説明

情報表示切替パネル

【課題】本発明は、光源の点灯、消灯によって、文字や図形等の絵柄が切り替わり、その絵柄の有彩色を美しく表示できる情報表示切替パネルを提供することを課題とする。
【解決手段】半透過性基材と、前記半透過性基材の一方の面上に形成された第1の絵柄層と、前記半透過性基材の他方の面上に形成された第2の絵柄層と、を有し、前記第1の絵柄層と前記第2の絵柄層の対応する部分の明度Lの差が50以上であることを特徴とする情報表示切替パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト等の光源の点灯、消灯により絵柄が切り替わる情報表示切替パネルに関し、自動車の計器盤等、インストルメントパネルに好適に用いられる情報表示切替パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絵柄を切り替える情報表示パネルとして、半透過性の基材の一方の表面の絵柄部分に対応する位置には、白色半透明インキが塗布されると共に、この白色半透明インキの周囲に、黒色不透明インキが塗布されている。また、基材の他方の面の絵柄に対応する位置に、有彩色の半透明インキが塗布されている。また、有彩色の半透明インキ部分以外に印刷で格子模様が印刷されている。
【0003】
上記の情報表示パネルの構成を用いることで、ランプ消灯時は、外光により、絵柄部分が白色半透明インキにより白色で視認され、絵柄部分以外の地色部分が黒色で視認される。また、ランプ点灯時は、裏面側から光を照射することにより、絵柄部分が有彩色半透明インキを透過する光により有彩色で視認され、有彩色の格子模様があらわれる。(特許文献1参照)
【0004】
しかしながら、従来の技術では背部のランプが点灯していないときには無地のままであり、有彩色の絵柄を美しく表示することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−64727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光源の点灯、消灯によって、文字や図形等の絵柄が切り替わり、その絵柄の有彩色を美しく表示できる情報表示切替パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために次のような構成を備えている。
請求項1に記載の発明は、半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に形成された第1の絵柄層と、
前記半透過性基材の他方の面上に形成された第2の絵柄層と、を有し、
前記第1の絵柄層と前記第2の絵柄層の対応する部分の明度Lの差が50以上であることを特徴とする情報表示切替パネルである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に形成された第2の絵柄層と、
前記第2の絵柄層の上に形成された隠蔽層と、
前記隠蔽層上に形成された第1の絵柄層と、を有し、
前記第1の絵柄層と前記第2の絵柄層の対応する部分の明度Lの差が50以上であることを特徴とする情報表示切替パネルである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記半透過性基材が発泡ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の情報表示切替パネルである。

【発明の効果】
【0010】
前記請求項1〜2に記載された発明によれば、光源の点灯、消灯により絵柄が切り替わる際に、その絵柄の有彩色を美しく表示できる効果が生じる。
【0011】
前記請求項3に記載された発明によれば、半透過性基材に発泡ポリプロピレンを用いることで、印刷適正を向上することができるので、文字や図形等を美しく印刷することができ、破棄燃焼時の環境負荷が小さい効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の情報表示切替パネルの、一実施形態の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の情報表示切替パネルの、別の一実施形態の層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本発明に係る情報表示切替パネルの好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、半透過性基材1の一方の面上に第1の絵柄層2を形成し、半透過性基材1の他方の面上に第2の絵柄層3が形成されている。
【0014】
半透過性基材1については特に限定することはなく、一般的な半透過性基材1を使用することができる。
本発明においては、半透過性基材1は板厚400μmの発泡ポリプロピレン(商品名 RMM400;株式会社ユポ・コーポレーション)を用いた。
【0015】
ここで、半透過性基材1の板厚を400μmに採用したのは、表1に示した絵柄の透過程度と絵柄のボケ程度を考慮したためである。
【表1】

【0016】
表1は、1,000cd/mのLED光源4から3cmの距離に置いた拡散板の上に、半透過性基材1の厚さのみを変えて(他は同じ条件で)作製した本発明の情報表示切替パネルを置きLED光源4を点灯させ、見栄えを確認したものである。
【0017】
ここで、絵柄の透過程度について説明する。
光源4が点灯時に、半透過性基材1を観察者5側から観察した場合に、光源4側の第2の絵柄層3の、絵柄の透過程度を表したものである。第2の絵柄層3の絵柄が、より明るく見える(すなわち透過光量が多い)ほうがよい。
【0018】
ボケ程度について説明する。
光源が点灯時に、半透過性基材1を観察者5側から観察した場合に、第2の絵柄層3の絵柄がぼける程度を表したものである。第2の絵柄層3の絵柄がくっきりしたほうがよい。
【0019】
第1の絵柄層2について説明する。
絵柄層とは、図形や文字等がインキで描かれている層のことである。
【0020】
第1の絵柄層2で使用されるインキとしては、印刷に用いられる一般的にインキを使用することができる。
第1の絵柄層2を形成する方法としては、凸版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等が利用できるが、絵柄層2の層厚を薄くするためにスクリーン印刷以外の方法で形成するのがより好ましい。層厚を薄くすることで、裏面側からの光の透過を妨げにくくすることができる。また、単色印刷のみでなく、複数色のインキを使用した多色印刷を行うことも可能である。
【0021】
本発明の情報表示切替パネルでは、第1の絵柄層2は、半透過性基材1である発泡ポリプロピレンの一方の面上に、オフセット印刷用インキ(TKハイユニティネオ;東洋インキ製)を用いてオフセット印刷で形成した。
【0022】
第2の絵柄層3は、上述の第1の絵柄層2と同様のインキ、形成方法を用いることができる。第1の絵柄層2に描かれている図形や文字等と、第2の絵柄層3に描かれている図形や文字等とが同位置にあれば、両絵柄層に描いてある図形や文字等は、後述する切り替わりに関係なく、常に同じものを観察することができる。
【0023】
また、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3とで、異なる位置に異なる図形や文字等を描くことで、後述する切り替わりの際に、観察される絵柄が変化することになる。
本発明では、第2の絵柄層2は、半透過性基材1である発泡ポリプロピレンの他方の面上に、オフセット印刷用インキ(TKハイユニティネオ;東洋インキ製)を用いてオフセット印刷で形成した。
【0024】
半透過性基材1の他方側にあるLED光源4の点灯と消灯により、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3が切り替わることについて説明する。
LED光源4が消灯の場合、観察者5側からは、第1の絵柄層2が見えることになる。このとき、第2の絵柄層3は半透過性基材1によって見えない。
【0025】
LED光源4が点灯の場合、観察者5側からは、第2の絵柄層3が見えることになる。その際、LED光源4の光によって、第2の絵柄層3の絵柄が半透過性基材1を透過し、かつ、第1の絵柄層2を通して第2の絵柄層3を観察することになる。ここで、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3が混色した状態の像を、観察者は観察することになるので、その状態でも綺麗に見せるためには、第1の絵柄層2の明度は第2の絵柄層3の明度よりも高く、絵柄層の明度Lの差が50以上であることが好ましい。
【0026】
明度Lの差は、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3の対応する部分のL表色系における明度の差である。すなわち、情報表示切替パネルを観察した場合に、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3が重なって、LED光源4の点灯、消灯によって、そのいずれかが観察されることになるが、その重なった部分の明度の差である。
【0027】
第1の絵柄層2および第2の絵柄層3の明度Lは、次のような手順で測定する。半透過性基材1の片面に第1の絵柄層2のみを印刷条件を少しずつ変えて形成した複数の試料、半透過性基材1の片面に第2の絵柄層3のみを印刷条件を少しずつ変えて形成した複数の試料を、それぞれ準備する。これらの試料の各絵柄層が形成されている側の面を、分光測色計(例えば型式 HSC−1;スガ試験機製)の光源を使って反射方式で測定して、各試料ごとに明度Lを求める。このようにして求めた第1の絵柄層2と第2の絵柄層3の明度Lから、明度差を求める。
【0028】
上述したように、第2の絵柄層3の透過程度は、半透過性基材1の厚さによる影響がある。
表2に示した結果を考慮すると、絵柄層の明度Lの差が50以上であれば、混色した後にも綺麗に見せることができる。
【表2】

【0029】
表2は、1,000cd/mのLED光源4から3cmの距離に置いた拡散板の上に、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3の明度Lの差のみを変えて(他は同じ条件で)作製した本発明の情報表示切替パネルを置きLED光源4を点灯させ、見栄えを評価したものである。なお、表2で見栄えを評価した情報表示切替パネルは、前述した各絵柄層の明度Lの測定方法により第1の絵柄層2と第2の絵柄層3の明度差がそれぞれ25、50、75、100となるような各絵柄層の印刷条件の組み合わせを求めておき、半透過性基板1の一方の面に第1の絵柄層2を、もう一方の面に第2の絵柄層3をその印刷条件の組み合わせで形成したものである。
第2の絵柄層3の表現能力とは、第2の絵柄層3がはっきりと表示される程度を1〜5の5段階で評価を行ったものである。
【0030】
よって、本発明の情報表示切替パネルが作成された。本発明の情報表示切替パネルにより、光源の点灯、消灯によって、文字や図形等の絵柄が切り替わり、その絵柄の有彩色を美しく表示できる。
なお、明度差は、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3が重なる部分について述べている。実際には、様々な絵柄が想定できるが、その全ての部分について、上述する明度差を有することが望ましいが、全面積の70%以上において、好ましくは90%以上において、明度差が50以上であることが好ましい。
【0031】
また、他の実施形態として、図2を参照して以下に説明する。
半透過性基材1である板厚400μmの発泡ポリプロピレン(商品名 RMM400;株式会社ユポ・コーポレーション)の一方の面上に、UV硬化型インクジェットプリンタ(JF−1610;ミマキエンジニアリング)を用いて、光源点灯時に表示される絵柄の第2の絵柄層3を形成した。
【0032】
上記第2の絵柄層3上にUV硬化型インクジェットプリンタを用いて白インク(JF−1610専用UV硬化インク)で全面に印刷して、隠蔽層7を形成した。この隠蔽層7は、光源4の点灯時には第2の絵柄層3を表示させ、光源4の消灯時に、後述する第1の絵柄層2を表示させる役割を果たす層になっている。
【0033】
上記隠蔽層7上に、UV硬化型インクジェットプリンタを用いて、光源4の消灯時に表示される絵柄の第1の絵柄層2を形成した。
【0034】
このような構成にすることで、半透過性基材1の片面に隠蔽層7を挟んで2つの絵柄層があるため、背面からの光源4からの光の透過時に絵柄がボヤけることがない。また、片面に全ての加工を行うため、各工程での交差が少ない効果ある。
【0035】
さらに、第1の絵柄層2と第2の絵柄層3の間に隠蔽層7があれば、半透過性基材1の位置は特に関係することはない。

【符号の説明】
【0036】
1 半透過性基材
2 第1の絵柄層
3 第2の絵柄層
4 LED光源
5 観察者(の目)
6 情報表示切替パネル
7 隠蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に形成された第1の絵柄層と、
前記半透過性基材の他方の面上に形成された第2の絵柄層と、を有し、
前記第1の絵柄層と前記第2の絵柄層の対応する部分の明度Lの差が50以上であることを特徴とする情報表示切替パネル。
【請求項2】
半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に形成された第2の絵柄層と、
前記第2の絵柄層の上に形成された隠蔽層と、
前記隠蔽層上に形成された第1の絵柄層と、を有し、
前記第1の絵柄層と前記第2の絵柄層の対応する部分の明度Lの差が50以上であることを特徴とする情報表示切替パネル。
【請求項3】
前記半透過性基材が発泡ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の情報表示切替パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−117713(P2010−117713A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238103(P2009−238103)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】