説明

急速に成熟する蛍光タンパク質およびその使用法

急速に成熟する蛍光タンパク質およびその非凝集変種(およびその変異体)をコードする核酸組成、ならびにおなじものをコードするタンパク質を提供する。関心対象のタンパク質は蛍光性で、この特徴はそのタンパク質の2残基以上の相互作用から生じる。本発明のタンパク質は、ある態様において、花虫類(Anthozoan)のような非生物発光刺胞動物(Cnidarian)、もしくは花虫類非ウミエラ(Pennatulacean)(シーペン(sea pen))種のいずれかから得られた野生型タンパク質の変異体であるという特徴をさらに有する。ある態様について、本発明のタンパク質は野生型イソギンチャクモドキ(Discosoma)種「赤色」蛍光タンパク質の変異体である。実質的に上記特定のタンパク質と同類のタンパク質、またはそれらの変異体もまた関心対象である。また、核酸の断片およびそれをコードするペプチド、ならびに本発明のタンパク質、形質転換細胞、および形質転換組織に対する抗体も提供される。本発明のタンパク質組成および核酸組成は様々な異った適用で使用される。最後に、このような適用に用いるキット(たとえば本発明の核酸組成を含むようなキット)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法(35 U.S.C.)第119(e)条に準拠し、本出願は、2001年6月21日に出願された米国特許仮出願第60/341,723号の出願日に対する優先権を主張するものであり;その開示は本明細書に参照として組入れられている。
認可番号9875939に従い、アメリカ合衆国政府は本発明の権利を所有することができる。
【0002】
序論
発明の分野
本発明の分野は、蛍光性タンパク質である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
標識は、関心対象のタンパク質、細胞、または生物に印をつけるための道具であり、多くの生化学、分子生物学、および医学的診断適用において顕著な役割を果たしている。放射性標識、色素標識、蛍光標識、化学発光標識等を含む多様な異なる標識が開発されている。しかしながら、新規の標識の開発への関心は依然としてある。特に関心があるのは、色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質標識を含む、新規のタンパク質標識の開発である。
【0004】
最近開発された蛍光タンパク質の重要な新規クラスは、Matz, M.V.らの論文(Nature Biotechnol.、17:969-973(1999))に説明されたような、造礁サンゴ(Reef Coral)蛍光タンパク質である。これらの蛍光タンパク質は、多くの明確な属性を示すが、さらなる望ましい特徴、例えば急速な成熟を示す蛍光タンパク質のこの重要な新規クラスの種類の開発には強い関心がある。本発明はこの必要性を満足している。
【0005】
関連文献
関心対象の米国特許には、第6,066,476号;第6,020,192号;第5,985,577号;第5,976,796号;第5,968,750号;第5,968,738号;第5,958,713号;第5,919,445号;第5,874,304号;および第5,491,084号が含まれる。関心対象の国際特許出願には、国際公開公報第00/46233号;国際公開公報第99/49019号;およびDE 197 18 640 Aが含まれる。

も関心対象である。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
急速に成熟する蛍光タンパク質をコードしている核酸組成物に加え、それらの非凝集型(およびそれらの変異体)ならびにこれによりコードされたタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、蛍光を発するタンパク質であり、ここでこの特徴は、このタンパク質の2残基以上の相互作用から生じる。更に本発明のタンパク質は、ある態様において、花虫類(Anthozoan)のような非生物発光刺胞動物(Cnidarian)、もしくは花虫類非ウミエラ(Pennatulacean)(シーペン(sea pen))種のいずれかから得られた野生型タンパク質中に認められるかまたはそれらの変異体であるという点でさらに特徴付けられる。ある態様において、この本発明のタンパク質は、「DsRed」として市販されている野生型イソギンチャクモドキ(Discosoma)種「赤色」蛍光タンパク質の変異体である。先の特異的タンパク質に実質的に類似した、またはその変異体であるタンパク質も関心がある。同じくこれらの核酸の断片およびそれらによりコードされたペプチドに加え、本発明のタンパク質に対する抗体ならびにトランスジェニック細胞および生物も提供される。本発明のタンパク質および核酸の組成物は、様々な異なる適用における使用が認められる。最後に、例えば本発明の核酸組成物を含む、そのような適用において使用するためのキットが提供される。
【0007】
定義
本発明に従い、当業者にとって通常の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術を使用することができる。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、

を参照のこと。
【0008】
「ベクター」とは、別のDNAセグメントが、そのセグメントの複製が行われるように付加され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなレプリコンである。
【0009】
「DNA分子」とは、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の重合体形態をさす。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみをさし、任意の特定の三次形態に分子構造を制限するものではない。従って、この用語には、特に直鎖状DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体に見出される二本鎖DNAが含まれる。
【0010】
DNA「コード配列」とは、適切な制御配列の調節下に置かれた場合に、インビボで転写されポリペプチドへと翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、これらに制限はされないが、原核生物配列、真核生物mRNAに由来するcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAに由来するゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれ得る。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列が、コード配列の3'に位置していてもよい。
【0011】
本明細書において使用されるように、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相対するの核酸鎖の残基間の水素結合によって安定化された逆平行二重鎖を形成するための、2個の核酸鎖の会合の過程をさす。
【0012】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い(100塩基長未満の)核酸分子をさす。
【0013】
「DNA制御配列」とは、本明細書において使用されるように、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供および/または制御する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等のような転写および翻訳の調節配列である。
【0014】
「プロモーター配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNA制御領域である。本発明を定義する目的のため、プロモーター配列は、転写開始部位を3'末端の境界とし、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始させるために必要な最少数の塩基、または要素を含むように、上流(5'方向)に拡がっている。プロモーター配列内には、転写開始部位のみならずRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメインが見い出されると考えられる。真核生物のプロモーターは、常にではないが、多くの場合、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有しているであろう。誘導可能プロモーターを含む様々なプロモーターが、本発明の様々なベクターを駆動するために使用され得る。
【0015】
本明細書において使用されるように、「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、各々が特異的なヌクレオチド配列で、またはその近傍で二本鎖DNAを切断する細菌酵素をさす。
【0016】
外因性または異種のDNAが細胞内に導入されている場合、その細胞は、そのようなDNAによって「形質転換」または「トランスフェクト」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムへ組み込まれて(共有結合して)いてもよく、またはそうでなくてもよい。例えば、原核生物、酵母、および哺乳動物細胞においては、形質転換DNAは、プラスミドのようなエピソーム要素上に維持され得る。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞とは、形質転換DNAが、染色体複製を通じて娘細胞によって受け継がれるように、染色体へ組み込まれているものである。この安定性は、形質転換DNAを含有している娘細胞の集団から構成される細胞株またはクローンを確立する真核細胞の能力によって証明される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一の細胞または共通の祖先より派生した細胞の集団である。「細胞株」とは、多くの世代にわたりインビトロで安定に増殖することができる初代細胞のクローンである。
【0017】
DNA構築物の「異種」領域とは、自然界において、より大きなDNA分子に関連して見出されない、そのより大きな分子中の同定可能なDNAのセグメントである。従って、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、その遺伝子は通常、起源生物のゲノムにおいて哺乳動物ゲノムDNAと隣接していないDNAと隣接していると考えられる。もう一つの例において、異種DNAには、融合タンパク質生成物を作製するために二つの異なる起源に由来する遺伝子の一部が集められた構築物の中のコード配列が含まれる。対立遺伝子変化または天然に存在する変異事象は、本明細書において定義されるようなDNAの異種領域を生成しない。
【0018】
本明細書において使用されるように、「レポーター遺伝子」という用語は、構築物が組織または細胞へ導入された場合に、産物が容易かつ定量的にアッセイされ得る、異種のプロモーター要素またはエンハンサー要素に付加されたコード配列をさす。
【0019】
本明細書に記載されたアミノ酸は、「L」異性体であることが好ましい。アミノ酸配列は、一文字記号(A:アラニン;C:システイン;D:アスパラギン酸;E:グルタミン酸;F:フェニルアラニン;G:グリシン;H:ヒスチジン;I:イソロイシン;K:リジン;L:ロイシン;M:メチオニン;N:アスパラギン;P:プロリン;Q:グルタミン;R:アルギニン;S:セリン;T:トレオニン;V:バリン;W:トリプトファン;Y:チロシン;X:任意の残基)で与えられる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をさす。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基をさす。標準的なポリペプチド命名法に沿って、J Biol.Chem.,243(1969),3552-59が使用される。
【0020】
「免疫学的に活性な」という用語は、天然の、組換えの、または合成の色素/蛍光性タンパク質またはそれらの任意のオリゴペプチドの、適切な動物または細胞において特異的な免疫応答を誘導する能力、および特異的抗体と結合する能力を定義する。本明細書において使用されるように、「抗原性アミノ酸配列」とは、単独でまたは担体分子と会合して、哺乳動物において抗体応答を誘発することができるアミノ酸配列を意味する。抗体の抗原への結合に関連して、「特異的結合」という用語は、当技術分野においてよく理解されている用語であり、抗体が、その抗体を産生させた抗原と結合し、その他の無関係な抗原とは結合しないことさす。
【0021】
本明細書において使用されるように、「単離された」という用語は、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞が天然に存在する環境とは異なる環境に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞を記載することが意図される。
【0022】
生物発光(BL)とは、暗所において充分可視であり、動物の視覚的な行動に影響を与える、生物による光の放射と定義される(例えば、Harvey, E.N.(1952). Bioluminescence. New York:Academic Press;Cell Physiology (N. Speralakis編)pp.651-681における、Hastings,J.W.(1995). Bioluminescence. New York:Academic Press.;Wilson,T.およびHastings,J.W.(1998). Bioluminescence.Annu Rev Cell Dev Biol 14,197-230を参照のこと)。生物発光には、高感度の照度測定装置を使用して事実上全ての生物構造において検出され得る、いわゆる極微弱光放射(Murphy,M.E.およびSies,H.(1990), Visible-range low-level chemiluminescence in biological systems. Meth.Enzymol.186,595-610;Radotic,K,Radenovic,C,Jeremic,M.(1998)Spontaneous ultra-weak bioluminescence in plants:origin, mechanisms and properties. Gen Physiol Biophys 17,289-308)、およびタケ成長円錐の発光(Totsune,H.,Nakano,M.,Inaba,H.(1993). Chemiluminescence from bamboo shoot cut. Biochem.Biophys.Res Comm.194,1025-1029)、または動物卵の受精中の光の放射(Klebanoff,S. J., Froeder, C. A., Eddy, E. M.,Shapiro,B.M.(1979). Metabolic similarities between fertilization and phagocytosis. Conservation of peroxidatic mechanism. J.Exp.Med.149,938-953;Schomer,B.およびEpel,D.(1998). Redox changes during fertilization and maturation of marine invertebrate eggs. Dev Biol 203,1-11)のような、おそらくいかなる生態学的役割も果たさない微弱光放射は含まれない。
【0023】
具体的態様の説明
急速に成熟する蛍光タンパク質をコードしている核酸組成物、更にはそれらの非凝集型(およびそれらの変異体)およびそれらでコードされたタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、蛍光を発するタンパク質であり、ここでこの特徴は、このタンパク質の2残基以上の相互作用から生じる。本発明のタンパク質は、ある態様において、これらは、花虫類のような非生物発光刺胞動物、または花虫類非ウミエラ(シーペン)種のいずれかから得られた野生型タンパク質の変異体であるという点でさらに特徴付けられる。ある態様において、本発明のタンパク質は、野生型イソギンチャクモドキ種「赤色」蛍光タンパク質の変異体である。前述の特異的タンパク質に実質的に類似したまたはその変異体であるタンパク質も関心がある。同じく核酸の断片およびそれらによりコードされたペプチドに加え、本発明のタンパク質に対する抗体ならびにトランスジェニック細胞および生物も提供される。本発明のタンパク質および核酸組成物は、様々な異なる適用における用途が認められる。最後に例えば本発明の核酸組成物を含む、そのような適用に使用するためのキットが提供される。
【0024】
本発明をさらに記載する前に、本発明は下記の本発明の特定の態様に制限されず、特定の態様の変形物が作成されてもよく、それらも添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。利用された語法は、特定の態様を記載するためのものであり、本発明を制限するものではないことも理解されたい。その代わり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0025】
この明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」には、特記しない限り、複数形の言及が含まれる。他に定義しない限り、本明細書において使用された全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。
【0026】
ある範囲の値が提供される場合には、その範囲の上限と下限との間に入るそれぞれの値(特記しない限り、下限の単位の10分の1まで)、およびその記述された範囲における他の任意の記述された値または間に入る値が、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、記述された範囲において任意の限度が特に除外される条件において、独立にそのより小さな範囲に含まれてもよく、同様に本発明に包含される。記述された範囲が、限度の一方または両方を含む場合、含まれている限度のいずれかまたは両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0027】
他に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等価である任意の方法、機器、および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、機器、および材料が以下に記載される。
【0028】
本明細書において言及された全ての刊行物は、本明細書に記載された発明に関して使用され得る、刊行物中に記載されている細胞株、ベクター、方法論、およびその他の発明の構成要素を記載かつ開示する目的のため、参照として本明細書に組み込まれる。
【0029】
本発明のさらなる記載においては、まず本発明の核酸組成物を記載し、続いて本発明のタンパク質組成物、抗体組成物、およびトランスジェニック細胞/生物について考察する。次に、本発明のタンパク質が有益である代表的な方法の概要を提供する。
核酸組成物
先にまとめられたように、本発明は、急速に成熟する色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体、更にはこれらのタンパク質の断片および相同体をコードしている核酸組成物を提供する。急速に成熟する色素/蛍光タンパク質は、発色するおよび/または蛍光を発するタンパク質を意味し、例えばこれは励起波長の光の照射時に、低、中または高蛍光を発することができる。更に、このタンパク質は、急速に成熟するので、その最終的色素/蛍光特性に、約72時間未満で、時には48時間未満で、および時には24時間未満で到達する。ある態様において、このタンパク質は、20時間未満、例えば18時間、16時間、14時間、12時間、10時間、8時間などの期間内に、成熟することができる。
【0030】
いずれかの事象において、関心対象の本発明のタンパク質は、発色された特性、すなわち色素および/または蛍光特性が、タンパク質の2残基以上の相互作用から生じるものであり、タンパク質の単独の残基、より詳細に述べると単独の残基の単独の側鎖から生じるものではないようなものである。このようにして、本発明の蛍光タンパク質は、固有の蛍光体としてそれら自身により作用する残基からのみ蛍光を発するタンパク質、すなわち、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンを含まない。このようにして、本発明の蛍光タンパク質は、その蛍光が、先に特定した単独の残基以外であるタンパク質内の一部の構造から生じる、例えば、2残基以上の相互作用から生じる蛍光タンパク質である。
【0031】
核酸組成物は、本発明の色素/蛍光ポリペプチドをコードしているオープンリーディングフレームを有するDNA配列、すなわち、色素/蛍光タンパク質遺伝子を含む組成物を意味し、および、適当な条件下で本発明の色素/蛍光タンパク質として発現されることが可能である。同じくこの用語は、本発明の核酸と相同、実質的に類似したまたは同一である核酸も包含している。従って本発明は、本発明のタンパク質をコードしている遺伝子およびそれらのコード配列に加え、それらの相同体を提供する。本発明の核酸は、天然に存在する場合、それらの自然環境以外に存在し、例えばこれらは、それらの天然に存在する環境、例えばそれらを得た生物体などから、単離され、濃縮された量などで存在する。
【0032】
これらの核酸は、これらが下記のタンパク質に由来するかまたはそれらの変異体であるかのいずれかのタンパク質をコードしている場合に、更に特徴付けられる:(1)非生物発光種、多くは非生物発光刺胞動物種、例えば非生物発光花虫類;または、(2)ウミエラ種、すなわちシーペンでない、花虫類に由来。このようにして、これらの核酸は、これらの種がウミエラ種でない限り、例えばこれらがレニラまたはプチロサルカン(Ptilosarcan)種でない限りは、生物発光花虫類由来のタンパク質に由来するかまたはそれらの変異体であるタンパク質をコードすることができる。ある態様において特に興味深いことは、下記の特異的野生型タンパク質(またはそれらの変異体)の急速に成熟する変異体である:(1)その開示が本明細書に参照として組入れられている特許出願第10/006,922号に開示された、amFP485、cFP484、zFP506、zFP540、drFP585、dsFP484、asFP600、dgFP512、dmFP592;(2)その開示が本明細書に参照として組入れられている特許出願第09/976,673号に開示された、hcFP640;(3)その開示が本明細書に参照として組入れられている特許出願第60/255,533号に開示された、CgCP;ならびに、(4)その開示が本明細書に参照として組入れられている特許出願第60/332,980号に開示された、hcriGFP、zoanRFP、scubGFP1、scubGFP2、rfloRFP、rfloGFP、mcavRFP、mcavGFP、cgigGFP、afraGFP、rfloGFP2、mcavGFP2、mannFP。
【0033】
ある態様において、本発明の核酸によりコードされたタンパク質は、野生型イソギンチャクモドキ種「赤色」蛍光タンパク質の変異体(drFP585)であり、ここでこのタンパク質の核酸コード配列およびアミノ酸配列は、その開示が本明細書に参照として組入れられている特許出願第10/006,922号に開示されている。野生型DsREDは、下記の配列を有する核酸によりコードされており:

(配列番号:01)
および下記アミノ酸配列を有する:

(配列番号:02)
【0034】
代表的「DsRed」の急速に成熟する変異体は、下記を含むが、これらに限定されるものではない:開始残基に対して42位での点突然変異、例えば、N42H、N42Qなど;開始残基に対して41位での点突然変異、例えば、H41L、H41Tなど;開始残基に対して44位での点突然変異、例えば、V44Aなど;開始残基に対して21位での点突然変異、例えば、T21Sなど;その他同類。
【0035】
より詳細に以下に説明されているDsRed.T1変異体をコードしているひとつの関心対象の代表的核酸は、下記配列において認められたコード配列を含む:
【0036】

(配列番号:03)
ここで太字/下線のATGコドンは開始コドンであり、および太字/下線のTAGは停止コドンである。
【0037】
前述の急速に成熟するDsRed変異体に加え、前述のような他の種の急速に成熟する変異体も興味深い。このような変異体または変種は、先の代表的DsRed変異体において同定された特異的位置に関するそれらの配列の類似のまたは対応する位置において説明されているもののような点突然変異を有する。所定のタンパク質において点突然変異を作成するための類似のまたは対応する配列の位置は、Matzらの論文(Nature Biotechnology、969-973(1999))に説明されおよび図1に図示されたプロトコールを使用し、封入された(enclosed)特異的DsRed変異体および関心対象の種からの野生型タンパク質の配列オワンクラゲ(Aquoria victoria)緑色蛍光タンパク質を並置することにより、容易に決まる。他の種の特異的代表的急速に成熟する変異体は、以下を含むが、これらに限定されるものではない(ここで下記の点位置は、前掲のMatzらの論文の図1に図示された「GFP」番号付けプロトコールに従い番号をつけている):(1)N42例えばQまたはH、V44例えばA、T21例えばSから選択された1個または複数の点突然変異を有するdsFP483の急速に成熟する変異体;K41例えばLまたはT、I44例えばA、C21例えばSから選択された1個または複数の点突然変異を有するzFP506の急速に成熟する変異体;K41例えばLまたはT、I44例えばA、C21例えばSから選択された1個または複数の点突然変異を有するaFP583の急速に成熟する変異体;C21例えばSから選択された1個または複数の点突然変異を有するamFP483の急速に成熟する変異体;N21例えばS、L44例えばAから選択された1個または複数の点突然変異を有するcFP484の急速に成熟する変異体;など。
【0038】
前述の特異的な核酸組成物に加え、前記配列の相同体も関心がある。本発明の核酸の相同体に関して、相同遺伝子の給源は、植物もしくは動物のいずれかの種であり、またはこの配列は全体的もしくは部分的に合成することができる。ある態様において、相同体間の配列類似性は、少なくとも約20%、時には少なくとも約25%であり、および30%、35%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上でもよく、75%、80%、85%、90%および95%またはそれ以上のものを含んでもよい。配列類似性は、参照配列を基に計算され、これは、保存されたモチーフ、コード配列、フランキング領域などのような、比較的大きい配列のサブセットであることができる。参照配列は、通常、少なくとも約18ヌクレオチド長、より一般的には少なくとも約30nt長であり、および比較される完全配列まで延長することができる。配列解析のためのアルゴリズムは、当該技術分野において公知であり、例えばAltschulらの論文(J. Mol. Biol.、215:403-10(1990))に説明されたBLAST(デフォルト設定を使用、すなわち、パラメータw=4およびT=17)などである。本明細書に提供された配列は、データベース検索において関連したおよび相同な核酸の認識のために必須である。
【0039】
特に関心のある態様は、配列番号:01または02に同定された核酸と実質的に同じ長さの核酸であり、ここで実質的に同じ長さとは、長さの差が約20数%を超えず、一般的には約10数%およびより一般的には約5数%を超えないことを意味し;ならびに、核酸の全長にわたりこれらの配列のいずれかと少なくとも約90%、一般的には少なくとも約95%およびより一般的には少なくとも約99%同一な配列を有する。多くの態様において、これらの核酸は、配列番号:01または02の配列と実質的に類似した(すなわち、同じ)または同一である配列を有する。実質的に類似とは、配列同一性が、全般に少なくとも約60%、一般的には少なくとも約75%およびしばしば少なくとも約80、85、90または更には95%であることを意味する。
【0040】
同じく、前述の核酸によりコードされているが、遺伝暗号の縮重のために前述の核酸とは配列が異なるタンパク質をコードしている核酸も提供される。
【0041】
同じく、ストリンジェントな条件下で、前述の核酸にハイブリダイズする核酸も提供される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃またはそれ以上でおよび0.1xSSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。別のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50%ホルムアミド、5xSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断したサケ精子DNAの溶液中、42℃で一晩のインキュベーション、それに続くフィルターの0.1xSSC中約65℃での洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、少なくとも前述の代表的な条件と同じくらいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、ここで条件は、前述の特定のストリンジェント条件と、少なくとも約80%同じストリンジェント、典型的には少なくとも約90%同じストリンジェントである場合に、それらは少なくとも同じようにストリンジェントであると考えられる。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野において公知であり、およびこの本発明の特定の態様の核酸を同定するために使用することもできる。
【0042】
本発明のタンパク質の変異体をコードしている核酸も提供される。変異体核酸は、当該技術分野において慣習的である周知の技術を用いる、ランダム突然変異誘発または標的突然変異誘発により作成することができる。一部の態様において、相同体または変異体をコードしている核酸によりコードされた色素または蛍光タンパク質は、野生型蛍光タンパク質と同じ蛍光特性を有する。別の態様において、相同体または変異体核酸は、本明細書においてより詳細に説明された、変更されたスペクトル特性を伴う色素または蛍光タンパク質をコードしている。
【0043】
特に興味深い変異体のひとつの部類は、非凝集変異体である。多くの態様において、非凝集変異体は、天然に存在するタンパク質または変異体の非凝集変異体を作成するのに十分な方法で、例えば電荷を逆転または中和するように、N末端残基の側鎖基上に出現する電荷を変更するN末端における突然変異により、野生型配列とは異なり、ここで特定のタンパク質は、その開示が本明細書に参照として組入れられている米国特許出願第10/081,864号に開示されおよび国際公開公報第02/068459号に公開されたアッセイを用い、それが非凝集であると決定された場合は、非凝集であるとみなされる。
【0044】
いくつかの態様において、本態様の核酸は、インビボにおいて低下した凝集を示す非凝集ポリペプチドをコードしている。「インビボにおける低下した凝集」は、細胞内での低下した凝集を意味する。一部の態様において、非凝集ポリペプチドは、同じインビボ条件下で、例えば同じ細胞株由来の別の真核細胞内、または同じ原核細胞内、または同じ細胞型の真核細胞もしくは細胞集団において、その対応する凝集アナログにより示された凝集の、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満を示す。概して、細胞または細胞集団内に存在する本発明の非凝集ポリペプチドの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満が、凝集される。
【0045】
凝集の程度を測定する方法は、当該技術分野において公知であり;いずれか公知の方法を用い、所定の変異体が、対応する凝集するアナログと比べ、例えば対応する凝集する野生型ポリペプチドと比較した場合に、凝集の低下を示すかどうかを決定することができる。このような方法は、「偽未変性」タンパク質ゲル電気泳動;ゲル濾過;超遠心;円偏光二色性;および、光散乱を含むが、これらに限定されるものではない。凝集は、光散乱により測定することができる。非凝集タンパク質について、比較的長い波長の吸収に対する比較的短い波長での吸収の比は、ゼロに近い。一部の態様において、非凝集ポリペプチドの566nmでの吸収の400nmでの吸収に対する比は、約0.01〜約0.1、約0.015〜約0.09、約0.02〜約0.08、約0.025〜約0.07、または約0.03〜約0.06である。
【0046】
多くの態様において、これらの核酸は、天然に存在するタンパク質またはそれらの凝集変異体の非凝集変異体を作成するのに十分な方法により、N末端残基の側鎖上に出現する電荷を変更する、例えば電荷を逆転または中和するようなN末端における突然変異により、それらの対応する野生型配列とは異なるアミノ酸配列を有する非凝集の急速に成熟するポリペプチドをコードしている。より詳細に述べると、タンパク質のN末端近傍に位置した塩基残基は置換され、例えばN末端に近いLysおよびArg残基は負帯電したまたは中和した残基により置換される。N末端は、N末端からの約50残基以内、多くはN末端の約25残基以内、およびより多くはN末端の約15残基以内を意味し、ここで多くの態様において、残基修飾は、N末端の約10残基以内で生じる。多くの態様において関心対象の特異的残基は、2、3、4、5、6、7、8、9および10を含む。
【0047】
この核酸によりコードされたタンパク質が、先に説明したDsRed変異体である場合、関心対象の特異的非凝集点突然変異は、2位での突然変異、例えばR2H、R2L、R2Aなど;5位での突然変異、例えばK5E、K5Q、K5Mなど;6位での突然変異、例えばN6Dなど;その他同類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0048】
特に関心対象の別の部類の変異体は、変調されたオリゴマー形成する変異体である。変異体は、そのオリゴマー形成特性が野生型タンパク質と比較して異なる場合に、変調されたオリゴマー形成する変異体であるとみなされる。例えば、特定の変異体が、野生型よりもより大きいまたは小さい程度にオリゴマー形成する場合、これはオリゴマー形成変異体であるとみなされる。特に興味深いのは、生理的(例えば細胞内)条件下でオリゴマー形成しない、すなわち単量体であるか、もしくは、細胞内条件下で、野生型のそれよりもより少ない程度にオリゴマー形成する、例えば二量体または三量体であるような、オリゴマー形成変異体である。従って、本発明の急速に成熟するタンパク質の単量体型をコードしている核酸に特に関心がある。本発明に説明された急速に成熟するDsRedタンパク質のひとつの代表的単量体変種は、mRFP1と称される変異体(モノマー性赤色蛍光タンパク質)であり、これはCampbellらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、2002年6月11日;93(12):7877-7882)に説明されている。この特異的変異体は、DsRedに関して合計33個の突然変異を含み、その13個は、β-バレル構造の内部である(N42Q、V44A、V71A、K83L、F124L、L150M;K163M、V175A、F177V、S179T、V195T、S197I、およびT217A);3種は、T1からの凝集-低下している突然変異(R2A、K5E、およびN6D)であり、3種は、AB接触面(interface)突然変異(I125R、V127T、およびI180T)であり、10種はAC接触面突然変異(R153E、H162K、A164R、L174D、Y192A、Y194K、H222S、L223T、F224G、およびL225A)であり、ならびに4種は、追加の有益な突然変異(T21S、H41T、C117E、およびV156A)である。このタンパク質の核酸およびアミノ酸配列は、ジェンバンクに寄託されており、および寄託番号AF506027が割当てられている。
【0049】
本発明の核酸は、cDNAもしくはゲノムDNAまたはそれらの断片であることができる。ある態様において、本発明の核酸は、特異的蛍光タンパク質およびポリペプチドをコードしている1個または複数のオープンリーディングフレーム、ならびにイントロン、更にはコード領域を超え約20kbまでの、しかし更にいずれかの方向が可能である、発現の調節に関与している隣接5'および3'非コードヌクレオチド配列を含む。本発明の核酸は、以下により詳細に説明したように、染色体外維持(maintenance)または宿主ゲノムへの組込みのために適当なベクターへ導入することができる。
【0050】
本明細書において使用される用語「cDNA」は、未変性の成熟型mRNA種において認められる配列エレメントの配置を共有する全ての核酸を含むことが意図されており、ここで配列エレメントは、エキソンならびに5'および3'側非コード領域である。通常mRNA種は、隣接するエキソンを、介在するイントロンと共に有し、これは存在する場合、核RNAスプライシングにより取り除かれ、タンパク質をコードしている連続するオープンリーディングフレームを作出する。
【0051】
関心対象のゲノム配列は、列記された配列において定義されたような、通常未変性の染色体に存在する全てのイントロンを含む、開始コドンと停止コドンの間に存在する核酸を含む。これは更に、成熟型mRNAにおいて認められる5'および3'非翻訳領域を含むことがある。これは更に、転写された領域の5'または3'末端のいずれかで隣接するゲノムDNAの約1kbであるが可能ならばそれよりも大きい、例えばプロモーター、エンハンサーなどの、特異的転写および翻訳調節配列を含むことができる。ゲノムDNAは、100kbまたはそれよりも小さい断片として;および、実質的には隣接する染色体配列を含まずに、単離することができる。3'または5'のいずれかで、コード領域に隣接するゲノムDNAまたは時々イントロンにおいて認められる内部調節配列は、適当な組織および段階に特異的な発現に必要な配列を含む。
【0052】
本発明の核酸組成物は、本発明のタンパク質の全部または一部をコードし得る。二本鎖または一本鎖の断片は、従来の方法によるオリゴヌクレオチドの化学合成、制限酵素消化、PCR増幅等によってDNA配列より入手され得る。大抵、DNA断片は、少なくとも約15nt、通常は少なくとも約18ntまたは約25ntであると考えられるが、少なくとも約50ntであってもよい。いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、約100nt、約200nt、約300nt、約400nt、約500nt、約600nt、約700nt、または約720ntの長さであり得る。本発明の核酸は、本発明のタンパク質の断片または完全長タンパク質をコードすることができ、例えば、本発明の核酸は、約25aa、約50aa 、約75aa 、約100aa 、約125aa、約150aa、約200aa、約210aa、約220aa、約230aa、または約240aa、最大でタンパク質全体の長さまでのポリペプチドをコードし得る。
【0053】
本発明の核酸は、一般に完全な染色体を別として、実質的な純度で単離して得られる。通常、DNAとしては、一般に少なくとも約50%、通常少なくとも約90%純粋な、実質的に遊離した他の核酸配列(本発明の核酸またはその断片を含まない)が得られ、かつ典型的には「組換え型(recombinant)」である(即ち、天然の染色体に通常関連しない1つまたはそれ以上のヌクレオチドが隣接する)。
【0054】
本発明のポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1の配列を有するポリヌクレオチド)、対応するcDNA、本発明の完全長遺伝子およびその構築物が提供される。これらの分子は、当業者に公知の多くの異なるプロトコールにより合成的に作成することができる。適当なポリヌクレオチド構築物は、例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY)に記載される標準の組換えDNA技術を用い、かつ米国保健社会福祉省(United States Dept. of HHS)国立衛生研究所(NIH)の組換えDNA研究に関する指針に記載された現行の規制に従い精製される。
【0055】
第二のタンパク質、例えば分解配列、シグナルペプチドなどに融合された、本発明のタンパク質またはそれらの断片の融合タンパク質をコードしている核酸も、同じく提供される。例えば本タンパク質の急速な分解配列、例えば米国特許第6,306,600号に開示されたもの(その開示は本明細書に参照として組入れられる)、PEST配列を含むマウスオルニチン脱炭酸酵素(MODC)の分解ドメインなどとの融合が、関心がある。この態様の代表的融合タンパク質は、「Destabilized DsRed-Express」の名称でBDバイオサイエンスクロンテック(BD Biosciences Clontech)(パロアルト、CA)から市販されている。融合タンパク質は、本発明のポリペプチド、またはそれらの断片、ならびに本発明のポリペプチドのN末端および/またはC末端にインフレームで融合された非花虫類ポリペプチド(「融合パートナー」)を含むことができる。融合パートナーは、融合パートナーに特異的な抗体に結合することができるポリペプチド(例えば、エピトープタグ);抗体またはそれらの結合断片;触媒的機能を提供するもしくは細胞反応を誘導するポリペプチド;リガンドもしくは受容体またはそれらの擬態;などを含むが、これらに限定されるものではない。このような融合タンパク質において、融合パートナーは一般に、融合タンパク質の本発明の花虫類部分には天然には会合せず、および典型的には花虫類タンパク質またはそれらの誘導された断片ではなく、すなわち花虫類においては認められない。
【0056】
増幅、タンパク質生産等を含む、多数の異なる適用のために使用され得る、ベクターに挿入された本発明の核酸を含む構築物も提供される。プラスミドを含むウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターが、調製され使用され得る。ベクターの選択は、増幅が望まれる細胞の型および増幅の目的に依存するであろう。ある種のベクターは、所望のDNA配列を増幅し、大量に作製するために有用である。培養細胞における発現に適しているベクターも存在する。さらに、完全な動物またはヒトの体内の細胞における移入および発現に適しているベクターも存在する。適切なベクターの選択は、十分に当技術分野の技術の範囲内にある。多くのそのようなベクターが、市販されている。構築物を調製するためには、部分的または完全長のポリヌクレオチドが、典型的にベクター内の切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼによる付加によって、ベクターへと挿入される。または、所望のヌクレオチド配列は、インビボにおける相同的組み換えによって挿入され得る。典型的には、これは、ベクターの所望のヌクレオチド配列の両側に相同領域を付加することにより達成される。相同領域は、例えば、オリゴヌクレオチドのライゲーションによって、または相同領域および所望のヌクレオチド配列の一部の両方を含むプライマーを使用した、ポリメラーゼ連鎖反応によって追加される。対象の代表的な特定のベクターには、限定されないが、pCMV-DsRed-Expressベクター;pDsRed-ExpressベクターおよびpDsRed-Express-1ベクター;BDバイオサイエンスクロンテック(BD Biosciences Clontech)(Palo Alto CA)から販売されている全てが含まれる。
【0057】
適用の中でも、とりわけ本発明のタンパク質の合成において有益である発現カセットまたは発現系も提供される。発現のため、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物は、例えば細菌、酵母、昆虫、両生動物、および哺乳動物の系を含む任意の便利な発現系において発現される。適当なベクターおよび宿主細胞は、米国特許第5,654,173号に記載されている。発現ベクターにおいて、本発明のポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1または2に示されるような)は、所望の発現特性を得るため、適宜制御配列と連結される。これらの制御配列には、プロモーター(センス鎖の5'末端、またはアンチセンス鎖の3'末端に付加される)、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、リプレッサー、およびインデューサーが含まれ得る。プロモーターは、制御型または構成型であってもよい。いくつかの状況においては、組織特異的プロモーターまたは発達段階特異的プロモーターのような、条件活性プロモーターを使用することが望まれ得る。これらは、ベクターとの連結に関する前記の技術を使用して、所望のヌクレオチド配列に連結される。当技術分野において既知の任意の技術が使用され得る。換言すると、発現ベクターは、誘導可能であるか、または構成型であってもよい、転写および翻訳の開始領域(コード領域が、転写開始領域の転写調節下で機能可能に連結されている)、ならびに転写および翻訳の終結領域を提供するであろう。これらの調節領域は、本発明の核酸が得られる本発明の種に在来するものであってもよいし、または外因的な起源に由来してもよい。
【0058】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するため、プロモーター配列の近傍に位置する便利な制限部位を有している。発現宿主において機能する選択可能マーカーが存在してもよい。発現ベクターは、とりわけ前記の融合タンパク質の生産のために使用され得る。
【0059】
転写開始領域、遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含む発現カセットが調製され得る。特に関心対象であるのは、通常は少なくとも8アミノ酸長、より通常には少なくとも約15アミノ酸長〜約25アミノ酸長、最大で遺伝子の完全なオープン・リーディング・フレームの長さまでの、機能性のエピトープまたはドメインの発現を可能にする配列の使用である。DNAの導入の後、構築物を含有している細胞が選択可能なマーカーによって選択され、その細胞が増幅され、次いで発現のために使用され得る。
【0060】
前記の発現系は、発現の目的に依って、従来の方式に従い原核生物または真核生物を用いて利用され得る。タンパク質の大量生産のためには、大腸菌、枯草菌(B.subtilis)、出芽酵母(S.cerevisiae)のような単細胞生物、バキュロウイルス・ベクターと組み合わされた昆虫細胞、または脊椎動物のような高等生物の細胞、例えばCOS7細胞、HEK293、CHO、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞等が、発現宿主細胞として使用され得る。いくつかの状況においては、発現したタンパク質が、在来の折り畳みおよび翻訳後修飾の恩恵を得ると考えられる真核細胞において遺伝子を発現させることが望ましい。小さなペプチドは、実験室において合成することもできる。完全タンパク質配列のサブセットであるポリペプチドは、機能にとって重要なタンパク質の部分を同定し検討するために使用され得る。
【0061】
関心対象の特定の発現系には、細菌、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞に由来する発現系が含まれる。これらの各カテゴリーからの代表的な系を、以下に挙げる。
【0062】
細菌
細菌における発現系には、Changら、Nature(1978)275:615;Goeddelら、Nature(1979)281:544;Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057;欧州特許第0 036,776号;米国特許第4,551,433号;DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1983)80:21-25;およびSiebenlistら、Cell(1980)20:269に記載されたものが含まれる。
【0063】
酵母
酵母における発現系には、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1978)75:1929;Itoら、J.Bacteriol.(1983)153:163;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.(1986)6:142;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.(1986)132:3459;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.(1986)202:302;Dasら、J.Bacteriol.(1984)158:1165;De Louvencourtら、J.Bacteriol.(1983)154:737;Van den Bergら、Bio/Technology(1990)8:135;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Creggら、Mol.Cell.Biol.(1985)5:3376;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号;BeachおよびNurse、Nature(1981)300:706;Davidowら、Curr.Genet.(1985)10:380;Gaillardinら、Curr.Genet.(1985)10:49;Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1983)112:284-289;Tilburnら、Gene(1983)26:205-221;Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1984)81:1470-1474;KellyおよびHynes、EMBO J.(1985)4:475479;欧州特許第0 244,234号;および国際公開公報第91/00357号に記載されたものが含まれる。
【0064】
昆虫細胞
昆虫における異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号;The Molecular Biology Of Baculoviruses(1986)(W.Doerfler編)における、Friesenら、The Regulation of Baculovirus Gene Expression;欧州特許第0 127,839号;欧州特許第0 155,476号;およびVlakら、J.Gen.Virol.(1988)69:765-776;Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177;Carbonellら、Gene(1988)73:409;Maedaら、Nature(1985)315:592-594;Lebacq-Verheydenら、Mol.Cell.Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1985)82:8844;Miyajimaら、Gene(1987)58:273;およびMartinら、DNA(1988)7:99に記載されたようにして達成される。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、ならびに対応する許容性昆虫宿主細胞が、Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47-55、Millerら、Generic Engineering(1986)8:277-279、およびMaedaら、Nature(1985)315:592-594に記載されている。
【0065】
哺乳動物細胞
哺乳動物発現は、Dijkemaら、EMBO J.(1985)4:761、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1982)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521、および米国特許第4,399,216号に記載されたようにして達成される。哺乳動物発現のその他の特質は、HamおよびWallace,Meth.Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.(1980)102:255、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、国際公開公報第90/103430号、国際公開公報第87/00195号、米国再発行特許第30,985号に記載されたようにして促進される。
【0066】
上記の宿主細胞、またはその他の適切な宿主細胞もしくは宿主生物のいずれかが、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸を複製、および/または発現させるために使用される場合、得られる複製した核酸、RNA、発現したタンパク質またはポリペプチドは、宿主細胞または宿主生物の産物として、本発明の範囲内に含まれる。産物は、当技術分野において既知の任意の適切な手段によって回収される。
【0067】
一旦選択されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子が同定されたならば、その発現は、遺伝子が未変性である細胞内で調節することができる。例えば細胞の内因性遺伝子は、細胞内遺伝子の発現を少なくとも増強するのに十分な位置で細胞のゲノムに挿入された外因性調節配列により、調節することができる。この調節配列は、その開示が本明細書に参照として組入れられている米国特許第5,641,670号および第5,733,761号に開示された相同組換えによりゲノムに組込むようにデザインするか、またはその開示が本明細書に参照として組入れられている国際公開公報第99/15650号に開示された非相同組換えによりゲノムへ組込むようにデザインすることができる。このように、本発明には、先に組込まれた特許書類に説明されているような、コードしている核酸それ自身を操作することなく、しかし代わりに調節配列の望ましいタンパク質をコードしている遺伝子を既に含む細胞ゲノムへの組込みを通じて、本発明のタンパク質を生成することも包含されている。
【0068】
本発明の核酸の相同体も提供される。相同体は、多くの方法のいずれかにより同定される。提供されたcDNAの断片は、関心対象の標的生物からのcDNAライブラリーに対するハイブリダイゼーションプローブとして使用することができ、ここでは低いストリンジェンシー条件が使用される。このプローブは、大きい断片であるか、または1種もしくは複数の短い縮重プライマーであることができる。配列類似性を有する核酸は、例えば、50℃および6xSSC(0.9M塩化ナトリウム/0.09Mクエン酸ナトリウム)の低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションにより検出され、ならびに1xSSC(0.15M塩化ナトリウム/0.015Mクエン酸ナトリウム)中、55℃で洗浄が施された場合に、結合が維持される。配列同一性は、例えば、50℃またはそれ以上でおよび0.1xSSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)のような、ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションにより、決定することができる。例えばアレル変種、遺伝子の遺伝的に変更された型などのような、提供された配列に実質的に同一の領域を有する核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で提供された配列に結合する。プローブ、特にDNA配列の標識されたプローブを使用することにより、相同または関連した遺伝子を単離することができる。
【0069】
本発明のゲノム配列のプロモーターエレメントにも関心があり、ここで5'フランキング領域の配列は、エンハンサー結合部位を含む、例えば、本発明のタンパク質遺伝子が発現される細胞/組織内での発現を調節するために提供されるプロモーターエレメントのために利用することができる。
【0070】
本発明の核酸の小さいDNA断片も提供され、この断片は、PCRのプライマー、ハイブリダイゼーションスクリーニングプローブなどとして有用である。より大きいDNA断片、すなわち100ntより大きいものは、先の項に説明されたような、コードされたポリペプチドの作成に有用である。幾何学的(geometric)PCRなどの、幾何学的増幅反応における使用のために、プライマー対が使用されるであろう。これらのプライマー配列の正確な組成は、本発明にとって重要ではないが、ほとんどの適用について、これらのプライマーは、当該技術分野において公知であるように、このような本発明の配列に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするであろう。少なくとも約50nt、好ましくは少なくとも約100ntの増幅産物を作成するプライマー対を選択することが好ましい。プライマー配列の選択のアルゴリズムは、一般に公知であり、および市販のソフトウェアパッケージにおいて利用可能である。増幅プライマーは、DNAの相補鎖へハイブリダイズし、および互いに対しプライミングするであろう。
【0071】
このDNAは、生物学的標本中の遺伝子の発現を同定するためにも使用することができる。ゲノムDNAまたはRNAのような、特定のヌクレオチド配列の存在に関して、細胞をプロービングする方式は、文献において良く確立されている。簡単に述べると、DNAまたはmRNAが、細胞試料から単離される。mRNAは、相補DNA鎖を形成するために逆転写酵素を用いるRT-PCR、引き続き本発明のDNA配列に対し特異的なプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応増幅により、増幅することができる。あるいは、mRNA試料は、ゲル電気泳動により分離され、例えばニトロセルロース、ナイロンなどの適当な支持体へ転写され、その後プローブとして本発明のDNAの断片により、プロービングされる。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、インサイチューハイブリダイゼーション、および固形チップ上にアレイ化されたDNAプローブへのハイブリダイゼーションのような他の技術も、使用を認めることができる。本発明の配列へハイブリダイズするmRNAの検出は、試料中の花虫類タンパク質遺伝子発現の指標である。
【0072】
フランキングプロモーター領域およびコード領域を含む本発明の核酸は、当該技術分野において公知の様々な方法で変異し、プロモーター強度、コードされたタンパク質の配列、コードされたタンパク質の蛍光特性を含む、コードされたタンパク質の特性などにおける標的化された変化を形成することができる。突然変異のようなDNA配列またはタンパク質の生成物は、通常本明細書に提供された配列に実質的に類似しており、例えば各々、少なくとも1個のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なり、ならびに少なくとも2個、しかし約10個以内のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なることができる。これらの配列の変化は、置換、挿入、欠失またはそれらの組合せであってもよい。欠失は更に、例えば、10、20、50、75、100、150またはそれ以上のアミノ酸残基のひと配列のような、ドメインまたはエキソンの欠失などのような、より大きい変化を含むことができる。クローン化された遺伝子のインビトロ突然変異誘発の技術は公知である。位置指定突然変異誘発のプロトコールの例は、Gustinら、Biotechniques 14:22(1993);Barany、Gene、37:111-23(1985);Colicelliら、Mol. Gen. Genet. 199:537-9(1985);および、Prentkiら、Gene 29:303-13(1984)に見ることができる。位置指定突然変異誘発の方法は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press社、1989年15.3-15.108頁;Weinerら、Gene 126:35-41(1993);Sayersら、Biotechniques 13:592-6(1992);JonesおよびWinistorfer、Biotechniques 12:528-30(1992);Bartonら、Nucleic Acids Res 18:7349-55(1990);MarottiおよびTomich、Gene Anal. Tech. 6:67-70(1989);ならびに、Zhu、Anal Biochem 177:120-4(1989)に見ることができる。このような変異した核酸誘導体を使用し、特定の色素/蛍光タンパク質の構造-機能相関関係を研究するか、またはその機能もしくは調節に影響を及ぼすタンパク質の特性を変更することができる。
【0073】
本発明の核酸のヒト化型も、関心対象である。本明細書において使用されるように、「ヒト化」という用語は、ヒト細胞におけるタンパク質の発現のためのコドンを最適化するために、核酸配列に対してなされる変化をさす(Yangら、Nucleic Acids Research 24 (1996),4592-4593)。タンパク質のヒト化を記載している米国特許第5,795,737号(その開示は参照として本明細書に組み込まれる)も、参照されたい。
【0074】
タンパク質/ポリペプチド組成物
本発明により、急速に成熟する色素および/または蛍光タンパク質ならびにそれらの変異体に加え、それらに関連したポリペプチド組成物も提供される。本発明のタンパク質は色素タンパク質であるので、これらは、発色したタンパク質であり、これは蛍光、低蛍光または非蛍光であってもよい。本明細書に使用される色素タンパク質および蛍光タンパク質という用語は、レニラルシフェラーゼのような、ルシフェラーゼを含まず、および例えば白色光もしくは特定波長光(または励起波長のような波長の狭いバンド)の光が照射された場合に、着色または発色および/または発蛍光されるいずれかのタンパク質を意味する。本明細書において使用される用語ポリペプチド組成物は、完全長タンパク質に加え、それらの部分または断片の両方を意味する。同じくこの用語は、天然に存在するタンパク質の変種も含み、ここでこのような変種は、以下により詳細に説明されるように、天然に存在するタンパク質に相同または実質的に類似しており、ならびに天然に存在するタンパク質の変異体である。本発明のポリペプチドは、それらの天然に存在する環境以外に存在する。
【0075】
多くの態様において、本発明のタンパク質の励起スペクトルは、典型的には約300〜700、一般的には約350〜650、およびより一般的には約400〜600nmの範囲であるが、本発明のタンパク質の発光スペクトルは、典型的には約400〜800、一般的には約425〜775、およびより一般的には約450〜750nmの範囲である。これらの本発明のタンパク質は一般に、約10,000〜55,000の範囲、および通常約15,000〜55,000の最大吸光係数を有する。本発明のタンパク質は、典型的には長さの範囲が約150〜300個、通常約200〜300個のアミノ酸残基であり、および一般には約15〜35kDa、通常約17.5〜32.5kDaの範囲の分子量を有する。
【0076】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は明るい(明るいとは、通常の方法(例えば、視覚的スクリーニング、分光測光法、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡検、FACS機等)により、色素タンパク質およびそれらの蛍光性変異体が検出され得ることを意味する)。特定の蛍光性タンパク質の蛍光輝度は、極大吸光係数を掛けた量子収量により決定される。色素タンパク質の輝度は、その極大吸光係数によって表され得る。
【0077】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は、宿主細胞における発現の後、迅速に折り畳まれる。迅速な折り畳みとは、タンパク質が、色素性または蛍光性を生じる三次構造に短時間で達することを意味する。これらの態様において、ドメインは、一般に約3日を超えない期間、通常は約2日を超えない期間、より通常には約1日を超えない期間に折り畳まれる。
【0078】
関心対象の特異的タンパク質は、DsRedの急速に成熟する変種を含み、これは、対応するDsRed野生型タンパク質よりも、少なくとも約5倍より急速に、時には少なくとも約10倍より急速に、例えば少なくとも約15倍より急速または早く成熟する。この具体的態様のタンパク質の例は、下記実験の項に説明されたもの、例えばDsRed.T1;DsRed.T3;および、DsRedT4を含む。
【0079】
本発明の先に提供された特異的アミノ酸配列からの配列において変動する相同体またはタンパク質(またはそれらの断片)も、提供される。相同体とは、D. G. HigginsおよびP.M. Sharp、「Fast and Sensitive multiple Sequence Alignments on a Microcomputer」、CABIOS、5:151-153(1989)に説明されたような、MegAlign、DNAstar(1998)クラスタルアルゴリズム(使用したパラメータは、ktuple 1、ギャップ・ペナルティ 3、ウィンドウ 5および保存対角 5(diagonals saved 5))を使用し決定し、本発明のタンパク質に対し、少なくとも約10%、一般には少なくとも約20%およびより一般には少なくとも約30%、ならびに多くの態様においては少なくとも約35%、一般には少なくとも約40%およびより一般には少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を意味する。多くの態様において、関心対象の相同体は、非常に高い配列同一性、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれ以上を有する。
【0080】
同じく、本明細書において特に説明されたタンパク質と実質的に同一であるタンパク質も提供され、ここで実質的に同一とは、タンパク質が、参照タンパク質に対し、少なくとも約60%、一般に少なくとも約65%およびより一般には少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性を有し;ここで場合によってはこの同一性は、非常に高い、例えば75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上であることを意味する。
【0081】
多くの態様において、本発明の相同体は、先に提供された特異的配列において認められる構造的特徴を有し、ここでこのような構造特徴はβ-カン(β-can)フォールディングを含む。
【0082】
本明細書において詳細に説明されたタンパク質の変異体であるタンパク質も、提供される。変異体は、野生型(例えば天然に存在する)タンパク質の生物学的特性を維持することができ、または野生型タンパク質とは異なる生物学的特徴を有することができる。用語本発明のタンパク質の「生物学的特性」は、スペクトル特性、例えば最大吸光度、最大発光、最大吸光係数、輝度(例えば、野生型タンパク質またはオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質のような他の参照タンパク質との比較)など;インビボおよび/またはインビトロ安定性(例えば、半減期);などを含むが、これらに限定されるものではない。変異体は、単独のアミノ酸変化、1種または複数のアミノ酸の欠失、N末端切断、C末端切断、挿入なども含む。
【0083】
変異体は、分子生物学の標準の技術、例えばランダム突然変異誘発および標的突然変異誘発を用い、作成することができる。いくつかの変異体が本明細書に説明されている。実施例の項に提供された指針、および標準の技術を用い、当業者は、多種多様な追加の変異体を容易に作成し、ならびに生物学的特性が変更されたかどうかを試験することができる。例えば、蛍光強度を、様々な励起波長で分光光度計を用い測定することができる。
【0084】
天然に存在するタンパク質である本発明のこれらのタンパク質は、天然には存在しない環境に存在し、例えばそれらの天然に存在する環境から分離される。ある態様において、本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質についてその天然に存在する環境と比べ濃縮された組成物中に存在する。例えば、精製されたタンパク質が提供され、ここで精製は、タンパク質が、関心対象の非色素/蛍光タンパク質のタンパク質を実質的に含まない組成物中に存在することを意味し、ここで実質的に含まないとは、組成物の90%未満、一般に60%未満およびより一般には50%未満が、関心対象の非色素タンパク質またはそれらの変異体で占められることを意味する。本発明のタンパク質は、単離体として存在することもでき、これは、タンパク質が他のタンパク質、ならびにオリゴ糖、ポリヌクレオチドおよびそれらの断片などのようなその他の天然に存在する生物学的分子を実質的に含まないことを意味し、ここで用語「実質的に含まない」は、この状況において、単離されたタンパク質を含有する組成物の70%未満、一般には60%未満およびより一般には50%未満が、いくつかの他の天然に存在する生物学的分子であることを意味する。ある態様において、これらのタンパク質は、実質的に純粋な形で存在し、ここで「実質的に純粋な形」とは、少なくとも95%、一般には少なくとも97%およびより一般には少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0085】
本明細書に具体的に説明されたタンパク質加え、これらのタンパク質とは異なるポリペプチド、例えば先に説明された変異体タンパク質も提供される。一般にこのようなポリペプチドは、本発明の野生型タンパク質をコードしている遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされたアミノ酸配列を含み、これは完全長タンパク質およびそれらの断片、特に生物学的活性のある断片および/または機能ドメインに相当する断片などを含み;ならびに、本発明のポリペプチドの他のタンパク質またはそれらの一部への融合体を含む。関心対象の断片は、典型的には少なくとも約10個のアミノ酸長、一般には少なくとも約50個のアミノ酸長であり、300個のアミノ酸長またはそれよりも長いこともできるが、通常は約1000個のアミノ酸長を超えず、ここでこの断片は、少なくとも約10個のアミノ酸、および一般には少なくとも約15個のアミノ酸の、および多くの態様において少なくとも約50個のアミノ酸長である、本発明のタンパク質と同じであるアミノ酸のひと配列を有する。一部の態様において、本発明のポリペプチドは、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約75個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約125個のアミノ酸、約150個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約210個のアミノ酸、約220個のアミノ酸、約230個のアミノ酸、または約240個のアミノ酸長であり、最大全タンパク質である。一部の態様において、タンパク質断片は、野生型タンパク質の生物学的特性の全てまたは実質的に全てを保持している。
【0086】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、天然に存在する給源から得るかまたは合成により作成することができる。例えば、野生型タンパク質は、そのタンパク質を発現する生物学的給源、例として先に列記した特定のもののような生物発光しない刺胞動物(例えば花虫類)、の由来であってもよい。本発明のタンパク質は、合成手段、例えば、前述のような、適当な宿主における関心対象のタンパク質をコードしている組換え遺伝子または核酸コード配列の発現により誘導することもできる。いずれか都合の良いタンパク質精製手法を用いることができ、ここで適当なタンパク質精製法は、「Guide to Protein Purification」(Deuthser編)(Academic Press社、1990年)に説明されている。例えば、細胞溶解液を、当初の給源から調製し、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィーなどを用い精製することができる。
【0087】
抗体組成物
本発明の蛍光タンパク質に特異的に結合する抗体も提供される。適当な抗体は、本発明のタンパク質の全てまたは一部を含むペプチドによる宿主動物の免疫処置により得られる。適当な宿主動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、ウサギなどを含む。タンパク質免疫原の起源は、一般に刺胞動物種、特に生物発光しない刺胞動物種、例えば花虫類またはウミエラでない花虫類であろう。宿主動物は、一般に例えばマウスなどのその免疫原以外の様々な種であろう。
【0088】
免疫原は、完全なタンパク質、またはそれらの断片および誘導体を含むことができる。好ましい免疫原は、タンパク質の全てまたは一部を含み、ここでこれらの残基は、未変性の標的タンパク質に認められた翻訳後修飾を含む。免疫原は、当該技術分野において公知の様々な方法、例えば通常の組換え法を使用するクローン化された遺伝子の発現、当初の花虫類からの単離で作製される。
【0089】
ポリクローナル抗体の調製のための第一段階は、約1%未満の汚染物質を含む、好ましくは実質的に純粋な形態で存在すると考えられる標的タンパク質による、宿主動物の免疫化である。免疫原には、完全な標的タンパク質、その断片または誘導体が含まれ得る。宿主動物の免疫応答を増加させるため、標的タンパク質は、アジュバントと組み合わせられてもよく、適当なアジュバントには、ミョウバン、デキストラン、硫酸塩、高分子重合体陰イオン、油水乳剤、例えばフロイントのアジュバント、フロイントの完全アジュバント等が含まれる。標的タンパク質は、合成担体タンパク質または合成抗原に抱合させられてもよい。多様な宿主が、ポリクローナル抗体を作製するために免疫化され得る。そのような宿主には、ウサギ、モルモット、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が含まれる。標的タンパク質は、通常は皮内に初回用量を投与された後、1回または複数回、通常は少なくとも2回の付加的な追加用量を投与される。免疫化の後、宿主から血液が収集され、続いて血球から血清の分離が行われる。得られた抗血清の中に存在するIgは、アンモニウム塩分画、DEAEクロマトグラフィー等のような既知の方法を使用してさらに分画され得る。
【0090】
モノクローナル抗体は、従来の技術によって作製される。一般に、免疫化された宿主動物の脾臓および/またはリンパ節が、プラズマ細胞の起源を提供する。プラズマ細胞は、ハイブリドーマ細胞を作製するため、骨髄腫細胞との融合によって不死化される。産生される抗体が所望の特異性を有することを確認するため、個々のハイブリドーマに由来する培養上清が、標準的な技術を使用してスクリーニングされる。ヒト・タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製に適した動物には、マウス、ラット、ハムスター等が含まれる。マウス・タンパク質に対する抗体を生成させるための動物には、一般に、ハムスター、モルモット、ウサギ等が考えられる。抗体は、従来の技術、例えば不溶性支持体、プロテインAセファロース等と結合したタンパク質を使用したアフィニティ・クロマトグラフィーによって、ハイブリドーマ細胞上清または腹水より精製され得る。
【0091】
抗体は、通常の多量体構造ではなく、単鎖として作製されてもよい。単鎖抗体は、Jostら(1994)J.B.C.269:26267-73、およびその他に記載されている。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域をコードするDNA配列が、グリシンおよび/またはセリンを含む、小さな中性アミノ酸を少なくとも約4アミノ酸コードするスペーサーへ連結される。この融合体によってコードされるタンパク質は、元の抗体の特異性および親和性を保持する機能性可変領域の組み立てを可能にする。
【0092】
ある種の態様において、ヒト化抗体も関心対象である。抗体をヒト化する方法は、当技術分野において既知である。ヒト化抗体は、遺伝子導入したヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子を有する動物の産物であり得る(例えば、国際特許出願、国際公開公報第90/10077号および第90/04036号を参照のこと)。または、関心対象の抗体を組替えDNA技術によって設計して、CH1、CH2、CH3、ヒンジ・ドメイン、および/またはフレームワーク・ドメインを、対応するヒトの配列に置換してもよい(国際公開公報第92/02190号を参照のこと)。
【0093】
キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用は、当技術分野において既知である(Liuら(1987)P.N.A.S.84:3439および(1987)J.Immunol.139:3521)。mRNAが、抗体を産生するハイブリドーマまたはその他の細胞から単離され、cDNAを作製するために使用される。関心対象のcDNAは、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって増幅され得る(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。または、ライブラリーが作成され、関心対象の配列を単離するためにスクリーニングされる。抗体の可変領域をコードするDNA配列は、次いで、ヒト定常領域配列と融合させられる。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、N.I.H.刊行物第91-3242号に見出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンより容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、補体結合、または抗体依存性細胞毒性における活性のような所望のエフェクター機能によって導かれると考えられる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのいずれかが使用され得る。次いで、キメラ・ヒト化抗体が、従来の方法によって発現させられる。
【0094】
Fv、F(ab')2、およびFabのような抗体断片は、完全なタンパク質の切断によって、例えばプロテアーゼまたは化学的切断によって調製され得る。または、切断型遺伝子が設計される。例えば、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ・ドメインをコードするDNA配列の後に、切断型分子を生じるための翻訳終止コドンを含むと考えられる。
【0095】
後に続くV領域セグメントのヒトC領域セグメントへの連結のために、有用な制限部位をJ領域へ導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するために、HおよびLのJ領域のコンセンサス配列が使用され得る。C領域cDNAは、ヒト配列内の類似の位置に制限部位を置くための、部位特異的突然変異誘発により改変され得る。
【0096】
発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来エピソーム等が含まれる。便利なベクターは、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入され、かつ発現させられるよう設計された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターにおいては、スプライシングが、通常は、挿入されたJ領域内のスプライス供与部位と、ヒトC領域の前に位置するスプライス受容部位との間に起こり、そしてヒトCHエクソン内に存在するスプライス領域においても起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流の在来の染色体部位において起こる。得られたキメラ抗体は、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayamaら(1983) Mol.Cell.Bio.3:280)、ラウス肉腫ウィルスLTR(Gormanら(1982)P.N.A.S.79:6777)、およびモロニーマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedlら(1985) Cell 41:885);在来のIgプロモーター等を含む、任意の強力なプロモーターに接続され得る。
【0097】
トランスジェニック
本発明の核酸は、トランスジェニック非ヒト植物もしくは動物、または細胞株における部位特異的遺伝子改変を生じるために使用され得る。本発明のトランスジェニック細胞は、導入遺伝子として存在する本発明による核酸を1個または複数含んでいる(この定義には、導入遺伝子を含むよう形質転換された親細胞およびそれらの子孫が含まれる)。多くの態様において、トランスジェニック細胞は、本発明に係る核酸を通常は保有または含有していない細胞である。トランスジェニック細胞が本発明の核酸を天然に含有している態様においては、その核酸は、細胞内の天然の位置ではない位置に存在すると考えられ、即ち細胞のゲノム物質内に非天然の位置で組み込まれているであろう。内因性遺伝子座を改変したトランスジェニック動物は、相同的組み換えを介して作製され得る。または、核酸構築物は、ゲノム内へ無作為に組み込まれる。安定的な組み込みのためのベクターには、プラスミド、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YAC等が含まれる。
【0098】
本発明のトランスジェニック生物には、内因性遺伝子の発現が、排除されない場合には少なくとも減少している、内因性ノックアウトである細胞および多細胞生物、例えば植物および動物が含まれる。関心対象のトランスジェニック生物には、タンパク質またはそのバリアントが、それが通常発現しない細胞または組織において発現しており、かつ/またはそのような細胞または組織において通常は存在しないレベルで発現している、細胞および多細胞生物、例えば植物および動物も含まれる。
【0099】
相同的組替えのためのDNA構築物は、所望の(1個以上の)遺伝学的改変を有しており、標的遺伝子座と相同な領域を含む、本発明の遺伝子の少なくとも一部を含むと考えられる。無作為組み込みのためのDNA構築物には、組み換えを媒介するための相同領域が含まれている必要はない。都合のよいことには、ポジティブ選択およびネガティブ選択のためのマーカーが含まれる。相同的組替えを介して標的遺伝子を改変した細胞を産生するための方法は、当技術分野において既知である。哺乳動物細胞をトランスフェクトするための様々な技術については、Keownら(1990)、Meth.Enzymol.185:527-537を参照のこと。
【0100】
胚性幹(ES)細胞については、ES細胞株が使用されてもよいし、または胚細胞が、例えばマウス、ラット、モルモット等の宿主から新鮮に得られてもよい。そのような細胞は、適切な繊維芽細胞フィーダー層の上で増殖させられるか、または白血病阻止因子(LIF)の存在下で増殖させられる。ESまたは胚細胞が形質転換された場合、それらはトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。形質転換の後、細胞は、適切な培地中でフィーダー層上に播かれる。構築物を含有している細胞は、選択培地を利用することにより検出され得る。コロニーが増殖するのに十分な時間の後、それらは選び取られ、構築物の相同的組み換えまたは組み込みの発生に関して分析される。次いで、陽性であるコロニーが、胚操作および胚盤胞注入のために使用され得る。胚盤胞は、4〜6週齢の過排卵雌より得られる。ES細胞がトリプシン処理され、改変した細胞が胚盤胞の胞胚腔へと注入される。注入の後、胚盤胞が偽妊娠雌の各子宮角に戻される。次いで、雌を満期に到達させ、得られた子孫を構築物に関してスクリーニングする。発現型の異なる胚盤胞および遺伝学的に改変した細胞を提供することにより、キメラ子孫は容易に検出され得る。
【0101】
キメラ動物は、改変遺伝子の存在に関してスクリーニングされ、改変を有している雄および雌がホモ接合性子孫を作製するために交配される。遺伝子改変が、発達中のある時点で致死を引き起こす場合には、組織または器官が、同種異系もしくは類遺伝子性の移植片もしくは移植物として、またはインビトロ培養物中に維持され得る。トランスジェニック動物は、実験動物、家畜等の任意の非ヒト哺乳類であり得る。トランスジェニック動物は、機能研究、薬物スクリーニング等において使用され得る。トランスジェニック動物の使用の代表的な例には、下記のものが含まれる。
【0102】
トランスジェニック植物は、類似の様式で作製され得る。トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物体を調製する方法は、米国特許第5,767,367号;第5,750,870号;第5,739,409号;第5,689,049号;第5,689,045号;第5,674,731号;第5,656,466号;第5,633,155号;第5,629,470号;第5,595,896号;第5,576,198号;第5,538,879号;第5,484,956号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。トランスジェニック植物体を作製する方法は、Plant Biochemistry and Molecular Biology(LeaおよびLeegood編、John Wiley&Sons)(1993)pp.275-295にも概説されている。簡潔には、植物種の性質に依って適当な植物細胞または組織が収穫される。そのため、ある種の例においては、プロトプラストが単離されると考えられ、そのようなプロトプラストは多様な異なる植物組織、例えば葉、胚軸、根等より単離され得る。プロトプラスト単離のためには、収穫された細胞が、細胞壁を除去するためセルラーゼの存在下でインキュベートされる(ここで、正確なインキュベーション条件は、細胞の由来した植物および/または組織の型に依って変動する)。次いで、ふるい分けおよび遠心分離により、得られた細胞砕片から、得られたプロトプラストが分離される。プロトプラストを使用する代わりに、体細胞を含む胚形成外植片が、トランスジェニック宿主の調製のために使用されてもよい。細胞または組織の収穫の後、関心対象の外因性DNAが、植物細胞へ導入され、そのような導入には、多様な異なる技術が利用可能である。単離されたプロトプラストを得ることにより、多価陽イオン、例えばPEGまたはPLO存在下における、関心対象の外因性コード配列を含む、裸のDNA、例えばプラスミドとのプロトプラストのインキュベーション;および関心対象の外因性配列を含む裸のDNAの存在下での、プロトプラストの電気穿孔を含む、DNA媒介性の遺伝子移入プロトコルを介した導入の機会が生じる。次いで、外因性DNAの取り込みに成功したプロトプラストを選択し、カルスへ成長させ、適切な量および比率の刺激因子、例えばオーキシンおよびサイトカイニンとの接触を通じて、最終的にはトランスジェニック植物体へと成長させる。胚形成外植片を用いる場合、標的体細胞に外因性DNAを導入する便利な方法は、粒子加速プロトコルまたは「遺伝子銃」プロトコルの使用を介したものである。次いで、得られた外植片を、キメラ植物体へと成長させ、交雑させ、トランスジェニック子孫を得る。前記の裸のDNAアプローチの代わりに、トランスジェニック植物を作製するもう一つの便利な方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)により媒介される形質転換である。アグロバクテリウムにより媒介される形質転換では、外因性DNAを含む共組み込み(co-integrative)またはバイナリー・ベクターを調製し、次いで、適切なアグロバクテリウム株、例えばA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)へと導入する。次いで、得られた細菌を、調製したプロトプラストまたは組織外植片、例えばリーフディスクと共にインキュベートし、カルスを作製する。次いで、カルスを選択条件下で成長させ、選択し、根および苗条の成長を誘導するための成長培地に供し、最終的にはトランスジェニック植物体を作製する。
【0103】
有用性
本発明の色素タンパク質およびその蛍光性変異体は、多様な異なる適用において有益であるが、適用は、タンパク質がが色素タンパク質であるかまたは蛍光性タンパク質であるかに依って必然的に異なる。これらの各タンパク質型の代表的な用途を以下に記載するが、以下に記載された用途は、単なる代表的なものであり、本発明のタンパク質の使用を下記のものに制限するものでは決してない。
【0104】
色素タンパク質
本発明の色素タンパク質は、多様な異なる適用において有益である。一つの関心対象の適用は、問題としている特定の組成物に色または色素を付与することができる着色料としての本発明のタンパク質の使用である。ある種の態様において特に関心対象であるのは、無毒の色素タンパク質である。本発明の色素タンパク質は、問題とする多様な異なる組成物に取り込まれ得る(問題とする組成物の代表には、食物組成物、医薬品、化粧品、生物、例えば動物および植物等が含まれる)。着色料または色素として使用される場合、所望の色または色素を付与するために十分な量の色素タンパク質が、問題とする組成物に取り込まれる。色素タンパク質は、任意の便利なプロトコルを使用して、問題とする組成物に取り込まれてもよく、利用される特定のプロトコルは、少なくとも部分的には、着色すべき問題とする組成物の性質に必然的に依存すると考えられる。利用され得るプロトコルには、混和、拡散、摩擦、噴霧、注入、および入れ墨等が含まれるが、これらに制限はされない。
【0105】
色素タンパク質は、分析物検出アッセイ法、例えば関心対象の生物学的分析物に関するアッセイ法における標識としても有益であり得る。例えば、色素タンパク質は、分析物に特異的な抗体またはその結合性断片を含む付加体に取り込まれ、その後、米国特許第4,302,536号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されるように、複合試料中の関心対象の分析物に関する免疫アッセイ法において利用され得る。抗体またはその結合性断片の代わりに、本発明の色素タンパク質またはその色素生産性断片は、当業者には容易に明らかであるように、関心対象の分析物と特異的に結合するリガンド、またはその他の成分(moiety)、増殖因子、ホルモン等と抱合されてもよい。
【0106】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質は、組替えDNA適用、例えば前記のようなトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物の作製において、選択可能マーカーとして使用され得る。そのため、成功プロトコルまたは非成功プロトコルのいずれかのために、選択可能マーカーとして本発明の色素タンパク質の発現を利用するため、特定のトランスジェニック作製プロトコルを設計することが可能である。従って、特定のプロセスによって作製されたトランスジェニック生物の発現型における、本発明の色素タンパク質の色の出現は、特定の生物が、多くの場合、生物における導入遺伝子の発現を提供する様式で組み込まれる、関心対象の導入遺伝子の保有に成功したことを示すために使用され得る。選択可能マーカーとして使用される場合、本発明の色素タンパク質をコードする核酸は、より詳細に上記で記載されたトランスジェニック産生プロセスにおいて利用され得る。本発明のタンパク質が選択可能マーカーとして利用され得る特定の関心対象のトランスジェニック生物には、トランスジェニック植物、トランスジェニック動物、トランスジェニック細菌、トランスジェニック真菌等が含まれる。
【0107】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質(および蛍光性タンパク質)は、国際公開公報第00/46233号に記載されたタンパク質の用途と類似の様式で、日焼け止め、選択的フィルター等として有益である。
【0108】
蛍光性タンパク質
本発明の蛍光性タンパク質(および前記の本発明のその他の構成要素)は、以下のものを含むがこれらに制限はされない、多様な異なる適用において有益である。第一の関心対象の適用は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の適用における本発明のタンパク質の使用である。これらの適用において、本発明のタンパク質は、第二の蛍光性タンパク質または染料、例えばMatzら、Nature Biotechnology(1999年10月)17:969-973に記載されたような蛍光性タンパク質、例えば米国特許第6,066,476号;第6,020,192号;第5,985,577号;第5,976,796号;第5,968,750号;第5,968,738号;第5,958,713号;第5,919,445号;第5,874,304号(これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されたようなエクオリア・ビクトリア(Aequoria victoria)由来の緑色蛍光性タンパク質またはその蛍光性変異体、その他の蛍光染料、例えばクマリンおよびその誘導体、例えば7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリン、ボディピー(Bodipy)FLのようなボディピー(bodipy)染料、カスケードブルー(cascade blue)、フルオレセインおよびその誘導体、例えばフルオレセイン・イソチオシアネート、およびオレゴングリーン(Oregon green)、ローダミン染料、例えばテキサスレッド、テトラメチルローダミン、エオシン、およびエリスロシン、シアニン染料、例えばCy3およびCy5、ランタニド・イオンの大環状キレート、例えば量子染料(quantum dye)等、化学発光染料、例えば米国特許第5,843,746号;第5,700,673号;第5,674,713号;第5,618,722号;第5,418,155号;第5,330,906号;第5,229,285号;第5,221,623号;第5,182,202号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものを含むルシフェラーゼと組み合わされて、供与体および/または受容体として機能する。本発明の蛍光性タンパク質を利用したFRETアッセイ法が使用され得る特定の例には、多数の異なる事象のバイオセンサーとしての、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば哺乳動物ツー・ハイブリッド系、転写因子の二量体化、膜タンパク質の多量体化、多重タンパク質の複合体形成等の検出(この場合、ペプチドまたはタンパク質が、本発明の蛍光性タンパク質を含むFRET蛍光組合せと共有結合的に連結され、連結されるペプチドまたはタンパク質は、例えばカスパーゼ媒介切断などのためのプロテアーゼ特異的基質であるか、FRETを増加または減少させるシグナル、例えばPKA制御ドメイン(cAMPセンサー)、リン酸化(例えば、リンカー内にリン酸化部位が存在するか、またはリンカーが別のタンパク質のリン酸化/脱リン酸化ドメインとの結合特異性を有するか、またはリンカーがCa2+結合ドメインを有する場合)の受容によりコンフォメーション変化を起こすリンカーである)が含まれるが、これらに制限はされない。本発明のタンパク質が有益である代表的な蛍光共鳴エネルギー転移またはFRETの適用には、米国特許第6,008,373号;第5,998,146号;第5,981,200号;第5,945,526号;第5,945,283号;第5,911,952号;第5,869,255号;第5,866,336号;第5,863,727号;第5,728,528号;第5,707,804号;第5,688,648号;第5,439,797号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものが含まれるが、これらに制限はされない。
【0109】
本発明の蛍光性タンパク質は、原核細胞および真核細胞におけるバイオセンサーとして、例えばCa2+イオン指示薬として;pH指示薬として、リン酸化指示薬として、その他のイオン、例えばマグネシウム・イオン、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、塩素イオン、およびハロゲン・イオンの指示薬としても有益である。例えば、Caイオンの検出に関して、EF-ハンド・モチーフを含有しているタンパク質は、Ca2+との結合により、細胞質ゾルから膜へと移動することが既知である。これらのタンパク質は、タンパク質の他の領域との疎水性相互作用によって分子内に埋め込まれているミリストイル基を含有している。Ca2+の結合は、ミリストイル基を露出させるコンフォメーション変化を誘導し、次いでミリストイル基が脂質二重層への挿入に利用可能となる(「Ca2+-ミリストイル・スイッチ」と呼ばれる)。そのようなEF-ハンド含有タンパク質のフルオレセント・プロテイン(FP)との融合体は、共焦点顕微鏡検によって細胞質ゾルから原形質膜への移動をモニタリングすることにより、細胞内 Ca2+の指示薬となり得る。この系において使用するのに適したEF-ハンド・タンパク質には、リカバリン(recoverin)(1-3)、カルシニューリンB、トロポニンC、ビシニン(visinin)、ニューロカルシン(neurocalcin)、カルモジュリン、パルブアルブミン等が含まれるが、これらに制限はされない。pHについては、ヒサクトフィリン(hisactophilins)に基づく系が使用され得る。ヒサクトフィリンは、ジクチオステリウム(Dictyostelium)に存在することが既知である、ミリストイル化されたヒスチジンリッチなタンパク質である。それらのアクチンおよび酸性脂質との結合は、細胞質pH変動の範囲内で鮮明にpH依存的である。生細胞において、膜結合は、ヒサクトフィリンとアクチン・フィラメントとの相互作用より優先されるようである。pH≦6.5においては、それらは、原形質膜および核へと移行する。対照的に、pH7.5においては、それらは、細胞質空間全体に均一に分布する。この分布の変化は可逆的であり、分子表面上のループ内に露出したヒスチジン・クラスターに起因する。細胞質pH変動の範囲内での細胞内分布の復帰は、ヒスチジン残基の6.5というpKと合致する。細胞分布は、タンパク質のミリストイル化には依存しない。FP(フルオレセント・プロテイン)をヒサクトフィリンと融合させることによって、融合タンパク質の細胞内分布は、レーザー走査型共焦点顕微鏡検、または標準的な蛍光顕微鏡検によって追跡され得る。定量的蛍光分析は、細胞のライン・スキャン(line scans)(レーザー走査型共焦点顕微鏡検)またはその他の電子データ分析(例えば、メタモルフ(metamorph)ソフトウェア(Universal Imaging社)を使用)を実行し、細胞集団において収集されたデータの平均をとることにより実施され得る。細胞質ゾルから原形質膜へのヒサクトフィリン-FPの実質的なpH依存性の再分布は、1分〜2分以内に起こり、5分〜10分後には定常状態レベルに達する。逆反応は同様のタイムスケールで起こる。そのため、類似の様式で働くヒサクトフィリン-蛍光性タンパク質融合タンパク質は、哺乳動物生細胞におけるリアルタイムの細胞質ゾルpH変化をモニタリングするために使用され得る。そのような方法は、高処理量の(high throughput)適用、例えば増殖因子受容体活性化(例えば、上皮増殖因子または血小板由来増殖因子)、走化刺激/細胞運動の結果としてのpH変化の測定において、セカンドメッセンジャーとしての細胞内pH変化の検出において、pH操作実験における細胞内pHのモニタリング等において有益である。PKC活性の検出のため、レポーター系は、MARCKS(ミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質)と呼ばれる分子がPKC基質であるという事実を活用する。それは、ミリストイル化、および負の電荷を有する原形質膜と静電相互作用によって結合する、正の電荷を有するアミノ酸の領域(ED-ドメイン)によって原形質膜につながれている。PKC活性化により、PKCによってED-ドメインはリン酸化され、それにより負に荷電し、静電的反発の結果として、MARCKSが原形質膜から細胞質へと移動する(「ミリストイル-静電スイッチ」と呼ばれる)。MARCKSのミリストイル化モチーフからED-ドメインまでの範囲にわたるMARCKSのN末端の、本発明の蛍光性タンパク質との融合体は、PKC活性の検出系となる。PKCによってリン酸化されると、融合タンパク質は、原形質膜から細胞質ゾルへと移動する。この移動は、標準的な蛍光顕微鏡検または共焦点顕微鏡検によって、例えばセロミクス(Cellomics)技術、またはその他のハイ・コンテンツ・スクリーニング系(High Content Screening systems)(例えば、Universal Imaging社/Becton Dickinson)を使用して追跡される。上記のレポーター系は、ハイ・コンテンツ・スクリーニングにおける適用、例えばPKC阻害剤のスクリーニングにおける適用、およびこのシグナル伝達経路を妨害する可能性のある試薬に関する多くのスクリーニング・シナリオにおける、PKC活性の指示薬としての適用を有している。蛍光性タンパク質をバイオセンサーとして使用する方法には、米国特許第972,638号;第5,824,485号、および第5,650,135号(ならびに、これらの中に引用された参照)に記載されたものも含まれ、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0110】
本発明の蛍光性タンパク質は、顕微鏡による画像化、および電子分析を使用することによる、蛍光性レポート基を発現している細胞のアレイの、自動化スクリーニングを含む適用においても有益である。スクリーニングは、薬物発見のため、そして機能ゲノム科学の分野において使用され得る:例えば、本発明のタンパク質は、多細胞の再編成および遊走における変化、例えば内皮細胞による多細胞細管の形成(血管形成)、フルオロブロック・インサート・システム(Fluoroblok Insert System)(Becton Dickinson社)を介した細胞の遊走、創傷治癒、神経突起伸長等を検出するため、全細胞のマーカーとして使用され得る(この場合、タンパク質は、細胞活性、刺激によるキナーゼおよび転写因子の移動(プロテインキナーゼC、プロテインキナーゼA、転写因子NFkB、およびNFATなど);サイクリンA、サイクリンB1、およびサイクリンEなどの細胞周期タンパク質、切断された基質のその後の運動を伴うプロテアーゼ切断、リン脂質などのシグナル伝達の指標としての細胞内位置の変化の、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、核、核小体、原形質膜、ヒストン、エンドソーム、リソソーム、微小管、アクチンなどの細胞内構造のマーカーをハイ・コンテンツ・スクリーニングのための道具として用いる(他の蛍光性融合タンパク質と、これらの局在マーカーとの共局在を、細胞内蛍光性融合タンパク質の運動の指標として用いる、またはマーカー単独として用いる)検出等を可能にするペプチド(例えば、ターゲティング配列)およびタンパク質と融合されたマーカーとして使用される)。本発明の蛍光性タンパク質が有益である細胞アレイの自動化スクリーニングを含む適用の例には、米国特許第5,989,835号;ならびに国際公開公報第0017624号;第00/26408号;第00/17643号;および第00/03246号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)が含まれる。
【0111】
本発明の蛍光性タンパク質は、ハイ・スループット・スクリーニング・アッセイ法においても有益である。本発明の蛍光性タンパク質は、24時間を超える半減期を有する安定なタンパク質である。薬物発見のための転写レポーターとして使用され得る、より短い半減期を有する本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型も提供される。例えば、本発明によるタンパク質は、より短い半減期を有するタンパク質に由来する推定タンパク質分解シグナル配列、例えばマウス・オルニチン・デカルボキシラーゼ遺伝子由来のPEST配列、マウス・サイクリンB1破壊ボックス、およびユビキチン等と融合させられ得る。不安定化タンパク質およびそれを作製するために利用され得るベクターの記載については、米国特許第6,130,313号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。シグナル伝達経路、例えばAP1、NFAT、NFkB、Smad、STAT、p53、E2F、Rb、myc、CRE、ER、GR、およびTRE等のプロモーターは、薬物スクリーニングのための本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型を使用して検出され得る。
【0112】
本発明のタンパク質は、例えば本発明のタンパク質を特定のドメイン、例えばPKCγCa結合ドメイン、PKCγDAG結合ドメイン、SH2ドメイン、およびSH3ドメイン等と融合させることによって、セカンドメッセンジャー検出剤として使用され得る。
【0113】
本発明のタンパク質の分泌型を、例えば分泌型先導配列を本発明のタンパク質と融合させ、本発明のタンパク質の分泌型を構築することによって、調製することができ、そして、多様な異なる適用において使用され得る。
【0114】
本発明のタンパク質は、蛍光標示式細胞分取適用においても有益である。そのような適用においては、本発明の蛍光性タンパク質が、細胞集団に印をつけるための標識として使用され、次いで、得られた標識細胞集団が、当技術分野において既知である、蛍光標示式細胞分取機により分取される。FACS法は、米国特許第5,968,738号および第5,804,387号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。
【0115】
本発明のタンパク質は、動物(例えば、トランスジェニック動物)におけるインビボのマーカーとしても有益である。例えば、本発明のタンパク質の発現を、組織特異的プロモーターによって駆動することができ、そのような方法は、遺伝子治療の研究において、例えば適用の中でも特に導入遺伝子発現の効率の試験において有益である。本発明のタンパク質のこのクラスの適用を例示する、トランスジェニック動物における蛍光性タンパク質の代表的な適用は、国際公開公報第00/02997号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0116】
本発明のタンパク質のさらなる適用には、細胞または動物への注入の後の、定量的測定(蛍光およびタンパク質)のための較正におけるマーカーとしての適用;細胞生存率をモニタリングするための酸素バイオセンサー機器における、マーカーまたはレポーターとしての適用;動物、ペット、玩具、食物等のためのマーカーまたは標識としての適用等が含まれる。
【0117】
本発明の蛍光性タンパク質は、プロテアーゼ切断アッセイ法においても有益である。例えば、切断不活化蛍光アッセイ法が、本発明のタンパク質を使用して開発され得る。この場合、本発明のタンパク質は、タンパク質の蛍光性を破壊することなく、プロテアーゼ特異的切断配列を含むよう改造される。活性化されたプロテアーゼにより蛍光性タンパク質が切断されると、機能性発色団の破壊により、蛍光は鮮明に減少するであろう。または、切断によって活性化された蛍光が、本発明のタンパク質を使用して現像され得る。この場合、本発明のタンパク質は、発色団の近傍/または内部に付加的なスペーサー配列を含有するよう設計される。機能性発色団の部分がスペーサーによって分割されるため、このバリアントの蛍光活性は有意に減少するであろう。スペーサーは、2個の同一のプロテアーゼ特異的切断部位によって構成されるであろう。活性化されたプロテアーゼによる分解によって、スペーサーが切り出され、蛍光性タンパク質の2個の残存「サブユニット」が、機能性の蛍光性タンパク質が生成するよう再び組み立てられ得る。多様な異なる型のプロテアーゼ、例えばカスパーゼ等に関するアッセイ法において、上記の型の適用の両方が開発され得る。
【0118】
本発明のタンパク質は、生体膜中のリン脂質組成を決定するためのアッセイ法においても、使用され得る。例えば、特定のリン脂質ラフト(raft)における膜タンパク質の共局在をも可能にする、生体膜内のリン脂質分布のパターンを特定/可視化するための、特定のリン脂質との結合を可能にする本発明のタンパク質の融合タンパク質(または本発明のタンパク質のその他の任意の種類の共有結合的修飾または非共有結合的修飾)が、本発明のタンパク質を用いて達成され得る。例えば、GRP1のPHドメインは、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)に対する高い親和性を有しているが、PIP2に対する親和性は有していない。そのため、GRP1のPHドメインと本発明のタンパク質との間の融合タンパク質が、生体膜内のPIP3リッチな区域を特異的に標識するために構築され得る。
【0119】
さらにもう一つの本発明のタンパク質の適用は、蛍光性タンパク質の加齢に付随する、ある蛍光色のもう一つの色への(例えば、緑色から赤色への)スイッチが、遺伝子発現、例えば発達遺伝子発現、細胞周期依存性遺伝子発現、概日リズム特異的遺伝子発現等の活性化/不活化を決定するために使用される、蛍光タイマーとしての適用である。
【0120】
前記の本発明の抗体は、その他の蛍光性タンパク質からの本発明のタンパク質の区別を含む、多数の適用においても有益である。
【0121】
キット
典型的には、本発明のポリペプチドを作成するための要素、例えば本発明のタンパク質のコーディング領域を含むベクターを含む構築物を含む、前記の適用のうちの一つ以上の実施において使用するためのキットも、本発明によって提供される。本発明のキット成分は、典型的には、適当な容器内に、適当な保存媒体、例えば緩衝溶液の中に存在する。本発明のキットには、提供されたタンパク質に対する抗体も存在し得る。ある種の態様において、キットは、各々が本発明のポリペプチドをコードする複数の異なるベクター(この場合、ベクターは、異なる環境における、かつ/または異なる条件下での発現、例えば構成性発現のために設計されており、かつ哺乳動物細胞における発現のための強力なプロモーターを含む)、プロモーターのカスタム(custom)挿入およびテーラード(tailored)発現のためのマルチプル・クローニング・サイトを有するプロモーターレス・ベクター等を含む。
【0122】
上記の成分に加え、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明をさらに含むであろう。これらの説明は、多様な形態で本発明のキット内に存在することができ、1個以上の形態がキット内に存在してもよい。これらの説明が存在し得る一つの形態は、キットの包装材の中、パッケージ・インサートの中等の適当な媒体または基体の上に印刷された情報(例えば情報が印刷された1枚以上の紙)としてである。さらにもう一つの手段は、情報が記録されたコンピューター読取可能媒体、例えばディスク、CD等であろう。さらにもう一つの存在し得る手段は、遠隔地において情報にアクセスするためにインターネットを介して使用され得る、ウェブサイト・アドレスである。任意の便利な手段が、キット内に存在し得る。
【0123】
以下の実施例は、制限のためではなく、例示のために提示されるものである。
実施例
I.緒言
赤色蛍光タンパク質DsRedは、緑色蛍光タンパク質(GFP)との二色実験にとって理想的なスペクトル特性を有する。しかし野生型DsRedは、いくつかの欠点を有し、これには発色団の成熟が遅いことおよび溶解度が低いことが含まれる。成熟が遅いことを克服するために、本発明者らは、ランダムおよび位置指定突然変異誘発を使用し、野生型タンパク質よりも10〜15倍早く成熟するDsRed変種を作成した。42位のアスパラギンのグルタミンへの置換により、DsRedの成熟は大きく促進するが、緑色発光レベルも増加する。追加のアミノ酸置換により、この緑色発光は抑制されるが、他方で成熟は更に促進する。DsRedの溶解度を高めるために、このタンパク質のN末端近傍の実効電荷を低下させた。得られたDsRed変種は、酵母のような急激に増殖する生物においても、明蛍光をもたらした。
【0124】
II. 実験プロトコール
A. 突然変異誘発およびスクリーニング
突然変異誘発に関して、pDsRed1-N1ベクター(Clontech社、パロアルト、CA)中に存在する野生型または変異型DsRed遺伝子は、NheIおよびHpaIで切出し、およびエラープローンPCR(Cadwell, R.C.およびJoyce, G.F.、In PCR Primer.「A laboratory manual.」 (Dieffenbach, C.W.およびDveksler, G.S.編)583-589頁(Cold Spring Harbor Laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NY;1995年))における鋳型として使用した。増幅された生成物は、BamHIおよびBsaBIで切断し、ゲル精製し、およびN末端ヘキサヒスチジンタグをコードしているpQE31発現ベクター(Qiagen社、バレンシア、CA)のBamHI部位とEcl136II部位との間にライゲーションした。成熟したDsRed遺伝子のライブラリーは、大腸菌株DH10Bへ形質転換した。突然変異誘発の1〜3回目のために、50,000〜100,000個のコロニーを、本文中に説明されたスライドプロジェクターアッセイ法を用い、明蛍光についてスクリーニングした。4回目に関して、4,000個の明蛍光コロニーを、96ウェルプレートのウェルに採取し、その後飽和まで増殖させ、B-PER II試薬(Pierce社、ロックフォード、IL)で溶解し、2,500gで5分間遠心した。上清を、96ウェルプレートの第二セットに移し、ペレットおよび上清からの蛍光シグナルを、スライドプロジェクターアッセイ法を用い、肉眼により比較した。可溶性蛍光の不溶性蛍光に対する比に上昇がみられるクローンを更に分析した。5回目に関して、10,000個の変異体各クローンの10プールを、形質転換プレートから回収し、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)FACStarPlusフローサイトメーターを用いる細胞選別に供した。蛍光シグナルは、緑色(FL-1)および赤色(FL-2)チャネルにおいて同時に測定し、およびこれらが強力な赤色蛍光を発するが緑色蛍光の低下を示した場合に、細胞を収集した。
【0125】
B.DsRed変種の精製およびスペクトル分析
ヘキサヒスチジンタグを付けたタンパク質を精製するために、pQE31ベクター中の蛍光タンパク質遺伝子を、pREP4リプレッサープラスミド(Qiagen社)を保持する大腸菌細胞に形質転換した。培養液250mlを、OD600が0.5となるまで増殖し、その後1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)により6〜8時間37℃で誘導した。これらの細胞を、10mlのB-PER IIで溶解し、27,000gで20分間遠心した。NaClを300mMまで添加し、2,500gで10分間遠心することにより、界面活性剤を上清から除去した。Ni2+-NTA-アガロースビーズ(Qiagen社)1mlを添加後、このチューブを上下反転させて(end-over-end)1時間混合した。ビーズを、300mM NaCl、20mMイミダゾール-HCl(pH7.4)、0.5% Triton X-100の10mlで3回洗浄し、その後Triton X-100を含まない同じ緩衝液で3回洗浄した。この蛍光タンパク質は、300mMイミダゾール-HCl(pH7.4)2.5mlで溶出し、50mM Na+-HEPES(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTAに透析した。
【0126】
精製したDsRed変種の補正した励起および発光スペクトルを、A558が<0.04となるよう、Na+-HEPES(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA中に希釈し、ホリバ(Horiba)FluoroMax-3分光光度計で得た。走査ウィンドウは1nMであった。発光は、励起スペクトル600nmで測定し、および励起は、発光スペクトル470nmであった。吸光係数を決定するために、蛍光タンパク質濃度を、BCA法(Pierce社)を用いてアッセイし、それらの最大励起でのタンパク質の吸光度を、Spectronic Unicam GENESYS 10 UV分光光度計を用い測定した。量子収量は、説明されたように(Bairdら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97:11984-11989(2000);Lakowicz, J.R.、「Principles of Fluorescence spectroscopy」、第2版(Kluwer Academic/Plenum Publishers社、ニューヨーク、NY;1999))、エタノール性ローダミン101を参照として用い;これらの測定値を励起波長535nm、および蛍光発光を550〜800nmで積算し決定した。
【0127】
C.成熟速度論の測定
DsRed変種をコードしている遺伝子を、pQE81発現ベクター(Qiagen社)にクローニングし、および大腸菌へ形質転換した。37℃で曝気しながら増殖している細菌培養物は、1mM IPTGで30分間誘導し、各DsRed変種について発現のパルスを作成した。その後170μg/mlクロラムフェニコール、30μg/mlカナマイシン、および50μg/mlテトラサイクリンの混合物でタンパク質合成を阻害することにより、追跡を開始した。指定された時点で、これらの培養物のアリコートを除去し、15%グリセロールに調節し、-80℃で凍結した。これらのアリコートを後に、急速解凍し、およびベクトンディッキンソンFACScanフローサイトメーターを用いて評価し、細胞1個当りの赤色蛍光(チャネルFL-2)の平均強度を決定した。各アリコートの一部は、トリクロロ酢酸で沈殿させ、その後SDS-PAGEおよび抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体(Qiagen社)による免疫ブロッティングを施し、培養物中のDsRedポリペプチドの総量を測定した。酵母の蛍光顕微鏡観察。ADH1プロモーターの制御下、pCox4-DsRed1融合遺伝子を保持するpRS315(Sikorski、Genetics、122:19-27(1989))由来のCENプラスミドを使用した。このプラスミドの誘導体は、DsRed1コード配列を、DsRed.T3またはDsRed.T4コード配列で置換えることにより作成した。これらのプラスミドは、染色体SEC7-EGFPx3遺伝子20を保持するサッカロマイセス・セレビシエ株BGY101に導入した。得られた酵母株からの細胞を、最小グルコース培地において増殖し、固定し、および投射による蛍光像を、Rossaneseらの論文(J. Cell Biol.、145:69-81(1999))に説明されたように得た。
【0128】
III.結果および考察
最近蛍光タンパク質のファミリーが説明されている。これらの新たに発見されたタンパク質の最も有用なものは、DsRedであり、これはサンゴのイソギンチャクモドキ(Discosoma)に由来している。DsRedは、最大発光が583nmであるオレンジ色〜赤色の蛍光を有する。生物物理試験およびX線結晶解析試験は、DsRedが安定した四量体を形成すること、および各単量体は構造的にGFPに非常に類似していることを明らかにした。GFPに対し赤色にシフトしたDsRedの蛍光は、より広範に共役するπシステムをもつ発色団から生じた。DsRed蛍光は、最適に558nmで励起するが、しかし標準の488nmレーザーで励起することもでき、DsRedをレーザーベースの共焦点顕微鏡およびフローサイトメーターで使用することができる。DsRedは、高い量子収量を有し、光学的に安定している。これらの特徴により、DsRedは、蛍光造影、特にGFPおよびその変種が関与する多色実験において理想的な候補となる。DsRedのコドンを最適化した型は、現在DsRed1の名称で入手可能である。
【0129】
これらの利点にもかかわらず、野生型DsRedは、蛍光レポーターとして使用するにはいくつかの問題点を有する。DsRedを別のタンパク質に融合した場合、DsRedドメインの四量体化は、そのタンパク質の機能および局在化を混乱させうる。更にDsRed四量体は、自己会合し、より高次の凝集体を形成する。おそらく最も重大なDsRedによる問題点は、発色団成熟が遅いことであり、その半減期は室温で>24時間である。新たに合成されたDsRedは、GFPに存在するのと同じ発色団を形成することにより、ほのかな緑色蛍光を発色する。その後の第二の酸化反応により、赤色発色団が形成される。この緩徐な成熟は、最初の緑色種の蛍光が増強された「蛍光タイマー」と称されるDsRed変種での使用目的とされてきた。しかし、ほとんどの適用について、DsRedの緩徐な成熟は望ましくない。GFPによる二重標識造影において、DsRedの最初の緑色蛍光は、GFPチャネルの表面にじみ(bleed-through)を生じる。より一般的には、赤色蛍光の緩徐な発色により、特に酵母のような急激増殖している生物での、DsRedシグナルの強度が制限される。DsRed2と称される変種は、DsRed1よりも急速に成熟するが、DsRed2は、完全蛍光に到達するには依然多くの時間が必要である。ここでランダムおよび位置指定突然変異誘発を用い、DsRedの改良された変種を作成した。これらの新規変種は、急速に成熟し、かつこれらは野生型DsRedよりもより可溶性である。
【0130】
急速に成熟するDsRed変種を同定するために、微生物コロニー中のGFP蛍光を可視化する早期の方法を改良した。ヘキサヒスチジンタグ付けしたDsRedは、大腸菌において高レベルに作製された。細菌コロニーの蛍光は、スライドプロジェクターのレンズの上に520±20nmバンドパスフィルターを配置することにより励起し、その発光は、波長>550nmを通過させるコダック(Kodak)Wrattenフィルター22で覆ったゴーグルにより検出する。この技術は、簡便でありおよび効率的である。
【0131】
変異体発現プラスミドのライブラリーを、DsRed1鋳型を増幅するためにエラープローンPCRを用い、作成した。このライブラリーは、大腸菌へ形質転換し、および100,000個を超える形質転換体コロニーを試験した。野生型DsRed1タンパク質を産生しているコロニーは、有意な蛍光の発生に2日を要したが、3種の変異体コロニーは、1日増殖後に強力な蛍光を生じた。これら3種の変異体プラスミドは個別であるが、配列決定により、全てこれらがN42Hのコドン変化を有することが明らかになった。従って本発明者らは、N42H置換のみを有する変種を作出した。
【0132】
N42H変種は、DsRed1と平行して精製し、これら2種のタンパク質を、分光蛍光分析により分析した。先に観察されたように、精製したDsRed1のスペクトルは、成熟したタンパク質として数日間にわたり変化した(データは示さず)。対照的に、精製したN42H変種のスペクトルは、経時的に安定し続け(データは示さず);これは急速な成熟と一致した。残念ながら、N42H置換では、成熟の促進に加え、成熟型タンパク質のスペクトル特性が変更した(図1A)。成熟型DsRed1は、赤色蛍光分子およびスペクトルがGFPに類似しているいくつかの緑色蛍光分子の平衡の混合物であると考えられる。GFP様種は、およそ480nmに青色励起ピークを有し、およびおよそ500nmに緑色発光ピークを有しているが;しかし、DsRedは四量体であり、そのため緑色分子の励起は、近隣の赤色分子と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を生じ、赤色発光を生じることが多い。このFRET作用は、成熟型DsRed1において相対的に低い割合の緑色分子と共に、赤色発光に比べ緑色発光の非常に小さいピークをもたらす(図1A)。N42H変種において、青色励起および緑色発光のピークは、劇的に増強され(図1A)、成熟分子の大部分が緑色発色団を含むために平衡がシフトしたことを示している。
【0133】
N42H置換は側鎖のサイズをかなり増大するので、より保存的なN42Q置換も試みた。この突然変異は、ふたつの塩基変化を必要とし、当初の変異体収集物にはおそらく存在しないであろう。N42Q変種は、N42H変種の急速な成熟特性を保持しているが、はるかに低い青色励起および緑色発光を示した(図1A)。従ってN42Q変種を、更なる試験の出発点として選択した。
【0134】
追加の突然変異誘発(下記参照)は、当初のN42Q変種よりも更により早い成熟およびより低い緑色発光を示すDsRed変種を生じた。6回目の突然変異誘発後、3種の最適化された変種が選択され、DsRed.T1、DsRed.T3、およびDsRed.T4と命名された(表1)。DsRed.T4のスペクトル特性(図1B)は、DsRed.T1のものと事実上同じであり(データは示さず)、かつ野生型DsRed1のものに非常に類似している(図1A)。DsRed.T1およびDsRed.T4と比べ、DsRed.T3は若干明るいが(下記参照)、しかし青色励起の有意に高いピークおよび緑色発光のわずかに高いピークを有している(図1B)。
【0135】
最適化されたDsRed変種は、インビボおよびインビトロの両方において試験した。コロニー蛍光、コロニーサイズおよびプラスミド安定性により判定されるように、これらの変種は、DsRed1よりも大腸菌に対する毒性が低く、かつこれらは37℃およびそれよりも高い増殖温度でより効率的に蛍光を発した(データは示さず)。野生型DsRedのように、最適化された変種は、四量体であるように見え:これらは、緑色分子と赤色分子の間でFRETを示し(図1B)、非変性SDS-PAGEにおいて、これらは、四量体として予想される位置に移動した(下記参照)。精製したDsRed1により、本発明者らは、吸光係数52,000M-1cm-1および量子収量およそ0.7を測定した(表1)。
【0136】

(表1)成熟DsRed変種の特性a
a.「野生型DsRedに比べ、他の変種は、下記の置換を含み、ここでP(-4)Lは開始コドンの上流のポリリンカー内のコドン変化を示している。」
DsRed2: R2A、K5E、K9T、V105A、I161T、S197A。
DsRed.T1: P(-4)L、R2A、K5E、N6D、T21S、H41T、N42Q、V44A、C117S、T217A。
DsRed.T3: P(-4)L、R2A、K5E、N6D、T21S、H41T、N42Q、V44A、A145P。
DsRed.T4: P(-4)L、R2A、K5E、N6D、T21S、H41T、N42Q、V44A、A145P、T217A。
b.輝度は、吸光係数および量子収量の積により決定した。相対輝度は、DsRed1の輝度を1.00と定義することにより計算した。
c.成熟の半減期は、図2の実験プロトコールを用い、グラフにより推定した。列記した値は、2回の個別の実験の平均である;各DsRed変種について、2回の実験で得られた数値は互いに15%以内であった。
【0137】
野生型DsRedの先の試験は、類似した量子収量であるが、比較的高い吸光係数75,000M-1cm-1を報告し;この矛盾の理由は明らかではない。DsRed2は、吸光係数および量子収量の両方においてわずかな低下を示し、これはDsRed1と比べた相対輝度0.68を生じた(表1)。DsRed.T3は、DsRed1とほぼ同じ輝度である。しかし、DsRed.T1およびDsRed.T4は二量体であり、DsRed1と比べ相対輝度0.36〜0.38を有する。DsRed変種の成熟速度論を定量化するために、37℃で増殖している大腸菌培養物によるインビボパルス追跡分析(図2)を行った。30分間のパルス誘導後、タンパク質合成阻害剤を添加し、この培養物の試料を様々な追跡時点で採取した。各試料に関する平均細胞蛍光を、フローサイトメトリーにより、488nmの励起レーザーを用い測定した。
【0138】
図2Aは、生データを示しているが、図2Bは、最大蛍光を100%として標準化したデータを示している。これらの条件下で、DsRed1成熟型はおよそ11時間の半減期を有するが、蛍光値がプラトーに到達しない(図2)ことおよびDsRed1タンパク質の一部が追跡期間中に分解される(データは示さず)ことにより、DsRed1での正確な測定は困難である。DsRed2は、若干急速に成熟し、半減期はおよそ6.5時間である。DsRed1およびDsRed2に関する蛍光獲得は、はっきりしたラグ相の後増加し、これは複数の緩徐な工程が関与していることを示している。DsRed.T3は、短いラグ相およびおよそ1.3時間の半減期を伴い成熟する。
【0139】
DsRed.T4およびDsRed.T1は、検出可能なラグ相を伴わず、半減期は0.7時間で、DsRed1よりも約15倍急速に成熟した(図2、およびデータは示さず)。このパルス追跡プロトコールにおいて、異なるDsRed変種は、平均細胞蛍光の個別のプラトー値を再現性をもって示した(図2A)。DsRed.T3由来の高シグナルは、このタンパク質の488nmでの相対的に強い励起により説明することができる(図1B参照)。DsRed1、DsRed2、およびDsRed.T4は全て、類似した蛍光スペクトルを有し、更にDsRed.T4発現している細胞のプラトー蛍光は、DsRed1を発現している細胞のものよりも4倍高く、およびDsRed2を発現している細胞のものよりも10倍高かった。この結果は、精製されたdsRed.T4はDsRed1またはDsRed2よりも明るくないので、驚くべきことである(表1)。本発明者らは、新たに合成されたDsRed1およびDsRed2分子の大きい画分(fraction)が、凝集および/または分解を通じて喪失されるために、未熟型DsRed1は大腸菌において不安定であること、およびこの問題点はDsRed2により悪化することを推測した。この考えと一致するように、先の研究は、新たに合成されたDsRed1分子のほとんどは、大腸菌またはショウジョウバエ細胞において分解されることを報告した。興味深いことに、DsRed2は、哺乳類細胞において、DsRed1よりもより明るい蛍光シグナルを生じ、このことは、所定のDsRed変種の発現効率が細胞型に特異的であることを示唆している。
【0140】
促進された成熟の利点は、DsRed変種が、急激増殖している生物において産生される場合に、特に明らかであるはずである。この推測を試験するために、本発明者らは、異なるDsRed変種を酵母ミトコンドリアに標的化した。酵母親株は、ゴルジ嚢のためのEGFPタグ付きマーカーも含んだ。ミトコンドリアに標的化したDsRed1により、その蛍光は、増殖培養物からの細胞においては極端に弱く、および定常期に到達した培養物細胞のサブセットにおいてのみ容易に可視できるようになった(データは示さず)。対照的に、ミトコンドリアに標的化したDsRed.T4は、増殖培養物からの細胞において、一貫して強力な蛍光シグナルを生じた(図3)。重ね合わせた画像において認められるように、本発明者らは、緑色チャネルへのDsRed.T4蛍光のまたは赤色チャネルへのEGFP蛍光の検出可能な表面にじみを認めなかった。同様の結果は、ミトコンドリアに標的化したDsRed.T3で得た(データは示さず)。しかし本発明者らは、他の融合構築体により、大量のDsRed.T3が細胞の小さい領域に濃縮された場合に、一部の表面にじみが緑色チャネルに生じることを認めた(示さず)。従ってDsRed.T4は、赤色および緑色の蛍光シグナルの明らかな分離を得るために選択されたタンパク質である。
【0141】
これらの結果は、ランダム突然変異誘発、それに続くスクリーニングが、改良された蛍光タンパク質を作出するための強力な方法であることを確認している。本発明者らの重要な知見は、N42QのようなAsn42の置換によって、発色団形成が劇的に促進されることである。
【0142】
Asn42置換の副作用は、青色励起および緑色発光のはっきりした増加である(図1A)。成熟した野生型DsRedは、赤色種および緑色種の平衡状態の混合物であるように見え、ならびにAsn42置換は、明らかにこの平衡状態をシフトし、緑色種のより高い割合を生じる。一連の追加の置換をN42Qバックグラウンドに導入することにより、本発明者らは、急速な成熟を保存しながらN42Qにより付与された青色励起および緑色発光をほぼ全て抑制することができた(図1および表1)。
【0143】
野生型DsRedに勝る別の改善は、N末端近傍の実効電荷を減少することにより実現された。得られるDsRed変種は、インビトロ(下記参照)およびインビボにおける低下した凝集を示している。野生型DsRedは、一般には塩基性であり、予想されるpI8.0を伴い、おそらくはアニオン性細胞成分と非特異的に会合している。加えて、DsRed四量体の表面上の塩基性パッチ(patch)は、第二の四量体上の酸性パッチと相互作用し、より高次の凝集を引き起こすことがある。このDsRedの他の巨大分子との相互作用は、N末端近傍の正電荷クラスターの除去により、明らかに軽減される。
【0144】
本発明者らの作業の最後の結果は、DsRed.T3およびDsRed.T4と称される最適化された変種の対である。DsRed.T3は急速に成熟し、および精製されたタンパク質は成熟した野生型DsRedとほぼ同じくらい明るく(表1)、この変種は、赤色蛍光の単色造影に良く適している。DsRed.T3は、野生型DsRedよりも、青色励起のより高いピークおよび緑色発光のわずかに高いピークを有し(図1B)、二色実験におけるGFPシグナルの若干の夾雑を生じている。しかしこの夾雑は通常小さい。DsRed.T3の増強された青色励起は、例えば、その蛍光が488nmレーザーで励起される場合に、実際に有利であることができる(図2)。DsRed.T4は、野生型DsRedのものと非常に類似している蛍光スペクトルを有し(図1B)、およびGFPシグナルの無視できる夾雑を生じている(図3)。精製したDsRed.T4はわずかにDsRed.T3のほぼ半分の明るさであるが、DsRed.T4はDsRed.T3のほぼ2倍の速さで成熟するので、この作用はインビボにおいて部分的に相殺される(表1)。従って、DsRed.T4はほとんどの用途にとっておそらく最良の変種であろう。DsRed.T1はシステイン残基を欠き、その結果分泌経路の酸化的環境においてより効率的にフォールディングすること以外は、DsRed.T1は、DsRed.T4と本質的に同じである(表1)。
【0145】
DsRed.T4は、追加の変種を作出するための更なる突然変異誘発に適した鋳型である。
【0146】
新規DsRed変種の作成は、ランダムおよび位置指定の両突然変異誘発に関与する可能性がある。位置指定突然変異誘発試験に関して、DsRed.T4 に存在する5種の置換(R2A、H41T、N42Q、A145P、およびT217A)は、所定の残基を、DsRed相同体ファミリーにおいてより一般に保存される残基と交換することは注目に値する。従って、DsRedとその関連物の間の配列比較は、有用な変種を作成する可能性がある突然変異を示唆することができる。
【0147】
IV. イソギンチャクモドキ赤色蛍光タンパク質(DsRed)の急速に成熟する変種
本項は、最適化されたDsRed変種を得るために使用された、多工程突然変異誘発戦略を説明する。概要は、補遺表2に提供される。
【0148】
当初のN42H含有変異体のひとつは、他のふたつよりもより明るいコロニー蛍光を形成した。この増加した輝度は、第二の突然変異:H41Lに起因している。残基41は、いくつかのDsRed相同体においてトレオニンであり、本発明者らは、H41T置換はH41Lよりもわずかに明るいコロニーを生じることを認めた。N42Qの状況において、H41Tは、精製されたタンパク質の特性の有意な変化を生じないが(示さず)、成熟速度の更なる増加を生じることは明らかである。従って本発明者らは、1回目の突然変異誘発の後、ふたつの置換基H41TおよびN42Qを組込んだ(補遺表1)。1回目の変種は、非変性SDS-PAGEで分析した場合に、拡散性の高分子量バンドを生じ(補遺図4A)、これは依然これが四量体であることを示唆している。
【0149】
追加の回数の突然変異誘発は、成熟を更に促進するために実施される。本発明者らは、1回目の変種を鋳型として用い、増殖の1日後に、より明るい大腸菌コロニーを形成した3種の変異体を得た。3種全ての変異体は、V44A置換を含んでいた。V44Aは、発色団形成の促進に加え、1回目の変種と比べ青色励起および緑色発光を低下した(示さず)。これら3種のV44A変異体のひとつは、T21S置換も含み、これは更に、青色励起および緑色発光を消失した(示さず)。従って2回目の変種は、4種の置換T21S、H41T、N42QおよびV44Aを含んだ(補遺表2)。突然変異誘発の3回目によって、コロニー蛍光の更なる増加を伴ういくつかの変異体が作出された。驚くべきことに、関連する突然変異は、DsRedタンパク質それ自身は変更しなかったが、代わりにヘキサヒスチジンタグとイニシエーターメチオニンの間のリンカーの位置-4でのプロリンのロイシンへのコドン変化であった。この結果は、DsRedのN末端に付属した配列は、タンパク質フォールディングおよび/または発色団成熟に影響を及ぼし得ることを示している。P(-4)L置換は、3回目の変種を生じるために組込まれた(補遺表2)。
【0150】
蛍光タンパク質を精製する場合、本発明者らは、DsRedおよびその変種が、EGFPのほとんどを抽出する溶解条件下で、大腸菌細胞から非効率的に抽出されることに注目した。この知見は、DsRedは細胞内で凝集するという報告と合致している。突然変異誘発の4回目は、この凝集を低下するようにデザインした。本発明者らは、変異体細菌コロニーが96ウェルプレートで増殖され、界面活性剤緩衝液で溶解され、および遠心され、細菌ペレットから抽出されたタンパク質を分離するアッセイを考案した。関心対象の変異体は、可溶性赤色蛍光対不溶性赤色蛍光の比の増加を示した。同定されたこのような変異体タンパク質の25種よりも多くのほぼ全てが、N末端近傍での実効電荷の低下を有した。多くの変異体組合せを試験した後、本発明者らは、R2A、K5EおよびN6D置換の3つを組込み、4回目の変種を得た(補遺表2)。
【0151】
様々なDsRed変種の溶解度を比較するために、本発明者らは、大腸菌中で各タンパク質を発現し、これらの細胞を界面活性剤緩衝液で溶解し、および抽出されたタンパク質分子の割合を定量した(補遺図4B)。事実上100%のEGFP分子が、これらの条件下で溶解された。わずかに〜25%のDsRed1分子が可溶化された。DsRed2は、実質的にDsRed1よりもより可溶性であった(〜55%)。3回目の変種も、DsRed1よりもより可溶性であった(〜52%)が、4回目の変種は、更に高い溶解度(〜73%)を示している。非変性SDS-PAGEにより分析した場合、3回目の変種は、より高次のオリゴマーの形成を反映し得る拡散バンドを作成したのに対し、4回目の変種は、四量体について予想された位置に鋭敏なバンドを作成した(補遺図4A)。これらの結果は、DsRedのN末端近傍の実効電荷の低下は、四量体の凝集を抑制することを示唆している。
【0152】
(表2)DsRedにおける関連突然変異

a.開始コドンに対し位置-4のプロリンコドンは、pDsRed1-N1ベクターにおける複数のクローニング部位によりもたらされる。
b.R2A置換は、DsRed1中の開始コドンの後に存在する余分なバリンコドンも除去する。
c.T217Aは、DsRed.T1およびDsRed.T4に存在するが、DsRed.T3には存在しない。
d.DsRed.T1は、C117Sを含むが、A145Pは含まないのに対し、DsRed.T3およびDsRed.T4はA145Pを含むが、C117Sは含まない。
【0153】
4回目の変種は依然、GFPフィルターセットによる顕著な表面にじみ蛍光を生じている(示さず)。従って、本発明者らは、更なる緑色発光を減少させるための突然変異誘発ラウンド5に着手した。フローサイトメトリーを用い、赤色発光の緑色発光に対する比の増大により、明るい蛍光を示した大腸菌細胞を選択した。得られた変異体7種全ては、T217A置換を含んだ。T217Aは、青色励起および緑色発光に加え、N42Qで認められたわずかなスペクトル赤色シフトを逆転した(本文の図4A参照)。T217Aを組込み、ラウンド5変種を作成した(補遺表2)。
【0154】
最後に本発明者らは、無関係の突然変異誘発実験からの思いがけない知見を利用した。更にC117S置換は、青色励起および緑色発光を低下する。従って、DsRed.T1と称される最適化された変種は、下記の置換を含む:P(-4)L、R2A、K5E、N6D、T21S、H41T、N42Q、V44A、C117SおよびT217A。A145P置換は、蛍光スペクトルに対するその作用において、C117Sに類似しているが、一部のDsRed変異体バックグラウンドにおいて、コロニー蛍光は、C117Sによりわずかに減少し、およびA145Pによりわずかに増加した(示さず)。従って本発明者らは、DsRed.T4と称される第二の最適化された変種を作成し、これは、C117S置換がA145Pと交換される以外は、DsRed.T1と同じであった。その後の分析は、T217Aにより付与されたこれらの利点が、輝度の適度の低下に付随することを明らかにし、その結果本発明者らはDsRed.T3と称される第三の最適化された変異体を作製したが、これはDsRed.T3がT217A置換を欠いている以外は、DsRed.T4と同じであった。
【0155】
青色励起および緑色発光は、T21S、V44A、C117S、A145PおよびT217A置換により低下される。Val44およびThr217は、DsRedタンパク質の内部に面しており、ならびにこれらは残基42に密接しており、このことはV44AおよびT217A置換基は、N42Qにより引き起こされた立体障害を緩和することを示している。対照的に、Thr21、Cys117およびAla145は、DsRed単量体の表面に面しており、その結果T21S、C117SおよびA145Pは、そのタンパク質の全体のパッキングの変更により示される。T21SおよびA145Pは、四量体接触面の修飾により、DsRed構造に影響を及ぼし得る。
【0156】
本発明は、急速に成熟する蛍光タンパク質の重要な新規クラスを提供することが、前述の結果および考察から明らかである。このように、本発明の発明は、当該技術分野における有意な貢献を表わしている。
【0157】
本明細書に引用された全ての刊行物および特許出願は、各々個別の刊行物または特許出願が本明細書に参照として組入れられていることが、具体的および個別に示されているように、本明細書に参照として組入れられている。いずれかの刊行物の引用は、出願日に先行するその開示に関するものであり、本発明が先行する発明の効力によりこのような刊行物の日付よりも早いことの承認として解釈されるべきではない。
【0158】
前記発明は、理解を明確にする目的で例証および実施例によりやや詳細に説明されているが、当業者には、本発明の内容を鑑み、添付された「特許請求の範囲」の精神または範囲から逸脱することなく、ある種の変更および修飾を行うことができることは容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】代表的DsRed変種の標準化された励起および発光スペクトル。(A)変異する残基N42は、DsRedのスペクトル特性を変更する。スペクトルは、DsRed1ならびにN42HおよびN42Q変種を示す。3種のタンパク質は全て、完全に成熟型である。(B)最適化されたDsRed.T3およびDsRed.T4変種のスペクトル。
【図2】DsRed変種の成熟化速度論。対数増殖している大腸菌培養物を、誘導剤イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で30分間処理し、各変種に関する発現パルスを作成した。その後タンパク質合成阻害剤を添加し37℃でインキュベーションを継続することにより、追跡を開始した(グラフの0時)。これらの培養物のアリコートを、指定された時点で取り出し、引き続きフローサイトメトリーで分析し、細胞1個当りの赤色蛍光の平均強度を決定した。バックグラウンド蛍光(破線)は、空のpQE81プラスミドを保持する細胞を用い測定した。ふたつのグラフ上のプロットは、(A)生の蛍光値、または(B)0時に存在する蛍光を減算し、各DsRed変種について100%の最大シグナルに対し標準化して得られた値である。DsRed.T3およびDsRed.T4に関する平均蛍光値における遅い時点でのわずかな下降は、おそらく細胞溶解を反映している。対照培養物において、タンパク質合成阻害剤を、IPTGと同時に、DsRed.T3発現プラスミドを保持する細胞に添加したところ;予想されたように、これらの細胞は、非蛍光でありつづけた(データは示さず)。イムノブロッティングは、追跡期間中に、培養物中のDsRed2、DsRed.T3、およびDsRed.T4タンパク質の量は、本質的に一定であり続けるのに対し、DsRed1タンパク質の量は、その最初のレベルのほぼ半分まで漸減した(データは示さず)ことを示している。
【図3】酵母におけるDsRed.T4およびEGFPの同時可視化。DsRed.T4は、Cox4pのプレ配列への融合により、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリアマトリックスに標的化された。pCox4-DsRed.T4融合タンパク質は、同じくゴルジ嚢マーカーであるSec7p-eGFPも含む菌株において産生された。対数増殖している培養物からの細胞を、Texas Redフィルターセット(赤色)またはEGFPフィルターセット(緑色)のいずれかを用い、造影した。加えてこれらの細胞は、微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡により可視化した。重ねた画像に示されたように、DsRed.T4およびEGFPシグナルは容易に分解される。スケールバーは2μmである。
【図4】DsRedのN末端近傍の実効電荷の減少は、タンパク質凝集を減少する。(A)精製されたDsRed1(WT)、ラウンド1変種(R1)、ラウンド3変種(R3)、ラウンド4変種(R4)、DsRed.T1(T1)、DsRed.T3(T3)およびDsRed.T4(T4)の、非変性SDS-PAGE。各精製されたDsRed変種1μgを、氷上でSDS含有試料緩衝液と混合し、直ぐに4℃で、10%ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動し、その後クマシーブルーで染色した。WT*およびT4*:DsRed1およびDsRed.T4の追加のアリコートは、電気泳動前に煮沸し、変性した。MW:広範な予備染色したタンパク質標準(Bio-Rad社)。(B)大腸菌における蛍光タンパク質の溶解度を測定するために、DsRed1、DsRed2、ラウンド3変種、ラウンド4変種、またはEGFPをコードしているpREP4+pQE31-ベースの発現ベクターを保持する細胞を、OD600が0.5になるまで増殖し、IPTGで7時間誘導し、その後B-PER IIで溶解し、27,000xgで20分間遠心した。等量のペレットおよび上清の画分を、SDS-PAGEにかけ、その後抗ヘキサヒスチジンモノクローナル抗体(Qiagen社)によりイムノブロッティングした。結合した抗体を、ECL-Plusキット(Amersham社)およびMolecular Dynamics Storm 860ホスホロイメージャーを用いて検出した。各蛍光タンパク質について、細菌抽出物からの連続希釈液を分析し、および検出システムに関する直線範囲内の試料を選択した。その後上清画分中の各タンパク質の割合を、定量した。2回の個別の実験の平均値をプロットし;各蛍光タンパク質について、2回の実験で得られた数は、互いに10%以内であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺胞動物色素もしくは蛍光タンパク質またはそれらの変異体の急速に成熟する色素または蛍光変異体をコードしている核酸。
【請求項2】
前記刺胞動物色素または蛍光タンパク質が、非生物発光刺胞動物種に由来する、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
前記非生物発光刺胞動物種が、花虫類である、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
前記核酸花虫類が、イソギンチャクモドキである、請求項3記載の核酸。
【請求項5】
前記核酸が、DsRed変異体をコードしている、請求項4記載の核酸。
【請求項6】
前記核酸が、野生型DsRedに対し、2位、5位、6位、21位、41位、42位、44位、および117位の少なくともひとつでの点突然変異を有する生成物をコードしている、請求項5記載の核酸。
【請求項7】
前記生成物が、145位および217位の少なくともひとつに点突然変異を有する生成物である、請求項6記載の核酸。
【請求項8】
前記核酸が、配列番号:01または02の少なくとも10残基長のヌクレオチド配列と実質的に同じまたは同一である残基の配列を有する、請求項7記載の核酸。
【請求項9】
請求項1〜7記載のものから選択された核酸の断片。
【請求項10】
ベクターおよび請求項1〜9記載の核酸を含む、構築体。
【請求項11】
(a)発現宿主において機能する転写開始領域;
(b)請求項1〜9記載の核酸;および
(c)該発現宿主において機能する転写終結領域を含む、発現カセット。
【請求項12】
前記宿主細胞への該発現カセットの導入の結果として、染色体外エレメントの一部としてまたは宿主細胞のゲノムへ組込まれた、請求項11記載の発現カセットを含む、細胞、またはそれらの後代。
【請求項13】
色素および/または蛍光タンパク質の生成法であり:
請求項12記載の細胞を増殖し、これにより該タンパク質が発現される工程;および
実質的に他のタンパク質を含まない該タンパク質を単離する工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1〜9記載の核酸によりコードされた、タンパク質またはそれらの断片。
【請求項15】
請求項14記載のタンパク質に特異的に結合する、抗体。
【請求項16】
請求項1〜9記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック細胞またはそれらの後代。
【請求項17】
請求項1〜9記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック生物。
【請求項18】
色素または蛍光タンパク質を使用する適用における、請求項14記載のタンパク質を使用することを含む、改善点。
【請求項19】
色素または蛍光タンパク質をコードしている核酸を使用する適用における、請求項1〜9記載の核酸を使用することを含む、改善点。
【請求項20】
請求項1〜9記載の核酸を含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−501804(P2006−501804A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−554863(P2003−554863)
【出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2002/040539
【国際公開番号】WO2003/054158
【国際公開日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(399019892)ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ (9)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
【Fターム(参考)】