説明

性能基準に基づいて多機能装置をポーリングするための方法及びシステム

【課題】現行システムは、性能基準に基づいて効果的に装置をグループ化する能力が欠如している。
【解決手段】本開示は、複数の多機能装置(MFD)をグループ化するのに適したシステムを提供し、そのシステムは、複数のMFDに選択的にポーリングすることによって複数のMFDから収集される情報を格納するためのストレージ・ステーションを含み、情報は選択的に処理され、複数のMFDに関する静的性能データ及び動的性能データに基づいて、1つ又はそれ以上のグループにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷システムに関し、より具体的には、複数のMFDを性能基準に基づいてグループ化するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多機能装置(MFD)は、プリンタ、コピー機、ファクス機及び/又はスキャナを含むがそれらに限定されない複数の異なる画像形成装置として働く。近年、基本的なオフィス用コピー機はMFDと呼ぶことができるものに進化してきている。デジタル技術によって、伝統的なコピー機の基本的な外観をもつ機械は、少なくとも、ネットワークを介してデジタル形式で送られた文書を印刷する機能、ファクシミリを介してメッセージを送受信する機能、ハードコピーの原本の画像をデジタル形式で記録し、得られたデータをネットワークを介して例えば電子メールで送信する機能、及び/又はハードコピーの原本の画像をコンパクトディスク又は同等の媒体上にデジタル形式で記録する機能という追加機能を実行することができる。
【0003】
デジタル印刷及び複写の領域において、MFDの需要が増大してきている。このようなMFD装置は、単一の印刷エンジン(例えば、乾式電子写真方式又は熱インクジェット方式の印刷エンジン)が複数の異なる画像入力装置(又は「サービス」)と連結された配置の形態を想定することができ、このような装置は、プリンタによる使用又はネットワークを介した伝送のための画像関連情報を生成するようになっている。画像関連情報は、一例では、ビデオファクシミリ信号、マイクロフィルム、データ処理情報、原寸文書用の光スキャン・プラテン、アパチャカード及びマイクロフィッシュに由来するものであり得る。MFDは、専用のプリンタ、コピー機及びスキャナのような従来の単機能装置よりも広い範囲の機能を提供する。結果として、その機能と組み合わされたそのネットワーク伝送能力ゆえに、MFDをポーリングして、性能基準に基づいた1つ又はそれ以上のグループにすることが有用である。
【0004】
ポーリングは、それによってプロセッサ(CPU)が装置の要求を処理することができる、割込の代替方法である。CPUは、例えば、ネットワーク装置にポーリングして、処理すべき何らかのパケットが存在するかどうかを判断する。ソフトウェアベースのスイッチ、ファイアウォール、プロキシサーバ、さらには第1層ウェブサーバさえ含むネットワーク機器は、割込を積極的に合体し、割込処理中のコンテキスト切り換えに関連した待ち時間を削減することによって全体としてのシステム性能を向上させるために、ポーリングされた入力/出力(I/O)を利用することが増えている。
【0005】
しかしながら、ポーリングは、装置の状態を不必要かつ連続的にチェックするので、ネットワークトラフィックのような装置の活動率が比較的高いとはいえない場合には、非効率的な機構となることがある。その上、ポーリングは、実行すべき作業があろうとなかろうと常に行われ、それゆえ、システムが、CPUによって使用される電力を一定に保つための適切な命令が出され得る「スリープ」状態に入ることを絶えず妨げるので、電力消費にとって好ましくないことがある。従って、ポーリングは、省電力、及び複数のMFDから情報を収集するための平均時間に対して、悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
現行のネットワーク管理ツールは、現在の状態情報を入手するためにMFDにポーリングする。最新の状態情報を有することが望ましい。しかしながら、これは大量のネットワークトラフィックが発生するという犠牲を払って成り立つ。多数のネットワーク装置上の現在状態を取得することもまた望ましい。しかしながら、通信に、より多くの時間がかかる装置もあり、全く通信できない装置もある。提案されている代替法、例えば装置上のイベントに関して登録すること(例えば、SNMPトラップ)は標準化されておらず、かつ不要なイベント上で余計なトラフィックを発生させる。
【0007】
このように、従来のシステムにおいて、性能基準に基づいて装置をグループ化する方法は存在しない。その代わり、従来のポーリングシステムは、ネットワーク通信に対して単一の最大タイムアウト(TO)及び再試行(RT)値を用いて、大きいグループ内で状態情報についてネットワーク装置にポーリングすることに焦点を合わせてきた。状態情報の要求は、典型的には多数のオブジェクト識別子(OID)オブジェクトを必要とし、その結果、そのネットワーク装置(ND)に複数の通信要求(CR)を生じることが多い。十分に多数の装置を有し、異なる種類の装置を有する、異なる状態(通信可能又は通信不能)及び変化するネットワーク環境では、その結果生じる通信はかなり変化するので、全ての装置に対する各々の通信要求について常に最大タイムアウト及び再試行値を超過することになる。結果として、これは非効率的で時間のかかるプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、現行システムは、性能基準に基づいて効果的に装置をグループ化する能力が欠如している。本開示は、1つ又はそれ以上の特定の性能基準に基づく複数のMFDのグループ化を提供することによって、他の方法の欠点を克服することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、複数の多機能装置(MFD)をグループ化するのに適したシステムを提供し、そのシステムは、複数のMFDに選択的にポーリングすることによって複数のMFDから収集される情報を格納するためのストレージ・ステーションを含み、情報は選択的に処理され、複数のMFDに関する静的性能データ及び動的性能データに基づいて、1つ又はそれ以上のグループにされる。
【0010】
本開示はまた、複数の多機能装置(MFD)をグループ化するのに適した方法を提供し、その方法は、複数のMFDに選択的にポーリングし、選択的にポーリングされた複数のMFDから情報を受信し、選択的にポーリングされた複数のMFDから収集された情報を格納し、その情報を、複数のMFDに関する静的性能データ及び動的性能データに基づいて選択的に処理して、1つ又はそれ以上のグループにするステップを含む。
【0011】
本開示はまた、本開示による、少なくとも1つのプロセッサによってここに説明される方法を行うために実行されるように構成されたプログラム可能命令を格納するコンピュータ可読媒体を提供する。コンピュータ可読媒体は、フラッシュメモリ、CD−ROM、ハードドライブなどを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示による、MFDのグループ化が行われない場合のネットワーク性能を示すフローチャートの概略図である。
【図2】本開示による、1つの通信要求を行った後にMFDを動的にグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図である。
【図3】本開示による、以前の通信状態に基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図である。
【図4】本開示による、平均応答時間及び再試行の数に基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図である。
【図5】本開示による、1つ又はそれ以上のプロトコルに基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、通信のための多機能装置(MFD)を性能基準に基づいてグループ化する方法を提案し、これは、全体の効率を改善する一方で、なお、多数のネットワーク装置上の所望の状態データを提供する。この基準は、MFDに関する静的性能データ、及び前もって収集された動的性能データの使用を伴う。静的なグループ化基準は、より高性能のプロトコルによって通信する能力といった、MFDの能力に基づく。動的性能のグループ化基準は、その装置と通信するのに必要な平均応答時間及び平均再試行といった、以前の通信統計に基づく。各プロセスをグループの通信要求に適合するように構成して、いくつかのプロセスを並行して実行することによって、多数のMFDについてのデータを収集するための、より速く、より効率的な手段が得られる。
【0014】
「印刷」という用語は、多数の方式のうちのいずれか1つを通じて文書をプリンタに送信することを意味するように、広く定義される。さらに、「プリンタ」という用語は、いずれかの種類のコンピュータ装置からテキスト及び図形出力を受け付け、いずれかの印刷可能媒体に情報を転送する、あらゆる装置のことを指すことができる。「プリンタ」は、幅広い印刷可能媒体上に印刷するために使用される、あらゆる種類の乾式電子写真方式、固体インク方式、液体インク方式、カットシート方式又はウェブベース方式の装置を指すことができる。ここで用いられる「プリンタ」という用語は、デジタルコピー機、製本機、ファクシミリ機、多機能機などのような、いずれかの目的のための印刷出力機能を実行するあらゆる器具を包含する。
【0015】
ここで開示されるMFDは、「接続された」MFD及び「接続されていない」MFDの両方を含む。「接続されていない」MFDは、ネットワーク(例えば、インターネット)へのアクセスを有さない。「接続された」MFDは、通常、イーサネット(登録商標)カードなどを介してネットワークに接続される。本実施形態において、MFDは、ネットワークにアクセスすることができるワイヤレス装置と動作可能に通信する、接続されていないMFDとすることができる。多機能装置とワイヤレス装置との間の接続は、多機能装置上に配置された双方向通信チャネルを通じて行われる。
【0016】
「MFD」という用語は、コンピュータ装置及び/又はネットワークのどちらかに接続し、以下の機能、すなわち、印刷、スキャン、コピー及び/又はファクスのうちの1つ又はそれ以上を実行する、あらゆる機械を指すことができる。デジタルコピー機、ファクス機、プリンタ、及びスキャナの組み合わせは全て、MFDの例である。「MFD」という用語はさらに、いくつかの機能を組み合わせて1つのユニットにしたあらゆるハードウェアを指すことができる。例えば、MFDは、独立型プリンタ、又はあらゆる種類の独立型の機械/装置/器具/コンポーネントとすることができる。例えば、MFDは、1つ又はそれ以上のパーソナルコンピュータ(PC)、独立型プリンタ、独立型スキャナ、携帯電話、MP3プレーヤ、オーディオ電子機器、ビデオ電子機器、GPSシステム、テレビ、記録及び/又は再生媒体(例えばCD、DVD、カムコーダ、カメラなど)又は他のいずれかの種類の消費者向け又は非消費者向けのアナログ及び/又はデジタル電子機器とすることができる。このような消費者向け及び/又は非消費者向けの電子機器は、あらゆる種類の娯楽、通信、家庭及び/又はオフィスの機能に応用することができる。従って、「MFD」という用語は、回路基板と共に用いるのに適し、かつ種々の目的のために複数の個人によって使用されるように意図された、あらゆる種類の電子機器を指すことができる。
【0017】
「ストレージ」という用語は、データストレージを指すことができる。「データストレージ」は、いずれかの他の物品又は装置の補助の下で又は補助なしで、情報をそこから再生することが可能な、あらゆる物品又は物質(例えば、ハードディスク)を指すことができる。「データストレージ」は、コンピュータプロセッサによるアクセスのための電磁形態でのデータの保持を指すことができる。一次ストレージは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)及びその他の「内蔵」装置内のデータである。二次ストレージは、ハードディスク、テープ及びその他の外部装置上のデータである。「データストレージ」は、意図的に消去されるまでデジタルデータを永久に保持する場所を指すこともできる。「ストレージ」は、電力なしでその内容を保持するリポジトリを含意する。「ストレージ」は、主として、磁気ディスク、磁気テープ及び光ディスク(CD、DVDなど)を意味する。「ストレージ」は、フラッシュ、読み出し専用メモリ(ROM)及び/又は電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)のような不揮発性メモリチップを指すこともできる。
【0018】
「ポーリング」という用語は、それによってプロセッサ/コンピュータ装置/電子的手段が装置(例えば、MFD)の要求を処理することができるいずれかの方法を指すことができる。「ポーリング」という用語はまた、端末がデータを送信する準備ができているとき、及び/又は別の装置からのデータに対しての連続的な要求を行っているときを判断する通信技術を指すこともできる。コンピュータは、それに接続された端末に対して、例えばラウンド・ロビン・シーケンスで、頻繁に問い合わせを行うことができる。端末は、送信すべきデータを有している場合には、肯定応答を送り返し、伝送を開始する。「ポーリング」という用語はまた、周辺装置が転送すべきデータを有しているかどうかを確認するために、周辺装置に頻繁に問い合わせを行う技術を指すこともできる。「ポーリング」という用語はまた、他のプログラム又は装置がどのような状態にあるかを確認するために、通常はそれらがまだ接続しているか又は通信することを望んでいるかどうかを確認するために、1つのプログラム又は装置によって他のプログラム又は装置を連続的にチェックすることを指すこともできる。特に、マルチポイント又はマルチドロップ通信(同じ線を共有する複数の装置が取り付けられた制御装置)において、制御装置は各装置にメッセージを1つずつ送信し、通信すべきものを有しているかどうか(言い換えると、その線を使用したいかどうか)を各々に対して尋ねる。
【0019】
「静的データ」という用語は、特定の機能又はフラグメントに対する呼び出しと呼び出しとの間で持続する、変数及びその他のデータを指すことができる。「静的データ」という用語はまた、時間が経ってもほとんど変化しないデータベース情報(例えば、マップファイル、フォントファイルなど)を指すこともできる。
【0020】
「動的データ」という用語は、その情報に対するさらなる更新が利用可能となったときに非同期的に変更される情報を指すことができる。「動的」という用語は、所定の時点又は固定された時点ではなく必要とされる時点で生じる動作を指すことができる。
【0021】
添付の図面を参照しながら、実施形態を以下に説明する。添付の図面は単なる例であり、本開示の範囲を限定する意図はない。
上述のように、ネットワーク通信に対して単一の最大タイムアウト(TO)及び再試行(RT)値を用いる技術は、全てのネットワーク装置に対して並行して要求を行うことによって、通信要求が既に最適化されているものと仮定するものであり、このことは1つのプロセス又はスレッドが全ての装置に要求を送信する一方で別のプロセス又はスレッドが応答を待つことを意味するので、望ましくない。しかしながら、このことはまた、最も遅い装置についての応答時間が全てのMFDに影響を及ぼすことも意味する。従って、各々の要求を個別に維持することで、管理ツールを実行している管理システム上に容認できない量のコンピュータ・リソースが必要とされる。これは、処理時間及びネットワーク性能を著しく遅くすることがある。
【0022】
本開示は、多数のMFDに並行して要求を行い続けるが、MFDをグループ化することによってより効率的にデータを収集する、システム及び方法を説明する。状態を収集するための平均時間を改善することによって、より多くのMFDについてより新しい状態データを得ることができる。状態データが新しいほど、ネットワーク装置に関する問題を訂正するための応答時間がより速くなる。図を参照して以下に説明されるように、より早い問題解決は、ネットワーク装置の管理の収益性を高める。
【0023】
図1を参照すると、本開示による、MFDのグループ化が行われない場合のネットワーク性能を示すフローチャートの概略図が提示される。
フローチャート10は以下のステップを含む。ステップ12において、ユーザによってアプリケーションタスクが実行される。例えば、200個のOIDオブジェクトについて検索が行われる。ステップ14において、MFDは自動的にポーリングされる。例えば、ネットワーク上の5000個のMFDの全てが、複数のMFDの各々によってサービス要求が行われたかどうかにかかわらず、検索される。ステップ16において、複数のMFDの各々に対して、必要とされる数のタイムアウト及び再試行が実行される。例えば、タイムアウトは5秒に設定することができ、再試行の数はMFD当たり再試行3回に設定することができる。ステップ18において、平均時間が計算される。例えば、この例において、平均時間はこのシナリオの下では3000秒である。プロセスはその後、終了する。
【0024】
特に、MFDのグループ化が所望されない場合には、以下の計算を行うことができる。
最悪の場合のシナリオは、各オブジェクト識別子が別個の通信要求の中にあり、各々が5秒のタイムアウト及び3回の再試行を必要とする状況で、5000個のネットワークMFD上で200個のOIDオブジェクトの状態ポーリングを行うことである。
200個のOID*5秒のTO*3回のRT=3,000秒
状態を収集するための平均時間=(3,000秒*5000/5,000装置)
状態を収集するための平均時間=3,000秒
結果として、グループ化が行われていない場合にネットワーク上の全てのMFDをポーリングするには、かなりの量の時間(例えば、上記の例では3000秒)が必要である。
【0025】
図2を参照すると、本開示による、1つの通信要求が行われた後にMFDを動的にグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図が提示される。
フローチャート20は以下のステップを含む。ステップ22において、ユーザによってアプリケーションタスクが実行される。例えば、200個のOIDオブジェクトについて検索が行われる。ステップ24において、MFDは自動的にポーリングされる。例えば、ネットワーク上の5000個のMFDの全てが、複数のMFDの各々に対してサービス要求を行うことによって検索される。ステップ26において、複数のMFDの各々が応答したかどうかが判断される。ステップ28において、MFDの2つのグループが作成される。例えば、一方のグループは応答したMFDに関し、もう一方のグループは応答しなかったMFDに関するものとすることができる。ステップ30において、応答した複数のMFDから平均時間が計算される。例えば、この例において、平均時間はこのシナリオの下では1806秒である。プロセスはその後、終了する。
【0026】
特に、このタイプのMFDのグループ化が所望される場合には、以下の計算を行うことができる。
図2の技術は、1つの通信要求を行った後に装置を動的にグループ化することを伴う。グループ化の基準は、単純にMFDが応答したかどうかである。一方のグループは、最大タイムアウト及び再試行を超過し、応答しなかったMFDから構成される。もう一方のグループは、通信要求に応答したあらゆるMFDから構成される。
以下の例は、装置のうちの500個(10%)が通信要求に応答しない場合に、状態を収集するための平均時間が、最悪の場合のシナリオ(図1で上述されたもの)に比べて39.8%改善したことを示す。残りの4,500個のネットワーク装置は応答したが、通信要求は最も遅いネットワーク装置による影響を受ける。従って、全ての応答を待つ時間は比較的高く、2回の再試行にわたって5秒である。例えば、
グループ1:応答しない装置についての5000チェック
1個のOID*5秒のTO*3回のRT=15秒
グループ2:4,500個の応答する装置
199個のOID*5秒のTO*2回のRT=1990秒
状態を収集するための平均時間=(15秒*5000/5,000装置)+(1990秒*4,500/5,000装置)
状態を収集するための平均時間=15+1,791
状態を収集するための平均時間=1806秒
結果として、このタイプのグループ化が行われる場合にネットワーク上の全てのMFDをポーリングするには、かなりの量の時間(例えば、上記の例では1806秒)が必要である。
【0027】
図3を参照すると、本開示による、以前の通信状態に基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図が提示される。
フローチャート40は以下のステップを含む。ステップ42において、ユーザによってアプリケーションタスクが実行される。例えば、200個のOIDオブジェクトについて検索が行われる。ステップ44において、複数のMFDの各々の以前の通信状態が判断される。例えば、これは複数のMFDのどれに対しても何らかのサービス要求を行うことなく達成される。ステップ46において、どのMFDが過去に応答したかが判断される。例えば、4500個のMFDが応答していた。ステップ48において、MFDの2つのグループが作成される。例えば、一方のグループは応答したMFDに関し、もう一方のグループは応答しなかったMFDに関するものとすることができる。ステップ50において、両方のグループのMFDが並行して稼働される。ステップ52において、応答した複数のMFDと応答しなかった複数のMFDとから平均時間が計算される。例えば、この例において、平均時間はこのシナリオの下では1801.5秒である。プロセスはその後、終了する。
【0028】
特に、このタイプのMFDのグループ化が所望される場合には、以下の計算を行うことができる。
図3に説明される技術は、全ての装置の通信状態を持続し、これを、いずれかのネットワーク通信要求を行う前に装置をグループ化するために用いることを伴う。この基準は両方のグループを並行して稼働させることを可能にするので、各グループはもう一方に影響を及ぼさない。少数のグループを並行して稼働するために必要とされるリソースは過剰なものではない。
以下の例は、装置のうちの500個(10%)が通信要求に応答しない場合に、状態を収集するための平均時間が、最悪の場合のシナリオ(図1で上述されたもの)に比べて39.95%改善したことを示す。残りの4,500個のネットワーク装置は応答したが、通信要求はここでもまた最も遅いネットワーク装置による影響を受ける。従って、全ての応答を待つ時間は比較的高く、2回の再試行にわたって5秒である。例えば、
グループ1:持続したデータからの500個の応答しない装置
1個のOID*5秒のTO*3回のRT=15秒
グループ2:4,500個の応答
200個のOID*5秒のTO*2回のRT=2000秒
状態を収集するための平均時間=(15秒*500/5,000装置)+(2000*4,500/5,000装置)
状態を収集するための平均時間=1.5+1,800
状態を収集するための平均時間=1801.5秒
結果として、このタイプのグループ化が行われる場合にネットワーク上の全てのMFDをポーリングするには、かなりの量の時間(例えば、上記の例では1801.5秒)が必要である。
【0029】
図4を参照すると、本開示による、平均応答時間及び再試行の数に基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図が提示される。
フローチャート60は以下のステップを含む。ステップ62において、ユーザによってアプリケーションタスクが実行される。例えば、200個のOIDオブジェクトについて検索が行われる。ステップ64において、複数のMFDの各々の以前の通信状態が判断される。例えば、これは複数のMFDのどれに対しても何らかのサービス要求を行うことなく達成される。ステップ66において、どのMFDが応答したか、どれが応答しなかったかが判断される。例えば、4500個のMFDが応答し、500個のMFDが応答しなかった。ステップ68において、応答したMFDのうちのどれが迅速に応答したかが判断される。例えば、4400個のMFDが、再試行を試みることなく応答した。ステップ70において、応答したMFDのうちのどれが遅く応答したかが判断される。例えば、100個のMFDが、最大数の再試行を試みることで応答した。ステップ72において、MFDの3つのグループが作成される。例えば、1つのグループは応答しなかったMFDに関し、1つのグループは迅速に応答したMFDに関し、もう1つのグループは遅く応答したMFDに関する。ステップ74において、MFDの3つのグループ全てが、並行して稼働される。ステップ76において、応答した(迅速に又は遅く)複数のMFDと応答しなかった複数のMFDとから平均時間が計算される。例えば、この例において、平均時間はこのシナリオの下では217.5秒である。プロセスはその後、終了する。
【0030】
特に、このタイプのMFDのグループ化が所望される場合には、以下の計算を行うことができる。
図4の技術は、全ての装置の応答時間及び再試行カウントを持続し、これを、いずれかのネットワーク通信要求を行う前に装置をグループ化するために用いることを伴う。この基準は、より速く応答する装置の特典を生かすために3つのグループを並行して稼働させることを可能する。
以下の例は、装置のうちの500個(10%)が通信要求に応答しない場合に、最悪の場合のシナリオ(図1で上述されたもの)に比べて総時間で92.75%改善したことを示す。100個の装置は、5秒間いっぱいのタイムアウト及び2回の再試行を必要とする。残りの4,400個のネットワーク装置は、1秒以内で再試行することなく応答する。例えば、
グループ1:持続したデータからの500個の応答しない装置
1個のOID*5秒のTO*3回のRT=15秒
グループ2:100個の遅い応答
200個のOID*5秒のTO*2回のRT=2000秒
グループ3:4,400個の迅速な応答SNMPv1
200個のOID*1秒のTO*RTなし=200秒
状態を収集するための平均時間=(15秒*500/5,000装置)+(2000秒*100/5,000装置)+(200秒*4,400/5,000装置)
状態を収集するための平均時間=1.5+40+176
状態を収集するための平均時間=217.5秒
結果として、このタイプのグループ化が行われる場合にネットワーク上の全てのMFDにポーリングするには、より少ない量の時間(例えば、上の例では、図1−図3と比べて、217.5秒)しか必要としない。
【0031】
図5を参照すると、本開示による、1つ又はそれ以上のプロトコルに基づいてMFDをグループ化することによるネットワーク性能を示すフローチャートの概略図が提示される。
フローチャート80は以下のステップを含む。ステップ82において、ユーザによってアプリケーションタスクが実行される。例えば、200個のOIDオブジェクトについて検索が行われる。ステップ84において、複数のMFDの各々の以前の通信状態が判断される。例えば、これは複数のMFDのどれに対しても何らかのサービス要求を行うことなく達成される。ステップ86において、どのMFDが応答したか、どれが応答しなかったかが判断される。例えば、4500個のMFDが応答し、500個のMFDが応答しなかった。ステップ88において、応答したMFDのうちのどれが遅く応答したかが判断される。例えば、100個のMFDが、最大数の再試行を試みることで応答した。ステップ90において、応答したMFDのうちのどれが迅速に、かつ古いプロトコルを使用して応答したかが判断される。例えば、1400個のMFDが、再試行を試みることなく、かつ古いプロトコルで応答した。ステップ92において、応答したMFDのうちのどれが迅速に、かつ新しいプロトコルを使用して応答したかが判断される。例えば、3000個のMFDが新しいプロトコルで応答した。ステップ94において、MFDの4つのグループが作成される。例えば、1つのグループは応答しなかったMFDに関し、第2のグループは遅く応答するMFDに関し、第3のグループは遅く古いプロトコルの下で迅速に応答するMFDに関し、第4のグループは新しく、より速いプロトコルの下で迅速に応答するMFDに関する。ステップ96において、MFDの4つのグループ全てが、並行して稼働される。ステップ98において、応答した(迅速に又は遅く)複数のMFDと応答しなかった複数のMFDとから平均時間が計算される。例えば、この例において、平均時間はこのシナリオの下では98.7秒である。プロセスはその後、終了する。
【0032】
特に、このタイプのMFDのグループ化が所望される場合には、以下の計算を行うことができる。
図5の技術は、装置の能力を持続し、これを、より速いプロトコルを使用して応答することができる装置をいずれかのネットワーク通信要求を行う前にグループ化するために用いることを伴う。この基準は、より速いプロトコルが可能な装置の特典を生かすために4つのグループを並行して稼働させることを可能にする。
以下の例は、装置のうちの500個(10%)が通信要求に応答しない場合に、最悪のシナリオ(図1で上述されたもの)に比べて総時間で96.71%改善したことを示す。100個の装置は、5秒間いっぱいのタイムアウト及び2回の再試行を必要とする。1,400個のネットワーク装置は、例えばSNMPv1のようなより古いプロトコルで、1秒以内で再試行することなく応答する。残りの3000個の装置は、例えば、1つの通信要求で複数のオブジェクト識別を返すことができるゲットバルク(get−bulk)機能を可能にするSNMPv2のような、より速いプロトコルをサポートする。例えば、
グループ1:持続したデータからの500個の応答しない装置
1個のOID*5秒のTO*3回のRT=15秒
グループ2:100個の遅い応答
200個のOID*5秒のTO*2回のRT=2000秒
グループ3:1,400個の迅速な応答SNMPv1
200 OID*1秒TO*RTなし=200秒
グループ4:3,000個のSNMPv2
2つの要求で200個のOID*1秒のTO*RTなし=2秒
状態を収集するための平均時間=(15秒*500/5,000装置)+(2000秒*100/5,000装置)+(200秒*1,400/5,000装置)+(2秒*3,000/5,000装置)
状態を収集するための平均時間=1.5+40+56+1.2
状態を収集するための平均時間=98.7秒
結果として、このタイプのグループ化が行われる場合にネットワーク上の全てのMFDにポーリングするには、さらに少ない量の時間(例えば、上の例では、図1−図4と比べて98.7秒)しか必要としない。
【0033】
本開示は、性能基準に基づいてMFDに選択的にポーリングすることを利用する代替方法を提案する。上述の手法は、複数のMFDにポーリングするためのいくつかのグループ化の手法をあらゆるサービスプロバイダに提供する。さらに、複数のMFDをグループ化するという概念は、当業者が想起するいかなる種類のアプリケーションに対して用いることもできるという点で、一般的な概念である。例えば、どのようなサービスプロバイダでも、MFDを提供/制御/所有/販売することができる。さらに、サービスプロバイダは、本開示の所望の結果を達成するために、いかなる種類のプリンタ及び/又はMFD及び/又は電子装置を用いることもできる。また、本開示の印刷システムは、情報技術(IT)グループ及び/又はサービスプロバイダがそのクライアントの印刷環境をさらに管理しやすくする。
【0034】
サービスプロバイダは、ソフトウェア及び/又はハードウェア製品を開発、提供、制御、管理、所有、変更及び/又は販売するいかなる実体であってもよい。サービスプロバイダは、そのサービスプロバイダによって制御又は所有されていても又はされていなくてもよい1つ又はそれ以上の既存のMFD上で、1つ又はそれ以上のタスクを実行するいかなる実体であってもよい。例えば、この実体は既存のソフトウェアパッケージ、及び/又はインターネットを通じた既存のインターネットベースのサービスによって、サービスを提供することができる。言い換えると、サービスプロバイダは、MFDを所有又は提供する必要はない。MFDは、サービスプロバイダに関係しない又は関連付けられない、いずれかのサードパーティによって所有又は提供されることができる。本開示において、実体(例えばサービスプロバイダ)は、印刷関連サービス及び/又は製品に関連付けることができる又はできないインターネット・ウェブサイト又はストアを潜在的な顧客に参照させることによって、既存の中古MFDを最適化するためのあらゆる種類のサービス及び/又は製品を提供することができることが意図される。「実体」という用語は、分離した及び/又は別個の単位として存在することができ、複数の機械(例えばMFD)のうちの1つ又はそれ以上を所有、操作、管理及び/又は制御するものを指すことができる。例えば、「実体」という用語は「会社」という用語を包含することができる。
【0035】
要約すると、ネットワーク管理ツールは、現在の状態情報を取得するために装置(例えば、プリンタ及びMFD)にポーリングする。現在の状態情報を有することは望ましいが、しかしこれは、大量のネットワークトラフィックが発生するという犠牲を払って成り立つ。多数のネットワーク装置上の現在状態を有することもまた望ましいが、通信に、より多くの時間がかかる装置もあり、全く通信できない装置もある。装置上のイベントに関して登録することのような代替法(例えば、SNMPトラップ)は標準化されておらず、かつ不要なイベント上で余計なトラフィックを発生させる。
【0036】
結果として、本開示は、全体の効率を改善する一方で、なお、多数のネットワーク装置上の所望の状態データを提供するための、通信のための装置を性能基準に基づいてグループ化する方法を提供する。この基準は、装置に関する静的性能データ、及び前もって収集された動的性能データを伴う。静的グループ化の基準は、より高性能のプロトコルによって通信する能力といった、装置の能力に基づく。動的性能のグループ化基準は、装置と通信するのに必要な平均応答時間及び平均再試行といった、以前の通信統計に基づく。各プロセスをグループの通信要求に適合するように構成して、いくつかのプロセスを並行して実行することによって、多数の装置についてのデータを収集するための、より速く、より効率的な手段が得られる。
【0037】
本開示はまた、本開示による、少なくとも1つのプロセッサによってここに説明された方法を行うために実行されるように構成されたプログラム可能命令を格納するコンピュータ可読媒体を付加的な実施形態として含む。コンピュータ可読媒体は、フラッシュメモリ、CD−ROM、ハードドライブなどを含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の多機能装置(MFD)をグループ化するのに適した印刷システムであって、
前記複数のMFDに選択的にポーリングすることによって該複数のMFDから収集される情報を格納するためのストレージ・ステーションを含み、
前記情報は選択的に処理され、前記複数のMFDに関する静的性能データ及び動的性能データに基づいて、1つ又はそれ以上のグループにされること
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記静的性能データは、前記複数のMFDが1つ又はそれ以上のプロトコルによって機能する能力に基づくことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の多機能装置(MFD)をグループ化するのに適した方法であって、
前記複数のMFDに選択的にポーリングし、
前記選択的にポーリングされた複数のMFDから情報を受信し、
前記選択的にポーリングされた複数のMFDから収集された前記情報を格納し、
前記情報を選択的に処理して、前記複数のMFDに関する静的性能データ及び動的性能データに基づいて1つ又はそれ以上のグループにするステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記静的性能データは、前記複数のMFDが1つ又はそれ以上のプロトコルによって機能する能力に基づくことを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−176668(P2010−176668A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11969(P2010−11969)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】