説明

情報処理装置及び方法、プログラム、並びに情報処理システム

【課題】近接通信を利用したサービスの利便性を向上させる。
【解決手段】通信装置検出部は、近接通信を行う通信装置を検出し、共通処理部は、複数の通信装置が検出された場合、検出された通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の通信装置に対する共通の処理を行い、処理結果通知部は、共通の処理の結果を、複数の通信装置に通知することで、複数枚の近接通信がかざされた場合における、様々なサービスが提供できるようになるため、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができる。本発明は、例えば、ICカード決済システムに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報処理装置及び方法、プログラム、並びに情報処理システムに関し、特に、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができるようにした情報処理装置及び方法、プログラム、並びに情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカード(以下、単にICカードという)を利用した決済システムや、勤怠管理システムなどの各種のサービスが普及している。これらのシステムにおいては、ICカードと、リーダライタが一対一に通信をすることが前提となっている。そのため、1台のリーダライタが複数枚のICカードと通信するためには、複数枚のICカードを、リーダライタに対して複数回かざす必要が出てくる。決済を例にとると、1回の支払いでかざせるICカードの枚数は1枚であり、n回の支払いをするには、n回かざす必要がある。
【0003】
また、複数枚のICカードに対して一括して同時にデータを書き込んだり、個別のカードとして一枚一枚に対応してデータを読み書きする非接触ICカードシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−307047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術であると、単に複数枚のICカードに対するデータの書き込みを一括して行っているだけであって、このような技術を用いた近接通信により提供できるサービスは限られたものとなる。
【0006】
本技術はこのような状況に鑑みてなされたものであり、複数枚のICカードがかざされた場合における、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一側面の情報処理装置は、近接通信を行う通信装置を検出する通信装置検出部と、複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う共通処理部とを備える。
【0008】
前記共通の処理の結果を、複数の前記通信装置に通知する処理結果通知部をさらに備える。
【0009】
前記共通処理部は、検出された前記通信装置の数及び前記通信装置から得られる前記固有の情報に応じた前記共通の処理を行い、それぞれの前記通信装置に対して要求する値を決定する。
【0010】
前記固有の情報は、電子マネーの残高を示す情報であり、前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られる前記残高が、支払い額を前記通信装置の数で除算して得られる割り勘の金額を超える場合、その金額を前記通信装置ごとの決済額として決定する。
【0011】
前記固有の情報は、電子マネーのチャージ可能な金額を示す情報であり、前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られるチャージ可能な金額が、チャージ額を前記通信装置の数で除算して得られる金額を超える場合、その金額を前記通信装置ごとのチャージ額として決定する。
【0012】
前記固有の情報は、電子マネーの残高を示す情報であり、前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られる前記残高を合算して得られる金額が、支払い額を超える場合、前記通信装置ごとの残高に応じて決済額を決定する。
【0013】
前記共通処理部は、検出された複数の前記通信装置のうち、1以上の通信装置における前回の処理が正常に終了している場合、前記共通の処理を行う。
【0014】
前記通信装置の検出、前記共通の処理、又は前記共通の処理の結果の通知を行ったときに発生したエラーを通知するエラー通知部をさらに備える。
【0015】
前記共通の処理の内容を選択させる画面を表示する表示部をさらに備える。
【0016】
本技術の一側面の情報処理方法又はプログラムは、前述した本技術の一側面の情報処理装置に対応する方法又はプログラムである。
【0017】
本技術の一側面の情報処理装置及び方法、並びにプログラムにおいては、近接通信を行う通信装置が検出され、複数の通信装置が検出された場合、検出された通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の通信装置に対する共通の処理が行われる。
【0018】
本技術の一側面の情報処理システムは、近接通信を行う通信装置と情報処理装置からなる情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、前記通信装置を検出する通信装置検出部と、複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う共通処理部とを備える。
【0019】
通信装置又は情報処理装置は、独立した装置であってもよいし、1つの装置を構成している内部ブロックであってもよい。
【0020】
本技術の一側面の情報処理システムにおいては、情報処理装置によって、通信装置が検出され、複数の通信装置が検出された場合、検出された通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の通信装置に対する共通の処理が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本技術の一側面によれば、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本技術を適用したICカード決済システムの構成例を示す図である。
【図2】ICカードの構成を示す図である。
【図3】POS端末装置の構成を示す図である。
【図4】ICカード決済制御プログラムの構成を示す図である。
【図5】電子マネーの割り勘の流れについて説明する図である。
【図6】電子マネーの合算の流れについて説明する図である。
【図7】電子マネーの一括チャージの流れについて説明する図である。
【図8】店員の客に対する応対の流れを説明する図である。
【図9】支払等選択画面の例を示す図である。
【図10】ICカード決済処理を説明するフローチャートである。
【図11】ICカード検出処理を説明するフローチャートである。
【図12】エラー処理を説明するフローチャートである。
【図13】エラーの原因とその対処法を示す図である。
【図14】ICカード状態確認処理を説明するフローチャートである。
【図15】残高照会・決済額決定処理(支払い・割り勘)を説明するフローチャートである。
【図16】支払等再選択画面の例を示す図である。
【図17】残高照会・決済額決定処理(チャージ)を説明するフローチャートである。
【図18】残高照会・決済額決定処理(支払い・合算)を説明するフローチャートである。
【図19】決済処理を説明するフローチャートである。
【図20】決済処理を説明するフローチャートである。
【図21】決済処理を説明するフローチャートである。
【図22】本技術を適用したICカードデータ転送システムの構成例を示す図である。
【図23】パーソナルコンピュータの構成を示す図である。
【図24】ICカードデータ転送制御プログラムの構成を示す図である。
【図25】ICカードデータ転送処理を説明するフローチャートである。
【図26】本技術を適用したICカードサイト誘導システムの構成例を示す図である。
【図27】ICカードサイト誘導制御プログラムの構成を示す図である。
【図28】ICカードサイト誘導処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本技術の実施の形態について説明する。
1.第1の実施の形態(ICカード決済システム)
2.第2の実施の形態(ICカードデータ転送システム)
3.第3の実施の形態(ICカードサイト誘導システム)
【0024】
<1.第1の実施の形態>
[ICカード決済システムの構成]
図1は、本技術を適用したICカード決済システムの構成例を示す図である。
【0025】
図1に示すように、ICカード決済システム1は、複数枚のICカード11と、POS端末装置12から構成される。複数枚のICカード11とPOS端末装置12との間では、所定の周波数の搬送波を使用した電磁誘導による近接通信が行われ、非接触でのデータの送受信が行われる。
【0026】
POS端末装置12は、例えば店舗に配置され、支払いを行う客によりかざされた複数枚のICカード11の電子マネーにより決済を行う。また、POS端末装置12は、チャージ(入金)を行う客によりかざされた複数枚のICカード11に対して、所望の金額のチャージを行う。
【0027】
なお、図1においては、複数枚のICカード11の例として、2枚のICカード11AとICカード11Bが図示されている。
【0028】
以上のようにして、ICカード決済システム1は構成される。
【0029】
[ICカードの構成]
図2は、ICカード11の構成を示す図である。
【0030】
図2に示すように、ICカード11は、アンテナ31、復調部32、符号化復号部33、制御部34、ROM35、RAM36、記録部37、変調部38、及び発振回路39から構成される。
【0031】
アンテナ31は、POS端末装置12から送信されてくる変調波を電波として受信し、復調部32に供給する。
【0032】
復調部32は、アンテナ31から供給される変調波を、図3の変調部74に対応する復調方式により復調し、その復調により得られるデータを、符号化復号部33に供給する。
【0033】
符号化復号部33は、復調部32から供給されるデータを、図3の符号化復号部73に対応する復号法により復号し、その復号により得られるデータを、制御部34に供給する。
【0034】
制御部34は、ICカード11の各部の動作を制御する。
【0035】
制御部34はまた、RAM36にデータを一時的に記憶させながら、ROM35に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、制御部34は、符号化復号部33から供給されるデータに対して、所定の処理を施し、それにより得られるデータを記録部37に記録させる。
【0036】
制御部34は、記録部37に記録されているデータを取得し、符号化復号部33に供給する。
【0037】
符号化復号部33は、制御部34から供給されたデータを、図3の符号化復号部73に対応する符号化法により符号化し、その符号化により得られるデータを、変調部38に供給する。
【0038】
変調部38は、発振回路39から供給される所定の周波数のクロック信号に基づいて、搬送波を生成する。変調部38は、生成した搬送波に基づいて、符号化復号部33から供給されたデータを、図3の復調部77に対応する変調方式により変調し、その変調により得られるデータを、アンテナ31に供給する。
【0039】
アンテナ31は、変調部38から供給される変調波を、電波として近接通信により、POS端末装置12に送信する。
【0040】
電力発生部40は、アンテナ31に生じた交流の起電力に基づいて、直流電力を発生させて、ICカード11の各部に供給する。
【0041】
以上のようにして、ICカード11は構成される。
【0042】
[POS端末装置の構成]
図3は、POS端末装置12の構成を示す図である。
【0043】
POS端末装置12は、制御部51、表示部52、通信部53、及びリーダライタ54から構成される。また、POS端末装置12は、専用線等の所定の通信網を介して、サポートセンタに配置されるサーバ13と接続される。
【0044】
制御部51は、POS端末装置12の各部の動作を制御する。
【0045】
表示部52は、制御部51の制御にしたがって、所定の画面を表示する。また、表示部52の画面は、タッチパネル61が重畳される。タッチパネル61は、表示部52の画面に表示された操作画面を選択するユーザの操作を受け付けて、その操作に対応する位置情報を、制御部51に供給する。
【0046】
制御部51は、ICカード11又はサーバ13に送信するためのデータを、通信部53に供給する。
【0047】
通信部53は、制御部51から供給されるデータを、リーダライタ54に供給する。また、通信部53は、制御部51から供給されるデータを、所定の通信網を介してサーバ13に送信する。
【0048】
リーダライタ54は、通信部53から供給されるデータを、ICカード11に送信する。また、リーダライタ54は、ICカード11から送信されてくるデータを受信して、通信部53に供給する。
【0049】
リーダライタ54は、制御部71、通信部72、符号化復号部73、変調部74、発信回路75、アンテナ76、及び復調部77から構成される。
【0050】
制御部71は、リーダライタ54の各部の動作を制御する。また、制御部71は、通信部72を介して通信部53から供給されるデータを取得し、符号化復号部73に供給する。
【0051】
符号化復号部73は、制御部71から供給されたデータを、図2の符号化復号部33に対応する符号化法により符号化し、その符号化により得られたデータを、変調部74に供給する。
【0052】
変調部74は、発信回路75から供給された所定の周波数のクロック信号に基づいて、搬送波を生成する。変調部74は、生成した搬送波に基づいて、符号化復号部73から供給されたデータを、図2の復調部32に対応する変調方式により変調し、その変調により得られる変調されたデータを、アンテナ76に供給する。
【0053】
アンテナ76は、変調部74から供給される変調波を電波として、近接通信により、ICカード11に送信する。
【0054】
また、アンテナ76は、近接通信により、ICカード11から送信されてくる変調波を電波として受信し、復調部77に供給する。
【0055】
復調部77は、アンテナ76から供給される変調波を、図2の変調部38の変調方式に対応する復調方式により復調し、その復調により得られるデータを、符号化復号部73に供給する。
【0056】
符号化復号部73は、復調部77から供給されるデータを、図2の符号化復号部33に対応する復号法により復号し、その復号により得られたデータを、制御部71に供給する。
【0057】
制御部71は、符号化復号部73から供給されたデータを、通信部72を介して通信部53に供給する。
【0058】
通信部53は、通信部72から供給されるデータを、制御部51に供給する。制御部51は、通信部53から供給されるデータに対して、所定の処理を行う。
【0059】
以上のようにして、POS端末装置12は構成される。
【0060】
[ICカード決済制御プログラムの構成]
図4は、ICカード決済制御プログラム101の構成を示す図である。
【0061】
ICカード決済制御プログラム101は、制御部51又は制御部71のいずれかにより実行される。
【0062】
ICカード決済制御プログラム101は、ICカード検出部111、画面表示制御部112、ICカード状態確認部113、残高照会・決済額決定部114、決済部115、及びエラー処理部116から構成される。
【0063】
ICカード検出部111は、リーダライタ54を制御してポーリングを行い、ICカード11を検出する。
【0064】
画面表示制御部112は、ICカード11による決済に関係する所定の画面を、表示部52に表示させる。
【0065】
ICカード状態確認部113は、ICカード検出部111により複数枚のICカード11が検出された場合、リーダライタ54を制御して、ICカード11に対して前回の決済処理が正常に終了したか否かを確認する。
【0066】
残高照会・決済額決定部114は、ICカード状態確認部113により1以上のICカード11における前回の決済処理が正常に終了したと判定された場合、リーダライタ54を制御して、ICカード11から得られる固有の情報を取得する。残高照会・決済額決定部114は、取得された固有の情報に基づいて、複数枚のICカード11に対する共通の処理を行う。
【0067】
この共通の処理としては、検出されたICカード11の枚数と、各ICカード11から得られる固有の情報に応じた処理が行われ、各ICカード11に対して要求する値が決定される。具体的には、例えば、後述する、複数枚のICカード11の電子マネーにより支払い額を割り勘して支払うための処理や、その支払い額を複数枚のICカード11の電子マネーを合算して支払うための処理の他、複数枚のICカードに対してチャージをするための処理などが行われる。
【0068】
決済部115は、リーダライタ54を制御して、残高照会・決済額決定部114によりICカード11ごとに決定された値をICカード11に、トランザクションIDとともに通知して、ICカード11ごとに決済を行う。例えば、複数枚のICカード11には、トランザクションIDに対応付けられた決済額又はチャージ額が通知される。
【0069】
エラー処理部116は、ICカード検出部111、ICカード状態確認部113、残高照会・決済額決定部114、又は決済部115による処理で発生したエラーを通知する。
【0070】
以上のようにして、ICカード決済制御プログラム101は構成される。
【0071】
[ICカード決済システムの適用例]
次に、図5乃至図9を参照して、ICカード決済システム1の適用例について説明する。
【0072】
図5は、支払い額を割り勘して、複数枚のICカード11で支払う例を説明する図である。
【0073】
例えば、AさんとBさんが2人で食事をしたときの代金が3000円である場合において、その代金を割り勘して支払いたい場合、ICカード11を1枚ずつしかかざせない決済システムであると、AさんのICカード11Aと、BさんのICカード11Bを別々にかざす必要がある。ICカード決済システム1においては、POS端末装置12に対して、Aさん又はBさんがICカード11AとICカード11Bを重ねてかざすことで、2枚のICカード11のそれぞれから、3000円を割り勘した金額である1500円が引き落とされる。
【0074】
ICカード11を1枚ずつしかかざせない決済システムであると、AさんがICカード11Aをかざして決済を行った後に続いて、BさんがICカード11Bをかざして決済を行う場合、ICカード11Bの電子マネーの残高が不足しており、支払いができないことも考えられる。それに対して、ICカード決済システム1においては、ICカード11AとICカード11Bに決済可能な残高があることを確認してから決済を行うため、ICカード11Aの電子マネーが引き落とされた後、ICカード11Bの電子マネーの残高が不足しているという事態を防止することができる。
【0075】
また、1人ずつ順番にICカード11をかざす場合と比べて、ICカード決済システム1においては、代表者1人がICカード11を重ねて1回だけかざせばよいため、支払い時の混雑の解消や決済時間の短縮など、客、店舗の双方にメリットがある。さらに、ICカード11には、基本的に入金制限があるため、1枚のICカードで支払える額には限度があるが、複数枚のICカード11を重ねてかざすことにより、入金限度額を超えた決済が可能となる。
【0076】
図6は、支払い額を、複数枚のICカード11の電子マネーを合算して支払う例を説明する図である。
【0077】
例えば、ICカード11Aの残高が50円であり、ICカード11Bの残高が100円である場合において、150円の商品を購入したい場合、ICカード11を1枚ずつしかかざせない決済システムであると、一方のICカード11では残高が不足しており、商品を購入できない。ICカード決済システム1においては、POS端末装置12に対して、ICカード11AとICカード11Bを重ねてかざすことで、2枚のICカード11の残高を合算した金額により決済が行われる。したがって、150円の商品を購入することができる。
【0078】
ICカード11を1枚ずつしかかざせない決済システムであると、一方のICカード11Aをかざして、50円を支払った後に、他方のICカード11Bをかざして100円を支払うことになるが、そのためには、2枚のICカード11の残高の合計が150円以上となることを事前に確認しておく必要がある。それに対して、ICカード決済システム1においては、ICカード11AとICカード11Bの残高の合計が150円以上となる場合にだけ決済が行われるため、その確認作業が不要となる。これにより、決済時間の短縮、利便性の向上が期待される。また、電子マネーの端数を有効活用することができる。
【0079】
図7は、複数枚のICカード11に対して、電子マネーのチャージを行う例を説明する図である。
【0080】
例えば、2枚のICカード11に対して、5000円ずつ、計10000円をチャージする場合、ICカード11を1枚ずつしかかざせない決済システムであると、ICカード11Aと、ICカード11Bに対して別々に5000円ずつチャージする必要がある。それに対して、ICカード決済システム1においては、POS端末装置12に対して、ICカード11AとICカード11Bを重ねてかざすことで、2枚のICカード11のそれぞれに、5000円がチャージされる。これにより、決済時間を短縮することができる。
【0081】
また、ICカード11のチャージに限らず、例えば、複数人で入場チケットを購入した場合に、代表者1人が各人のICカード11を集め、POS端末装置12に対して重ねてかざすことで、全ICカード11にチケット情報を書き込む、といった使用方法にも適用することができる。
【0082】
次に、図8のフローチャートを参照して、前述した図5乃至図7の適用例を実現するに際して、客と店員との間で行われるやりとりについて説明する。
【0083】
まず、客は、店員に対して、「支払いか、チャージか」を伝える(ステップS11)。ただし、このやりとりは実際のシーンでは明らかである。一方、店員は、客からの指示に応じて、POS端末装置12を操作して、支払い/チャージモードに設定し(ステップS21)、客に対して、「かざして下さい」と伝える(ステップS22)。これにより、POS端末装置12においては、ポーリングが開始される。
【0084】
客は、店員からの指示に応じて、1枚又は複数枚のICカード11を、POS端末装置12にかざす(ステップS12)。ICカード11が1枚かざされたか、あるいは複数枚が重ねてかざされたかは、POS端末装置12により検出される。店員は、ICカード11が1枚かざされた場合(ステップS23の「No」)、通常のICカード11の応対を行い、1枚のICカードにより決済が行われる(ステップS24)。
【0085】
一方、複数枚のICカード11がかざされた場合、POS端末装置12の表示部52には、図9の支払等選択画面131が表示されるので、店員は、客に対して「支払等選択画面から支払い/チャージ方法を選択して下さい」と伝える(ステップS25)。
【0086】
図9は、支払等選択画面131の例を示す図である。
【0087】
図9Aに示すように、ICカード11による支払いの場合、表示部52に表示される支払等選択画面131Aには、ボタン141乃至144が表示される。
【0088】
ボタン141は、支払い額を割り勘して、複数枚のICカード11で支払う場合に選択される。例えば、支払い額が3000円である場合に、2人で割り勘するときには1人当たり1500円となるので、ボタン141には、その情報も表示される。
【0089】
ボタン142及びボタン143は、支払い額を、複数枚のICカード11の電子マネーを合算して支払う場合に選択される。また、複数枚のICカード11のうち、電子マネーの残高の少ない方を優先して引き落とす場合には、ボタン142が選択され、電子マネーの残高の多い方を優先して引き落とす場合には、ボタン143が選択される。
【0090】
ボタン144は、ICカード11を再読み込みする場合に選択される。例えば、検出されたICカード11の枚数が、実際にかざされた枚数と異なる場合に選択され、ICカード11の読み込みが再度行われる。
【0091】
図9Bに示すように、ICカード11に対するチャージの場合、表示部52に表示される支払等選択画面131Bには、ボタン145乃至147が表示される。
【0092】
ボタン145及びボタン146は、ICカード11に対してチャージを行う場合に選択される。また、複数枚のICカード11に対して、チャージ額を均等に分ける場合には、ボタン145が選択され、チャージ額を任意に設定する場合には、ボタン146が設定される。
【0093】
例えば、チャージ額が10000円である場合に、ICカード11AとICカード11Bにチャージするとき、各ICカード11に対して5000円ずつチャージすることになるので、ボタン145には、その情報も表示される。また、ボタン146が選択された場合、表示部52には、客に対してチャージ額を任意に設定させるためのチャージ額設定画面131Cが表示される。チャージ額設定画面131Cには、例えば、ICカード11Aへのチャージ額を設定するためのボタン148A乃至148Cと、ICカード11Aへのチャージ額を設定するためのボタン149A乃至149Cが表示される。
【0094】
ボタン147は、図9Aのボタン144と同様に、ICカード11を再読み込みする場合に選択される。
【0095】
図8のフローチャートに戻り、客は、店員からの指示に応じて、図9の支払等選択画面131から支払い/チャージ方法を選択する(ステップS13)。その後、POS端末装置12によって、同時にかざされた複数枚のICカード11に対する決済処理などが行われる(詳細は後述する)。そして、決済処理が終了した場合、店員は、客に対して、「支払い/チャージが終了しました」と伝える(ステップS26)。
【0096】
このようにして、客と店員の決済時のやりとりが行われる。
【0097】
以上のように、ICカード決済システム1においては、前述した支払い時の割り勘や合算のサービスや、一括チャージのサービスなどの複数枚のICカード11がかざされた場合における各種のサービスを提供することができる。
【0098】
[ICカード決済処理の流れ]
次に、図10乃至図21を参照して、ICカード決済システム1により提供されるサービスの具体的な処理の流れを説明する。
【0099】
まず、図10のフローチャートを参照して、制御部51又は制御部71がICカード決済制御プログラム101を実行することで行われる、ICカード決済処理について説明する。
【0100】
ステップS31において、ICカード検出部111は、ICカード検出処理を行う。ICカード検出処理では、ポーリングが行われ、客により複数枚のICカード11がかざされた場合、それらのICカード11が検出される。
【0101】
なお、ICカード検出処理の詳細は、図11のフローチャートを参照して後述する。
【0102】
ICカード11が検出されると、画面表示制御部112は、ステップS32において、図9の支払等選択画面131を、表示部52に表示させる。そして、客により、支払等選択画面の支払い/チャージ方法が選択された場合、処理は、ステップS33に進む。
【0103】
ステップS33において、ICカード状態確認部113は、ICカード状態確認処理を行う。ICカード状態確認処理では、検出された複数枚のICカード11が使用可能な状態にあるか否かが判定される。
【0104】
なお、ICカード状態確認処理の詳細は、図14のフローチャートを参照して後述する。
【0105】
ICカード11の状態の確認が終了されると、残高照会・決済額決定部114は、ステップS34において、残高照会・決済額決定処理を行う。残高照会・決済額決定処理では、各ICカード11の残高と決済能力の有無がチェックされ、検出されたICカード11での決済が可能であるか否かが判定される。
【0106】
なお、残高照会・決済額決定処理の詳細は、図15,図17,及び図18のフローチャートを参照して後述する。
【0107】
各ICカード11の電子マネーの残高が照会され、決済額が決定されると、決済部115は、ステップS35において、各ICカード11に対して、決済処理を行う。決済処理では、各ICカード11に対して、決済額に応じた金額を引き落とすなどの処理が行われる。
【0108】
なお、決済処理の詳細は、図19乃至図21のフローチャートを参照して後述する。
【0109】
決済処理まで完了すると、ICカード決済処理が終了する。
【0110】
以上のように、ICカード決済処理においては、客によりかざされた複数枚のICカード11が検出され、検出されたICカード11が使用可能な状態にあるか否かが判定され、使用可能な状態にあるICカード11の残高や決済能力の有無がチェックされる。そして、決済可能なICカード11に対して、決済額に応じた金額を引き落とすなどの決済処理が行われる。
【0111】
[ICカード検出処理の流れ]
次に、図11のフローチャートを参照して、図10のステップS31に対応するICカード検出処理の詳細について説明する。
【0112】
ステップS51において、ICカード検出部111は、ポーリングを行い、ICカード11からの応答が成功を示しているかを判定する(ステップS52)。
【0113】
ICカード11からの応答としては、ポーリングの成功又は失敗の応答を返す場合と、応答を返さない場合がある。従って、ステップS52の判定処理では、結果が成功と応答したICカード11が1枚以上存在するかどうかを判定する。
【0114】
ステップS52において、結果が成功と応答したICカード11が1枚もない場合、処理は、ステップS55に進む。ステップS55において、ICカード検出部111は、ポーリングを試行した回数が所定の上限回数に達したか否かを判定する。
【0115】
ステップS55において、ポーリングの試行回数が上限回数に達していないと判定された場合、処理は、ステップS51に戻り、ポーリングが再試行される。
【0116】
一方、ポーリングの試行回数が上限回数に達しても、ICカード11から成功の応答がされない場合(ステップS55の「Yes」)、処理は、ステップS56に進む。ステップS56において、エラー処理部116は、エラー番号1のエラー処理を行う。
【0117】
ここで、図12のフローチャートを参照して、ステップS56に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0118】
エラー処理部116は、ステップS71乃至S76において、エラー番号が1乃至8のいずれであるかを判定する。いまの場合、エラー番号1であるため(ステップS71の「Yes」)、処理は、ステップS77に進む。
【0119】
ステップS77において、エラー処理部116は、エラー番号1の対処を促す。図13に示すように、エラー番号1の対処としては、ICカード11を認識できなかった場合となるので、例えば、エラーメッセージを表示して、店員に対して、ICカード11をもう一度かざすように客に伝えさせる。
【0120】
ステップS77の処理が終了すると、処理は、図11のフローチャートに戻り、ステップS56以降の処理が行われる。そして、処理は、図10のステップS31に戻り、再度、ICカード検出処理が行われる。
【0121】
一方、ステップS52において、ICカード11から成功の応答があったと判定された場合、処理は、ステップS53に進む。ステップS53において、ICカード検出部111は、検出されたICカード11の枚数を求める。
【0122】
ステップS54において、ICカード検出部111は、ICカード11と近接通信を行うことにより得られる、各ICカード11を一意に識別するための識別子(以下、IDmという)を取得する。なお、以降の処理では、検出された複数枚のICカード11と近接通信を行う場合、各ICカード11を識別するために、IDmが用いられる。
【0123】
各ICカード11のIDmが取得されると、処理は、図10のステップS31に戻り、ステップS31以降の処理が実行される。
【0124】
以上のように、ICカード検出処理においては、ポーリングが行われて、客によりかざされたICカード11が検出され、検出されたICカード11の枚数と、各ICカード11のIDmが取得される。
【0125】
[ICカード状態確認処理の流れ]
次に、図14のフローチャートを参照して、図10のステップS33に対応するICカード状態確認処理の詳細について説明する。
【0126】
ステップS91において、ICカード状態確認部113は、ICカード検出処理により検出されたICカード11のトランザクションIDを取得する。
【0127】
ステップS92において、ICカード状態確認部113は、検出された全てのICカード11のトランザクションIDを取得したか否かを判定する。
【0128】
ステップS92において、検出された全てのICカード11のトランザクションIDが取得されていないと判定された場合、ステップS91に戻り、トランザクションIDが未取得とされるICカード11から、トランザクションIDが取得される。
【0129】
ステップS91,S92の処理が繰り返され、全てのICカードのトランザクションIDが取得されたと判定された場合、処理は、ステップS93に進む。
【0130】
ステップS93において、ICカード状態確認部113は、取得した全てのICカード11のトランザクションIDが初期状態であるか否かを判定する。例えば、トランザクションID==0となる場合、初期状態であると判定される。
【0131】
ステップS93において、全てのICカード11のトランザクションIDが初期状態ではないと判定された場合、処理は、ステップS94に進む。ステップS94において、エラー処理部116は、エラー番号2のエラー処理を行う。
【0132】
ここで、前述した図12のフローチャートを参照して、ステップS94に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0133】
ステップS71乃至S76において、エラー番号が1乃至8のいずれであるかが判定され、いまの場合、エラー番号2であるため(ステップS72の「Yes」)、処理は、ステップS78に進む。
【0134】
ステップS78において、エラー処理部116は、エラー番号2の対処を促す。図13に示すように、エラー番号2の対処としては、前回の処理が正常に終了しなかった場合であるので、例えば、エラーメッセージを表示して、店員は、客に対して、サポートセンタに問い合わせるように伝える。この場合、サポートセンタでは、客の使用したICカード11に関する情報が、サーバ13に記録されている履歴や取引情報と照合されることで、不整合が解消される。なお、履歴や取引情報は、後述するエラー番号5,6の処理が行われるタイミングで、サーバ13に送信される。
【0135】
ステップS78の処理が終了すると、処理は、図14のフローチャートに戻り、ステップS94以降の処理が行われる。この場合、ICカード11を利用した決済を継続するのが不可能となるため、処理は、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理は終了する。
【0136】
一方、ステップS93において、全ICカード11のトランザクションIDが初期状態であると判定された場合、図10のフローチャートに戻り、ステップS33以降の処理が実行される。
【0137】
以上のように、ICカード状態確認処理においては、検出されたICカード11からトランザクションIDが取得され、取得されたトランザクションIDが初期状態であるか否かが判定され、ICカード11の状態が確認される。
【0138】
[残高照会・決済額決定処理(支払い・割り勘)の流れ]
次に、図15のフローチャートを参照して、図10のステップS34に対応する残高照会・決済額決定処理の詳細について説明する。
【0139】
ステップS111において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11から、電子マネーの残高を取得する。
【0140】
ステップS112において、残高照会・決済額決定部114は、検出されたICカード11の枚数と、各ICカード11から取得した残高に基づいて、各ICカード11の決済能力の有無を決定する。
【0141】
支払い額を割り勘して支払う場合においては、例えば、ICカード11の枚数をn枚とし、支払い額をxとした場合、1枚のICカード11当たりの支払い額は、x/nとなる。従って、各ICカード11の残高が、割り勘の支払い額を超えるか否かを判定することで、ICカード11の決済能力の有無が決定される。具体的には、次の式(1)を満たすことが条件とされる。
【0142】
残高 ≧ x/n・・・(1)
【0143】
ステップS113において、残高照会・決済額決定部114は、全てのICカード11に対して決済能力の有無を決定したか否かを判定する。
【0144】
ステップS113において、全てのICカード11に対して決済能力の有無を決定していないと判定された場合、処理は、ステップS111に戻り、未だ決済能力の有無が決定されていないICカード11から、残高が取得され、決済能力の有無が決定される。全てのICカード11に対して決済能力の有無が決定した場合(ステップS113の「Yes」)、処理は、ステップS114に進む。
【0145】
ステップS114において、残高照会・決済額決定部114は、決済能力の有無が決定されたICカード11の全てが決済可能となるか否かを判定する。
【0146】
ステップS114において、全てのICカード11が決済可能ではないと判定された場合、処理は、ステップS115に進む。ステップS115において、エラー処理部116は、エラー番号3のエラー処理を行う。
【0147】
ここで、前述した図12のフローチャートを参照して、ステップS115に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0148】
ステップS71乃至S76において、エラー番号が1乃至8のいずれであるかが判定され、いまの場合、エラー番号3であるため(ステップS73の「Yes」)、処理は、ステップS79に進む。
【0149】
ステップS79において、エラー処理部116は、エラー番号3の対処を促す。図13に示すように、エラー番号3の対処としては、残高不足又はチャージの上限超えの場合であるので、図16の支払等再選択画面151を表示部52に表示して、決済可能なICカード11での処理を継続するか、あるいは決済をキャンセルするかを選択させる。
【0150】
図16は、支払等再選択画面151の例を示す図である。
【0151】
図16に示すように、ICカード11に支払い能力がない場合、表示部52に表示される支払等再選択画面151には、ボタン161乃至164と、残高が不足しているICカード11の枚数が表示される。なお、ICカード11の枚数の代わりに、残高不足のICカード11の名称(例えばIDm)を表示してもよい。
【0152】
ボタン161は、残高が不足しているICカード11を除いたそれ以外のICカード11で決済を継続する場合に選択される。例えば、6000円を3人で割り勘しようとしたが、1人のICカード11の残高が不足している場合、2人で割り勘することとなり、1人当たりの支払い額は、2000円から3000円に変更される。当然ながら、この場合には1人当たりの決済額は増加することとなる。
【0153】
ボタン162は、残高が不足しているICカード11で支払う予定であった決済額を現金で支払ってもらい、それ以外のICカード11からは予定していた決済額を引き落とす場合に選択される。例えば、9000円を6人で割り勘しようとしたが、1人のICカード11の残高が不足している場合、その1人分の決済額である1500円が、ICカード11ではなく、現金により支払われる。この場合には、1人当たりの決済額は増減しない。
【0154】
ボタン161及びボタン162が選択された場合、各ICカードの決済額が決定されるため、処理は、図10のステップS35(決済処理)に進むこととなる。
【0155】
ボタン163は、ICカード11を再読み込みする場合に選択される。この場合、処理は、図10のステップS31(ICカード検出処理)に戻り、ICカード決済処理が最初から行われる。
【0156】
ボタン164は、ICカード11による決済を中止する場合に選択される。この場合、処理は、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理が終了することとなる。
【0157】
図15のフローチャートに戻り、一方、ステップS114において、全ICカード11が決済可能であると判定された場合、図10のフローチャートに戻り、ステップS34以降の処理が実行される。
【0158】
以上のように、残高照会・決済額決定処理(支払い・割り勘)においては、検出されたICカード11から残高が取得され、その残高が、支払い額をICカード11の枚数で除算して得られる割り勘の金額を超える場合、その金額が各ICカード11ごとの決済額として決定される。
【0159】
[残高照会・決済額決定処理(チャージ)の流れ]
図15のフローチャートでは、残高照会・決済額決定処理の一例として、支払いのうちの割り勘の場合の処理を説明したが、次に、図17のフローチャートを参照して、チャージの場合の残高照会・決済額決定処理について説明する。
【0160】
ステップS131において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11から、ICカード11の電子マネーにチャージできる残りの金額に関する情報(以下、残チャージ可能額という)を取得する。
【0161】
ステップS132において、残高照会・決済額決定部114は、検出されたICカード11の枚数と、各ICカード11から取得した残チャージ可能額に基づいて、各ICカード11の決済能力の有無を決定する。
【0162】
チャージの場合においては、例えば、ICカード11の枚数をn枚とし、チャージ額をxとした場合、1枚のICカード11当たりのチャージ額は、x/nとなる。従って、各ICカード11の残チャージ可能額が、1枚当たりのチャージ額を超えるか否かを判定することで、ICカード11の決済能力の有無が決定される。具体的には、次の式(2)を満たすことが条件とされる。
【0163】
残チャージ可能額 ≧ x/n・・・(2)
【0164】
なお、式(2)において、残チャージ可能額は、チャージの上限額から残高を減算して得られる金額となる。
【0165】
ステップS133においては、図15のステップS113と同様に、全てのICカード11に対して決済能力の有無を決定したか否かが判定される。
【0166】
そして、ステップS133において、全てのICカード11に対して決済能力の有無を決定していないと判定された場合、処理は、ステップS131に戻り、未だ決済能力の有無が決定されていないICカード11から、残チャージ可能額が取得され、決済能力の有無が決定される。全てのICカード11に対して決済能力の有無が決定された場合(ステップS133の「Yes」)、処理は、ステップS134に進む。
【0167】
ステップS134において、図15のステップS114と同様に、決済能力の有無が決定されたICカード11の全てが決済可能となるか否かが判定される。そして、ステップS134において、全てのICカード11が決済可能ではないと判定された場合、エラー番号3のエラー処理が行われる。このエラー処理は、図15のステップS115と同様であるため、その説明は省略する。
【0168】
一方、ステップS134において、全ICカード11が決済可能であると判定された場合、図10のフローチャートに戻り、ステップS34以降の処理が実行される。
【0169】
以上のように、残高照会・決済額決定処理(チャージ)においては、検出されたICカード11から残チャージ可能額が取得され、その残チャージ可能額が、チャージ額をICカード11の枚数で除算して得られる金額を超える場合、その金額が各ICカード11ごとのチャージ額として決定される。
【0170】
[残高照会・決済額決定処理(支払い・合算)の流れ]
図15のフローチャートでは、残高照会・決済額決定処理の一例として、支払いのうちの割り勘の場合の処理を説明したが、次に、図18のフローチャートを参照して、残高照会・決済額決定処理(支払い・合算)について説明する。
【0171】
なお、図18の説明では、説明を具体的にするため、ICカード11AとICカード11Bの2枚のICカードの電子マネーを合算して支払う例を説明する。また、ICカード11Aの残高は、ICカードBの残高よりも少ないものとする。また、ICカード11Aの残高をIとし、支払い額をxとする。
【0172】
ステップS151において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11Aから、電子マネーの残高Iを取得する。
【0173】
ステップS152において、残高照会・決済額決定部114は、取得されたICカード11Aの残高Iは、支払い額xよりも少ないか否かを判定する。
【0174】
ステップS152において、取得されたICカード11Aの残高Iが、支払い額xよりも多いと判定された場合、処理は、ステップS153に進む。ステップS153において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11Aの決済額をxに決定する。この場合、ICカード11Aの電子マネーのみで支払いが行われる。
【0175】
一方、ステップS152において、取得されたICカード11Aの残高Iが、支払い額xよりも少ないと判定された場合、処理は、ステップS154に進む。ステップS154において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11Aの決済額をIに決定する。
【0176】
ステップS155において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11Bから、電子マネーの残高を取得する。
【0177】
ステップS156において、取得されたICカード11Bの残高が、支払い額(x)からICカード11Aの残高(I)を差し引いた金額(x-I)よりも多いか否かを判定する。
【0178】
ステップS156において、ICカード11Bの残高が金額(x-I)よりも多いと判定された場合、処理は、ステップS157に進む。ステップS157において、残高照会・決済額決定部114は、ICカード11Bの決済額をx-Iに決定する。これにより、支払い額xのうち、金額IがICカード11Aの決済額として割り当てられ、金額x-IがICカード11Bの決済額として割り当てられる。
【0179】
一方、ステップS156において、ICカード11Bの残高が金額(x-I)よりも少ないと判定された場合、処理は、ステップS158に進む。ステップS158において、エラー処理部116は、エラー番号4のエラー処理を行う。
【0180】
ここで、前述した図12のフローチャートを参照して、ステップS158に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0181】
ステップS71乃至S76において、エラー番号1乃至8のいずれであるかが判定され、いまの場合、エラー番号4であるため(ステップS74の「Yes」)、処理は、ステップS80に進む。
【0182】
ステップS80において、エラー処理部116は、エラー番号4の対処を促す。図13に示すように、全ICカード11の電子マネーの残高を合わせても決済能力がない場合であるので、例えば、エラーメッセージを表示して、店員に対して、決済能力がないため処理を中止する旨を客に伝えさせる。
【0183】
エラー処理が終了すると、図18のフローチャートに戻り、ステップS158以降の処理が実行される。そして、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理が終了することとなる。
【0184】
以上のように、残高照会・決済額決定処理(支払い・合算)においては、検出されたICカード11ごとに得られる電子マネーの残高を合算して得られる金額が、支払い額を超える場合、ICカード11ごとの電子マネーの残高に応じて決済額が決定される。
【0185】
なお、説明を具体的にするために、2枚のICカード11を例に説明したが、3枚以上のICカード11であっても基本的に処理の内容は同じである。
【0186】
以上、残高照会・決済額決定処理の具体例として、支払い・割り勘、チャージ、支払い・合算の3つの例を説明した。
【0187】
[決済処理]
次に、図19乃至図21のフローチャートを参照して、図10のステップS35に対応する決済処理の詳細について説明する。
【0188】
なお、図19乃至図21の説明では、説明を具体的にするため、POS端末装置12で行われる決済処理の他、ICカード11AとICカード11Bの2枚のICカードで行われる決済処理についても説明する。また、前述した残高照会・決済額決定処理により決定されたICカード11Aの決済額をpAとし、ICカード11Bの決済額をpBとする。
【0189】
ステップS171において、POS端末装置12の決済部115は、トランザクションIDを生成する。このトランザクションIDは、ユニークな値とされる。
【0190】
ステップS172において、決済部115は、残高照会・決済額決定処理により決定された決済額pAと、生成されたトランザクションIDを、ICカード11Aに送信する。
【0191】
POS端末装置12から決済額pAとトランザクションIDが送信されると、ICカード11Aではそれらの情報が受信される。そして、ステップS211において、ICカード11Aの制御部34は、受信されたトランザクションIDと、保持しているトランザクションIDを比較する。
【0192】
ステップS212において、比較したトランザクションIDが異なると判定された場合、処理は、ステップS213に進む。ステップS213において、制御部34は、保持しているトランザクションIDを、受信されたトランザクションIDに更新する。
【0193】
ステップS214において、制御部34は、記録部37に記録された電子マネーの残高から決済額pAを引き落とし、その処理結果をPOS端末装置12に送信する(ステップS215)。
【0194】
一方、ステップS212において、トランザクションIDが同一であると判定された場合、前回の処理が途中で終わってしまったため、処理は、ステップS216に進む。ステップS216において、制御部34は、記録部37に記録された電子マネーの残高を参照して、決済額pAの引き落としに失敗していたか否かを判定する。
【0195】
ステップS216において、決済額pAの引き落としに失敗していたと判定された場合、引き落としを再試行するため、処理は、ステップS214に進む。ステップS214において、制御部34は、電子マネーの残高から決済額pAを引き落とし、その処理結果をPOS端末装置12に送信する(ステップS215)。
【0196】
一方、ステップS216において、決済額pAの引き落としに成功していたと判定された場合、処理結果の送信に問題があるため、処理は、ステップS215に進む。ステップS215において、制御部34は、その処理結果をPOS端末装置12に送信する。
【0197】
ICカード11Aから処理結果が送信されると、POS端末装置12では、その処理結果が受信される。そして、ステップS173において、応答として受信した処理結果が、正常か否かが判定される。
【0198】
ステップS173において、応答が異常であると判定された場合、処理は、ステップS174に進む。ステップS174において、決済部115は、処理回数が上限回数に達したか否かを判定する。ステップS174において、処理回数が上限回数に達していないと判定された場合、処理は、ステップS172に戻る。そして、応答が正常であるか(ステップS173の「Yes」)、又は上限回数に達するまで(ステップS174の「Yes」)、前述した処理が繰り返される。
【0199】
正常な応答が返される前に、上限回数に達した場合、処理は、ステップS175に進む。ステップS175において、エラー処理部116は、エラー番号5のエラー処理を行う。
【0200】
ここで、前述した図12のフローチャートを参照して、ステップS175に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0201】
ステップS71乃至S76において、エラー番号が1乃至8のいずれであるかが判定され、いまの場合、エラー番号5であるため(ステップS75の「Yes」)、処理は、ステップS81に進む。
【0202】
ステップS81において、エラー処理部116は、エラー番号5の対処を促す。図13に示すように、エラー番号5の対処としては、決済処理に失敗した場合であるので、例えば、エラーメッセージを表示して、店員に対して、ICカード11Aを客に再度かざすように客に伝えさせる。客によって再度、ICカード11Aがかざされた場合には、同一トランザクションIDと、決済額pAの送信から再試行する(ステップS172)。
【0203】
一方、ICカード11Aがかざされなかった場合、エラー処理部116は、通信部53を制御して、取引情報を、サポートセンタのサーバ13に送信する。この取引情報が、エラー番号2のエラー処理で使用されるのは、前述したとおりである。なお、この場合、その後、処理は、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理が終了することとなる。
【0204】
図19のフローチャートに戻り、一方、ステップS173において、ICカード11Aからの応答が正常であると判定された場合、処理は、図20のステップS176に進む。
【0205】
ステップS176において、POS端末装置12の決済部115は、ICカード11Aと同様に、ICカード11Bに対して、決済額pBと、トランザクションIDを送信する。
【0206】
POS端末装置12から決済額pBとトランザクションIDが送信されると、ICカード11Bでは、それらの情報が受信され、ステップS231乃至S235の決済処理が行われる。ステップS231乃至S235においては、図19のステップS211乃至S215と同様に、ICカード11Bの電子マネーの残高から決済額pBが引き落とされ、その処理結果がPOS端末装置12に送信される。
【0207】
ICカード11Bから処理結果が送信されると、POS端末装置12では、その処理結果が受信される。そして、ステップS177乃至S179において、図19のステップS173乃至S175と同様に、応答が正常であるかの判定処理と、上限回数に達したかの判定処理が行われ、上限回数に達した場合、エラー番号6のエラー処理が行われる。このエラー処理は、図19のステップS175と同様であるため、その説明は省略する。
【0208】
一方、ステップS177において、ICカード11Bからの応答が正常であると判定された場合、処理は、図21のステップS180に進む。
【0209】
ステップS180において、POS端末装置12の決済部115は、トランザクションIDのリセット要求を、ICカード11Aに送信する。
【0210】
POS端末装置12からリセット要求が送信されると、ICカード11Aにより受信される。そして、ステップS217において、ICカード11Aの制御部34は、リセット要求に応じて、トランザクションIDをリセットする。例えば、トランザクションIDが0に更新される。ステップS218において、制御部34は、リセットの処理結果を、POS端末装置12に送信する。
【0211】
ICカード11Aから処理結果が送信されると、POS端末装置12では、その処理結果が受信される。そして、ステップS181において、応答として受信した処理結果が、正常か否かが判定される。
【0212】
ステップS181において、応答が異常であると判定された場合、処理は、ステップS182に進む。ステップS182において、決済部115は、処理回数が上限回数に達したか否かを判定する。ステップS182において、処理回数が上限回数に達していないと判定された場合、処理は、ステップS180に戻る。そして、応答が正常であるか(ステップS181の「Yes」)、又は上限回数に達するまで(ステップS182の「Yes」)、前述した処理が繰り返される。
【0213】
正常な応答が返される前に、上限回数に達した場合、処理は、ステップS183に進む。ステップS183において、エラー処理部116は、エラー番号7のエラー処理を行う。
【0214】
ここで、前述した図12のフローチャートを参照して、ステップS183に対応するエラー処理の詳細を説明する。
【0215】
ステップS71乃至S76において、エラー番号が1乃至8のいずれであるかが判定され、いまの場合、エラー番号7であるため(ステップS76の「Yes」)、処理は、ステップS82に進む。
【0216】
ステップS82において、エラー処理部116は、エラー番号7の対処を促す。図13に示すように、エラー番号7の対処としては、カード状態の初期化に失敗した場合であるので、例えば、エラーメッセージを表示して、店員に対して、ICカード11Aを再度かざすように客に伝えさせる。再度かざされた場合には、リセット要求の送信が再試行される(ステップS180)。
【0217】
一方、ICカード11Aがかざされなかった場合には、取引情報が、サポートセンタのサーバ13に送信される。この取引情報が、エラー番号2のエラー処理で使用されるのは、前述したとおりである。なお、この場合、その後、処理は、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理が終了することとなる。
【0218】
図21のフローチャートに戻り、ステップS181において、ICカード11Aからの応答が正常であると判定された場合、処理は、ステップS184に進む。ステップS184において、POS端末装置12の決済部115は、ICカード11Aと同様に、ICカード11Bに対して、トランザクションIDのリセット要求を送信する。
【0219】
POS端末装置12からリセット要求が送信されると、ICカード11Bにより受信され、ステップS237,S238の決済処理が行われる。ステップS237,S238においては、ステップS217,S218と同様に、トランザクションIDがリセットされ、その処理結果がPOS端末装置12に送信される。
【0220】
ICカード11Bから処理結果が送信されると、POS端末装置12では、その処理結果が受信される。そして、ステップS185乃至S187において、ステップS181乃至S183と同様に、応答が正常であるかの判定処理と、上限回数に達したかの判定処理が行われ、上限回数に達した場合、エラー番号8のエラー処理が行われる。このエラー処理は、ステップS183と同様であるため、その説明は省略する。
【0221】
ステップS185において、ICカード11Bからの応答が正常であると判定された場合、図10のフローチャートに戻り、ICカード決済処理は終了する。
【0222】
なお、図19乃至図21の説明では、支払い(割り勘又は合算)の決済処理を説明し、ICカード11A及びICカード11Bから、それぞれ決済額pA、pBが引き落される場合の処理を説明した。一方、チャージの場合については説明していないが、支払いの場合の引き落としの代わりに、ICカード11A及びICカード11Bに対して、決済額pA、pBがチャージされるだけで、それ以外の処理は同様であるため、その説明は省略する。
【0223】
また、説明を具体的にするために、2枚のICカード11を例に説明したが、3枚以上のICカード11であっても基本的に処理の内容は同じである。
【0224】
以上のように、決済処理においては、ICカード11ごとに決定された決済額がトランザクションIDとともに、対象のICカード11に送信され、ICカード11ごとに決済が行われる。
【0225】
このように、ICカード決済システムにおいては、客によりかざされた複数枚のICカード11が検出され、検出されたICカード11が使用可能な状態にあるか否かが判定され、使用可能な状態にあるICカード11の残高や決済能力の有無がチェックされる。そして、決済可能なICカード11に対して、決済額に応じた金額を引き落とすなどの決済処理が行われる。
【0226】
これにより、複数枚のICカード11がかざされた場合において、例えば、支払い時の割り勘や合算、チャージなどの各種のサービスを提供することができるので、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができる。
【0227】
<2.第2の実施の形態>
ところで、前述した説明では、ICカード決済システム1により提供される決済のサービスを例に説明したが、本技術は、決済以外のサービスにも適用することができる。そこで、次に、決済以外のサービスの一例として、データ転送のサービスと、サイト誘導のサービスについて説明する。
【0228】
[ICカードデータ転送システムの構成]
まず、図22乃至図25を参照して、データ転送のサービスについて説明する。
【0229】
図22は、本技術を適用したICカードデータ転送システムの構成例を示す図である。
【0230】
図22に示すように、ICカードデータ転送システム201は、複数枚のICカード11と、パーソナルコンピュータ210から構成される。
【0231】
パーソナルコンピュータ210は、例えば店舗に配置され、客の所持している複数枚のICカード11のうち、一のICカード11のデータを、他のICカード11に転送させる処理を行う。図22においては、複数枚のICカード11の例として、2枚のICカード11AとICカード11Bが図示されている。
【0232】
以上のようにして、ICカードデータ転送システム201は構成される。
【0233】
[パーソナルコンピュータの構成]
図23は、パーソナルコンピュータ210の構成を示す図である。
【0234】
CPU211は、ROM212に記憶されているプログラム、又は記録部218に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM213には、CPU211が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU211、ROM212、およびRAM213は、バス214を介して相互に接続されている。
【0235】
CPU211にはまた、バス214を介して入出力インターフェース215が接続されている。入出力インターフェース215には、キーボード、マウス等よりなる入力部216、表示部231及びスピーカ232等からなる出力部217が接続されている。CPU211は、入力部216から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU211は、処理の結果得られた画像を表示部231に表示し、音声をスピーカ232から出力する。
【0236】
入出力インターフェース215に接続されている記録部218は、CPU211が実行するプログラムや各種のデータを記録する。通信部219は、インターネットその他のネットワークを介して外部の装置と通信する。また、通信部219を介してプログラムを取得し、記録部218に記録してもよい。
【0237】
リーダライタ220は、図3のリーダライタ54と同様の構成を有する。リーダライタ220は、CPU211の制御に従って、動作する。
【0238】
入出力インターフェース215に接続されているドライブ221は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリなどのリムーバブルメディア222が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記録部218に転送され、記録される。
【0239】
以上のようにして、パーソナルコンピュータ210は構成される。
【0240】
[ICカードデータ転送制御プログラム]
図24は、ICカードデータ転送制御プログラムの構成を示す図である。
【0241】
ICカードデータ転送制御プログラム241は、CPU211又はリーダライタ220の制御部(不図示)のいずれかにより実行される。
【0242】
ICカードデータ転送制御プログラム241は、ICカード検出部251、データ転送制御部252、及びエラー処理部253から構成される。
【0243】
ICカード検出部251は、図4のICカード検出部111と同様に、リーダライタ220を制御してポーリングを行い、ICカード11を検出する。
【0244】
データ転送制御部252は、リーダライタ220を制御して、一のICカード11から他のICカード11へのデータ転送を制御する。
【0245】
エラー処理部253は、図4のエラー処理部116と同様に、ICカード検出部251又はデータ転送制御部252による処理で発生したエラーを通知する。
【0246】
以上のようにして、ICカードデータ転送制御プログラム241は構成される。
【0247】
[ICカードデータ転送処理の流れ]
次に、図25のフローチャートを参照して、ICカードデータ転送処理について説明する。
【0248】
ステップS311において、ICカード検出部251は、ICカード検出処理を行う。このICカード検出処理は、図11のICカード検出処理と同様であるため、その説明は省略する。
【0249】
例えば、ICカード検出処理により、ICカード11Aと、ICカード11Bが検出された場合、ステップS312において、データ転送制御部252は、ICカード11AとICカード11Bに対して、データ転送処理を行う。
【0250】
データ転送処理としては、例えば、ICカード11Aのデータを、ICカード11Bに転送させるための指示が、ICカード11Aに送信される。なお、転送の指示は、ICカード11AとICカード11Bの両方に送信してもよい。
【0251】
パーソナルコンピュータ210から転送の指示が送信されると、ICカード11Aでは、その指示が受信される。そして、ステップS331において、ICカード11Aの制御部34は、受信された転送の指示に基づいて、記録部37に記録された転送用の所定のデータを読み出し、そのデータを、ICカード11Bに送信する(ステップS332)。
【0252】
ステップS333において、制御部34は、その処理結果をパーソナルコンピュータ210に送信する。
【0253】
ICカード11Aからデータが送信されると、ICカード11Bでは、そのデータが受信される(ステップS351)。そして、ステップS352において、ICカード11Bの制御部34は、受信されたデータを、記録部37に記録する。これにより、ICカード11Aのデータが、ICカード11Bに転送されたことになる。
【0254】
ステップS353において、制御部34は、その処理結果をパーソナルコンピュータ210に送信する。
【0255】
データ転送が完了すると、パーソナルコンピュータ210には、各ICカードから処理結果が受信される。ステップS313において、データ転送制御部252は、各ICカードから受信された処理結果を、記録部218に記録する。これにより、正常にデータ転送された場合の処理結果だけでなく、仮に、データ転送に失敗した場合も、その処理結果が記録される。
【0256】
以上のように、ICカードデータ転送処理においては、かざされた複数枚のICカード11が検出され、検出されたICカード11のうちの、一のICカード11の転送用のデータが、他のICカード11に転送される。これにより、例えば、2枚のICカード11を、パーソナルコンピュータ210にかざすだけで、データ転送が可能となる。
【0257】
例えば、1枚のICカード11ずつしか処理できないシステムで、前述したデータ転送を行おうとすると、まず、ICカード11Aをかざして、ICカード11Aのデータを、パーソナルコンピュータ210により読み取らせ、一旦記録させる。次に、ICカード11Bをかざして、記録しておいたデータを、ICカード11Bに書き込むといった動作が必要となる。一方、ICカードデータ転送システム201では、転送用のデータをパーソナルコンピュータ210に記録せずに、直接、ICカード11AからICカード11Bにデータ転送できるため、セキュリティを向上させることができる。
【0258】
このICカードデータ転送システム201の具体的な適用例としては、例えば、期限切れのICカード11Aに、新たに発行したICカード11Bを重ねてかざすと、ICカード11Bに対して、ICカード11Aのデータが引き継がれるなどの利用方法が想定される。
【0259】
<3.第3の実施の形態>
[ICカードサイト誘導システム]
次に、図26乃至図28を参照して、サイト誘導のサービスについて説明する。
【0260】
図26は、本技術を適用したICカードサイト誘導システムの構成例を示す図である。
【0261】
図26に示すように、ICカードサイト誘導システム301は、複数枚のICカード11と、パーソナルコンピュータ210から構成される。
【0262】
図26Aに示すように、パーソナルコンピュータ210は、ICカード11が1枚かざされた場合、ICカード11から、一般のサイトにアクセスするためのサイト情報(例えばURL)を取得する。パーソナルコンピュータ210は、取得されたサイト情報に基づいて、インターネットを介して一般のサイトにアクセスし、そのサイトページを表示部231に表示する。例えば、表示部231には、一般のサイトとして、「一般ABCサイト」が表示される。
【0263】
また、図26Bに示すように、パーソナルコンピュータ210は、ICカード11AとICカード11Bがかざされた場合、ICカード11Aからのサイト情報と、ICカード11Aからの特典情報を取得する。パーソナルコンピュータ210は、サイト情報と特典情報に基づいて、インターネットを介して特別なサイトにアクセスし、そのサイトページを表示部231に表示する。ここで、特典情報とは、一般のサイトに関連する特別なサイトにアクセスするための情報をいう。例えば、表示部231には、特別なサイトとして、「スペシャルABCサイト」が表示される。
【0264】
なお、パーソナルコンピュータ210は、前述した図23に示した構成を有する。
【0265】
以上のようにして、ICカードサイト誘導システム301は構成される。
【0266】
[ICカードサイト誘導制御プログラム]
図27は、ICカードサイト誘導制御プログラムの構成を示す図である。
【0267】
ICカードサイト誘導制御プログラム311は、CPU211又はリーダライタ220の制御部(不図示)のいずれかにより実行される。
【0268】
ICカードサイト誘導制御プログラム311は、ICカード検出部321、サイト誘導制御部322、及びエラー処理部323から構成される。
【0269】
ICカード検出部321は、図4のICカード検出部111と同様に、リーダライタ220を制御してポーリングを行い、ICカード11を検出する。
【0270】
サイト誘導制御部322は、リーダライタ220を制御して、ICカード11からサイト情報を取得する。サイト誘導制御部322は、通信部219を制御して、サイト情報に基づいて、インターネットを介して一般のサイトにアクセスして、そのサイトページを表示部231に表示させる。
【0271】
また、サイト誘導制御部322は、リーダライタ220を制御して、一のICカード11からサイト情報を取得し、他のICカード11から特典情報を取得する。サイト誘導制御部322は、通信部219を制御して、サイト情報及び特典情報に基づいて、インターネットを介して特別なサイトにアクセスして、そのサイトページを表示部231に表示させる。
【0272】
エラー処理部323は、図4のエラー処理部116と同様に、ICカード検出部321又はサイト誘導制御部322による処理で発生したエラーを通知する。
【0273】
以上のようにして、ICカードサイト誘導制御プログラム311は構成される。
【0274】
[ICカードサイト誘導処理の流れ]
次に、図28のフローチャートを参照して、ICカードサイト誘導処理について説明する。
【0275】
ステップS411において、ICカード検出部321は、ICカード検出処理を行う。このICカード検出処理は、図11のICカード検出処理と同様であるため、その説明は省略する。
【0276】
ICカード検出処理により、ICカード11Aと、ICカード11Bが検出された場合、ステップS412において、サイト誘導制御部322は、ICカード11AとICカード11Bに対して、情報要求処理を行う。
【0277】
情報要求処理としては、例えば、ICカード11Aに対してサイト情報を要求し、ICカード11Bに対して特典情報を要求する処理が行われる。
【0278】
パーソナルコンピュータ210から要求が送信されると、ICカード11Aと、ICカード11Bのそれぞれにより受信される。
【0279】
ステップS431において、ICカード11Aの制御部34は、受信された要求に基づいて、記録部37に記録されたサイト情報を読み出し、そのサイト情報を、パーソナルコンピュータ210に送信する(ステップS432)。
【0280】
また、ステップS451において、ICカード11Bの制御部34は、受信された要求に基づいて、記録部37に記録された特典情報を読み出し、その特典情報を、パーソナルコンピュータ210に送信する(ステップS452)。
【0281】
ICカード11Aからサイト情報が送信され、ICカード11Bから特典情報が送信されると、それらの情報が、パーソナルコンピュータ210の通信部219により受信される(ステップS413)。
【0282】
ステップS414において、サイト誘導制御部322は、サイト情報と特典情報に基づいて、インターネットを介して特別なサイトにアクセスし、そのサイトページを表示部231に表示させる(ステップS415)。
【0283】
例えば、表示部231には、特別なサイトとして、図26Bの「スペシャルABCサイト」が表示される。
【0284】
以上のように、ICカードサイト誘導処理においては、かざされた複数枚のICカードが検出され、検出された複数枚のICカードから、サイト情報と特典情報が取得され、特別なサイトにアクセスして、そのサイトページが表示される。これにより、例えば、通常のサイトを誘導するためのICカード11Aに加えて、特典のICカードを、パーソナルコンピュータ210にかざすと、一般の人では見られない特別なサイトへ誘導することが可能となる。
【0285】
なお、このICカードサイト誘導システム301の他の適用例としては、例えば、銀行のICチップ内蔵のキャッシュカードとICカード運転免許証を、ICカードを読み取り可能なATMに、重ねてかざすことにより、引き出しや振り込み等の取引と、本人確認(認証)を一度に行うサービスの提供が実現可能である。また、例えば、コンビニエンスストアや百貨店等の店舗での支払い時に、決済用のICカードと、ポイント付与用のICカードを重ねて、POS端末装置にかざすことで、決済と、ポイント付与を一度に行うサービスの提供が実現可能である。
【0286】
また、タバコの自動販売機に、成人識別用のICカードと、決済用のICカードを重ねてかざすことにより、年齢認証と、決済を一度に行うサービスの提供が実現可能である。さらに、交通機関や観光地の施設などのチケットを購入する際に、複数人の決済用のICカードを重ねて、料金支払機にかざすことで、団体割引料金で、チケットを購入できるサービスの提供が可能となる。また、例えば、パーソナルコンピュータ210において、電子マネーの残高や利用履歴といった情報を表示するためのソフトウェア(例えば電子マネービューワー)が起動されているとき、複数枚のICカードを重ねてかざすと、それぞれのICカードの電子マネー残高や利用履歴などを表示させるサービスの提供が可能となる。このサービスでは、複数枚のICカードの電子マネー残高などを確認する際に、わざわざICカードを持ち替える必要がないという利点がある。
【0287】
以上のように、本技術を適用したICカード決済システム、ICカードデータ転送システム、及びICカードサイト誘導システムにおいては、複数枚のICカードがかざされた場合における、様々なサービスを提供することができるため、近接通信を利用したサービスの利便性を向上させることができる。
【0288】
なお、前述した説明では、近接通信を行う通信装置として、ICカードを一例に説明したが、ICカードに限らず、ICカードの機能を内蔵した携帯電話機などの他の電子機器にも適用することができる。
【0289】
また、前述した説明では、一連の処理をソフトウェアにより実行する例を説明したが、ハードウェアにより実行させることもできる。そして、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、又は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0290】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk))を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disk)(登録商標)を含む)、若しくは半導体メモリ等構成されるだけでなく、コンピュータにあらかじめ組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されている記録部で構成される。
【0291】
また、前述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインターフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0292】
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
【0293】
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであってもよい。
【0294】
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0295】
さらに、本技術の実施の形態は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0296】
1 ICカード決済システム, 11 ICカード, 12 POS端末装置, 51 制御部, 52 表示部, 54 リーダライタ, 71 制御部, 101 ICカード決済制御プログラム, 111 ICカード検出部, 112 画面表示制御部, 113 ICカード状態確認部, 114 残高照会・決済額決定部, 115 決済部, 116 エラー処理部, 201 ICカードデータ転送システム, 210 パーソナルコンピュータ, 211 CPU, 231 表示部, 219 通信部, 220 リーダライタ, 241 ICカードデータ転送制御プログラム, 251 ICカード検出部, 252 データ転送制御部, 253 エラー処理部, 301 ICカードサイト誘導システム, 311 ICカードサイト誘導制御プログラム, 321 ICカード検出部, 322 サイト誘導制御部, 323 エラー処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接通信を行う通信装置を検出する通信装置検出部と、
複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う共通処理部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記共通の処理の結果を、複数の前記通信装置に通知する処理結果通知部をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記共通処理部は、検出された前記通信装置の数及び前記通信装置から得られる前記固有の情報に応じた前記共通の処理を行い、それぞれの前記通信装置に対して要求する値を決定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記固有の情報は、電子マネーの残高を示す情報であり、
前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られる前記残高が、支払い額を前記通信装置の数で除算して得られる割り勘の金額を超える場合、その金額を前記通信装置ごとの決済額として決定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記固有の情報は、電子マネーのチャージ可能な金額を示す情報であり、
前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られるチャージ可能な金額が、チャージ額を前記通信装置の数で除算して得られる金額を超える場合、その金額を前記通信装置ごとのチャージ額として決定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記固有の情報は、電子マネーの残高を示す情報であり、
前記共通処理部は、前記通信装置ごとに得られる前記残高を合算して得られる金額が、支払い額を超える場合、前記通信装置ごとの残高に応じて決済額を決定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記共通処理部は、検出された複数の前記通信装置のうち、1以上の通信装置における前回の処理が正常に終了している場合、前記共通の処理を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記通信装置の検出、前記共通の処理、又は前記共通の処理の結果の通知を行ったときに発生したエラーを通知するエラー通知部をさらに備える
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記共通の処理の内容を選択させる画面を表示する表示部をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置が、
近接通信を行う通信装置を検出し、
複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う
ステップを含む情報処理方法。
【請求項11】
近接通信を行う通信装置を検出する通信装置検出部と、
複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う共通処理部と
して、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
近接通信を行う通信装置と情報処理装置からなる情報処理システムにおいて、
前記情報処理装置は、
前記通信装置を検出する通信装置検出部と、
複数の前記通信装置が検出された場合、検出された前記通信装置から得られる固有の情報に基づいて、複数の前記通信装置に対する共通の処理を行う共通処理部と
を備える情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−208894(P2012−208894A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75961(P2011−75961)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】