説明

患者冷却装置

【課題】正常の体温以下に冷却する必要のある患者をサポートすることができる患者冷却装置を提供する。
【解決手段】第1セットの隔室(子室)と第2セットの隔室(子室)とからなり患者を支えるマットレス42と、患者を覆うためのエアテント2と、上記第1および第2セットの隔室と連通しているブロワー48と、このブロワー48からの空気を上記第1および第2セットの隔室に送り込むように作動させることができ、かつ、上記患者を覆うためのエアテント2のテント排気ダクト6からの空気を上記第1および第2セットの隔室に送り込むように作動させることができる、上記第1および第2セットの隔室と連通しているサーボバルブ44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療を目的として患者を冷却する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、ここで言及することにより、その開示内容は本出願明細書の一部を構成することとする。特許文献1および特許文献2は、通常の血液温度より数度低い、例えば、約32℃〜34℃の温度領域に、患者を急速に冷却するシステムを開示している。この臨床治療の処置は、酸素を含む血液の血流が減少することにより、心臓病や脳梗塞の患者に起こる脳障害を低減するのに使用され、ある程度成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO 97/42919号公報
【特許文献2】国際公開WO 00/27323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
詳しくは、本発明は、正常の体温以下に冷却する必要のある患者のための覆いまたはテントとサポートシステムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空気冷却システムに接続する吸気口と、排気空気を上記空気冷却システムの上記吸気口に戻し再循環させてエネルギー損失を最小限に押さえるために接続された排気口とを備えた覆いまたはテントからなる改良型患者冷却装置を第1の要旨とする。好ましくは、上記覆いは、適切な低温空気源が装備された救急車に搭載された患者サポート装置、たとえばマットレスのようなさまざまな患者サポート装置に設置され使用される。
【0006】
好ましくは、上記覆いは、冷却システムに接続しており、上記冷却システムは、外気を取り入れる吸気口と、冷媒システムの冷却部を経由して上記覆いに空気を供給する主要ブロワーと、上記エアテントの排気口から上記主要ブロワーの吸気口側へと接続する再循環ダクトを備えている。
【0007】
好ましくは、上記吸気口と、上記主要ブロワーと、上記冷却部とは、全て1つのハウジング内に収納されており、上記ハウジングは、専用ホースセットを介して上記エアテントに接続している。好ましくは、上記ホースセットは同軸で、返還空気用外側チューブによって囲まれた、上記覆いへ吸気する内側チューブを有している。このように、外側エアジャケットは、周囲温度から上記低温内側チューブを有効に隔離して断熱する。
【0008】
好ましくは、バルブが上記返却路に備えられ、操作上の必要に応じて、再循環空気の比率を変化させることができるようになっている。
【0009】
好ましくは、上記エアテントが外気への別個の排気口も備えており、上記別個の排気口は排気流を制御するための羽根型バルブを有し、上記覆い内の圧力を独立して制御できる。このように、上記覆いからの漏出量が変動したとしても、あらかじめ設定した制限内に圧力を維持することができる。
【0010】
好ましくは、冷却空気も供給される複数の拡張可能な小室からなるマットレスシステムで、患者はサポートされる。好ましくは、上記小室は、上記マットレスの幅方向に横に伸びた細長い部材からなり、患者の体の特定の部分が継続的に高圧力を受けさせることを避けるために、交互に拡張することができる。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、患者サポートマットレスは、横に伸びた拡張可能な複数の小室からなり、各小室は、比較的低圧な低温の空気で加圧され、患者を冷却するのに役立つが比較的サポートが弱くなるのと、比較的高圧の空気で加圧され、患者をサポートするが比較的冷却効果が弱くなるのとで、交互に加圧可能になっている。
【0012】
好ましくは、上記マットレスが、上記冷却覆いの上記再循環エア供給システムと接続しており、圧力を高めて供給するために追加のブロワーが備えられている。
【0013】
本発明のさらに別の特徴によれば、患者を制御された環境下に置くためのエアテントまたは覆いは、柔軟材料からなる複数のパネルからなり、患者を隔離することができる取り外し可能な固定手段を備えた開口部を有し、少なくとも1つのパネルは1つまたは複数の開口部を有し、ダクトまたはパイプの通路が上記覆いの内部と連通するようになっており、上記開口部は放射状に折りたためるスリーブで接続された開口部からなり、上記スリーブの側面に沿って切れ目があり、上記切れ目が上記導管を導入するために上記パネル上の別の切れ目と連通しており、上記スリーブが柔軟で上記導管周囲で堅く締めつけることができる。
【0014】
好ましくは、上記スリーブの外縁周囲には、リング状フックまたはループの付属部品が備えられ、上記パネル上でそれと相互に係合する上記スリーブ基部周囲に位置するループまたはフック材と連携するようになっている。位置決めした後、上記導管周囲で上記スリーブをねじることにより、上記外縁の上記リング状フックまたはループの付属部品が、それと対応する上記スリーブ基部のループまたはフック材に対して押圧され、上記スリーブを上記導管周囲の位置にしっかりと固定できる。
【0015】
好ましくは、上記スリーブの上記外縁は、アルミニウムのような弾力性のある材質からなる“分割リング”によっても補強される。上記分割リングは、上記スリーブが上記導管周囲で閉じるように略円形状に保持し、上記スリーブの上記外縁を上記導管の表面と常に接触するように保持する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の患者冷却装置の概略図であり、(b)は本発明の同軸ホースセットの部分断面図である。
【図2】空気流制御システムを備えた患者サポートマットレスの略図である。
【図3】(a)は第1タイプの患者用覆いの側面図であり、(b)は図3(a)の患者用覆いの平面図であり、(c)は図3(a)の患者用覆いの端面図である。
【図4】(a)は第2タイプの患者用覆いの側面図であり、(b)は図4(a)の患者用覆いの平面図であり、(c)は図4(a)の患者用覆いの端面図である。
【図5】(a)は図4(c)のパネル端部の拡大図であり、(b)は図5(a)のパネル端部の平面図であり、(c)は図5(a)の構造の一部詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を説明する添付の図面を参照に併せて、以下に説明される詳細な記述から、本発明の前記およびそのほかの態様と特徴とは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0018】
本明細書において、提示される記述と説明をもとに、本発明の構造によってもたらされる多くの利益と、その利用方法は明らかである。上述の利益と、当業者にはもともと明らかな利益とは、本発明の範囲内である。ただし、本発明の範囲は、請求項によってのみ制限される。
【0019】
図面を参照すると、図1(a)は、本発明の患者冷却装置の概略図であり、テント吸気ダクト4とテント排気ダクト6を備えた覆いを形成するエアテント2からなる。上記エアテント2は、好ましくは、以下に詳述しているように、繊維素材からなるパネルにより構成される。
【0020】
上記エアテント2には、システム吸気フィルター10、吸気流量センサー9および吸気バルブ12を備えた空気吸気ダクト8を通して、冷却空気が供給される。上記吸気バルブ12は、主要ブロワー14と連通する可動羽根からなる。これで空気を加圧し、続いて、冷却回路の蒸発器部からなる、熱交換器16に通す。さらに、上記冷却回路は、圧縮器18と凝縮器24とを有している。上記凝縮器24は、凝縮器送風機22を従来の方法で備えており、凝縮器吸気フィルター20と、上記蒸発部から凝縮排液を吸収する芯26と、排出空気フィルター28とを有している。
【0021】
上記熱交換器16を通過して冷却された空気は、上記テント吸気ダクト4を介して上記エアテント2の覆い内に運ばれ、患者のそばを通り、上記テント排気ダクト6を介して上記覆いから排出される。上記テント排気ダクト6は再循環フィルター30を介して再循環流量センサー32と再循環バルブ34へと接続されている。上記再循環バルブ34は、再循環空気の比率を制御するために作動できる羽根からなる。
【0022】
さらに、上記エアテント2は、羽根型排気バルブ36を備えており、これにより、上記エアテント2の内部圧力を独立して制御できる。このように、再循環空気の比率と上記エアテント2の内部温度とを、上記覆い内の全圧を過度に上昇または過度に減少させることなく、制御できる。
【0023】
さらに、上記装置は、図1(a)の42のような患者サポートマットレスを有している。上記マットレス42は、複数の膨張可能な小室または隔室からなり、空気がサーボバルブ44を介してそこに供給される。上記サーボバルブ44は、別のブロワー48を有している導管46によって上記冷却回路に接続される。図1(a)と図1(b)に図示されるように、上記導管46は同軸ホースセットに組み込まれ、上記導管46はその中核になっているので、上記導管46を通る空気は、上記ホースセットの外側同軸通路によって周囲温度から断熱されている。上記ホースセットは、テント吸気ダクト4とテント排気ダクト6からなる。
【0024】
図2は、空気がどのように上記マットレス42へ供給されるかを詳細に表したものである。交互に並ぶ隔室が、連続的な周期で高圧な空気と低圧な空気とで加圧される。図示されているように、交互配置された2セットの隔室または小室AとBとがあり、それぞれ、逆止め弁54と56とを介して、低圧で低温空気源に継続的に接続している。図1(a)の一般的な構造において、上記小室AとBとは、通常、ライン52を介して、上記エアテント2に供給を行う上記テント吸気ダクト4へ接続しており、これにより、(低圧であるがゆえに)患者をサポートする効果が弱いが、かなり充分な冷却能力を有する。
【0025】
(図1(a)を参照した先の記述のように、)上記主要ブロワー48によって駆動される、導管46を介した高圧空気供給が、それぞれサーボバルブ44を介して隔室AまたはBの各セットに接続しており、これらが交互に作動され、第1サイクルでは、全ての隔室Aが高圧まで膨張され患者をサポートし、一方隔室Bは再循環のために上記テント排気ダクト6へ接続される。(図1(a)と図2にあるように、)上記高圧空気は、上記逆止め弁54、56を介して逃げることができないので、矢印Cで表されているように、各隔室の繊維からは、ある程度漏出しても当然さしつかえない。上記導管46を介した高圧空気の供給は、より強い加圧により、当然、低圧供給より若干高温である。従って、患者の体を冷却する機能より、主にサポーティング機能を発揮する。
【0026】
しかしながら、同時に、隔室Bは、ライン52を介してかなり低圧でより低温の空気の供給を受けているので、隔室Bはサポーティング機能よりむしろ冷却機能を主に提供している。
【0027】
次のサイクルでは、個々のサーボバルブ44を作動させることにより、高圧空気の供給を上記隔室Aから遮断する。代わりに、再循環のために上記テント排気ダクト6に接続し、ライン52を介して冷却空気の通路として主に冷気を供給する。同時に隔室Bが高圧供給に接続し、先のサイクルで隔室Aについて記載したような、患者サポーティング機能を引き継ぐ。
【0028】
このように、患者の体の各部分が、継続的に高圧にさらされるのではなく、交互に、高圧でサポートされるか、冷却される。
【0029】
図3(a)は、患者隔離システムを詳細に表している。図示の通り、この患者隔離システムは略半筒状の繊維構造からなり、その底部は、マットレスカバー62で支えられている(この図面では見えない)。上記マットレスカバー62は、図2に関して上述したようなマットレス構造を内包している。
【0030】
図3(b)の平面図から分かるように、上記覆いの上部またはカバー部が一対の細長いフラップ64からなり、その隣接端部は、Velcro(登録商標)タイプのシール(すなわち、分離可能で相補的なフックとループファスナー)または同等のシール66で接続できる。各フラップには柔軟で透明な点検パネル68が形成されている。頭部側端部パネル70(図3(c))には患者の首を通す穴72が形成されており、患者の頭部を上記覆いから出すことができる。この穴72は、患者の首の位置決めをしやすくするためのスリット74によって、頭部側端部パネル70の円状端部に接続されている。このスリットにも、その隣接端部に沿って、Velcroタイプのシールまたは同等のシール66が備えられ、閉鎖できるようになっている。
【0031】
また、以下に詳述するように、上記エアテント2には、さまざまな導管や連結装置のために特別に採用された、一連の開口部76がある。一方、(図3(d)の)足側端部60には、空気流入ダクトのための一対の空気流入口61と、再循環バルブと圧力軽減バルブとに接続する再循環口80とがある。
【0032】
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)の患者隔離システムの変形例である“完全隔離”版を図示している。この変形例では、図4(a)と図4(b)に表されているように、上記覆いは患者の頭部も入るように長くなっている。この変形例では、患者が外部を見ることができるように、頭部に別の透明な点検パネル68がある。この場合には、当然、上記頭部側端部パネル70に首を通す穴はない。
【0033】
図5(a)、図5(b)は、パイプと導管が上記エアテント2の壁内部を通る構造を表しており、空気漏れが最小限に押さえられる。各導管用開口部76は、繊維のような柔軟な材質からなる、放射状に折りたためるチューブ状スリーブ78を備えている。図5(a)で表された構造において、上記チューブ状スリーブ78は、上記頭部側端部パネル70に縫い付けられており、図5(b)に表されているように、上記壁から突き出ている。上記チューブ状スリーブ78の外側端部は、分割式アルミニウムアンカーリング92(図5(c))によって補強されており、その周囲にはVelcroタイプの材料からなるカバー94が縫い付けられている。従って、図5(b)の上記Velcroタイプのカバーをなされたリングは、上記チューブの外側端部において、補強スリーブリム82を形成し、上記導管周囲で閉鎖するように上記チューブ状スリーブ78を略円形状に維持する。チューブ状スリーブ78そのもの本体と、この補強スリーブリム82は、以下に詳述するように、上記チューブ状スリーブが導管周囲で閉鎖できるように、対応する切れ目84と共に形成されている。
【0034】
さらに、図5(a)において、上記エアテント2の上記頭部側端部パネル70に縫い付けられた、4つのVelcroタイプの“ループ”パッド86が、上記チューブ状スリーブ78をとり囲む。上記パネル本体は、上記チューブ状スリーブ78の切れ目84から、上記パネルの外側端部90に向かって伸びているスリット88を有する。これにより、(既に患者と接続されているかも知れない)パイプや導管を上記覆い内に通すことができ、パイプや導管のどちらかの末端をはずすことなく、上記スリーブ78を通して出すことができる。
【0035】
上記導管が適正に位置決めされた後、上記補強スリーブリム82をひねって、締めつけて、導管(図示せず)とかみ合わせ、上記Velcroタイプのパッド86に対して圧接する。次に、上記リム82は上記パッドに取りつけられ、上記導管をしっかりと位置決めする。この閉鎖システムが幅広タイプの導管に対しても、同様にうまく機能することがわかるだろう。さらに、特別にいかなる開口部76も必要がない場合は、(図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)および図4(a)、図4(b)、図4(c)に概略的に表されているように、)上記スリーブ78は上記穴を完全に閉鎖するためによりきつくひねりあげることができる。
【0036】
(図5(a)の)上記スリット88には、その隣接する端部に沿って適切なVelcroタイプか同様の閉鎖手段も備わっており、上記全体の閉鎖が漏れに対して実質的に耐性があり、従って、上記システムにおいて全体の再循環損失を低減することができることが理解されるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の患者冷却装置は、患者をサポートするとともに、患者を冷却する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
2 エアテント
6 テント排気ダクト
42 マットレス
44 サーボバルブ
48 ブロワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合的に配置されて患者を支える面をなし、第1セットのエアバッグと第2セットのエアバッグとからなる複数のエアバッグと、エアテント内で空気を再循環させてエネルギーを節約する空気冷却システムに接続する吸気口と排気口とを備え、上記排気口が上記第1セットのエアバッグおよび第2セットのエアバッグに連結されている、患者を覆うためのエアテントと、上記第1セットのエアバッグおよび第2セットのエアバッグと連通している高圧空気源と、この高圧空気源からの空気を上記第1セットのエアバッグに送り込むように作動させることができ、かつ、上記患者を覆うためのエアテントの排気口からの空気を上記第1セットのエアバッグに送り込むように作動させることができる、上記第1セットのエアバッグと連通している第1サーボバルブと、上記高圧空気源からの空気を上記第2セットのエアバッグに送り込むように作動させることができ、かつ、上記患者を覆うためのエアテントの排気口からの空気を上記第2セットのエアバッグに送り込むように作動させることができる、上記第2セットのエアバッグと連通している第2サーボバルブとからなり、正常の体温以下に患者を冷却することを特徴とする患者冷却装置。
【請求項2】
上記第1セットのエアバッグが、上記第2セットのエアバッグと交互配置された請求項1記載の患者冷却装置。
【請求項3】
上記第1セットのエアバッグが上記高圧空気源からの空気で加圧されると同時に、その空気が上記患者を覆うためのエアテントの排気口から上記第2セットのエアバッグへ送られる請求項1または2記載の患者冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154000(P2009−154000A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97037(P2009−97037)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2004−551724(P2004−551724)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(505167473)ケーシーアイ ライセンシング インク (19)
【Fターム(参考)】