説明

悪意の第三者からの不当呼を判定する方法及び電話自動応対装置

【課題】留守番電話機能及び着呼者側アドレス機能を用いて、できる限り簡易なシーケンスで、悪意の第三者からの不当呼を判定することができる方法等を提供する。
【解決手段】電話自動応対装置は、正当発呼者名を記憶するアドレス記憶部と、着呼者の声によって着呼直後の第1の応対メッセージを予め録音した応対メッセージ記憶部と、正当発呼者の声紋情報を記憶する声紋情報記憶部とを有する。電話自動応対装置は、着呼時に、応対メッセージ記憶部の第1の応対メッセージを、発呼者側へ発声する。次に、発呼者の発声から、音声認識処理によってテキストを抽出する。次に、テキストに、アドレス記憶部に記憶された正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、声紋情報記憶部に記憶された正当発呼者名の声紋情報とが一致するか否かを判定する。一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪意の第三者からの不当呼を判定する方法及び電話自動応対装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着呼側電話機には、通話前に発呼者を確認するために、留守録機能やナンバーディスプレイ機能がある。留守録機能の場合、在宅時であっても相手の声を確認した後に、応対することができる。ナンバーディスプレイ機能の場合、発信者番号を確認した後に、応対することができる。しかしながら、留守録の場合、発呼者が声を入れることなく呼切断する場合が多い。また、ナンバーディスプレイ機能の場合、発信者番号の非通知や、不明な番号も多い。
【0003】
近年、振り込め詐欺のような、電話機を用いた詐欺被害が多く発生している。被害者の多くも、このような事件を認識しているにも関わらず、犯人との会話に動揺し、冷静な判断を欠いてしまう。このとき、被害者は、第三者による詐欺の可能性の注意さえも無視する場合が多い。これは、被害者が、犯人との会話を、親近者に関する会話と誤って認識することによる。このような事件に対応するために、電話機への着呼直後であって通話を開始する前に、悪意の第三者からの不当呼の可能性を判断することが好ましい。
【0004】
着呼前に、その呼をコールセンタへ転送する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、コールセンタ側事業者が、着呼者に代わって、人的にその電話を受信する。悪意の第三者からの不当呼の可能性があると判断した場合、その事業者は、着呼者へその旨を通知する。
【0005】
また、発呼者が称する所属情報に基づいて団体データベースを参照し、その所属情報に誤った情報が含まれるか否かを判断する技術がある(例えば特許文献2参照)。誤った情報が含まれる場合には、悪意の第三者からの不当呼の可能性がある旨を、着呼者へ通知する。ここでは、個人情報保護の観点から、団体データベースの公開が問題となる。
【0006】
更に、発呼者の発声内容を、音声認識処理によって分析する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、発呼者が口述する口座番号と、予め登録された詐欺用口座情報とを照合することによって不当呼か否かを判定する。また、発呼者の音声特徴と、予め登録された犯人の音声特徴とを照合する。更に、発呼者の発声内容に、予め登録された不当キーワードが含まれるか否かを判定する。これらを総合的に判定した結果を記述したメールを、予め登録されたメールアドレスへ送信する。
【0007】
更に、着呼者以外の支援者(例えば親近者)へ、その着呼者における不当呼の可能性を通知する技術もある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、着呼者が、悪意の第三者からの不当呼と認識しない場合であっても、親近者が、その着呼者へ冷静な対応を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−173710号公報
【特許文献2】特開2007−228384号公報
【特許文献4】特開2008−210085号公報
【特許文献3】特開2007−159043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された技術によれば、コールセンタの人的コストを要する。特許文献2に記載された技術によれば、団体データベースを要する。特許文献3に記載された技術によれば、犯人を特定するために高機能な照合エンジンを要する。また、特許文献4に記載された技術によれば、人的な支援者を要する。
【0010】
そこで、本発明は、留守番電話機能及び着呼者側アドレス機能を用いて、できる限り簡易なシーケンスで、悪意の第三者からの不当呼を判定することができる方法及び電話自動応対装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、電話機の着呼時に、発呼者に対して自動的に応対する電話自動応対装置を用いて、悪意の第三者からの不当呼を判定する方法であって、
電話自動応対装置は、
正当発呼者名を記憶するアドレス記憶部と、
着呼者の声によって着呼直後の第1の応対メッセージを予め録音した応対メッセージ記憶部と、
正当発呼者の声紋情報を記憶する声紋情報記憶部と
を有しており、
電話自動応対装置は、
着呼時に、応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージを、発呼者側へ発声する第1のステップと、
発呼者の発声から、音声認識処理によってテキストを抽出する第2のステップと、
テキストに、アドレス記憶部に記憶された正当発呼者名が含まれているか否かを判定する第3のステップと、
テキストに正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、声紋情報記憶部に記憶された正当発呼者名の声紋情報とが一致するか否かを判定する第4のステップと、
発呼者の発声と声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する第5のステップと
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の不当呼判定方法における他の実施形態によれば、
応対メッセージ記憶部は、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第4のステップについて、テキストに正当発呼者名が含まれていない場合、
第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、第2のステップへ移行することも好ましい。
【0013】
本発明の不当呼判定方法における他の実施形態によれば、
電話自動応対装置は、不当呼キーワードを予め記憶した不当呼キーワード記憶部を更に有し、
第3のステップについて、テキストに、不当呼キーワード記憶部に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
第4のステップについて、
第1のサブステップは、テキストに正当発呼者名が含まれてなく、且つ、不当呼キーワードが含まれている場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、当該不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、
第3のサブステップは、テキストに、不当呼キーワード記憶部に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
テキストに、不当呼キーワードが含まれている場合、当該電話機の利用者に対して不当呼の可能性がある旨を通知することも好ましい。
【0014】
本発明の不当呼判定方法における他の実施形態によれば、
応対メッセージ記憶部は、正当発呼者名毎に異なる質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第5のステップについて、発呼者の発声と声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、
応対メッセージ記憶部に記憶された、当該正当発呼者名に対応する第2の応対メッセージを発声する第1のサブステップと、
発呼者の発声から、音声認識処理部によってテキストを抽出する第2のサブステップと、
テキストに、回答キーワード記憶部に記憶された、第2の応対メッセージに対応する回答キーワードが含まれているか否かを判定する第3のサブステップと、
テキストに回答キーワードが含まれていない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する第4のサブステップと
を有することも好ましい。
【0015】
本発明の不当呼判定方法における他の実施形態によれば、電話自動応対装置の機能が携帯電話機内に搭載されているか、又は、電話自動応対装置が、ホームネットワーク内若しくは通信事業者設備内に配置されていることも好ましい。
【0016】
本発明によれば、悪意の第三者からの不当呼を判定するために、電話機の着呼時に、発呼者に対して自動的に応対する電話自動応対装置において、
正当発呼者名を記憶するアドレス記憶手段と、
着呼者の声によって着呼直後の第1の応対メッセージを予め録音した応対メッセージ記憶手段と、
正当発呼者名の声紋情報を記憶した声紋情報記憶手段と、
着呼時に、応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージを、発呼者側へ発声する第1の応対メッセージ発声手段と、
発呼者の発声からテキストを抽出する音声認識処理手段と、
テキストに、アドレス記憶部に記憶された正当発呼者名が含まれているか否かを判定する第1のテキスト判定手段と、
テキストに正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、声紋情報記憶部に記憶された正当発呼者名の声紋情報とを照合する声紋照合手段と、
発呼者の発声と声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する不当呼通知手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の電話自動応対装置における他の実施形態によれば、
応対メッセージ記憶手段は、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第1のテキスト判定手段によってテキストに正当発呼者名が含まれていないと判定された場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声する第2の応対メッセージ発声手段を更に有することを特徴とすることも好ましい。
【0018】
本発明の電話自動応対装置における他の実施形態によれば、
不当呼キーワードを予め記憶した不当呼キーワード記憶手段を更に有し、
第1のテキスト判定手段は、テキストに、不当呼キーワード記憶部に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
第2の応対メッセージ発声手段は、テキストに正当発呼者名が含まれてなく、且つ、不当呼キーワードが含まれている場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、当該不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、
テキストに、不当呼キーワード記憶部に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定する第2のテキスト判定手段を更に有し、
不当呼通知手段は、テキストに、不当呼キーワードが含まれている場合、当該電話機の利用者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する
ことも好ましい。
【0019】
本発明の電話自動応対装置における他の実施形態によれば、
応対メッセージ記憶手段は、正当発呼者名毎に異なる質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第2の応対メッセージ発声手段は、発呼者の発声と声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、応対メッセージ記憶部に記憶された、当該正当発呼者名に対応する第2の応対メッセージを発声し、
第2のテキスト判定手段は、テキストに、回答キーワード記憶部に記憶された、第2の応対メッセージに対応する回答キーワードが含まれているか否かを判定し、
不当呼判定手段は、テキストに回答キーワードが含まれていない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する
ことも好ましい。
【0020】
本発明の電話自動応対装置における他の実施形態によれば、携帯電話機内に搭載されているか、又は、ホームネットワーク内若しくは通信事業者設備内に配置されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の不当呼判定方法及び電話自動応対装置によれば、自然に発声させた悪意の第三者の声紋情報と、正当発呼者の声紋情報と照合することによって、悪意の第三者からの不当呼を判定することができる。悪意の第三者である発呼者は、電話自動応対装置と会話をしていることを感じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】本発明における第1のシーケンス図である。
【図3】図2の第1のシーケンスについて、発呼者名を問い直すシーケンス図である。
【図4】本発明における第2のシーケンス図である。
【図5】本発明における第3のシーケンス図である。
【図6】本発明における電話自動応対装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0025】
発呼者として、振り込め詐欺のような悪意の第三者を想定する。発呼者は、着呼者の電話番号だけでなく、着呼者の親近者の氏名も知っている。発呼者は、親近者名を用いて、着呼者に対して詐欺行為を実行する。
【0026】
本発明によれば、発呼者に対して自動的に応対する電話自動応対装置1を有する。電話自動応対装置1は、電話網の通信事業者設備内やホームネットワーク内に備えられものであってもよいし、携帯電話機に搭載されるものであってもよい。本発明の電話自動応対装置1は、留守番電話機能及び着呼者側アドレス機能を用いて、できる限り簡易なシーケンスで、悪意の第三者からの不当呼を判定することができる。
【0027】
図2は、本発明における第1のシーケンス図である。
【0028】
図1のシーケンスは、発呼者が、着呼者の親近者ではない他人になりすまして電話をかけるシナリオである。
[シナリオ1]
(システム)「もしもし」
(相手) 「あ、由紀恵だけど」
【0029】
(S201)電話自動応対装置1は、応対メッセージ記憶部を有し、電話機3からの着呼者の発声によって、第1の応対メッセージを予め録音する。第1の応対メッセージは、着呼直後の応対メッセージであり、例えば「もしもし」である。
【0030】
また、電話自動応対装置1は、声紋情報記憶部を有し、正当発呼者の声紋情報も記憶する。声紋情報は、正当発呼者によって発声された音声データから、予め得られたものである。例えば、親近者である「由紀恵」さんが、「由紀恵だけど」と発声した音声データから、その声紋情報を抽出する。
【0031】
声紋情報とは、声帯や声道等の個人的特徴を周波数分析により抽出したパラメータである。声紋照合とは、登録した声紋情報のパターンとの照合により、登録者本人を認証する技術である。
【0032】
(S202)悪意の第三者が、電話機2から、着呼者の電話番号へ向けて発呼したとする。このとき、電話網に設置された電話自動応対装置1が、その呼を横取りして着呼させる。これにより、電話自動応対装置1と、発呼側電話機2とが、呼接続される。
【0033】
(S203)電話自動応対装置1は、着呼時に、応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージ「もしもし」を、発呼者側へ発声する。発呼者の電話機には、着呼者の声で「もしもし」と発声される。
【0034】
(S204)ここで、発呼者が発声する。図2によれば、例えば「あ、由紀恵だけど」と発声したとする。「由紀恵」とは、着呼者の家族である。即ち、悪意の第三者である発呼者は、「由紀恵」を名乗って、詐欺行為をしようとしている。
【0035】
電話自動応対装置1は、発呼者が発声した「あ、由紀恵だけど」を音声データとして取得する。このとき、発呼者の発声における声紋情報も検出される。
【0036】
(S205)電話自動応対装置1は、音声認識処理部を用いて、その音声データからテキストを抽出する。そのテキストには、「由紀恵」が含まれる。
【0037】
電話自動応対装置1は、アドレス記憶部を有し、正当発呼者名を記憶する。アドレス記憶部は、例えば携帯電話機のアドレス帳であって、そこに記憶された氏名(ニックネームであってもよい)は、正当発呼者名といえる。
【0038】
(S206)電話自動応対装置1は、音声認識によって得られたテキストに、アドレス記憶部に記憶された正当発呼者名が含まれているか否かを判定する。アドレス帳のようなアドレス記憶部には、着呼者における正当発呼者名として、「由紀恵」が含まれている。
【0039】
(S207)次に、電話自動応対装置1は、発呼者の発声と、声紋情報記憶部に記憶された正当発呼者名の声紋情報とが一致するか否かを判定する。
【0040】
(S208)発呼者の発声と声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する。例えば「この電話は不当呼の可能性があります」の文字を、着呼側電話機3へ送信する。例えば、呼接続に基づくショートメールによって送信されてもよい。
【0041】
その後、電話自動応対装置1は、発呼者からの呼を、呼を接続又は切断する。不当呼の可能性がある場合に、その呼を接続するか又は切断するかは、着呼者の設定に基づく。
【0042】
図3は、図2の第1のシーケンスについて、発呼者名を問い直すシーケンス図である。
【0043】
図3によれば、第2の応対メッセージとして、不特定発呼者に対して質問をするメッセージが、電話機3から電話自動応対装置1に予め録音されている。不特定発呼者に対して質問は、例えば「どちら様ですか?」「何のご用件ですか?」である。
【0044】
(S301)図2のS201〜S203の後、発呼者が、着呼者を名乗らなかった場合である。発呼者が、例えば「あ、私だけど」と発声したとする。
【0045】
(S302)電話自動応対装置1は、発呼者が発声した「あ、私だけど」を音声データとして取得する。そして、電話自動応対装置1は、音声認識処理部を用いて、その音声データからテキストを抽出する。
【0046】
(S303)電話自動応対装置1は、そのテキストに、アドレス記憶部に記憶された正当発呼者名が含まれているか否かを判定する。
【0047】
(S304)電話自動応対装置1は、テキストに正当発呼者名が含まれていないので、不特定発呼者に対する第2の応対メッセージを発声する。例えば「どちら様ですか?」(又は「何のご用件ですか?」が発声される。
【0048】
これに対して、発呼者が「あ、由紀恵だけど」と名乗った場合、図2のS204以降と同様のシーケンスが実行される。
【0049】
図4は、本発明における第2のシーケンス図である。
【0050】
図2のシーケンスは、発呼者が、着呼者の親近者ではない他人、例えば「警察」になりすまして電話をかけるシナリオである。この場合、電話自動応対装置1は、正当発呼者の声紋情報を用いて、不当呼を判定することができない。
[シナリオ2]
(システム)「もしもし」
(相手) 「こちら警察のものですが。」
(システム)「何のご用件ですか?」
(相手) 「実はお宅の由紀恵さんが交通事故を起こしまして、・・・」
【0051】
電話自動応対装置1は、不当呼キーワードを予め記憶した不当呼キーワード記憶部を更に有する。不当呼キーワード記憶部には、「警察」「事故」・・・のように、詐欺行為の電話内容で使用される可能性が高いキーワードが予め記憶されている。
【0052】
(S401)図2のS201〜S203の後、発呼者が発声する。図4によれば、例えば「こちら警察のものですが。」と発声したとする。悪意の第三者である発呼者は、「警察」を名乗って、詐欺行為をしようとしている。電話自動応対装置1は、発呼者が発声した「こちら警察のものですが。」を音声データとして取得する。
【0053】
(S402)電話自動応対装置1は、音声認識処理部を用いて、その音声データからテキストを抽出する。そのテキストには、「警察」が含まれる。
【0054】
(S403)テキストに、正当発呼者名が含まれているか否か、及び、不当呼キーワード記憶部に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを判定する。
【0055】
(S404)テキストに正当発呼者名が含まれてなく、且つ、不当呼キーワード「警察」が含まれている場合、応対メッセージ記憶部に記憶された、当該不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声する。例えば、不特定発呼者に対して、「何のご用件ですか?」が発声される。
【0056】
(S405)発呼者は、このような質問に対して、例えば「実は、お宅の由紀恵さんが交通事故を起こしまして・・・」と発声する。電話自動応対装置1は、発呼者側からの発声を、音声データとして取得する。
【0057】
(S406)電話自動応対装置1は、音声認識処理部を用いて、その音声データからテキストを抽出する。
【0058】
(S407)電話自動応対装置1は、そのテキストに、不当呼キーワードが含まれているか否かを判定する。ここでは、そのテキストには、不当呼キーワード「事故」が含まれている。
【0059】
(S408)電話自動応対装置1は、テキストに不当呼キーワードが含まれている場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する。その後、電話自動応対装置1は、発呼者からの呼を、呼を接続又は切断する。
【0060】
図5は、本発明における第3のシーケンス図である。
【0061】
図3のシーケンスによれば、発呼者の声紋情報と、正当発呼者の声紋情報とが、照合で不一致となった場合のシナリオである。
[シナリオ3]
(システム)「もしもし」
(相手) 「あ、由紀恵だけど」
(システム)「あ、元気?ところでこの前、飼い始めた犬、何という名前だっけ?」
(相手) 「・・・」
【0062】
(S501)図2のS201〜S207の後、声紋照合によって不一致と判定されたとする。
【0063】
正当発呼者名毎の第2の応対メッセージは、電話機3から予め録音されている。第2の応対メッセージは、正当発呼者名毎に異なる質問であって、正当発呼者しか知り得ない質問である。例えば、正当発呼者名が家族の「由紀恵」である場合、「あ、元気?ところでこの前、飼い始めた犬、何という名前だっけ?」である。
【0064】
また、正当発呼者毎の第2の応対メッセージに対する回答キーワードも、電話自動応対装置1へ登録される。例えば、犬の名前「太郎」である。電話自動応対装置1は、この回答キーワードをテキストで記録する。
【0065】
ここで、電話自動応対装置1は、テキストに正当発呼者名が含まれており、且つ、声紋照合で不一致となった場合、当該正当発呼者に対する第2の応対メッセージを発声する。例えば、家族である正当発呼者名「由紀恵」に対して、その家族しか知らない質問「あ、元気?ところでこの前、飼い始めた犬、何という名前だっけ?」が発声される。
【0066】
(S502)発呼者は、いきなり犬の名前を聞かれることとなる。発呼者は、このような質問に対して絶句するか、意味不明の名前を発声する。電話自動応対装置1は、発呼者側からの発声を、音声データとして取得する。
【0067】
(S503)電話自動応対装置1は、音声認識処理部を用いて、その音声データからテキストを抽出する。
【0068】
(S504)電話自動応対装置1は、そのテキストに、第2の応対メッセージに対応する回答キーワード、例えば犬の名前「太郎」が含まれているか否かを判定する。ここでは、そのテキストには、犬の名前「太郎」は含まれない。
【0069】
(S505)電話自動応対装置1は、テキストに回答キーワード「太郎」が含まれていない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する。その後、電話自動応対装置1は、発呼者からの呼を、呼を接続又は切断する。
【0070】
図6は、本発明における電話自動応対装置の機能構成図である。
【0071】
図6によれば、電話自動応対装置1は、アドレス記憶部101と、応対メッセージ記憶部102と、声紋情報記憶部103と、不当呼キーワード記憶部104と、回答キーワード記憶部105とを有する。
【0072】
アドレス記憶部101は、正当発呼者名を記憶する。また、正当発呼者名に対応する電話番号も記憶する。
【0073】
応対メッセージ記憶部102は、着呼直後の第1の応対メッセージと、正当発呼者名毎に及び不特定発呼者に対して異なる質問をする第2の応対メッセージとを、着呼者の声によって予め録音する。
【0074】
声紋情報記憶部103は、正当発呼者の声紋情報を記憶する。声紋情報は、実際に、正当発呼者が発声した音声から抽出される。
【0075】
不当呼キーワード記憶部104は、不当呼キーワードを予め記憶する。不当呼キーワードとは、例えば「警察」「事故」・・・のように、詐欺行為の電話内容で使用される可能性が高いキーワードである。
【0076】
回答キーワード記憶部105は、正当発呼者毎の第2の応対メッセージに対応する回答キーワードを記憶する。
【0077】
また、電話自動応対装置1は、第1の応対メッセージ発声部111と、音声認識処理部112と、声紋照合部113と、第1のテキスト判定部114と、第2の応対メッセージ発声部121と、第2のテキスト判定部122と、不当呼通知部131と、呼接続部132とを更に有する。これら機能構成部は、電話自動応対装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0078】
第1の応対メッセージ発声部111は、着呼時に、応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージ(例えば「もしもし」)を、発呼者側へ発声する。
【0079】
音声認識処理部112は、辞書及び言語モデルを参照し、発呼者の発声からテキストを抽出する。認識語の音声データと、発呼者の発声した音声データとを比較することによって、尤度が算出される。最も尤度が高い認識語が、発声された語として決定される。
【0080】
声紋照合部113は、音声認識されたテキストに正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、声紋情報記憶部103に記憶された正当発呼者名の声紋情報とを照合する。不一致となった場合、不当呼通知部131又は第2の応対メッセージ発声部121へ、その旨を通知する。
【0081】
第1のテキスト判定部114は、第1の応対メッセージに対して発呼者が発声した内容(テキスト)に、アドレス記憶部101に記憶された正当発呼者名が含まれているか否かを判定する。正当発呼者名が含まれている場合、その旨が声紋照合部113へ通知される。
【0082】
また、第1のテキスト判定部114は、テキストに、不当呼キーワード記憶部104に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かも更に判定する。テキストに不当呼キーワードが含まれている場合、第2の応対メッセージ発声部121へその旨を通知する。
【0083】
第2の応対メッセージ発声部121は、以下のような第2の応対メッセージを発声する。
[テキストに正当発呼者名が含まれていない場合]
第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声する。
[テキストに正当発呼者名が含まれてなく、且つ不当呼キーワードが含まれている場合]
第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声する。
【0084】
第2のテキスト判定部122は、第2の応対メッセージに対して発呼者が発声した内容(テキスト)に、回答キーワード記憶部105に記憶された、第2の応対メッセージに対応する回答キーワードが含まれているか否かを判定する。また、第2のテキスト判定部122は、テキストに、不当呼キーワード記憶部104に記憶された不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定する。回答キーワードが含まれていない場合、及び、不当呼キーワードが含まれている場合、その旨を不当呼通知部131へ通知する。
【0085】
不当呼通知部131は、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する。
【0086】
呼接続部132は、発呼者からの呼を、着呼側電話機3に対して、接続又は切断する。
【0087】
以上、詳細に説明したように、本発明の不当呼判定方法及び電話自動応対装置によれば、発呼者に対して少なくとも2回、自然に発声させることによって、留守番電話機能及び着呼者側アドレス機能を用いて、悪意の第三者からの不当呼を判定することができる。悪意の第三者である発呼者は、電話自動応対装置と話をしていることを感じることがない。
【0088】
本発明によれば、簡易なシーケンスによって不当呼であるか否かを判定するために、電話自動応対装置の機能が携帯電話機内に搭載されることもできる。また、電話自動応対装置が、ホームネットワーク内若しくは通信事業者設備内に配置されても、ネットワークの負荷が小さい。
【0089】
前述した本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、電話機を用いた振り込め詐欺、オレオレ詐欺等の不当呼であるか否かを、利用者が通話を開始する前に判断することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電話自動応対装置
101 アドレス記憶部
102 応対メッセージ記憶部
103 声紋情報記憶部
104 不当呼キーワード記憶部
105 回答キーワード記憶部
111 第1の応対メッセージ発声部
112 音声認識処理部
113 声紋照合部
114 第1のテキスト判定部
121 第2の応対メッセージ発声部
122 第2のテキスト判定部
131 不当呼通知部
132 呼接続部
2 発呼側電話機
3 着呼側電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機の着呼時に、発呼者に対して自動的に応対する電話自動応対装置を用いて、悪意の第三者からの不当呼を判定する方法であって、
電話自動応対装置は、
正当発呼者名を記憶するアドレス記憶部と、
着呼者の声によって着呼直後の第1の応対メッセージを予め録音した応対メッセージ記憶部と、
正当発呼者の声紋情報を記憶する声紋情報記憶部と
を有しており、
前記電話自動応対装置は、
着呼時に、前記応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージを、発呼者側へ発声する第1のステップと、
発呼者の発声から、音声認識処理によってテキストを抽出する第2のステップと、
前記テキストに、前記アドレス記憶部に記憶された前記正当発呼者名が含まれているか否かを判定する第3のステップと、
前記テキストに前記正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、前記声紋情報記憶部に記憶された前記正当発呼者名の声紋情報とが一致するか否かを判定する第4のステップと、
前記発呼者の発声と前記声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する第5のステップと
を有することを特徴とする不当呼判定方法。
【請求項2】
前記応対メッセージ記憶部は、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第4のステップについて、前記テキストに前記正当発呼者名が含まれていない場合、
第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、第2のステップへ移行する
ことを特徴とする請求項1に記載の不当呼判定方法。
【請求項3】
前記電話自動応対装置は、不当呼キーワードを予め記憶した不当呼キーワード記憶部を更に有し、
第3のステップについて、前記テキストに、前記不当呼キーワード記憶部に記憶された前記不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
第4のステップについて、
第1のサブステップは、前記テキストに前記正当発呼者名が含まれてなく、且つ、前記不当呼キーワードが含まれている場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、当該不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、
第3のサブステップは、前記テキストに、前記不当呼キーワード記憶部に記憶された前記不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
前記テキストに、前記不当呼キーワードが含まれている場合、当該電話機の利用者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する
ことを特徴とする請求項2に記載の不当呼判定方法。
【請求項4】
前記応対メッセージ記憶部は、前記正当発呼者名毎に異なる質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第5のステップについて、前記発呼者の発声と前記声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、
前記応対メッセージ記憶部に記憶された、当該正当発呼者名に対応する第2の応対メッセージを発声する第1のサブステップと、
発呼者の発声から、前記音声認識処理部によってテキストを抽出する第2のサブステップと、
前記テキストに、前記回答キーワード記憶部に記憶された、第2の応対メッセージに対応する回答キーワードが含まれているか否かを判定する第3のサブステップと、
前記テキストに前記回答キーワードが含まれていない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する第4のサブステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の不当呼判定方法。
【請求項5】
前記電話自動応対装置の機能が携帯電話機内に搭載されているか、又は、前記電話自動応対装置が、ホームネットワーク内若しくは通信事業者設備内に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の不当呼判定方法。
【請求項6】
悪意の第三者からの不当呼を判定するために、電話機の着呼時に、発呼者に対して自動的に応対する電話自動応対装置において、
正当発呼者名を記憶するアドレス記憶手段と、
着呼者の声によって着呼直後の第1の応対メッセージを予め録音した応対メッセージ記憶手段と、
前記正当発呼者名の声紋情報を記憶した声紋情報記憶手段と、
着呼時に、前記応対メッセージ記憶部に録音された第1の応対メッセージを、発呼者側へ発声する第1の応対メッセージ発声手段と、
発呼者の発声からテキストを抽出する音声認識処理手段と、
前記テキストに、前記アドレス記憶部に記憶された前記正当発呼者名が含まれているか否かを判定する第1のテキスト判定手段と、
前記テキストに前記正当発呼者名が含まれている場合、発呼者の発声と、前記声紋情報記憶部に記憶された前記正当発呼者名の声紋情報とを照合する声紋照合手段と、
前記発呼者の発声と前記声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する不当呼通知手段と
を有することを特徴とする電話自動応対装置。
【請求項7】
前記応対メッセージ記憶手段は、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第1のテキスト判定手段によって前記テキストに前記正当発呼者名が含まれていないと判定された場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声する第2の応対メッセージ発声手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の電話自動応対装置。
【請求項8】
不当呼キーワードを予め記憶した不当呼キーワード記憶手段を更に有し、
第1のテキスト判定手段は、前記テキストに、前記不当呼キーワード記憶部に記憶された前記不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定し、
第2の応対メッセージ発声手段は、前記テキストに前記正当発呼者名が含まれてなく、且つ、前記不当呼キーワードが含まれている場合、第2の応対メッセージ記憶部に記憶された、当該不特定発呼者に質問をする第2の応対メッセージを発声し、
前記テキストに、前記不当呼キーワード記憶部に記憶された前記不当呼キーワードが含まれているか否かを更に判定する第2のテキスト判定手段を更に有し、
前記不当呼通知手段は、前記テキストに、前記不当呼キーワードが含まれている場合、当該電話機の利用者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する
ことを特徴とする請求項7に記載の電話自動応対装置。
【請求項9】
前記応対メッセージ記憶手段は、前記正当発呼者名毎に異なる質問をする第2の応対メッセージを更に記憶し、
第2の応対メッセージ発声手段は、前記発呼者の発声と前記声紋情報記憶部の声紋情報とが一致しない場合、前記応対メッセージ記憶部に記憶された、当該正当発呼者名に対応する第2の応対メッセージを発声し、
第2のテキスト判定手段は、前記テキストに、前記回答キーワード記憶部に記憶された、第2の応対メッセージに対応する回答キーワードが含まれているか否かを判定し、
前記不当呼判定手段は、前記テキストに前記回答キーワードが含まれていない場合、当該電話機の着呼者に対して不当呼の可能性がある旨を通知する
ことを特徴とする請求項6に記載の電話自動応対装置。
【請求項10】
携帯電話機内に搭載されているか、又は、ホームネットワーク内若しくは通信事業者設備内に配置されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の電話自動応対装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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