明における「訓練内容設定手段」に相当する。
【0083】
本実施形態においては、各電気的閉回路101a,101b,101c(図4(b)参照)が形成されているとき、各模擬心電計電極31,32,33に各端子61,62,63が装着されていると判断部85が判断するようにされているが、図20に示されるように、各電気的閉回路104a,104b,104cが形成されているとき、各模擬心電計電極31,32,33に各端子61,62,63が装着されていると判断部85が判断するようにしてもよい。ここで、図20において、第1模擬心電計電極31に第1端子61が装着されているとき、第1模擬心電計電極31と第1端子61とが模擬除細動器本体56内の中継回路105aを介して電気的に閉じ、そして第1模擬心電計電極31と第1端子61とを含む電気的閉回路104aが形成されるようになっている。また、第2模擬心電計電極32に第2端子62が装着されているとき、第2模擬心電計電極32と第2端子62とが模擬除細動器本体56内の中継回路105bを介して電気的に閉じ、そして第2模擬心電計電極32と第2端子62とを含む電気的閉回路104bが形成されるようになっている。また、第3模擬心電計電極33に第3端子63が装着されているとき、第3模擬心電計電極33と第3端子63とが模擬除細動器本体56内の中継回路105cを介して電気的に閉じ、そして第3模擬心電計電極33と第3端子63とを含む電気的閉回路104cが形成されるようになっている。
【0084】
以上、本発明の心肺蘇生訓練システムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る心肺蘇生訓練システムの全体図
【図2】人体モデルの分解斜視図
【図3】模擬除細動器の概略構成図
【図4】モニタ誘導法の端子装着説明図
【図5】AED実習コース画面の説明図
【図6】ALS実習コース画面の説明図
【図7】情報処理装置の機能ブロック図
【図8】心肺蘇生訓練メインプログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図9】学習選択初期画面の説明図
【図10】AED実習コース設定画面の説明図
【図11】ALS実習コース設定画面の説明図
【図12】AED実習プログラムの処理内容を説明するフローチャート(1)
【図13】AED実習プログラムの処理内容を説明するフローチャート(2)
【図14】〔要ショック→ショック不要〕シナリオ処理プログラムの内容を説明するフローチャート
【図15】ALS実習プログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図16】ALS実習コース画面の通電前表示内容を例示する図
【図17】ALS実習コース画面の通電後表示内容を例示する図
【図18】ALS実習コース画面に胸部圧迫の影響を含む心電図波形が表示されている様子を表わす図
【図19】胸骨圧迫心臓マッサージ実施時における胸骨圧迫深度の時間的変化の一例を表わす図
【図20】端子の適正装着を判断する手段の別態様例を説明する図
【符号の説明】
【0086】
1 心肺蘇生訓練システム
2 インストラクタ用パーソナルコンピュータ
3 模擬除細動器
4 人体モデル
4c 模擬胸部
31〜33 模擬心電計電極
41〜43 磁気センサ
51,52 リードスイッチ
55 加速度センサ
57 AED用模擬電極パッド
58b パドル用模擬電極パッド
61〜63 端子
67a〜67c 磁石
70 表示器
85 判断部
86 表示信号出力部
89 音声信号出力部
102 圧迫深度演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した模擬電極パッドと、
前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられていると判断したとき、所定の心電図波形を表示する心電図波形表示手段と
を備えることを特徴とする心肺蘇生訓練システム。
【請求項2】
前記判断手段は、前記模擬電極パッドに含有される磁石と、前記模擬胸部の所定部位に埋設され、磁気を検知する磁気検知器と、この磁気検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断部とを備えて構成される請求項1に記載の心肺蘇生訓練システム。
【請求項3】
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
前記模擬胸部の所定部位に取り付けられ、心電計電極を模した模擬心電計電極と、
前記模擬心電計電極に着脱自在な端子と、
前記模擬心電計電極に前記端子が装着されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬心電計電極に前記端子が装着されていると判断したとき、所定の心電図波形を表示する心電図波形表示手段と
を備えることを特徴とする心肺蘇生訓練システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記模擬心電計電極と前記端子とを含む電気的閉回路が形成されているとき、前記模擬心電計電極に前記端子が装着されていると判断する判断部を備えて構成される請求項3に記載の心肺蘇生訓練システム。
【請求項5】
前記模擬胸部の圧迫の度合を検知する模擬胸部圧迫度合検知器が設けられ、この模擬胸部圧迫度合検知器からの信号に応じて前記所定の心電図波形を変化させる請求項1〜4のいずれかに記載の心肺蘇生訓練システム。
【請求項6】
前記模擬胸部の圧迫の度合を検知する模擬胸部圧迫度合検知器と、この模擬胸部圧迫度合検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の圧迫深度を演算する圧迫深度演算部と、この圧迫深度演算部の演算結果を表示する圧迫深度表示手段とが設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の心肺蘇生訓練システム。
【請求項7】
予め設定される訓練内容に沿って心肺蘇生を訓練するように構成される心肺蘇生訓練システムであって、
人体の胸部を模した模擬胸部を有する人体モデルと、
人体に除細動用の電気を通電するための電極パッドを模した模擬電極パッドと、
前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が、前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられていると判断したとき、被心肺蘇生者に触れない旨の所定指示を発する指示手段と
を備えることを特徴とする心肺蘇生訓練システム。
【請求項8】
前記判断手段は、前記模擬電極パッドに含有される磁石と、前記模擬胸部の所定部位に埋設され、磁気を検知する磁気検知器と、この磁気検知器からの信号に基づいて前記模擬胸部の所定部位に前記模擬電極パッドが当てられているか否かを判断する判断部とを備えて構成される請求項7に記載の心肺蘇生訓練システム。
【請求項9】
前記訓練内容を設定するための訓練内容設定手段が設けられる請求項1〜8のいずれかに記載の心肺蘇生訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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