説明

情報保持構造及び情報保持方法

【課題】個人情報のデータを、必要なときに利用可能な状態で長期間にわたって確実に保持することを目的とする。
【解決手段】2次元コードなどの表示形式に加工した個人情報データを印刷したシート状の情報記録体3を、爪面1に接着可能な底面と前記情報記録体3を取付可能な取付面とを有するベース層2の前記取付面に取り付け、さらに、この情報記録体3を覆う透明な保護層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の表示形式に加工した個人情報を保持しておくための情報保持構造及び情報保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海外において、旅行者がパスポートやクレジットカードを紛失したり盗難に遭ったりする被害は後を絶たず、海外渡航者の増加に伴って、これらの被害件数は年間5万件にも達している。パスポートなどを紛失したり盗難に遭ったりしたときには、直ちに対処することが重要であり、これらの利用停止などの処置を行うことで被害を最小限に食い止めることができる。
【0003】
しかし、カード会社や旅行会社などへの連絡先が分からなかったり、連絡先等が分かっていてもパスポートの番号や発行年月日、カードの番号や有効期限などが分からないと処置が遅れてしまうこととなる。
【0004】
パスポートなどの貴重品は持ち歩かないようにしたり、上着の内ポケットに入れるなどして管理したり、またパスポートのコピーやカード番号などの個人情報のメモを別に保管しておくことが勧奨されているが、徹底されないことも多いし、盗難などによりこれらを紛失してしまうおそれもある。
【0005】
カード番号のような個人情報を保持しておく手段として特許文献1がある。特許文献1に記載の方式は、個人情報をバーコード化して絵柄付のシールにし、このシールを身体の腕などに貼り付けるておくものである。この方式によれば、カードなどの盗難のおそれはなく、このバーコードを読み取ることでいつでも個人情報を読み出すことができる。
【0006】
しかし、このようなシールを身体に貼り付けるだけでは、汗をかいたりしただけで剥がれやすくなるうえに、入浴などによって完全に剥がれてしまうおそれがある。そのため、海外に旅行する場合など長期にわたる情報保持手段としては全く使用できない。
【特許文献1】特開2001−134536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、個人情報を、必要なときに利用可能な状態で長期間にわたって確実に保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究の結果、所定の表示形式に加工して印刷した個人情報を爪面に貼り付けておくことで、紛失や盗難のおそれがなく、個人情報データのバックアップとして長期間にわたって保持できることを知見し本発明に至った。
すなわち本発明は、個人情報データを爪面に貼り付けて保持可能であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
爪面に接着可能な底面と情報記録体を取付可能な取付面を有するベース層に情報記録体を貼り付けることにより、爪面に対して確実に情報記録体を貼り付けることができるうえに、個人情報を印刷した情報記録体を爪面に貼り付けておくことにより、盗難のおそれがなくなり、さらに、保護層によって情報記録体の損傷や剥がれ落ち等による紛失を防止して、長期間にわたって情報記録体を確実に保持しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至図9を参照して本発明に係る情報保持方法について説明する。図1は、本発明に係る情報保持方法により形成した情報保持構造を示す要部断面図であり、図2は情報保持方法の手順を示すフローチャートである。
【0011】
情報保持構造は、図1に示すように、爪面1の表面に接着したベース層2と、ベース層2の上に貼り付けられ、個人情報データを印刷した情報記録体3と、これらを覆う保護層4とにより構成される。この情報保持構造は、図2のフローチャートに示すように、情報記録体形成工程10、ベース層形成工程20、情報記録体貼付工程30、保護層形成工程40の4つの工程を経て形成される。
【0012】
以下、フローチャートにしたがって、情報保持方法について説明する。
【0013】
情報記録体3を形成する情報記録体形成工程10では、図3に示すように、利用者の保持する個人情報を入力する情報入力工程11と、入力された個人情報を所定の表示形式のデータに加工するデータ化工程12と、加工した個人情報データをシート状の情報記録体3に印刷する印刷工程13とを経て個人情報データを印刷した情報記録体3を生成する。
【0014】
これらの各工程11〜13は、情報入力手段と、データ化手段と、印刷手段とを備えた情報記録体形成装置により行われる。情報記録体形成装置は、例えばパーソナルコンピュータとプリンタにより構成することができる。
【0015】
情報入力工程11において入力される個人情報としては、例えば、利用者のパスポートのパスポート番号や発行年月日、クレジットカードのカード番号や有効期限、そのカード会社の電話番号、ほかに旅行会社の電話番号などがある。
【0016】
これらの個人情報を情報記録体形成装置に入力し、データ化手段によって所定の表示形式のデータに加工する。このデータ化手段により生成される個人情報データとしてはバーコードや2次元コードがあるが、情報量、所要スペースや読取り易さなどから2次元コードを使用するのが好ましい(例えばJIS規格JIS X 0510)。
【0017】
このようにして2次元コードなどの表示形式に加工された個人情報データを、OHPシートなどの透明なフィルムシートやシールなどに印刷してシート状の情報記録体3を形成する。
【0018】
ベース層形成工程20では、図4に示すように、爪面1の表面を荒く研磨する研磨工程21と、ジェル状のベース剤を爪面1に塗布する塗布工程22と、塗布したベース剤を硬化して情報記録体3を取り付けるべき取付面を形成する硬化工程23とを経てベース層2を形成する。
【0019】
研磨工程21では、爪面1の表面をヤスリなどで薄く削って浅い傷を付けておく。傷を付けておくと、ベース剤が爪面1によく密着して剥がれにくくなる。
【0020】
塗布工程22では、ジェル状のベース剤を筆やハケなどを用いて爪面1に塗布する。また、爪面1の先端部にもベース剤を塗布しておく。ベース剤は、ジェル状のものを用いると爪面1から流れ出しにくく取扱いが容易である。
【0021】
そして硬化工程23では、塗布したベース剤を硬化して情報記録体3を取り付ける取付面を形成する。ベース剤として、紫外線を照射することで硬化するジェルや、速乾性のジェルを用いると硬化に時間がかからず作業を簡易に行うことができる。
【0022】
情報記録体貼付工程30では、ベース層形成工程20で形成したベース層2に、情報記録体形成工程10で形成した情報記録体3を貼り付ける。
【0023】
図5に示すように、情報記録体3をシール状に形成した場合には、まずベース層2の取付面の未硬化ジェルや付着物を拭き取って取付面を綺麗にする拭取工程31を行った後、貼付工程32を行って情報記録体3を取付面に直接貼り付ける。
【0024】
また、個人情報データを透明なフィルムシートなどに印刷して情報記録体3を形成した場合には、取付面は拭き取らず、接着剤を取付面に塗布する接着剤塗布工程33を行ってから、貼付工程32を行ってベース層2に情報記録体3を貼り付ける。
【0025】
取付面を拭き取らないようにすることで、接着剤の接着効果を高めることができる。接着剤は速乾性を有するものか、紫外線を照射することで硬化するものを使用すると作業を短時間で行うことができて簡便である。
【0026】
保護層形成工程40では、図6に示すように、ベース層2や露出している爪面1の表面を荒く研磨する研磨工程41と、保護剤を塗布する塗布工程42と、塗布した保護剤を硬化して保護層4を形成する硬化工程43とを経て保護層4を形成する。保護層4は、情報記録体3から情報を読み取る際の妨げとならないように、透明に形成する。
【0027】
研磨工程41では、露出している爪面1の表面やベース層2をヤスリなどで薄く削って浅く傷を付けておく。傷を付けておくと、保護剤がベース層2や爪面1によく密着し、剥がれにくくなる。情報記録体3に傷を付けないようにする。
【0028】
次に塗布工程42では、筆やハケなどを用いて、少なくとも情報記録体3を覆うように、情報記録体3、ベース層2、爪面1に保護剤を塗布する。保護剤は取付面の全体を覆うように塗布する。保護剤は、ジェル状のものを用いると流れ出しにくく取扱いが容易である。
【0029】
そして、保護剤を硬化して保護層4を形成する。保護剤として、紫外線を照射することで硬化するジェルや、速乾性のジェルを用いると硬化に時間がかからず作業を簡易に行うことができる。
【0030】
上記の手順により行われる情報保持方法は以下のような効果を奏する。
【0031】
所定の表示形式に加工した個人情報を印刷して情報記録体を形成し、この情報記録体を爪に貼り付けていることにより、盗難により情報を紛失するおそれがなく、パスポート等を紛失した場合であっても、再発行等や利用停止に必要な情報を保持しておくことができる。
【0032】
また、ベース層を介して情報記録体を取り付けているため、充分な取付面を確保することができ、確実に情報記録体を爪面に貼り付けることができる。
さらに、保護層を形成することにより、情報記録体の剥がれ落ち等による紛失を防止すると共に、情報記録体を保護して長期間にわたって情報記録体を確実に保持しておくことができる。
【0033】
次に、情報保持方法の別の実施形態について説明する。本実施形態では、ベース層形成工程20におけるベース層2の形成工程が前述の実施形態と異なる。図7は、別の実施形態のベース層形成工程50の詳細な手順を示すフローチャートである。
【0034】
ベース層形成工程20は、図7に示すように、爪面1の表面を荒く研磨する研磨工程21と、ジェル状のベース剤を爪面1の表面に塗布する塗布工程22との間に、爪面1の先端部に型台を装着して爪面1を延長する爪面延長工程24を追加した点で前述の実施形態と異なる。
【0035】
爪面延長工程24は、爪面1の先端部に型台を装着し、型台の上面によりベース剤を塗布する爪面1の面積を広げる工程である。
そして、塗布工程22により、この爪面延長工程24によって面積が広がった爪面1全体にベース剤を塗布し、さらに、硬化工程23で、塗布したベース剤を硬化して情報記録体3を取り付ける取付面を形成する。ベース層2を形成した後は、爪面1の先端部に装着した型台を取り外しておく。
【0036】
爪面1の面積が小さく、情報記録体3を貼り付ける充分なスペースがないときには、このように、爪面1の先端部に爪面1の形にあった型台を装着して爪面の面積を拡張し、拡張された爪面にベース剤を塗布して、取付面が情報記録体3の面積よりも大きくなるようにベース層を形成する。
【0037】
このようにして形成した情報保持構造の実施態様を図8及び図9に示す。図8は、型台を用いてベース層2を爪面1よりも先端方向に延長して形成し、このベース層2に個人情報をマトリクス表示した情報記録体を貼り付けた状態の平面図であり、図9は、図8のA−A断面図である。
【0038】
上記の方法により形成した情報保持構造は、爪面の面積によらずベース層によって充分な広さの取付面を形成して情報記録体を貼り付けることができるため、爪面の面積が小さい場合でも充分な量の情報を記録した情報記録体を確実に取り付けることができ、個人情報データを長期間にわたって保持することができる。
【0039】
上述の実施形態において、図例は爪面1が人間の指先の爪面である場合について述べたが、爪面1は人工爪の爪面であってもよい。この場合は、情報保持構造を接着した人工爪を人間の指先の爪面に取り付けて情報を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る情報保持構造の断面図
【図2】本発明に係る情報保持構造の形成方法の手順を示すフローチャート
【図3】情報記録体形成工程の詳細な手順を示すフローチャート
【図4】ベース層形成工程の詳細な手順を示すフローチャート
【図5】情報記録体貼付工程の詳細な手順を示すフローチャート
【図6】保護層形成工程の詳細な手順を示すフローチャート
【図7】別の実施形態のベース層形成工程の詳細な手順を示すフローチャート
【図8】別の実施形態の情報保持構造の実施態様を示す平面図
【図9】別の実施形態の情報保持構造の断面図
【符号の説明】
【0041】
1 爪面
2 ベース層
3 情報記録体
4 保護層
10 情報記録体形成工程
20 ベース層形成工程
30 情報記録体貼付工程
40 保護層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人情報データを印刷したシート状の情報記録体を、爪面に接着可能な底面と前記情報記録体を取付可能な取付面とを有するベース層の前記取付面に取り付け、印刷された個人情報データを読取り可能な状態で前記情報記録体を覆う透明な保護層を形成したことを特徴とする情報保持構造。
【請求項2】
個人情報を加工して所定の表示形式の個人情報データを生成し、この個人情報データを印刷してシート状の情報記録体を形成する情報記録体形成工程と、
爪面にベース剤を塗布して、データを記録した情報記録体を取り付けるべき取付面を備えたベース層を形成するベース層形成工程と、
前記ベース層の取付面に前記情報記録体を貼り付ける情報記録体貼付工程と、
前記情報記録体の上に保護剤を塗布して、情報記録体を覆う透明な保護層を形成する保護層形成工程とからなる情報保持方法。
【請求項3】
前記爪面は人間の指先の爪面であることを特徴とする請求項2記載の情報保持方法。
【請求項4】
前記爪面は人工爪の爪面であることを特徴とする請求項2記載の情報保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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