説明

情報処理装置、スクロール制御プログラムおよびスクロール制御方法

【課題】入力装置を操作せずにユーザの意図した方向にだけスクロールが行われるようにする。
【解決手段】コンピュータ1は表示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えている。コンピュータ1は、表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときのスクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持する基準傾斜保持手段と、基準傾斜保持手段により保持されている基準傾斜と、傾斜検知手段により検知されるスクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力手段と、差分傾斜出力手段から出力される差分傾斜に応じて表示手段の表示範囲を移動させるスクロール手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜による画面のスクロール機能を備えた情報処理装置、画面のスクロールを制御するスクロール制御装置およびスクロール制御プログラム並びにスクロール制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータをはじめとする情報処理装置は、文書作成や、表計算、Webサイトの閲覧といった様々な用途で用いられ、家庭用や業務用として広く普及している。この種の情報処理装置は表示装置が本体と別体となったデスクトップ型と、携帯可能なタイプがある。携帯可能な情報処理装置は表示装置と本体が一体となったノート型や、片手で持ち運びできる程度の大きさのものもある。
【0003】
ところで、携帯可能な情報処理装置の場合、表示画面をスクロールさせるときはユーザがキーボードやマウス、タッチパッドといった入力装置の操作を行う。
【0004】
しかしながら、ユーザが情報処理装置を携帯しているときは表示画面をスクロールさせようにも、キーボードやマウス、タッチパッド等の入力装置を左右いずれかの手で操作することは不可能または困難である。
【0005】
そのため、従来、片手で保持しながら使用される小型情報処理装置において、その小型情報処理装置を保持していない手を使用せずにスクロールの操作を行えるようにする技術があった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−64754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の従来技術では、スクロールの指示が入力された時点の傾斜を基準とし、その基準からの相対的な傾きに応じて画面のスクロールが行われる。そのため、小型情報処理装置を傾けている方向によってスクロールする方向が決まる。したがって、スクロールする方向が小型情報処理装置の持ち方に委ねられてしまい、持ち方によってはユーザの意図しない方向にスクロールが行われることもある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、情報処理装置、画面のスクロールを制御するスクロール制御装置およびスクロール制御プログラム並びにスクロール制御方法において、入力装置を操作せずにユーザの意図した方向にだけスクロールが行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、表示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置であって、表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、方向指示手段によりスクロール方向が指示されたときのスクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持する基準傾斜保持手段と、基準傾斜保持手段により保持されている基準傾斜と、傾斜検知手段により検知されるスクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力手段と、その差分傾斜出力手段から出力される差分傾斜に応じて表示手段の表示範囲を移動させるスクロール手段とを有する情報処理装置を特徴とする。
【0009】
また、本発明は表示手段と、その表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置に組み込まれるスクロール制御装置であって、傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、方向指示手段によりスクロール方向が指示されたときのスクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させる保持制御手段と、保持制御手段が保持させた基準傾斜と、傾斜検知手段により検知されるスクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力手段とを有するスクロール制御装置を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、表示手段と、その表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えたコンピュータに、傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、方向指示手段によりスクロール方向が指示されたときのスクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させる保持制御機能と、保持制御機能により保持させた基準傾斜と、傾斜検知手段により検知されるスクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力機能と、その差分傾斜出力機能により出力される差分傾斜に応じて表示手段の表示範囲を移動させるスクロール機能とを実現させるためのスクロール制御プログラムを提供する。
【0011】
そして、本発明は、表示手段と、その表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置におけるスクロール制御方法であって、傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、方向指示手段によりスクロール方向が指示されたときのスクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させ、保持させた基準傾斜と、傾斜検知手段により検知されるスクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力し、出力される差分傾斜に応じて表示手段の表示範囲を移動させるスクロール制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明によれば、情報処理装置、画面のスクロールを制御するスクロール制御装置およびスクロール制御プログラム並びにスクロール制御方法において、入力装置を操作せずにユーザの意図した方向にだけスクロールが行われるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る情報処理装置としてのコンピュータ1の外観を示す平面図、図2はコンピュータ内部の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、コンピュータ1は片手で持運び可能な大きさで概ね平板状の本体10を備えたタブレット型コンピュータである。本実施の形態においてコンピュータ1は図1に示すような縦長表示で用いられ、その場合における本体10の上側を上部1a,下側を下部1b、左側を左部1c,右側を右部1dとしている。
【0016】
コンピュータ1は片面の中央を含むほぼ全域を占める大きさの表示部2と、表示部2の外側に配置された電源スイッチ3および方向指示部4とを備えている。
【0017】
表示部2は画像表示装置であって、図2に示すように液晶パネル(LCD)2aを有し、コンピュータ1の出力装置の一つを構成している。表示部2は液晶パネル2aと、タッチパネル2bを有し、電源が投入された後に図1に示すようなアイコン5等の画像を液晶パネル2aに表示する。
【0018】
タッチパネル2bは、液晶パネル2a前面側(視認側)に配置され、指やスタイラスペン等操作入力手段を用いて加えられる圧力や静電気などを感知して、その圧力等を示すデータを出力する。コンピュータ1の場合、ユーザはキーボードやタッチパッドといった入力手段の代わりに図示しないスタイラスペンを表示部2に接触させて直接文字を書く動作等を行ってデータ入力やコマンド入力といった操作を行える。
【0019】
電源スイッチ3はコンピュータ1の主電源スイッチであって、押下されることでコンピュータ1の電源が投入される。方向指示部4は上下指示部4aと、左右指示部4bとを有し、上下指示部4aと左右指示部4bとによって、本体10の上下または左右のいずれかの方向でスクロール方向(表示部2において画面の表示範囲を移動させる方向)を指示でき、後述するスクロール方向指示部24としての機能を有している。
【0020】
上下指示部4aはスクロール方向を上下に指示するためのボタンである。詳しくは後述するが、上下指示部4aがユーザの指などで押下されているときにスクロール方向が上下に指示され、指などが離されるとそのスクロール方向の指示が解除される。
【0021】
また、左右指示部4bはスクロール方向を左右に指示するためのボタンである。左右指示部4bが指などで押下されているときはスクロール方向が左右に指示され、指などが離されるとそのスクロール方向の指示が解除される。
【0022】
コンピュータ1では、ウィンドウズ(登録商標)などのOS(オペレーティングシステム)15がインストールされており、OS15の管理下において、複数のプログラムを同時に実行することができる。図示はしないが、表示部2にはプログラムの実行画面が表示され、ユーザがスタイラスペンを操作することにより、実行画面の配置や大きさを調節し、また任意の表示を最前面に配置することができる。
【0023】
そして、コンピュータ1は前述の表示部2および方向指示部4とともに、図2に示すように、CPU11、内部記憶部12、外部記憶部13および傾斜センサ14を有し、これらがバス19により接続されている。
【0024】
CPU11は、コンピュータ1の動作を制御するプロセッサであり、内部記憶部12に記憶されているプログラムを実行する。CPU11が実行するプログラムとしては、OS15のほか、表示部2におけるスクロールを制御するためのスクロール制御プログラム16がある。また、CPU11が実行するプログラムには、文書作成プログラム、電子メールの作成および送受信プログラムといったアプリケーションプログラムがある。
【0025】
内部記憶部12は主にコンピュータ1が実行するプログラムを記憶する記憶手段であって、例えばRAMやフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。コンピュータ1では、図2に示すように、内部記憶部12にOS15とスクロール制御プログラム16が記憶されている。また、内部記憶部12は後述する基準傾斜を保持する基準傾斜保持部17と、表示データ102が記憶された表示記憶部18とが設けられている。
【0026】
外部記憶部13は、実行するプログラムを保管する記憶手段であり、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク装置、CD読取装置、DVD読取装置などにより構成されている。内部記憶部12と異なり、外部記憶部13は、CPU11によるアクセスの頻度が低いプログラムや、現在実行していないプログラムが記憶されている。
【0027】
傾斜センサ14は、本体10の傾斜を検知するセンサと、検知した傾斜を傾斜値データとして出力するインターフェースとを有し、後述する傾斜検知部21および傾斜値取得部22としての機能を有している。
【0028】
傾斜センサ14は、本体10の上下方向(上部1a、下部1bに沿った方向)と、左右方向(左部1c、右部1dに沿った方向)の傾斜を個別に検知し、その検知した傾斜をAD変換して、上下方向、左右方向それぞれの傾斜値データを出力する。なお、図示はしないが、傾斜センサ14の代わりに加速度センサを用い、重力加速度の向きを基準として傾斜を検出することもできる。
【0029】
次に、図3を参照してコンピュータ1におけるスクロール制御にかかる部分の構成について説明する。図3はコンピュータ1のスクロール制御にかかる部分の機能ブロック図である。
【0030】
コンピュータ1は、スクロール制御にかかる部分として、前述の表示部2、基準傾斜保持部17に加え、傾斜検知部21、傾斜値取得部22、基準傾斜保持制御部23およびスクロール方向指示部24を有し、さらに、差分傾斜値取得部25およびスクロール部26を有している。
【0031】
傾斜検知部21はコンピュータ1の傾斜を検知する機能を有し、前述の傾斜センサ14によって構成されている。傾斜値取得部22は傾斜検知部21の検知した傾斜を用いて傾斜値データを取得して出力する機能を有し、これも傾斜センサ14によって構成されている。
【0032】
基準傾斜保持制御部23は傾斜値取得部22が取得した傾斜値データのうち、スクロール方向指示部24から後述する方向指示データPが入力されたときの、その方向指示データPに対応する方向の傾斜値データを基準傾斜として基準傾斜保持部17に保持させる機能を有している。基準傾斜保持制御部23はCPU11がスクロール制御プログラム16を実行することによって実現される。
【0033】
スクロール方向指示部24は本体10を傾斜させることによって、表示部2をスクロールさせる方向を指示する手段で、前述の方向指示部4によって構成されている。スクロール方向指示部24はスクロール方向を示す方向指示データPを基準傾斜保持制御部23と差分傾斜値取得部25に出力する。
【0034】
差分傾斜値取得部25は、基準傾斜保持部17から基準傾斜bを読み出し、傾斜値取得部22が出力する傾斜値データd1のうち、スクロール方向指示部24から出力される方向指示データPに沿った方向(スクロール方向)の基準傾斜bからの差分を算出して差分傾斜値データd2を取得する差分傾斜値取得手段およびその差分傾斜値データd2をスクロール部26に出力する差分傾斜出力手段としての機能を有している。差分傾斜値データd2はユーザが方向指示部4を押下してから本体10をどの程度傾けたかを示している。
【0035】
例えば、基準傾斜bが下方向に50度であった場合において、傾斜値取得部22から出力される現在の傾斜値データd1が下方向に90度であったときは、差分傾斜値データd2は40度となる。なお、差分傾斜値取得部25は、CPU11がスクロール制御プログラム16を実行することによって実現される。
【0036】
また、基準傾斜保持制御部23と、差分傾斜値取得部25によって、スクロール制御装置が構成されている。
【0037】
スクロール部26はLCD2aに表示させる画像の範囲を移動させる機能を有していて、データをLCD2aに表示させるときの左上の座標を変更したり、スクロールバーを操作するなどして表示範囲を変更する。
【0038】
例えば、スクロール部26は、図4に示すように、表示記憶部18に格納されている表示データ102をポイントデータ101の示す場所より1画面分読み出し、表示部2のLCD2aに表示させる。そして、スクロール部26は、差分傾斜値データd2に応じた値をポイントデータ101に加算して表示画面100の表示範囲を上に移動させるスクロールを行うとともに、ポイントデータ101から差分傾斜値データd2に応じた値を減算して表示範囲を下に移動させるスクロールを行う。
【0039】
次に、コンピュータ1の動作内容について図5〜7を参照して説明する。ここで、図5はコンピュータ1を傾斜させたときの外観を示す図で、(a)は左側に傾斜させた場合、(b)は右側に傾斜させた場合を示す図である。図6は同じくコンピュータ1を傾斜させたときの外観を示す図で、(a)は上側に傾斜させた場合、(b)は下側に傾斜させた場合を示す図である。また、図7はコンピュータ1におけるスクロール制御の動作手順を示すフローチャートで、CPU11がスクロール制御プログラム16にしたがい作動することで実現される。
【0040】
CPU11は、スクロール制御プログラム16にしたがい動作を開始すると、S1に動作を進めてユーザの操作を監視する。ユーザは、電源投入中では、アプリケーションプログラムを作動させて、文書作成や電子メールの送受信といった操作を行う一方、実行中のアプリケーションプログラムを終了させたり、OS15を終了させて電源を切るための動作(終了操作)も行う。
【0041】
CPU11は、続くS2でユーザの操作が終了操作(例えば、OS15やスクロール制御プログラム16の終了操作)であるか否かを判定し、終了操作であればスクロール制御プログラム16を終了させるが、そうでなければS3に動作を進める。
【0042】
CPU11は、S3に動作を進めると、スクロール方向限定状態になっているかどうかを判定する。この場合、CPU11は、方向指示部4から方向指示データPが入力されているか否かでスクロール方向限定状態に設定されているかどうかを判定する。方向指示データPが入力されているとき、すなわち、方向指示部4の上下指示部4a,左右指示部4bのいずれかが押下されているときはスクロール方向限定状態になるためS4に動作が進むが、そうでなければS6に動作が進む。
【0043】
この場合、CPU11は、方向指示部4が押下されてスクロール方向が指示されているときにだけS4,S5を実行することにより、出力制御手段としての動作を行っている。
【0044】
CPU11はS4に動作を進めると、傾斜センサ14から傾斜値データd1を入力する一方、その傾斜値データd1を現在の傾斜とし、それと、基準傾斜bとの差分を算出して差分傾斜値データd2を取得する。また、CPU11は、取得した差分傾斜値データd2をスクロール部26に出力する。
【0045】
続くS5では、CPU11がスクロール部26としての動作を行い、S4で取得し出力された差分傾斜値データd2に応じて、指示されたスクロール方向へ画面をスクロールさせてスクロール後の画像を表示部2に表示させる。その後、CPU11はS1に戻って動作を繰り返す。
【0046】
また、CPU11は、S6に動作を進めると、スクロール方向の指示が開始されたか否かを判定する。この場合、方向指示部4から方向指示データPが新たに入力されたか否かでスクロール方向の指示が開始されたかどうかを判定する。方向指示データPが新たに入力されたときはS7に動作を進め、そうでなければS9に動作を進める。
【0047】
CPU11は、S7に動作を進めると、スクロール方向の限定が開始され、スクロール方向限定状態になる。CPU11は、続くS8では、保持制御手段としての動作を行い、傾斜センサ14から入力される傾斜値データd1のうち、スクロール方向の限定開始時点における方向指示データPに沿った方向の傾斜値データd1を基準傾斜bとして基準傾斜保持部17に記憶させて保持させる。この基準傾斜bは方向指示部4の押下が終わるまで保持される。その後、CPU11はS1に戻って動作を繰り返す。
【0048】
ここで例えば、ユーザが上下指示部4aを新たに押下したときは、縦方向の傾斜値データd1が基準傾斜bとして基準傾斜保持部17に保持される。ユーザが本体10を右上に傾けている場合などのように、本体10の持ち方によっては縦方向だけでなく、横方向に傾斜している場合もあるが、基準傾斜保持部17には、傾斜センサ14から入力される傾斜値データd1のうち、方向指示データPに沿った上下方向の傾斜値データd1だけが保持される。
【0049】
次に、CPU11は、S6からS9に動作を進めると、スクロール方向の指示が終了したか否かを判定する。この場合、方向指示部4から方向指示データPの入力が終了したか否か、すなわち、方向指示部4を押さえている指がはずされ、押下が終了したか否かでスクロール方向の指示が終了したか否かを判定する。
【0050】
CPU11は、方向指示データPの入力が終了したときはS10に動作を進めてスクロール方向限定状態を解除する。また、CPU11は、続くS11で基準傾斜消去手段としての動作を行い、その時点で保持されている基準傾斜bを基準傾斜保持部17から消去してその後、S1に戻る。方向指示データPが入力していないとき、すなわち、方向指示部4が押下されていないときはS1に戻って上記の動作を繰り返す。この場合、図示はしないが、差分傾斜データd2は0度にされる。
【0051】
以上のように、コンピュータ1では、ユーザがスクロール方向を指示するため方向指示部4を指などで押下すると、その押下されている方向指示部4に応じた方向の傾斜が基準傾斜bとして保持され、その基準傾斜bからの差分傾斜に応じて、画面がスクロールするようになっている。そのため、コンピュータ1は傾斜によるスクロールの方向を限定する機能を有し、ユーザの意図した方向にだけスクロールが行われるようになっている。
【0052】
例えば、ユーザが方向指示部4の左右指示部4bを押下しながら図5に示したように本体10を左右に傾斜させたときは、基準傾斜bが左右方向の傾斜値データを用いて保持されるため、図5(a)の場合は左方向に画面がスクロールし、図5(b)の場合は右方向に画面がスクロールする。しかし、ユーザが方向指示部4の上下指示部4aを押下しながら本体10を左右に傾斜させても、左右方向へはスクロールしない。この場合、基準傾斜bが上下方向の傾斜値データとなり、上下方向に沿った方向の基準傾斜bからの差分傾斜に応じてスクロールが行われるからである。
【0053】
したがって、例えば上下指示部4aを押下してスクロール方向を上下方向に限定することができ、たとえ本体10が右上方向に傾いていたとしても上方向にしかスクロールしないこととなる。従来の情報処理装置は、傾斜によるスクロールの方向を限定する機能を有しないので、上方向へスクロールさせたい場合、ユーザは上方向へ正確に傾ける必要があり、難しい操作が要求されることもある。しかしながら、コンピュータ1では、このような操作を要さないものである。
【0054】
このように、コンピュータ1は、本体10を傾斜させてスクロールする際にスクロールする方向を限定することができる。そのため、ユーザに細かな難しい操作をさせることなく、ユーザの希望する方向へと確実にスクロールさせることができ、ユーザビリティを向上させることができる。
【0055】
一方、ユーザが方向指示部4の上下指示部4aを押下しながら本体10を上下に傾斜させたときは、図6(a)の場合は上方向に画面がスクロールし、図6(b)の場合は下方向に画面がスクロールする。しかし、ユーザが左右指示部4bを押下しながら本体10を上下に傾斜させても、上下方向へはスクロールしない。
【0056】
そして、ユーザが方向指示部4の押下をやめると、S9からS10,S11に動作が進んで基準傾斜bが消去され、その次に押下した方向指示部4に沿って新たな基準傾斜bが保持される。そのため、例えばユーザが上下方向へのスクロールを行い、その後、続いて左右方向へのスクロールを行いたいときは、上下指示部4aを指等で押下しながら本体10を上下に傾斜させて上下方向へのスクロールが行われた後、その指等を一旦外し、続いて左右指示部4bを指等押下し直せばよい。
【0057】
上述したコンピュータ1では、方向指示部4は上下方向または左右方向の2通りでスクロール方向を指示するようになっている。コンピュータ1は方向指示部4を設ける代わりに図8に示した方向指示部40を設けてもよい。この方向指示部40は、上指示部40a、下指示部40b、左指示部40cおよび右指示部40dを有し、上下左右4通りに方向を指示できるようになっている。
【0058】
また、コンピュータ1では、方向指示部4のようなボタンスイッチの代わりに、タッチセンサ式のスイッチを適用することもできる。例えば、画面上に表現されたボタン画像と、そこの押下に応じたデータを入力する入力インターフェースから構成することができる。この場合、ボタンスイッチ押下に相当する「有効状態」、ボタンスイッチ非押下状態に相当する「無効状態」という2つの状態でボタンスイッチに相当する状態を表すことができる。
【0059】
そのほか、方向指示手段はボタンスイッチの代わりに、触れられたことと、触れられながら移動したことがわかるデバイス(例えばタッチパッド)でもよく、触られながら移動した方向でスクロール方向を指示して、指示された方向に限定してスクロール26がスクロールを行ってもよい。
【0060】
さらに、スクロール部26が差分傾斜に応じてスクロールする速度を変化させてもよい。例えば、差分傾斜が小さければゆっくりとスクロールさせ、差分傾斜が大きければ速くスクロールさせるなどである。
【0061】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置としてのコンピュータの外観を示す平面図である。
【図2】図1のコンピュータ内部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のコンピュータのスクロール制御にかかる部分の機能ブロック図である。
【図4】スクロール部の機能を模式的に示した説明図である。
【図5】図1のコンピュータを傾斜させたときの外観を示す図で、(a)は左側に傾斜させた場合、(b)は右側に傾斜させた場合を示す図である。
【図6】図1のコンピュータを傾斜させたときの外観を示す図で、(a)は上側に傾斜させた場合、(b)は下側に傾斜させた場合を示す図である。
【図7】コンピュータにおけるスクロール制御の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】別の方向指示部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1…コンピュータ、2…表示部、2a…液晶パネル、2b…タッチパネル、4、40…方向指示部、4a…上下指示部、4b…左右指示部、10…本体、11…CPU、12…内部記憶部、13…外部記憶部、15…傾斜センサ、16…スクロール制御プログラム、17…基準傾斜保持部、18…表示記憶部、21…傾斜検知部、22…傾斜値取得部、24…スクロール方向指示部、25…差分傾斜値取得部、26…スクロール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置であって、
前記表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、
前記傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときの前記スクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持する基準傾斜保持手段と、
前記基準傾斜保持手段により保持されている前記基準傾斜と、前記傾斜検知手段により検知される前記スクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力手段と、
該差分傾斜出力手段から出力される前記差分傾斜に応じて前記表示手段の表示範囲を移動させるスクロール手段とを有する情報処理装置。
【請求項2】
前記傾斜検知手段の検知結果に基づき、前記装置本体の傾斜を示す傾斜値を取得する傾斜値取得手段と、
前記基準傾斜保持手段により保持されている前記基準傾斜と、前記傾斜値取得手段が取得した前記傾斜値との差分から前記差分傾斜を示す差分傾斜値を取得する差分傾斜値取得手段とを更に有し、
前記差分傾斜出力手段は、前記差分傾斜値取得手段が取得した前記差分傾斜値を前記スクロール手段に出力する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときに、前記基準傾斜保持手段に対し、前記傾斜値取得手段が取得した前記スクロール方向の傾斜値を前記基準傾斜として保持させる保持制御手段を更に有する請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されているときにだけ、前記差分傾斜出力手段が前記差分傾斜を出力するように制御する出力制御手段を更に有する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記方向指示手段による前記スクロール方向の指示が解除されたときに、前記基準傾斜保持手段に保持されている前記基準傾斜を消去する基準傾斜消去手段を更に有する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記方向指示手段は、前記スクロール方向として、前記装置本体の上下方向または左右方向を指定するように構成されている請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
表示手段と、該表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置に組み込まれるスクロール制御装置であって、
前記傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときの前記スクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させる保持制御手段と、
前記保持制御手段が保持させた前記基準傾斜と、前記傾斜検知手段により検知される前記スクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力手段とを有するスクロール制御装置。
【請求項8】
前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されているときにだけ、前記差分傾斜出力手段が前記差分傾斜を出力するように制御する出力制御手段を更に有する請求項7記載のスクロール制御装置。
【請求項9】
前記方向指示手段による前記スクロール方向の指示が解除されたときに、前記基準傾斜保持手段に保持されている前記基準傾斜を消去する基準傾斜消去手段を更に有する請求項7記載のスクロール制御装置。
【請求項10】
表示手段と、該表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えたコンピュータに、
前記傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときの前記スクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させる保持制御機能と、
前記保持制御機能により保持させた前記基準傾斜と、前記傾斜検知手段により検知される前記スクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力する差分傾斜出力機能と、
該差分傾斜出力機能により出力される前記差分傾斜に応じて前記表示手段の表示範囲を移動させるスクロール機能とを実現させるためのスクロール制御プログラム。
【請求項11】
表示手段と、該表示手段の表示範囲を移動させるスクロール方向を指示する方向指示手段と、装置本体の傾斜を検知する傾斜検知手段とを備えた情報処理装置におけるスクロール制御方法であって、
前記傾斜検知手段により検知される傾斜のうち、前記方向指示手段により前記スクロール方向が指示されたときの前記スクロール方向の傾斜を基準傾斜として保持させ、
前記保持させた前記基準傾斜と、前記傾斜検知手段により検知される前記スクロール方向の傾斜との差分傾斜を出力し、
前記出力される前記差分傾斜に応じて前記表示手段の表示範囲を移動させるスクロール制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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