説明

急速な分散性フェージングチャンネルのためのチャンネル推定

本発明は、急速なフェージング通信チャンネルにおける、特にOFDMシステムに関するチャンネル推定の問題に取組む。本発明は、WLAN及びWiMax等の既存及び将来のシステムにおける広範な用途を見出す。特に、本発明は、高い移動性による急速な分散型フェージングチャンネルに関するチャンネル推定及びデータ検出の方法に関する。本発明は、受信された送信のシンボルからパイロットトーンを抽出し、パイロットトーンを用いて、反復最大尤度チャンネル推定過程によりチャンネル周波数応答における変化を推定することにより、受信された送信のシンボルを復号する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速なフェージング通信チャンネルにおける、特にOFDMシステムに関するチャンネル推定の問題に取組む。本発明は、WLAN及びWiMax等の既存及び未来のシステムにおける広い用途を見出す。特に本発明は、高い移動性に起因した急速な分散性フェージングチャンネルのためのチャンネル推定及びデータ検出の方法に関係する。他の局面において、本発明は、方法を実行するよう設計された受信器及びソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重(OFDM)変調は、次世代無線移動通信の送信に必要な高いデータ伝送速度を達成するのに有望な手法である。OFDMは、デジタルオーディオブロードキャスティング(DAB)、デジタルビデオブロードキャスティング(DVB−T)、IEEE802.11aローカルエリアネットワーク(LAN)規格、及びIEEE802.16aメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)規格等のいくつかの無線規格において採用されてきた。
【0003】
OFDMは、N個の情報データからなるブロックがN個の副搬送波上で同時に送信される、ブロック変調スキームである。特に、OFDM変調器は、N個の情報シンボルからなるブロック上で逆離散型フーリエ変換(IDFT)の後にデジタル−アナログ変換(DAC)として実行される。N個の情報データからなるブロックは通常、時間領域における1つのOFDMシンボルとして言及される。OFDMシンボルの持続時間は、単一の搬送波システムのそれよりも10倍ある。この特徴により、OFDMシステムは、周波数選択フェージングチャンネル環境に対して強固である。
【0004】
OFDMの1つの利点は、周波数選択フェージングチャンネルを周波数平面フェージングサブチャンネルの同時コレクションへ変換できることである。もう1つの利点は、各OFDMシンボルのサイクリックプレフィックス(CP)がシンボル相互干渉(ICI)効果を完全に消すことである。OFDMのもう1つの利点は、スペクトル効率である。副搬送波は、対応する時間領域波形の直交性を維持するのに必要な最小の周波数分離を有し、結果として、異なる副搬送波に対応する信号スペクトルが周波数において重なり合う。また、OFDMは、送信器及び受信器において、逆高速フーリエ変換(IFFT)及び高速フーリエ変換(FFT)等の高速信号処理アルゴリズムによって実行できる。
【0005】
チャンネル状態情報の知識を用いて、コヒーレントな検出は、ディファレンシャル検出手法による信号対ノイズ比(SNR)における3dB利得を備えたOFDMシステム上で実行可能である。現在のOFDMシステムは、チャンネルが1つのOFDMフレーム内で静的であると仮定し、プリアンブルから求めたチャンネル推定を用いて、フレーム内の残りデータシンボルを回復する。しかし、この手法は、高い移動性を備えた急速な分散性フェージングチャンネルには不十分である。単一のOFDMシンボル内でさえも、チャンネルの時間変化は、高いドップラー拡散状態で生じ、これは、搬送波相互干渉(ICI)を導くことがあり、副搬送波間の直交性を損なう。従って、時間及び周波数の両方の選択性を備えた急速な分散性フェージングチャンネルは、OFDMシステムにおいて、チャンネル推定及び追跡を、取組むべき課題にしている。
【0006】
OFDMに対する正確なチャンネル推定及び追跡の目的のため、パイロットシンボルがしばしば、送信前にブロックへ多重化される。その後、チャンネル推定は、補間により受信器において実行できる。多数の手法が以下のように提案されてきた。
基本的に全パイロット副搬送波上で最小二乗(LS)手法の、時間領域における最大尤度推定器(MLE)。
単一の特異値分解(SVD)又は周波数領域フィルタリングに基づくチャンネル推定器。また、時間領域フィルタリングは、チャンネル推定器をさらに改善するのに提案されてきた。
異なる時間及び周波数におけるチャンネル周波数応答の相関を探索する手法。時間領域における強固な最小平均二乗誤り(MMSE)チャンネル推定器(MMSEE)、ここでチャンネル周波数応答は、一時的チャンネル推定のFFTをとることで求められる。この作業は、時空間符号化を用いて送信器の多様性を備えたOFDMシステムに拡張されてきた。
チャンネル推定のさらなる単純化は、マトリックス反転を回避するために、先のOFDMシンボルにおいて離間トレーニングシーケンス及びチャンネル推定を用いて提案されてきた。
また、エンハンスドチャンネル推定が提案され、多数の入力及び多数の出力(MIMO)における推定されたチャンネル遅延プロフィールを利用する。
しかし、上記全てのチャンネル推定手法は、チャンネルが少なくとも一つのOFDMシンボル持続時間に一定のままであることを前提とする。
【0007】
この前提に従わない、他の手法が、例えば以下のように提案されてきた。
線形MMSE(LMMSE)チャンネル推定器は、所定の時間スロットにある全副搬送波をパイロットに割り当てる時間領域において提案されてきた。
線形補間方法は、遅変化マルチパスフェージングチャンネルにおける隣接OFDMシンボルの二つのチャンネル推定間でチャンネルインパルス応答を推定するのに提案されてきた。
部分チャンネル情報の線形補間とLS手法とに基づくチャンネル推定器。
受信器で離散変換の代わりに連続フーリエ変換を利用するウィーナーフィルタリング手法。
MMSEベースの検出を用いて二次元多項式表面関数としてチャンネル応答をモデル化。
基本的拡張モデル(BEM)でチャンネルを表現し、離散直交レジェンド多項式を用いて部分チャンネル情報の補間からチャンネルインパルス応答を求めることにより、LMMSE推定を近似する。
低い複雑性を達成するためにFFT及び特定の時間領域パイロット信号を用いてチャンネルを推定する。しかし、時間領域パイロット信号に対する既存の利用が原因で、それは、既存のOFDM規格との互換性がないことがある。
【0008】
データ生成チャンネル推定が提案され、ハード決定データをフィードバックし、そのデータは“0”又は“1”の値を有する復号化ビットであり、チャンネル状態情報を再び推定する。この方法は、ハード決定データ情報を用いて、比較的少ないパイロットを必要とする。しかし、現在のOFDMシンボルの再検出というよりは次のOFDMシンボルに対する初期のチャンネル推定において、再び推定されたチャンネル情報のみ使用され、ハード決定データは、チャンネル推定前に再符号化及び再変調されねばならない。また、チャンネル推定の確実性は、エラー伝搬を回避するために、ハード決定データシンボルの精度に依存する。
【0009】
実施の観点では、MMSEベースのチャンネル推定手法は、チャンネル状態情報の時間及び周波数統計の両方を必要とし、それは、(時変的で)ランダムな量であり、通常予め知られない。また、この手法は、必要な周波数マトリックス反転に従って複雑化される。
【0010】
他方で、MLEベースの手法は、未知の決定論的量としてチャンネル状態情報を扱い、チャンネル統計又は動作SNR上で必要な情報はなく、それが実際的である。MLEは、クレーマーラオ下界(CRLB)を達成する最小分散不偏(MVU)推定器を提供する。平均二乗誤り(MSE)に対するさらなる改善は、チャンネル状態情報が決定論的量として扱われる限り不可能である。MMSEベースの手法と比較して、MLEは、理論的に低い性能を有するものの、より実際的である。しかし、MLEは、最大チャンネル遅延拡散により決定される最小パイロット数を必要とする。
【0011】
本明細書で用いる表記は以下の通りである。マトリックス及びベクトルは、太字の記号により示され、(・)、(・)及び(・)は、複素共役、置換及びエルミート置換を示す。E{・}は、統計的期待値を意味する。[X]i,jは、行列Xの(i、j)番目の要素を示し、同様に、[x]は、ベクトルxの要素iを示す。最後に、{x}は、シーケンスxを示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
マルチパスチャンネル上に送信するためのチャンネル推定とデータ検出との方法であって、通信チャンネル上の送信を受信する過程であって、前記送信は、一連のフレームを具備し、各フレームは、情報データからなる一連のブロック又はシンボルを具備し、各シンボルは、多数のサンプルに分割され、多数のサンプルは、多数の副搬送波を用いて同時に送信され、パイロットトーンは、各シンボルに挿入され、チャンネル推定とデータ検出とを支援する、過程と、前記受信された送信のシンボルからパイロットトーンを抽出し、前記パイロットトーンを用いて、反復最大尤度チャンネル推定過程によりチャンネル周波数応答における変化を推定することによって前記受信された送信のシンボルを復号する過程であって、前記推定過程が第1の反復において、パイロットトーンから求めたシンボルに関するチャンネル周波数応答の推定から、信頼値又はそれに関連する信頼性を有する情報であるソフト復号データ情報を導出する段階と、少なくとも第2の反復において、前記パイロットトーンと同時に仮想パイロットトーンとして前記ソフト復号データ情報を用いて、前記シンボルに関する前記チャンネル周波数応答を再び推定する段階とを具備する、過程と、を具備する。
【0013】
前記第1の反復、初期推定段階において、粗いチャンネル周波数応答は、パイロット位置で求めたチャンネルダイナミクスの低域フィルタリングを介して前記チャンネル変化を追跡することによって求められる。周波数領域移動平均窓(MAW)フィルタリングが適用されて推定ノイズを低減する。
【0014】
前記第2の反復、反復推定段階において、パイロットシンボル及びソフト復号データ情報の両方を用いて、チャンネル周波数応答を結合的に推定する。再び、周波数領域MAWフィルタリングが適用され、前記推定ノイズを低減する。
【0015】
最大率結合(MRC)原理を用いて、周波数領域及び時間領域MAWフィルタリングにおけるチャンネル推定に関する最適重み値を導出する。
【0016】
前記第2及び後続の反復後、最大尤度(ML)原理を用いて、最後のチャンネル推定を求める。
【0017】
代わりに、前記第2及び後続の反復後、最小平均二乗誤り(MMSE)原理を用いて、前記最後のチャンネル推定を求める。
【0018】
反復過程は、周波数領域で実行されてもよく、その場合、従来の時間領域チャンネル推定で見られるような、チャンネルインパルス応答からチャンネル周波数応答へ変換することにより導出される追加の複雑性がない。
【0019】
各々の場合において、時間領域MAWフィルタリングが周波数領域フィルタリングの後に適用されてもよく、推定ノイズをさらに低減する。フィルタリング重み値は、連続シンボル間の相関によって決定されてもよい。
【0020】
この手順は、選択された終端に到達するまで、少なくとも第3の反復まで繰返されてもよい。
【0021】
プリアンブルは、各送信フレームに含まれてもよい。プリアンブル、パイロット及びソフト復号データを全て用いて、シンボル毎にチャンネル周波数応答を追跡してもよい。チャンネル推定は、かなり多数のパイロットトーンの挿入が不必要になるように、これら3つの属性のうち、重み付け及び平均化を組み合わせてもよい。
【0022】
畳み込み符号又は低濃度パリティチェック(LDPC)の代わりであるターボ符号は、データ復号化で使用されてもよい。ター部符号は通常、少なくとも2つ又はそれ以上のシステマティックコードの連なりからなる。システマティックコードは、シンボルからなる情報ビットから2つ以上のビットを生成し、これら2つのビットのうち1つは、情報ビットと同じである。ターボ符号化に用いるシステマティックコードは通常、帰納的畳み込み符号であり、構成コードと呼ばれる。各構成コードは、少なくとも1つのパリティデータビットを1つのシステマティック又は情報ビットに関連付ける符号器によって生成される。パリティデータビットは、線形結合から、即ちシステマティックビットと一つ以上の先のシステマティックビットとの畳み込みから、符号器によって生成される。各符号器に提供されるシステマティックビットのビット順は、インタリーバによって最初の符号器のそれに関してランダム化されるので、送信信号は、異なる時間スロットにおいて同じ情報ビット含む。異なる時間スロットにおける同じ情報ビットをインタリーブすることは、パリティビット上に無相関なノイズをもたらす。パーサは、システマティックビットのストリームに含まれてもよく、システマティックビットのストリームを、各インタリーバ及び符号器に提供されるシステマティックビットからなるサブセットの並列ストリームに分割する。並列構成符号は、ターボ符号を、又は代わりに、パースされた並列連結畳み込み符号を形成するよう連結される。
【0023】
パイロット及びソフト符号データが受信信号に相関されシンボルを復号化するので、提案された手法においてマトリックス反転は不必要である。
【0024】
本発明は、比較的長いOFDMシンボル持続時間と対象となる高いSNR領域とに起因する深刻なICIを持つ急速な分散型フェージングチャンネルに適用可能である。また、本発明は、送信器及び受信器の相違を備えたMIMO−OFDM又はMC−CDMAに適用可能である。
【0025】
また、周波数オフセット及びタイミングオフセット推定及び追跡は、反復チャンネル推定内に組込むことができる。
【0026】
シミュレーションは、提案された反復チャンネル推定手法が、少数の反復内で完全なチャンネル状態情報を備えたそれらの性能に取組むことが可能であることを示す。さらには、提案されたシステムが機能するのに必要なパイロットトーンの数が少なく、無視できるスループット損失をもたらす。
【0027】
本発明のもう1つの局面は、チャンネルの変化を推定し、多数のチャンネル上で受信されたデータを検出できる受信器であって、通信チャンネル上で送信を受信するための受信部であって、前記送信は、一連のフレームを具備し、各フレームは、情報データからなる一連のブロック又はシンボルを具備し、各シンボルは、多数のサンプルに分割され、多数のサンプルは、多数の副搬送波を用いて同時に送信され、パイロットトーンは、各シンボルに挿入され、チャンネル推定及びデータ検出を支援する、受信部と、前記受信された送信のシンボルからパイロットトーンを抽出し、パイロットトーンを用いて、反復最大尤度チャンネル推定過程により前記チャンネル周波数応答における変化を推定することによって、前記受信された送信のシンボルを復号化するための復号プロセッサであって、前記復号プロセッサが第1の反復において、パイロットトーンから求めたシンボルに関するチャンネル周波数応答の推定から、信頼値又はそれに関連する信頼性を有する情報であるソフト復号データ情報を導出する段階と、少なくとも第2の反復において、前記パイロットトーンと同時に仮想パイロットトーンとして前記ソフト復号データ情報を用いて、前記フレームに関する前記チャンネル周波数応答を再び推定する段階とを具備する前記推定過程を実行する、前記復号プロセッサと、を具備する。
【0028】
本発明のさらなる局面は、方法を実行するコンピュータソフトウェアである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
N個の副搬送波を備えた離散時間型OFDMシステム10のブロック図が、図1に示されている。情報ビット{b(i)}は先ず12において、符号化ビットシーケンス{d(i)}に符号化され、ここでiは、時間インデックスである。これら符号化ビットは14において、{c(i)}からなる新たなシーケンスにインタリーブされ、16において、M−ary複素シンボルにマッピングされ、18において、{(X)(i)}からなるデータシーケンスにシリアル−パラレル(S/P)変換される。パイロットシーケンス{X(i)は20において、位置P(p)でデータシーケンス{(X)(i)}に挿入され、ベクトルX(i)=[X(i)(0),X(i)(1),...,X(i)(N−1)]Τで示すN個の周波数領域信号からなるOFDMシンボルを形成する。IDFT22を{(X)(i)}に適用すると、以下の式が与えられ
【0030】
【数1】

ここで、0≦n≦N−1である。長さGを備えるCPを26で加算した後、OFDMシンボルは、時間領域サンプルベクトルX(i)=[x(i)(−G),x(i)(−G+1),...,x(i)(N−1)]Τに変換される。これら時間領域サンプルは30において、デジタル−アナログ変換され、マルチパスフェージングチャンネル40で送信される。
【0031】
マルチパスフェージングチャンネルは、時変離散インパルス応答h(i)(n,l)としてモデル化でき、h(i)(n,l)は、i番目のOFDMシンボルに関して時間nにおけるl番目のパスからなるフェージング係数を示す。フェージング係数は、ゼロ平均複素ガウスランダム変数としてモデル化される。広義の定常無相関散乱(WSSUS)仮定に基づき、各種パスにおけるフェージング係数は、統計的に独立している。しかし特定のパスに関して、フェージング係数は、時間において相関し、以下に与えられるドップラーパワースペクトル濃度を有し、
【0032】
【数2】

ここで、f=v/λは、移動速度vにおける最大ドップラー周波数であり、λは、搬送周波数fにおける波長である。故に、h(i)(n,l)の自己相関関数は、以下に与えられ
【0033】
【数3】

ここで、J(・)は、ゼロ次の第1種ベッセル関数である。T=1/BWは、サンプル時間であり、BWは、OFDMシステムの帯域幅である。αは、l番目パスのパワーであり、以下のように正規化され
【0034】
【数4】

ここで、フェージングタップ数Lは、τmax/Tである。
【0035】
以上までが、システムの送信側の従来技術である。以下の分析は、受信器設計に対する新たな手法が実現可能であることを示している。
【0036】
CPが最大チャンネル遅延拡散Lより大きいか又は少なくとも等しい、即ちL≦Gと仮定すると、44においてCPを除去された後に受信器端において、サンプル化された受信信号は、以下のタップ遅延線モデルで特徴付けられ
【0037】
【数5】

ここで、w(i)(n)は、ゼロ平均及び変数σを備えた加算型白色ガウスノイズ(AWGN)である。0≦n≦N−1の範囲で、受信信号y(i)(n)は、ガードインターバル(GI)として時間領域サンプルに加算されたCPにより、先のOFDMシンボルから損傷をうけない。故に、CPを除去した後の時間領域における受信信号は、以下のように表せる。
【0038】
【数6】

【0039】
周波数領域における復調信号は、y(i)(n)のDFT48を以下のようにとることによって求められ
【0040】
【数7】

ここで
【0041】
【数8】

【0042】
【数9】

および
【0043】
【数10】

は、所望の副チャンネルにおける乗積型歪であり、それぞれDFTに続き、ICI及びAWGNである。
【0044】
【数11】

は、i番目のOFDMシンボルで時間nにおける副搬送波mに関するチャンネル周波数応答である。チャンネルがOFDMシンボル期間に時変であると仮定すると
【0045】
【数12】

は、式(9)で一定であり、H(i)m,kが消える。このとき、式(7)のY(i)(m)は、乗積型歪を含むのみで、チャンネル状態情報が周知の場合に1タップ周波数領域等化器によって補正される。
【0046】
簡便マトリクス形式で記述し、N×1ベクトルy(i)=[y(i)(0),y(i)(1),...,y(i)(N−1)]としてCPを除去した後の受信時間領域信号を表すと、N×Nマトリクスとして時間領域チャンネルマトリクスが以下のように示され、
【0047】
【数13】

N×NのIDFTマトリクスが
【0048】
【数14】

であり
N×1のベクトルとしてAWGNが
【0049】
【数15】

であり、式(6)は以下のように記述できる。
【0050】
【数16】

【0051】
N×1のベクトルY(i)=[Y(i)(0),Y(i)(1),...,Y(i)(N−1)]としてDFT後の受信周波数領域信号を表すと、式(7)は、以下のようになり
【0052】
【数17】

ここで、H(i)=F(i)F及びW(i)=F(i)である。上記の通り、時変チャンネルの場合、H(i)は、式(8)で与えられる[H(i)m,mを備えた対角マトリクスである。他方、時変チャンネルにおいて、H(i)は、式(9)によって与えられる非自明な非対角要素[H(i)m,kを有する。
【0053】
中心極限定理のアーギュメントは、ガウスランダム過程としてICIをモデル化するのに使用される。従って、対角な項[H(i)m,mを推定するのみ必要である。ICIをもたらす非対角な項[H(i)]m,kは、信号対干渉比(SIR)が20dBより高いので、fsym≦0.08の場合において、推定の際に無視できる。このことを証明するために、以下のように、H(i)マトリクスにおける任意の要素間の相互相関を計算する。
【0054】
【数18】

【0055】
特定の副搬送波mに関するICIの平均パワーは、以下により測定され
【0056】
【数19】

OFDMシンボルに対するICIの平均パワーは、以下により与えられる。
【0057】
【数20】

図2は、5GHzの中心周波数及び256個の副搬送波を備えた各種移動速度におけるIMT−2000車両Aチャンネルに関するICIパワーを示している。ほとんどの特定のドップラー拡散における移動チャンネルによるICIは、深刻ではないことが分かる。この事実を用いて、受信器で使用されるチャンネル推定手法をかなり簡易化できる。
【0058】
受信器は、多数の反復受信アルゴリズムを用いて、同一の一組の受信データ上でデータ検出とタスクの復号化とを繰返し、復号器からのフィードバック情報は、検出過程に組込まれる。この方法は、連結畳み込み符号用に元々開発された名前のものに類似する原理と共通点があるので、“ターボ原理”と呼ばれる。この反復受信の原理は最近、トレリスコード(TCM)及び符号分割多重アクセス(CDMA)等、各種通信システムに適応されてきている。全てのこれらシステムにおいて、帰納的最大確率(MAP)ベースの手法、例えばBCJRアルゴリズムは、データ検出と復号化との両方に専ら使用される。
【0059】
再び図1を参照すると、チャンネル推定で用いるターボ過程に対する受信器構造が示されている。この例において、符号化データビットの確率を推定するフィードバック情報は、チャンネル推定器60にフィードバックされる。
【0060】
一般にターボ原理において、対数尤度率(LLR)は、以下のように定義され
【0061】
【数21】

1又は0であるビットxの尤度を表す。データ検出又は等化から開始すると、等化器は、予め推定されたチャンネル周波数応答と受信シンボルとを前提として、副搬送波mにおける経験的確率(APP)
【0062】
【数22】

を計算し、事前LLRを式(17)から引くことにより外部LLRを出力する。
【0063】
【数23】

【0064】
符号化ビットcの発生確率に関する事前情報を示す事前LLRは、復号器70によってフィードバックループに提供される。
【0065】
初めのデータ検出について、利用できる事前情報がないので
【0066】
【数24】

【0067】
LLR(c(i))が80において復調されると、LLR(X(i))に対するM−ary復号化LLRシーケンスとなり、LLR(d(i))は、82でデインタリーブされた後にLLR(c(i))に関するデインタリーブシーケンスである。LLR(c(i))がLLR(d(i))に対して独立しているのが重要であり、この重要点及び事前情報としてフィードバックを扱う考えは、ターボ原理の2つの不可欠な特徴である。復号器70は、APP
【0068】
【数25】

を計算し、以下のような差をデータ検出器に出力する。
【0069】
【数26】

復号器70は、情報ビットの推定値も計算する。
【0070】
【数27】

【0071】
受信シンボルのブロックを初めに検出して復号化した後に、ターボ原理を適用すると、ブロック単位のデータ復号化及び検出は、フィードバックループの動作によって、同じ一組の受信データ上で実行される。特定の基準が満たされる時、反復過程が停止する。例えば、最大反復数を超過するか、又はビット誤り率(BER)が必要レベルを下回るか、又はMSEが十分小さいことが挙げられる。
【0072】
反復ターボチャンネル推定において、プリアンブル、パイロット及びソフト符号化データシンボルが、3段階で使用され、それは、初期の粗い推定段階(initial coarse estimation stage)、反復推定段階、及び最終最大尤度又は最小平均2乗誤り推定段階と呼ばれる。OFDMシンボルは、フレームベースで連続的に送信されると仮定する。各OFDMフレームは、プリアンブルとして働くOFDMシンボルに続き、多数の他のOFDMデータシンボルからなる。OFDMデータシンボルにおいて、パイロットトーンは、全ての利用可能な副搬送波にわたって均一に分配される。
【0073】
初期推定段階
初期の粗い推定段階は、第1の反復において実行される。周波数及び時間領域MAWフィルタリングは、プリアンブルシンボルからの推定で実行され、パイロットトーンは、初期の粗いチャンネル周波数応答を求めるために適用される。パイロットシンボルを送信するためのシステムモデルは以下により与えられ
【0074】
【数28】

ここで、E及びEはそれぞれ、パイロットとデータシンボルとのエネルギーである。パイロット支援チャンネル周波数応答は、以下のようなLS手法により求められる。
【0075】
【数29】

【0076】
パイロット及びデータシンボルが独立であり、ICIが、対象の信号対ノイズ比(SNR)におけるノイズと比較して十分小さいと仮定すると、以下のように表せる。
【0077】
【数30】

及び
【0078】
【数31】

【0079】
パイロットが占めるチャンネルとデータが占めるそれらとの間の相関により、パイロット支援チャンネル推定は、効率的に働くことができる。例えば、OFDMチャンネルの場合、副搬送波rとqとの間における統計上の相関関係は以下に与えられ、r=s及びp=qと置くと、式(14)は以下のように簡易化できる。
【0080】
【数32】

【0081】
図3は、中心搬送周波数5GHzを備えた333kmhにおけるIMT−2000車両Aチャンネルに関する他の副搬送波に対する副搬送波5におけるチャンネル周波数応答の正規化相関の一例を示す。隣接副搬送波におけるチャンネル周波数応答は、かなり相関していることが分かる。従って、補間及び移動平均窓(MAW)等のような低域フィルタリング手法を用いて、パイロットシンボルからの全チャンネル応答を再構成することができる。
【0082】
時間領域MAWフィルタリングは、以下により与えられる推定ノイズをさらに低減するのに適用可能である。
【0083】
【数33】

【0084】
図4は、中心搬送周波数5GHzを備えた333kmhにおけるIMT−2000車両Aチャンネルに関する連続OFDMシンボルとOFDMシンボル10との間の副搬送波5におけるチャンネル周波数応答の相関を示す。この場合、隣接OFDMシンボルは、かなり相関されている。故に、時間領域におけるMAWの大きさは、3に設定可能であり、フィルタ係数は、正規化相関値、即ち{0.9331,1,0.9331}/(0.9331+1+0.9331)から求めることができる。
【0085】
推定チャンネル周波数応答の場合、M−aryシンボルLLR(X(i)(m))における送信ビットcの確率は、以下のように計算され
【0086】
【数34】

【0087】
【数35】

はデータシンボルX(i)(m)におけるビット
【0088】
【数36】

の推測的情報である。式(27)の確率を用いて、式(17)によりLLR(X(i)(m))を計算し、50においてシーケンスLLR(X(i)d)を形成し、80においてM−ary復調し、82においてデインタリーブし、70において復号する。復号器70は、シーケンス
【0089】
【数37】

を出力し、
【0090】
【数38】

としてインタリーブ72とM−ary変調74とを用いてチャンネル推定器60にそれをフィードバックする。チャンネル推定器60は、参照のため本明細書中に組込まれている1999年7月 IEEE Trans.Commun vol.47 No.7 pp.1046−1061 X.D.Wang及びH.V.Poorによる“Iterative (turbo) soft interference cancellation and decoding for coded cdma”に見られるような
【0091】
【数39】

に基づくソフト符号化データ情報を計算する。
【0092】
BPSKに関して、ソフト符号化データは以下により与えられ
【0093】
【数40】

グレイ符号化QPSKに関して、ソフト符号化データは以下により与えられる。
【0094】
【数41】

【0095】
データパケットの初めに送信される参照信号、即ちプリアンブルを用いて、チャンネル状態情報の初期推定を求めることができる。周波数領域又は時間領域における多数のスキームでは、チャンネル推定は、プリアンブル信号が利用可能な時間又は周波数位置において求めることができる。また、方法は、プリアンブル情報なしで動作可能である。補間及び低域フィルタリングを用いて、ユビキタスチャンネル推定を得ることができ、推定誤りをさらに低減できる。以下では、OFDMシステムのダウンリンクを、プリアンブルベースのチャンネル推定手法を説明する一例として用いる。方法が利用可能なこの例に対する多数のバリエーションがある。プリアンブルがインデックス、偶数副搬送波の受信信号YPre=XPrePre+WPreを有すると仮定すると、時間領域においてプリアンブルの二つの同一部分を生成するために、奇数副搬送波の送信データはない。YPreは、Nuse/2×1ベクトルである。XPreは(Nuse/2)×(Nuse/2)プリアンブルデータ対角マトリックスである。HPreは、偶数副搬送波におけるNuse/2×1ベクトルチャンネル周波数応答である。Wpreは、白色ガウスノイズのNuse/2×1及び変数を備えたICIである。LS推定が適用される。
【0096】
【数42】

全ての副搬送波において低い誤りでチャンネル周波数応答を求めるために、以下の2つの段階が実行される。
1)線形補間
【0097】
【数43】

ここで、kは奇数である。
【0098】
仮想(ヌル又はガード)副搬送波が2つのエッジで使用されるので、チャンネル周波数応答は、単に隣接パイロットトーンの繰返しである。
2)移動平均平滑化、窓の大きさがKに設定される。
【0099】
【数44】

【0100】
プリアンブルシンボルに続くデータシンボルに関し、以下に与えられる、パイロット信号を用いて時間上でチャンネル変化を追跡する。
【0101】
【数45】

ここで
【0102】
【数46】

は、パイロット位置におけるチャンネル応答の推定された一時的な差であり
【0103】
【数47】

は、パイロット位置における差
【0104】
【数48】

に基づき、2つのOFDMシンボル間の推定チャンネル差であり、特定の低域フィルタリング動作を受ける。例えば、MMSEフィルタは、チャンネル遅延プロフィールの統計が周知の場合
【0105】
【数49】

に適用できる。あまり複雑ではない2つのフィルタリング動作は、以下のように与えられる。
1)補間、ここでデータ位置上のチャンネルダイナミックは、適切な補間、例えば最も隣接するパイロット位置上におけるそれらの間の線形補間によって求められる。
2)最大尤度原理による疑似逆フィルタリング。OFDMシナリオでは、そのようなフィルタは、フィルタ(・)=G(BB)−1によって与えられる。Nuse×NFFTマトリックスは、副搬送波が使用される行におけるN×NFFTマトリックスから抽出され、ここでNは、パイロットトーン数である。フィルタリングマトリックス フィルタ(・)=G(BB)−1は、予め計算可能であり、複雑性を大いに保存する点に注意すべきである。
【0106】
基本チャンネルが高速な時分散であり、又はパケットが多数のデータシンボルを含むシナリオでは、パケットの初めに受けたチャンネルは、パケットの終わりに受けたそれとはかなり異なることがある。従って、パイロットの支援をうけてチャンネル変化を追跡するのが重要である。この方法は、始めの反復で特に役立ち、そこでは、ソフト復号化データは、チャンネル推定を更新するために利用可能ではない。
【0107】
反復推定段階
2回目の反復に進むと、チャンネル推定器は、反復推定段階に入る。パイロットトーンに類似して、データシンボル送信のためのシステムモデルは、以下に与えられる。
【0108】
【数50】

【0109】
ここで、ソフト符号化データ情報を用いて、以下のチャンネルを推定すると
【0110】
【数51】

ここで、
【0111】
【数52】

は、MAWにおけるソフト符号化データ情報の平均エネルギーである。それは、以下のように示せる。
【0112】
【数53】

及び
【0113】
【数54】

【0114】
MAWフィルタリングは、パイロット信号とソフト符号化データ情報との両方からチャンネル推定を得る。MAW内でチャンネル応答がかなり相関している、即ち
【0115】
【数55】

であると仮定すると、副搬送波mにおけるチャンネル周波数応答に関する加重平均は、以下により与えられ
【0116】
【数56】

ここで、N及びNは、MAW内のパイロット数、及びデータシンボル数であり
【0117】
【数57】

【0118】
最適重み値{ω,ω}は、最大率結合原理(maximum ratio combining principle)を用いて求めることができ、その原理は、以下のラグランジュ乗算問題に対して数学的に系統立てられ
【0119】
【数58】

ここで、λはラグランジュ乗数である。故に、最適重み値{ω,ω}は以下のように求められる。
【0120】
【数59】

【0121】
【数60】

【0122】
故に、重み付けされたMAWの後、チャンネル応答は、ソフト符号化データ情報とパイロットシンボルとによって再び推定される。提案された重み付けMAW方法は、周波数及び時間領域の両方に適用され、2つの次元におけるチャンネル応答の相関を利用することができる。始めの推定段階に類似して、周波数及び時間フィルタリングの両方の後に、チャンネル周波数応答は、同じ1組の受信信号Y(i)に対するデータ検出で再び使用される。次の反復では、復号器は、チャンネル推定器に再び
【0123】
【数61】

をフィードバックする。この過程は、多数の反復に関して続く。この反復ターボ方法の利点は、データの復号が反復の進行とともにより確実になる時、ソフト符号化データ情報は、新たな“パイロット”として動作する点である。最後の反復前において、復号化されたOFDMシンボルは、プリアンブルのように見えるはずである。
【0124】
最後の反復において、復号化データ情報がかなり確実になる時、より向上されたフィルタを用いてさらにチャンネル推定の性能を改善することができる。以下において、最大尤度(ML)及びMMSE原理に基づき、2つの例を提案する。説明の目的で、OFDM変調を仮定する。
【0125】
最終最大尤度(ML)推定段階
ガウスランダム過程としてOFDMシンボル内でのチャンネル変化により引起されるICIをモデル化することにより、均等なOFDMシステムモデルが以下のように得られる。
【0126】
【数62】

ここで、X´(i)=diag(X(i))は、N×N対角マトリックスであり、その対角要素は、全副搬送波上に送信されるデータである。Gは、N×Lマトリックスであり、要素[G]n,l=e−j2πnl/Nを備え、0≦n≦N−1及び0≦l≦L−1である。h´(i)は、均等なL×1チャンネルインパルス応答ベクトルh´(i)=[h´(i),h´(i),...,h´(i)L−1であり、ここで、h´(i)は、式(8)に示す通り、以下により与えられる。
【0127】
【数63】

W´(i)は、σw´=σ+σICIを備えた均等なN×1ノイズベクトルである。X´(i)がプリアンブルの場合に周知であるとすると、LS推定は以下により与えられ
【0128】
【数64】

MLEは以下により与えられる。
【0129】
【数65】

故に、符号化ソフトデータ情報が最後の反復において確実になると、OFDMシンボルは、プリアンブルのように動作する。反復最大尤度チャンネル推定の最終出力は、以下により与えられ
【0130】
【数66】

ここで
【0131】
【数67】

は、パイロットトーンを備えた最後から2番目の反復からのソフト符号化OFDMシンボルである。
【0132】
代替最終最小平均二乗誤り(MMSE)推定段階
ガウスランダム過程としてOFDMシンボル内のチャンネル変化によって引起されるICIをモデル化することにより、以下のように均等なOFDMシステムモデルを得る。
【0133】
【数68】

ここで、X´(i)=diag(X(i))は、N×N対角マトリックスであり、その対角要素は、全副搬送波上に送信されたデータである。Gは、要素[G]n,l=e−j2πnl/Nを備えたN×Lマトリックスであり、0≦n≦N−1及び0≦l≦L−1である。h´(i)は、均等なL×1チャンネルインパルス応答ベクトルh´(i)=[h´(i),h´(i),...,h´(i)L−1であり、ここでh´(i)は、式8に示す通り、以下により与えられる。
【0134】
【数69】

W´(i)は、均等なN×1ノイズベクトルσw´=σ+σICIである。プリアンブルの場合に周知であると、LS推定は、以下により与えられ
【0135】
【数70】

MMSEは以下により与えられ
【0136】
【数71】

ここでRh´h´=E{h´h´}=diag(α)は、WSSUS仮定に基づきh´からなるL×L共分散マトリックスであり、各種パスにおけるフェージング係数は、統計的に独立したゼロ平均複素ガウスランダム変数である。Iは、L×L単位マトリックスであり、GG=NIである。
【0137】
故に、符号化ソフトデータ情報が最後の反復において確実になると、OFDMシンボルは、プリアンブルのように動作する。反復MMSEチャンネル推定の最終出力は、以下により与えられ
【0138】
【数72】

ここで
【0139】
【数73】

は、パイロットトーンを備えた最後から2番目の反復からのソフト符号化OFDMシンボルである。
【0140】
反復ターボ最大尤度チャンネル推定(MLE)の平均二乗誤り分析
提案された反復ターボ最大尤度チャンネル推定のMSEを分析することは、ソフト情報とMAP復号器との変更のため、困難である。その代わり、MLEに対して比較的低い制約のMSEを導く。MLEは、MVU推定器として知られ、それは、決定的な量に対する最適な推定器である。MLEの性能は、CRLBにより比較的低く制約される。提案された反復ターボ最大尤度チャンネル推定がCRLBを達成できる場合、更に改善することが不可能であることを示す。式(43)から展開すると
【0141】
【数74】

となる。
【0142】
MLEに関して、N×1ベクトルH(i)は、一定であるとみなされ、期待値は、白色ガウスノイズにわたって得られ、即ち
【0143】
【数75】

故に
【0144】
【数76】

の共分散マトリックスは、以下により与えられる。
【0145】
【数77】

【0146】
平均MSEは、以下により与えられ
【0147】
【数78】

ここでTr(・)は、トレース演算である。
【0148】
反復ターボ最大尤度チャンネル推定の複雑性分析
提案された反復ターボ最大尤度チャンネル推定に対する計算の複雑性は、3つの段階にわたる複合乗算の数により近似される。全部でM回の反復があると仮定する。始めの推定段階において、パイロット推定は、N個の複合乗算を必要とし、ここでNは、パイロットトーンの数である。データトーンにおける粗いチャンネル周波数応答を求めるために、パイロットトーン間の線形補間は、2×(N−N)個の複合乗算を必要とする。周波数領域フィルタリングにおいて、平滑平均動作は、N個の複合乗算を必要とするだけである。時間領域フィルタリングにおいて、NTDMAW複合乗算は、副搬送波毎に必要とされ、ここでNTDMAWは、時間領域MAWの大きさである。
【0149】
反復推定段階において、全ての反復は、同じ計算の複雑性を必要とする。特に、各反復において、ソフトデータチャンネル推定は、N−N個の複合乗算を必要とする。副搬送波毎に、ω,ω係数の計算は、N個の乗算を必要とし、周波数領域フィルタリングは、NFDMAW個の複合乗算を必要とし、ここでNFDMAWは、周波数領域MAWの大きさであり、時間領域フィルタリングは、NTDMAW複合乗算を必要とする。
【0150】
最終最大尤度推定段階において、ソフトデータチャンネル推定及びMLE動作のみが実行される。反復推定段階に類似して、ソフトデータチャンネル推定は、N−N個の複合乗算を必要とする。MLE動作は、N個の複合乗算を必要とする。
【0151】
表Iは、段階毎の複合乗算の数を要約したものである。表IIは、従来のパイロット支援MLE及びMMSEチャンネル推定の複雑性を示し、ここでNCPは、CPの長さであり、最大チャンネル遅延拡散を表す。計算の複雑性は、提案された反復最大尤度チャンネル推定に関するO(N)であり、パイロット専用の全副搬送波を備えた従来のMLEとほぼ同じであることが明らかである。即ち、同じ計算の複雑性を用いて、提案された反復最大尤度チャンネル推定は、プリアンブルの場合におけるMLEの性能を達成することができ、それは、達成可能な最良の性能である。一方、複雑性は、パイロットトーンの数が増えるときに低減される。また、関連するマトリックス反転がないので、提案された反復最大尤度チャンネル推定に対する計算の複雑性は、従来のMMSEチャンネル推定よりかなり低い。図5は、上記3つのチャンネル推定技法を複雑性について比較したものであり、ここでM=6、N=256、NTDMAW=3、NFDMAW=9及びNCP=64である。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
シミュレーション
シミュレーション設定
このセクションでは、提案された反復ターボ最大尤度チャンネル推定技法の性能を証明するために、N=256の副搬送波と8個のパイロットトーンとを備えたOFDMシステムを考える。搬送周波数は、5GHzであり、帯域幅は、5MHzである。IMT−2000車両Aチャンネル[7]は、Jakesモデルによって生成され、指数関数的減衰パワープロフィールが{0、−1、−9、−10、−15、−20}dBであり、相対パス遅延が{0,310、710、1090、1730、2510}nsである。車両速度は、333kmhであり、ドップラー周波数に変換するとf=1540.125Hzである。CP持続時間は、2.8μsである。故に、OFDMシンボルの持続時間は、Tsym=NT+CP=54μsである。fsymは約0.08であり、シンボル持続時間は、チャンネルコヒーレント時間のうち約8%である。故に、移動によるICIは、対象となるSNR領域に関する白色ガウスノイズとして扱うことができる。
【0155】
割合−1/2(5,7)畳み込み符号は、チャンネル符号化に使用される。ランダムインタリーバは、シミュレーションで適合され、変調スキームは、QPSKである。反復の最大数は、6に設定される。フレーム送信毎に10個のOFDMシンボルがあり、それは、プリアンブルが10個のOFDMシンボル毎に挿入されることを意味する。パイロットシンボルのエネルギーは、データシンボルと同じである。パイロットトーンは、32のパイロット間隔で副搬送波上に挿入され、均一に分配される。周波数領域MAWの大きさは、9に設定され、時間領域MAWの大きさは、3に設定され、MAW内のチャンネル周波数応答の相関が十分に高いことを保証する。提案された反復チャンネル推定技法を備えたOFDMシステムはまた、64個のパイロットトーンを用いて従来のパイロット支援チャンネル推定と比較される。性能比較は、OFDM BER、シンボル誤り率(SER)、フレーム誤り率(FER)及び以下に定義するMESに関して行われる。
【0156】
【数79】

【0157】
反復ターボMLEの場合、MSEの性能は、全副搬送波がパイロットトーンに分配される時、CRLBと比較される。即ち、それは、MLEが達成できる最高の性能を有するプリアンブルケースである。類似に、反復ターボMMSEEの場合、MSEの性能は、プリアンブルの場合と比較される。
【0158】
数字的結果
図6は、多数の反復に関する提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す。図6(d)に示す通り、最後の反復において、提案された反復ターボMLチャンネル推定のMSEは、CRLBに取組む。これは、BER、SER及びFERが、それぞれ図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示す通り、完全なチャンネル情報とともにそれらに取組むことを保証する。これは、提案された反復ターボMLチャンネル推定がプリアンブル、パイロット及びソフト符号化データシンボルを利用して、チャンネル周波数応答を推定するからである。反復が進行するにつれ、ソフト符号化データシンボルは、より確実になり、それは、次の反復において新たな“パイロット”シンボルとして作動する。他方で、従来のMLEは、パイロットトーンの制限された数のみ使用する。
【0159】
図7は、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、64個のパイロットトーンを持つ従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間のBER、SER,FER及びMSEの性能を示す。性能曲線は、プリアンブル及びパイロットトーンに起因したSNR損失を補償するように遷移する。それは、提案された反復ターボMLチャンネル推定が常に比較的良好な性能を有することを示す。この観測はまた、提案された反復ターボMLチャンネル推定がパワー及びスペクトルの両方で効率的なことを意味する。
【0160】
図8は、多数の反復にわたる提案された反復ターボMMSEEチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す。図9は、提案された反復ターボMMSEEチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、64個のパイロットトーンを持つ従来のパイロット支援MMSEEチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間のBER、SER、FER及びMSEの性能を示す。同じ結果が描かれうる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、反復ターボチャンネル推定を備えたOFDMシステムのブロック図である。
【図2】図2は、5GHzの中央周波数及び256個の副搬送波を備えたIMT−2000車両Aチャンネルに関するICIパワーを示すグラフである。
【図3】図3は、副搬送波5におけるチャンネル周波数応答と中央周波数5GHzを備えた333kmhにおけるIMT−2000車両Aチャンネルに関する他の副搬送波との間の正規化相関を示すグラフである。
【図4】図4は、OFDMシンボル10と、中央周波数5GHzを備えた333kmhにおけるIMT−2000車両Aチャンネルに関する連続OFDMシンボルとの間の副搬送波5におけるチャンネル周波数応答の正規化相関を示すグラフである。
【図5】図5は、反復ターボMLE、従来のパイロット支援MLE及び従来のパイロット支援MMSE間の複雑性比較を示すグラフである。
【図6a】図6aは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、ビット誤り率を示す。
【図6b】図6bは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、シンボル誤り率を示す。
【図6c】図6cは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、フレーム誤り率を示す。
【図6d】図6dは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、平均二乗誤りを示す。
【図7a】図7aは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、ビット誤り率を示す。
【図7b】図7bは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、シンボル誤り率を示す。
【図7c】図7cは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、フレーム誤りを示す。
【図7d】図7dは、提案された反復ターボMLチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、平均二乗誤りを示す。
【図8a】図8aは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、ビット誤り率を示す。
【図8b】図8bは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、シンボル誤り率を示す。
【図8c】図8cは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、フレーム誤り率を示す。
【図8d】図8dは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムの性能を示す一連のグラフであって、平均二乗誤りを示す。
【図9a】図9aは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、ビット誤り率を示す。
【図9b】図9bは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、シンボル誤り率を示す。
【図9c】図9cは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、フレーム誤り率を示す。
【図9d】図9dは、提案された反復ターボMMSEチャンネル推定を備えたOFDMシステムと、従来のパイロット支援MLチャンネル推定を備えたOFDMシステムとの間の性能を示す一連のグラフであって、平均二乗誤りを示す。
【符号の説明】
【0162】
50 等化
70 復号器
82 デインタリーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパスチャンネル上に送信するためのチャンネル推定とデータ検出との方法であって、
通信チャンネル上の送信を受信する過程であって、前記送信は、一連のフレームを具備し、各フレームは、情報データからなる一連のブロック又はシンボルを具備し、各シンボルは、多数のサンプルに分割され、多数のサンプルは、多数の副搬送波を用いて同時に送信され、パイロットトーンは、各シンボルに挿入され、チャンネル推定とデータ検出とを支援する、過程と、
前記受信された送信のシンボルからパイロットトーンを抽出し、前記パイロットトーンを用いて、反復最大尤度チャンネル推定過程によりチャンネル周波数応答における変化を推定することによって前記受信された送信のシンボルを復号する過程であって、前記推定過程が
第1の反復において、パイロットトーンから求めたシンボルに関するチャンネル周波数応答の推定から、信頼値又はそれに関連する信頼性を有する情報であるソフト復号データ情報を導出する段階と、
少なくとも第2の反復において、前記パイロットトーンと同時に仮想パイロットトーンとして前記ソフト復号データ情報を用いて、前記シンボルに関する前記チャンネル周波数応答を再び推定する段階とを具備する、過程と、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の反復において、粗いチャンネル周波数応答は、パイロット位置で求めたチャンネルダイナミクスの低域フィルタリングを介して前記チャンネル変化を追跡することによって求められることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数領域移動平均窓(MAW)フィルタリングは、前記第1の反復後に適用されて前記推定ノイズを低減することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の反復において、パイロットシンボル及びソフト復号データ情報の両方を用いて、チャンネル周波数応答を結合的に推定することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
時間及び周波数領域MAWフィルタリングは、前記第2の反復後に適用され、前記推定ノイズを低減することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
最大率結合(MRC)原理を用いて、周波数領域及び時間領域MAWフィルタリングにおけるチャンネル推定に関する最適重み値を導出することを特徴とする請求項3又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2及び後続の反復後、最大尤度(ML)原理を用いて、最後のチャンネル推定を求めることを特徴とする請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2及び後続の反復後、最小平均二乗誤り(MMSE)原理を用いて、前記最後のチャンネル推定を求めることを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反復過程は、前記周波数領域で実行されることを特徴とする請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
時間領域MAWフィルタリングが前記周波数領域のフィルタリングの後に適用される場合の各々において、前記推定ノイズをさらに低減することを特徴とする請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルタリングの重み値は、連続シンボル間の相関によって決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記手順は、第3の反復に関して繰返されることを特徴とする請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
プリアンブルは、各送信フレームに含まれ、前記プリアンブル、パイロット及びソフト復号データを全て用いて、シンボル毎のチャンネル周波数応答を追跡することを特徴とする請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンネル推定は、これら3つの属性のうち、結合的な重み付け及び平均化であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
畳み込み符号の代わりであるターボ符号は、データの復号化で使用されることを特徴とする請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
畳み込み符号の代わりである低濃度パリティチェック(LDPC)符号は、データの復号化で使用されることを特徴とする請求項1から14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
OFDM、MIMO−OFDM又はMC−CDMAに適用される、請求項1〜16に記載の方法。
【請求項18】
周波数オフセット及びタイミングオフセット推定及び追跡は、前記反復チャンネル推定内に組込まれることを特徴とする請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
チャンネルの変化を推定し、多数のチャンネル上で受信されたデータを検出できる受信器であって、
通信チャンネル上で送信を受信するための受信部であって、前記送信は、一連のフレームを具備し、各フレームは、情報データからなる一連のブロック又はシンボルを具備し、各シンボルは、多数のサンプルに分割され、多数のサンプルは、多数の副搬送波を用いて同時に送信され、パイロットトーンは、各シンボルに挿入され、チャンネル推定及びデータ検出を支援する、受信部と、
前記受信された送信のシンボルからパイロットトーンを抽出し、パイロットトーンを用いて、反復最大尤度チャンネル推定過程により前記チャンネル周波数応答における変化を推定することによって、前記受信された送信のシンボルを復号化するための復号プロセッサであって、前記プロセッサが
第1の反復において、パイロットトーンから求めたシンボルに関するチャンネル周波数応答の推定から、信頼値又はそれに関連する信頼性を有する情報であるソフト復号データ情報を導出する段階と、
少なくとも第2の反復において、前記パイロットトーンと同時に仮想パイロットトーンとして前記ソフト復号データ情報を用いて、前記シンボルに関する前記チャンネル周波数応答を再び推定する段階とを具備する前記推定過程を実行する、前記プロセッサと、
を具備することを特徴とする受信器。
【請求項20】
請求項1から18のうち何れか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータソフトウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【公表番号】特表2009−532957(P2009−532957A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503369(P2009−503369)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000415
【国際公開番号】WO2007/112489
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(507074133)ナショナル・アイシーティ・オーストラリア・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】