説明

情報再生装置および情報再生方法

【課題】 情報記録媒体とマスク開口との位置合わせを精度よくかつ高速に行ない、情報処理速度を向上させることができる情報再生装置および情報再生方法を提供する。
【解決手段】 情報再生装置10Aは、まず、第1段階として、XYの2軸ステージを駆動させ、ホログラム情報記録媒体50の再生したい領域(回折光DFaが出射される部分)に、一体となった撮像素子11および液晶マスク12を移動させる。これにより、撮像素子11中の光検出器において回折光DFaを検出し、粗位置調整を行なう。次に、情報再生装置10Aは、第2段階として、液晶マスク12における光の透過と遮断とを画素ごとに切替制御することにより、微小位置調整を行なう。これにより、開口部15aをホログラム20aに対して本来あるべき開口部の位置に微調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報再生装置および情報再生方法に関し、より特定的には、多重ホログラム記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置および情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポケットに入れて持ち運びが可能な情報カードとして、テレホンカードのような磁気カードが一般に用いられてきた。近年では、磁気カードの他にIC(Integrated Circuit)カードが登場し、電子商取引への適用が考えられている。しかし、磁気カードは、安価ではあるものの、外部磁化による情報の劣化や偽造などの危険性が高い。ICカードは、セキュリティが高く偽造されにくいが、1枚あたりのコストが高く、情報記録媒体としてはビット単価が高くなる。
【0003】
このような課題を克服するために考案されたのが、ホログラム画像を生成する回折格子を含む平面型シングルモード光導波路を多層に重ねて作った平面導波型のホログラム情報記録媒体である。平面導波型のホログラム情報記録媒体については、特許文献1〜3に詳細に記載されているため、以下では簡単に紹介する。
【0004】
平面型シングルモード光導波路とは、石英やプラスチックなどの板状の透明な媒質をコア層とし、それよりも低い屈折率の媒質をクラッド層として両側から挟んだ、いわゆるスラブ光導波路である。スラブ光導波路は、コア層に光を閉じ込めることで面内方向に光を伝搬させることができ、半導体レーザ等の光通信用の部品に応用されている。平面導波型のホログラム情報記録媒体は、このスラブ光導波路を幾重にも重ね、かつ各導波層がホログラムを有することを特徴としている。
【0005】
図8は、平面導波型のホログラム情報記録媒体500の情報を再生する従来の情報再生装置100の構成を示した断面図である。情報再生装置100は、撮像素子110と、開口部150を有するマスク120と、シリンドリカルレンズ17とを含む。
【0006】
ホログラム情報記録媒体500は、クラッド層と、クラッド層よりも屈折率の高いコア層とが交互に積層された構造を有し、端面に45度反射ミラー18が形成されている。コア層の一つである導波層23には、情報が散乱要因(ホログラム)200として記録されている。ホログラム200は、屈折率を変調する等の方法で予め形成されたものである。情報記録媒体500は、独立の異なる再生像を回折するホログラムが互いに重なり合う領域を持つ多重方式によって,情報が記録されている。
【0007】
図8を参照して、図示しない光源から出射された平面光波PLは、シリンドリカルレンズ17によって、45度反射ミラー18に円筒状の波面を有する線状ビームPFとして集光される。線状ビームPFは、45度反射ミラー18によって反射され、導波層23に結合して導波光PWとなる。導波光PWは、導波層23に形成されたホログラム200によって散乱され、回折光DFとしてホログラム情報記録媒体500の上面から出射される。
【0008】
回折光DFは、ホログラム情報記録媒体500の上方に配置されたマスク120によってそのほとんどが遮断される。撮像素子110上に結合されるべき再生像は、マスク120に設けられた開口部150によって選択される。このように、マスク120は、空間光変調器として機能する。また、図8に示すように、当該再生像は、マスク120の開口部150よりも大きい。情報再生装置100は、導波層23に結合された導波光PWの回折によって、コア層ごとに異なる画像を結合することができる。
【0009】
図9は、平面導波型のホログラム情報記録媒体500の情報を再生する従来の情報再生装置100の構成を示した上面透視図である。ただし、撮像素子110は図示していない。図9に示すように、開口部150の波面を作り出すホログラム200の大きさは、マスク120の開口部150よりも大きい。したがって、開口部150を通過する回折光DFtは、ホログラム200の情報のみを含むことになる。
【0010】
図8を参照して、情報再生装置100は、シリンドリカルレンズ17をX方向に動かすことによって、線状ビームPFの集光される位置を変えることができる。これにより、平面光波PLが結合される導波層を変え、積層された各導波層に記録された情報を個別に読み出すことができる。このように、ホログラム情報記録媒体500と撮像素子110との間にマスク120を配置し、マスク120の開口部150の開口パターンを変えることによって、撮像素子110上に結合される画像を1枚ずつ分離再生することができる。
【0011】
図9に示すように、情報再生装置100は、ホログラム情報記録媒体500の全体がマスク120によって覆われており、ホログラム情報記録媒体500とほぼ同じ大きさのマスク120が必要となる。また、情報再生装置100は、画像を一枚再生するごとにマスク120の開口部150の開口パターンを変える必要がある。これらにより、情報再生装置100は、コスト的に高くなるという課題がある。
【0012】
上記の課題に対しては、再生しようとするホログラム以外からの回折光が撮像素子110に入り込まない程度にマスク150のサイズを小さくすることが考えられる。マスク150のサイズを小さくした場合、ホログラム情報記録媒体500に記録された情報を全て読み出すためには、ホログラム情報記録媒体500上で当該マスクを移動させて情報を読み出す必要がある。このとき、読み出したい情報が記録されている任意の位置に正確に開口部150および撮像素子110を移動させることが重要となる。
【0013】
開口部150と撮像素子110との位置がずれた場合には、複数のホログラム画像が重なり合ってしまい、再生される画像が劣化する。これをクロストークと称しているが、クロストークを低減させるためには、正確に開口部150とホログラム情報記録媒体500との位置関係を制御する必要がある。これらの位置関係を正確に制御するためには、位置情報を検出しながらマスクおよび撮像素子を移動させる方法が採られる。
【0014】
マスクおよび撮像素子の位置情報を検出することによる位置制御方法の一つとして、特許文献3に記載された方法がある。この方法では、一つの導波路ホログラム中に、情報記録のためのホログラムと、位置合わせのためのホログラムとが形成される。位置合わせ用のホログラムは、一方向へ選択的に光を回折して集光するように設計されている。
【0015】
当該位置合わせ用のホログラムによって回折された光は、2次元光アレイ検出器や光スポット位置検出素子などの光検出器を用いて制御される。具体的には、光検出器のどこに集光点があるのかを検知し、予め決められた位置までマスクおよび撮像素子を平行移動させる。これにより、マスク開口と情報記録媒体との位置関係を正確に制御する。
【特許文献1】特開平11−345419号公報
【特許文献2】特開2001−210088号公報
【特許文献3】特開2001−52128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
マスクおよび撮像素子を移動させる手段としては、ステッピングモータなどを用いた機械的な駆動方法が考えられる。しかしながら、機械的な駆動方法を用いた場合、位置制御のたびに、粗位置調整、微小位置調整という2つの制御を用いた駆動方法をとらねばならない。この場合、制御機器の構造が大きく複雑になってしまうという問題がある。また、位置制御に要する機器の駆動時間が必要となることにより、情報処理速度が遅くなってしまうという問題がある。
【0017】
さらに、ある任意の領域の情報を読み込み、次に、隣接する領域に記録された情報を読み出す際には、再びマスクおよび撮像素子を隣接する情報記録媒体の読み出したい記録領域上に移動させ、マスク開口と情報記録媒体との位置合わせを行なう必要がある。このようにして複数の情報を順次読み込んでいく場合には、マスク開口と情報記録媒体との位置調整を領域ごとに行なう必要が生じる。この場合、領域ごとの位置調整に時間がかかるため、さらに情報処理速度が遅くなるという問題がある。
【0018】
この発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、情報記録媒体とマスク開口との位置合わせを精度よくかつ高速に行ない、情報処理速度を向上させることができる情報再生装置および情報再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、導波層に散乱要因が形成されている平面導波路型の情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、情報記録媒体の導波層に光を入射させる光学系と、導波層を伝搬中に散乱要因によって散乱される光を一部遮蔽するマスクと、マスクの開口部を通って出射される再生光のホログラム像を受光する撮像素子とを備える。撮像素子は、散乱要因に含まれる位置合わせ用散乱要因から散乱される光を検出する光検出器を含む。情報再生装置は、光検出器からの検出結果に基づいてマスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、開口部を散乱要因の所定の位置から隣接する位置に移動させる。
【0020】
好ましくは、光検出器からの検出結果に基づいてマスクを機械的な制御によって移動させることにより、散乱要因の所定の位置を粗調整する2軸ステージをさらに備える。
【0021】
好ましくは、情報再生装置は、2軸ステージによって粗位置調整を行なった後、マスクの開口部を電気的な制御によって移動させる微小位置調整を行なうことにより、散乱要因の所定の位置をより正確に特定する。
【0022】
好ましくは、情報再生装置は、マスクの開口部を画素単位で電気的に移動させることによって微小位置調整を行なう。
【0023】
好ましくは、マスクは、撮像素子と同程度の大きさを有し、撮像素子と一体形成されている。
【0024】
好ましくは、マスクは、液晶を用いた空間光変調器である。
【0025】
好ましくは、マスクは、磁性体を用いた空間光変調器である。
【0026】
この発明の他の局面によれば、導波層に散乱要因が形成されている平面導波路型の情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生方法であって、情報記録媒体の導波層に光を入射させるステップと、導波層を伝搬中に散乱要因によって散乱される光をマスクによって一部遮蔽するステップと、マスクの開口部を通って出射される再生光のホログラム像を受光するステップとを備える。ホログラム像を受光するステップは、散乱要因に含まれる位置合わせ用散乱要因から散乱される光を検出する検出ステップと、検出ステップの検出結果に基づいてマスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、開口部を散乱要因の所定の位置から隣接する位置に移動させる移動ステップとを含む。
【0027】
好ましくは、移動ステップは、検出ステップの検出結果に基づいてマスクを機械的な制御によって移動させることにより、散乱要因の所定の位置を粗調整する粗位置調整ステップと、マスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、散乱要因の所定の位置をより正確に特定する微小位置調整ステップとを含む。
【0028】
好ましくは、微小位置調整ステップは、マスクの開口部を画素単位で電気的に移動させる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、情報記録媒体とマスク開口との位置合わせを精度よくかつ高速に行なうことにより、情報処理速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0031】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの構成を示した断面図である。実施の形態1の情報再生装置10Aは、撮像素子11と、開口部15aを有する液晶マスク12と、シリンドリカルレンズ17とを含む。撮像素子11は、たとえばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサーである。液晶マスク12は、液晶を用いる以外に、たとえば磁性体を用いた空間光変調器であってもよい。
【0032】
磁性体を用いた空間光変調器とは、光磁気材料により作製されており、磁性体における磁気光学効果を利用している。空間光変調器によるマスクは、磁化の方向に独立に制御することが可能な複数の画素により形成されている。
【0033】
磁気光学効果を利用した空間光変調器では、ファラデー効果によって各画素における磁化の方向が変化する。これに応じて、空間光変調器は、各画素を通過する光の偏光方向が互いに反対方向に所定角度ずつ回転される。したがって、各画素における磁化の方向を制御することにより、空間的に変調された光を生成することが可能となる。
【0034】
磁気光学効果を利用した空間光変調器は、旋光を用いる点で液晶の空間光変調器と共通するものの、たとえば以下の点において相違している。
【0035】
第1に、応答スピードが高速液晶の10μ秒程度に対して、数n秒と1000倍以上速い。第2に、画像分解能が1000dpi以上と容易に高くできる。第3に、液体漏れ防止のための袋機能(ガラス板、プラスチック板等による液の封止)が不要である。第4に、画素の状態を切り替えるためのトランジスタ等によって、画素の一部が利用できなくなることがない。
【0036】
上記のように、磁気光学効果を利用した空間光変調器は、いくつかの点で液晶の空間光変調器より優れている。しかしながら、この発明の実施の形態では、一例として液晶マスクを用いるものとする。
【0037】
情報再生装置10Aは、ホログラム情報記録媒体50に記録された情報を再生する。ホログラム情報記録媒体50は、情報再生装置10Aから取り外して持ち運びが可能なリムーバブル媒体である。
【0038】
ホログラム情報記録媒体50は、クラッド層と、クラッド層よりも概ね屈折率の高いコア層とが交互に積層された光導波路構造を有する。コア層の屈折率は、すべてのクラッド層よりも高いことが好ましいが、かならずしもそうである必要はない。たとえば、各コア層の屈折率は、隣接するクラッド層よりも高くなければならないが、隣接しないクラッド層よりも低くなる場合があってもよい。
【0039】
ホログラム情報記録媒体50は、外形がほぼ直方体形状に形成されており、端面にはコア層およびクラッド層が外部に露出した45度反射ミラー18が形成されている。ホログラム情報記録媒体50のコア層は、平面型のシングルモード導波層をなす。
【0040】
コア層の一つである導波層23には、情報が散乱要因(ホログラム)20aとして記録されている。ホログラム20aは、屈折率を変調する等の方法で予め形成されたものである。情報記録媒体50は、独立の異なる再生像を回折するホログラムが互いに重なり合う領域を持つ多重方式によって,情報が記録されている。
【0041】
図1を参照して、図示しない光源から出射された平面光波PLは、シリンドリカルレンズ17によって、45度反射ミラー18に円筒状の波面を有する線状ビームPFとして集光される。線状ビームPFは、45度反射ミラー18によって反射され、導波層23に結合して導波光PWとなる。導波光PWは、導波層23中を層に平行方向に伝搬し、導波層23に形成されたホログラム20aによって散乱される。当該散乱された光は、回折光DFとしてホログラム情報記録媒体50の上面から出射される。
【0042】
ここで、回折光DFは、コア層の複数の領域ごとに形成されたホログラムによる回折光DFa〜DFc等が重なり合ったものとなる。回折光DFa〜DFc等から所望の回折光DFaのみを再生するには、図1に示すように、撮像素子11および液晶マスク12の開口部15aを回折光DFaが集光している部分に移動させる。
【0043】
実施の形態1の情報再生装置10Aでは、撮像素子11および液晶マスク12が一体型となっており、ホログラム情報記録媒体50上を一体となって移動する。撮像素子11および液晶マスク12の開口部15aを回折光DFaが集光している部分に移動させることにより、周辺のホログラムから回折される回折光DFb,DFcは液晶マスク12によって遮蔽される。したがって、液晶マスク12の開口部15aから透過した回折光DFaには再生したい情報のみが含まれ、撮像素子11に取り込まれる。
【0044】
図2は、この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの構成を示した上面透視図である。ただし、撮像素子11は図示していない。図2に示すように、実施の形態1の情報再生装置10Aの液晶マスク12は、図9に示した従来の情報再生装置100のマスク120に比べて小さい。そのため、図1に示すように、液晶マスク12により遮断される回折光は、ホログラム20aの周辺のホログラムから回折される回折光DFb,DFcのみで、他の部分からの回折光については遮断されない。
【0045】
しかしながら、実施の形態1の情報再生装置10Aでは、液晶マスク12のサイズに合わせて、撮像素子11のサイズも同程度に小さくなっている。そのため、図1に示すように、液晶マスク12によって遮蔽されなかった回折光が撮像素子11に入ることはなく、液晶マスク12の開口部15aを通過した回折光DFtのみが撮像素子11に届く。したがって、液晶マスク12によって遮蔽されない回折光が撮像素子11によって読み出されることはない。
【0046】
図1を参照して、情報再生装置10Aは、シリンドリカルレンズ17をXY方向に動かすことによって、線状ビームPFの集光される位置を変えることができる。これにより、平面光波PLが結合される導波層を変え、積層された各導波層に記録された情報を個別に読み出すことができる。
【0047】
以上説明したように、実施の形態1の情報再生装置10Aは、液晶マスク12の開口部15aをホログラム情報記録媒体50の再生したい領域(ホログラム20a)に移動させ、ホログラム20aに記録された情報を有する回折光DFaのみを選択的に液晶マスク12の開口部15aから通過させる。これにより、ホログラム情報記録媒体50の再生したい領域に対するホログラム画像が結像面に形成される。このホログラム画像を撮像素子11で取り込むことによって、ホログラム情報記録媒体50の導波層23にホログラム20aとして記録された情報の読み出しができる。
【0048】
上記の情報読み出しを正確に行なうためには、液晶マスク12の開口部15aをホログラム情報記録媒体50の再生したい領域に移動させる際、開口部15aとホログラム情報記録媒体50との正確な位置合わせが重要となる。
【0049】
実施の形態1の情報再生装置10Aにおいて、開口部15aとホログラム情報記録媒体50との位置合わせがずれてしまった場合、または、位置合わせを行なわない場合、ホログラム画像は正確には観測されない。この場合、近隣の領域に記録された情報を含む回折光DFb,DFcがクロストークとなって再生されるため、複数のホログラム画像が重なって撮像素子11に読み込まれることになる。次に、情報再生装置10Aにおける開口部15aとホログラム情報記録媒体50との正確な位置合わせについて説明する。
【0050】
図1を参照して、ホログラム情報記録媒体50のホログラム20aには、情報記録用ホログラムに加えて、位置合わせ用ホログラムが形成されている。位置合わせ用ホログラムは、一点に集光してスポットを形成するように記録されており、導波光PWを回折したときには、球面波の回折光を発生させる。撮像素子11は、当該位置合わせ用ホログラムが回折した回折光を検出するために、2次元光アレイ検出器、光スポット位置検出器(PSD:Position Sensitive light Detector)のような光検出器を含む。
【0051】
情報再生時、情報再生装置10Aは、当該光検出器のどこに位置合わせ用ホログラムスポットがあるのかを検知する。情報再生装置10Aにおいて、撮像素子11および液晶マスク12は、XYの2軸の平行移動ができる2軸ステージ(図示せず)の上に固定されている。情報再生装置10Aは、検知した位置情報を元に、撮像素子11および液晶マスク12を平行移動させることにより、位置合わせを行なう。
【0052】
以下、実施の形態1の情報再生装置10Aにおけるホログラム画像の読み取り動作について詳述する。
【0053】
まず、第1段階として、情報再生装置10Aは、XYの2軸ステージを駆動させ、ホログラム情報記録媒体50の再生したい領域(回折光DFaが出射される部分)に、一体となった撮像素子11および液晶マスク12を移動させる。これにより、撮像素子11中の光検出器において回折光DFaを検出し、粗位置調整を行なう。
【0054】
図3は、この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの粗位置調整を説明するための透視上面図である。ただし、撮像素子11は図示していない。図3に示すように、粗位置調整の段階では、液晶マスク12の開口部15aは、一般に、ホログラム20aの位置に対して本来あるべき開口部15acの位置からXY軸方向に多少ずれている。この状態では、再生されるホログラム像は、回折光DFaの他に、近隣の領域に記録された情報を含む回折光DFb,DFcが重なり合ったクロストークを含むことになる。
【0055】
上記のようなクロストークを解消するため、次に、第2段階として、情報再生装置10Aは、微小位置調整を行なう。図4は、この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの微小位置調整を説明するための透視上面図である。ただし、撮像素子11およびホログラム20aは図示していない。
【0056】
図4に示すように、液晶マスク12は、光の透過と遮断とを制御できる格子状に形成された画素PXから構成される。液晶マスク12における光の透過と遮断との切替えは、液晶マスク12を画素PXごとに電気的に制御することで行なわれる。液晶マスク12では、開口部15aを光が透過するように制御し、それ以外の部分を光が遮断するように制御する。開口部15aの形状は、液晶マスク12の電気的制御に応じて自由に変えることができる。
【0057】
情報再生装置10Aは、微小位置調整において、2軸ステージによる機械的な駆動方法を用いることなく、液晶マスク12の各画素PXを電気的に制御する。情報再生装置10Aは、開口部15aの位置をXY面内の2方向に動かすことによって、光の透過する開口部15aをホログラム20aに対して本来あるべき開口部15acの位置に制御する。
【0058】
画素制御による開口部15aの位置合わせ精度は、液晶マスク12の画素PXのサイズに依存し、おおよそ7〜15μmである。XY平面上で開口部15aを回転させて位置合わせを行なわなければならない場合においても、開口部15aが回転移動するように画素PXを電気的に制御することが可能である。
【0059】
上記の開口部15aの移動操作において、情報再生装置10Aは、ホログラム20aに含まれる位置合わせ用ホログラムから回折される回折光を、撮像素子11の光検出器によって検出する。情報再生装置10Aは、当該光検出器が検出する信号を読み取りながら、ホログラム像のクロストークが最小限に抑えられる開口部15acの位置を探す。
【0060】
このように、情報再生装置10Aは、電気回路による制御のみで機械的な駆動方法を用いることなく液晶マスク12の開口部15aを動かして微小位置調整を行なう。これにより、液晶のスキャンスピードである数10μ秒程度の時間で微小位置調整ができる。したがって、微小位置調整を機械的手段で行なうよりも短い時間で開口部15aの位置合わせを行なうことができ、この結果、情報処理速度が速くなる。
【0061】
以上のように、実施の形態1によれば、情報記録媒体とマスク開口との位置合わせにおいて機械的な粗位置調整の後に電気的な微小位置調整を行なうことにより、液晶マスク12の大きさを撮像素子11と同程度に小さくすることができる。これにより、情報再生装置の情報処理速度を向上させることができるとともに、情報再生装置のサイズを小さくすることができ、コストの削減にもつながる。
【0062】
[実施の形態2]
実施の形態1の情報再生装置10Aは、再生したい領域であるホログラム20aに液晶マスク12の開口部15aを移動させることで、ホログラム情報記録媒体50の情報を読み出した。実施の形態2では、ホログラム20aの読み出し動作に続けてホログラム20aに隣接する周辺部の領域に記録された情報を読み出す場合について説明する。
【0063】
図5は、この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの構成を示した断面図である。実施の形態2の情報再生装置10Bは、実施の形態1で情報が読み出されたホログラム20aに隣接するホログラム20cの情報を読み出す。ホログラム20cから回折された回折光DFcは、液晶マスク12の開口部20cによって撮像素子11に選択的に読み込まれる。次に、情報再生装置10Bにおける開口部15cとホログラム情報記録媒体50との正確な位置合わせについて説明する。
【0064】
図6は、この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの構成を示した上面透視図である。ただし、撮像素子11は図示していない。図6に示すように、情報再生装置10Bは、実施の形態1で特定したホログラム像のクロストークが最小限に抑えられる開口部15acを、同じくホログラム像のクロストークが最小限に抑えられる隣の開口部15ccに移動させる。
【0065】
図7は、この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの開口部15acを開口部15ccへ移動させる位置調整を説明するための透視上面図である。ただし、撮像素子11およびホログラム20cは図示していない。いま、開口部15acと開口部15ccとの間の距離はホログラム情報記録媒体50の規格等に応じて予め定められているため、開口部15acから開口部15ccへの移動距離は、画素制御によって予めプログラムしておくことが可能である。
【0066】
ゆえに、図7に示すように、実施の形態2の情報再生装置10Bは、開口部15acを隣接する開口部15ccへ移動させる場合、画素制御によって所定の画素数(図7では24画素)分だけ開口部15acを移動させるだけでよい。つまり、ホログラム像のクロストークが最小限に抑えられる開口部15acの位置が特定された情報再生装置10Bは、開口部15acを隣接する開口部15cc等へ移動させるのに、粗位置調整および微小位置調整のような2段階の位置調整は不要となる。
【0067】
したがって、情報再生装置10Bは、液晶のスキャンスピードである数10μ秒程度の時間で、ホログラム20aに隣接するホログラム20cの情報を読み取ることが可能となり、この結果、情報処理速度が速くなる。
【0068】
以上のように、実施の形態2によれば、ホログラム像のクロストークが最小限に抑えられる開口部15acを隣接する開口部15cc等へ移動させる場合、画素制御によって所定の画素数分だけ開口部15acを移動させるだけでよい。これにより、情報再生装置の情報処理速度をさらに向上させることができる。
【0069】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの構成を示した断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの構成を示した上面透視図である。
【図3】この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの粗位置調整を説明するための透視上面図である。
【図4】この発明の実施の形態1による情報再生装置10Aの微小位置調整を説明するための透視上面図である。
【図5】この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの構成を示した断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの構成を示した上面透視図である。
【図7】この発明の実施の形態2による情報再生装置10Bの開口部15acを開口部15ccへ移動させる位置調整を説明するための透視上面図である。
【図8】平面導波型のホログラム情報記録媒体500の情報を再生する従来の情報再生装置100の構成を示した断面図である。
【図9】平面導波型のホログラム情報記録媒体500の情報を再生する従来の情報再生装置100の構成を示した上面透視図である。
【符号の説明】
【0071】
10A,10B,100 情報再生装置、11,110 撮像素子、12 液晶マスク、15a,15ac,15c,15cc,150 開口部、17 シリンドリカルレンズ、18 45度反射ミラー、23 導波層、50,500 ホログラム情報記録媒体、120 マスク、20a,20c,200 ホログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波層に散乱要因が形成されている平面導波路型の情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、
前記情報記録媒体の前記導波層に光を入射させる光学系と、
前記導波層を伝搬中に前記散乱要因によって散乱される光を一部遮蔽するマスクと、
前記マスクの開口部を通って出射される再生光のホログラム像を受光する撮像素子とを備え、
前記撮像素子は、前記散乱要因に含まれる位置合わせ用散乱要因から散乱される光を検出する光検出器を含み、
前記情報再生装置は、前記光検出器からの検出結果に基づいて前記マスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、前記開口部を前記散乱要因の所定の位置から隣接する位置に移動させる、情報再生装置。
【請求項2】
前記光検出器からの検出結果に基づいて前記マスクを機械的な制御によって移動させることにより、前記散乱要因の前記所定の位置を粗調整する2軸ステージをさらに備える、請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記情報再生装置は、前記2軸ステージによって粗位置調整を行なった後、前記マスクの開口部を電気的な制御によって移動させる微小位置調整を行なうことにより、前記散乱要因の前記所定の位置をより正確に特定する、請求項2に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記情報再生装置は、前記マスクの開口部を画素単位で電気的に移動させることによって前記微小位置調整を行なう、請求項3に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記マスクは、前記撮像素子と同程度の大きさを有し、前記撮像素子と一体形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記マスクは、液晶を用いた空間光変調器である、請求項1〜5のいずれかに記載の情報再生装置。
【請求項7】
前記マスクは、磁性体を用いた空間光変調器である、請求項1〜5のいずれかに記載の情報再生装置。
【請求項8】
導波層に散乱要因が形成されている平面導波路型の情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生方法であって、
前記情報記録媒体の前記導波層に光を入射させるステップと、
前記導波層を伝搬中に前記散乱要因によって散乱される光をマスクによって一部遮蔽するステップと、
前記マスクの開口部を通って出射される再生光のホログラム像を受光するステップとを備え、
前記ホログラム像を受光するステップは、
前記散乱要因に含まれる位置合わせ用散乱要因から散乱される光を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの検出結果に基づいて前記マスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、前記開口部を前記散乱要因の所定の位置から隣接する位置に移動させる移動ステップとを含む、情報再生方法。
【請求項9】
前記移動ステップは、
前記検出ステップの検出結果に基づいて前記マスクを機械的な制御によって移動させることにより、前記散乱要因の前記所定の位置を粗調整する粗位置調整ステップと、
前記マスクの開口部を電気的な制御によって移動させることにより、前記散乱要因の前記所定の位置をより正確に特定する微小位置調整ステップとを含む、請求項8に記載の情報再生方法。
【請求項10】
前記微小位置調整ステップは、前記マスクの開口部を画素単位で電気的に移動させる、請求項9に記載の情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−251355(P2006−251355A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67649(P2005−67649)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】