説明

情報管理装置及び情報管理システム

【課題】収集される測定値の妥当性を高めることができ、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合の原因の究明を容易に行うことができる情報管理装置及び情報管理システムを提供する。
【解決手段】情報管理装置14は、フィールドネットワークN1に接続されるフィールド機器11で測定される測定値を収集して管理する装置であり、フィールド機器11で測定される測定値を収集する測定値収集部21と、フィールド機器11及びフィールドネットワークN1の状態を示すステータス情報を収集するステータス収集部22と、測定値収集部21で収集される測定値の妥当性を示す品質情報を、ステータス収集部22で収集されるステータス情報を用いて補正する品質情報補正部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや工場等で収集される情報の管理を行う情報管理装置及び情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラント等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらの管理及び制御を行う機器管理装置とが通信バスを介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。この分散制御システムでは、プラント等で収集される膨大なデータ(例えば、プロセスデータ)の管理を容易にすべく、収集したデータを長期間に亘って蓄積した上で、必要な時に必要な形式で提供するプラント情報管理システム(PIMS:Plant Information Management System)が導入されることが多い。
【0003】
プラント情報管理システムを導入することによって、プラント等の操業状況をリアルタイムに管理することが可能になるばかりでなく、帳票等による生産実績等の管理、トレンドグラフによる簡易解析、予測・診断・多変量解析等による高度処理等を行うことが可能になる。以下の特許文献1には、フィールド機器のプロセスデータを収集して管理するプラント情報管理装置を備えており、このプラント情報管理装置で管理されるプロセスデータを用いてプラントの監視を行うプラント監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−58559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラント情報管理システムを導入して上述した生産実績等の管理やトレンドグラフによる簡易解析等を正確に行うには、フィールド機器で正しく測定された測定値を収集することが極めて重要である。特に、上述した高度処理では、時系列順に測定された測定値の差分を取って変化を見るという処理が行われることが多いため、測定された個々の測定値の妥当性が極めて重要になる。
【0006】
ここで、従来のプラント情報管理システムは、フィールド機器から測定値のみを収集しており、そのフィールド機器の状態や、そのフィールド機器からプラント情報管理システムまでの経路の状態を示す情報の収集を行ってはいない。このため、例えばフィールド機器に故障等が生じていたり、或いはフィールド機器からプラント情報管理システムまでの経路上に存在する機器(例えば、ルータ)に故障等が生じている場合に収集された情報もプラント情報管理システムでは正常な値として取り扱われてしまうため、測定値の妥当性に問題があった。
【0007】
また、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合には、その原因を特定して機器の交換等の対策を施す必要がある。しかしながら、従来は、上述の通り、プラント情報管理システムにおいて、フィールド機器の状態や、フィールド機器からプラント情報管理システムまでの経路の状態を示す情報の収集は行われていないため、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合には、その測定値が収集された経路に存在する全ての機器の状態を確認しなければならず、原因の特定に長時間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、収集される測定値の妥当性を高めることができ、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合の原因の究明を容易に行うことができる情報管理装置及び情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の情報管理装置は、ネットワーク(N1)に接続される測定機器(11)で測定される測定値を収集して管理する情報管理装置(14)において、前記測定機器で測定される測定値を収集する第1収集部(21)と、前記測定機器及び前記ネットワークの状態を示すステータス情報を収集する第2収集部(22)と、前記第1収集部で収集される前記測定値の妥当性を示す品質情報を、前記第2収集部で収集される前記ステータス情報を用いて補正する補正部(23)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、第1収集部で収集された測定値の妥当性を示す品質情報が、第2収集部で収集されるステータス情報を用いて補正部により補正される。
また、本発明の情報管理装置は、前記品質情報が、前記第1収集部で収集される測定値に付加されており、前記補正部が、前記測定値に付加されている前記品質情報を、前記第2収集部で収集される前記ステータス情報を用いて補正することを特徴としている。
また、本発明の情報管理装置は、前記第2収集部が、前記ステータス情報以外に、前記測定機器及び前記ネットワークをなす経路機器の機器データを収集し、前記補正部が、前記ステータス情報が得られない測定機器又は経路機器が存在する場合には、前記第2収集部で収集される機器データを用いて当該測定機器又は経路機器の状態を示すステータス情報を生成することを特徴としている。
また、本発明の情報管理装置は、前記補正部が、前記ステータス情報が複数得られている測定機器又は経路機器が存在する場合には、該複数のステータス情報を組み合わせて代表的なステータス情報を生成することを特徴としている。
また、本発明の情報管理装置は、前記第1収集部で収集される測定値と、前記第2収集部で収集されるステータス情報とを同じ時間軸上に並べて表示する表示部(28)を備えることを特徴としている。
本発明の情報管理システムは、ネットワーク(N1)に接続される測定機器(11)で測定される測定値を収集して管理する情報管理システム(1)において、上記の何れかに記載の情報管理装置と、前記情報管理装置が備える前記第1収集部で収集される測定値と、前記第2収集部で収集されるステータス情報とを同じ時間軸上に並べて表示する表示装置(13、15)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1収集部で収集した測定値の妥当性を示す品質情報を、第2収集部で収集されるステータス情報を用いて補正部により補正しているため、収集される測定値の妥当性を高めることができるという効果がある。また、第1収集部で収集される測定値と、第2収集部で収集されるステータス情報とを同じ時間軸上に並べて表示しているため、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合の原因の究明を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による情報管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による情報管理システムを構成する各装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による情報管理装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による情報管理システムに表示される表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による情報管理装置及び情報管理システムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による情報管理システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の情報管理システム1は、フィールド機器11(測定機器)、プロセスコントローラ12、操作監視ステーション13(表示装置)、情報管理装置14、及び上位管理装置15(表示装置)を備えており、フィールド機器11で測定される測定値を情報管理装置14がプロセスコントローラ12を介して収集して管理するシステムである。
【0013】
フィールド機器11は、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場の現場に設置される機器であり、例えば流量、温度、弁の開度、モータの回転数等を測定して測定値として出力する。このフィールド機器11は、プラント等に複数設置されており、各々がプラント等に敷設されたフィールドネットワークN1に接続されてプロセスコントローラ12によって制御される。尚、フィールド機器11は、自己の状態を診断する自己診断機能を備えるものもある。
【0014】
プロセスコントローラ12は、フィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2に接続されており、操作監視ステーション13又は上位管理装置15の指示に基づいて、フィールドネットワークN1に接続されるフィールド機器11の制御等を行う。具体的には、フィールドネットワークN1に接続されているフィールド機器11の制御(例えば、弁の開閉等の制御)、フィールドネットワークN1に接続されているフィールド機器11で測定された測定値の収集等を行う。また、プロセスコントローラ12は、フィールド機器11から収集した測定値に対し、その妥当性を示す品質情報を付加する処理を行う。尚、プロセスコントローラ12も、自己の状態を診断する自己診断機能を備える。
【0015】
ここで、図1では簡略化して図示しているが、フィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2は、通信ケーブルのみならずルータ等の機器(経路機器)から構成される。これらフィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2を構成する機器には、フィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2を介した通信状況をそれぞれ監視して、各々のネットワークの状態を監視する自己診断機能を備える機器が含まれる。
【0016】
このように、本実施形態の情報管理システム1は、フィールド機器11と情報管理装置14との間に配置される機器(フィールド機器11及びプロセスコントローラ12)及びネットワーク(フィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2)が自己診断機能を備える構成である。尚、フィールド機器11と情報管理装置14との間に配置される機器の全てが自己診断機能を備えるのが望ましいが、自己診断機能を備えていない機器が混在していても良い。
【0017】
操作監視ステーション13は、フィールド機器11の監視を行うととともにフィールド機器11に対する操作を指示するために用いられる端末装置である。また、この操作監視ステーション13は、情報管理装置14で管理される測定値を用いた解析等(例えば、トレンドグラフによる簡易解析等)を行う際にも用いられる。操作監視ステーション13は、例えばキーボードやマウス等の入力装置及び液晶表示装置等の表示装置を備えるデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ等で実現される。
【0018】
情報管理装置14は、制御ネットワークN2及び上位ネットワークN3に接続されており、プロセスコントローラ12を介してフィールド機器11の測定値を収集して管理する。具体的には、フィールド機器11で測定されてプロセスコントローラ12で品質情報が付加された測定値を長期間に亘って蓄積した上で、必要な時に必要な形式で操作監視ステーション13や上位管理装置15に提供する。尚、情報管理装置14の詳細については後述する。
【0019】
上位管理装置15は、上位ネットワークN3に接続されており、フィールド機器11の管理を行うための各種指示、或いは、情報管理装置14で管理される情報の解析等を行うための各種指示を行う。この上位管理装置15は、キーボード等の入力装置及び液晶表示装置等の表示装置を備えるデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ等で実現され、システム管理者によってなされた操作に応じた指示を情報管理装置14或いはプロセスコントローラ12に対して行う。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態による情報管理システムを構成する各装置の内部構成を示すブロック図である。尚、図2においては、図1に示したブロックに対応するブロックには同一の符号を付してある。まず、図2に示す通り、フィールド機器11、フィールドネットワークN1、プロセスコントローラ12、及び制御ネットワークN2には、各々の状態を診断する診断部D1〜D4がそれぞれ設けられている。これら診断部D1〜D4は、その診断結果を示す情報として、「正常」,「妥当性が疑わしい」,「異常」,「無効」等のステータス情報を出力する。尚、フィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2に設けられる診断部D2,D4は、例えば各々のネットワークを構成する機器(経路機器)にそれぞれ設けられる。
【0021】
また、図2に示す通り、フィールド機器11には、上記の診断部D1以外に、温度、弁の開度、モータの回転数等を測定する測定部M1が設けられている。また、プロセスコントローラ12には、上記の診断部D3以外に、フィールド機器11の測定部M1で測定された測定値に対し、その妥当性を示す品質情報を付加する処理を行う品質情報付加部V1が設けられている。
【0022】
次に、図2に示す通り、情報管理装置14は、測定値収集部21(第1収集部)、ステータス収集部22(第2収集部)、品質情報補正部23(補正部)、データ処理部24、データベース25、関連情報データベース26、データアクセス部27、及び表示部28を備える。測定値収集部21は、フィールド機器11の測定部M1で測定されて、プロセスコントローラ12の品質情報付加部V1によって品質情報が付加された測定値を収集する。
【0023】
ステータス収集部22は、フィールド機器11、フィールドネットワークN1、プロセスコントローラ12、及び制御ネットワークN2に設けられた診断部D1〜D4から出力されるステータス情報を収集する。また、ステータス収集部22は、ステータス情報以外に、フィールド機器11及びプロセスコントローラ12、並びにフィールドネットワークN1及び制御ネットワークN2を構成する機器(経路機器)が有する機器データも収集する。ここで、機器データとは、その機器の稼働時間を示すデータや、補助的に得られる計測データ(例えば、機器に温度計が設けられている場合には温度を示すデータ)である。
【0024】
品質情報補正部23は、測定値収集部21で収集される測定値に付加されている品質情報を、ステータス収集部22で収集されるステータス情報を用いて補正する。ここで、診断部D1を備えているフィールド機器11と、このような診断部D1を備えていないフィールド機器とが混在する場合には、後者のフィールド機器からは測定値のみが得られてステータス情報が得られない。かかる場合には、品質情報補正部23は、その機器から得られる機器データ及び必要に応じてプロセス値を用いてステータス情報を生成し、生成したステータス情報を用いて測定値の補正を行う。また、1つの機器について複数のステータス情報が得られる場合もある。かかる場合には、品質情報補正部23は、それら複数のステータス情報を組み合わせて代表的なステータス情報(以下、代表ステータス情報という)を生成し、生成した代表ステータス情報を用いて測定値の補正を行う。
【0025】
データ処理部24は、測定値収集部21で収集された測定値と、この測定値に付加されている品質情報とに対するデータ処理を行う。具体的には、収集された測定値及び品質情報を集計し、或いはこれらを用いて所定の演算を行って生産情報値及び生産情報値の品質情報を生成する。そして、生成した生産情報値や品質情報をデータベース25に格納する。尚、品質情報補正部23で品質情報が補正された場合には、データ処理部24は、補正後の品質情報を用いて上記のデータ処理を行う。
【0026】
データベース25は、プロセス値、生産情報値、並びに機器データ及びステータス情報等を格納する。ここで、データフェース25に格納されるプロセス値及び生産情報値には品質情報が含まれ、ステータス情報には上述した代表ステータス情報が含まれる。関連情報データベース26は、経路情報、フィールド機器11を特定する情報、及び生産情報値に関連する情報等の関連情報を格納する。
【0027】
具体的に、関連情報データベース26には、フィールド機器11の測定部M1で測定された測定値がフィールド機器11から情報管理装置14に至るまでの双方向の経路を示す経路情報が格納される。また、フィールド機器11を物理的に特定する機器タグと論理的に特定するプロセスタグとの対応関係を示す情報が格納される。更には、生産情報値を生成する元になった測定値を示す情報が格納される。
【0028】
データアクセス部27は、図1に示す操作監視ステーション13又は上位管理装置15或いは表示部28の要求に応じてデータベース25及び関連情報データベース26を検索し、これらデータベース25及び関連情報データベース26から必要な情報を読み出す。表示部28は、液晶表示装置等の表示装置を備えており、ユーザの指示に応じたデータの取得をデータアクセス部27に要求し、データアクセス部27で取得されたデータを表示装置に表示する。
【0029】
尚、詳細は後述するが、表示部28は、測定値収集部21で収集される測定値と、ステータス収集部22で収集されるステータス情報の変化を示す情報とを同じ時間軸上に並べて表示する。また、この表示部28の機能を図1に示す操作監視ステーション13又は上位管理装置15に設けることで、操作監視ステーション13又は上位管理装置15において表示部28と同様の表示を行うことが可能である。
【0030】
次に、上記構成における情報管理システム1の動作について説明する。ここで、情報管理システム1の動作は、フィールド機器11の測定部M1で測定された測定値を情報管理装置14に収集する収集動作と、情報管理装置14で管理される情報を表示部28に表示する表示動作とに大別される。以下では、まず収集動作について説明し、次いで表示動作について説明する。
【0031】
フィールド機器11には、測定部M1で測定を行う時間間隔が予め設定されている。前回測定部M1で測定を行った時点から上記の時間間隔で規定される時間が経過すると測定部M1で再び測定が行われる。測定部M1で測定された測定値は、フィールド機器11からフィールドネットワークN1を介してプロセスコントローラ12に送信される。この測定値がプロセスコントローラ12で受信されると、プロセスコントローラ12が備える品質情報付加部V1によって、その測定値の妥当性を示す品質情報が付加される。品質情報が付加された測定値は、プロセスコントローラ12から制御ネットワークN2を介して情報管理装置14に受信され、情報管理装置14が備える測定値収集部21に収集される。
【0032】
また、フィールド機器11、フィールドネットワークN1、プロセスコントローラ12、及び制御ネットワークN2の状態が診断部D1〜D4でそれぞれ診断される。この診断結果を示すステータス情報及び機器データは情報管理装置14が備えるステータス収集部22に収集される。測定値及びステータス情報が収集されると、収集されたステータス情報に応じて測定値に付加されている品質情報を必要に応じて補正する処理が行われる。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態による情報管理装置で行われる処理を示すフローチャートである。尚、図3に示す処理は、情報管理装置14が備える品質情報補正部23で行われる処理である。処理が開始されると、品質情報補正部23は、まず測定値収集部21で収集された測定値についてのステータス情報が存在するか否かを判断する(ステップS11)。ステータス情報が存在すると判断した場合(ステップS11の判断結果が「YES」の場合)には、品質情報補正部23は、そのステータス情報が複数存在するか否かを判断する(ステップS12)。
【0034】
複数のステータス情報が存在すると判断した場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、品質情報補正部23は、それら複数のステータス情報を組み合わせて代表ステータス情報を生成する(ステップS13)。例えば、ステータス情報の種類(「正常」,「妥当性が疑わしい」,「異常」,「無効」等)毎に異なる数値を割り当てて平均値を求め、その平均値が最も近い種類を代表ステータス情報にする処理を行う。尚、代表ステータス情報の生成方法は、以上の平均値を求める方法には限られない。尚、ステータス情報が複数存在しないと判断した場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS13の処理は行われない。
【0035】
これに対し、ステータス情報が存在しないと判断した場合(ステップS11の判断結果が「NO」の場合)には、品質情報補正部23は、機器ステータス情報を生成する(ステップS14)。例えば、品質情報補正部23は、ステータス情報が存在しない測定値が得られた機器についての機器データ及び必要に応じてプロセス値を用い、統計解析や相関処理等を行ってステータス情報を生成する。以上のステップS11〜S14の処理によって、最終的に1つのステータス情報(代表ステータス情報を含む)のみが得られた状態になる。
【0036】
次に、品質情報補正部23は、測定値収集部21で収集される測定値に付加されている品質情報の補正が必要であるか否かを判断する(ステップS15)。具体的には、以上のステップS11〜S14の処理によって最終的に得られたステータス情報の内容に基づいて補正が必要であるか否かを判断する。例えば、ステータス情報が「妥当性が疑わしい」を示すものであって、補正が必要であると判断した場合(ステップS15の判断結果が「YES」の場合)には、品質情報補正部23は、最終的に得られた1つのステータス情報を用いて、測定値収集部21で収集される測定値に付加されている品質情報を補正する(ステップS16)。これに対し、補正が必要無いと判断した(ステップS15の判断結果が「NO」の場合)には、図3に示す一連の処理が終了する。
【0037】
以上の処理が終了すると、測定値収集部21で収集された測定値と、この測定値に付加されている品質情報とに対するデータ処理がデータ処理部24で行われて生産情報値及び生産情報値の品質情報が生成される。そして、ステータス収集部22で収集された機器データ及びステータス情報、測定値収集部21で収集された測定値及び品質情報(品質情報補正部23で補正された品質情報)、及びデータ処理部24で生成された生産情報値等がデータベース25及び関連情報データベース26に格納される。このようにして、フィールド機器11の測定部M1で測定された測定値が情報管理装置14に収集される。
【0038】
次に、例えばユーザが情報管理装置14に対して、管理されている情報の表示指示を行ったとする。具体的には、プロセス毎に割り当てられた識別子であるプロセス識別子とフィールド機器11毎に割り当てられた識別子である機器識別子とを指定するとともに、情報管理装置14で管理されている情報を表示させるべき期間を指定したとする。かかる指示がなされると、表示部28からデータアクセス部27に対してデータの取得要求が出力される。すると、データアクセス部27は、表示部28からの要求に応じてデータベース25及び関連情報データベース26を検索して必要な情報を読み出す。データアクセス部27によって読み出された情報は表示部28に出力され、例えば図4に示す表示がなされる。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態による情報管理システムに表示される表示画面の一例を示す図である。図4に示す表示画面Gは、横軸に時間軸が設定されており、その時間軸の上方に位置する表示領域R1と下方に位置する表示領域R2とに大別される画面である。表示領域R1は、ユーザによって指定されたプロセス識別子で特定されるプロセスに関する時系列の情報が表示される表示領域(プロセス・タイムライン)である。これに対し、表示領域R2は、ユーザによって指定された機器識別子で特定される機器(フィールド機器11やネットワークを構成する機器)に関する時系列の情報が表示される表示領域(デバイス・ライムライン)である。
【0040】
具体的に、表示領域R1には、プロセスに関する情報(具体的には、情報管理装置14の測定値収集部21で収集される情報、及び、プロセスアラームを示す情報等)が時系列で表示される。図4に示す例では、ユーザに指定された期間T1,T2において、測定値の経時変化がトレンドグラフQ1,Q2としてそれぞれ表示されている。また、期間T1,T2の各々において、測定値の妥当性が疑わしい期間であることを示す表示(注意期間表示W1,W2)が表示される。尚、この注意期間表示W1,W2は、測定値に付加されている品質情報に基づいて表示される。
【0041】
また、表示領域R2には、機器に関する情報(具体的には、情報管理装置14のステータス収集部22で収集される情報)が時系列で表示される。図4に示す例では、ステータス情報が変化した時点を示すアイコンA1〜A3(図4中において、三角形印で示すもの)が時間軸に沿って表示されている。尚、図4では三角形印のアイコンを図示しているが、アイコンA1〜A3の形状は任意である。
【0042】
図4に示す通り、種類の異なる情報が表示される2つの表示領域R1,R2が同じ時間軸上に並べて表示される。これにより、ユーザは表示領域R1に表示された情報と表示領域R2に表示された情報とを容易に見比べることができ、各々の領域に表示された情報の関連性を容易に把握することができる。このため、例えば、注意期間表示W1,W2が表示されて測定値等の妥当性が疑わしい期間があった場合に、ユーザがプロセスに関する情報と機器に関する情報との関連性からその原因(測定値等の妥当性が疑わしくなった原因)の究明を行うことが可能になる。
【0043】
以上の通り、本実施形態では、情報管理装置14において、測定値収集部21で収集された測定値に付加されている品質情報を、ステータス収集部22で収集されたステータス情報を用いて補正するようにしているため、収集される測定値の妥当性を高めることができる。これにより、帳票等による生産実績等の管理、トレンドグラフによる簡易解析、予測・診断・多変量解析等による高度処理等を正確に行うことができる。また、測定値収集部21で収集された情報とステータス収集部22で収集された情報とを同じ時間軸上に並べて表示しているため、妥当性が疑わしい測定値が収集された場合の原因の究明を容易に行うことができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態による情報管理装置及び情報管理システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、情報管理装置14に表示部28が設けられており、情報管理装置14で管理される情報を表示部28に表示する例について説明した。しかしながら、情報管理装置14に表示部28が設けられている必要は必ずしも無い。表示部28の機能を図1に示す操作監視ステーション13又は上位管理装置15に設けることで、操作監視ステーション13又は上位管理装置15において表示部28と同様の表示を行うことが可能である。
【0045】
また、上記実施形態では、有線の通信バスであるフィールドネットワークN1に接続されるフィールド機器を備える情報管理システムを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、国際計測制御学会(ISA:International Society of Automation)で策定されたインダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信が可能であり、プロセスコントローラ12と無線通信が可能なフィールド機器(無線フィールド機器)を備える情報管理システムにも適用可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、フィールド機器11、フィールドネットワークN1、プロセスコントローラ12、及び制御ネットワークN2の各々に診断部D1〜D4がそれぞれ設けられている例について説明した。しかしながら、故障率が低ければ、フィールドネットワークN1、プロセスコントローラ12、及び制御ネットワークN2については、診断部D2〜D4を省略しても良い。
【0047】
また、情報管理装置14が備える測定値収集部21によってプロセスアラームを収集し、図4に示す表示領域R1に表示されるプロセス・タイムラインにプロセスアラームの発生・復帰を示す情報を表示しても良い。同様に、情報管理装置14が備えるステータス収集部22で機器アラーム(フィールド機器11又はネットワークを構成する機器で発生するアラーム)を収集し、図4に示す表示領域R2に表示されるデバイス・タイムラインに機器アラームの発生・復帰を示す情報を表示しても良い。更に、フィールド機器11等の機器の状態を撮影したマルチメディアデータを収集して、デバイス・タイムラインに表示するようにしても良い。
【0048】
ここで、プロセス・タイムラインが表示される表示領域R1及びデバイス・タイムラインが表示される表示領域R2は同じ時間軸上に並べて表示されるため、各々の領域に多くの情報が表示されれば関連性を見い出しやすくなる。しかしながら、余りに多くの情報が一度に表示されると視認性が悪化して逆効果になる。このため、図4に示す表示画面Gに表示させる情報をユーザの指示に応じて選択するフィルタ機能を設けるのが望ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 情報管理システム
11 フィールド機器
13 操作監視ステーション
14 情報管理装置
15 上位管理装置
21 測定値収集部
22 ステータス収集部
23 品質情報補正部
28 表示部
N1 フィールドネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される測定機器で測定される測定値を収集して管理する情報管理装置において、
前記測定機器で測定される測定値を収集する第1収集部と、
前記測定機器及び前記ネットワークの状態を示すステータス情報を収集する第2収集部と、
前記第1収集部で収集される前記測定値の妥当性を示す品質情報を、前記第2収集部で収集される前記ステータス情報を用いて補正する補正部と
を備えることを特徴とする情報管理装置。
【請求項2】
前記品質情報は、前記第1収集部で収集される測定値に付加されており、
前記補正部は、前記測定値に付加されている前記品質情報を、前記第2収集部で収集される前記ステータス情報を用いて補正する
ことを特徴とする請求項1記載の情報管理装置。
【請求項3】
前記第2収集部は、前記ステータス情報以外に、前記測定機器及び前記ネットワークをなす経路機器の機器データを収集し、
前記補正部は、前記ステータス情報が得られない測定機器又は経路機器が存在する場合には、前記第2収集部で収集される機器データを用いて当該測定機器又は経路機器の状態を示すステータス情報を生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の情報管理装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記ステータス情報が複数得られている測定機器又は経路機器が存在する場合には、該複数のステータス情報を組み合わせて代表的なステータス情報を生成することを特徴とする請求項3記載の情報管理装置。
【請求項5】
前記第1収集部で収集される測定値と、前記第2収集部で収集されるステータス情報とを同じ時間軸上に並べて表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報管理装置。
【請求項6】
ネットワークに接続される測定機器で測定される測定値を収集して管理する情報管理システムにおいて、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報管理装置と、
前記情報管理装置が備える前記第1収集部で収集される測定値と、前記第2収集部で収集されるステータス情報とを同じ時間軸上に並べて表示する表示装置と
を備えることを特徴とする情報管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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