説明

応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント及びその製造方法

本発明は、応力集中を最小化した人工乳房インプラント及びその製造方法に関し、より詳細には、機械的物性に優れ、触感に優れることから、乳房インプラントとしての効率性と安全性に優れた人工乳房インプラント及びその製造方法に関する。本発明の製造方法を通して製造された人工乳房インプラントは、同一の厚さのシリコンシェル、及びシェルと同一又は類似した物性の接合部位を構成し、人体に挿入した後で受ける応力集中現象を最小化し、疲労破裂に対する抵抗を極大化し、耐久性を向上させるとともに、薄い接合部位の厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善した、応力集中を最小化した人工乳房インプラント及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力集中を最小化した人工乳房インプラント及びその製造方法に関し、より詳細には、機械的物性に優れ、触感に優れることから、乳房インプラントとしての効率性と安全性に優れた人工乳房インプラント及びその製造方法に関する。
【0002】
本発明の製造方法を通して製造された人工乳房インプラントは、同一の厚さのシリコンシェル、及びシェルと同一又は類似した物性の接合部位を構成し、人体に挿入した後の応力集中現象を最小化し、疲労破裂に対する抵抗を極大化し、耐久性を向上させるとともに、薄い接合部位の厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善した、応力集中を最小化した人工乳房インプラント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、人工乳房インプラントは、疾病及び事故による乳房欠損に対する再建と美容及び奇形による成形を目的とし、立体的及び解剖学的には器官又は組織の代替を目的として使用される。
【0004】
人工乳房インプラントは、臓器移植が可能なシリコンで作られたバッグ(以下、「シェル」という)の内部に充填物として食塩水、ハイドロジェル、シリコンジェルが充填された形態の製品であって、形状によって丸い形態(Round type)と水玉形態(Anatomical type)製品があり、表面状態によって滑らかな形態(Smooth type)と粗い形態(Texture type)の製品がある。これらをより詳細に説明すると、次のように要約することができる。
【0005】
食塩水人工乳房インプラント(Saline breast prosthesis)は、シリコン(ポリジメチルシロキサン又はポリジフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンで構成される)シェルの内部に食塩水が注入された形態、又は食塩水を注入可能な形態の人工乳房インプラントであって、構造的にシリコンシェルとバルブで構成されている。
【0006】
食塩水人工乳房インプラントは、滅菌された食塩水を充填物として用いるので、破裂後の充填物の体内流出に対する安全性保障と食塩水充填量の調節で乳房の体積変化が可能であるという長所を有しているが、施術後の感触が他の人工乳房インプラントに比べて著しく低下し、シェルの耐久性が弱いという短所を有している。
【0007】
ハイドロジェル人工乳房インプラント(Hydrogel―filled breast prosthesis)は、食塩水人工乳房インプラントと同じシェルの内部に単糖類と多糖類で構成されたハイドロジェルが充填された形態のインプラントであって、破裂によって充填物が体内に流出するとき、充填物が人体に吸収されたり、充填物が人体から排泄されることが可能であるという原理で開発された製品である。
【0008】
しかし、ハイドロジェル人工乳房インプラントは、長期間の使用に対する安全性が立証されておらず、挿入後の時間経過による体積変化が大きく、しわ発生可能性が大きく、シリコン人工乳房インプラントに比べて不自然な感じを与えるという短所を有しており、現在、このようなハイドロジェル人工乳房インプラントは、2000年度を基準にして安全性の立証問題によって市場で完全に流通されていない。
【0009】
シリコンジェル人工乳房インプラント(Silicone gel―filled breast prosthesis)は、シェルの内部に適当な粘度のシリコンジェルが充填された形態であって、製品の耐久性及び感触が食塩水人工乳房インプラントに比べて非常に優れており、このような長所により、市場での人工乳房インプラントの販売においてはシリコン人工乳房インプラントの販売が支配的である。シリコンジェル人工乳房インプラントの場合、その安全性の立証問題により、米国食品医薬品局(FDA)では使用が制限されていたが、2006年度に再び公式的に使用が許容された。
【0010】
シリコン人工乳房インプラントは、1世代型インプラント、2世代型インプラント及び3世代型インプラントの順に開発されてきた。以下では、これらについて詳細に説明する。
【0011】
1世代型シリコン人工乳房インプラントは、1960年代中盤から1970年代中盤まで販売された製品であって、1961年度にCroninとGerowによって初めて開発され、厚いシェル、滑らかな表面タイプ、高い粘度のシリコンジェルの使用に要約することができる。このインプラントは、ジェル流出(Gel bleed)及びカプセル拘縮(Capsular contracture)を誘発させたが、厚いシェルの使用によって破裂速度は低い方であった。
【0012】
2世代型シリコン人工乳房インプラントは、1970年代中盤から1980年代中盤まで販売された製品であって、より柔らかい感触のために薄いシェルと低い粘度のシリコンジェル充填物を使用した。このインプラントは、1世代型インプラントに比べると、類似するジェル流出量、高い破裂率、低いカプセル拘縮発生率を有することを特徴とする。
【0013】
3世代型シリコン人工乳房インプラントは、1980年代中盤から現在まで販売されている製品であって、ジェル流出を遮断するためにジェル流出遮断層を使用しており、2世代型インプラントに比べると、厚いシェル、高い粘度のシリコンジェルが使用された形態である。また、カプセル拘縮を減少させるために粗い表面の製品(Texture type)が開発された。
【0014】
このような人工乳房インプラントは、いずれもシェル、接合部位(以下、「パッチ」という)及び充填物で構成される。
【0015】
シェルの場合、ほとんどが浸漬方法を通して製造され、耐久力(特に、疲労による破裂)に限界点を有するようになる。基本的に浸漬方法を通して製造されたシェルには、重力によって厚さ偏差が発生し、このような厚さ偏差により、応力による相対的に脆弱な部位が発生するようになる。
【0016】
また、接合部位(パッチ)の加工には、接合に使用されるパッチ(重ねて当てる接合材料)及び接合材が使用されるが、既存の人工乳房の製造においては、接合部位に接合材料として使用されるパッチは、シェルと同一の厚さ及び同一の物性を示す材料で形成される。
【0017】
これは、パッチの強度低下を防止するために、パッチの内部に低分子シリコンの流出防止層を含む多重パッチを製造しなければならないが、シェルの厚さより薄い多重薄膜のパッチ製造は商業的に非常に難しいためである。
【0018】
すなわち、図1及び図2に示したように、シェル5、7の厚さ(平均厚さ500〜800μm)と同一の厚さのパッチ6を使用するので、接合部位8a、8bが非常に厚くなり、接合部位の伸張特性がほとんど消える。また、シェルと接合部位との間の境界点の物性差によって応力集中現象が発生し、疲労に対する耐久性に問題を有するようになり、その結果、臨床結果でも、人工乳房インプラントのパッチ周囲の破裂発生頻度が非常に高く示されている実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を勘案して発明されたもので、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチ及び接合材を使用すると同時に、シェルとの厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性(伸張特性、強度、弾性など)を示すことのできる接合部位を構成し、シェルと接合部位との間の境界点の物性差による応力集中現象を防止し、人工乳房インプラントの最大の副作用である破裂率を低下させるとともに、薄い接合部位の厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善した、応力集中を最小化した人工乳房インプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記のような課題を達成するために、本発明は、シリコン人工乳房インプラントにおいて、シェルの下端部の穴に形成された接合部位の構造が、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合した構造をなすことを特徴とする、応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントを課題解決手段とする。
【0021】
また、本発明は、シリコン人工乳房インプラント製造方法において、人工乳房シェルを獲得するために乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階(S100)と、シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階(S200)と、前記モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階(S300)と、前記の着脱された人工乳房シェルの穴に、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合するパッチ接合段階(S400)と、前記パッチ接合が完成したシェルに充填物質を充填する充填段階(S500)とを含んで構成される、応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント製造方法を課題解決手段とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントは、シリコンシェルのように低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合構成し、シリコンシェルと同一又は類似した伸張特性(弾性)及び強度などの物性を示し、シェルと接合部位との間の境界点の物性差による応力集中現象を防止し、人工乳房インプラントの最大の副作用である破裂率を低下させるとともに、薄いパッチの厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善し、製品の寿命を極大化できるシリコン人工乳房インプラントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の人工乳房インプラントの人工乳房シェル及び接合部位を示した例示図である。
【図2】従来の人工乳房インプラントの人工乳房シェル及びシリコン膜を示した例示図である。
【図3】本発明の一実施例に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントの接合構造を示した状態図である。
【図4】本発明の一実施例に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントの応力分散を示した状態図である。
【図5】本発明の一実施例に係る応力集中を最小化した人工乳房インプラント製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、シリコン人工乳房インプラントにおいて、シェルの下端部の穴に形成された接合部位の構造が、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合した構造をなすことを特徴とする、応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントである。
【0025】
このとき、前記低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチの厚さは100μm以下であることを特徴とし、前記物性補完用パッチの厚さは300〜700μmであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、シリコン人工乳房インプラント製造方法において、人工乳房シェルを獲得するために、乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階(S100)と、シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階(S200)と、前記モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階(S300)と、前記の着脱された人工乳房シェルの穴に、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合するパッチ接合段階(S400)と、前記パッチ接合が完成したシェルに充填物質を充填する充填段階(S500)とを含んで構成される、応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント製造方法であることを特徴とする。
【0027】
ここで、前記人工乳房シェル獲得段階(S300)で、人工乳房シェルの下端部に穴を形成するとき、穴のカッティング断面の傾斜角を30度以下にすることを特徴とする。
【0028】
以下、本発明に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント及びその製造方法を実施例を通して詳細に説明する。
【0029】
図3は、本発明の一実施例に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントの接合構造を示した状態図である。
【0030】
図4は、本発明の一実施例に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントの応力分散を示した状態図である。
【0031】
図3に示したように、本発明に係る応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラントは、充填物注入穴の接合部位の構造が、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチ50aと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチ50bとを接合材で二重パッチ接合した構造をなすことを特徴とする。
【0032】
前記薄膜のパッチ50a及び物性補完用パッチ50bは、いずれも有機シロキサン高分子(Polyorganosiloxane)材質からなる。また、前記使用可能な有機シロキサン高分子は、人体に移植した後、安全性を確保できるインプラント等級のものであり、シリカフィラーが使用可能である。
【0033】
本発明では、次のような材質を使用する。
【0034】
根本的に、有機シロキサン高分子は、主鎖がシランであり、シラン主鎖にメチル基のような有機基が付いた形態のものである。最も代表的なものとして、主鎖にメチル基が付いたポリジメチルシロキサンを例に挙げることができ、前記ポリジメチルシロキサンの単量体であるジメチルシロキサンのメチル基は、アルキル基、フェニル基、ビニル基などの有機基に置換可能である。
【0035】
例えば、前記ジメチルシロキサンは、メチルハイドロジェンシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシロキサン、トリフルオロプロピルシロキサンなどに置換され、これら単量体が重合された高分子を使用することができ、また、前記単量体からなるオリゴマーを用いた共重合体も使用可能である。
【0036】
特に、多重薄膜のパッチ50aは、シリコン高分子の分子的配向性、高い密集性、高分子間の高い結合力のため、構造的に安定したシリコン高分子を使用したものであって、低分子量のシリコンオイル分子が物理的及び化学的に通過しにくいシリコン弾性重合体(Silicone Elastomer)遮断膜が前記パッチ50aのシリコンポリマー層の中問層に積層されている。また、前記遮断膜層の厚さは、遮断効果のために多様に調節可能であるが、効率性と安全性を考慮した望ましい遮断膜層の厚さは10〜80μmである。
【0037】
例えば、前記多重薄膜のパッチ50aの材料として、ジフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとが重合されたポリマーを使用する場合、前記多重薄膜のパッチ50aの中問層に積層される遮断膜には、メチル3,3,3―トリフルオロプロピルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとが重合されたシリコン弾性重合体を使用することができる。
【0038】
前記低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチ50aの厚さは100μm以下であり、前記物性補完用パッチ50bの厚さは300〜700μmである。
【0039】
また、前記シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチ50bには、本発明で言及したシリコンポリマー材料が使用されるが、多重薄膜パッチ50a又はシェルとは異なる物性のシリコン材料も使用可能である。これは、多重薄膜のパッチ50aと物性補完用パッチ50bとが接合材で接合された二重接合構造体の物性をシェルの物性と同一にするためである。
【0040】
すなわち、図3に示したように、多重薄膜パッチ50aの厚さによってシェルより多少厚くなった二重パッチ接合構造体の物性をシェルの物性と同一にするためには、物性補完用パッチ50bの材質としては、シェルに使用されたシリコン材料の物性に比べて多少軟質のものを使用しなければならない。
【0041】
このために、多重薄膜パッチ50a、物性補完用パッチ50b及びシェルの製造に使用されたシリコン原材料において、それぞれ異なる含量のシリカフィラーを含むシリコン原材料を使用することができる。すなわち、シェルと接合部位との厚さによるシリコン原材料のシリカフィラー含量を調節し、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと接合部位は同一又は類似した物性を示すことができる。
【0042】
また、同一の理由で、多重薄膜パッチ50a、物性補完用パッチ50b及びシェルの製造に使用されたシリコン原材料において、それぞれシリコン材料のビニル基、フェニル基、フルオロ基などの機能基成分量の調節によっても、シェルと接合部位が同一の物性を示すことができ、これは、シリコン材料の重合度の調節を通しても達成可能である。
【0043】
例えば、シェルと多重薄膜のパッチ材料として、シリカの含量がいずれも25〜30%であるジフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとが重合されたポリマーが使用される場合、前記物性補完用パッチ50bの材料としては、接合部位の厚さ設定を勘案して、シリカの含量がいずれも5〜20%であるジフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとが重合されたポリマーを使用することができる。
【0044】
前記多重薄膜のパッチ50a、物性補完用パッチ50b及びシリコンシェルの接合に使用される接合材としては、本発明で言及したシリコン原材料のうち一つを使用することができ、形態としては、ガム(Gum)タイプのシリコン、液状タイプのシリコン(LSR:Liquid Silicone Rubber)を使用することができる。
【0045】
前記多重薄膜のパッチ50a及び物性補完用パッチ50bの二重パッチ接合構造に作用する応力を説明すると、図3及び図4に示したように、左右の伸張力によって作用する応力と、穴のカッティング断面の傾斜角(30度)方向の伸張力によって作用する応力とが同時に接合境界点30に作用し、2軸方向に応力が分散され、接合境界点30はシリコンシェルと同一の伸張特性を有するので、前記多重薄膜のパッチ50a及び物性補完用パッチ50bの二重パッチ接合構造は、一体のシリコンシェルで構成された場合と同じ効果を示すようになる。
【0046】
併せて、本発明の2軸方向応力分散構造は、応力に対する破断点を除去し、引裂強度が弱いシリコンの短所を補完できる接合構造であり、30度以下の傾斜角を用いた接合構造で接合部位150a、150bの断面積を大きくし、接合力を上昇させ、パッチ接合構造の耐久性を向上させることができる。
【0047】
したがって、本発明に係る多重薄膜のパッチ50a及び物性補完用パッチ50bの二重接合構造は、シェルと接合部位との間の境界点の物性差による応力集中現象を防止し、人工乳房インプラントの最大の副作用である破裂率を低下させるとともに、シェルの厚さと同一の厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善し、製品の寿命を極大化できるシリコン人工乳房インプラントを提供するようになる。
【0048】
また、図5に示したように、本発明に係るシリコン人工乳房インプラント製造方法は、人工乳房シェルを獲得するために、乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階(S100)と、シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階(S200)と、前記モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階(S300)と、前記の着脱された人工乳房シェルの穴に、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合するパッチ接合段階(S400)と、前記パッチ接合が完成したシェルに充填物質を充填する充填段階(S500)とを含んで構成されることを特徴とする。
【0049】
ここで、前記人工乳房シェル獲得段階(S300)で、人工乳房シェルの下端部に穴を形成するとき、穴のカッティング断面の傾斜角を30度以下にすることを特徴とする。
【0050】
具体的に説明すると、まず、人工乳房シェルを獲得するために乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸す(S100)。
【0051】
前記シリコン溶液に浸されたモールドを乾燥及び硬化させ、シリコン人工乳房シェルを獲得するが、例えば、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化(S200)させる。
【0052】
続いて、モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱(S300)するが、ここで、人工乳房シェルの下端部に穴を形成するとき、傾斜角を30度以下にすることによって接合面積の増加、応力に対する耐久性増大をもたらし、接合面が見えないことによって美しい外観を有するようになる。
【0053】
前記穴から人工乳房シェルを着脱すると、該当の穴を塞ぐために、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合する(S400)。
【0054】
前記穴に二重パッチ接合を行うために一般的にプレスなどのシリコンボンディング装置を用いるが、図1に示したように、従来の方式で付着する場合、接合面8a、8bの接合強度が短縮方向のみに維持されるが、本発明の接合方式では、図4に示したように、多数の接合面150a、150bの接合強度が同時に維持されるので、従来方式の単軸方向でない2軸方向に対する強度を維持できるようになる。2軸方向とは、水平方向と傾斜角(30度)方向を意味し、実際にインプラントが受ける応力に対して最も高い耐久力を有することのできる方向でもある。
【0055】
また、図1に示したように、従来の接合構造では、接合部位の厚さが1,000〜2,000μmであり、シェルと接合部位との物性差が著しく、シェルと接合部位との間の境界に多くの応力が集中するので、疲労に対して脆弱な部位になるしかなかった。しかし、図4に示したように、本発明の接合構造では、厚さが100μm以下である多重薄膜のパッチを使用するので、シェルと接合部位との厚さ偏差を最小化することができ、多重薄膜のパッチと厚さが300〜700μmである物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合し、人工乳房シリコンシェルの物性と最大限に同一の物性を示す本発明の接合構造は、応力に対して非常に強い構造になる。したがって、本発明の接合部位は、その厚さは薄いが、むしろ強い接合強度と強い応力を有するので、高い耐久性を有するようになる。
【0056】
前記シリコンボンディング装置の構成及び動作原理は、当業者であれば容易に理解可能であるので、それについての具体的な説明は省略する。
【0057】
前記のような製造方法を通して低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと物性補完用パッチとを二重パッチ接合した接合構造を有し、シェルとの厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すことのできる接合部位を構成し、応力の集中を最小化し、疲労に対する抵抗を極大化し、人工乳房インプラントの最大の副作用である破裂率を低下させるとともに、薄い接合部位の厚さによってインプラントの全体的な触感に優れ、安全性と有効性を改善し、製品の寿命を極大化できるシリコン人工乳房インプラントを提供するようになる。
【0058】
以上説明した内容は、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的思想や必須特徴を変更せずとも他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるだろう。したがって、以上説明した各実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解しなければならない。
【0059】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0060】
10…人工乳房シェル
30…接合境界点
50a…多重薄膜のパッチ
50b…物性補完用パッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン人工乳房インプラントにおいて、シェルの下端部の穴に形成された接合部位構造が、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合した構造をなし、前記二重パッチ接合構造は、シェルと同一又は類似した伸張特性(弾性)及び物性を示すことを特徴とする、応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項2】
前記低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチの厚さは100μm以下であり、前記物性補完用パッチの厚さは300〜700μmであることを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項3】
前記低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチには、低分子量のシリコンオイル分子が物理的及び化学的に通過しにくいシリコン弾性重合体遮断膜が前記パッチのシリコンポリマー層の中問層に積層されていることを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項4】
前記シリコン弾性重合体遮断膜の厚さは10〜80μmであることを特徴とする、請求項3に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項5】
前記遮断膜には、メチル3,3,3―トリフルオロプロピルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとが重合されたシリコン弾性重合体を使用することを特徴とする、請求項3に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項6】
前記物性補完用パッチには、シェルに使用されたシリコン材料の物性に比べて軟質のものを使用することを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項7】
前記多重薄膜パッチ及び物性補完用パッチは、シリカフィラーの含量を調節し、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項8】
前記多重薄膜パッチ及び物性補完用パッチは、それぞれシリコン材料のビニル基、フェニル基、フルオロ基の成分量を調節し、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項9】
前記多重薄膜パッチ及び物性補完用パッチは、それぞれシリコン材料の重合度を調節し、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項10】
前記接合材としては、ガムタイプのシリコン接合材又は液状タイプのシリコン(LSR:Liquid Silicone Rubber)接合材を使用することを特徴とする、請求項1に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項11】
前記二重パッチ接合構造は、左右伸張力によって作用する応力と穴のカッティング断面の傾斜角(30゜)方向伸張力によって作用する応力とが接合境界点に同時に作用し、応力が2軸方向に分散されることを特徴とする、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント。
【請求項12】
シリコン人工乳房インプラント製造方法において、人工乳房シェルを獲得するために乳房形状のモールドをシリコン溶液に浸すシリコン溶液浸漬段階(S100)と、
シリコン人工乳房シェルを獲得するために、乾燥装置を通してモールドに付着された人工乳房シェルを乾燥及び硬化させる乾燥及び硬化段階(S200)と、
前記モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱する人工乳房シェル獲得段階(S300)と、
前記の着脱された人工乳房シェルの穴に、低分子シリコンの流出防止層を含む薄い多重薄膜のパッチと、シェルと接合部位との厚さ偏差にもかかわらず、シェルと同一又は類似した物性を示すようにする物性補完用パッチとを接合材で二重パッチ接合するパッチ接合段階(S400)と、
前記パッチ接合が完成したシェルに充填物質を充填する充填段階(S500)と、を含んで構成されることを特徴とする応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント製造方法。
【請求項13】
前記人工乳房シェル獲得段階で、モールドに付着された人工乳房シェルの下端部に穴を形成し、モールドから人工乳房シェルを着脱するとき、人工乳房シェルの下端部に穴を形成するときの傾斜角を30度以下にすることによって接合面積の増加、応力に対する耐久性増大をもたらし、接合面が見えないことによって美しい外観を有することを特徴とする、請求項12に記載の応力集中を最小化したシリコン人工乳房インプラント製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−507167(P2013−507167A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533061(P2012−533061)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001825
【国際公開番号】WO2011/046273
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512092195)
【Fターム(参考)】