心臓モニタシステム
処理システムを用いて患者の心臓機能を分析する方法である。上記方法は、第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程を含む。上記方法は、患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程(110)を含む。これに続いて、複数の連続する段階に対して、上記方法は、徴候データと一つ又は複数の印加された信号とから複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程(120)と、インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程(130)とを含む。少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータが利用され、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的パラメータをモニタする方法及び装置に関し、特に生体電気インピーダンスを利用して被験者の心肺機能を計測する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行技術の援用は、自認ではなく且つ自認と解されるべきではなく、先行技術が一般的な周知事実となることを示唆するものではなく且つ示唆するものと解されるべきではない。
【0003】
2020年までに、冠状動脈性心臓病は世界最大の公衆衛生問題となると見積もられている。従って、冠状動脈性心臓病及び他の循環器疾患の対処は、近未来に世界中で非常に重大な健康上の及び経済上の負担となる。
【0004】
心拍出量(CO)は、(リットル/分で計測される)心室により射出される毎分の血液量と定義され得るが、身体の代謝要求に支配され、従って循環系全体の状況を反映する。この理由のため、心拍出量の計測は、心臓疾患を有する患者、若しくは循環器疾患や他の医療処置の様々な状態から回復しつつある患者についての、血流力学モニタの重要形態である。
【0005】
心臓機能を判断するための従来開発されてきた現存技術の一つは、インピーダンスカージオグラフィ(IC)として周知である。インピーダンスカージオグラフィは、皮膚面に配置された一連の電極を利用して患者身体の電気的インピーダンスを計測することを含む。患者皮膚面の電気的インピーダンスの変化は、心周期、従って、心拍出量及び他の心臓機能の計測に関連する組織用量の変化を判定するのに利用される。
【0006】
インピーダンスカージオグラフィにおける問題は、胸部基礎インピーダンスが個人間で相当に異なり、大人に対して引用される範囲は50−100kHzの間の周波数で20−48Ωとなる、ということである。心周期によるインピーダンスの変化は、基礎インピーダンスの相対的に僅かな量(0.5%)に過ぎず、ノイズ比に対して低い信号を伴う非常に脆弱な信号に過ぎない。
【0007】
従って、計測を解釈し得る複雑な信号処理が要求されている。
【0008】
このような例が、特許文献1に記載されている。この例では、印加電流に対する患者の反応が、図1に示される等価回路を利用してモデル化されている。等価回路は以下のようなものである。
・細胞膜のリアクタンスが無限大である限りにおいて、直流回路は細胞外液を介して伝導する。
・印加される交流電流は、印加信号の周波数に依存する比で細胞外及び細胞内経路を介して電導する。
【0009】
従って、等価回路は、細胞内経路内の細胞膜のキャパシタンスを表すキャパシタンスCと、細胞内流体の抵抗を表す抵抗RIとから形成される細胞内分岐を含む。回路は、組織を介する伝導経路を表す抵抗REから形成される細胞外分岐も含む。
【0010】
特許文献1に記載の発明は、心周期は患者胸部内の細胞外液全体にインパクトを生じ、従って心臓機能はインピーダンスの細胞外要素の変化を考慮して導出され得るという仮定に基づいて、動作するものである。このことは、複数の種々の周波数で交流電流を印加することによって達成される。インピーダンスは、これら周波数の夫々で計測され、推定して抵抗REに対応するゼロ印加周波数でのインピーダンスを決定する。これは細胞外液要素にのみ起因すると判断され、一回拍出量などの心臓機能の属性を決定するのに利用され得る。
【0011】
しかしながら、実際にはゼロ周波数でのインピーダンスは細胞外液にのみ起因するものではなく多数の他の要因に影響される。特に、細胞は完全なキャパシタとして作用せず、従って細胞内液がゼロ印加周波数でのインピーダンスに寄与してしまう。
【0012】
特許文献1に記載の発明の更なる成果は、“コールモデル”を利用してゼロ印加周波数でのインピーダンスをプロセスが決定することである。しかしながら、ここでもシステムの理想化された振る舞いを想定しており、患者の生体インピーダンス反応を正確にモデル化していない。このことにより、これら技術を利用して決定される心臓パラメータは限定的な正確さしか備えない傾向にある。
【特許文献1】国際特許出願WO2004/032738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
生物学的パラメータをモニタする方法及び装置において、計測を解釈し得る複雑な信号処理が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の形態では、本発明は、患者の心臓機能を分析する方法であって、処理システムにて、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を含む方法を、提示する。
【0015】
通常、インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータである。
【0016】
通常、上記方法は、処理システムにて、
(a)インピーダンス瞬時値を用いて、少なくとも一つのインピーダンス値を決定する工程と、
(b)少なくとも一つのインピーダンス値と所定の方程式を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を更に含む。
【0017】
通常、所定の方程式が、以下の数3である。
【数3】
【0018】
通常、少なくとも一つのインピーダンス値が、
(a)ゼロ周波数におけるインピーダンス、
(b)無限大周波数におけるインピーダンス、及び、
(c)特徴的な周波数におけるインピーダンス
のうちの少なくとも一つを含む。
【0019】
通常、上記方法は、処理システムにて、CPEモデルを用いて、細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程を含む。
【0020】
通常、上記方法は、処理システムにて、一つの段階で決定されるインピーダンスに対して、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)適合された関数を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を含む。
【0021】
通常、上記方法は、処理システムにて、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)外れ値インピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(c)外れ値インピーダンス瞬時値に対して、
(i)インピーダンス瞬時値を除去する工程と、
(ii)関数を再計算する工程と、
(iii)再計算された関数がインピーダンス瞬時値に対してよりよく適合するならば、再計算された関数を利用する工程と
を含む。
【0022】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、適合された関数を用いて一つ又は複数のインピーダンス値を決定する工程を更に含む。
【0023】
通常、関数が、
(a)アルゴリズムに適合する曲線を用いて適合された多項式と、
(b)ヴェッセルプロットに基づく関数と
のうちの少なくとも一つを含む。
【0024】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、
(a)一つ又は複数の患者パラメータの徴候を判定する工程と、
(b)一つ又は複数の患者パラメータを用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を更に含む。
【0025】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、以下の数4を用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程を含み、以下数4では、
(i)COは心拍出量(リットル/分)を示し、
(ii)k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数であり、
(iii)c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数であり、
(iv)Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスであり、
(v)TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔であり、
(vi)TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間であり、
(vii)n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である。
【数4】
【0026】
通常、上記方法は、
患者に設置される第2のセットの電極により計測される電気信号を処理して、
(a)呼吸効果の除去、
(b)ECG信号の抽出、及び、
(c)不要信号の除去
のうち少なくとも一つを実施する工程を、更に含む。
【0027】
通常、上記方法は、
処理システムにて、
(a)インピーダンス値、
(b)一つ又は複数の細胞内インピーダンスパラメータ値、及び、
(c)心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータ
のうち少なくとも一つの徴候を表示する工程を、更に含む。
【0028】
通常、上記方法は、
処理システムにて、
(a)1回拍出量、
(b)心拍出量、
(c)心係数、
(d)1回拍出係数、
(e)体血管抵抗/係数、
(f)加速度、
(g)加速度係数、
(h)速度、
(i)速度係数、
(j)胸部液体内容物、
(k)左心室駆出時間、
(l)駆出前期間、
(m)収縮時間率、
(n)左心仕事量/係数、
(o)心拍、及び、
(p)動脈圧
のうちの少なくとも一つを判定する工程を、更に含む。
【0029】
通常、細胞内インピーダンスパラメータが、心周期における患者血液の細胞成分の再方向付けにより生じる抵抗変化を少なくともモデル化する。
【0030】
第2の形態では、本発明は、患者の心臓機能を分析する装置であって、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データ及び一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
のための処理システムを含む装置を提示する。
【0031】
通常、インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータである。
【0032】
通常、上記装置は、
(a)患者に印加される電気信号を生成するための処理システムに結合する信号ジェネレータと、
(b)患者における電気信号を感知するセンサと
を更に含む。
【0033】
通常、信号ジェネレータが電流ジェネレータである。
【0034】
通常、センサが電圧センサである。
【0035】
通常、上記装置は、
信号ジェネレータと患者へのセンサとを結び付ける複数の電極を含む。
【0036】
通常、処理システムが、無線接続を介して、信号ジェネレータとセンサのうちの少なくとも一つと結び付く。
【0037】
通常、センサがアナログからデジタルへのコンバータを含む。
【0038】
通常、処理システムが、本発明の第1の形態の方法を実行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0040】
患者に関する心臓機能のパラメータを判定するプロセスの例を、図2を参照しつつ説明する。
【0041】
特にステップ100において、交流電気信号が様々な周波数fiで患者に印加され、ステップ110では、患者への電気信号が夫々のfiで検出される。印加され検出される信号の性質は、以下に示すように実装内容に依存するものである。
【0042】
ステップ120では、第1の段階tnで個々の周波数fiのインピーダンスZiが決定される。ステップ130では、インピーダンスは段階tnでの細胞内インピーダンスパラメータを決定するのに利用される。一つの例では、このことはCPE(コンスタント位相エレメント)などの適切なモデルを用いて達成され、これらについては後で詳述する。
【0043】
完全な心周期がステップ140で分析されたと判定されるまで、後続の複数の段階tn、tn+1、tn+2に対して上記が繰り返される。このことは、適切なECG信号をモニタすることによって、若しくは、専ら十分な段階を処理し確実に心周期を検出することによって、達成される。
【0044】
ステップ150では、細胞内インピーダンスパラメータ、及びある例では細胞内インピーダンスパラメータの変化が、心臓パラメータを決定するのに利用される。
【0045】
心周期の間の胸部のインピーダンス変動は、血液量の変化及び血液自身のインピーダンスの変化の両方に依存している、ということを、この技術は考慮している。
【0046】
血液は、プラズマと称される伝導性流体内の、抵抗値が高い赤血球と他の細胞との緩衝液である。静止血液の赤血球は、図3Aに示すようにランダムに向いており、従って、静止血液の抵抗は等方性である。両凹面形状により、赤血球は、図3Bに示すように軸を流れ方向に平行にして、血液の流れの中で整列する傾向がある。従って、流れる血液の抵抗は、非等方性である。
【0047】
抵抗の非等方性は、容器に平行な電流と比べて、容器の軸に垂直な電流に対してより長い実効的な経路長のためである。結果として、細胞内流体の抵抗は、赤血球の方向に依存して変化するのであり、従って血液の流れに依存する。
【0048】
更に、赤血球の方向は流れる血液内の粘性力に影響されるから、非等方性の程度は剪断率に依存する。結果として、抵抗は流速にも依存する。
【0049】
従って、先行技術のように細胞外インピーダンスパラメータを利用するのではなく、細胞内パラメータに基づいて心臓機能を判定することにより、上記のことを考慮することが可能である。図1に示す等価回路を用いることによって、更に、細胞内分岐の容量C及び抵抗RIを基にしてインピーダンスパラメータを決定するためにインピーダンス計測を用いることによって、このことは達成可能である。
【0050】
従って、この場合では、例えばR0及びR∞の値を決定しそれらを用いて適切な数学的技法でコール方程式を解くことによって、細胞内抵抗RI及び容量Cの値を決定するために、インピーダンス計測が利用され得る。
【0051】
しかしながら、この場合、一定値として抵抗率をモデル化することは、患者のインピーダンス反応を正確に反映しないのであり、特に、赤血球の方向、若しくは他の緩和効果の変化を正確にモデル化しない。
【0052】
血液の電気伝導性をよりよくモデル化するために、改良されたCPEベースのモデルが、図4に関して示されるように、用いられ得る。
【0053】
この例では、特性インピーダンスを正確に決定しインピーダンスへの心臓効果の寄与を正確に解釈するために、図4に示すように自由伝導パラレルモデルに基づく等価回路が用いられる。このモデルは、直列形態で形成可能であり、パラレルモデルが本明細書では例示で示されている。
【0054】
この例では、回路は、細胞外流体を介する電流の伝導性を表す細胞外伝導体G0を含む。細胞内伝導経路は、周波数依存伝導体及び周波数依存容量の直列接続として表される一定位相素子(CPE)を含む。
【0055】
以下の2式は一般的なCPEを定義する。
【数5】
【数6】
ここで、YCPEはCPEのアドミッタンスである。ΦcpeはCPEの位相である。
【0056】
この式で、τは周波数スケールファクタを表し、ωτは無次元である。
【0057】
パラメータmは、周波数スケールファクタτと共に、CPEのアドミッタンスYCPEの周波数依存の程度を定義する。生体組織に対してmは0≦m≦1の範囲であることが知られている。
【0058】
一つの例では、CPEの他の形態も用いられ得るが、CPEはフリッケ(Fricke)の法則(CPEF)に従う。フリッケのCPEに対して指数の符号α(m=α)を利用することが、恒例である。
【0059】
緩和理論と互換性のあるモデルを作るために、直列の理想の抵抗は、特徴的な時定数τZが依存性パラメータとなるように、自由抵抗パラメータRvarに変えられる。
【0060】
結果として、回路の伝導性は以下のように示される。
【数7】
【数8】
ここで、τYmは、新しい特徴的な時間定数である。サブスクリプトmは、前の変数から新しい変数を識別するのに利用され、当業者に周知である用語と一致するものである。
【0061】
名目上の固定値を時間定数τyとすることにより、以下の式を利用してR1を計算することによりCPEを追うことが可能になる。
【数9】
【0062】
この例では、可変の抵抗パラメータRvarは赤血球の方向に依存し、結果として、Rvarの変化は患者内部の血液の流れ速度を判定するのに利用され得る。従って、心拍出量などに関する情報を判定することが可能になる。
【0063】
患者の生体電気インピーダンスの分析を行い心臓機能を判定するのに適切な装置の例を、図5を参照して、以下説明する。
【0064】
図に示されるように、装置は、プロセッサ20を有する処理システム10、メモリ21、インプット/アウトプット(I/O)デバイス23、及びバス24を介して結合されるインタフェース23を含む。処理システムは、図に示されるように信号ジェネレータ11及びセンサ12と結合する。利用の際には、信号ジェネレータ11とセンサ12は図のような個々の電極13、14、15、16に結合する。
【0065】
利用の際、処理システム10は、制御信号を生成するように調整され、この制御信号により信号ジェネレータ11は電極13、14を介して患者17に印加される交流信号を生成する。センサ12は患者117における電圧若しくは電流を判定し、処理システム10に適切な信号を送る。
【0066】
従って、処理システム10は、適切な制御信号を生成し電圧データを解釈しこれにより患者の生体電気インピーダンスを決定し場合によっては心臓パラメータを決定するのに、適切である処理システムであればどのようなものでもよい。
【0067】
従って処理システム10は、ラップトップ、デスクトップ、PDA、スマートホンなどの、適切にプログラム搭載されたコンピュータシステムであればよい。一方で、処理システム10は専用ハードウエアから形成されてもよい。同様に、I/Oデバイスは、タッチスクリーン、キーパッド、及びディスプレイなどの適切なものであればよい。
【0068】
処理システム10、信号ジェネレータ11及びセンサ12は、共通のハウジング内に統合されてよく、従って統合デバイスを形成してもよい。一方で、処理システム10は、優先若しくは無線接続を介して、信号ジェネレータ11及びセンサ12に接続してもよい。このことにより、処理システム10は、信号ジェネレータ11及びセンサ12に遠隔で繋がることができる。処理システムが患者17と遠隔して位置するならば、信号ジェネレータ11及びセンサ12は、患者17の側でユニットで設けられてもよく、又は患者17が身にまとってもよい。
【0069】
実際、外側の対の電極13、14は、患者の胸部及び首部に配置され、交流信号が2−2000kHzの範囲で、同時に若しくは連続で、複数の周波数(2つで十分であるが、少なくとも3つであるのが好ましく、5つ若しくはそれ以上が特に好ましい)で加えられる。しかしながら、印加される波形はこの範囲外のより多くの周波数成分を含んでもよい。
【0070】
好適な形態では、印加される信号は、最大許容患者補助電流を超えることがないようにクランプされた電圧源からの周波数豊かな電圧である。信号は、一定電流、インパルス関数、若しくは、最大許容患者補助電流を超えることがないように電流が計測される一定電圧信号の、いずれであってもよい。
【0071】
電位差及び/又は電流は、内側の対の電極15、16の間で計測される。得られた信号及び計測された信号は、印加される周波数の各々での信号の重ね合わせと、ECGなどの人体で生成される電位である。更に、内側の対の電極間の距離が計測され記録されてもよい。同様に、伸長、体重、年齢、性別、健康状態などの患者に関する他のパラメータが記録されてもよく、現在投薬などの他の情報も記録されてもよい。
【0072】
獲得された信号は復調され、印加された周波数でのシステムのインピーダンスを得る。復調の適切な一つの方法は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを利用して時間ドメインを周波数ドメインに変換することである、計測された信号のウインドウを要求しない別の技術は、スライドウインドウFFTである。他の適切なデジタル及びアナログ復調技術が当業者に周知である。
【0073】
インピーダンス若しくはアドミタンス計測は、記録された電圧と電流信号を比較することによって、各々の周波数で信号から決定される。復調アルゴリズムは、個々の周波数において振幅信号と位相信号を生成する。
【0074】
患者の生体電気インピーダンスを計測しこれを解析する処理の例を、図6A〜図6Cを参照して詳しく説明する。
【0075】
ステップ200では、処理システム10は、時間周期Tに対して複数周波数fiで患者17に電流信号を信号ジェネレータ11が与えるように仕向ける所定の制御信号を生成する。患者17に与えられる電流信号は、各々対応する周波数fiで複数の信号を重ね合わせることにより、連続して若しくは同時に、複数周波数fiで与えられてよい。
【0076】
制御信号は通常メモリ21に格納されるデータに従って生成されるのが好ましく、このことにより、多数の種々の電流シーケンスが利用され得ることになり、これらはI/Oデバイス22若しくは別の適切な機構によって選択されるものとなる。
【0077】
ステップ210では、センサ12は患者17における電圧を計測する。ここで、電圧信号は通常アナログ信号であり、センサ12は、アナログデジタルコンバータ(図示せず)を利用して、これらをデジタル化するように動作する。
【0078】
ステップ220では、処理システム10は、信号ジェネレータ11及びセンサ12からの信号をサンプル化し、これにより患者17における電流及び電圧を判定する。
【0079】
ステップ230では、フィルタが呼吸効果を除去する電圧信号を選択的に印加する。この呼吸効果は通常、患者の呼吸速度に一致する非常に低い周波数要素を有する。実装内容によるがセンサ12若しくは処理システム10により、フィルタが達成されてもよい。
【0080】
ステップ240では、ECGベクトルが、電圧信号から選択的に抽出される。ECG信号が通常、0Hzから100Hzの領域の周波数を有し、インピーダンス信号が5kHzから1MHzの領域にあるので、このことは為され得る。従って、ECG信号は、複合、フィルタリングなどの適切な技術により抽出されればよい。
【0081】
ステップ250では、信号は付加的な処理を受ける。例えば、印加された周波数の信号のみがインピーダンス判定で利用されることを保証するために更に信号をフィルタにかけることにより、このことは為される。このことにより、要求される処理の量を減らすだけでなく、ノイズの影響も減らせ得る。
【0082】
ステップ260では、電流及び電圧信号は段階tnでサンプルし各々の周波数fiにおけるインピーダンスZiを決定する。
【0083】
ステップ270では、関数がインピーダンス値に適合される。
【0084】
この例が図7に示され、図7は、周波数に対してプロットされたインピーダンスデータ及び関数の様子の例を示す。プロットは例示の目的のためだけのものであり、実際には処理システム10は必ずしもプロットを生成するわけではない。図7に示されるインピーダンスプロットに対する周波数の場合、関数は通常多項式であり、実際にこの例では6次多項式である。
【0085】
一方で、以下に詳細に説明するが、図8に示すようにヴェッセルプロットが利用されてもよい。
【0086】
実際には関数をデータに正確に適合するには、ノイズ除去が必要であり得る。例えば、最初に関数を計測データに適合させデータセットから外れ値ポイントを系統的に取り除き、更に関数を減じられたデータセットに再び適合させることによって、ある周波数のノイズ除去が実施され得ることになる。
【0087】
従って、ステップ280では、決定された関数から所定の距離より大きい位置にあるポイントと見なされる外れ値ポイントが存在するかどうか判定するように、処理システム10は動作する。
【0088】
標準的な数学的技術を用いて、利用関数、及び外れ値ポイントの判定が獲得され得ることがわかる。外れ値ポイントが存在すると判定されると、ステップ290にてこれらがデータセットから除去され新しい関数が残余の値に適合される。ステップ290にて、処理システム10は適合内容が改善されたかどうか判定し、もしそうであるならば外れ値ポイントはデータセットから恒久的に排除され、新しい関数がステップ310で評価される。データに影響する外れ値ポイントが除去されるまで、このことは繰り返される。
【0089】
ステップ300にて適合内容が改善されていないと判定されれば、外れ値は残りステップ320で従前の関数が利用される。
【0090】
外れ値が無ければ、若しくは外れ値がデータセットから排除されてしまえば、プロットが利用され、決定された関数を用いてR0及びR∞からの値を決定する。
【0091】
一つの例では、関数が利用されてR0及びR∞を計算する。一方で、このことが利用されて特徴的な周波数でのインピーダンスを決定し得る。
【0092】
例えば、図7に示す関数の場合、R∞は、図7の曲線上の疑似プラトー、即ち相対的に平坦な部位の開始におけるインピーダンスを見出すことにより、決定され得る。例示の形態では、疑似プラトーは、ルールに基づいたアプローチを利用して識別される。
【0093】
このアプローチでは、関数が分析され、25kHzの周波数の増加で1%以下だけインピーダンス(Z)が変化する周波数を見出す。この周波数で計測される抵抗若しくはインピーダンスZはR∞として識別され、無限に高い周波数が印加されたならば生じる回路抵抗を示す。この疑似プラトー領域を判定する他の方法は当業者には周知である。
【0094】
同様に、ゼロ印加周波数R0でのインピーダンスは、関数のy軸切片である値として決定され得る。
【0095】
図8に示すような“ヴェッセル”プロットタイプ関数が利用されるならば、このアプローチはアークを利用するが、このアークの利用は特徴的なインピーダンスの決定を許容するものである。この例では、複雑なヴェッセル平面内のアークの頂点は、τyの名目値に対応せず、上記方程式で与えられるτymに対応する。
【0096】
更に、αはR0からR∞への弓状軌跡により範囲付けられる角度から決定され得る。これを、サスセプタンスデータから決定されるmになぞらえるならば、生体部材の緩和現象のためのフリッケ基準が適合してもしなくても、このことが許容される。それらが等しいか相互に所定範囲内にあるのであれば、ヴェッセルダイアグラム方法は、合理的正確さをもって適用され得ることになる。m及びαが値として十分に近接するもので無い場合には、上述のアプローチと適合する関数は、自由伝導モデルのための対象量を決定するより適切な方法である。
【0097】
ステップ340では、処理システム10は、R0からR∞のうちのいずれかの値、若しくは特徴的なインピーダンスを利用し、同時に、細胞内インピーダンスパラメータを決定する方程式(数9)を利用する。この例では細胞内インピーダンスパラメータは細胞内可変抵抗パラメータRvarである。
【0098】
R0、R∞の値、若しくは特徴的なインピーダンスZcを決定する別の方法として、例えば、様々な周波数fiでの多数の様々なインピーダンス値を利用して多数の連立方程式を解くことによって方程式(数9)が別途数学的に解かれ得るというものがある。これらの値が適合された関数から決定される値であり、このことにより印加される周波数fiの範囲に渡るインピーダンス応答を考慮に入れるのが好ましいが、これらの値は直接の計測値に基づいてもよい。
【0099】
ステップ350では、完全に心周期が完了したか判定され、完了していなければ処理はステップ240に戻り次の段階tn+1を分析する。
【0100】
ステップ360では、完全に心周期が完了すれば、処理システム10は、ステップ370で心臓パラメータを決定するのに細胞内抵抗パラメータRvarを利用する前に、心周期における細胞内抵抗パラメータRvarの変動を決定するように、動作する。
【0101】
現在モデルで得られる時間変動インピーダンスの通常のプロットが図9に示される。
【0102】
図9では、生のインピーダンスデータが、一番上のグラフで(サンプル数だけ計測されて)時間に対してプロットされている。このグラフは、血液量、血液細胞方向及び呼吸による変化の変数を含む胸腔内の常時変動インピーダンス要素からのインピーダンスを、含む。
【0103】
図9の中のグラフは、患者の心臓機能に起因するインピーダンスの変化率を示す。一番上のグラフから低周波数要素を除去し、残余のデータからインピーダンスの変化率を得ることによって、グラフを生成した。
【0104】
当業者には認識されるように、追加の計測が現方法に組み入れられてもよく、同時に実施されてもよい。例えば、内側の電極はECGベクトルを記録するのに利用され得る。より多くのECGベクトルを生成するには、より多くの内側の電極が要求される。外側の電極がECGベクトルを記録するのに利用されてもよい。処理ユニット、若しくはオペレータは、最適なECGベクトルを自動的に若しくは手動により選択できる。外部ECGモニタが接続されてもよく、一方で、ECGベクトルを計算するための更なる電極を伴う独立のモジュールが本発明に組み込まれてもよい。
【0105】
心イベントの判定に役立てるためにECGを利用してもよい。例示のECGアウトプットが図9の下方グラフに示される。
【0106】
インピーダンス波形からある心臓パラメータを計算するために、基準点も適切に識別されねばならない。ECGデータ及び/又は他の適切な生理学的計測技術がこの処理で役立つように採用されてもよい。
【0107】
心周期における基準点を識別することを支援するのに利用され得る他の生理学的パラメータは、観血式/非観血式血圧、パルス酸素濃度計、抹消生体インピーダンス計測、超音波技術、及び赤外/無線周波数分光を含む。心イベントタイミングを最適に決定するのに、これら技術は単独で若しくは複数で利用されてよい。
【0108】
一つの例では、生理学的計測の他の方法と組み合わさる伝導計測により識別されて心イベントを判定する人工ニューラルネットワーク若しくは加重平均は、これらのポイントを識別する改善された方法を提供するものである。本例では、左心室駆出の開始と終了は、図9のグラフの鉛直線により示される。これらのポイントの間の時間は、左(心)室駆出時間(LVET)である。
【0109】
これらの基準点は対象のインピーダンス値を得るのに利用され得る。例えば、図9の真ん中のグラフで示される左心室駆出における細胞内抵抗値Rvarの最大変化率は、以下の式(数10)のようになる。
【0110】
【数10】
【0111】
心臓機能の計測はこのデータから判定され得る。例えば、以下の方法は、血流速度及び1回拍出量を計算するのに利用され得る。本例は、心拍出量を計算するのにインピーダンス計測を利用する。しかしながら、アドミタンス若しくは2つの組み合わせを利用して同じ機能を記述し得る。以下の式(数11)は、心拍出量を計算するのに利用され得る。
【0112】
【数11】
【0113】
ここで、
・COは心拍出量(リットル/分)を示す。
・以下数12は図9に示されるものである。
【数12】
・k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数である。
・c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数である。
・Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスである。
・TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔である。
・TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間である。
・n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である。
【0114】
当業者であれば、本方法が領される患者及び状況に基づいて、これら定数に対する適切な値を決定できる。
【0115】
上述の例は、心臓の心拍出量を判定するという文脈で説明したが、本発明の実施形態は他の心臓動作の計測を判定するのにも利用される。心臓動作の計測には、1回拍出量、心係数、1回拍出係数、体血管抵抗/係数、加速度、加速度係数、速度、速度係数、胸部液体内容物、左心室駆出時間、駆出前期間、収縮時間率、左心仕事量/係数、心拍、及び動脈圧が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
当業者であれば、多数の変形及び改良が明白であることを理解できる。当業者に明白なかような変形及び改良の全ては、本発明で前述したように本発明の精神及び範囲の内のものであると考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】生体組織の伝導特性をモデル化するのに利用される等価回路の概略例である。
【図2】心臓機能を判定するためのプロセスの例のフローチャートである。
【図3A】血液細胞方向への血液流の効果の例の概略図である。
【図3B】血液細胞方向への血液流の効果の例の概略図である。
【図4】生体組織の伝導特性をモデル化するのに利用される等価回路の第2の例の概略図である。
【図5】心臓機能を判定するための装置の例の概略図である。
【図6A】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図6B】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図6C】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図7】インピーダンス計測のための、周波数に対してプロットされたインピーダンスのグラフ例である。
【図8】伝導性に対してプロットされたヴェッセルサセプタンスの例である。
【図9】胸部、心臓機能によるインピーダンス変化のレベル、及びECGに冠する、時間変動インピーダンスを示す3つのプロットの例である。
【符号の説明】
【0118】
10・・・処理システム、
11・・・信号ジェネレータ、
12・・・センサ、
13、14・・・外側の対の電極、
15、16・・・内側の対の電極、
17・・・患者、
20・・・プロセッサ、
21・・・メモリ、
23・・・インプット/アウトプット(I/O)デバイス、
24・・・バス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的パラメータをモニタする方法及び装置に関し、特に生体電気インピーダンスを利用して被験者の心肺機能を計測する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行技術の援用は、自認ではなく且つ自認と解されるべきではなく、先行技術が一般的な周知事実となることを示唆するものではなく且つ示唆するものと解されるべきではない。
【0003】
2020年までに、冠状動脈性心臓病は世界最大の公衆衛生問題となると見積もられている。従って、冠状動脈性心臓病及び他の循環器疾患の対処は、近未来に世界中で非常に重大な健康上の及び経済上の負担となる。
【0004】
心拍出量(CO)は、(リットル/分で計測される)心室により射出される毎分の血液量と定義され得るが、身体の代謝要求に支配され、従って循環系全体の状況を反映する。この理由のため、心拍出量の計測は、心臓疾患を有する患者、若しくは循環器疾患や他の医療処置の様々な状態から回復しつつある患者についての、血流力学モニタの重要形態である。
【0005】
心臓機能を判断するための従来開発されてきた現存技術の一つは、インピーダンスカージオグラフィ(IC)として周知である。インピーダンスカージオグラフィは、皮膚面に配置された一連の電極を利用して患者身体の電気的インピーダンスを計測することを含む。患者皮膚面の電気的インピーダンスの変化は、心周期、従って、心拍出量及び他の心臓機能の計測に関連する組織用量の変化を判定するのに利用される。
【0006】
インピーダンスカージオグラフィにおける問題は、胸部基礎インピーダンスが個人間で相当に異なり、大人に対して引用される範囲は50−100kHzの間の周波数で20−48Ωとなる、ということである。心周期によるインピーダンスの変化は、基礎インピーダンスの相対的に僅かな量(0.5%)に過ぎず、ノイズ比に対して低い信号を伴う非常に脆弱な信号に過ぎない。
【0007】
従って、計測を解釈し得る複雑な信号処理が要求されている。
【0008】
このような例が、特許文献1に記載されている。この例では、印加電流に対する患者の反応が、図1に示される等価回路を利用してモデル化されている。等価回路は以下のようなものである。
・細胞膜のリアクタンスが無限大である限りにおいて、直流回路は細胞外液を介して伝導する。
・印加される交流電流は、印加信号の周波数に依存する比で細胞外及び細胞内経路を介して電導する。
【0009】
従って、等価回路は、細胞内経路内の細胞膜のキャパシタンスを表すキャパシタンスCと、細胞内流体の抵抗を表す抵抗RIとから形成される細胞内分岐を含む。回路は、組織を介する伝導経路を表す抵抗REから形成される細胞外分岐も含む。
【0010】
特許文献1に記載の発明は、心周期は患者胸部内の細胞外液全体にインパクトを生じ、従って心臓機能はインピーダンスの細胞外要素の変化を考慮して導出され得るという仮定に基づいて、動作するものである。このことは、複数の種々の周波数で交流電流を印加することによって達成される。インピーダンスは、これら周波数の夫々で計測され、推定して抵抗REに対応するゼロ印加周波数でのインピーダンスを決定する。これは細胞外液要素にのみ起因すると判断され、一回拍出量などの心臓機能の属性を決定するのに利用され得る。
【0011】
しかしながら、実際にはゼロ周波数でのインピーダンスは細胞外液にのみ起因するものではなく多数の他の要因に影響される。特に、細胞は完全なキャパシタとして作用せず、従って細胞内液がゼロ印加周波数でのインピーダンスに寄与してしまう。
【0012】
特許文献1に記載の発明の更なる成果は、“コールモデル”を利用してゼロ印加周波数でのインピーダンスをプロセスが決定することである。しかしながら、ここでもシステムの理想化された振る舞いを想定しており、患者の生体インピーダンス反応を正確にモデル化していない。このことにより、これら技術を利用して決定される心臓パラメータは限定的な正確さしか備えない傾向にある。
【特許文献1】国際特許出願WO2004/032738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
生物学的パラメータをモニタする方法及び装置において、計測を解釈し得る複雑な信号処理が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の形態では、本発明は、患者の心臓機能を分析する方法であって、処理システムにて、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を含む方法を、提示する。
【0015】
通常、インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータである。
【0016】
通常、上記方法は、処理システムにて、
(a)インピーダンス瞬時値を用いて、少なくとも一つのインピーダンス値を決定する工程と、
(b)少なくとも一つのインピーダンス値と所定の方程式を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を更に含む。
【0017】
通常、所定の方程式が、以下の数3である。
【数3】
【0018】
通常、少なくとも一つのインピーダンス値が、
(a)ゼロ周波数におけるインピーダンス、
(b)無限大周波数におけるインピーダンス、及び、
(c)特徴的な周波数におけるインピーダンス
のうちの少なくとも一つを含む。
【0019】
通常、上記方法は、処理システムにて、CPEモデルを用いて、細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程を含む。
【0020】
通常、上記方法は、処理システムにて、一つの段階で決定されるインピーダンスに対して、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)適合された関数を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を含む。
【0021】
通常、上記方法は、処理システムにて、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)外れ値インピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(c)外れ値インピーダンス瞬時値に対して、
(i)インピーダンス瞬時値を除去する工程と、
(ii)関数を再計算する工程と、
(iii)再計算された関数がインピーダンス瞬時値に対してよりよく適合するならば、再計算された関数を利用する工程と
を含む。
【0022】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、適合された関数を用いて一つ又は複数のインピーダンス値を決定する工程を更に含む。
【0023】
通常、関数が、
(a)アルゴリズムに適合する曲線を用いて適合された多項式と、
(b)ヴェッセルプロットに基づく関数と
のうちの少なくとも一つを含む。
【0024】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、
(a)一つ又は複数の患者パラメータの徴候を判定する工程と、
(b)一つ又は複数の患者パラメータを用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を更に含む。
【0025】
通常、上記方法は、処理プロセスにて、以下の数4を用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程を含み、以下数4では、
(i)COは心拍出量(リットル/分)を示し、
(ii)k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数であり、
(iii)c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数であり、
(iv)Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスであり、
(v)TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔であり、
(vi)TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間であり、
(vii)n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である。
【数4】
【0026】
通常、上記方法は、
患者に設置される第2のセットの電極により計測される電気信号を処理して、
(a)呼吸効果の除去、
(b)ECG信号の抽出、及び、
(c)不要信号の除去
のうち少なくとも一つを実施する工程を、更に含む。
【0027】
通常、上記方法は、
処理システムにて、
(a)インピーダンス値、
(b)一つ又は複数の細胞内インピーダンスパラメータ値、及び、
(c)心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータ
のうち少なくとも一つの徴候を表示する工程を、更に含む。
【0028】
通常、上記方法は、
処理システムにて、
(a)1回拍出量、
(b)心拍出量、
(c)心係数、
(d)1回拍出係数、
(e)体血管抵抗/係数、
(f)加速度、
(g)加速度係数、
(h)速度、
(i)速度係数、
(j)胸部液体内容物、
(k)左心室駆出時間、
(l)駆出前期間、
(m)収縮時間率、
(n)左心仕事量/係数、
(o)心拍、及び、
(p)動脈圧
のうちの少なくとも一つを判定する工程を、更に含む。
【0029】
通常、細胞内インピーダンスパラメータが、心周期における患者血液の細胞成分の再方向付けにより生じる抵抗変化を少なくともモデル化する。
【0030】
第2の形態では、本発明は、患者の心臓機能を分析する装置であって、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データ及び一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
のための処理システムを含む装置を提示する。
【0031】
通常、インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータである。
【0032】
通常、上記装置は、
(a)患者に印加される電気信号を生成するための処理システムに結合する信号ジェネレータと、
(b)患者における電気信号を感知するセンサと
を更に含む。
【0033】
通常、信号ジェネレータが電流ジェネレータである。
【0034】
通常、センサが電圧センサである。
【0035】
通常、上記装置は、
信号ジェネレータと患者へのセンサとを結び付ける複数の電極を含む。
【0036】
通常、処理システムが、無線接続を介して、信号ジェネレータとセンサのうちの少なくとも一つと結び付く。
【0037】
通常、センサがアナログからデジタルへのコンバータを含む。
【0038】
通常、処理システムが、本発明の第1の形態の方法を実行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0040】
患者に関する心臓機能のパラメータを判定するプロセスの例を、図2を参照しつつ説明する。
【0041】
特にステップ100において、交流電気信号が様々な周波数fiで患者に印加され、ステップ110では、患者への電気信号が夫々のfiで検出される。印加され検出される信号の性質は、以下に示すように実装内容に依存するものである。
【0042】
ステップ120では、第1の段階tnで個々の周波数fiのインピーダンスZiが決定される。ステップ130では、インピーダンスは段階tnでの細胞内インピーダンスパラメータを決定するのに利用される。一つの例では、このことはCPE(コンスタント位相エレメント)などの適切なモデルを用いて達成され、これらについては後で詳述する。
【0043】
完全な心周期がステップ140で分析されたと判定されるまで、後続の複数の段階tn、tn+1、tn+2に対して上記が繰り返される。このことは、適切なECG信号をモニタすることによって、若しくは、専ら十分な段階を処理し確実に心周期を検出することによって、達成される。
【0044】
ステップ150では、細胞内インピーダンスパラメータ、及びある例では細胞内インピーダンスパラメータの変化が、心臓パラメータを決定するのに利用される。
【0045】
心周期の間の胸部のインピーダンス変動は、血液量の変化及び血液自身のインピーダンスの変化の両方に依存している、ということを、この技術は考慮している。
【0046】
血液は、プラズマと称される伝導性流体内の、抵抗値が高い赤血球と他の細胞との緩衝液である。静止血液の赤血球は、図3Aに示すようにランダムに向いており、従って、静止血液の抵抗は等方性である。両凹面形状により、赤血球は、図3Bに示すように軸を流れ方向に平行にして、血液の流れの中で整列する傾向がある。従って、流れる血液の抵抗は、非等方性である。
【0047】
抵抗の非等方性は、容器に平行な電流と比べて、容器の軸に垂直な電流に対してより長い実効的な経路長のためである。結果として、細胞内流体の抵抗は、赤血球の方向に依存して変化するのであり、従って血液の流れに依存する。
【0048】
更に、赤血球の方向は流れる血液内の粘性力に影響されるから、非等方性の程度は剪断率に依存する。結果として、抵抗は流速にも依存する。
【0049】
従って、先行技術のように細胞外インピーダンスパラメータを利用するのではなく、細胞内パラメータに基づいて心臓機能を判定することにより、上記のことを考慮することが可能である。図1に示す等価回路を用いることによって、更に、細胞内分岐の容量C及び抵抗RIを基にしてインピーダンスパラメータを決定するためにインピーダンス計測を用いることによって、このことは達成可能である。
【0050】
従って、この場合では、例えばR0及びR∞の値を決定しそれらを用いて適切な数学的技法でコール方程式を解くことによって、細胞内抵抗RI及び容量Cの値を決定するために、インピーダンス計測が利用され得る。
【0051】
しかしながら、この場合、一定値として抵抗率をモデル化することは、患者のインピーダンス反応を正確に反映しないのであり、特に、赤血球の方向、若しくは他の緩和効果の変化を正確にモデル化しない。
【0052】
血液の電気伝導性をよりよくモデル化するために、改良されたCPEベースのモデルが、図4に関して示されるように、用いられ得る。
【0053】
この例では、特性インピーダンスを正確に決定しインピーダンスへの心臓効果の寄与を正確に解釈するために、図4に示すように自由伝導パラレルモデルに基づく等価回路が用いられる。このモデルは、直列形態で形成可能であり、パラレルモデルが本明細書では例示で示されている。
【0054】
この例では、回路は、細胞外流体を介する電流の伝導性を表す細胞外伝導体G0を含む。細胞内伝導経路は、周波数依存伝導体及び周波数依存容量の直列接続として表される一定位相素子(CPE)を含む。
【0055】
以下の2式は一般的なCPEを定義する。
【数5】
【数6】
ここで、YCPEはCPEのアドミッタンスである。ΦcpeはCPEの位相である。
【0056】
この式で、τは周波数スケールファクタを表し、ωτは無次元である。
【0057】
パラメータmは、周波数スケールファクタτと共に、CPEのアドミッタンスYCPEの周波数依存の程度を定義する。生体組織に対してmは0≦m≦1の範囲であることが知られている。
【0058】
一つの例では、CPEの他の形態も用いられ得るが、CPEはフリッケ(Fricke)の法則(CPEF)に従う。フリッケのCPEに対して指数の符号α(m=α)を利用することが、恒例である。
【0059】
緩和理論と互換性のあるモデルを作るために、直列の理想の抵抗は、特徴的な時定数τZが依存性パラメータとなるように、自由抵抗パラメータRvarに変えられる。
【0060】
結果として、回路の伝導性は以下のように示される。
【数7】
【数8】
ここで、τYmは、新しい特徴的な時間定数である。サブスクリプトmは、前の変数から新しい変数を識別するのに利用され、当業者に周知である用語と一致するものである。
【0061】
名目上の固定値を時間定数τyとすることにより、以下の式を利用してR1を計算することによりCPEを追うことが可能になる。
【数9】
【0062】
この例では、可変の抵抗パラメータRvarは赤血球の方向に依存し、結果として、Rvarの変化は患者内部の血液の流れ速度を判定するのに利用され得る。従って、心拍出量などに関する情報を判定することが可能になる。
【0063】
患者の生体電気インピーダンスの分析を行い心臓機能を判定するのに適切な装置の例を、図5を参照して、以下説明する。
【0064】
図に示されるように、装置は、プロセッサ20を有する処理システム10、メモリ21、インプット/アウトプット(I/O)デバイス23、及びバス24を介して結合されるインタフェース23を含む。処理システムは、図に示されるように信号ジェネレータ11及びセンサ12と結合する。利用の際には、信号ジェネレータ11とセンサ12は図のような個々の電極13、14、15、16に結合する。
【0065】
利用の際、処理システム10は、制御信号を生成するように調整され、この制御信号により信号ジェネレータ11は電極13、14を介して患者17に印加される交流信号を生成する。センサ12は患者117における電圧若しくは電流を判定し、処理システム10に適切な信号を送る。
【0066】
従って、処理システム10は、適切な制御信号を生成し電圧データを解釈しこれにより患者の生体電気インピーダンスを決定し場合によっては心臓パラメータを決定するのに、適切である処理システムであればどのようなものでもよい。
【0067】
従って処理システム10は、ラップトップ、デスクトップ、PDA、スマートホンなどの、適切にプログラム搭載されたコンピュータシステムであればよい。一方で、処理システム10は専用ハードウエアから形成されてもよい。同様に、I/Oデバイスは、タッチスクリーン、キーパッド、及びディスプレイなどの適切なものであればよい。
【0068】
処理システム10、信号ジェネレータ11及びセンサ12は、共通のハウジング内に統合されてよく、従って統合デバイスを形成してもよい。一方で、処理システム10は、優先若しくは無線接続を介して、信号ジェネレータ11及びセンサ12に接続してもよい。このことにより、処理システム10は、信号ジェネレータ11及びセンサ12に遠隔で繋がることができる。処理システムが患者17と遠隔して位置するならば、信号ジェネレータ11及びセンサ12は、患者17の側でユニットで設けられてもよく、又は患者17が身にまとってもよい。
【0069】
実際、外側の対の電極13、14は、患者の胸部及び首部に配置され、交流信号が2−2000kHzの範囲で、同時に若しくは連続で、複数の周波数(2つで十分であるが、少なくとも3つであるのが好ましく、5つ若しくはそれ以上が特に好ましい)で加えられる。しかしながら、印加される波形はこの範囲外のより多くの周波数成分を含んでもよい。
【0070】
好適な形態では、印加される信号は、最大許容患者補助電流を超えることがないようにクランプされた電圧源からの周波数豊かな電圧である。信号は、一定電流、インパルス関数、若しくは、最大許容患者補助電流を超えることがないように電流が計測される一定電圧信号の、いずれであってもよい。
【0071】
電位差及び/又は電流は、内側の対の電極15、16の間で計測される。得られた信号及び計測された信号は、印加される周波数の各々での信号の重ね合わせと、ECGなどの人体で生成される電位である。更に、内側の対の電極間の距離が計測され記録されてもよい。同様に、伸長、体重、年齢、性別、健康状態などの患者に関する他のパラメータが記録されてもよく、現在投薬などの他の情報も記録されてもよい。
【0072】
獲得された信号は復調され、印加された周波数でのシステムのインピーダンスを得る。復調の適切な一つの方法は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを利用して時間ドメインを周波数ドメインに変換することである、計測された信号のウインドウを要求しない別の技術は、スライドウインドウFFTである。他の適切なデジタル及びアナログ復調技術が当業者に周知である。
【0073】
インピーダンス若しくはアドミタンス計測は、記録された電圧と電流信号を比較することによって、各々の周波数で信号から決定される。復調アルゴリズムは、個々の周波数において振幅信号と位相信号を生成する。
【0074】
患者の生体電気インピーダンスを計測しこれを解析する処理の例を、図6A〜図6Cを参照して詳しく説明する。
【0075】
ステップ200では、処理システム10は、時間周期Tに対して複数周波数fiで患者17に電流信号を信号ジェネレータ11が与えるように仕向ける所定の制御信号を生成する。患者17に与えられる電流信号は、各々対応する周波数fiで複数の信号を重ね合わせることにより、連続して若しくは同時に、複数周波数fiで与えられてよい。
【0076】
制御信号は通常メモリ21に格納されるデータに従って生成されるのが好ましく、このことにより、多数の種々の電流シーケンスが利用され得ることになり、これらはI/Oデバイス22若しくは別の適切な機構によって選択されるものとなる。
【0077】
ステップ210では、センサ12は患者17における電圧を計測する。ここで、電圧信号は通常アナログ信号であり、センサ12は、アナログデジタルコンバータ(図示せず)を利用して、これらをデジタル化するように動作する。
【0078】
ステップ220では、処理システム10は、信号ジェネレータ11及びセンサ12からの信号をサンプル化し、これにより患者17における電流及び電圧を判定する。
【0079】
ステップ230では、フィルタが呼吸効果を除去する電圧信号を選択的に印加する。この呼吸効果は通常、患者の呼吸速度に一致する非常に低い周波数要素を有する。実装内容によるがセンサ12若しくは処理システム10により、フィルタが達成されてもよい。
【0080】
ステップ240では、ECGベクトルが、電圧信号から選択的に抽出される。ECG信号が通常、0Hzから100Hzの領域の周波数を有し、インピーダンス信号が5kHzから1MHzの領域にあるので、このことは為され得る。従って、ECG信号は、複合、フィルタリングなどの適切な技術により抽出されればよい。
【0081】
ステップ250では、信号は付加的な処理を受ける。例えば、印加された周波数の信号のみがインピーダンス判定で利用されることを保証するために更に信号をフィルタにかけることにより、このことは為される。このことにより、要求される処理の量を減らすだけでなく、ノイズの影響も減らせ得る。
【0082】
ステップ260では、電流及び電圧信号は段階tnでサンプルし各々の周波数fiにおけるインピーダンスZiを決定する。
【0083】
ステップ270では、関数がインピーダンス値に適合される。
【0084】
この例が図7に示され、図7は、周波数に対してプロットされたインピーダンスデータ及び関数の様子の例を示す。プロットは例示の目的のためだけのものであり、実際には処理システム10は必ずしもプロットを生成するわけではない。図7に示されるインピーダンスプロットに対する周波数の場合、関数は通常多項式であり、実際にこの例では6次多項式である。
【0085】
一方で、以下に詳細に説明するが、図8に示すようにヴェッセルプロットが利用されてもよい。
【0086】
実際には関数をデータに正確に適合するには、ノイズ除去が必要であり得る。例えば、最初に関数を計測データに適合させデータセットから外れ値ポイントを系統的に取り除き、更に関数を減じられたデータセットに再び適合させることによって、ある周波数のノイズ除去が実施され得ることになる。
【0087】
従って、ステップ280では、決定された関数から所定の距離より大きい位置にあるポイントと見なされる外れ値ポイントが存在するかどうか判定するように、処理システム10は動作する。
【0088】
標準的な数学的技術を用いて、利用関数、及び外れ値ポイントの判定が獲得され得ることがわかる。外れ値ポイントが存在すると判定されると、ステップ290にてこれらがデータセットから除去され新しい関数が残余の値に適合される。ステップ290にて、処理システム10は適合内容が改善されたかどうか判定し、もしそうであるならば外れ値ポイントはデータセットから恒久的に排除され、新しい関数がステップ310で評価される。データに影響する外れ値ポイントが除去されるまで、このことは繰り返される。
【0089】
ステップ300にて適合内容が改善されていないと判定されれば、外れ値は残りステップ320で従前の関数が利用される。
【0090】
外れ値が無ければ、若しくは外れ値がデータセットから排除されてしまえば、プロットが利用され、決定された関数を用いてR0及びR∞からの値を決定する。
【0091】
一つの例では、関数が利用されてR0及びR∞を計算する。一方で、このことが利用されて特徴的な周波数でのインピーダンスを決定し得る。
【0092】
例えば、図7に示す関数の場合、R∞は、図7の曲線上の疑似プラトー、即ち相対的に平坦な部位の開始におけるインピーダンスを見出すことにより、決定され得る。例示の形態では、疑似プラトーは、ルールに基づいたアプローチを利用して識別される。
【0093】
このアプローチでは、関数が分析され、25kHzの周波数の増加で1%以下だけインピーダンス(Z)が変化する周波数を見出す。この周波数で計測される抵抗若しくはインピーダンスZはR∞として識別され、無限に高い周波数が印加されたならば生じる回路抵抗を示す。この疑似プラトー領域を判定する他の方法は当業者には周知である。
【0094】
同様に、ゼロ印加周波数R0でのインピーダンスは、関数のy軸切片である値として決定され得る。
【0095】
図8に示すような“ヴェッセル”プロットタイプ関数が利用されるならば、このアプローチはアークを利用するが、このアークの利用は特徴的なインピーダンスの決定を許容するものである。この例では、複雑なヴェッセル平面内のアークの頂点は、τyの名目値に対応せず、上記方程式で与えられるτymに対応する。
【0096】
更に、αはR0からR∞への弓状軌跡により範囲付けられる角度から決定され得る。これを、サスセプタンスデータから決定されるmになぞらえるならば、生体部材の緩和現象のためのフリッケ基準が適合してもしなくても、このことが許容される。それらが等しいか相互に所定範囲内にあるのであれば、ヴェッセルダイアグラム方法は、合理的正確さをもって適用され得ることになる。m及びαが値として十分に近接するもので無い場合には、上述のアプローチと適合する関数は、自由伝導モデルのための対象量を決定するより適切な方法である。
【0097】
ステップ340では、処理システム10は、R0からR∞のうちのいずれかの値、若しくは特徴的なインピーダンスを利用し、同時に、細胞内インピーダンスパラメータを決定する方程式(数9)を利用する。この例では細胞内インピーダンスパラメータは細胞内可変抵抗パラメータRvarである。
【0098】
R0、R∞の値、若しくは特徴的なインピーダンスZcを決定する別の方法として、例えば、様々な周波数fiでの多数の様々なインピーダンス値を利用して多数の連立方程式を解くことによって方程式(数9)が別途数学的に解かれ得るというものがある。これらの値が適合された関数から決定される値であり、このことにより印加される周波数fiの範囲に渡るインピーダンス応答を考慮に入れるのが好ましいが、これらの値は直接の計測値に基づいてもよい。
【0099】
ステップ350では、完全に心周期が完了したか判定され、完了していなければ処理はステップ240に戻り次の段階tn+1を分析する。
【0100】
ステップ360では、完全に心周期が完了すれば、処理システム10は、ステップ370で心臓パラメータを決定するのに細胞内抵抗パラメータRvarを利用する前に、心周期における細胞内抵抗パラメータRvarの変動を決定するように、動作する。
【0101】
現在モデルで得られる時間変動インピーダンスの通常のプロットが図9に示される。
【0102】
図9では、生のインピーダンスデータが、一番上のグラフで(サンプル数だけ計測されて)時間に対してプロットされている。このグラフは、血液量、血液細胞方向及び呼吸による変化の変数を含む胸腔内の常時変動インピーダンス要素からのインピーダンスを、含む。
【0103】
図9の中のグラフは、患者の心臓機能に起因するインピーダンスの変化率を示す。一番上のグラフから低周波数要素を除去し、残余のデータからインピーダンスの変化率を得ることによって、グラフを生成した。
【0104】
当業者には認識されるように、追加の計測が現方法に組み入れられてもよく、同時に実施されてもよい。例えば、内側の電極はECGベクトルを記録するのに利用され得る。より多くのECGベクトルを生成するには、より多くの内側の電極が要求される。外側の電極がECGベクトルを記録するのに利用されてもよい。処理ユニット、若しくはオペレータは、最適なECGベクトルを自動的に若しくは手動により選択できる。外部ECGモニタが接続されてもよく、一方で、ECGベクトルを計算するための更なる電極を伴う独立のモジュールが本発明に組み込まれてもよい。
【0105】
心イベントの判定に役立てるためにECGを利用してもよい。例示のECGアウトプットが図9の下方グラフに示される。
【0106】
インピーダンス波形からある心臓パラメータを計算するために、基準点も適切に識別されねばならない。ECGデータ及び/又は他の適切な生理学的計測技術がこの処理で役立つように採用されてもよい。
【0107】
心周期における基準点を識別することを支援するのに利用され得る他の生理学的パラメータは、観血式/非観血式血圧、パルス酸素濃度計、抹消生体インピーダンス計測、超音波技術、及び赤外/無線周波数分光を含む。心イベントタイミングを最適に決定するのに、これら技術は単独で若しくは複数で利用されてよい。
【0108】
一つの例では、生理学的計測の他の方法と組み合わさる伝導計測により識別されて心イベントを判定する人工ニューラルネットワーク若しくは加重平均は、これらのポイントを識別する改善された方法を提供するものである。本例では、左心室駆出の開始と終了は、図9のグラフの鉛直線により示される。これらのポイントの間の時間は、左(心)室駆出時間(LVET)である。
【0109】
これらの基準点は対象のインピーダンス値を得るのに利用され得る。例えば、図9の真ん中のグラフで示される左心室駆出における細胞内抵抗値Rvarの最大変化率は、以下の式(数10)のようになる。
【0110】
【数10】
【0111】
心臓機能の計測はこのデータから判定され得る。例えば、以下の方法は、血流速度及び1回拍出量を計算するのに利用され得る。本例は、心拍出量を計算するのにインピーダンス計測を利用する。しかしながら、アドミタンス若しくは2つの組み合わせを利用して同じ機能を記述し得る。以下の式(数11)は、心拍出量を計算するのに利用され得る。
【0112】
【数11】
【0113】
ここで、
・COは心拍出量(リットル/分)を示す。
・以下数12は図9に示されるものである。
【数12】
・k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数である。
・c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数である。
・Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスである。
・TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔である。
・TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間である。
・n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である。
【0114】
当業者であれば、本方法が領される患者及び状況に基づいて、これら定数に対する適切な値を決定できる。
【0115】
上述の例は、心臓の心拍出量を判定するという文脈で説明したが、本発明の実施形態は他の心臓動作の計測を判定するのにも利用される。心臓動作の計測には、1回拍出量、心係数、1回拍出係数、体血管抵抗/係数、加速度、加速度係数、速度、速度係数、胸部液体内容物、左心室駆出時間、駆出前期間、収縮時間率、左心仕事量/係数、心拍、及び動脈圧が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
当業者であれば、多数の変形及び改良が明白であることを理解できる。当業者に明白なかような変形及び改良の全ては、本発明で前述したように本発明の精神及び範囲の内のものであると考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】生体組織の伝導特性をモデル化するのに利用される等価回路の概略例である。
【図2】心臓機能を判定するためのプロセスの例のフローチャートである。
【図3A】血液細胞方向への血液流の効果の例の概略図である。
【図3B】血液細胞方向への血液流の効果の例の概略図である。
【図4】生体組織の伝導特性をモデル化するのに利用される等価回路の第2の例の概略図である。
【図5】心臓機能を判定するための装置の例の概略図である。
【図6A】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図6B】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図6C】心臓機能を判定するためのプロセスの第2の例のフローチャートである。
【図7】インピーダンス計測のための、周波数に対してプロットされたインピーダンスのグラフ例である。
【図8】伝導性に対してプロットされたヴェッセルサセプタンスの例である。
【図9】胸部、心臓機能によるインピーダンス変化のレベル、及びECGに冠する、時間変動インピーダンスを示す3つのプロットの例である。
【符号の説明】
【0118】
10・・・処理システム、
11・・・信号ジェネレータ、
12・・・センサ、
13、14・・・外側の対の電極、
15、16・・・内側の対の電極、
17・・・患者、
20・・・プロセッサ、
21・・・メモリ、
23・・・インプット/アウトプット(I/O)デバイス、
24・・・バス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓機能を分析する方法であって、処理システムにて、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データと一つ又は複数の印加された信号とから複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理システムにて、
(a)インピーダンス瞬時値を用いて、少なくとも一つのインピーダンス値を決定する工程と、
(b)少なくとも一つのインピーダンス値と所定の方程式を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
所定の方程式が、以下の数1であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【数1】
【請求項5】
少なくとも一つのインピーダンス値が、
(a)ゼロ周端数におけるインピーダンス、
(b)無限大周波数におけるインピーダンス、及び、
(c)特徴的な周波数におけるインピーダンス
のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
処理システムにて、CPEモデルを用いて、細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理システムにて、一つの段階で決定されるインピーダンスに対して、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)適合された関数を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
処理システムにて、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)外れ値インピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(c)外れ値インピーダンス瞬時値に対して、
(i)インピーダンス瞬時値を除去する工程と、
(ii)関数を再計算する工程と、
(iii)再計算された関数がインピーダンス瞬時値に対してよりよく適合するならば、再計算された関数を利用する工程と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
処理プロセスにて、適合された関数を用いて一つ又は複数のインピーダンス値を決定する工程を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
関数が、
(a)アルゴリズムに適合する曲線を用いて適合された多項式と、
(b)ヴェッセルプロットに基づく関数と
のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
処理プロセスにて、
(a)一つ又は複数の患者パラメータの徴候を判定する工程と、
(b)一つ又は複数の患者パラメータを用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
処理プロセスにて、以下の数2を用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程を含み、以下数2では、
(i)COは心拍出量(リットル/分)を示し、
(ii)k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数であり、
(iii)c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数であり、
(iv)Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスであり、
(v)TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔であり、
(vi)TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間であり、
(vii)n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【数2】
【請求項13】
患者に設置される第2のセットの電極により計測される電気信号を処理して、
(a)呼吸効果の除去、
(b)ECG信号の抽出、及び、
(c)不要信号の除去
のうち少なくとも一つを実施する工程を、更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
処理システムにて、
(a)インピーダンス値、
(b)一つ又は複数の細胞内インピーダンスパラメータ値、及び、
(c)心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータ
のうち少なくとも一つの徴候を表示する工程を、更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
処理システムにて、
(a)1回拍出量、
(b)心拍出量、
(c)心係数、
(d)1回拍出係数、
(e)体血管抵抗/係数、
(f)加速度、
(g)加速度係数、
(h)速度、
(i)速度係数、
(j)胸部液体内容物、
(k)左心室駆出時間、
(l)駆出前期間、
(m)収縮時間率、
(n)左心仕事量/係数、
(o)心拍、及び、
(p)動脈圧
のうちの少なくとも一つを判定する工程を、更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
細胞内インピーダンスパラメータが、心周期における患者血液の細胞成分の再方向付けにより生じる抵抗変化を少なくともモデル化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
患者の心臓機能を分析する装置であって、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データ及び一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
のための処理システムを含む装置。
【請求項18】
インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータであることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
(a)患者に印加される電気信号を生成するための処理システムに結合する信号ジェネレータと、
(b)患者における電気信号を感知するセンサと
を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
信号ジェネレータが電流ジェネレータであることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
センサが電圧センサであることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
信号ジェネレータと患者へのセンサとを結び付ける複数の電極を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
処理システムが、無線接続を介して、信号ジェネレータとセンサのうちの少なくとも一つと結び付くことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項24】
センサがアナログからデジタルへのコンバータを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項25】
処理システムが、請求項1乃至請求項16のうちのいずれか一に記載の方法を実行することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項1】
患者の心臓機能を分析する方法であって、処理システムにて、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データと一つ又は複数の印加された信号とから複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理システムにて、
(a)インピーダンス瞬時値を用いて、少なくとも一つのインピーダンス値を決定する工程と、
(b)少なくとも一つのインピーダンス値と所定の方程式を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
所定の方程式が、以下の数1であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【数1】
【請求項5】
少なくとも一つのインピーダンス値が、
(a)ゼロ周端数におけるインピーダンス、
(b)無限大周波数におけるインピーダンス、及び、
(c)特徴的な周波数におけるインピーダンス
のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
処理システムにて、CPEモデルを用いて、細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理システムにて、一つの段階で決定されるインピーダンスに対して、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)適合された関数を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
処理システムにて、
(a)関数をインピーダンス瞬時値に適合する工程と、
(b)外れ値インピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(c)外れ値インピーダンス瞬時値に対して、
(i)インピーダンス瞬時値を除去する工程と、
(ii)関数を再計算する工程と、
(iii)再計算された関数がインピーダンス瞬時値に対してよりよく適合するならば、再計算された関数を利用する工程と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
処理プロセスにて、適合された関数を用いて一つ又は複数のインピーダンス値を決定する工程を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
関数が、
(a)アルゴリズムに適合する曲線を用いて適合された多項式と、
(b)ヴェッセルプロットに基づく関数と
のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
処理プロセスにて、
(a)一つ又は複数の患者パラメータの徴候を判定する工程と、
(b)一つ又は複数の患者パラメータを用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
処理プロセスにて、以下の数2を用いて心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程を含み、以下数2では、
(i)COは心拍出量(リットル/分)を示し、
(ii)k1は、少なくとも身長や体重などの、更には電極間の距離や年齢も含み得る、一つ又はそれ以上の患者パラメータに基づく任意の母集団の特殊補正係数であり、
(iii)c1は、(本方法を実装するのに利用されるデバイスを各々モニタするための、製造において一意的に定義され得る)オーム単位系からリットル単位系へ単位を変換するのに利用される任意の較正係数であり、
(iv)Z0は(10Ωと150Ωの間の)特徴的な周波数で計測される任意の基準ピーダンスであり、
(v)TRRは、(ECG、若しくはインピーダンス、若しくは伝導データから見出される)ECGから得られる2つのRの間の間隔であり、
(vi)TLVEは、(伝導若しくはインピーダンス曲線から計測される、又は他の生理学的計測技術の組み合わせから計測されてもよい)左心室駆出時間であり、
(vii)n(−4<n<4)及びm(−4<m<4)は、任意の定数である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【数2】
【請求項13】
患者に設置される第2のセットの電極により計測される電気信号を処理して、
(a)呼吸効果の除去、
(b)ECG信号の抽出、及び、
(c)不要信号の除去
のうち少なくとも一つを実施する工程を、更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
処理システムにて、
(a)インピーダンス値、
(b)一つ又は複数の細胞内インピーダンスパラメータ値、及び、
(c)心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータ
のうち少なくとも一つの徴候を表示する工程を、更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
処理システムにて、
(a)1回拍出量、
(b)心拍出量、
(c)心係数、
(d)1回拍出係数、
(e)体血管抵抗/係数、
(f)加速度、
(g)加速度係数、
(h)速度、
(i)速度係数、
(j)胸部液体内容物、
(k)左心室駆出時間、
(l)駆出前期間、
(m)収縮時間率、
(n)左心仕事量/係数、
(o)心拍、及び、
(p)動脈圧
のうちの少なくとも一つを判定する工程を、更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
細胞内インピーダンスパラメータが、心周期における患者血液の細胞成分の再方向付けにより生じる抵抗変化を少なくともモデル化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
患者の心臓機能を分析する装置であって、
(a)第1のセットの電極を用いて、複数の周波数を有する一つ又は複数の電気信号を患者に印加させる工程と、
(b)患者に設置された第2のセットの電極により、印加された一つ又は複数の信号に反応して計測される電気信号の徴候を判定する工程と、
(c)複数の連続する段階に対する、
(i)徴候データ及び一つ又は複数の印加された信号から複数周波数の各々におけるインピーダンス瞬時値を決定する工程と、
(ii)インピーダンス瞬時値を用いて細胞内インピーダンスパラメータを決定する工程と、
(d)更に、少なくとも一つの心周期における細胞内インピーダンスパラメータを利用して、心臓機能に関する一つ又は複数のパラメータを決定する工程と
のための処理システムを含む装置。
【請求項18】
インピーダンスパラメータが可変細胞内抵抗パラメータであることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
(a)患者に印加される電気信号を生成するための処理システムに結合する信号ジェネレータと、
(b)患者における電気信号を感知するセンサと
を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
信号ジェネレータが電流ジェネレータであることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
センサが電圧センサであることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
信号ジェネレータと患者へのセンサとを結び付ける複数の電極を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
処理システムが、無線接続を介して、信号ジェネレータとセンサのうちの少なくとも一つと結び付くことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項24】
センサがアナログからデジタルへのコンバータを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項25】
処理システムが、請求項1乃至請求項16のうちのいずれか一に記載の方法を実行することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−503277(P2008−503277A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516888(P2007−516888)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000893
【国際公開番号】WO2005/122881
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506423822)オーロラ・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AORORA TECHNOLOGIES PTY LTD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000893
【国際公開番号】WO2005/122881
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506423822)オーロラ・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AORORA TECHNOLOGIES PTY LTD
【Fターム(参考)】
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