患者看護教授用インタラクティブ(対話型)教育システム
【解決手段】 患者看護をユーザに教授するためのインタラクティブ教育システムを説明する。このシステムは、患者シミュレータと、患者看護活動を実行する際に患者シミュレータと併用して使用するための仮想器具と、仮想器具とシミュレータとの間の相互作用を検知する手段と、仮想器具と前記シミュレータとの間の相互作用に関してユーザにフィードバックを提供するための手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は患者看護教授用インタラクティブ教育システムに関し、特に、患者看護活動の実施に当たって母体シミュレータと併用する仮想器具を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
実際の患者と接することを許可する前に患者看護プロトコルについて学生を訓練することが望ましいが、教科書やフラッシュカードには、「実践的」練習から得られる重要な効果が欠けている。従って、患者看護教育は、人体模型などのシミュレータ上で患者看護を行うための医療用器具を用いて教えることが多かった。しかし、そのようなシステムの欠点の一つは、医療器具が極度に高価であることが多いため、ユーザの多くは、教育上の体験内容範囲を狭めるという犠牲を払ってまでも、器具の種類を少なくせざるを得ないことである。前記の課題に対する一つの解決策は、米国特許第5,853,292号明細書(この参照により開示の全体を本明細書に組み込むものとする)で教示されたように、一組の廉価のシミュレーション用医療器具(「仮想」器具)を用いることである。別の解決策は、シミュレータを本物の医療器具と両立するようにすることである。
【0003】
患者看護教育における別の課題は、ユーザに教えるために用いる患者シミュレータが受動的であることである。例えば、出産のシミュレーションにおいて、ユーザはシミュレーション用胎児をシミュレートされた母体の骨盤内に配置し、これを産道経由で降ろし、胎児の頭部を娩出させ、胎児を約90°回転させて肩を娩出させ、最後に胎児を引き出す(この時点で「新生児」と称することになる)必要がある。実際の分娩における一連の事象を模倣している一方で、ユーザが胎児を物理的に操作するということで迫真性に欠けており、患者看護を行う難しさを察しにくくなる。実際の分娩においては、胎児にアクセスすることはできず、ほとんどの動きは隠れて見えないようになっており、先行技術によるシステムは出産中に患者看護を提供するという最も難しい状況に対応していない。さらに、先行技術によるシステムは、胎児が産道を通って降りて来る時の子宮頚部拡張をシミュレーションしないため、学生が分娩の段階を評価したり、分娩の進展を評価するための子宮頚部拡張の対時間拡張図(「分娩記録」)を作成することができない。
【0004】
患者看護教育におけるさらに別の課題は、システムがかさばり過ぎ、また、他の構成部品への必要配線接続の本数が多過ぎることが多く、そのため、シミュレータを他の位置に動かしにくいことである。「可搬式」と称されているシステムでも、シミュレータを完全に機能させるためには、コンプレッサや電源など数多く接続部品を移動する必要があることが多い。この課題の解決策は、外部装置とワイヤレスで通信する完全機能型・独立式シミュレータにすることである。従って、より現実に近いシミュレーション用患者を含む、患者看護訓練セッションの実施に用いるインタラクティブ教育システム用のシステムが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、ユーザのための患者看護教授用インタラクティブ教育システムを提供する。このシステムは、母体シミュレータ、胎児シミュレータ(母体シミュレータと一緒に使用、母体シミュレータとは別々に使用、の両方に対応できるよう設計されている)、および新生児シミュレータ(分娩後のシミュレーションにおいて胎児シミュレータに取って代わるように設計されている)を含む。いくつかの実施形態において、このシステムは、完全にテザーレス(tetherless)であるシミュレータを有する。すなわち、このシミュレータは、他の外部器具、装置や電源に配線接続する必要なく機能する。このような実施形態では、シミュレータは他の装置や器具とワイヤレスで通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】図1aは、インタラクティブ教育システムを説明する一実施形態の概略図である。
【図1b】図1bは、別の実施形態によるインタラクティブ教育システムの概略図である。
【図2】図2は、仮想器具と患者シミュレータとの間の相互作用の概略図である。
【図3a】図3aは、仮想器具の断面透視図である。
【図3b】図3bは、センサの断面透視図である。
【図4】図4は、患者シミュレータを説明する一実施形態の透視図である。
【図5a】図5aは、図4の患者シミュレータにカバーを取付けた状態の透視図である。
【図5b】図5bは、制御ボックスの上面図である。
【図6】図6は、図4の患者シミュレータの胴体部の透視図である。
【図7】図7は、図6の患者シミュレータの胎児部を取外した状態の透視図である。
【図8】図8は、患者シミュレータの拡張可能な子宮頚部の透視図である。
【図9】図9は、患者シミュレータの外部の透視図である。
【図10】図10は、患者シミュレータの新生児としての一実施形態の透視図である。
【図11】図11は、本発明のシステムを説明する使用法の概略図である。
【図12】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図13】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図14】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図15】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図16】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図17】図17は、本発明の開示内容の一実施形態による患者シミュレータの、新生児としての一実施形態の透視図である。
【図18】図18は、図17の新生児シミュレータと併用する様々なモジュールの透視図である。
【図19】19は、図17の新生児シミュレータの断面部の透視図である。
【図20】図20は、図17の新生児シミュレータの空気供給システムの概略図である。
【図21】図21は、図20の空気供給システムと併用するマフラーの断面部の透視図である。
【図22】図22は、本発明の開示内容の一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図23】図23は、本発明の開示内容の一実施形態による、図17の新生児シミュレータのシミュレートされた生命徴候の出力ディスプレイ図である
【図24】図24は、本発明の開示内容の一実施形態による、胎児/新生児シミュレータを母体シミュレータに固定する機構の正面図である。
【図25】図25は、図24の機構の分解透視図である
【図26】図26は、図24の機構の一部の透視図である。
【図27】図27は、図24の機構の別の部分の透視図である。
【図28】図28は、出産シミュレーション中に胎児/新生児シミュレータを選択的に回転させるシステムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1aを参照すると、符号10は、ユーザに患者看護プロトコルを教授するためのインタラクティブ教育システムを全般的に示している。システム10は、医療器具をシミュレートするのに用いる仮想器具一式12と、ユーザから患者看護活動を受ける少なくとも一人の患者をシミュレートするのに用いるシミュレータ14とを有する。仮想器具12は有形の物体で、シミュレータ14に関連して実物の医療装置のように見え、感じられ、かつ作動する。シミュレータ14は、完全に関節接合されている成人サイズのマネキンや、胎児、新生児、小児、青年、あるいは腕、胴体部、頭部、または骨盤部などマネキンの一部を含め、様々な形態のものを含有するものと理解されたい。
【0008】
シミュレータ14がユーザから受ける患者看護活動は後述の方式で検知され、その活動に反応してシステム10がユーザにフィードバックを提供する。フィードバックは聴覚的、視覚的、または触覚的反応を含むものと理解されたい。プログラム15aを有するコンピュータ15は、後述の理由により、システム10に選択的に接続されている。
【0009】
図1bを参照すると、システム10’はコンピュータ15とプログラム15aとを有し、ここでソフトウェアにより生成される一式の仮想器具12’およびソフトウェアにより生成されるシミュレータ14’が提供される。従って、ユーザが行う患者看護活動は、ソフトウェアにより生成されるシミュレータ14’に患者看護を提供するために、ソフトウェアにより生成される選択された仮想器具12’に関連するアイコンを操作する工程を含む。本実施形態において、プログラム15は後述のように、マウスのクリックや音声動作ソフトウェアなどの先行技術による手段を用いてユーザの活動を監視し、これに反応してフィードバックを提供する。
【0010】
図1aに戻ると、システム10はさらに通信インターフェース・モジュール(communications interface module:「CIM」)16を有し、CIMは先行技術による電源18から運転用の電力を受け、マイクロコントローラ(「PIC」)20を含む。マイクロコントローラはMicrochip Technology,Inc.(米国アリゾナ州Chandler)など様々なベンダから入手でき、これをカスタマイズする。後述のように、PIC20はユーザの活動から入力信号を受け、ユーザにフィードバックを提供するように特定の反応をするようプログラムされている。例えば、聴覚フィードバックを提供するために、CIM16はさらに、PIC20に反応してスピーカー24に働きかけ、例えば心臓、肺、血圧(コロトコフ法)、腸、胎児などの迫真性のある患者音声を発生させる音声チップ22を有する。CIM16には、スピーカー24の音量を調節するためのコントローラ26が含まれている。
【0011】
あるいは、望ましいフィードバックの複雑性に応じて、CIM16をコンピュータ15およびプログラム15aに接続しても良い。フィードバックの一例において、プログラム15aを用いて、例えば超音波断面図や胎児仮死モニタのトレースの多大なライブラリを提供することができる。フィードバックは、プログラム15aで発生してコンピュータのスピーカーから奏する体音とすることもできる。
【0012】
CIM16は、ユーザの患者看護活動による、仮想器具12とシミュレータ14上のセンサ30との間の相互作用により発生した入力信号を受ける複数のポート(これらをまとめて28と称する)を有する。このように生成された入力信号を制御するためにPIC20が一つ以上、また、CIM16が一つ以上あっても良いことを理解されたい。
【0013】
仮想器具12は患者看護装置、例えば図2に示したような少なくとも1本の点滴(intravenous drip:IV)針、気管内(endotracheal:ET)チューブ、心電図(electrocardiogram:ECGまたはEKG)モニタ、血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯、パルス酸素濃度計帯、一時的外部ペーサ、自動体外式除細動器(automatic external defibrillator:AED)、手動除細動器、超音波ライトペン、仮想聴診器、体温計、および胎児仮死モニタ(以上、各々12a〜l)を有する。このような仮想器具は、本物の医療装置のように見え、かつ作動する。勿論、従来の聴診器、吸引分娩器(vacuum extractor)、カテーテル、トレイ、点滴(intravenous drip:IV)スタンドなど、比較的廉価な医療装置の使用や、他の仮想器具も予期される。
【0014】
図2を参照すると、点滴針12aは特定の薬および薬の調合の選択可能なグループを有し、一実施形態においては、プログラム15aで制御された投与効果のある薬をシミュレータ14に分与するための標識されたシリンジ一式を有する薬のトレイの一部となっている。ETチューブ12bは、シミュレートされた患者の気道管理に用い、シミュレータ14の気管内に置かれている。EKGモニタ12cは、リアルタイムのトレース・モニタおよびR波音波マーカーを有する3、5、または12誘導システムと、シミュレータ14の胴体部に接続するための色彩コード化された複数のパッチとを有する。血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯12dはシミュレータ14に、例えば、腕の周りに取付けられる。パルス濃度計用指先帯12eはシミュレータ14に、例えば、指の周りに取付けられる。一時的外部ペーサ12fは、シミュレータ14の胴体部に取付けるための複数の前部および後部のペーサ・パッドを有する。ペーサ12fは、ペーサ速度および電流のためのコントローラを有し、リズム整調、キャップ時間、およびキャップ時間の喪失を表示し、これらの全てはプログラム15aで制御される。自動体外式除細動器(automatic external defibrillator:AED)12gは、シミュレータ14の胴体部に取付けるための、心臓などの尖部や胸骨用の複数のAEDパッドを有する。プログラム15aによって制御されるソフトウェアにより生成されるショック・ボタンを選択すると、システム10は、プログラム15aにより制御される結果として得られる条件により、除細動ショックをシミュレートする。手動除細動器12hは、シミュレータ14の胴体部に接触させるための、心臓の尖部や胸骨用の複数の除細動器用の棒(パドル)を有する。ソフトウェアにより生成されるショック・ボタンを選択すると、あるいは手動除細動器12hと結合したデュアル・ショック・ボタンを用いることにより、システム10は、プログラム15aにより制御される結果として得られる条件により、除細動ショックをシミュレートする。
【0015】
引き続き図2を参照すると、超音波ライトペン(超音波ワンド)12iはシミュレータ14と相互作用し、ワンド30iがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、CIM16はこの相互作用を検出し、プログラム15aは超音波画像および/または音波のライブラリから取り出された超音波断面図を提供する。プログラム15aは、ユーザに断面図を解釈させ、それに応じて対応させるように、正常断面図と異常断面図の中から選択することができる。仮想聴診器12jはシミュレータ14と相互作用し、聴診器12jがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、図3a〜bで後述するように、CIM16はこの相互作用を検出し、フィードバックがユーザに提供される。体温計12kはシミュレータ14と相互作用し、体温計12kがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、CIM16はこの相互作用を検出し、プログラム15aが温度の読み値を提供する。胎児仮死モニタ12l(陣痛計)は、シミュレータ14の一部に取付けられ、取付けによって、プログラム15aはシミュレートされた胎児の心拍数を提供する。
【0016】
各器具は、全体としてライン36で示すように、対応するセンサ30a〜lを有する。特記しない限り、ライン36は概略的なものであり、仮想器具12とセンサ30とが機能的に相互に接続されて、ユーザの患者看護活動によって生み出された相互作用を提供し、前記相互作用は、CIM16への入力信号として報告されるということを例示しているにすぎない。このような物理的ラインを器具12やセンサ30の間で共通化することも企図されることを理解されたい。
【0017】
仮想器具12とセンサ30との間の相互作用は、電気的、光学的、圧力差、触覚、温度制御、またはワイヤレスである。一般的に言えば、電気的相互作用(これは前記入力信号も提供する)は、1個の節点および別の節点をもつセンサ30を有する仮想器具12を介して生み出すことができ、その両者は物理的にCIM16と接続している。または、伝導物質から形成された2個の節点およびセンサまたはそれらと逆のもの、を有する仮想器具と接続し、それらのうちのただ1つのみが物理的に前記CIM16と接続している。例えば、点滴針12aは、腕の前ひじ領域のような薬物を受け入れることができるシミュレータ14の一部に対応し、この領域は、適当な厚さと点滴針12aが小さい鋭角(例えば、20°)で布を貫通することができるような織密度を有する伝導物質から成る2つの層の間に挟まれた絶縁体を有するセンサ30aを有していても良い。センサ30aの伝導層はライン36a’を介してCIM16と電気的に接続し、点滴針12aが、シミュレータ14の血管への挿管をシミュレートする前記2つの伝導層を正しく通過する場合には、回路が前記層の間に完成し、CIM16によって検知される。
【0018】
相互作用を検知する方法の別の例として、ETチューブ12bが、シミュレートされた患者の気道管理に使用され、シミュレータ14は、頭、目、鼻、口、および通常の気道付属物を受入れることができる現実に近い気道を有し、気道の配置は調節可能であり、大きな舌、塞がれた咽頭、または閉じた声帯を表示して患者の看護活動の困難さを増加させる。シミュレータ14の気管における正しい配置を確実にするために、光学センサ30bが前記シミュレータ14の気管の壁部に設けられ、ライン36b’を通してCIM16と接続されている。気管における前記ETチューブ12bの正しい配置は、ETチューブの先端が光学センサ30bの光線を遮った場合に、確認される。センサ30bは、また、流体が通過したか否かを決定するために使用することができる。
【0019】
仮想聴診器12jは、相互作用を感知するワイヤレス法の例を提供する。少なくとも1のセンサ30jが、前記シミュレータ14の解剖学的部位に設けられ、そこでは、特定の心音、肺(気道を含有する)音、コロトコフ(Korotkoff)音、胎児音、または他の音が通常聞こえている。センサ30jは、聴診器12jによって識別される少なくとも1の信号を供給し、それによって、ユーザに対して、シミュレータ14上のセンサの解剖学的位置に適した音を奏するように、集積音響回路に指示する。音響回路は選択されたセンサ30jの位置に相当する体音を貯蔵するライブラリを有し、センサ30jは同様のセンサの任意の個数を例示している点を理解されたい。
【0020】
図3aを参照すると、ある態様では、聴診器12jの外観は通常の聴診器に似ており、音を聞くためのイヤピース50a〜bを有し、二またに分かれる耳管52と接続した延長部51a〜bに接続している。同様に、聴診器は、さらにベル管54およびベル56を有し、好ましくは、非鉄物質から成る。しかし、従来の聴診器とは異なり、電子制御ボックス58が耳管52とベル管54との間に配置される。制御ボックス58は適切に創られたCIM16であると理解すべきであり、物理的に仮想聴診器12jに組込まれて、システム10を簡略化する。外部のスピーカー(図示せず)への出力のためにジャック64が制御ボックス58に設けられて、イヤピース50a〜bで聞こえる音を他のユーザが聞くことができる。これは、患者看護活動から益を受けるユーザの数を増加させるのみならず、指導者がユーザの能力をテストし、必要であればユーザの技術を修正することを可能にする。制御ボックス58は、所定の音を奏するために、小型スピーカー72、例えば、ADDAX Sound Company(米国イリノイ州Northbrook)から入手可能なものなどを導くために、小型電源66、例えば、バッテリ、捕捉回路68、および音響回路70(回路図については、同時係属中の米国特許出願第09/640,700号、2000年8月17日出願、を参照のこと)を保持する。スピーカー72は、イヤピース50a内に配置され、ワイヤ72aを介して制御ボックス58に接続され、ユーザが、音響回路70によって生み出される音を聞くことができる。第二の、実質上同一のスピーカーを反対側のイヤピース50bに設け、また、制御ボックス58に接続しても良いことが理解されよう。代替の実施形態において、スピーカー72を制御ボックス58内に配置し、音が従来の耳管を介してイヤピースに伝達されるようにしても良い。音響回路70は、また、上述の理由から、外部のスピーカーと接続可能となるようにジャック64に接続する。
【0021】
多数の設定状態を有するスイッチ74が、音の集合、例えば、成人、新生児、胎児において聞こえる典型的な正常および異常の音の集合の間の切替えのために配置されている。無線周波数(radio frequency:RF)信号捕捉コイル76、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なものが、後述のように、RF信号を送信しかつ捕捉するために、ベル56の内部に配置されている。捕捉コイル76は、銅線コイルと、電子制御機器58に取付けられた関連ワイヤ76aを有する回路要素とを有している。樹脂製ディスク78が、ベル56からのノイズを低減するために、捕捉コイル76とベルと56の間に配置されている。
【0022】
別の実施形態において、本物の、または仮想聴診器を用いなくても音が聞こえるようにマネキン内に配置されたスピーカー(図示せず)により、音が再生される。さらに別の実施形態において、本物の聴診器を用いると音が聞こえるようにマネキン内に配置されたスピーカー(図示せず)により、音が再生される。
【0023】
図3bを参照すると、センサ30jが、ユーザによる視覚的露見を避けるように、シミュレータ14の皮膚14bの下に置かれている。また、解剖学的部位、例えば、肋間間隔は、場所を確認するために触診するべきであるので、センサ30jは、最小の厚さをもたせることによって、意図的なまたは偶然の露見を避けることが都合が良い。代替の実施形態では、センサ30jは、実質上皮膚14bに類似する蓋い(図示せず)に取り付けるのが良く、この蓋いを患者の他のシミュレータやモデルの上に置くことができ、これらの装置が聴診器12jと併用できるように変更する。
【0024】
センサ30jは無線周波数IDタグ80を有し、これは例えば、Microchip Technology,Inc.(米国アリゾナ州Chandler)(部品番号MCRF200−I/3C00A)から入手可能であるが、特定のセンサ30jを識別するために役に立つ特有の信号を発生させるために、これは同じくMicrochip Technology,Inc.が販売する"Developer’s Tools"を使用してプログラムしても良い。コイル82、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なものが、動作可能にタグ80に接続されている。タグ80およびコイル82は、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なもののような室温加硫硬化性(room temperature vulcanizing:RTV)埋込み物質84すなわちシリコンゴムの中に埋め込まれ、損傷を防止する。一旦埋め込まれると、タグ80およびコイル82は、応答指令信号が出されると、特有の周波数列をもつ信号を出力するCOBモジュール86を集合的に形成する。
【0025】
操作において、COBモジュール86は、周波数を積極的に発信することができるが、好ましくは、COBモジュールは受動的、すなわち、聴診器ベル56中に捕捉コイル76によって応答指令信号が出された場合にのみ動作させるべきである。発明を実施するための最良な本実施形態において、捕捉コイル76は、キャリヤ信号、例えば125kHzの励起周波数のようなキャリヤ信号を伝達し、それは、ベル56がCOBモジュール86の所定近傍内、すなわち捕捉距離内にもたらされた場合にCOBモジュール86によって受信される。ベル56、従って、捕捉コイル76の前記COBモジュール86に対する捕捉距離は、キャリヤ信号の信号対雑音(signal strength to noise:S/N)比によって決定される。だから、キャリヤ信号のS/N比の調節は、センサ30jの解剖学的位置に関して聴診器ベル56、従ってCOBモジュール86をユーザが置かなければならない精密さでもって制御するための手段を提供する。ユーザによるシミュレータ14上におけるベル56の精密な位置が、適当な体音の形で、フィードバックによって報いられる。通常、S/N比は、センサ30jのCOBモジュール86の約1.5〜2cm以内にベル56がもたらされることを要求するように設定される。
【0026】
十分に強いキャリヤ信号を受けることに応答して、他のキーイング法も使用できるけれども、COBモジュール86は、周波数偏移変調(frequency shift keying:FSK)として従来から知られている過程での使用のために、一連の2つの標識用周波数を発信する。聴診器ベル56内の捕捉コイル76は、発信された周波数を受信し、捕捉回路68にまで信号を中継し、捕捉回路68はセンサ30jの身元を調べる。各センサ30jの解剖学的位置は、プログラマーに知られているので、各センサに結合した適当な体音の選択がされ、音響回路70にアクセス可能である。だから、センサ30jを確認することによって、捕捉回路68は、音響回路70に指示して、COBモジュール86の解剖学的位置のための適当な体音を奏せしめ、これは、イヤピース50a内に配置されたスピーカー72を通して前記ユーザに聞こえる。ユーザにより広い選択範囲の音を聞かせるために、より多数のセンサ30jをシミュレータ14に追加したり、または、各センサが1以上の音に対応するようにすることが認められる。前述したように、スイッチ74は、5個の異なる設定状態を有し、5種類の音のグループの間で音響回路70を切り替えるための手段を有している。だから、スイッチの設定状態の個数は、単一のセンサによって生み出すことができる音の個数に相当し、すなわち、13のセンサと5個のスイッチの設定状態をもてば、ユーザは正常及び異常音の例を含む65までの位置に特有の音を聴くことができることが理解されよう。
【0027】
上述した捕捉コイルおよびCOBモジュールは、ECGモニタ12cの誘導、パドル、またはプローブ(「コネクタ」)、一時的外部ペーサ12f、自動体外式細動除去装置(AED)12g、手動除細動器12h、超音波ワンド12i、および胎児仮死モニタ12lで使用されるように改良できることが認められる。望ましい場合、コネクタは、患者シミュレータ上の場所にそれらを一時的に保持するために接着して設けられても良い。器具のコネクタとセンサ30との間の相互作用は、CIM16によって検知されて、正しい配置を確認する。患者シミュレータの皮膚の下にセンサ30が隠されているという配置はさらに、実際の患者に一層似ているとともに、ユーザの患者の看護技術を試すことになる。
【0028】
シミュレータ14は、患者を表しかつ治療を受けるように設計されており、従って、シミュレータ14は種々の形状をとり、その形状は、シミュレートされた患者の一部、例えば、胴体部および骨盤内の領域とともに、完全に関節接合されている成人サイズの産科用シミュレータ、丸まった胎児、関節接合された胎児、多胎児、または新生児を含有することを理解されたい。
【0029】
図4および図5aを参照すると、例示的な実施形態において、シミュレータ14は、子供を生む母体シミュレータ300および取外し可能な連結した胎児シミュレータ302とを有する。母体シミュレータ300は、毛髪306、目308a〜b、鼻310、および口312を有する頭部304を有している。頭部アセンブリは、従来の気道付属物を受け入れることができる、現実に近い気道(図示せず)を有している。全体として30で表されているセンサ(図1a)は、母体シミュレータの皮膚の上に(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下に(模型内として表されている)配置されていても良い。母体シミュレータの一実施形態(図示せず)において、センサがシミュレータと連結していない点を理解すべきである。電気的、空気作用的、または流体的接続を提供するため、また、必要に応じてセンサ30をCIM16に接続するために、ライン36が胴体部316から突出する。
【0030】
別の実施形態において、母体シミュレータ300はテザーレスである。すなわち、この母体シミュレータは、シミュレータ以外の装置に配線やチューブで接続する必要なく機能し、従って、胴体部316から延出するライン36、325a、および326bがない。むしろ、母体シミュレータは独立式である。このように、母体シミュレータ300は、充電池などの内蔵電源を含むことができ、全ての空気作用的および流体的接続は、対応する母体シミュレータ300内のコンプレッサまたは他の装置に接続される。母体シミュレータは独立式であるため、可搬性があるのみでなく、異なる場所間での移送中にも使用することができる。さらに、このような実施形態において、母体シミュレータ300は、ワイヤレス通信によりCIM16など他の装置と通信するようにしても良い。従って、シミュレータシステム14全体は、ワイヤレス通信の限界まで機能することができる。さらに、いくつかの実施形態において、母体シミュレータ300はコンピュータまたはネットワークシステムにワイヤレスで接続し、次いでこのコンピュータまたはネットワークシステムは有線またはワイヤレスのネットワークを介してCIM16に接続し、母体シミュレータの機能距離を実質上無限にする。ここでは母体シミュレータのみを説明してきたが、以下でより詳しく説明する胎児および新生児シミュレータも、いくつかの実施形態においてテザーレスである。いくつかの実施形態では、シミュレータは、テザーレスとテザーありの両方の状態で使用するように構成される。いくつかの実施形態では、シミュレータは、テザーレスで用いても完全に機能する(すなわち、シミュレータは、テザーありとテザーレスのどちらの状態でも同じ機能性がある)。
【0031】
一対の腕318a〜bが胴体部316と接続している。少なくとも1本の腕は、薬剤を受け入れることができる点滴レセプタクル(図示せず)を有し、センサ30aは、点滴が開始されたか否かを確かめるためにレセプタクル内に置かれていても良い。同様に、その腕は、血圧の測定のための手段とともに、コロトコフ音の聴診のためのセンサ30dを有していても良い。胴体部316の骨盤領域320は一対の脚322a〜bを受け止める。
【0032】
図5aを参照すると、フックや環状のファスナーのような解除可能な結合手段を使用することもできるけれども、カバー324は複数のスナップ324aを介して胴体部316に取付けることができる。超音波ワンド12i、胎児仮死モニタ12l、および聴診器12jまたは代わりに少なくとも1個の小型スピーカーと協動するために、カバー324は、センサ30を保持し、聴診器12jまたは従来の聴診器によって各々検知される胎児の心音のシミュレーションを可能とする。一実施形態において、カバー324が、真空発生手段と接続した連続気泡発泡体(図示せず)を囲んでいる。真空の発生が気泡を縮小し、それをより硬く感じさせ、それが母体シミュレータ300による子宮の収縮をシミュレートする。代わりに、カバー324は、カバーを加圧するための空気嚢および接続ライン(図示せず)を保持しても良く、これによって、それをより硬く感じさせる。さらに別の実施形態において、カバーは、胴体を横切るように延在する複数の可撓チューブ(図示せず)を有する。チューブ内の空気圧によって硬さが決定される。空気圧を調節すると硬さが変更される。種々のレベルの硬さが生み出されて、種々のレベルの収縮の強さ、例えば、軽度、中程度、および強い収縮をシミュレートできることを理解されたい。もし、CIM16とプログラム15aと接続されれば、収縮は、規則的に間隔が開けられ、母体の子宮内の圧力は、図14を用いて説明されるように、プログラムによって表示することができる。
【0033】
図4に戻ると、胎児シミュレータ302は、臍帯302aおよび胎盤302bを有し、母体シミュレータの内部に配置された取外し可能なステージ325上に位置を占めるように描かれている。取外し可能なステージ325は、嚢(図示せず)、ライン325a、および球325bを有している。空気を嚢に汲み上げるために球325bを使用すると、ステージ325、従って胎児シミュレータ302はやや上方に上がる。カバー324(図5a)で覆われた場合には、ステージ325が上昇すると、ユーザは、胎児シミュレータ302をカバーを通して触診して位置を評価するとともに、レオポールト(Leopold)操作を実行できるようになる。別の実施形態において、球325bは、例えば電動の空気作動式ポンプなど、代替のポンプで置換えてある。電動ポンプは、コンピュータまたはその他の装置により遠隔制御しても良い。
【0034】
出産器具326は、後述のように、胴体部316の内側に配置されている。カバー324は、前記シミュレータの胎児シミュレータ302および出産器具326を視界から隠している。そのため、子供の出産プロセスをより正確にシミュレートし、ユーザの治療能力を試す。ステージ325が取外されると、出産器具326は、手動クランク(図示せず)により、またはモータのオン・オフを行うとともに操作速度を決定するための制御手段とライン326bを介して接続する小型モータ326aによって操作することができる。
【0035】
第一の実施形態において、プログラム15aのソフトウェアは、図14に関して後述するように出産器具326を制御する。別の実施形態では、制御手段は、制御ボックス328および制御ボックス328をCIM16に接続するライン330である。図5bを参照すると、前記制御ボックス328は各々シミュレータ14をオン・オフし、子供の出産を停止・再開し、分娩速度を決定し、胎児の心拍数を設定するためのコントローラ328a〜dを有している。
【0036】
図6および図7を参照すると、母体シミュレータ300の胴体部316は、胎児シミュレータ302を露見させるために、カバー324を取外した状態で図示してある。胎児シミュレータ302は、母体シミュレータ300の体腔333内に設けられ、頭部334、取付けられた胴体部336を、前記胴体部に取付けられた腕338a〜bおよび脚340a〜bとともに有している。頭部334は柔らかいので吸引分娩が可能であり、ユーザが吸引することができる口および鼻を有している。
【0037】
その点で、いくつかの実施形態において、胎児シミュレータ302は、分娩中に胎児シミュレータ302に加えられた力の量を監視するために首、肩、および股関節部に配置された力センサ(図示せず)を有する。頭部334を引っ張ると、首のセンサからの信号が生成される。力の量は、ユーザ・インターフェースにより、ユーザおよび/または指導者に中継される。ユーザ・インターフェースは、図形表示や可聴信号を含む。例えば、ユーザ・インターフェースは、かかっている力の量を表示する棒グラフを生成するものであっても良いし、また、ユーザ・インターフェースは、力が所定の閾値を超えた時にピーッと言う音またはその他のアラーム音を発生して、かかっている力を低減するように、あるいは異なる分娩法を用いるようにユーザに促すものであっても良い。一実施形態において、最大の力の閾値は約40力ポンドである。一実施形態において、望ましい力の範囲は約17〜20力ポンドである。肩娩出異常は、致死の可能性もある状態であり、胎児の肩が母体の恥骨の後ろに引っかかるものである。過度の力は、胎児に脳神経叢を、また、エルブ麻痺(Erb’s palsy)さえをも起こし得る。致死の可能性もあるこの状態をシミュレートするために、胎児シミュレータ302の左右の肩に肩センサを含めることにより、肩に加えられた力を監視する。最後に、骨盤位経膣分娩などの様々な状況のため、脚340a〜bをつかんで膣から取出すことになり得る。股関節部センサは、このような状態で胎児シミュレータ302に加えられた力を監視する役割を果たす。いくつかの実施形態において、センサ30は、特定のセンサが監視するようになっている測定値を示す出力信号を供給するために動作可能な出力装置と通信する。出力装置は、電気信号、ワイヤレス信号、または他の適切な出力信号を出力することができる。
【0038】
臍帯および胎盤302a〜b(図4)は、図を簡略化するために除去されているが、胎盤302b(図4)は、任意の個数の共通の方向、例えば、正常な底の位置、低い位置、または前置胎盤に設けられ、従来の解除可能なファスナーによって体腔333に取り付けることができると理解されるべきである。同様に、臍帯302a(図4)は、種々の複雑な状況を模倣するように提示されることができ、胎児シミュレータ302への接続ラインを収容して、臍帯パルスがユーザによって感じられるようにし、または、必要であれば胎児シミュレータ302へ電流を伝達することができる。
【0039】
受け部342が胎児シミュレータ302内に設けられて、出産器具326が胎児シミュレータを保持できるようにしている。前記受け部342と同様に、他の受け部が、胎児シミュレータ302の種々の部分に、骨盤位出産のシミュレーション用などに企図され、胎児シミュレータ302は、関節接合されているので、種々の骨盤位分娩、例えば、完全なもの、明白なもの、および逆子のような骨盤位分娩をシミュレートすることができる。
【0040】
出産器具326は、胎児シミュレータ302の受け部342と協動して胎児シミュレータ302を保持するピストン部346の突起344を有している。いくつかの実施形態において、受け部342および突起344により、胎児シミュレータ302は選択的に母体シミュレータ300と係合し、かつ母体シミュレータ300から解放されるという選択的な係合ができるようになっている。描写された実施形態において、ピストン部346は、駆動システムによって駆動され、この駆動システムは、小型電動モータ、歯車、リセット可能な電気論理回路、ピストン部の位置を決定する手段、および前進・逆転機能を有している。ピストン部346は、一組の軌道347a〜bに沿って下方に進み、それによって、胎児シミュレータ302を母体シミュレータ300の外へ移動させる。
【0041】
ピストン部346の突起344は回転可能であり、出産器具326は、それによって胎児シミュレータ302の回転および並進運動の双方を発生させて、現実に近い子供の出産シナリオをシミュレートする。その際、胎児は回転して、鼻が下になる正常な排臨(crowning)位置に来る。排臨後、胎児はさらに回転して、胎児の肩が産道をうまく通過することができる。いくつかの実施形態では、受け部342は、胎児シミュレータの別の部分、例えば、頭部、首、肩、腕、股関節部、および/または脚内に配置される。受け部342および突起344の別の実施形態は、図24〜27に関して後述する。
【0042】
一実施形態において、ピストン部346のレバー346a〜bは、操作可能なように突起344と接続され、各々、カム348a〜bと係合し、回転を生み出す。ピストン部346が軌道347a〜bを降下すると、ピストン部のレバー346a〜bは固定されたカム348a〜bと順番に係合し、各レバーを動かす。レバーの動きは、突起344を回転させる。ついには、各レバーは、レバーが各カムを離れるポイントまで動かされる。カム348a〜bは、産道をシミュレートした軌道347a〜bに沿った回転を望む場所に置かれていることが認められる。このように、胎児の内部の回転は、カム348aと係合するレバー346aによって生じ、胎児の外部の回転は、カム348bと係合するレバー346bによって生じる。図28に関して後述するように、いくつかの実施形態において、カム348a〜bは胎児シミュレータを回転させる位置と胎児シミュレータを回転させない位置との間で動くことができる。さらに、いくつかの実施形態において、カム348a〜bは、胎児シミュレータにいくらかの回転を与えるための中間位置を含む。あるいは、プログラム15aが、図14に関連して後述するように、0度から180度まで突起344の回転の調節を可能にする。どちらの実施形態においても、胎児302は、後述するように、拡張可能な子宮頸部350を介して通過する。
【0043】
図8および図9を参照すると、拡張可能な子宮頸部350は、体腔333に子宮頸部の位置を保持するために取付けたフラップ353a〜bを有するリング352を有する。従って、フラップ353a〜bは、取付けられたスナップ、フック、および環状のファスナー、または他の解除可能な結合手段を有しても良い。壁部354は、前記リング352と接続し、好ましくはLycra(登録商標)のような弾性部材または熱可塑性エラストマーで形成されるのが良い。壁部材から成るギャザー356は孔358を画定する。ギャザー356は、取付けられたエラストマー要素を内部に設けて孔358の弾性を高めるようにしても良い。あるいは、壁部354自体が十分な弾性を持つようにしても良い。
【0044】
胎児シミュレータ302が孔を介して押されると、孔358は直径で約2〜10センチメートルに拡張し、胎児のミュレータの頭部334の形状および壁部354の弾性のために、拡張は、自動的に胎児の降下と一致するようにシミュレートされる。ユーザは、それから子宮頸部拡張の測定を実行し、かつ、分娩記録(パートグラフ、partograph)として、分娩の進展を図に描く。壁部354の弾性は、例えば、より厚いまたはより薄い壁部材を使用することにより調節可能であり、こうして通常よりもより速くまたはよりゆっくりとした拡張をする子宮頸部を作り出す。子宮頸部350は、カバー用の複数のスナップ324aとともに、恥骨360を有する骨盤領域320に同軸的に設けられている。
【0045】
胎児シミュレータ302は、子宮頸部350を通じて、体腔333から、外陰部362を通って出される。外陰部362は、柔軟な素材で形成され、ユーザが外陰部を操作し、または頭部334を娩出するために会陰切開を実行することができる。外陰部362は、尿管や直腸のような特徴を有する挿入物の一部(図示せず)を有しても良く、この挿入物は、種々の患者の状態を示すために、他の性器の挿入物と置換えることができる点を理解すべきである。出産の後、前記ユーザは、分娩後の実習、例えば、子宮挿入物(図示せず)を所望の大きさに戻すようなマッサージ、保持された胎盤部分(図示せず)の除去、または子宮頸部350または外陰部362の修復の実行をしてもよい。
【0046】
一実施形態において、胴体部316は、シミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。心臓(図示せず)は、患者の状態に応じておよび治療上の介入に応答して、プログラム15aにより制御される拍動性の流れの作用によって脈打つ。触診できる脈は、頸動脈、上腕、橈側、大腿部、および、足、背の位置で見出すことができる。特定の脈の位置は、収縮期血圧が落ちると触診できず、脈が存在するかしないかは、シミュレートされた血圧に依存する。心音は、聴診器12jを通して適当な位置で聞こえる。心拍動は、プログラム15aによって決定される仮想心電図(electrocardiograms:EKGs)に同調する。聴診器12jを血圧測定用加圧帯12d(図2)よりも下のポイントに当てると、妥当なコロトコフ音が聞こえる。
【0047】
母体シミュレータ300は、換気手段の組合せを表示し、肺および気道の音が、聴診器12jを用いて適当な位置で聞こえる。シミュレータ300は、肺におけるガス交換および薬品の投与のような介入への反応を含むような与えられた状況での目標とした動脈血のガスを実現するように自発的に呼吸し、一回換気量および生理的状態に関連する胸郭の上昇の量を表示する。通常のガス交換の肺の力学は、仮想的なものであり、一回換気量(tidal volume:TV)、機能的残気量(functional residual capacity:FRC)および吐出された二酸化炭素(CO2)を決定することができるプログラム15aによって制御される。気道の抵抗、肺、および胸の壁部のコンプライアンスもまた、プログラム15aによって制御される。
【0048】
心臓および肺は、気道の換気および心臓の圧迫(圧縮)を確立する圧力変換機と接続されている。例えば、空気ラインが、気管の壁部またはシミュレータ300の肺に取付けられ、CIM16に接続したセンサ回路と接続され、心肺蘇生術(cardiopulmonary resuscitation:CPR)による換気がシミュレータで実行された場合に、CIM16は換気処置の圧力および体積のタイミングおよび大きさを、空気ラインおよびセンサを介して監視する。同様に、圧縮嚢が、シミュレータ300の心臓または胸腔内に埋め込まれて、CIM16に取り付けられた圧縮センサ回路に空気ラインが接続した場合に、CPR胸圧迫手順の正しいタイミングおよび大きさを検知しかつ確認する。圧迫および換気データは、ライン36を介してCIM16によって、検知された圧力波から得られることが認められよう。血圧、心拍数、および酸素飽和は、血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯30d(図2)およびパルス酸素濃度計帯で仮想的に測定されるが、表示されるデータはプログラム15aが発生する。
【0049】
図10を参照すると、新生児シミュレータ302’は、胎児シミュレータ302(図8)と置換えるために使用されて、プログラム15aによって、新生児の蘇生の実行を可能にする。別の実施形態において、胎児シミュレータ302自体を出産後のシミュレーションに用いる。その点で、胎児シミュレータ302は、本明細書で説明した新生児シミュレータ302’の機能および特徴の全てを有することができる。新生児シミュレータ302’は、髪372、目374a〜b、鼻376、および口378を有する頭部370を有している。頭部アセンブリは、従来の気道の付属物を受入れることができる現実に近い気道(図示せず)と、従来の気道の付属物が置かれているか否か、または流体が通過したか否かを調べるためのセンサとを有している。頭部370は、首380を介して胴体部382と接続されている。
【0050】
全体として30(図1a)で表されているセンサは、新生児シミュレータの皮膚の上(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下(模型内として表されている)に配置されていても良い。ライン36"は、センサ(図示せず)をCIM16に接続するため、また、電気的、空気作用的、または流体的接続を行うために、胴体部382から前記まで突出している。胴体部382は、カテーテル法のための臍の位置384と、CPRを実行するためのシミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。心臓および肺は、母体のシミュレータ300について上述したように、気道換気および心臓の圧迫を確認するために圧力変換機と接続されている。新生児シミュレータ302’は、心拍数、脈拍、酸素供給、および聴診器12j(図2)または従来の聴診器を使用して検知可能な種々の体音を含む母体シミュレータ300(図6)と同様の特徴の多数を表す。一対の腕386a〜bおよび一対の脚388a〜bも胴体部3382と接続している。
【0051】
一実施形態において、手および足は、顔および上部胴体部とともに、適当な血液への酸素の送り込みまたは酸素不足により色彩を変化させる。血液への酸素の送り込みが減少すると、まず両手両足が色彩を変化させ(末梢性のチアノーゼ)、続いて顔および上部胴体部が色彩を変化させる(中枢性のチアノーゼ)。そのような変化は、血液中の酸素の送り込みが進むにつれて可逆性がある。
【0052】
最良の実施形態において、着色は、(例えば、イリノイ州ChicagoのKeystoneから入手できるReversatherm Blue Type Fのような)青の感熱着色染料約3グラムを透明なビニル樹脂のペイントシンナー10グラムに溶かし、透明なビニル樹脂ペイント300グラム中に分散させたものを用いて実現する。その混合物は、手、足、胸および顔に塗られる。室温で、前記新生児は青である。抵抗ヒータ(ミネソタ州MinneapolisのMinco Productsから入手可能なものなど)を並列に接続して皮膚の下に置き、5〜15ワット/平方インチまたは、皮膚の表面温度を約115℃に上昇させるのに十分な熱エネルギーを加えて、青い色彩を消去させる。ヒータの電力は、CIM16を介して供給される。末梢および中枢用のヒータは別々に制御されて、中枢性のチアノーゼを起こさない末梢性のチアノーゼの発症を可能にする。ヒートシンクをヒータとともに設け、より迅速な冷却、従って、より迅速な色彩の変化を可能にすることもできる。
【0053】
一実施形態において、感熱着色システムは、論理的にプログラム15aと接続され、例えば、指導者が、新生児の条件を明確に定める。その後、着色は、ユーザによって実行されるCPRの質に対応し、向上、悪化、現状維持のいずれかとなる。プログラム15aは、また、色彩の変化を望まないならば、オーバーライドを提供する。あるいは、着色は、従来の光互変性物質をシミュレータに塗ることによってシミュレートして、関係する調節可能な紫外線に晒すと、シミュレータが青色に変わるように見えるようにする。別の代替として、着色は着色された光によってシミュレートしても良い。例えば、一態様によれば、青い発光ダイオード(light emitting diode:LED)を用いることができる。
【0054】
母体シミュレータに関して上述したように、いくつかの実施形態では、新生児シミュレータはライン36"を有さない。むしろ、そのような新生児シミュレータはテザーレスであり、外部装置への配線、チューブ、またはその他の物理的接続を必要とすることなく、独立して機能する。
【0055】
図11を参照すると、出産システム500は、先の実施形態の使用を図示する。シミュレータ14は、例えば、母体シミュレータ300および胎児シミュレータ302がテーブル502上に置かれている。学生W、X、Y、およびZは、テーブルの周囲の位置を占め、例えば、Wが薬物治療を監督し、Yが仮想器具12を監督し、Xは麻酔を監督し、Zは産科学を監督する。出産器具326は、上述したように、手動クランクを介して、または、制御ボックス328と接続された小型モータ326aによって駆動され、または、コンピュータ15のプログラム15aは、選択的に出産器具326を制御することができる(模型で示されている)。どちらの制御手段が使用されても、拡張性の子宮頸部は正確に胎児シミュレータの産道の降下の進行を反映する。ついには、上述したように、胎児シミュレータは娩出される。
【0056】
胎児シミュレータが一旦出産されると、チームW’、X’、およびY’(これらは、W、X、Yと同一の学生、または、クラスの規模に応じた他の者)は、テーブル502’上で新生児の看護を実行するために経路1に沿って移動する。Zが欠如した少なくとも1のチームは、モニタリングおよび安定化させる可能性のために母体シミュレータとともに後に残る。胎児シミュレータは、新生児シミュレータ14’、例えば、新生児シミュレータ302’に切り換えられる(図10)。もしコンピュータと接続されると、プログラム15aは新生児蘇生に必要なものをシミュレートするために用いることができ、CPRおよび他の緊急性の看護のプロトコルが実行されても良い。プログラム15aは、シミュレータが受ける看護をCIM16および仮想器具12を介して監視し、認められた標準とこの看護を比較する。
【0057】
一方、コンピュータ15のプログラム15aは、母体蘇生に必要なものをシミュレートするために用いても良い。もしそうする場合、1チームは、経路2に沿って移動して、テーブル502"において母体の看護を実行する。学生W"、X"、Y"およびZは、母体シミュレータ14"、例えば、胎児シミュレータが取外された母体シミュレータ300について作業することができる。CPRおよび他の緊急看護が与えられても良く、プログラム15aは、CIM16および仮想器具12を介してシミュレータが受ける看護を監視する。
【0058】
図12を参照すると、プログラム15aの導入部の画面ディスプレイ400が、コンピュータ15上に示され、ユーザに対して患者の看護プロトコルを教授する。ディスプレイ400は、いくつかの装飾用特徴を有している。すなわち、標題のボックス402、胎児心拍数ボックス404、母体の子宮内圧ボックス405、生命徴候ボックス406、および超音波ビデオボックス407である。ディスプレイ400は、また、教授ボックス408、テストボックス410、および仮想器具教本ボックス412を有する。後述するように、いくつかモジュールにおいて、プログラム15aは、ユーザの活動に関する情報と予め定めた標準とを比較する。
【0059】
画面ディスプレイ400は、プログラム15aによって提供される選択可能な患者看護モジュール414a〜pの集合を表示し、前記モジュールは、医療の主題および関連する概念についての情報を提供する。各モジュールは、単一の主題を有し、ユーザのためのインタラクティブ患者看護訓練セッションを表示する。モジュール414a〜gは、教授ボックス408に設けられ、関連の生理学、妊娠、合併症、陣痛・分娩、および出産、分娩後、および母体および新生児の蘇生プロトコルの全体像を与える。モジュール414h〜jはテストボックス410の中に置かれ、指導者が定めたプロトコル(コードメーカ:Codemaker)とともに、母体および新生児蘇生プロトコルについてユーザをテストする機会を与える。プログラム15aを終了させる終了(Exit)ボタン415もテストボックス410内に配置されている。モジュール414k〜pは、仮想器具教本ボックス412内に配置され、ユーザに自動出産、胎児超音波、胎児仮死モニタ、生命徴候、分娩記録、および心肺音を含むシステムの使用についての指導を与える。
【0060】
図13を参照すると、もし、モジュールの1つ(図12)が、例えば音声認識またはコンピュータ15のマウスによる選択によるなどして、ユーザにより選ばれると、プログラム15aはディスプレイ画面416を表示する。ディスプレイ画面416は情報ボックス418を有し、情報ボックス418は主題別の情報を含有する。ディスプレイ画面416は、また、選択されたモジュールの主題に固有の情報カテゴリーを挙げる情報項目(便宜上、A〜Dで示す)を含有するメニューバー420を有している。1つの項目を、メニューバー420を介して画面416から選択することができ、各モジュール414a〜pは、特定の情報項目A〜Dについてのそれ自体のメニューとともに、それ自体のディスプレイ画面を有しており、各項目は、多数の項目を含有するように拡張され、または、例えば、項目の下の選択可能なサブ項目を配置することにより圧縮されることができることを理解すべきである。
【0061】
収容項目とは異なるメニューから項目を選択すると、選択されたメニュー項目に関するテキストおよび/または図が、情報ボックス418内に表示される。実習中、プログラムは新規ディスプレイ画面(図示せず)を生成することができる。従って、情報画面416は、任意の数の画面の例として使用され、さらに、そのような画面は、各項目について、一連の順序で、または一組で表示できることを理解されたい。ディスプレイ画面416のような一組の画面は、選択されたメニュー項目に対する患者治療プロトコルに関する指導を構成する。こうして、前記ユーザは、適当なモジュールおよび項目を選択しそれから一組の画面を介してナビゲートすることによって、主題のライブラリからの情報を検討することができる。一組の画面でのナビゲーションは、ユーザが、3つのボックス422、424および426、各々「戻る(Back)」、「次へ(Next)」、および「終了(Exit)」」であって、一組の中での逆方向または前方向への進行のような画面上の対応する機能を有する前記ボックスの間で選択することによって達成される。もし、「戻る」または「次へ」の機能が不可能であるならば、各々、一組の第1および最後の画面の場合であるので、前記ボックス422または424は、選択不能である。
【0062】
例えば、モジュール414fおよび414gは、各々、一組を発生させて、ユーザに母体および新生児の蘇生について、各々教授する。ユーザは、また、上記の母体シミュレータ300または新生児シミュレータ302’のようなシミュレータ14(図1a)上においてCPRを実行することができ、プログラム15aはCIM16(図1a)およびセンサ30(図1a)を介して、ユーザの圧迫および換気を検知する。シミュレータ14の心肺は、気道の換気および心臓の圧迫を確立する圧力変換機と接続され、例えば、空気ラインは、シミュレータ14の気管壁部内に設けられ、CIM16と接続したセンサ30と接続され、CPRによる換気がシミュレータで実行される場合に、CIM16は換気活動の圧力のタイミングおよび大きさおよび体積を、空気ラインおよびセンサを介して監視する。同様に、圧縮嚢が、前記シミュレータ14の胸の空洞内に埋め込まれて、空気ラインによってCIM16に取り付けられた圧縮センサ30に接続した場合に、CPRの胸の圧迫手順の正しいタイミングおよび強さを検知しかつ確認する。プログラム15aは、ユーザの活動に関する情報を予め定めた標準と比較し、インタラクティブな訓練のセッションを提供する。
【0063】
予め定めた標準は選択可能であり、米国心臓学会(American Heart Association)などによって定められた一次救命処置(basic life support:BLS)および二次救命処置(advanced cardiac life support:ACLS)のガイドラインを含有する世界中で使用されている医療プロトコルを反映する。心肺蘇生術(CPR)の少なくとも7つの主要なプロトコルが格納され、ユーザによって選択可能である。さらに、ユーザは、プロトコルを更新しまたは入力し、そして、心臓の圧迫および気道換気の深さ、持続時間、および振動数に関する局所的なプロトコルを反映する「新プロトコル」を格納することができる。プログラムは、一組の許容限界を用いて、CPRをテストするための新しいCPR波形を生み出す。
【0064】
図12に戻ると、テストボックス410からテストモジュール414h〜jを選択すると、プログラム15aの実行が指示され、母体蘇生および新生児蘇生、および緊急事態のシナリオに対する他の対応のような患者看護プロトコルにおけるユーザのテストに役に立つテストシーケンスを提供する。プログラム15aは、患者の苦痛のシナリオの手順を通じてゆっくりと進み、ユーザに予め定めた時間を与えて対応させ、または要求される作業を完了させ、これによって、ユーザが緊急事態における困難を経験することを可能にする。例えば、プログラム15aは、患者を治療するためにユーザが選択しなければならない選択肢を提供することによって、ユーザをテストすることができ、そこでは、ユーザは、シーケンスが次の事象に進む前に正しい選択を実行しなければならない。プログラム15aは、ユーザが、CIM16へ入力を供給するため仮想器具12およびセンサ30の接続を有効化、無効化、またはチェックできるようになっている。
【0065】
仮想器具12(図2)が使用可能である場合は、仮想器具12を使用して、ユーザがシミュレータ14上で患者の看護活動を実行することができるが、対応の結果およびその質はプログラム15aによって監視される。あるいは、ユーザはプログラム15aで生成された、ソフトウェアでシミュレートされた器具12’(図1b)を使用しても良い。プログラム15aは、患者が蘇生(回復)するまで前記シナリオに沿って進み、ユーザの応答の現状の批評を、正しくない各選択および各動作の説明とともに提供する。テストモジュール414h〜jの特徴は、ユーザが、シナリオによって予め定められた動作シーケンスがシミュレータ14に圧迫/換気のサイクルの予め定めた個数を有するように指定でき、またはユーザがシミュレータ14に実行した圧迫および換気行為の時間および強さを記録でき、または現実に近い音を聞くために選択肢の集合の間で選択できることである。
【0066】
テストは、上述したように、プログラム15aによりまたはユーザにより定められることができる。例えば、コードメーカのテストモジュール414j(図12)を選択すると、第1のユーザ、例えば、指導者が、シナリオを発生させて、第2のユーザ、例えば、学生をテストすることが可能である。前記第1のユーザは、性別、体重、年齢、患者の適応症、生命徴候および心臓のリズムのような情報であって、現実的に生命徴候ボックス406(図12)に反映される情報に関する一組の予備的な患者パラメータを入力することによって、テストのシナリオをもった患者シミュレータを定めることができる。指導者が定めたテストシステムは、指導者が地域的、国内的、または国際的な患者看護プロトコルにより学生をテストできるようにする。多数のアルゴリズムが、ファイルを開くことにより選択可能であり、そこには、BLS、ACLS、小児科,および産科(Obsteric:OB)の緊急事態を有している。他のアルゴリズも生成して格納することができ、アルゴリズムは、相互にリンクしても良い。このモジュールの利点としては、指導に関する柔軟性および主題の把握を検知する力などがある。指導者が定めるアルゴリズムは、おそらくは周知の構造を持つアルゴリズムとは異なるであろうが、そうすることにより、学生による応答の丸暗記の問題を避けることができる。
【0067】
動作は、例えば、学生が仮想器具の中から選択して患者の看護活動を行うために使用する、という学生による条件に応答してなされる。学生は、それから、仮想的に患者看護活動を実行し、または有形のシミュレータを使用することができる。
【0068】
仮想器具教本ボックス412のモジュール414k〜pは、出産シナリオで一般的に使用される器具についての情報を提供する。いくつかの例では、患者看護プロトコルによって仮想器具12のいくつかをシミュレータ14で使用する機会が提供される。
【0069】
図14および図15に進む。出産プロセスの全体は、プログラム15aを介して、ユーザが単に初期条件、例えば、分娩時間430、分娩の概観432および圧迫の強さ434を定めるだけで、自動化することができる。ワープ機能は、16時間から5分への完全な分娩の短縮を可能とする。出産は、胎児シミュレータ302を突起344に置くこと、および、カバー324を母体シミュレータ300に置くことから成る。プログラム15aは、また、ピストン部346の進行速度の変更を可能にする。すなわち、最初の2〜3センチメートルは、最後の2〜3センチメートルよりもよりゆっくりと進行し、出産をより良くシミュレートする。
【0070】
図16を参照すると、もし、モジュール414m(図12)が選択されるならば、胎児仮死モニタに関する一組の画面が、指導上の情報とともに示される。例示した胎児仮死モニタ・ボックス436が、モニタをオンするための選択可能なオン(ON)ボタン436aとともに描かれている。胎児仮死モニタ12lは、シミュレータ14と協働して、胎児心臓モニタが母体シミュレータ300(図5a)のカバー324上に置かれ、少なくとも1のセンサ30と相互作用するが、圧迫モニタは、カバー上に設けられた別のセンサ30と相互作用する。
【0071】
図17を参照すると、新生児シミュレータ600は、胎児シミュレータ302と置換えるために使用されて、プログラム15aによって、新生児の蘇生の実行を可能にする。一実施形態において、新生児シミュレータ600は実質的に、在胎期間28週の平均的なサイズの新生児のサイズである。別の実施形態において、新生児シミュレータ600は実質的に、在胎期間40週の平均的なサイズの新生児のサイズである。新生児シミュレータ600は、心拍数、脈拍、酸素供給、および聴診器12jまたは従来の聴診器を使用して検知可能な種々の体音を含む母体シミュレータ300と同様の特徴の多くを表す。さらに、後述するように、新生児シミュレータ600は、種々の機能を正しく作動させるためにかさばる外部コンプレッサや電源など外部装置への配線またはチューブによる接続を必要としない、という点で、独立式である。新生児シミュレータ600は可搬式である。いくつかの実施形態では、新生児シミュレータはテザーレスであり、他の外部装置への配線、チューブ、またはその他の物理的接続を必要とすることなく、機能する。
【0072】
新生児シミュレータ600は、毛髪604、目606および608、鼻610、および口612を有する頭部602を有している。頭部602は、首614を介して胴体部616と接続されている。胴体部616は、カテーテル法のための臍の位置618を有する。胴体部616は、また、男性器および女性器の両方のピース(図示せず)を受けることができるようになった互換性のある性器の位置620を有する。2本の腕622および624が、胴体部616の上方に接続され、そこから延出する。2本の脚626および628が、胴体部616の下方に接続され、そこから延出する。
【0073】
全体として30で表されているセンサは、前述のように、種々の特徴をシミュレートするために、新生児シミュレータの皮膚の上(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下(模型内として表されている)に配置されていても良い。胴体部616は、CPRを実行するためのシミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。一態様において、心臓および肺は、母体のシミュレータ300について上述したように、気道換気および心臓の圧迫を確認するために圧力変換機と接続されている。胴体部616は、また、電源およびワイヤレス通信装置など、他の部品を含む。一実施形態において、電源は、リチウムイオン電池5セルの充電可能なパックである。一態様において、電源は、通常は肝臓用に取ってある領域に配置する。
【0074】
新生児シミュレータ600の機能の全てを在胎期間28週または40週の新生児のサイズのマネキンに納めるため、多数ある電子部品は適切なサイズにし、必要とされる位置でマネキン内に正確に配置しなければならない。一実施形態において、新生児シミュレータ600の電子部品は、一般的なマザーボード上に配置するのではなく、機能に応じて、より小さいモジュールにまとめられている、例えば、図18は、新生児シミュレータ600で用いるものとして可能な一組のモジュール630を示す。この一組のモジュール630は、新生児シミュレータ600をコンピュータに連結するマスター・モジュール632と、ECG信号を発生するモジュール634と、心音、肺音、声、およびコロトコフ音などの音声を発生するモジュール636と、胸の圧迫、気道の換気、血圧、およびコンプレッサなどの圧力を検知するモジュール638と、挿管を監視するモジュール640と、バルブおよびLEDを駆動するモジュール642と、ワイヤレス・インターフェースおよびUSB?RFなどの接続を提供するモジュール644と、声用の音を作成するモジュール646と、声以外の音を作成するモジュール648とを有する。これらのモジュール632〜648の1若しくはそれ以上を組合わせて、新生児シミュレータ600の特徴をいくつでもシミュレートすることができる。
【0075】
図19を参照すると、新生児シミュレータ600は、口612および鼻610経由でアクセス可能な、現実に近い気道650を有する。気道650は、従来の気道の付属物を受入れることができ、例えばモジュール640などのようなセンサが、従来の気道の付属物が置かれているか否か、または流体が気道を通過したか否かを調べるために配置されている。一実施形態では、モジュール640は、例えば気管内チューブのような気道の付属物の位置を監視し、この付属物の位置が高過ぎる、低過ぎる、またはちょうど良いことを調べる光学センサである。新生児シミュレータ600は、また、シミュレートされた胃に向かって胴体部616へ延出した、シミュレートされた食道652を有する。
【0076】
図20を参照すると、新生児シミュレータ600は、また、呼吸、脈拍、および関連した新生児の生理的状態をシミュレートするための空気供給システム654を有する。空気供給システム654は、マフラー656、コンプレッサ658(ニュージャージー州のT?Squared Pumpsから入手可能なT2?03?E型のようなシングル・ダイアフラム・コンプレッサであっても良い)、チェックバルブ660(適切なバルブはフロリダ州のGulf Controlsから入手することができる)、コンプレッサ・コントローラ662、一次アキュムレータ664、および二次アキュムレータ666を含む。あるいは、コンプレッサはロータリー・コンプレッサまたはその他の適切なコンプレッサであっても良い。
【0077】
操作において、空気供給システム654は、以下のように加圧空気を新生児シミュレータ600に供給する。大気668またはタンクからの空気が、入力マフラー656を通ってコンプレッサに入る。コンプレッサ・コントローラ662は、一次アキュムレータ664内の圧力を維持するために用いる。チェックバルブ660は、空気フローが確実に正しい向きとなるようにする。二次アキュムレータ内で予め定められた圧力を維持するために、圧力調整器(図示せず)を用いることもできる。一次アキュムレータおよび二次アキュムレータは、新生児シミュレータ600のアクチュエータに接続され、空気の供給を制御する。一実施形態において、一次アキュムレータはアクチュエータに接続されて、気道650への空気供給を制御する。一実施形態において、二次アキュムレータはアクチュエータに接続されて、肺への空気供給を制御する。コンプレッサ・コントローラ662は、選択的に電力をコンプレッサ658に供給し、一次アキュムレータ内で望ましい圧力を維持する。一実施形態において、望ましい一次アキュムレータの圧力の概略値は4.5〜5.5psiであり、望ましい二次アキュムレータの圧力の概略値は1.5psiである。いくつかの実施形態において、空気供給システム654は、さらに、シミュレートされた循環系に接続されて、シミュレートされた脈拍を提供するなど、シミュレートされた循環系を促通する。
【0078】
空気供給システム654の部品は、システムが発生するノイズを最低限に抑えるように配置、絶縁、および弱音化されている。ユーザは聴診器を用いて新生児シミュレータ600の心臓や呼吸を評価するのであるから、空気供給システム654からの過度のノイズはユーザにとって邪魔になり、気が散る原因となる。そのために、空気供給システム654の一部を新生児シミュレータ600の頭部602および両手両足(腕622、624および脚626、628)内に収納しても良い。
【0079】
例えば、一実施形態によると、コンプレッサ658、チェックバルブ660、およびコンプレッサ・コントローラ662は頭部602内に配置され、マフラーおよびアキュムレータ脚626、628内に配置されている。頭部の部品により発生するノイズは、図20に概略を示した音緩衝エンクロージャ672により遮断される。一実施形態によると、音緩衝エンクロージャ672は、遮音体として機能する第一の層と、マスバリヤとして機能する第二の層とを有する2層システムである。一態様において、遮音体およびマスバリヤは、EAR Specialty Compositesからの雑音防止物質で形成されている。さらに、コンプレッサ658が発生する排気は、新生児シミュレータ600の脚626、628の中へ送られる。各脚626、628は、マフラーシステムおよび空気タンクを含む。マフラーシステムは「うるさい」排気を緩衝し、新生児シミュレータ600で呼吸および脈拍のシミュレーションに用いる「静かな」空気をタンクに供給する。一態様において、脚626、628自体が、空気タンクとして機能し、漏れを防止するために密閉されている。
【0080】
図21は、マフラーシステム674の一実施例を示す。マフラーシステム674は、うるさい空気の音を緩衝する3つの離れた部分676、678、および680を有する。各部分676、678、および680は各々、遮音体として機能する第一の層682、684、および686と、マスバリヤとして機能する第二の層688、690、および692とを有する。一態様において、遮音体およびマスバリヤは、音緩衝エンクロージャ672として上述したEAR Specialty Compositesからの雑音防止物質と同様なもので形成されている。うるさい空気はチューブ694を介してマフラーシステム内へ送られる。次いで、静かな、すなわち緩衝された空気が、チューブ696を介してマフラーシステムから出る。一実施形態において、各脚626、628は、マフラーシステムの他、雑音防止物質を裏張りしてあり、ノイズをさらに弱め、緩衝する。
【0081】
一実施形態において、手および足は、顔および上部胴体部とともに、適当な血液への酸素の送り込みまたは酸素不足により色彩を変化させる。血液への酸素の送り込みが減少すると、まず両手両足が色彩を変化させ(末梢性のチアノーゼ)、続いて顔および上部胴体部が色彩を変化させる(中枢性のチアノーゼ)。そのような変化は、血液中の酸素の送り込みが進むにつれて可逆性がある。一実施形態においては、新生児の酸素がなくなった時間の長さによって色彩変化およびこれに対応する生命徴候の変化が開始する場所が決まり、新生児をうまく健康な状態に戻すために必要な作業が決まる。いくつかの実施形態において、シミュレータは、中枢部および末梢部の色彩を別々に変化させる機構を有する。この機構は、いくつかの実施形態では、青いLEDまたは他のライトを用いてチアノーゼをシミュレートする。
【0082】
一実施形態において、感熱着色システムは、論理的にプログラム15aと接続され、例えば、指導者が、新生児の条件を明確に定める。その後、着色は、ユーザによって実行されるCPRの質に対応し、向上、悪化、現状維持のいずれかとなる。比較すると、成人は酸素がなくても5〜10分耐えられる。母体または母体シミュレータ300は、正常な成人よりも速く酸素を使うため、より早く影響を受ける。他方、新生児は、酸素がなくても15分ほど耐えられるが、約30分で死亡する。従って、低酸素事象が5〜7分である場合、新生児シミュレータ600はかなり簡単に「ピンク色に戻る」。低酸素事象が12〜15分である場合、回復はより遅く、ユーザ側の作業がより多く必要となる。さらに、低酸素事象が20分を超える場合、エピネフリンを使ったとしても、ユーザが新生児シミュレータ600を「ピンク色に戻す」ことは非常に難しく、新生児シミュレータ600は死亡したり、脳性麻痺のような一生涯続く疾患を負うことになり得る。
【0083】
一実施形態において、指導者は、図22の画面ディスプレイ700で示したように、新生児シミュレータ600のチアノーゼの程度を選択することができる。画面ディスプレイ700には示されていないが、指導者は、また、新生児シミュレータ600の腕622、624および脚626、628の筋緊張度(例えば、ふにゃふにゃ、適度に柔軟、動きなど)や「発語」(例えば泣き、うめき、喘鳴など)など、新生児シミュレータ600のその他の属性を選択または定義することができる。新生児シミュレータ600の生命徴候および回復は、図23に示したように、ディスプレイ702を用いて監視することができる。プログラムは、また、色彩の変化を望まないならば、オーバーライドを提供する。
【0084】
図24〜27において係合システム740が示されており、このシステムは、胎児または新生児シミュレータ302、600を母体シミュレータ300と選択的に係合させる受け部342および突起344のシステムの代替実施形態である、。係合システム740は、機構744と係合する機構742を有する。いくつかの実施形態においては、機構742は胎児または新生児シミュレータ302、600内に配置され、機構744は母体シミュレータ300内に配置される。一実施形態において、機構742は受け部342を代替し、また機構744は突起344を代替するようになっている。別の実施形態では、機構742は母体シミュレータ300内に配置され、機構744は胎児または新生児シミュレータ302、600内に配置される。
【0085】
特に図25を参照すると、機構742は、開口部746が貫通するように延びたハウジング745を有する。本実施形態において、開口部746は中心に配置され、実質的に円筒形である。別の実施形態において、開口部746は、その他の種々の断面形状を有することができ、これには多角形、不規則な形状、その他の形状などが含まれる。機構742は、また、ロック部748を有する。ロック部748およびハウジング745は、永久的に一緒に固定(例えば接着)されていても良いし、一時的に一緒に固定(例えばネジで嵌合)されていても良い。さらに、ロック部748および/またはハウジング745は、この2つのピース間の嵌合を行い易くするために、図示されていない追加的特徴を有しても良い。別の実施形態においては、ハウジング745およびロック部748は一体型のピースである。
【0086】
図26で示したように、ロック部748は本体749を有する。本体749は、機構742の開口部746と接合するようになっている。従って、本実施形態において、本体749は実質的に円筒形であるが、別の実施形態では、開口部746と合うような、その他の断面形状を有することができる。ロック部748は、さらに、ロックピン752を、図26に示した延出位置から、縮退位置へ動かすアクチュエータ750を有する。一実施形態において、ロックピン752の縮退位置は実質的に、ロック部の本体749内である。後述のように、ロックピン752を選択的に延出および縮退することにより、機構742が選択的に機構744と嵌合される。このようにして、胎児および新生児シミュレータ302は選択的に母体シミュレータ300と係合する。いくつかの実施形態において、アクチュエータ750は、ソレノイドによって選択的に作動する。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、アクチュエータ150に近接した胎児または新生児シミュレータ、または母体シミュレータ300内に配置される。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、機構742内に配置される。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、ワイヤレス装置またはコンピュータシステムで作動され、指導者が選択的に胎児または新生児シミュレータを解放することができる。
【0087】
特に図27を参照すると、機構744は本体754を有する。本実施形態では、本体753は実質的に円筒形であるが、別の実施形態では、その他の断面形状を有する。機構744は、また、係合部754を有する。係合部754は、実質的に正方形の断面形状を有するが、別の実施形態では、その他の断面形状を有する。係合部754は、さらに、これを通って延びた開口部755を有する。開口部755は、機構742のロック部748を受けるようになっている。係合部754は、また、ロック穴756を有する。ロック部748のロックピン752は、延出時に、ロック穴756と嵌合される。縮退時には、ロックピン752は、ロック穴756から縮退して、ロック機構748を係合部754から解放する。
【0088】
図28を参照すると、胎児または新生児シミュレータ302、600を選択的に回転させるシステムが示されている。前記システムは、カム348aを、胎児シミュレータを回転させる第一の位置と胎児シミュレータを回転させない第二の位置との間で動かすようになっている。このように、前記システムは、出産のシミュレーション中に胎児シミュレータを選択的に回転させる、または回転させないために用いることができる。いくつかの実施形態において、カム348aを軌道347a〜bに近接する位置に縮退させると、胎児シミュレータの回転が防止される。いくつかの実施形態において、カム348aは、第一の位置よりも回転量が少ない、いくらかの回転を胎児シミュレータに与えるための中間位置までさらに動くことができる。いくつかの実施形態において、カム348aは、複数の中間位置の間で動くことができ、各位置で、異なる回転運動量が可能になる。いくつかの実施形態において、前記複数の中間位置および前記回転運動量は連続的である。いくつかの実施形態において、前記複数の中間位置および前記回転運動量は離散的である。
【0089】
前記システムは、カム348aを選択的に縮退させるようになっているソレノイド760を有する。ソレノイド760は、延長部761および固定部材762を介してカム348aと接続されている。一実施形態において、固定部材762はボルト、スクリュ、その他のネジ部材、またはその他のカム348aを延長部761に接続する機構である。カム348aは、固定部材764および766を介して軌道347aに接続される。固定部材764および766は、いくつかの実施形態においては、ボルトおよびナットである。固定部材764および766は、また、カム348aが軌道347aに関して望ましくない並進および回転運動をすることを防止する働きもする。別の実施形態において、カム348aおよびソレノイド760は、軌道347aに沿って並進するようになっていても良い。さらに、いくつかの実施形態においては、カム348aは軌道347aに関して回転運動をするようになっていても良い。いくつかの実施形態において、カム348aの位置は、指導者またはコンピュータプログラムにより遠隔制御され、また、いくつかの実施形態においては、ワイヤレスで遠隔制御される。前記システムを軌道347aおよびカム348aに関して説明したが、同システムは軌道347bおよび348bにも当てはまる。
【0090】
例示的な実施の形態を示して説明してきたが、広範囲な修正、変更、および代替が前述した開示において意図され、いくつかの例では、本実施の形態のいくつかの特徴は、他の特徴を伴って使用せずに採用することができる。前述の記載において実施形態の範囲を逸脱せずにさまざまな変形態様を実施することができることを理解すべきである。例えば、システム10は、プログラム15aおよび/または仮想器具12およびセンサ30を単に修正することによって修正することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、広範囲にかつ実施形態の範囲と整合するように解釈されることが適当である。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は患者看護教授用インタラクティブ教育システムに関し、特に、患者看護活動の実施に当たって母体シミュレータと併用する仮想器具を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
実際の患者と接することを許可する前に患者看護プロトコルについて学生を訓練することが望ましいが、教科書やフラッシュカードには、「実践的」練習から得られる重要な効果が欠けている。従って、患者看護教育は、人体模型などのシミュレータ上で患者看護を行うための医療用器具を用いて教えることが多かった。しかし、そのようなシステムの欠点の一つは、医療器具が極度に高価であることが多いため、ユーザの多くは、教育上の体験内容範囲を狭めるという犠牲を払ってまでも、器具の種類を少なくせざるを得ないことである。前記の課題に対する一つの解決策は、米国特許第5,853,292号明細書(この参照により開示の全体を本明細書に組み込むものとする)で教示されたように、一組の廉価のシミュレーション用医療器具(「仮想」器具)を用いることである。別の解決策は、シミュレータを本物の医療器具と両立するようにすることである。
【0003】
患者看護教育における別の課題は、ユーザに教えるために用いる患者シミュレータが受動的であることである。例えば、出産のシミュレーションにおいて、ユーザはシミュレーション用胎児をシミュレートされた母体の骨盤内に配置し、これを産道経由で降ろし、胎児の頭部を娩出させ、胎児を約90°回転させて肩を娩出させ、最後に胎児を引き出す(この時点で「新生児」と称することになる)必要がある。実際の分娩における一連の事象を模倣している一方で、ユーザが胎児を物理的に操作するということで迫真性に欠けており、患者看護を行う難しさを察しにくくなる。実際の分娩においては、胎児にアクセスすることはできず、ほとんどの動きは隠れて見えないようになっており、先行技術によるシステムは出産中に患者看護を提供するという最も難しい状況に対応していない。さらに、先行技術によるシステムは、胎児が産道を通って降りて来る時の子宮頚部拡張をシミュレーションしないため、学生が分娩の段階を評価したり、分娩の進展を評価するための子宮頚部拡張の対時間拡張図(「分娩記録」)を作成することができない。
【0004】
患者看護教育におけるさらに別の課題は、システムがかさばり過ぎ、また、他の構成部品への必要配線接続の本数が多過ぎることが多く、そのため、シミュレータを他の位置に動かしにくいことである。「可搬式」と称されているシステムでも、シミュレータを完全に機能させるためには、コンプレッサや電源など数多く接続部品を移動する必要があることが多い。この課題の解決策は、外部装置とワイヤレスで通信する完全機能型・独立式シミュレータにすることである。従って、より現実に近いシミュレーション用患者を含む、患者看護訓練セッションの実施に用いるインタラクティブ教育システム用のシステムが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、ユーザのための患者看護教授用インタラクティブ教育システムを提供する。このシステムは、母体シミュレータ、胎児シミュレータ(母体シミュレータと一緒に使用、母体シミュレータとは別々に使用、の両方に対応できるよう設計されている)、および新生児シミュレータ(分娩後のシミュレーションにおいて胎児シミュレータに取って代わるように設計されている)を含む。いくつかの実施形態において、このシステムは、完全にテザーレス(tetherless)であるシミュレータを有する。すなわち、このシミュレータは、他の外部器具、装置や電源に配線接続する必要なく機能する。このような実施形態では、シミュレータは他の装置や器具とワイヤレスで通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】図1aは、インタラクティブ教育システムを説明する一実施形態の概略図である。
【図1b】図1bは、別の実施形態によるインタラクティブ教育システムの概略図である。
【図2】図2は、仮想器具と患者シミュレータとの間の相互作用の概略図である。
【図3a】図3aは、仮想器具の断面透視図である。
【図3b】図3bは、センサの断面透視図である。
【図4】図4は、患者シミュレータを説明する一実施形態の透視図である。
【図5a】図5aは、図4の患者シミュレータにカバーを取付けた状態の透視図である。
【図5b】図5bは、制御ボックスの上面図である。
【図6】図6は、図4の患者シミュレータの胴体部の透視図である。
【図7】図7は、図6の患者シミュレータの胎児部を取外した状態の透視図である。
【図8】図8は、患者シミュレータの拡張可能な子宮頚部の透視図である。
【図9】図9は、患者シミュレータの外部の透視図である。
【図10】図10は、患者シミュレータの新生児としての一実施形態の透視図である。
【図11】図11は、本発明のシステムを説明する使用法の概略図である。
【図12】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図13】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図14】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図15】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図16】図12〜16は、本発明のシステムの一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図17】図17は、本発明の開示内容の一実施形態による患者シミュレータの、新生児としての一実施形態の透視図である。
【図18】図18は、図17の新生児シミュレータと併用する様々なモジュールの透視図である。
【図19】19は、図17の新生児シミュレータの断面部の透視図である。
【図20】図20は、図17の新生児シミュレータの空気供給システムの概略図である。
【図21】図21は、図20の空気供給システムと併用するマフラーの断面部の透視図である。
【図22】図22は、本発明の開示内容の一実施形態によるプログラムで生成された画面ディスプレイ図である。
【図23】図23は、本発明の開示内容の一実施形態による、図17の新生児シミュレータのシミュレートされた生命徴候の出力ディスプレイ図である
【図24】図24は、本発明の開示内容の一実施形態による、胎児/新生児シミュレータを母体シミュレータに固定する機構の正面図である。
【図25】図25は、図24の機構の分解透視図である
【図26】図26は、図24の機構の一部の透視図である。
【図27】図27は、図24の機構の別の部分の透視図である。
【図28】図28は、出産シミュレーション中に胎児/新生児シミュレータを選択的に回転させるシステムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1aを参照すると、符号10は、ユーザに患者看護プロトコルを教授するためのインタラクティブ教育システムを全般的に示している。システム10は、医療器具をシミュレートするのに用いる仮想器具一式12と、ユーザから患者看護活動を受ける少なくとも一人の患者をシミュレートするのに用いるシミュレータ14とを有する。仮想器具12は有形の物体で、シミュレータ14に関連して実物の医療装置のように見え、感じられ、かつ作動する。シミュレータ14は、完全に関節接合されている成人サイズのマネキンや、胎児、新生児、小児、青年、あるいは腕、胴体部、頭部、または骨盤部などマネキンの一部を含め、様々な形態のものを含有するものと理解されたい。
【0008】
シミュレータ14がユーザから受ける患者看護活動は後述の方式で検知され、その活動に反応してシステム10がユーザにフィードバックを提供する。フィードバックは聴覚的、視覚的、または触覚的反応を含むものと理解されたい。プログラム15aを有するコンピュータ15は、後述の理由により、システム10に選択的に接続されている。
【0009】
図1bを参照すると、システム10’はコンピュータ15とプログラム15aとを有し、ここでソフトウェアにより生成される一式の仮想器具12’およびソフトウェアにより生成されるシミュレータ14’が提供される。従って、ユーザが行う患者看護活動は、ソフトウェアにより生成されるシミュレータ14’に患者看護を提供するために、ソフトウェアにより生成される選択された仮想器具12’に関連するアイコンを操作する工程を含む。本実施形態において、プログラム15は後述のように、マウスのクリックや音声動作ソフトウェアなどの先行技術による手段を用いてユーザの活動を監視し、これに反応してフィードバックを提供する。
【0010】
図1aに戻ると、システム10はさらに通信インターフェース・モジュール(communications interface module:「CIM」)16を有し、CIMは先行技術による電源18から運転用の電力を受け、マイクロコントローラ(「PIC」)20を含む。マイクロコントローラはMicrochip Technology,Inc.(米国アリゾナ州Chandler)など様々なベンダから入手でき、これをカスタマイズする。後述のように、PIC20はユーザの活動から入力信号を受け、ユーザにフィードバックを提供するように特定の反応をするようプログラムされている。例えば、聴覚フィードバックを提供するために、CIM16はさらに、PIC20に反応してスピーカー24に働きかけ、例えば心臓、肺、血圧(コロトコフ法)、腸、胎児などの迫真性のある患者音声を発生させる音声チップ22を有する。CIM16には、スピーカー24の音量を調節するためのコントローラ26が含まれている。
【0011】
あるいは、望ましいフィードバックの複雑性に応じて、CIM16をコンピュータ15およびプログラム15aに接続しても良い。フィードバックの一例において、プログラム15aを用いて、例えば超音波断面図や胎児仮死モニタのトレースの多大なライブラリを提供することができる。フィードバックは、プログラム15aで発生してコンピュータのスピーカーから奏する体音とすることもできる。
【0012】
CIM16は、ユーザの患者看護活動による、仮想器具12とシミュレータ14上のセンサ30との間の相互作用により発生した入力信号を受ける複数のポート(これらをまとめて28と称する)を有する。このように生成された入力信号を制御するためにPIC20が一つ以上、また、CIM16が一つ以上あっても良いことを理解されたい。
【0013】
仮想器具12は患者看護装置、例えば図2に示したような少なくとも1本の点滴(intravenous drip:IV)針、気管内(endotracheal:ET)チューブ、心電図(electrocardiogram:ECGまたはEKG)モニタ、血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯、パルス酸素濃度計帯、一時的外部ペーサ、自動体外式除細動器(automatic external defibrillator:AED)、手動除細動器、超音波ライトペン、仮想聴診器、体温計、および胎児仮死モニタ(以上、各々12a〜l)を有する。このような仮想器具は、本物の医療装置のように見え、かつ作動する。勿論、従来の聴診器、吸引分娩器(vacuum extractor)、カテーテル、トレイ、点滴(intravenous drip:IV)スタンドなど、比較的廉価な医療装置の使用や、他の仮想器具も予期される。
【0014】
図2を参照すると、点滴針12aは特定の薬および薬の調合の選択可能なグループを有し、一実施形態においては、プログラム15aで制御された投与効果のある薬をシミュレータ14に分与するための標識されたシリンジ一式を有する薬のトレイの一部となっている。ETチューブ12bは、シミュレートされた患者の気道管理に用い、シミュレータ14の気管内に置かれている。EKGモニタ12cは、リアルタイムのトレース・モニタおよびR波音波マーカーを有する3、5、または12誘導システムと、シミュレータ14の胴体部に接続するための色彩コード化された複数のパッチとを有する。血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯12dはシミュレータ14に、例えば、腕の周りに取付けられる。パルス濃度計用指先帯12eはシミュレータ14に、例えば、指の周りに取付けられる。一時的外部ペーサ12fは、シミュレータ14の胴体部に取付けるための複数の前部および後部のペーサ・パッドを有する。ペーサ12fは、ペーサ速度および電流のためのコントローラを有し、リズム整調、キャップ時間、およびキャップ時間の喪失を表示し、これらの全てはプログラム15aで制御される。自動体外式除細動器(automatic external defibrillator:AED)12gは、シミュレータ14の胴体部に取付けるための、心臓などの尖部や胸骨用の複数のAEDパッドを有する。プログラム15aによって制御されるソフトウェアにより生成されるショック・ボタンを選択すると、システム10は、プログラム15aにより制御される結果として得られる条件により、除細動ショックをシミュレートする。手動除細動器12hは、シミュレータ14の胴体部に接触させるための、心臓の尖部や胸骨用の複数の除細動器用の棒(パドル)を有する。ソフトウェアにより生成されるショック・ボタンを選択すると、あるいは手動除細動器12hと結合したデュアル・ショック・ボタンを用いることにより、システム10は、プログラム15aにより制御される結果として得られる条件により、除細動ショックをシミュレートする。
【0015】
引き続き図2を参照すると、超音波ライトペン(超音波ワンド)12iはシミュレータ14と相互作用し、ワンド30iがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、CIM16はこの相互作用を検出し、プログラム15aは超音波画像および/または音波のライブラリから取り出された超音波断面図を提供する。プログラム15aは、ユーザに断面図を解釈させ、それに応じて対応させるように、正常断面図と異常断面図の中から選択することができる。仮想聴診器12jはシミュレータ14と相互作用し、聴診器12jがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、図3a〜bで後述するように、CIM16はこの相互作用を検出し、フィードバックがユーザに提供される。体温計12kはシミュレータ14と相互作用し、体温計12kがシミュレータの所定の解剖学的構造領域の所定近傍内にもたらされると、CIM16はこの相互作用を検出し、プログラム15aが温度の読み値を提供する。胎児仮死モニタ12l(陣痛計)は、シミュレータ14の一部に取付けられ、取付けによって、プログラム15aはシミュレートされた胎児の心拍数を提供する。
【0016】
各器具は、全体としてライン36で示すように、対応するセンサ30a〜lを有する。特記しない限り、ライン36は概略的なものであり、仮想器具12とセンサ30とが機能的に相互に接続されて、ユーザの患者看護活動によって生み出された相互作用を提供し、前記相互作用は、CIM16への入力信号として報告されるということを例示しているにすぎない。このような物理的ラインを器具12やセンサ30の間で共通化することも企図されることを理解されたい。
【0017】
仮想器具12とセンサ30との間の相互作用は、電気的、光学的、圧力差、触覚、温度制御、またはワイヤレスである。一般的に言えば、電気的相互作用(これは前記入力信号も提供する)は、1個の節点および別の節点をもつセンサ30を有する仮想器具12を介して生み出すことができ、その両者は物理的にCIM16と接続している。または、伝導物質から形成された2個の節点およびセンサまたはそれらと逆のもの、を有する仮想器具と接続し、それらのうちのただ1つのみが物理的に前記CIM16と接続している。例えば、点滴針12aは、腕の前ひじ領域のような薬物を受け入れることができるシミュレータ14の一部に対応し、この領域は、適当な厚さと点滴針12aが小さい鋭角(例えば、20°)で布を貫通することができるような織密度を有する伝導物質から成る2つの層の間に挟まれた絶縁体を有するセンサ30aを有していても良い。センサ30aの伝導層はライン36a’を介してCIM16と電気的に接続し、点滴針12aが、シミュレータ14の血管への挿管をシミュレートする前記2つの伝導層を正しく通過する場合には、回路が前記層の間に完成し、CIM16によって検知される。
【0018】
相互作用を検知する方法の別の例として、ETチューブ12bが、シミュレートされた患者の気道管理に使用され、シミュレータ14は、頭、目、鼻、口、および通常の気道付属物を受入れることができる現実に近い気道を有し、気道の配置は調節可能であり、大きな舌、塞がれた咽頭、または閉じた声帯を表示して患者の看護活動の困難さを増加させる。シミュレータ14の気管における正しい配置を確実にするために、光学センサ30bが前記シミュレータ14の気管の壁部に設けられ、ライン36b’を通してCIM16と接続されている。気管における前記ETチューブ12bの正しい配置は、ETチューブの先端が光学センサ30bの光線を遮った場合に、確認される。センサ30bは、また、流体が通過したか否かを決定するために使用することができる。
【0019】
仮想聴診器12jは、相互作用を感知するワイヤレス法の例を提供する。少なくとも1のセンサ30jが、前記シミュレータ14の解剖学的部位に設けられ、そこでは、特定の心音、肺(気道を含有する)音、コロトコフ(Korotkoff)音、胎児音、または他の音が通常聞こえている。センサ30jは、聴診器12jによって識別される少なくとも1の信号を供給し、それによって、ユーザに対して、シミュレータ14上のセンサの解剖学的位置に適した音を奏するように、集積音響回路に指示する。音響回路は選択されたセンサ30jの位置に相当する体音を貯蔵するライブラリを有し、センサ30jは同様のセンサの任意の個数を例示している点を理解されたい。
【0020】
図3aを参照すると、ある態様では、聴診器12jの外観は通常の聴診器に似ており、音を聞くためのイヤピース50a〜bを有し、二またに分かれる耳管52と接続した延長部51a〜bに接続している。同様に、聴診器は、さらにベル管54およびベル56を有し、好ましくは、非鉄物質から成る。しかし、従来の聴診器とは異なり、電子制御ボックス58が耳管52とベル管54との間に配置される。制御ボックス58は適切に創られたCIM16であると理解すべきであり、物理的に仮想聴診器12jに組込まれて、システム10を簡略化する。外部のスピーカー(図示せず)への出力のためにジャック64が制御ボックス58に設けられて、イヤピース50a〜bで聞こえる音を他のユーザが聞くことができる。これは、患者看護活動から益を受けるユーザの数を増加させるのみならず、指導者がユーザの能力をテストし、必要であればユーザの技術を修正することを可能にする。制御ボックス58は、所定の音を奏するために、小型スピーカー72、例えば、ADDAX Sound Company(米国イリノイ州Northbrook)から入手可能なものなどを導くために、小型電源66、例えば、バッテリ、捕捉回路68、および音響回路70(回路図については、同時係属中の米国特許出願第09/640,700号、2000年8月17日出願、を参照のこと)を保持する。スピーカー72は、イヤピース50a内に配置され、ワイヤ72aを介して制御ボックス58に接続され、ユーザが、音響回路70によって生み出される音を聞くことができる。第二の、実質上同一のスピーカーを反対側のイヤピース50bに設け、また、制御ボックス58に接続しても良いことが理解されよう。代替の実施形態において、スピーカー72を制御ボックス58内に配置し、音が従来の耳管を介してイヤピースに伝達されるようにしても良い。音響回路70は、また、上述の理由から、外部のスピーカーと接続可能となるようにジャック64に接続する。
【0021】
多数の設定状態を有するスイッチ74が、音の集合、例えば、成人、新生児、胎児において聞こえる典型的な正常および異常の音の集合の間の切替えのために配置されている。無線周波数(radio frequency:RF)信号捕捉コイル76、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なものが、後述のように、RF信号を送信しかつ捕捉するために、ベル56の内部に配置されている。捕捉コイル76は、銅線コイルと、電子制御機器58に取付けられた関連ワイヤ76aを有する回路要素とを有している。樹脂製ディスク78が、ベル56からのノイズを低減するために、捕捉コイル76とベルと56の間に配置されている。
【0022】
別の実施形態において、本物の、または仮想聴診器を用いなくても音が聞こえるようにマネキン内に配置されたスピーカー(図示せず)により、音が再生される。さらに別の実施形態において、本物の聴診器を用いると音が聞こえるようにマネキン内に配置されたスピーカー(図示せず)により、音が再生される。
【0023】
図3bを参照すると、センサ30jが、ユーザによる視覚的露見を避けるように、シミュレータ14の皮膚14bの下に置かれている。また、解剖学的部位、例えば、肋間間隔は、場所を確認するために触診するべきであるので、センサ30jは、最小の厚さをもたせることによって、意図的なまたは偶然の露見を避けることが都合が良い。代替の実施形態では、センサ30jは、実質上皮膚14bに類似する蓋い(図示せず)に取り付けるのが良く、この蓋いを患者の他のシミュレータやモデルの上に置くことができ、これらの装置が聴診器12jと併用できるように変更する。
【0024】
センサ30jは無線周波数IDタグ80を有し、これは例えば、Microchip Technology,Inc.(米国アリゾナ州Chandler)(部品番号MCRF200−I/3C00A)から入手可能であるが、特定のセンサ30jを識別するために役に立つ特有の信号を発生させるために、これは同じくMicrochip Technology,Inc.が販売する"Developer’s Tools"を使用してプログラムしても良い。コイル82、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なものが、動作可能にタグ80に接続されている。タグ80およびコイル82は、例えば、M.C.Davis Co.(アリゾナ州Arizona City)から入手可能なもののような室温加硫硬化性(room temperature vulcanizing:RTV)埋込み物質84すなわちシリコンゴムの中に埋め込まれ、損傷を防止する。一旦埋め込まれると、タグ80およびコイル82は、応答指令信号が出されると、特有の周波数列をもつ信号を出力するCOBモジュール86を集合的に形成する。
【0025】
操作において、COBモジュール86は、周波数を積極的に発信することができるが、好ましくは、COBモジュールは受動的、すなわち、聴診器ベル56中に捕捉コイル76によって応答指令信号が出された場合にのみ動作させるべきである。発明を実施するための最良な本実施形態において、捕捉コイル76は、キャリヤ信号、例えば125kHzの励起周波数のようなキャリヤ信号を伝達し、それは、ベル56がCOBモジュール86の所定近傍内、すなわち捕捉距離内にもたらされた場合にCOBモジュール86によって受信される。ベル56、従って、捕捉コイル76の前記COBモジュール86に対する捕捉距離は、キャリヤ信号の信号対雑音(signal strength to noise:S/N)比によって決定される。だから、キャリヤ信号のS/N比の調節は、センサ30jの解剖学的位置に関して聴診器ベル56、従ってCOBモジュール86をユーザが置かなければならない精密さでもって制御するための手段を提供する。ユーザによるシミュレータ14上におけるベル56の精密な位置が、適当な体音の形で、フィードバックによって報いられる。通常、S/N比は、センサ30jのCOBモジュール86の約1.5〜2cm以内にベル56がもたらされることを要求するように設定される。
【0026】
十分に強いキャリヤ信号を受けることに応答して、他のキーイング法も使用できるけれども、COBモジュール86は、周波数偏移変調(frequency shift keying:FSK)として従来から知られている過程での使用のために、一連の2つの標識用周波数を発信する。聴診器ベル56内の捕捉コイル76は、発信された周波数を受信し、捕捉回路68にまで信号を中継し、捕捉回路68はセンサ30jの身元を調べる。各センサ30jの解剖学的位置は、プログラマーに知られているので、各センサに結合した適当な体音の選択がされ、音響回路70にアクセス可能である。だから、センサ30jを確認することによって、捕捉回路68は、音響回路70に指示して、COBモジュール86の解剖学的位置のための適当な体音を奏せしめ、これは、イヤピース50a内に配置されたスピーカー72を通して前記ユーザに聞こえる。ユーザにより広い選択範囲の音を聞かせるために、より多数のセンサ30jをシミュレータ14に追加したり、または、各センサが1以上の音に対応するようにすることが認められる。前述したように、スイッチ74は、5個の異なる設定状態を有し、5種類の音のグループの間で音響回路70を切り替えるための手段を有している。だから、スイッチの設定状態の個数は、単一のセンサによって生み出すことができる音の個数に相当し、すなわち、13のセンサと5個のスイッチの設定状態をもてば、ユーザは正常及び異常音の例を含む65までの位置に特有の音を聴くことができることが理解されよう。
【0027】
上述した捕捉コイルおよびCOBモジュールは、ECGモニタ12cの誘導、パドル、またはプローブ(「コネクタ」)、一時的外部ペーサ12f、自動体外式細動除去装置(AED)12g、手動除細動器12h、超音波ワンド12i、および胎児仮死モニタ12lで使用されるように改良できることが認められる。望ましい場合、コネクタは、患者シミュレータ上の場所にそれらを一時的に保持するために接着して設けられても良い。器具のコネクタとセンサ30との間の相互作用は、CIM16によって検知されて、正しい配置を確認する。患者シミュレータの皮膚の下にセンサ30が隠されているという配置はさらに、実際の患者に一層似ているとともに、ユーザの患者の看護技術を試すことになる。
【0028】
シミュレータ14は、患者を表しかつ治療を受けるように設計されており、従って、シミュレータ14は種々の形状をとり、その形状は、シミュレートされた患者の一部、例えば、胴体部および骨盤内の領域とともに、完全に関節接合されている成人サイズの産科用シミュレータ、丸まった胎児、関節接合された胎児、多胎児、または新生児を含有することを理解されたい。
【0029】
図4および図5aを参照すると、例示的な実施形態において、シミュレータ14は、子供を生む母体シミュレータ300および取外し可能な連結した胎児シミュレータ302とを有する。母体シミュレータ300は、毛髪306、目308a〜b、鼻310、および口312を有する頭部304を有している。頭部アセンブリは、従来の気道付属物を受け入れることができる、現実に近い気道(図示せず)を有している。全体として30で表されているセンサ(図1a)は、母体シミュレータの皮膚の上に(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下に(模型内として表されている)配置されていても良い。母体シミュレータの一実施形態(図示せず)において、センサがシミュレータと連結していない点を理解すべきである。電気的、空気作用的、または流体的接続を提供するため、また、必要に応じてセンサ30をCIM16に接続するために、ライン36が胴体部316から突出する。
【0030】
別の実施形態において、母体シミュレータ300はテザーレスである。すなわち、この母体シミュレータは、シミュレータ以外の装置に配線やチューブで接続する必要なく機能し、従って、胴体部316から延出するライン36、325a、および326bがない。むしろ、母体シミュレータは独立式である。このように、母体シミュレータ300は、充電池などの内蔵電源を含むことができ、全ての空気作用的および流体的接続は、対応する母体シミュレータ300内のコンプレッサまたは他の装置に接続される。母体シミュレータは独立式であるため、可搬性があるのみでなく、異なる場所間での移送中にも使用することができる。さらに、このような実施形態において、母体シミュレータ300は、ワイヤレス通信によりCIM16など他の装置と通信するようにしても良い。従って、シミュレータシステム14全体は、ワイヤレス通信の限界まで機能することができる。さらに、いくつかの実施形態において、母体シミュレータ300はコンピュータまたはネットワークシステムにワイヤレスで接続し、次いでこのコンピュータまたはネットワークシステムは有線またはワイヤレスのネットワークを介してCIM16に接続し、母体シミュレータの機能距離を実質上無限にする。ここでは母体シミュレータのみを説明してきたが、以下でより詳しく説明する胎児および新生児シミュレータも、いくつかの実施形態においてテザーレスである。いくつかの実施形態では、シミュレータは、テザーレスとテザーありの両方の状態で使用するように構成される。いくつかの実施形態では、シミュレータは、テザーレスで用いても完全に機能する(すなわち、シミュレータは、テザーありとテザーレスのどちらの状態でも同じ機能性がある)。
【0031】
一対の腕318a〜bが胴体部316と接続している。少なくとも1本の腕は、薬剤を受け入れることができる点滴レセプタクル(図示せず)を有し、センサ30aは、点滴が開始されたか否かを確かめるためにレセプタクル内に置かれていても良い。同様に、その腕は、血圧の測定のための手段とともに、コロトコフ音の聴診のためのセンサ30dを有していても良い。胴体部316の骨盤領域320は一対の脚322a〜bを受け止める。
【0032】
図5aを参照すると、フックや環状のファスナーのような解除可能な結合手段を使用することもできるけれども、カバー324は複数のスナップ324aを介して胴体部316に取付けることができる。超音波ワンド12i、胎児仮死モニタ12l、および聴診器12jまたは代わりに少なくとも1個の小型スピーカーと協動するために、カバー324は、センサ30を保持し、聴診器12jまたは従来の聴診器によって各々検知される胎児の心音のシミュレーションを可能とする。一実施形態において、カバー324が、真空発生手段と接続した連続気泡発泡体(図示せず)を囲んでいる。真空の発生が気泡を縮小し、それをより硬く感じさせ、それが母体シミュレータ300による子宮の収縮をシミュレートする。代わりに、カバー324は、カバーを加圧するための空気嚢および接続ライン(図示せず)を保持しても良く、これによって、それをより硬く感じさせる。さらに別の実施形態において、カバーは、胴体を横切るように延在する複数の可撓チューブ(図示せず)を有する。チューブ内の空気圧によって硬さが決定される。空気圧を調節すると硬さが変更される。種々のレベルの硬さが生み出されて、種々のレベルの収縮の強さ、例えば、軽度、中程度、および強い収縮をシミュレートできることを理解されたい。もし、CIM16とプログラム15aと接続されれば、収縮は、規則的に間隔が開けられ、母体の子宮内の圧力は、図14を用いて説明されるように、プログラムによって表示することができる。
【0033】
図4に戻ると、胎児シミュレータ302は、臍帯302aおよび胎盤302bを有し、母体シミュレータの内部に配置された取外し可能なステージ325上に位置を占めるように描かれている。取外し可能なステージ325は、嚢(図示せず)、ライン325a、および球325bを有している。空気を嚢に汲み上げるために球325bを使用すると、ステージ325、従って胎児シミュレータ302はやや上方に上がる。カバー324(図5a)で覆われた場合には、ステージ325が上昇すると、ユーザは、胎児シミュレータ302をカバーを通して触診して位置を評価するとともに、レオポールト(Leopold)操作を実行できるようになる。別の実施形態において、球325bは、例えば電動の空気作動式ポンプなど、代替のポンプで置換えてある。電動ポンプは、コンピュータまたはその他の装置により遠隔制御しても良い。
【0034】
出産器具326は、後述のように、胴体部316の内側に配置されている。カバー324は、前記シミュレータの胎児シミュレータ302および出産器具326を視界から隠している。そのため、子供の出産プロセスをより正確にシミュレートし、ユーザの治療能力を試す。ステージ325が取外されると、出産器具326は、手動クランク(図示せず)により、またはモータのオン・オフを行うとともに操作速度を決定するための制御手段とライン326bを介して接続する小型モータ326aによって操作することができる。
【0035】
第一の実施形態において、プログラム15aのソフトウェアは、図14に関して後述するように出産器具326を制御する。別の実施形態では、制御手段は、制御ボックス328および制御ボックス328をCIM16に接続するライン330である。図5bを参照すると、前記制御ボックス328は各々シミュレータ14をオン・オフし、子供の出産を停止・再開し、分娩速度を決定し、胎児の心拍数を設定するためのコントローラ328a〜dを有している。
【0036】
図6および図7を参照すると、母体シミュレータ300の胴体部316は、胎児シミュレータ302を露見させるために、カバー324を取外した状態で図示してある。胎児シミュレータ302は、母体シミュレータ300の体腔333内に設けられ、頭部334、取付けられた胴体部336を、前記胴体部に取付けられた腕338a〜bおよび脚340a〜bとともに有している。頭部334は柔らかいので吸引分娩が可能であり、ユーザが吸引することができる口および鼻を有している。
【0037】
その点で、いくつかの実施形態において、胎児シミュレータ302は、分娩中に胎児シミュレータ302に加えられた力の量を監視するために首、肩、および股関節部に配置された力センサ(図示せず)を有する。頭部334を引っ張ると、首のセンサからの信号が生成される。力の量は、ユーザ・インターフェースにより、ユーザおよび/または指導者に中継される。ユーザ・インターフェースは、図形表示や可聴信号を含む。例えば、ユーザ・インターフェースは、かかっている力の量を表示する棒グラフを生成するものであっても良いし、また、ユーザ・インターフェースは、力が所定の閾値を超えた時にピーッと言う音またはその他のアラーム音を発生して、かかっている力を低減するように、あるいは異なる分娩法を用いるようにユーザに促すものであっても良い。一実施形態において、最大の力の閾値は約40力ポンドである。一実施形態において、望ましい力の範囲は約17〜20力ポンドである。肩娩出異常は、致死の可能性もある状態であり、胎児の肩が母体の恥骨の後ろに引っかかるものである。過度の力は、胎児に脳神経叢を、また、エルブ麻痺(Erb’s palsy)さえをも起こし得る。致死の可能性もあるこの状態をシミュレートするために、胎児シミュレータ302の左右の肩に肩センサを含めることにより、肩に加えられた力を監視する。最後に、骨盤位経膣分娩などの様々な状況のため、脚340a〜bをつかんで膣から取出すことになり得る。股関節部センサは、このような状態で胎児シミュレータ302に加えられた力を監視する役割を果たす。いくつかの実施形態において、センサ30は、特定のセンサが監視するようになっている測定値を示す出力信号を供給するために動作可能な出力装置と通信する。出力装置は、電気信号、ワイヤレス信号、または他の適切な出力信号を出力することができる。
【0038】
臍帯および胎盤302a〜b(図4)は、図を簡略化するために除去されているが、胎盤302b(図4)は、任意の個数の共通の方向、例えば、正常な底の位置、低い位置、または前置胎盤に設けられ、従来の解除可能なファスナーによって体腔333に取り付けることができると理解されるべきである。同様に、臍帯302a(図4)は、種々の複雑な状況を模倣するように提示されることができ、胎児シミュレータ302への接続ラインを収容して、臍帯パルスがユーザによって感じられるようにし、または、必要であれば胎児シミュレータ302へ電流を伝達することができる。
【0039】
受け部342が胎児シミュレータ302内に設けられて、出産器具326が胎児シミュレータを保持できるようにしている。前記受け部342と同様に、他の受け部が、胎児シミュレータ302の種々の部分に、骨盤位出産のシミュレーション用などに企図され、胎児シミュレータ302は、関節接合されているので、種々の骨盤位分娩、例えば、完全なもの、明白なもの、および逆子のような骨盤位分娩をシミュレートすることができる。
【0040】
出産器具326は、胎児シミュレータ302の受け部342と協動して胎児シミュレータ302を保持するピストン部346の突起344を有している。いくつかの実施形態において、受け部342および突起344により、胎児シミュレータ302は選択的に母体シミュレータ300と係合し、かつ母体シミュレータ300から解放されるという選択的な係合ができるようになっている。描写された実施形態において、ピストン部346は、駆動システムによって駆動され、この駆動システムは、小型電動モータ、歯車、リセット可能な電気論理回路、ピストン部の位置を決定する手段、および前進・逆転機能を有している。ピストン部346は、一組の軌道347a〜bに沿って下方に進み、それによって、胎児シミュレータ302を母体シミュレータ300の外へ移動させる。
【0041】
ピストン部346の突起344は回転可能であり、出産器具326は、それによって胎児シミュレータ302の回転および並進運動の双方を発生させて、現実に近い子供の出産シナリオをシミュレートする。その際、胎児は回転して、鼻が下になる正常な排臨(crowning)位置に来る。排臨後、胎児はさらに回転して、胎児の肩が産道をうまく通過することができる。いくつかの実施形態では、受け部342は、胎児シミュレータの別の部分、例えば、頭部、首、肩、腕、股関節部、および/または脚内に配置される。受け部342および突起344の別の実施形態は、図24〜27に関して後述する。
【0042】
一実施形態において、ピストン部346のレバー346a〜bは、操作可能なように突起344と接続され、各々、カム348a〜bと係合し、回転を生み出す。ピストン部346が軌道347a〜bを降下すると、ピストン部のレバー346a〜bは固定されたカム348a〜bと順番に係合し、各レバーを動かす。レバーの動きは、突起344を回転させる。ついには、各レバーは、レバーが各カムを離れるポイントまで動かされる。カム348a〜bは、産道をシミュレートした軌道347a〜bに沿った回転を望む場所に置かれていることが認められる。このように、胎児の内部の回転は、カム348aと係合するレバー346aによって生じ、胎児の外部の回転は、カム348bと係合するレバー346bによって生じる。図28に関して後述するように、いくつかの実施形態において、カム348a〜bは胎児シミュレータを回転させる位置と胎児シミュレータを回転させない位置との間で動くことができる。さらに、いくつかの実施形態において、カム348a〜bは、胎児シミュレータにいくらかの回転を与えるための中間位置を含む。あるいは、プログラム15aが、図14に関連して後述するように、0度から180度まで突起344の回転の調節を可能にする。どちらの実施形態においても、胎児302は、後述するように、拡張可能な子宮頸部350を介して通過する。
【0043】
図8および図9を参照すると、拡張可能な子宮頸部350は、体腔333に子宮頸部の位置を保持するために取付けたフラップ353a〜bを有するリング352を有する。従って、フラップ353a〜bは、取付けられたスナップ、フック、および環状のファスナー、または他の解除可能な結合手段を有しても良い。壁部354は、前記リング352と接続し、好ましくはLycra(登録商標)のような弾性部材または熱可塑性エラストマーで形成されるのが良い。壁部材から成るギャザー356は孔358を画定する。ギャザー356は、取付けられたエラストマー要素を内部に設けて孔358の弾性を高めるようにしても良い。あるいは、壁部354自体が十分な弾性を持つようにしても良い。
【0044】
胎児シミュレータ302が孔を介して押されると、孔358は直径で約2〜10センチメートルに拡張し、胎児のミュレータの頭部334の形状および壁部354の弾性のために、拡張は、自動的に胎児の降下と一致するようにシミュレートされる。ユーザは、それから子宮頸部拡張の測定を実行し、かつ、分娩記録(パートグラフ、partograph)として、分娩の進展を図に描く。壁部354の弾性は、例えば、より厚いまたはより薄い壁部材を使用することにより調節可能であり、こうして通常よりもより速くまたはよりゆっくりとした拡張をする子宮頸部を作り出す。子宮頸部350は、カバー用の複数のスナップ324aとともに、恥骨360を有する骨盤領域320に同軸的に設けられている。
【0045】
胎児シミュレータ302は、子宮頸部350を通じて、体腔333から、外陰部362を通って出される。外陰部362は、柔軟な素材で形成され、ユーザが外陰部を操作し、または頭部334を娩出するために会陰切開を実行することができる。外陰部362は、尿管や直腸のような特徴を有する挿入物の一部(図示せず)を有しても良く、この挿入物は、種々の患者の状態を示すために、他の性器の挿入物と置換えることができる点を理解すべきである。出産の後、前記ユーザは、分娩後の実習、例えば、子宮挿入物(図示せず)を所望の大きさに戻すようなマッサージ、保持された胎盤部分(図示せず)の除去、または子宮頸部350または外陰部362の修復の実行をしてもよい。
【0046】
一実施形態において、胴体部316は、シミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。心臓(図示せず)は、患者の状態に応じておよび治療上の介入に応答して、プログラム15aにより制御される拍動性の流れの作用によって脈打つ。触診できる脈は、頸動脈、上腕、橈側、大腿部、および、足、背の位置で見出すことができる。特定の脈の位置は、収縮期血圧が落ちると触診できず、脈が存在するかしないかは、シミュレートされた血圧に依存する。心音は、聴診器12jを通して適当な位置で聞こえる。心拍動は、プログラム15aによって決定される仮想心電図(electrocardiograms:EKGs)に同調する。聴診器12jを血圧測定用加圧帯12d(図2)よりも下のポイントに当てると、妥当なコロトコフ音が聞こえる。
【0047】
母体シミュレータ300は、換気手段の組合せを表示し、肺および気道の音が、聴診器12jを用いて適当な位置で聞こえる。シミュレータ300は、肺におけるガス交換および薬品の投与のような介入への反応を含むような与えられた状況での目標とした動脈血のガスを実現するように自発的に呼吸し、一回換気量および生理的状態に関連する胸郭の上昇の量を表示する。通常のガス交換の肺の力学は、仮想的なものであり、一回換気量(tidal volume:TV)、機能的残気量(functional residual capacity:FRC)および吐出された二酸化炭素(CO2)を決定することができるプログラム15aによって制御される。気道の抵抗、肺、および胸の壁部のコンプライアンスもまた、プログラム15aによって制御される。
【0048】
心臓および肺は、気道の換気および心臓の圧迫(圧縮)を確立する圧力変換機と接続されている。例えば、空気ラインが、気管の壁部またはシミュレータ300の肺に取付けられ、CIM16に接続したセンサ回路と接続され、心肺蘇生術(cardiopulmonary resuscitation:CPR)による換気がシミュレータで実行された場合に、CIM16は換気処置の圧力および体積のタイミングおよび大きさを、空気ラインおよびセンサを介して監視する。同様に、圧縮嚢が、シミュレータ300の心臓または胸腔内に埋め込まれて、CIM16に取り付けられた圧縮センサ回路に空気ラインが接続した場合に、CPR胸圧迫手順の正しいタイミングおよび大きさを検知しかつ確認する。圧迫および換気データは、ライン36を介してCIM16によって、検知された圧力波から得られることが認められよう。血圧、心拍数、および酸素飽和は、血圧(blood pressure:BP)測定用加圧帯30d(図2)およびパルス酸素濃度計帯で仮想的に測定されるが、表示されるデータはプログラム15aが発生する。
【0049】
図10を参照すると、新生児シミュレータ302’は、胎児シミュレータ302(図8)と置換えるために使用されて、プログラム15aによって、新生児の蘇生の実行を可能にする。別の実施形態において、胎児シミュレータ302自体を出産後のシミュレーションに用いる。その点で、胎児シミュレータ302は、本明細書で説明した新生児シミュレータ302’の機能および特徴の全てを有することができる。新生児シミュレータ302’は、髪372、目374a〜b、鼻376、および口378を有する頭部370を有している。頭部アセンブリは、従来の気道の付属物を受入れることができる現実に近い気道(図示せず)と、従来の気道の付属物が置かれているか否か、または流体が通過したか否かを調べるためのセンサとを有している。頭部370は、首380を介して胴体部382と接続されている。
【0050】
全体として30(図1a)で表されているセンサは、新生児シミュレータの皮膚の上(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下(模型内として表されている)に配置されていても良い。ライン36"は、センサ(図示せず)をCIM16に接続するため、また、電気的、空気作用的、または流体的接続を行うために、胴体部382から前記まで突出している。胴体部382は、カテーテル法のための臍の位置384と、CPRを実行するためのシミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。心臓および肺は、母体のシミュレータ300について上述したように、気道換気および心臓の圧迫を確認するために圧力変換機と接続されている。新生児シミュレータ302’は、心拍数、脈拍、酸素供給、および聴診器12j(図2)または従来の聴診器を使用して検知可能な種々の体音を含む母体シミュレータ300(図6)と同様の特徴の多数を表す。一対の腕386a〜bおよび一対の脚388a〜bも胴体部3382と接続している。
【0051】
一実施形態において、手および足は、顔および上部胴体部とともに、適当な血液への酸素の送り込みまたは酸素不足により色彩を変化させる。血液への酸素の送り込みが減少すると、まず両手両足が色彩を変化させ(末梢性のチアノーゼ)、続いて顔および上部胴体部が色彩を変化させる(中枢性のチアノーゼ)。そのような変化は、血液中の酸素の送り込みが進むにつれて可逆性がある。
【0052】
最良の実施形態において、着色は、(例えば、イリノイ州ChicagoのKeystoneから入手できるReversatherm Blue Type Fのような)青の感熱着色染料約3グラムを透明なビニル樹脂のペイントシンナー10グラムに溶かし、透明なビニル樹脂ペイント300グラム中に分散させたものを用いて実現する。その混合物は、手、足、胸および顔に塗られる。室温で、前記新生児は青である。抵抗ヒータ(ミネソタ州MinneapolisのMinco Productsから入手可能なものなど)を並列に接続して皮膚の下に置き、5〜15ワット/平方インチまたは、皮膚の表面温度を約115℃に上昇させるのに十分な熱エネルギーを加えて、青い色彩を消去させる。ヒータの電力は、CIM16を介して供給される。末梢および中枢用のヒータは別々に制御されて、中枢性のチアノーゼを起こさない末梢性のチアノーゼの発症を可能にする。ヒートシンクをヒータとともに設け、より迅速な冷却、従って、より迅速な色彩の変化を可能にすることもできる。
【0053】
一実施形態において、感熱着色システムは、論理的にプログラム15aと接続され、例えば、指導者が、新生児の条件を明確に定める。その後、着色は、ユーザによって実行されるCPRの質に対応し、向上、悪化、現状維持のいずれかとなる。プログラム15aは、また、色彩の変化を望まないならば、オーバーライドを提供する。あるいは、着色は、従来の光互変性物質をシミュレータに塗ることによってシミュレートして、関係する調節可能な紫外線に晒すと、シミュレータが青色に変わるように見えるようにする。別の代替として、着色は着色された光によってシミュレートしても良い。例えば、一態様によれば、青い発光ダイオード(light emitting diode:LED)を用いることができる。
【0054】
母体シミュレータに関して上述したように、いくつかの実施形態では、新生児シミュレータはライン36"を有さない。むしろ、そのような新生児シミュレータはテザーレスであり、外部装置への配線、チューブ、またはその他の物理的接続を必要とすることなく、独立して機能する。
【0055】
図11を参照すると、出産システム500は、先の実施形態の使用を図示する。シミュレータ14は、例えば、母体シミュレータ300および胎児シミュレータ302がテーブル502上に置かれている。学生W、X、Y、およびZは、テーブルの周囲の位置を占め、例えば、Wが薬物治療を監督し、Yが仮想器具12を監督し、Xは麻酔を監督し、Zは産科学を監督する。出産器具326は、上述したように、手動クランクを介して、または、制御ボックス328と接続された小型モータ326aによって駆動され、または、コンピュータ15のプログラム15aは、選択的に出産器具326を制御することができる(模型で示されている)。どちらの制御手段が使用されても、拡張性の子宮頸部は正確に胎児シミュレータの産道の降下の進行を反映する。ついには、上述したように、胎児シミュレータは娩出される。
【0056】
胎児シミュレータが一旦出産されると、チームW’、X’、およびY’(これらは、W、X、Yと同一の学生、または、クラスの規模に応じた他の者)は、テーブル502’上で新生児の看護を実行するために経路1に沿って移動する。Zが欠如した少なくとも1のチームは、モニタリングおよび安定化させる可能性のために母体シミュレータとともに後に残る。胎児シミュレータは、新生児シミュレータ14’、例えば、新生児シミュレータ302’に切り換えられる(図10)。もしコンピュータと接続されると、プログラム15aは新生児蘇生に必要なものをシミュレートするために用いることができ、CPRおよび他の緊急性の看護のプロトコルが実行されても良い。プログラム15aは、シミュレータが受ける看護をCIM16および仮想器具12を介して監視し、認められた標準とこの看護を比較する。
【0057】
一方、コンピュータ15のプログラム15aは、母体蘇生に必要なものをシミュレートするために用いても良い。もしそうする場合、1チームは、経路2に沿って移動して、テーブル502"において母体の看護を実行する。学生W"、X"、Y"およびZは、母体シミュレータ14"、例えば、胎児シミュレータが取外された母体シミュレータ300について作業することができる。CPRおよび他の緊急看護が与えられても良く、プログラム15aは、CIM16および仮想器具12を介してシミュレータが受ける看護を監視する。
【0058】
図12を参照すると、プログラム15aの導入部の画面ディスプレイ400が、コンピュータ15上に示され、ユーザに対して患者の看護プロトコルを教授する。ディスプレイ400は、いくつかの装飾用特徴を有している。すなわち、標題のボックス402、胎児心拍数ボックス404、母体の子宮内圧ボックス405、生命徴候ボックス406、および超音波ビデオボックス407である。ディスプレイ400は、また、教授ボックス408、テストボックス410、および仮想器具教本ボックス412を有する。後述するように、いくつかモジュールにおいて、プログラム15aは、ユーザの活動に関する情報と予め定めた標準とを比較する。
【0059】
画面ディスプレイ400は、プログラム15aによって提供される選択可能な患者看護モジュール414a〜pの集合を表示し、前記モジュールは、医療の主題および関連する概念についての情報を提供する。各モジュールは、単一の主題を有し、ユーザのためのインタラクティブ患者看護訓練セッションを表示する。モジュール414a〜gは、教授ボックス408に設けられ、関連の生理学、妊娠、合併症、陣痛・分娩、および出産、分娩後、および母体および新生児の蘇生プロトコルの全体像を与える。モジュール414h〜jはテストボックス410の中に置かれ、指導者が定めたプロトコル(コードメーカ:Codemaker)とともに、母体および新生児蘇生プロトコルについてユーザをテストする機会を与える。プログラム15aを終了させる終了(Exit)ボタン415もテストボックス410内に配置されている。モジュール414k〜pは、仮想器具教本ボックス412内に配置され、ユーザに自動出産、胎児超音波、胎児仮死モニタ、生命徴候、分娩記録、および心肺音を含むシステムの使用についての指導を与える。
【0060】
図13を参照すると、もし、モジュールの1つ(図12)が、例えば音声認識またはコンピュータ15のマウスによる選択によるなどして、ユーザにより選ばれると、プログラム15aはディスプレイ画面416を表示する。ディスプレイ画面416は情報ボックス418を有し、情報ボックス418は主題別の情報を含有する。ディスプレイ画面416は、また、選択されたモジュールの主題に固有の情報カテゴリーを挙げる情報項目(便宜上、A〜Dで示す)を含有するメニューバー420を有している。1つの項目を、メニューバー420を介して画面416から選択することができ、各モジュール414a〜pは、特定の情報項目A〜Dについてのそれ自体のメニューとともに、それ自体のディスプレイ画面を有しており、各項目は、多数の項目を含有するように拡張され、または、例えば、項目の下の選択可能なサブ項目を配置することにより圧縮されることができることを理解すべきである。
【0061】
収容項目とは異なるメニューから項目を選択すると、選択されたメニュー項目に関するテキストおよび/または図が、情報ボックス418内に表示される。実習中、プログラムは新規ディスプレイ画面(図示せず)を生成することができる。従って、情報画面416は、任意の数の画面の例として使用され、さらに、そのような画面は、各項目について、一連の順序で、または一組で表示できることを理解されたい。ディスプレイ画面416のような一組の画面は、選択されたメニュー項目に対する患者治療プロトコルに関する指導を構成する。こうして、前記ユーザは、適当なモジュールおよび項目を選択しそれから一組の画面を介してナビゲートすることによって、主題のライブラリからの情報を検討することができる。一組の画面でのナビゲーションは、ユーザが、3つのボックス422、424および426、各々「戻る(Back)」、「次へ(Next)」、および「終了(Exit)」」であって、一組の中での逆方向または前方向への進行のような画面上の対応する機能を有する前記ボックスの間で選択することによって達成される。もし、「戻る」または「次へ」の機能が不可能であるならば、各々、一組の第1および最後の画面の場合であるので、前記ボックス422または424は、選択不能である。
【0062】
例えば、モジュール414fおよび414gは、各々、一組を発生させて、ユーザに母体および新生児の蘇生について、各々教授する。ユーザは、また、上記の母体シミュレータ300または新生児シミュレータ302’のようなシミュレータ14(図1a)上においてCPRを実行することができ、プログラム15aはCIM16(図1a)およびセンサ30(図1a)を介して、ユーザの圧迫および換気を検知する。シミュレータ14の心肺は、気道の換気および心臓の圧迫を確立する圧力変換機と接続され、例えば、空気ラインは、シミュレータ14の気管壁部内に設けられ、CIM16と接続したセンサ30と接続され、CPRによる換気がシミュレータで実行される場合に、CIM16は換気活動の圧力のタイミングおよび大きさおよび体積を、空気ラインおよびセンサを介して監視する。同様に、圧縮嚢が、前記シミュレータ14の胸の空洞内に埋め込まれて、空気ラインによってCIM16に取り付けられた圧縮センサ30に接続した場合に、CPRの胸の圧迫手順の正しいタイミングおよび強さを検知しかつ確認する。プログラム15aは、ユーザの活動に関する情報を予め定めた標準と比較し、インタラクティブな訓練のセッションを提供する。
【0063】
予め定めた標準は選択可能であり、米国心臓学会(American Heart Association)などによって定められた一次救命処置(basic life support:BLS)および二次救命処置(advanced cardiac life support:ACLS)のガイドラインを含有する世界中で使用されている医療プロトコルを反映する。心肺蘇生術(CPR)の少なくとも7つの主要なプロトコルが格納され、ユーザによって選択可能である。さらに、ユーザは、プロトコルを更新しまたは入力し、そして、心臓の圧迫および気道換気の深さ、持続時間、および振動数に関する局所的なプロトコルを反映する「新プロトコル」を格納することができる。プログラムは、一組の許容限界を用いて、CPRをテストするための新しいCPR波形を生み出す。
【0064】
図12に戻ると、テストボックス410からテストモジュール414h〜jを選択すると、プログラム15aの実行が指示され、母体蘇生および新生児蘇生、および緊急事態のシナリオに対する他の対応のような患者看護プロトコルにおけるユーザのテストに役に立つテストシーケンスを提供する。プログラム15aは、患者の苦痛のシナリオの手順を通じてゆっくりと進み、ユーザに予め定めた時間を与えて対応させ、または要求される作業を完了させ、これによって、ユーザが緊急事態における困難を経験することを可能にする。例えば、プログラム15aは、患者を治療するためにユーザが選択しなければならない選択肢を提供することによって、ユーザをテストすることができ、そこでは、ユーザは、シーケンスが次の事象に進む前に正しい選択を実行しなければならない。プログラム15aは、ユーザが、CIM16へ入力を供給するため仮想器具12およびセンサ30の接続を有効化、無効化、またはチェックできるようになっている。
【0065】
仮想器具12(図2)が使用可能である場合は、仮想器具12を使用して、ユーザがシミュレータ14上で患者の看護活動を実行することができるが、対応の結果およびその質はプログラム15aによって監視される。あるいは、ユーザはプログラム15aで生成された、ソフトウェアでシミュレートされた器具12’(図1b)を使用しても良い。プログラム15aは、患者が蘇生(回復)するまで前記シナリオに沿って進み、ユーザの応答の現状の批評を、正しくない各選択および各動作の説明とともに提供する。テストモジュール414h〜jの特徴は、ユーザが、シナリオによって予め定められた動作シーケンスがシミュレータ14に圧迫/換気のサイクルの予め定めた個数を有するように指定でき、またはユーザがシミュレータ14に実行した圧迫および換気行為の時間および強さを記録でき、または現実に近い音を聞くために選択肢の集合の間で選択できることである。
【0066】
テストは、上述したように、プログラム15aによりまたはユーザにより定められることができる。例えば、コードメーカのテストモジュール414j(図12)を選択すると、第1のユーザ、例えば、指導者が、シナリオを発生させて、第2のユーザ、例えば、学生をテストすることが可能である。前記第1のユーザは、性別、体重、年齢、患者の適応症、生命徴候および心臓のリズムのような情報であって、現実的に生命徴候ボックス406(図12)に反映される情報に関する一組の予備的な患者パラメータを入力することによって、テストのシナリオをもった患者シミュレータを定めることができる。指導者が定めたテストシステムは、指導者が地域的、国内的、または国際的な患者看護プロトコルにより学生をテストできるようにする。多数のアルゴリズムが、ファイルを開くことにより選択可能であり、そこには、BLS、ACLS、小児科,および産科(Obsteric:OB)の緊急事態を有している。他のアルゴリズも生成して格納することができ、アルゴリズムは、相互にリンクしても良い。このモジュールの利点としては、指導に関する柔軟性および主題の把握を検知する力などがある。指導者が定めるアルゴリズムは、おそらくは周知の構造を持つアルゴリズムとは異なるであろうが、そうすることにより、学生による応答の丸暗記の問題を避けることができる。
【0067】
動作は、例えば、学生が仮想器具の中から選択して患者の看護活動を行うために使用する、という学生による条件に応答してなされる。学生は、それから、仮想的に患者看護活動を実行し、または有形のシミュレータを使用することができる。
【0068】
仮想器具教本ボックス412のモジュール414k〜pは、出産シナリオで一般的に使用される器具についての情報を提供する。いくつかの例では、患者看護プロトコルによって仮想器具12のいくつかをシミュレータ14で使用する機会が提供される。
【0069】
図14および図15に進む。出産プロセスの全体は、プログラム15aを介して、ユーザが単に初期条件、例えば、分娩時間430、分娩の概観432および圧迫の強さ434を定めるだけで、自動化することができる。ワープ機能は、16時間から5分への完全な分娩の短縮を可能とする。出産は、胎児シミュレータ302を突起344に置くこと、および、カバー324を母体シミュレータ300に置くことから成る。プログラム15aは、また、ピストン部346の進行速度の変更を可能にする。すなわち、最初の2〜3センチメートルは、最後の2〜3センチメートルよりもよりゆっくりと進行し、出産をより良くシミュレートする。
【0070】
図16を参照すると、もし、モジュール414m(図12)が選択されるならば、胎児仮死モニタに関する一組の画面が、指導上の情報とともに示される。例示した胎児仮死モニタ・ボックス436が、モニタをオンするための選択可能なオン(ON)ボタン436aとともに描かれている。胎児仮死モニタ12lは、シミュレータ14と協働して、胎児心臓モニタが母体シミュレータ300(図5a)のカバー324上に置かれ、少なくとも1のセンサ30と相互作用するが、圧迫モニタは、カバー上に設けられた別のセンサ30と相互作用する。
【0071】
図17を参照すると、新生児シミュレータ600は、胎児シミュレータ302と置換えるために使用されて、プログラム15aによって、新生児の蘇生の実行を可能にする。一実施形態において、新生児シミュレータ600は実質的に、在胎期間28週の平均的なサイズの新生児のサイズである。別の実施形態において、新生児シミュレータ600は実質的に、在胎期間40週の平均的なサイズの新生児のサイズである。新生児シミュレータ600は、心拍数、脈拍、酸素供給、および聴診器12jまたは従来の聴診器を使用して検知可能な種々の体音を含む母体シミュレータ300と同様の特徴の多くを表す。さらに、後述するように、新生児シミュレータ600は、種々の機能を正しく作動させるためにかさばる外部コンプレッサや電源など外部装置への配線またはチューブによる接続を必要としない、という点で、独立式である。新生児シミュレータ600は可搬式である。いくつかの実施形態では、新生児シミュレータはテザーレスであり、他の外部装置への配線、チューブ、またはその他の物理的接続を必要とすることなく、機能する。
【0072】
新生児シミュレータ600は、毛髪604、目606および608、鼻610、および口612を有する頭部602を有している。頭部602は、首614を介して胴体部616と接続されている。胴体部616は、カテーテル法のための臍の位置618を有する。胴体部616は、また、男性器および女性器の両方のピース(図示せず)を受けることができるようになった互換性のある性器の位置620を有する。2本の腕622および624が、胴体部616の上方に接続され、そこから延出する。2本の脚626および628が、胴体部616の下方に接続され、そこから延出する。
【0073】
全体として30で表されているセンサは、前述のように、種々の特徴をシミュレートするために、新生児シミュレータの皮膚の上(斑点入りで表されている)および/または皮膚の下(模型内として表されている)に配置されていても良い。胴体部616は、CPRを実行するためのシミュレートされた心臓、肺、および肋骨を有する。一態様において、心臓および肺は、母体のシミュレータ300について上述したように、気道換気および心臓の圧迫を確認するために圧力変換機と接続されている。胴体部616は、また、電源およびワイヤレス通信装置など、他の部品を含む。一実施形態において、電源は、リチウムイオン電池5セルの充電可能なパックである。一態様において、電源は、通常は肝臓用に取ってある領域に配置する。
【0074】
新生児シミュレータ600の機能の全てを在胎期間28週または40週の新生児のサイズのマネキンに納めるため、多数ある電子部品は適切なサイズにし、必要とされる位置でマネキン内に正確に配置しなければならない。一実施形態において、新生児シミュレータ600の電子部品は、一般的なマザーボード上に配置するのではなく、機能に応じて、より小さいモジュールにまとめられている、例えば、図18は、新生児シミュレータ600で用いるものとして可能な一組のモジュール630を示す。この一組のモジュール630は、新生児シミュレータ600をコンピュータに連結するマスター・モジュール632と、ECG信号を発生するモジュール634と、心音、肺音、声、およびコロトコフ音などの音声を発生するモジュール636と、胸の圧迫、気道の換気、血圧、およびコンプレッサなどの圧力を検知するモジュール638と、挿管を監視するモジュール640と、バルブおよびLEDを駆動するモジュール642と、ワイヤレス・インターフェースおよびUSB?RFなどの接続を提供するモジュール644と、声用の音を作成するモジュール646と、声以外の音を作成するモジュール648とを有する。これらのモジュール632〜648の1若しくはそれ以上を組合わせて、新生児シミュレータ600の特徴をいくつでもシミュレートすることができる。
【0075】
図19を参照すると、新生児シミュレータ600は、口612および鼻610経由でアクセス可能な、現実に近い気道650を有する。気道650は、従来の気道の付属物を受入れることができ、例えばモジュール640などのようなセンサが、従来の気道の付属物が置かれているか否か、または流体が気道を通過したか否かを調べるために配置されている。一実施形態では、モジュール640は、例えば気管内チューブのような気道の付属物の位置を監視し、この付属物の位置が高過ぎる、低過ぎる、またはちょうど良いことを調べる光学センサである。新生児シミュレータ600は、また、シミュレートされた胃に向かって胴体部616へ延出した、シミュレートされた食道652を有する。
【0076】
図20を参照すると、新生児シミュレータ600は、また、呼吸、脈拍、および関連した新生児の生理的状態をシミュレートするための空気供給システム654を有する。空気供給システム654は、マフラー656、コンプレッサ658(ニュージャージー州のT?Squared Pumpsから入手可能なT2?03?E型のようなシングル・ダイアフラム・コンプレッサであっても良い)、チェックバルブ660(適切なバルブはフロリダ州のGulf Controlsから入手することができる)、コンプレッサ・コントローラ662、一次アキュムレータ664、および二次アキュムレータ666を含む。あるいは、コンプレッサはロータリー・コンプレッサまたはその他の適切なコンプレッサであっても良い。
【0077】
操作において、空気供給システム654は、以下のように加圧空気を新生児シミュレータ600に供給する。大気668またはタンクからの空気が、入力マフラー656を通ってコンプレッサに入る。コンプレッサ・コントローラ662は、一次アキュムレータ664内の圧力を維持するために用いる。チェックバルブ660は、空気フローが確実に正しい向きとなるようにする。二次アキュムレータ内で予め定められた圧力を維持するために、圧力調整器(図示せず)を用いることもできる。一次アキュムレータおよび二次アキュムレータは、新生児シミュレータ600のアクチュエータに接続され、空気の供給を制御する。一実施形態において、一次アキュムレータはアクチュエータに接続されて、気道650への空気供給を制御する。一実施形態において、二次アキュムレータはアクチュエータに接続されて、肺への空気供給を制御する。コンプレッサ・コントローラ662は、選択的に電力をコンプレッサ658に供給し、一次アキュムレータ内で望ましい圧力を維持する。一実施形態において、望ましい一次アキュムレータの圧力の概略値は4.5〜5.5psiであり、望ましい二次アキュムレータの圧力の概略値は1.5psiである。いくつかの実施形態において、空気供給システム654は、さらに、シミュレートされた循環系に接続されて、シミュレートされた脈拍を提供するなど、シミュレートされた循環系を促通する。
【0078】
空気供給システム654の部品は、システムが発生するノイズを最低限に抑えるように配置、絶縁、および弱音化されている。ユーザは聴診器を用いて新生児シミュレータ600の心臓や呼吸を評価するのであるから、空気供給システム654からの過度のノイズはユーザにとって邪魔になり、気が散る原因となる。そのために、空気供給システム654の一部を新生児シミュレータ600の頭部602および両手両足(腕622、624および脚626、628)内に収納しても良い。
【0079】
例えば、一実施形態によると、コンプレッサ658、チェックバルブ660、およびコンプレッサ・コントローラ662は頭部602内に配置され、マフラーおよびアキュムレータ脚626、628内に配置されている。頭部の部品により発生するノイズは、図20に概略を示した音緩衝エンクロージャ672により遮断される。一実施形態によると、音緩衝エンクロージャ672は、遮音体として機能する第一の層と、マスバリヤとして機能する第二の層とを有する2層システムである。一態様において、遮音体およびマスバリヤは、EAR Specialty Compositesからの雑音防止物質で形成されている。さらに、コンプレッサ658が発生する排気は、新生児シミュレータ600の脚626、628の中へ送られる。各脚626、628は、マフラーシステムおよび空気タンクを含む。マフラーシステムは「うるさい」排気を緩衝し、新生児シミュレータ600で呼吸および脈拍のシミュレーションに用いる「静かな」空気をタンクに供給する。一態様において、脚626、628自体が、空気タンクとして機能し、漏れを防止するために密閉されている。
【0080】
図21は、マフラーシステム674の一実施例を示す。マフラーシステム674は、うるさい空気の音を緩衝する3つの離れた部分676、678、および680を有する。各部分676、678、および680は各々、遮音体として機能する第一の層682、684、および686と、マスバリヤとして機能する第二の層688、690、および692とを有する。一態様において、遮音体およびマスバリヤは、音緩衝エンクロージャ672として上述したEAR Specialty Compositesからの雑音防止物質と同様なもので形成されている。うるさい空気はチューブ694を介してマフラーシステム内へ送られる。次いで、静かな、すなわち緩衝された空気が、チューブ696を介してマフラーシステムから出る。一実施形態において、各脚626、628は、マフラーシステムの他、雑音防止物質を裏張りしてあり、ノイズをさらに弱め、緩衝する。
【0081】
一実施形態において、手および足は、顔および上部胴体部とともに、適当な血液への酸素の送り込みまたは酸素不足により色彩を変化させる。血液への酸素の送り込みが減少すると、まず両手両足が色彩を変化させ(末梢性のチアノーゼ)、続いて顔および上部胴体部が色彩を変化させる(中枢性のチアノーゼ)。そのような変化は、血液中の酸素の送り込みが進むにつれて可逆性がある。一実施形態においては、新生児の酸素がなくなった時間の長さによって色彩変化およびこれに対応する生命徴候の変化が開始する場所が決まり、新生児をうまく健康な状態に戻すために必要な作業が決まる。いくつかの実施形態において、シミュレータは、中枢部および末梢部の色彩を別々に変化させる機構を有する。この機構は、いくつかの実施形態では、青いLEDまたは他のライトを用いてチアノーゼをシミュレートする。
【0082】
一実施形態において、感熱着色システムは、論理的にプログラム15aと接続され、例えば、指導者が、新生児の条件を明確に定める。その後、着色は、ユーザによって実行されるCPRの質に対応し、向上、悪化、現状維持のいずれかとなる。比較すると、成人は酸素がなくても5〜10分耐えられる。母体または母体シミュレータ300は、正常な成人よりも速く酸素を使うため、より早く影響を受ける。他方、新生児は、酸素がなくても15分ほど耐えられるが、約30分で死亡する。従って、低酸素事象が5〜7分である場合、新生児シミュレータ600はかなり簡単に「ピンク色に戻る」。低酸素事象が12〜15分である場合、回復はより遅く、ユーザ側の作業がより多く必要となる。さらに、低酸素事象が20分を超える場合、エピネフリンを使ったとしても、ユーザが新生児シミュレータ600を「ピンク色に戻す」ことは非常に難しく、新生児シミュレータ600は死亡したり、脳性麻痺のような一生涯続く疾患を負うことになり得る。
【0083】
一実施形態において、指導者は、図22の画面ディスプレイ700で示したように、新生児シミュレータ600のチアノーゼの程度を選択することができる。画面ディスプレイ700には示されていないが、指導者は、また、新生児シミュレータ600の腕622、624および脚626、628の筋緊張度(例えば、ふにゃふにゃ、適度に柔軟、動きなど)や「発語」(例えば泣き、うめき、喘鳴など)など、新生児シミュレータ600のその他の属性を選択または定義することができる。新生児シミュレータ600の生命徴候および回復は、図23に示したように、ディスプレイ702を用いて監視することができる。プログラムは、また、色彩の変化を望まないならば、オーバーライドを提供する。
【0084】
図24〜27において係合システム740が示されており、このシステムは、胎児または新生児シミュレータ302、600を母体シミュレータ300と選択的に係合させる受け部342および突起344のシステムの代替実施形態である、。係合システム740は、機構744と係合する機構742を有する。いくつかの実施形態においては、機構742は胎児または新生児シミュレータ302、600内に配置され、機構744は母体シミュレータ300内に配置される。一実施形態において、機構742は受け部342を代替し、また機構744は突起344を代替するようになっている。別の実施形態では、機構742は母体シミュレータ300内に配置され、機構744は胎児または新生児シミュレータ302、600内に配置される。
【0085】
特に図25を参照すると、機構742は、開口部746が貫通するように延びたハウジング745を有する。本実施形態において、開口部746は中心に配置され、実質的に円筒形である。別の実施形態において、開口部746は、その他の種々の断面形状を有することができ、これには多角形、不規則な形状、その他の形状などが含まれる。機構742は、また、ロック部748を有する。ロック部748およびハウジング745は、永久的に一緒に固定(例えば接着)されていても良いし、一時的に一緒に固定(例えばネジで嵌合)されていても良い。さらに、ロック部748および/またはハウジング745は、この2つのピース間の嵌合を行い易くするために、図示されていない追加的特徴を有しても良い。別の実施形態においては、ハウジング745およびロック部748は一体型のピースである。
【0086】
図26で示したように、ロック部748は本体749を有する。本体749は、機構742の開口部746と接合するようになっている。従って、本実施形態において、本体749は実質的に円筒形であるが、別の実施形態では、開口部746と合うような、その他の断面形状を有することができる。ロック部748は、さらに、ロックピン752を、図26に示した延出位置から、縮退位置へ動かすアクチュエータ750を有する。一実施形態において、ロックピン752の縮退位置は実質的に、ロック部の本体749内である。後述のように、ロックピン752を選択的に延出および縮退することにより、機構742が選択的に機構744と嵌合される。このようにして、胎児および新生児シミュレータ302は選択的に母体シミュレータ300と係合する。いくつかの実施形態において、アクチュエータ750は、ソレノイドによって選択的に作動する。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、アクチュエータ150に近接した胎児または新生児シミュレータ、または母体シミュレータ300内に配置される。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、機構742内に配置される。いくつかの実施形態において、ソレノイドは、ワイヤレス装置またはコンピュータシステムで作動され、指導者が選択的に胎児または新生児シミュレータを解放することができる。
【0087】
特に図27を参照すると、機構744は本体754を有する。本実施形態では、本体753は実質的に円筒形であるが、別の実施形態では、その他の断面形状を有する。機構744は、また、係合部754を有する。係合部754は、実質的に正方形の断面形状を有するが、別の実施形態では、その他の断面形状を有する。係合部754は、さらに、これを通って延びた開口部755を有する。開口部755は、機構742のロック部748を受けるようになっている。係合部754は、また、ロック穴756を有する。ロック部748のロックピン752は、延出時に、ロック穴756と嵌合される。縮退時には、ロックピン752は、ロック穴756から縮退して、ロック機構748を係合部754から解放する。
【0088】
図28を参照すると、胎児または新生児シミュレータ302、600を選択的に回転させるシステムが示されている。前記システムは、カム348aを、胎児シミュレータを回転させる第一の位置と胎児シミュレータを回転させない第二の位置との間で動かすようになっている。このように、前記システムは、出産のシミュレーション中に胎児シミュレータを選択的に回転させる、または回転させないために用いることができる。いくつかの実施形態において、カム348aを軌道347a〜bに近接する位置に縮退させると、胎児シミュレータの回転が防止される。いくつかの実施形態において、カム348aは、第一の位置よりも回転量が少ない、いくらかの回転を胎児シミュレータに与えるための中間位置までさらに動くことができる。いくつかの実施形態において、カム348aは、複数の中間位置の間で動くことができ、各位置で、異なる回転運動量が可能になる。いくつかの実施形態において、前記複数の中間位置および前記回転運動量は連続的である。いくつかの実施形態において、前記複数の中間位置および前記回転運動量は離散的である。
【0089】
前記システムは、カム348aを選択的に縮退させるようになっているソレノイド760を有する。ソレノイド760は、延長部761および固定部材762を介してカム348aと接続されている。一実施形態において、固定部材762はボルト、スクリュ、その他のネジ部材、またはその他のカム348aを延長部761に接続する機構である。カム348aは、固定部材764および766を介して軌道347aに接続される。固定部材764および766は、いくつかの実施形態においては、ボルトおよびナットである。固定部材764および766は、また、カム348aが軌道347aに関して望ましくない並進および回転運動をすることを防止する働きもする。別の実施形態において、カム348aおよびソレノイド760は、軌道347aに沿って並進するようになっていても良い。さらに、いくつかの実施形態においては、カム348aは軌道347aに関して回転運動をするようになっていても良い。いくつかの実施形態において、カム348aの位置は、指導者またはコンピュータプログラムにより遠隔制御され、また、いくつかの実施形態においては、ワイヤレスで遠隔制御される。前記システムを軌道347aおよびカム348aに関して説明したが、同システムは軌道347bおよび348bにも当てはまる。
【0090】
例示的な実施の形態を示して説明してきたが、広範囲な修正、変更、および代替が前述した開示において意図され、いくつかの例では、本実施の形態のいくつかの特徴は、他の特徴を伴って使用せずに採用することができる。前述の記載において実施形態の範囲を逸脱せずにさまざまな変形態様を実施することができることを理解すべきである。例えば、システム10は、プログラム15aおよび/または仮想器具12およびセンサ30を単に修正することによって修正することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、広範囲にかつ実施形態の範囲と整合するように解釈されることが適当である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者看護をユーザに教授するためのインタラクティブ教育システムであって、
出産シミュレーションにおいて、並進運動および選択的回転運動を胎児シミュレータに提供するための機構を有する母体シミュレータと、
前記母体シミュレータと伴に使用され、出産後シミュレーションにおいて前記母体シミュレータから分離される前記胎児シミュレータと、
を有するシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーションにおいて、前記胎児シミュレータの吸引分娩を容易にするようになっている頭部を有するものである。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーション中に前記頭部に加えられた力を監視するための頭部センサを有するものである。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記頭部センサは、前記頭部に近接した、前記シミュレータの頸部に配置されるものである。
【請求項5】
請求項3記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記頭部センサと通信する出力装置を有し、この出力装置は前記加えられた力の量に基づいて出力を供給するように動作可能である。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記母体シミュレータの前記機構と選択的に係合するための装置を有するものである。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記装置が選択的に係合している場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外し可能ではなく、前記装置が選択的に係合していない場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外すことが可能である。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、前記装置は前記胎児シミュレータの胴体内に配置されるものである。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、2つの肩部と、各肩部内に配置された肩センサとを含み、この肩センサにより前記出産シミュレーション中に前記肩部に加えられた力が監視されるものである。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、2つの股関節部と、各股関節内の股関節部センサとを含み、この股関節部センサにより前記出産シミュレーション中に前記股関節部に加えられた力が監視されるものである。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーション中に前記胎児シミュレータに加えられた力を監視するセンサを有するものである。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記センサと通信する出力装置を有し、この出力装置は前記胎児シミュレータに加えられた力の量に基づいて出力を供給するように動作可能である。
【請求項13】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、シミュレートされた心臓および肺を含む人体の少なくとも一部位の模型を有するものである。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、28週および40週からな成るグループから選択される在胎期間におけるほぼ平均的なサイズの新生児のサイズである。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、呼吸をシミュレートするために前記肺に接続された空気供給システムを有するものである。
【請求項16】
請求項15記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、コンプレッサと、前記コンプレッサに接続された一次アキュムレータと、前記コンプレッサに接続された二次アキュムレータと、前記コンプレッサと通信して当該コンプレッサの出力圧力を制御するためのコンプレッサ・コントローラとを有するものである。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記コンプレッサは、騒音遮断体(noise barrier)により絶縁されているものである。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、前記騒音遮断体は、遮音体(acoustic barrier)物質で作られた第一の層と、マスバリヤ(mass barrier)物質で作られた第二の層とを有する。
【請求項19】
請求項17記載のシステムにおいて、前記コンプレッサおよび前記騒音遮断体は、前記胎児シミュレータの頭部内に配置され、前記一次および二次アキュムレータは、前記胎児シミュレータの一対の脚内に配置されるものである。
【請求項20】
請求項15記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、シミュレートされた循環系と接続されているものである。
【請求項21】
請求項20記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、さらに、前記シミュレートされた循環系に、シミュレートされた脈拍を提供するようになっているものである。
【請求項22】
請求項21記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、中枢部と、当該中枢部から距離をおいて放射状に配置された末梢部と、前記胎児シミュレータのチアノーゼをシミュレートするために、前記中枢部および前記末梢部の色彩を独立して変化させる機構とを有するものである。
【請求項23】
患者看護をユーザに教授するためのインタラクティブ教育システムであって、
出産シミュレーションにおいて、回転運動および並進運動を胎児シミュレータに提供するための機構を有する母体シミュレータと、
前記母体シミュレータと伴に使用され、出産後シミュレーションにおいて前記母体シミュレータから分離される前記胎児シミュレータと、
を有し、
前記母体シミュレータは、外部装置との物理的な接続なしに動作可能である
システム。
【請求項24】
請求項23記載のシステムにおいて、前記母体シミュレータは、さらに、
内部電源を含むものである。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、前記内部電源は、少なくとも1の充電池を有するものである。
【請求項26】
請求項23記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、外部装置との物理的な接続なしに動作可能である。
【請求項27】
請求項26記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記母体シミュレータの前記機構と選択的に係合するための装置を有し、前記胎児シミュレータは、前記装置が選択的に係合している場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外し可能ではなく、前記装置が選択的に係合していない場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外すことが可能である。
【請求項28】
請求項27記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、シミュレートされた心臓および肺を含む人体の少なくとも一部位の模型を有するものである。
【請求項29】
請求項28記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、呼吸をシミュレートするために前記肺に接続された空気供給システムを含み、前記空気供給システムは、コンプレッサと、前記コンプレッサに接続された一次アキュムレータと、前記コンプレッサに接続された二次アキュムレータと、前記コンプレッサと通信して当該コンプレッサの出力圧力を制御するためのコンプレッサ・コントローラとを有するものである。
【請求項30】
請求項29記載のシステムにおいて、前記コンプレッサは、騒音遮断体で絶縁されており、前記騒音遮断体は、遮音体物質で作られた第一の層と、マスバリヤ物質で作られた第二の層とを有するものである。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、前記コンプレッサおよび前記騒音遮断体は、前記胎児シミュレータの頭部内に配置され、前記一次および二次アキュムレータは、前記胎児シミュレータの一対の脚内に配置されるものである。
【請求項32】
請求項23記載のシステムにおいて、前記母体シミュレータの前記機構の一部は、前記胎児シミュレータに回転運動を提供する第一の位置と前記胎児シミュレータに回転運動を提供しない第二の位置との間で選択的に移動可能である。
【請求項33】
請求項32記載のシステムにおいて、前記機構の一部は、前記第一の位置と前記第二の位置との間の第三の位置に選択的に移動可能であり、前記第三の位置においては、前記第一の位置よりも、前記胎児シミュレータに提供される回転運動量が少ないものである。
【請求項1】
患者看護をユーザに教授するためのインタラクティブ教育システムであって、
出産シミュレーションにおいて、並進運動および選択的回転運動を胎児シミュレータに提供するための機構を有する母体シミュレータと、
前記母体シミュレータと伴に使用され、出産後シミュレーションにおいて前記母体シミュレータから分離される前記胎児シミュレータと、
を有するシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーションにおいて、前記胎児シミュレータの吸引分娩を容易にするようになっている頭部を有するものである。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーション中に前記頭部に加えられた力を監視するための頭部センサを有するものである。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記頭部センサは、前記頭部に近接した、前記シミュレータの頸部に配置されるものである。
【請求項5】
請求項3記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記頭部センサと通信する出力装置を有し、この出力装置は前記加えられた力の量に基づいて出力を供給するように動作可能である。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記母体シミュレータの前記機構と選択的に係合するための装置を有するものである。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記装置が選択的に係合している場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外し可能ではなく、前記装置が選択的に係合していない場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外すことが可能である。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、前記装置は前記胎児シミュレータの胴体内に配置されるものである。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、2つの肩部と、各肩部内に配置された肩センサとを含み、この肩センサにより前記出産シミュレーション中に前記肩部に加えられた力が監視されるものである。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、2つの股関節部と、各股関節内の股関節部センサとを含み、この股関節部センサにより前記出産シミュレーション中に前記股関節部に加えられた力が監視されるものである。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記出産シミュレーション中に前記胎児シミュレータに加えられた力を監視するセンサを有するものである。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
前記センサと通信する出力装置を有し、この出力装置は前記胎児シミュレータに加えられた力の量に基づいて出力を供給するように動作可能である。
【請求項13】
請求項1記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、シミュレートされた心臓および肺を含む人体の少なくとも一部位の模型を有するものである。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、28週および40週からな成るグループから選択される在胎期間におけるほぼ平均的なサイズの新生児のサイズである。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、呼吸をシミュレートするために前記肺に接続された空気供給システムを有するものである。
【請求項16】
請求項15記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、コンプレッサと、前記コンプレッサに接続された一次アキュムレータと、前記コンプレッサに接続された二次アキュムレータと、前記コンプレッサと通信して当該コンプレッサの出力圧力を制御するためのコンプレッサ・コントローラとを有するものである。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記コンプレッサは、騒音遮断体(noise barrier)により絶縁されているものである。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、前記騒音遮断体は、遮音体(acoustic barrier)物質で作られた第一の層と、マスバリヤ(mass barrier)物質で作られた第二の層とを有する。
【請求項19】
請求項17記載のシステムにおいて、前記コンプレッサおよび前記騒音遮断体は、前記胎児シミュレータの頭部内に配置され、前記一次および二次アキュムレータは、前記胎児シミュレータの一対の脚内に配置されるものである。
【請求項20】
請求項15記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、シミュレートされた循環系と接続されているものである。
【請求項21】
請求項20記載のシステムにおいて、前記空気供給システムは、さらに、前記シミュレートされた循環系に、シミュレートされた脈拍を提供するようになっているものである。
【請求項22】
請求項21記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、中枢部と、当該中枢部から距離をおいて放射状に配置された末梢部と、前記胎児シミュレータのチアノーゼをシミュレートするために、前記中枢部および前記末梢部の色彩を独立して変化させる機構とを有するものである。
【請求項23】
患者看護をユーザに教授するためのインタラクティブ教育システムであって、
出産シミュレーションにおいて、回転運動および並進運動を胎児シミュレータに提供するための機構を有する母体シミュレータと、
前記母体シミュレータと伴に使用され、出産後シミュレーションにおいて前記母体シミュレータから分離される前記胎児シミュレータと、
を有し、
前記母体シミュレータは、外部装置との物理的な接続なしに動作可能である
システム。
【請求項24】
請求項23記載のシステムにおいて、前記母体シミュレータは、さらに、
内部電源を含むものである。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、前記内部電源は、少なくとも1の充電池を有するものである。
【請求項26】
請求項23記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、外部装置との物理的な接続なしに動作可能である。
【請求項27】
請求項26記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、前記母体シミュレータの前記機構と選択的に係合するための装置を有し、前記胎児シミュレータは、前記装置が選択的に係合している場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外し可能ではなく、前記装置が選択的に係合していない場合は出産シミュレーション中に前記母体シミュレータから取外すことが可能である。
【請求項28】
請求項27記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、シミュレートされた心臓および肺を含む人体の少なくとも一部位の模型を有するものである。
【請求項29】
請求項28記載のシステムにおいて、前記胎児シミュレータは、呼吸をシミュレートするために前記肺に接続された空気供給システムを含み、前記空気供給システムは、コンプレッサと、前記コンプレッサに接続された一次アキュムレータと、前記コンプレッサに接続された二次アキュムレータと、前記コンプレッサと通信して当該コンプレッサの出力圧力を制御するためのコンプレッサ・コントローラとを有するものである。
【請求項30】
請求項29記載のシステムにおいて、前記コンプレッサは、騒音遮断体で絶縁されており、前記騒音遮断体は、遮音体物質で作られた第一の層と、マスバリヤ物質で作られた第二の層とを有するものである。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、前記コンプレッサおよび前記騒音遮断体は、前記胎児シミュレータの頭部内に配置され、前記一次および二次アキュムレータは、前記胎児シミュレータの一対の脚内に配置されるものである。
【請求項32】
請求項23記載のシステムにおいて、前記母体シミュレータの前記機構の一部は、前記胎児シミュレータに回転運動を提供する第一の位置と前記胎児シミュレータに回転運動を提供しない第二の位置との間で選択的に移動可能である。
【請求項33】
請求項32記載のシステムにおいて、前記機構の一部は、前記第一の位置と前記第二の位置との間の第三の位置に選択的に移動可能であり、前記第三の位置においては、前記第一の位置よりも、前記胎児シミュレータに提供される回転運動量が少ないものである。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2010−506217(P2010−506217A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531570(P2009−531570)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/080252
【国際公開番号】WO2008/042931
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506177659)ゴーマード サイエンティフィック カンパニー、インク. (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/080252
【国際公開番号】WO2008/042931
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506177659)ゴーマード サイエンティフィック カンパニー、インク. (5)
【Fターム(参考)】
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