説明

情報処理装置、そのパラメータ設定方法、プログラム及び記録媒体

【課題】サーバ側で起動したアプリケーションプログラムに基づいて作成したデータを圧縮してクライアント側に転送するシステムにおいて、ユーザの手によらずに圧縮のパラメータを調整できるようにする。
【解決手段】情報処理装置は、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションに応じて、データ圧縮に関するパラメータの設定を行う。具体的には、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出手段と、データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて保持するパラメータ情報保持手段と、アプリケーション検出手段で検出された利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータをパラメータ情報保持手段から読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、そのパラメータ設定方法、プログラム及び記録媒体に関し、特に、シンクライアントシステムにおける画面データの転送に好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クライアント側には最低限の機能しか持たせないようにし、サーバ側でアプリケーションプログラムやファイル等の資源を一括管理し、アプリケーションやファイル等を、クライアント側からリモート操作でアクセスするシンクライアントシステムが注目されている。当該シンクライアントシステムにおけるクライアント側の端末(シンクライアント端末)は、リモート操作プログラム以外のアプリケーションプログラムやファイルを保存させないようにすることにより、ハードディスク装置等の記憶装置を持たない。
【0003】
シンクライアント端末で作業を行う際には、シンクライアント側のキーボードやマウス等の操作をもって、サーバ側のアプリケーションプログラムを起動し、該アプリケーションに基づいてシンクライアント端末で表示される画面データを作成し、該画面データをシンクライアント端末にリモートコントロールにて送信する。シンクライアント端末とサーバとを結ぶネットワークには、シンクライアント端末からの操作データ(キーストローク、マウスクリック等)やサーバからのアプリケーションの画面データ等の情報が流れる。
【0004】
ここで、シンクライアント端末で表示される画面データの送信方法は、サーバにて画面の更新部分を検出し、更新された画面データを圧縮して送信し、シンクライアント端末ではこれを受信して画面情報として設定することにより画面更新を行う。このような画面データ送信方法により、更新された差分情報だけが転送され、ネットワーク上を流れるデータ転送量は低く抑える工夫が行われている。
【0005】
例えば特許文献1では、シンクライアントサーバ装置側で映像表示領域に透過色を設定して画面データとしてリモコン経由で送信し、また同時に映像データを別ルートで送信し、シンクライアント端末側でこれらの画面データと映像データをオーバレイ表示にて同一画面上に表示することで、TV電話端末やTV会議端末として高画質な映像を再生できるようにするシンクライアントシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−311957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような画面データ送信方法では、使用するアプリケーションプログラムの内容、利用目的、ネットワークの状況(回線速度等)に応じて、圧縮のパラメータの調整を行えるようになっている場合がある。しかしながら、そのような場合、ユーザは、通信環境、自分の使用目的等に合わせて、マニュアルで最適な圧縮のパラメータ調整を行う必要がある。特に、複数のタイプの異なるアプリケーションプログラムを同時に立ち上げ切り換えて使用する場合に、それぞれのアプリケーションプログラムを最適な状態で利用するために、最適な圧縮パラメータを設定するために、使用するアプリケーションプログラムを切り換える毎に、ユーザがその都度最適な圧縮パラメータをセットし直さなければならず、不便であった。
【0008】
特許文献1で開示された技術は、シンクライアントシステムにおける高画質な映像再生を実現するものではあるが、アプリケーションプログラムやネットワークの状況に応じた圧縮パラメータの調整におけるユーザの不便さに対応するものではない。
【0009】
そこで、本発明は、サーバ側で起動したアプリケーションプログラムに基づいて作成したデータを圧縮してクライアント側に転送するシステムにおいて、ユーザの手によらずに圧縮のパラメータを調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面である情報処理装置は、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションに応じて、データ圧縮に関するパラメータの設定を行う。具体的には、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出手段と、データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて保持するパラメータ情報保持手段と、アプリケーション検出手段で検出された利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータをパラメータ情報保持手段から読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定手段と、を有する。
【0011】
本発明の一側面である情報処理装置のパラメータ設定方法は、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出ステップと、データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて記憶する記憶手段から、アプリケーション検出手段で検出された利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータを読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定ステップと、を有する。
【0012】
本発明の一側面である情報処理装置のパラメータ設定方法は、コンピュータに、圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出処理と、データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて記憶する記憶手段から、アプリケーション検出処理で検出された利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータを読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定処理と、を実行させる。
【0013】
本発明の一側面である記録媒体は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サーバ側で起動したアプリケーションプログラムに基づいて作成したデータを圧縮してクライアント側に転送するシステムにおいて、ユーザの手によらずに圧縮のパラメータを調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態としてのシンクライアントシステムの構成を示した図である。
【図2】本発明の実施形態におけるクライアント装置の表示画面イメージと圧縮パラメータ設定の概要を示した図である。
【図3】本発明の実施形態におけるアプリケーションパラメータの例を示した図である。
【図4】圧縮の際の画質と画像の動きの関係を決定する圧縮パラメータの関係を示した図である。
【図5】画面の動き及びUI入力とバッファ量との関係を示した図である。
【図6】本発明の実施形態における圧縮パラメータ設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態におけるアプリケーションパラメータの例(更新例)を示した図である。
【図8】本発明の実施形態における圧縮パラメータ設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態における圧縮パラメータ設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態におけるアクティブWindowへの帯域割り当てを説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態における圧縮パラメータ設定(変形例)を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態における圧縮パラメータ設定処理とデータの流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態としてのシンクライアントシステムの構成を示した図である。本実施形態のシンクライアントシステムは、クライアント装置100及びサーバ装置200がネットワーク300を介して接続されて構成される。ネットワーク300は、例えばインターネット、LAN、無線LAN等である。
【0018】
クライアント装置100は、データ送受信手段101、圧縮データ伸張手段102、画像データ表示手段103、ユーザインタフェース手段104を有する。
【0019】
データ送受信手段101は、サーバ装置200とネットワーク300を介して諸データのやり取りを行う。具体的には、サーバ装置200から圧縮された画像データを受信し、またサーバ装置200に対してユーザインタフェース手段104による操作データ(キーストローク、マウスクリック等)を送信する。圧縮データ伸張手段102は、データ送受信手段101で受信されたサーバ装置200からの圧縮画像データの伸張を行う。画像データ表示手段103は、圧縮データ伸張手段102で伸張された画像データの画面表示を行う。ユーザインタフェース手段104は、キーボードやマウス等の入力手段から構成され、キーストローク、マウスクリック等のユーザによる操作データを取得する。
【0020】
サーバ装置200は、データ送受信手段201、伝送速度検出手段202、アクティブWindow監視手段203、圧縮パラメータ設定手段204、アプリケーションパラメータ記憶手段205、画像データ圧縮手段206、映像変化量監視手段207、UI入力監視手段208、アプリケーションパラメータ更新手段209、ユーザインタフェース手段210を有する。
【0021】
データ送受信手段201は、クライアント装置100とネットワーク300を介して諸データのやり取りを行う。具体的には、クライアント装置100に対して圧縮された画像データを送信し、またクライアント装置100からユーザによる操作データ(キーストローク、マウスクリック等)を受信する。伝送速度検出手段202は、データ送受信手段201のデータ伝送速度を監視し、ネットワークの帯域幅を監視する。
【0022】
アクティブWindow監視手段203は、クライアント装置100において現在アクティブになっているWindowを監視するとともに、そのアプリケーション名、Windowの位置、サイズの情報を把握する。圧縮パラメータ設定手段204は、アクティブWindow監視手段203からアクティブWindowのアプリケーション名を取得し、アプリケーションパラメータ記憶手段205から、そのアプリケーションに対応した圧縮パラメータを取得するとともに、アクティブWindowのサイズ、位置情報、伝送速度検出手段202からの伝送速度情報に基づいて、画像データ圧縮手段206に、最適な圧縮パラメータの設定を行う。
【0023】
アプリケーションパラメータ記憶手段205は、サーバ装置200上にインストールされたアプリケーションごとの最適なパラメータを記憶する。画像データ圧縮手段206は、サーバ装置200から出力される画像データ(画面イメージ)をキャプチャするとともに、圧縮パラメータに従って画面イメージのデータ圧縮を行う。
【0024】
映像変化量監視手段207は、画像データ圧縮手段206でキャプチャされた映像の情報から、一定時間内のアクティブWindowのエリアの映像の変化量を監視する。UI入力監視手段208は、現在アクティブなWindowにおけるキーボード、マウス等による操作の入力情報について監視を行う。アプリケーションパラメータ更新手段209は、映像変化量監視手段207からの映像変化情報と、UI入力監視手段208からのUI入力情報に基づいて、最適な圧縮のパラメータを生成するとともに、アプリケーションパラメータ記憶手段205からアクティブなWindowのアプリケーション名に対応したパラメータを参照し、生成したパラメータ値に差分がある場合は、そのアプリのパラメータ値のアップデートを行う。ユーザインタフェース手段210は、圧縮パラメータ設定手段204やアプリケーションパラメータ更新手段209に対して、ユーザがマニュアルで設定値を入力する際のユーザとのインタフェースを行う。
【0025】
なお、サーバ装置200は、図示しないが、CPU、メモリ、入出力装置等を備え、プログラム制御により動作するコンピュータであり、CPUがメモリに格納された本発明特有の動作処理が記述されたプログラムを読み込んで、主記憶上に、図1に示す各手段(圧縮パラメータ設定手段204、画像データ圧縮手段206、アクティブWindow監視手段203、映像変化量監視手段207、UI入力監視手段208、アプリケーションパラメータ更新手段209、伝送速度検出手段202等)を構成する。各手段は上記のようにソフトウエアで実現することも可能だが、各部を回路で構成する等してハードウエアで実現することも可能である。
【0026】
はじめに、アプリケーションに応じて圧縮パラメータを調整する処理について説明する。本実施形態では、クライアント装置において利用中のアプリケーションに最適な圧縮パラメータを自動設定する。複数のアプリケーションが利用されている場合には、現在アクティブなWindowとなっているアプリケーションを選択し、該アプリケーションに最適な圧縮パラメータを自動設定する。
【0027】
図2は、本実施形態におけるクライアント装置100の表示画面イメージと圧縮パラメータ設定の概要を示した図である。図2では、Windows(登録商標)の環境下にあるクライアント装置100において、デスクトップ、Webブラウザ、OutLook(登録商標)、Media Playerの4つのアプリケーションが利用されている。
【0028】
図3は、本実施形態におけるアプリケーションパラメータ(アプリケーションごとの圧縮パラメータ)の例を示した図である。このアプリケーションパラメータは、図3に示すように、アプリケーションごとに、その特徴(画質や動き)や操作主体、パラメータ設定値が関連付けられ、データテーブルとしてアプリケーションパラメータ記憶手段205に保持される。図2の表示例では、各アプリケーションの特徴として、デスクトップは画質が線画で動きが小、Webブラウザは画質がテキストで動きが中、OutLook(登録商標)は画質がテキストで動きが小、Media Playerは画質が映像で動きが大となっている。
【0029】
本実施形態では、アクティブWindow監視手段203が、現在のアクティブなWindowのアプリケーションであるMedia Playerを検出し、圧縮パラメータ設定手段204が、Media Playerに最適な圧縮パラメータとして、画質動きの設定値3、バッファ量の設定値3がアプリケーションパラメータ記憶手段から読み出し、画像データ圧縮手段206に読み出したパラメータを設定する。
【0030】
図4(a)は、圧縮の際に与えられた伝送速度に対し、画質と画像の動きの関係を決定する圧縮パラメータの関係を示した図である。本実施形態では、画質動きの設定値として1から5の5段階の値を設けている。この1から5の設定値は、与えられた伝送速度に対し、画像の動きを優先した圧縮を行うか、画質を優先した圧縮を行うかの圧縮の傾向を、設定パラメータとしてユーザに提供するものである。つまり、設定値1は画質最優先設定で設定値1に近づくほど画質優先の設定となり、また設置値5は動き最優先設定で設置値5に近づくほど動き優先の設定となる。
【0031】
本実施形態では、伝送速度が一定の場合に、設定値ごとに対応するデータ圧縮率をあらかじめ定めておき、パラメータ設定で設定値が指定されるとデータ圧縮率が決まり、それに応じてコマ数が計算され、データ圧縮率及びコマ数が決定する。図4(a)に示すように、コマ数と画質はトレードオフの関係にあり、パラメータ設定されたコマ数が大きい場合には画質は粗くなって画像の動きが大きくなる一方で、コマ数が小さい場合は画質が精細になり画像の動きが小さくなる。
【0032】
また、図示はしていないが、バッファ量についても画質動きと同様で、設定値としては1から5の5段階の値を設けているが、これらの値はユーザに目安として提供されるものである。すなわち、各設定値に応じてバッファ量の数値があらかじめ定められており、パラメータ設定で設定値が指定されると実際のバッファ量が決まる。そして、アプリケーションごとの設定値(バッファ量の数値)は、以下の考え方で定めることができる。
【0033】
図5は、画面の動き及びUI入力とバッファ量との関係を示した図である。バッファ量は、回線品質の揺れによる影響を受けにくくするためのもので、映像等を閲覧するアプリにおいてはバッファ量を大きくする。例えば映像アプリや動画閲覧のような画面の動きが大きくUI入力が小さいアプリケーションの利用では、インタラクティブ性は必要とされず、画面の動きを滑らかに見せるために、パラメータ設定されるバッファ量は大きくなる。また、例えばゲームや映像編集のような画面の動きが大きくUI入力が多いアプリケーションの利用では、インタラクティブ性が必要となるため、パラメータ設定されるバッファ量は小さくなる。また、例えばEメールやWord(登録商標)のような画面の動きが小さくUI入力が多いアプリケーションの利用では、画面の動きを滑らかに見せる必要がないため、パラメータ設定されるバッファ量は小さくなる。
【0034】
具体的には、図6に示すフローに従って処理が行われる。まず、電源がONとされ(ステップS101)、アプリケーションの起動が検出される(ステップS102)。そして、圧縮パラメータ設定手段204は、検出したアプリケーションに対応する圧縮パラメータを、アプリケーションパラメータ記憶手段205から取得する(ステップS103)。そして、圧縮パラメータ設定手段204は、取得した圧縮パラメータを画像データ圧縮手段206に設定する(ステップS104)。
【0035】
電源がONとなっている間(ステップS105/NO)、アクティブWindow監視手段203は、現在アクティブなWindowが変化したかどうかを監視する(ステップS106)。アクティブWindow監視手段203は、アクティブWindowの変化を検出した場合(ステップS106/YES)、変化後のアクティブWindowのアプリケーション名を取得し、圧縮パラメータ設定手段204に通知する(ステップS107)。アプリケーション設定手段204は、アクティブWindow監視手段203から通知されたアプリケーション名に基づいて、アプリケーションパラメータ記憶手段205から圧縮パラメータを取得し(ステップS103)、画像データ圧縮手段206に設定する(ステップS104)。
【0036】
次に、アプリケーションの利用状況に応じて、アプリケーションパラメータ記憶手段内のアプリケーションパラメータを更新する処理について説明する。本実施形態では、クライアント装置でのユーザによる実際のアプリケーション利用が当初想定していた状態と異なっていた場合、実際の利用状況に合わせて、保持するアプリケーションパラメータを更新する。
【0037】
図7は、本実施形態におけるアプリケーションパラメータの例を示した図で、パラメータの更新例を表したものである。前述したように、アプリケーションパラメータ記憶手段205内のアプリケーションパラメータは、アプリケーションごとに、その特徴(画質や動き)や操作主体、パラメータ設定値が関連付けられて保持される。パラメータ設定値は、デフォルトで標準値として定められているが、ユーザの利用状況と想定する利用状態との差分から見直した値で修正される。ユーザの実際の利用状況に関する情報は、映像変化量監視手段207で取得される画像の変化量(映像変化情報)と、UI入力監視手段208で取得されるUI入力量(UI入力情報)からなる。
【0038】
例えばMedia Playerの実際の利用状況として、UI入力監視手段208で取得されたUI入力量が当初の想定通りで、映像変化量監視手段207で取得される画像の変化量が想定より大きい場合、図5に示すように、より動き優先の設定となるように画質動きの設定値を3から5に変更し、バッファ量の設定値も3から4に変更する。また、例えばWebブラウザの実際の利用状況として、映像変化量監視手段207で取得される画像の変化量が当初の想定通りで、UI入力監視手段208で取得されたUI入力量が想定より大きい場合、図5に示すように、インタラクティブ性を向上させるためにバッファ量の設定値を2から1に変更する。このようにして、ユーザによる実際のアプリケーションの利用状況に応じて、保持するアプリケーションパラメータを更新する。
【0039】
具体的には、図8に示すフローに従って処理が行われる。まず、電源がONとされ(ステップS201)、圧縮パラメータ設定手段204は、起動したアプリケーションに最適な圧縮パラメータの設定を行う(ステップS202)。このステップS202は、先に述べた図6のステップS102からステップS104に相当する処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
次いで、所定のタイミングで(ステップS203/YES)、映像変化量監視手段207やUI入力監視手段208は、ユーザ利用情報として、映像変化情報やUI入力情報を取得する(ステップS204)。そして、アプリケーションパラメータ更新手段209は、映像変化量監視手段207やUI入力監視手段208から映像変化情報やUI入力情報を取得し、これらの情報に基づいて最適な圧縮のパラメータ値を生成する。生成したパラメータ値とアプリケーションパラメータ記憶手段205内のパラメータ値との差分が所定の閾値以上の場合(ステップS205/YES)、アプリケーションパラメータ更新手段209は生成したパラメータ値を用いて圧縮パラメータの更新を行う(ステップS206)。
【0041】
圧縮パラメータの更新処理のタイミング以外は(ステップS203/NO)、アクティブWindowの変化に応じて圧縮パラメータの調整を行う。すなわち、アクティブWindow監視手段203がアクティブWindowの変化を検出した場合(ステップS208/YES)、アプリケーション設定手段204は、変化後のアクティブWindowに最適な圧縮パラメータの設定を行う(ステップS209)。このステップS209は、先に述べた図6のステップS107、ステップS103からステップS104に相当する処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、ネットワークの状況に応じて圧縮パラメータを調整する処理について説明する。本実施形態では、サーバ装置とクライアント装置を結ぶネットワークの回線状態に基づいて、設定されるパラメータの上限値を調整する。後述するように、ここで上限値が調整されるパラメータはデータ圧縮率である。
【0043】
図4(b)は、回線伝送速度と圧縮パラメータの関係を示した図である。一般に回線伝送速度によって割り当てられる帯域が決まり、割り当て帯域の大きさによってデータ圧縮率の上限が決まる。つまり、回線伝送速度と圧縮パラメータの関係は比例関係にあるといえる。例えば回線伝送速度が10Mbpsの場合と3Mbpsの場合では割り当て帯域が異なり、データ圧縮率の上限が異なるため、動き最優先設定の設定値5を指定しても、設定値5に対応するデータ圧縮率はそれぞれ異なり、それに応じて計算されるコマ数はそれぞれ異なる。回線伝送速度が10Mbpsの場合のコマ数はαとなり、回線伝送速度が3Mbpsの場合のコマ数βとなる。
【0044】
具体的には、図9に示すフローに従って処理が行われる。まず、電源がONとされ(ステップS301)、アプリケーションの起動が検出され(ステップS302)、また伝送速度検出手段202により伝送速度が検出される(ステップS303)。そして、圧縮パラメータ設定手段204は、取得した圧縮パラメータを画像データ圧縮手段206に設定する(ステップS304)。
【0045】
次いで、所定のタイミングで(ステップS305/YES)、伝送速度検出手段202は伝送速度を検出する(ステップS306)。圧縮パラメータ設定手段204は、検出した伝送速度と設定に用いられた伝送速度の差分を求め、差分が所定の閾値以上である場合(ステップS307/YES)に、検出した伝送速度に応じた圧縮パラメータの設定を行う(ステップS308)。
【0046】
伝送速度の変化に応じた圧縮パラメータの調整処理のタイミング以外は(ステップS305/NO)、アクティブWindowの変化に応じて圧縮パラメータの調整を行う。すなわち、アクティブWindow監視手段203がアクティブWindowの変化を検出した場合(ステップS310/YES)、アプリケーション設定手段204は、変化後のアクティブWindowに最適な圧縮パラメータの設定を行う(ステップS311)。このステップS311は、先に述べた図6のステップS107、ステップS103からステップS104に相当する処理である。
【0047】
次に、アクティブWindowへの帯域割り当ての方法について説明する。本実施形態では、アクティブWindowと非アクティブウインドウを分離して別々に圧縮処理できる構成とし、アクティブWindowへの帯域割り当てについて、重み付けを行うことで、アクティブWindowと非アクティブWindowへ割り当てる帯域割合を可変させるようにすることができる。
【0048】
図10はその帯域割り当て方法を説明するための図である。利用中の全アプリケーションが確保できる帯域は回線状態によって決まるが、通常は、各アプリケーションに割り当てられる帯域は、各アプリケーションのWindowサイズに応じて決まる。つまり、図10のテーブル(アクティブなWindowへの割り当て帯域割合の例)において、n=1の場合の割り当て帯域割合が通常で、画面面積に対するWindowサイズの割合がそのまま割り当て帯域割合となる。例えばアクティブWindowが映像を閲覧するアプリケーションの場合、他の非アクティブWindowのアプリケーションに割り当てた帯域を少なくしてでも、より多くの帯域を割り当てたいと考えることがある。
【0049】
このようなニーズに対応するため、本実施形態では、アクティブWindowに対して重み付けを行い、他の非アクティブWindowと比較してより多くの帯域を割り当てられるようにする。具体的には、図10に示すように、表示画面に対するアクティブWindowの面積率と、非アクティブWindowに対する重み付けとを用いて、以下の式により、割り当て帯域割合を決定する。
アクティブWindowへの割り当て帯域割合=xn/(xn+(1−x))
(アクティブWindowの面積率をx、アクティブWindowへの重み付けの係数をn)
【0050】
例えば映像を閲覧するアプリは重み付け係数を4、ゲームのアプリは重み付け係数を3、Webブラウザは重み付けを2とする等、アプリケーションごとに重み付け係数を任意に設定するようにしてもよい。図10のテーブルに示すように、重み付け係数を大きくするほど、アクティブWindowの面積率が小さい場合でもより多くの帯域が割り当てられる。
【0051】
また、図11に示すように、圧縮パラメータの設定を行う場合に、アクティブWindowとそれ以外の非アクティブWindowとを分けて、パラメータ設定するようにしてもよい。つまり、アクティブWindowについては、該Windowのアプリケーションに対応する圧縮パラメータをアプリケーションパラメータデータベースから取得してパラメータ設定を行い、他の非アクティブWindowについては、標準的な(デフォルトの)圧縮パラメータで設定を行うように構成してもよい。
【0052】
図12は、本実施形態における圧縮パラメータの調整処理とデータの流れをまとめたものである。アプリケーションに応じた圧縮パラメータ調整では、画面位置、サイズ情報、アプリケーション名に応じて、画質設定やフレーム数設定が行われ、バッファ量設定はUI入力が影響する。また、圧縮パラメータ更新では、画面の動き(映像変化情報)、UI入力、アクティブWindow情報をもとにアプリケーションデータベース情報が更新され、更新後の情報に基づいて圧縮パラメータが設定される。また、回線状態に応じた圧縮パラメータ調整では、リアルタイムな伝送速度に応じて、画質設定やフレーム数設定が行われる。また、アクティブWindowへの帯域割り当てでは、画面位置、サイズ情報、アクティブWindowをもとに重み付けが行われ、アクティブWindowに帯域が割り当てられ、画質設定やフレーム数設定が行われる。
【0053】
本実施形態によれば、利用するアプリケーションごとにユーザが手動で切り換えていた圧縮パラメータの設定を自動化することが可能となる。また、アプリケーションの利用状況から、最適なパラメータ値が自動的に更新されて保持されるため、ユーザは、パラメータ設定を気にすることなく、アプリケーションを利用することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、新しいアプリケーションを追加した際も、アプリケーションの動きから自動的にパラメータ設定が最適化され、ユーザが設定を気にせずに利用することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態によれば、同じアプリケーションでもユーザごとに使い方が異なる場合にも、ユーザの利用状況に合わせた設定が最適化されるため、ユーザの利用方法に応じた設定を自動化することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、アクティブWindowに対して重み付けを用いた帯域割り当てを行うため、他のアクティブWindowへの割り当てる帯域をアクティブWndowに余分に割くことができ、フレキシブルな帯域割り当てが可能となるとともに、リソースの有効活用が実現される。
【0057】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0058】
すなわち、本実施形態におけるサーバ装置200で実行されるプログラムは、先に述べた各手段(圧縮パラメータ設定手段204、画像データ圧縮手段206、アクティブWindow監視手段203、映像変化量監視手段207、UI入力監視手段208、アプリケーションパラメータ更新手段209、伝送速度検出手段202等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウエアを用いて具体的手段を実現する。すなわち、コンピュータ(CPU)が所定の記録媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各手段が主記憶装置上にロードされて生成される。また、各手段は上記のようにソフトウエアで実現することも可能だが、各部を回路で構成する等してハードウエアで実現することも可能である。
【0059】
本実施形態におけるサーバ装置200で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されるように構成してもよい。また、上記プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供あるいは配布するように構成してもよい。
【0060】
また、上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD、不揮発性のメモリカード等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるように構成してもよい。また、上記プログラムは、ROM等にあらかじめ組み込んで提供するように構成してもよい。
【0061】
この場合、上記記録媒体から読み出された又は通信回線を通じてロードし実行されたプログラムコード自体が前述の実施形態の機能を実現することになる。そして、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成する。
【符号の説明】
【0062】
100 クライアント装置
101,201 データ送受信手段
102 圧縮データ伸張手段
103 画像データ表示手段
104,210 ユーザインタフェース手段
200 サーバ装置
202 伝送速度検出手段
203 アクティブWindow監視手段
204 圧縮パラメータ設定手段
205 アプリケーションパラメータ記憶手段
206 画像データ圧縮手段
207 映像変化量監視手段
208 UI入力監視手段
209 アプリケーションパラメータ更新手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションに応じて、データ圧縮に関するパラメータの設定を行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出手段と、
データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて保持するパラメータ情報保持手段と、
前記アプリケーション検出手段で検出された前記利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータを前記パラメータ情報保持手段から読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記アプリケーションの情報にアプリケーションの利用状況に関する情報が含まれ、
前記アプリケーション検出手段で検出された前記利用中アプリケーションの実際の利用状況に関する情報を取得する利用情報取得手段と、
前記利用情報取得手段で取得された実際の利用状況に関する情報と前記パラメータ情報保持手段で保持された利用状況に関する情報とに基づいて、前記パラメータ情報保持手段に保持された前記利用中のアプリケーションに対応するパラメータを更新するパラメータ更新手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記パラメータ設定手段は、前記アプリケーション検出手段による検出結果に基づいて、データ圧縮に用いるパラメータとして圧縮率を設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記パラメータ設定手段は、前記アプリケーション検出手段による検出結果に基づいて、データ圧縮に用いるパラメータとしてバッファ量を設定することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
接続しているネットワークの回線状況に関する情報を取得する回線情報取得手段を有し、
前記パラメータ設定手段は、前記回線情報取得手段で取得された前記回線状況に関する情報に基づいて、データ圧縮に用いるパラメータとして圧縮率の上限値を設定することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記アプリケーション検出手段で検出された前記利用中アプリケーションに対して、重み付けに応じた帯域を割り当てる帯域割当手段を有することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出ステップと、
データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて記憶する記憶手段から、前記アプリケーション検出手段で検出された前記利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータを読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定ステップと、
を有することを特徴とする情報処理装置のパラメータ設定方法。
【請求項9】
コンピュータに、
圧縮データを転送する先の情報処理装置で利用中のアプリケーションを検出するアプリケーション検出処理と、
データ圧縮に関するパラメータとアプリケーションの情報とを関連付けて記憶する記憶手段から、前記アプリケーション検出処理で検出された前記利用中アプリケーションの情報に対応するパラメータを読み出し、データ圧縮に用いるパラメータとして設定するパラメータ設定処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録しコンピュータ読み取り可能なことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−237726(P2010−237726A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81725(P2009−81725)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】