説明

快適性分布評価方法、快適性分布評価システム、空調制御システム及びコンピュータプログラム

【課題】本発明の目的は、店舗利用者に現在の店舗内環境を認識できるように、空調制御機器或いは空調制御システムから店舗利用者のそれぞれの携帯端末を利用して、店舗内の快適性分布を表示する評価方法、店舗利用者のそれぞれの携帯端末から、空調制御機器或いは空調制御システムの温度設定を変更できる空調制御システムを提供することである。
【解決手段】本発明に係る快適性分布評価方法は、屋内に所在する少なくとも一人のユーザから、前記ユーザの快適性に関する評価データを受信し、前記評価データに基づいて、前記空間内各場所の快適性を算出し、前記の算出された空間内の各場所の快適性を平均化し、前記の平均化されたユーザの居場所の快適性、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所のデータを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストア、百貨店のフロア等、多数の人間が自由に移動できる空間内の快適性の分布状態を評価する方法、評価するシステム、前記の評価システムを利用する空調制御システム及び前記評価方法を実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等の店舗や、百貨店のフロア等は、出入りする多数の利用者に不快を与えず、快適な温度環境を作り出すために、店舗の天井面などには空気調和装置が所定の位置に取り付けられ、店舗内の温度が所定温度に空調されている。
【0003】
多数の種類の商品を販売するホームセンターや郊外型スーパー等の大規模店舗では、莫大な数の商品が、「トイレタリーコーナー」、「文房具コーナー」等のカテゴリー別に分類され、これらの商品群の陳列棚等が需要者の通路を形成するように配置されている。このような陳列棚等は少なからず空気の流れに影響を与えるので、通路の位置によっては空調されにくい箇所と、空調制御されやすい箇所が生じる。
【0004】
更に、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗の場合、前記の陳列棚等の他に、店舗内には、生鮮食品や冷凍食品等が陳列される低温或いは冷蔵オープンショーケースが設置されている。これらの冷凍或いは冷蔵オープンショーケースから冷気が漏れ出るだけで無く、コンプレッサー等の圧縮機から熱も排出される場合、所定の位置に設置された限られた空調機器のみでは、店舗内に温度差が生じやすい。
【0005】
オープンタイプの低温ショーケースが設置されたスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗内を空調し、低温ショーケースが霜取動作する場合に十分な省エネ効果を得ることのできる空気調和装置および空気調和装置の制御方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1の制御方法によれば、オープンタイプの低温ショーケースの霜取動作に伴って前記低温ショーケースの庫内温度が霜取設定温度まで到達する前までに前記店舗内の温度を所定温度だけ降下させると共に、前記霜取動作終了後に前記低温ショーケースの庫内温度が庫内設定温度に復帰した後に前記店舗内の温度を復帰させる、という制御が行われる。
【0007】
また、特許文献2には、被検知領域を複数の領域に分割して各領域毎の温度を検知し、複数の表示領域を有し前記温度検知手段が検知した各領域の温度情報を各領域に対応させて表示する温度分布表示装置が開示されている。特許文献2の温度分布表示装置によれば、使用者は、室内空気の温度分布とそれに対する自分の位置を認識することができる。
【0008】
しかし、前記したように、各需要者及び店員(以下、「店舗利用者」という。)が所在する位置によって空調制御の程度が異なるため、複数の店舗利用者間で温度差が生じる場合がある。また、一般的に、「暑い」、「寒い」と不快に感じる温度や、「暖かい」、「涼しい」という快適性を感じる温度は、個人によって、或いは同一人であっても体調、作業量及び着衣量によって異なる。このように、温熱感覚は店舗利用者各人によって異なり、また、位置によって空調制御の程度が異なる。
【0009】
そのため、特許文献1の制御方法では、店舗内の各位置における温度を把握する機能を有していないので、店舗規模の拡大或いは店舗の内装の複雑化に伴って、温熱環境に対する要望に答えられないという問題がある。また、特許文献2の温度分布表示装置では、使用中の空調システムが複数の店舗利用者にどの程度の快適性を提供しているか、把握することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−024443号公報
【特許文献2】特開2001−153966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前述の従来技術の問題点を解決し、店舗利用者に現在の店舗内環境を認識できるように、空調制御機器或いは空調制御システムから店舗利用者のそれぞれのパーソナルコンピューター或いは携帯端末に、店舗内の快適性分布を通知する評価方法、評価システム及び前記の快適性の分布の評価方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、店舗利用者のそれぞれのパーソナルコンピューター或いは携帯端末から、空調制御機器或いは空調制御システムの温度設定を変更できる空調制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明に係る快適性分布評価方法は、屋内に所在する少なくとも一人のユーザから、前記ユーザの快適性に関する評価データを受信し、前記評価データに基づいて、前記空間内各場所の快適性を算出し、前記の算出された空間内の各場所の快適性を平均化し、前記の平均化されたユーザの居場所の快適性、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所のデータを表示する、ことを特徴とする。
【0014】
前記の快適性分布評価方法によれば、コンビニエンスストア、ホームセンターや郊外型スーパー等の大規模店舗、ビジネスオフィス等の所定の空間内の快適性の分布をモニタリングすることができる。これによって、前記空間内の人間にとってより快適な環境への移動を促すことができる。
【0015】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価方法は、前記の評価データとして前記ユーザが希望する屋内温度が含まれるものを用いて、前記評価データに基づいて、不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のうち少なくともいずれかを用いて前記空間内各場所の快適性を算出する構成にすることができる。この快適性分布評価方法によれば、空間内の人間の数によらず、前記の所定の空間内の快適性の分布を正確に評価できる。
【0016】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価方法は、希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のいずれかと同じ関数特性で与える構成にすることができる。この快適性分布評価方法によれば、空間内の人間の数によらず、前記の所定の空間内の快適性をきめ細かく評価できる。
【0017】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価方法は、前記の評価データとして前記ユーザが希望する屋内温度が含まれるものを用いて、希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を線形あるいは非線形で与える構成にすることができる。この快適性分布評価方法によれば、前記の所定の空間内のレイアウトと快適性の分布との関係を視覚化することができる。
【0018】
本発明に係る快適性分布評価システムは、屋内に所在する少なくとも一人のユーザの通信手段から、前記ユーザの快適性に関する評価データを受信する受信手段と、前記評価データに基づいて、前記空間内各場所の快適性を算出し、且つ前記の算出された空間内の各場所の快適性を平均化する快適性算出手段と、前記の平均化されたユーザの居場所の快適性、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所のデータを表示する快適性表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
前記の快適性分布評価システムによれば、前記の所定の空間内の快適性の分布をモニタリングすることができるので、前記空間内の人間により快適な環境への移動を促すことができる。
【0020】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価システムの前記の通信手段は、前記のユーザが希望する屋内温度を前記の受信手段に送信する機能を備え、前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、前記の快適性算出手段は、前記の希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を線形あるいは非線形で与える機能を備える構成にすることができる。
【0021】
前記の快適性分布評価システムによれば、コンビニエンスストア、ホームセンターや郊外型スーパー等の大規模店舗、ビジネスオフィス等の所定の空間内の快適性の分布をモニタリングすることができる。これによって、前記空間内の人間にとってより快適な環境への移動を促すことができる。
【0022】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価システムの前記の通信手段は、前記のユーザが希望する屋内温度を前記の受信手段に送信する機能を備え、前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、前記の快適性算出手段は、前記評価データに基づいて、不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のうち少なくともいずれかを用いて前記空間内各場所の快適性を算出する機能を備える構成にすることができる。この快適性分布評価システムによれば、空間内の人間の数によらず、前記の所定の空間内の快適性をきめ細かく評価できる。
【0023】
また、前記構成において、本発明に係る快適性分布評価システムの前記の快適性算出手段は、希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のいずれかと同じ関数特性で与える機能を備える構成にすることができる。この快適性分布評価システムによれば、空間内の人間の数によらず、前記の所定の空間内の快適性の評価機能を更に高めることができる。
【0024】
本発明に係る空調制御システムは、前記構成の快適性分布評価システムを利用して、前記ユーザが希望する屋内温度を変数とする次の関数式に基づいて、新たな設定温度を算出する手段を有し、


・・・(4)
(但し、Tsetは新たに設定される標準温度;Tsは既に設定されている標準温度;TRは室温;TAiはユーザiが希望する標準温度;Nはユーザの総数或いは通信手段の総数;ωiはユーザiに関する重み付け係数)、
前記の式に基づいて算出された標準温度Tsetに設定する温度制御手段を備えたことを特徴としている。
【0025】
前記の空調制御システムによれば、店舗利用者のそれぞれのパーソナルコンピューター或いは携帯端末から、空調制御機器或いは空調制御システムの温度設定を変更できる。また、店舗利用者のそれぞれのパーソナルコンピューター或いは携帯端末に、店舗内或いはオフィス内の映像や見取り図と対応する画像を表示し、前記の快適性分布及び店舗利用者がそれぞれ希望する設定温度を前記の画像に重ね合わせて表示することができる。
【0026】
また、本発明に係る前記の快適性分布評価方法は、コンピュータプログラムを用いて実行させることができる。そのため、本発明に係る前記の空調制御システムは、既存の空調設備を用いて設置場所等を変更すること無く、構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空調制御システムの概念図である。
【図2】図1の空調管理装置10の構成図である。
【図3】前記空間STRに対する空調制御部12の制御範囲を示す概念図である。
【図4】(A)図1のディスプレイ50の表示方法の一つを示す図である。(B)図1のディスプレイ50の他の表示方法を示す図である。
【図5】(A)本発明の第2実施形態に係るディスプレイ50の表示方法の一つを示す図である。(B)本発明の第2実施形態に係るディスプレイ50の他の表示方法を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の空調制御システムの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の湿度センサを、以下の実施形態1に基づいて具体的に説明するが、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0029】
[第1の実施形態]
本発明の第1実施形態に係る空調制御システムの概念図を図1に示す。また、本発明の第1実施形態に係る空調制御システムの快適性算出手段の各構成要素の構成図を図2に示す。図1に示す空調制御システム1は、コンビニエンスストア、郊外型スーパー或いはビジネスオフィス等に設置される空調室外機21a乃至21c、空調室内機22a乃至22dからなる空気調和装置20a乃至20dを図6に示すように制御する。
【0030】
尚、空調調和装置は、図1において4つ記載されているが、本発明の空調制御システムにおいて、少なくとも一つ以上設置されていれば良く、数は限定されない。例えば、単一の空調調和装置のみで構成することもでき、或いは、5つ以上の空調調和装置で構成することができる。また、空調制御される空間STR内に4名の店舗利用者のみ記載されているが、1名であっても、5名以上であっても良く、数は限定されない。
【0031】
図1に示す空調制御システム1は、主として、快適性管理手段10、通信手段31、32、33、34、空調室外機21a乃至21d、空調室内機22a乃至22d、受信手段40及び快適性表示手段としてのディスプレイ50を備えている。空調室外機21a乃至21d及び空調室内機22a乃至22dとは、制御線60a乃至60dを介して快適性管理手段10と接続されている。
【0032】
図2に示すように、空調管理装置10は、主として、快適性算出手段11、空調制御部12及び送信部13を備えている。
【0033】
店舗利用者は前記空間STR内を自由に移動して、各人が保有する通信手段31、32、33、34を用いて、それぞれの居場所における快適性の評価を送信する。尚、前記通信手段31、32、33、34は通信機能があれば良く、各人の快適性の評価は、有線LAN回線、無線LAN等の通信網を経由して前記の空調管理装置10へ送信される。また、前記通信手段31、32、33、34として、パーソナルコンピューター、携帯端末、携帯電話等のいずれかを利用することができる。
【0034】
受信手段40は、前記通信手段31、32、33、34を通じて送信される、各人の居場所における快適性の評価データを受信する(図6の処理S1)。受信された前記の評価データは、通信線70経由で快適性算出手段11に送信される。
【0035】
評価データは、店舗利用者のそれぞれの居場所における快適性に関する情報であって、コンピュータによる演算処理可能な数値データ化され得るものであれば、特に限定されない。例えば、人間の聴覚、嗅覚、視覚のいずれかに対する刺激も、コンピュータによって演算処理可能になるように数値データ化しておけば、前記の快適性に関する情報として含めることができる。また、「風が強い」、「心地よい風が吹く」、「日光が強い」、「湿っぽい」という体感的な情報は、温度との関連性が高いので、これらの情報も段階的に数値化して、快適性を総合的に評価するための情報として含めることも可能である。
【0036】
また、前記通信手段31、32、33、34は、希望する屋内温度等、各人の居場所の空調や環境に関する要望を評価データの一部として送信することも可能である。尚、希望する屋内温度を評価データの一部として送信する場合、ディスプレイ50或いは各人の通信手段31、32、33、34等に、空調室内機22a乃至22dの設定温度、各人の居場所近傍の温度を表示させておくことが好ましい。
【0037】
快適性算出手段11は、各人の居場所における快適性の評価データに基づいて、各人の居場所における快適性を算出する(図6の処理S2)。この算出された快適性は、ディスプレイ50に表示しても良い(図6の処理S2a)例えば、希望する屋内温度が前記の評価データに含まれている場合、快適性算出手段11は、前記の希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適性が高く、逆に前記温度差が大きいときに不快性が高くなるような近似曲線等によって、温度差と快適性の関係を線形あるいは非線形の関数として近似する。
【0038】
店舗利用者が不在の箇所の快適性は、各人の居場所における快適性の評価データ及びその評価データに基づいて算出された快適性を利用して、次のようにして算出することができる。まず、空間STR内に存在する人数Nの店舗利用者のうち、店舗利用者i(1≦i≦N)の居場所を空間座標及び時間(x,y,t)で表し、店舗利用者i(1≦i≦N)の居場所の快適性を空間座標及び時間の関数F(x,y,t)を定義する。
【0039】
前記の関数F(x,y,t)として、予測平均温冷感申告(PMV;Predicted Mean Vote)、予測不満足度(PPD;Predicted Percentage of Dissatisfied)、標準有効温度(SET;Standard Effective Temperature)及び不快指数(DI;Discomfort Index)等のうちのいずれかを選択して用いることができる。
【0040】
そして、店舗利用者iの居場所(x,y,t)における快適性の評価データ及びその評価データに基づいて快適性を算出し、最小二乗法を用いることにより、店舗利用者iが存在しない箇所も含まれるように、店舗利用者iに関する快適性の関数F(x,y,t)の値を算出することができる。
【0041】
快適性の関数F(x,y,t)は、店舗内の温度分布が定常状態にある場合、tによる影響を無視することができるので、簡易には、店舗利用者iが希望する標準温度TAi(x,y)と店舗利用者iの居場所における室温TR(x,y)の温度差の関数として定義できる。例えば、快適性の関数F(x,y,t)は、次の(1)式のように、店舗利用者iが希望する標準温度TAi(x,y)と店舗利用者iの居場所における室温TR(x,y)との差の絶対値のべき乗の関数として定義できる。


・・・(1)
(但し、Cは定数;nは1以上の整数)
【0042】
或いは、快適性の関数F(x,y,t)は、次の(2)式のように定義しても良い。


・・・(2)
(但し、C、C及びCは、定数)
【0043】
前記の(1)式及び(2)式以外にも、快適性の関数F(x,y)を指数関数として定義しても良い。
【0044】
前記の快適性算出手段11は、前記通信手段31、32、33、34から送信された各人の居場所の温度等の快適性に関する評価データと前記の(1)式及び(2)式等を用いて、空間STR内の各人の居場所の快適性の値を算出する(図6の処理S3)。そして、算出された快適性の値は送信部13からディスプレイ50に送信される。
【0045】
ディスプレイ50は、空間STR内の各人の居場所における温度の快適性を図4(A)のように表示する(図6の処理S3a)。しかし、空間STR内の各人の居場所の快適性の相関関係が把握し難い場合がある。そのため、快適性算出手段11は、各人の居場所(x,y)における快適性F(x,y)を以下の(3)式で表される関数F(x,y)によって近似し(図6の処理S4)、その結果を図4(B)のようにディスプレイ50に表示させる(図6の処理S4a)。


・・・(3)
(但し、ωiは、店舗利用者iに関する快適性の関数F(x,y)に関する重み付け係数;(x,y)は、空間STR内の同一平面内の任意の位置)
【0046】
尚、(3)式において、重み付け係数ωiを全ての店舗利用者iに関して平等に1/Nとすることもできる。しかし、モニターとすべき重要な顧客とそれ以外の顧客とを差別化する場合、各店舗利用者から送信される快適性に関する評価データ及び快適性の値も、顧客層の需要度に応じて重みを付け、総合評価を行うこともできる。
【0047】
快適性算出手段11は、各人の居場所における快適性の評価データに基づいて、空間STR内の理想的な快適性の分布関数を求めることもできる。この場合、快適性算出手段11は、理想的な快適性の分布関数と快適性の総合的な分布関数とを比較する(図6の処理S5)。快適性算出手段11は、空間STR内の同一の箇所(x,y)に関して理想的な快適性の分布関数の値と、快適性の総合的な分布関数の値との差が、所定値を超えて離れていないか否かを調べる(図6の処理S5)。
【0048】
快適性算出手段11は、各人の居場所における快適性の評価データに基づいて、空間STR内の理想的な快適性の分布関数を求めることもできる。この場合、快適性算出手段11は、理想的な快適性の分布関数と快適性の総合的な分布関数とを比較する(図6の処理S5)。快適性算出手段11は、空間STR内の同一の箇所(x,y)に関して理想的な快適性の分布関数の値と、快適性の総合的な分布関数の値との差が、所定値を超えて離れていないか否かを調べる(図6の処理S5)。
【0049】
そして、理想的な快適性の分布関数の値と、快適性の総合的な分布関数の値との差が、所定値を超えて離れている場合、理想的な分布曲線と、快適性の総合的な分布関数との差が減少するように、空調室外機及び空調室内機は制御される(図6の処理S7)。一方、前記の差が所定値の範囲内であれば、現在の快適性を維持するように、空調室外機及び空調室内機を制御する(図6の処理S6)。
【0050】
[第2の実施形態]
本発明の第2実施形態に係る空調制御システムは、快適性算出手段11が、不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のうち少なくともいずれかを用いて前記空間内各場所の快適性を算出する機能を備えることを特徴としている。
【0051】
すなわち、第2実施形態における快適性算出手段11は、設定された屋内温度及び各人の居場所における温度のいずれかと、各人がその居場所において希望する屋内温度を用いて快適性を評価する手法の他に、前記のPMV、PPD、SET及びDI等を利用して、前記空間内各場所の快適性を算出することができる。
【0052】
また、第2実施形態における快適性算出手段11は、空間STR内のユーザiから送信される屋内温度を変数とする次の関数式に基づいて、新たな設定温度を算出する機能を備える。



(但し、Tsetは新たに設定される標準温度;Tsは既に設定されている標準温度;TRは室温;TAiはユーザiが希望する標準温度;Nはユーザの総数或いは通信手段の総数;ωiはユーザiに関する重み付け係数)
【0053】
快適性算出手段11は、各人の居場所における快適性の評価データに基づいて、各人の居場所における快適性を算出する。
【0054】
前記空間内各場所の快適性と、前記の算出された空間内の各場所の快適性の平均は、ディスプレイ50に表示される。また、前記のディスプレイ50は、前記の平均化された快適性及び不快性の少なくともいずれかを位置の関数として、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所を表示する。
【0055】
温冷感は個人差があるので、各人からの快適性の評価データに基づいて算出された快適性を位置の関数として表示した場合、図5(A)に示されるようにずれがある。図5(A)のc31乃至c34は、通信手段31乃至34を介して各人から申告された快適性の評価データに基づいて快適性算出手段11が算出した不快性(PMV:予測平均温冷感申告)をそれぞれ示す曲線である。図5(B)は、図5(A)に示されるような各人から送信された空間STR内の各位置における不快性を平均化して表示して、位置の関数AVG(X,Y)として表示するものである。
【0056】
第2実施形態における空調制御部12は、空間STR内の温度が(4)式に基づいて算出された標準温度Tiになるように、空調室外機21a乃至21c及び空調室内機22a乃至22dに対して、制御線60a乃至60dを介して冷房或いは暖房の制御信号を送信する。尚、新たに設定される標準温度Tiは、空間STRの特定の区画のみに設定することができる。例えば、図3のように空間STRをL行N列(L及びNは、2以上の整数)のマトリックスに区画し、l行目且つn列目の区画のみ、或いは前記の区画を含む近傍の温度が標準温度Tiになるように、空調室外機及び空調室内機を制御することができる。
【0057】
第2実施形態に係る空調制御システムは、コンビニエンスストア、ホームセンターや郊外型スーパー等の大規模店舗、ビジネスオフィス等の所定の空間内の快適性の分布をモニタリングすることができる。これによって、前記空間内の人間にとってより快適な環境への移動を促すことができる。また、第2実施形態に係る空調制御システムの設定温度は、店舗利用者がそれぞれの携帯端末を用いて設定できるので、店舗利用者の要望を正確且つ迅速に反映することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 空調制御システム
10 空調管理装置
11 快適性算出手段
12 空調制御部
13 送信部
20a 空気調和装置
20b 空気調和装置
20c 空気調和装置
20d 空気調和装置
31 通信手段
32 通信手段
33 通信手段
34 通信手段
40 受信手段
50 ディスプレイ(快適性表示手段)
60a 制御線
60b 制御線
60c 制御線
60d 制御線
70 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間内の快適性をモニタリングする快適性分布評価方法であって、
屋内に所在する少なくとも一人のユーザから、前記ユーザの快適性に関する評価データを受信し、
前記評価データに基づいて、前記空間内各場所の快適性を算出し、
前記の算出された空間内の各場所の快適性を平均化し、
前記の平均化されたユーザの居場所の快適性、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所のデータを表示する、ことを特徴とする、快適性分布評価方法。
【請求項2】
前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、
前記評価データに基づいて、不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のうち少なくともいずれかを用いて前記空間内各場所の快適性を算出したことを特徴とする請求項1に記載の快適性分布評価方法。
【請求項3】
希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、
前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のいずれかと同じ関数特性で与えたことを特徴とする請求項2に記載の快適性分布評価方法。
【請求項4】
前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、
希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を線形あるいは非線形で与えたことを特徴とする請求項1に記載の快適性分布評価方法。
【請求項5】
前記の評価データは、各人の居場所(x,y)における快適性F(x,y)を以下の式で表される関数F(x,y)によって近似され、その結果を表示することを特徴とする請求項2に記載の快適性分布評価方法。



(但し、ωiは、店舗利用者iに関する快適性の関数F(x,y)に関する重み付け係数;(x,y)は、空間STR内の同一平面内の任意の位置)
【請求項6】
屋内に所在する少なくとも一人のユーザの通信手段から、前記ユーザの快適性に関する評価データを受信する受信手段と、
前記評価データに基づいて、前記空間内各場所の快適性を算出し、且つ前記の算出された空間内の各場所の快適性を平均化する快適性算出手段と、
前記の平均化されたユーザの居場所の快適性、前記の平均化された快適性が最も良好になる居場所及び前記の平均化された不快性が最も低い居場所のデータを表示する快適性表示手段と
を備えることを特徴とする、快適性分布評価システム。
【請求項7】
前記の通信手段は、前記のユーザが希望する屋内温度を前記の受信手段に送信する機能を備え、
前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、
前記の快適性算出手段は、前記の希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を線形あるいは非線形で与える機能を備えることを特徴とする請求項6に記載の快適性分布評価システム。
【請求項8】
前記の通信手段は、前記のユーザが希望する屋内温度を前記の受信手段に送信する機能を備え、
前記の評価データには、前記ユーザが希望する屋内温度が含まれており、
前記の快適性算出手段は、前記評価データに基づいて、不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のうち少なくともいずれかを用いて前記空間内各場所の快適性を算出する機能を備えることを特徴とする請求項6に記載の快適性分布評価システム。
【請求項9】
前記の快適性算出手段は、希望する屋内温度と空間内各場所の温度との温度差の大きさを快適性の指標に用い、前記温度差が小さいときに快適として、温度差と快適性の関係を不満足者率(PPD)及び快適性指標PMV値のいずれかと同じ関数特性で与える機能を備えることを特徴とする請求項7に記載の快適性分布評価システム。
【請求項10】
前記の快適性算出手段は、各人の居場所(x,y)における快適性F(x,y)を以下の式で表される関数F(x,y)によって近似し、その結果を前記の快適性表示手段に表示させることを特徴とする請求項7に記載の快適性分布評価システム。



(但し、ωiは、店舗利用者iに関する快適性の関数F(x,y)に関する重み付け係数;(x,y)は、空間STR内の同一平面内の任意の位置)
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれかに記載の快適性分布評価システムを有する空調制御システムであって、
前記ユーザが希望する屋内温度を変数とする次の関数式に基づいて、新たな設定温度を算出する手段を有し、



(但し、Tsetは新たに設定される標準温度;Tsは既に設定されている標準温度;TRは室温;TAiはユーザiが希望する標準温度;Nはユーザの総数或いは通信手段の総数;ωiはユーザiに関する重み付け係数)
前記の式に基づいて算出された標準温度Tsetに設定する温度制御手段を備えたことを特徴とする、空調制御システム。
【請求項12】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一つに記載の快適性分布評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104632(P2013−104632A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249801(P2011−249801)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(511108057)ステラグリーン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】