説明

情報表示用パネル用表示媒体粒子群の充填方法

【課題】連続して表示媒体粒子群を充填する場合でも、ステージ機構部および基板と接触する側の導電性マスクの表面に粒子が付着せず、ステージ駆動動作不良は起こらず、また、表示媒体粒子群の充填不良も防ぐことができる情報表示用パネル製造における表示媒体粒子群の充填方法を提供する。
【解決手段】充填槽内の下部にセルを有する第2の基板を設置し、充填槽の上部から表示媒体を落下させて各セル内に表示媒体粒子群を充填する表示媒体粒子群の充填方法において、表示媒体粒子群の充填不要部分に導電性マスク14を設け、充填槽18の底面18aを導電性マスクと同一とし、充填槽に導電性マスク表面をクリーニングするクリーニング機構21を設ける。そして、充填操作の合間に、クリーニング機構で導電性マスクの表面をクリーニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する基板であって、表面に電極部を形成した第1の基板と表面に電極部を形成するとともにセルを構成する隔壁を形成した第2の基板とを、互いの電極部が向かい合うように重ね合わせ、その間のセル内に帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を封止する構造の情報表示用パネルの製造方法において、表示媒体粒子群充填槽内の下部に、セルを有する第2の基板を設置し、充填槽の上部から表示媒体粒子群を落下させて各セル内に表示媒体粒子群を充填する表示媒体粒子群の充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一方が透明な対向する基板であって、表面に電極部を形成した第1の基板と表面に電極部を形成するとともにセルを構成する隔壁を形成した第2の基板とを、互いの電極部が向かい合うように重ね合わせ、その間のセル内に帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を封止する構造の情報表示用パネルの製造方法において、第2の基板の電極部を等電位にした状態で、帯電性粒子を含んだ粒子群をセル内に散布することで、必要量の表示媒体粒子群を第2の基板上のセル内に充填する表示媒体粒子群の充填方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−25824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の表示媒体粒子群の充填方法では、充填槽内側に、導電性マスクと充填装置ステージ機構が存在するため、表示媒体粒子群の充填工程を連続して行う時に充填槽内を舞っている表示媒体粒子群を構成する帯電性粒子が徐々に充填装置ステージ機構駆動部に付着し、ステージ駆動動作不良が発生する問題があった。また、導電性マスクを外して基板を取り出す時に、導電性マスク開口部の端部であって、基板が接触していない領域に付着した帯電性粒子の凝集体が落下し、表示欠陥不良を引き起こすことがある問題もあった。
【0005】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、充填工程を連続して行っても、ステージ機構部および基板と接触する側の導電マスクの表面に粒子が付着せず、ステージ駆動動作不良を起こさないで表示媒体粒子群の充填が行える表示媒体粒子群の充填方法を提供し、表示欠陥不良を引き起こさない情報表示用パネルの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示媒体粒子群の充填方法は、少なくとも一方が透明な対向する基板であって、表面に電極部を形成した第1の基板と表面に電極部を形成するとともにセルを構成する隔壁を形成した第2の基板とを、互いの電極部が向かい合うように重ね合わせ、その間のセル内に帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を封止する構造の情報表示用パネルの製造方法において、表示媒体粒子群充填槽内の下部に、セルを有する第2の基板を設置し、充填槽の上部から表示媒粒子群を落下させて各セル内に表示媒体粒子群を充填する表示媒体粒子群の充填方法であって、表示媒体粒子群の充填不要部分に導電性マスクを設け、充填槽の底面を導電性マスクと同一とし、充填槽に導電性マスク表面をクリーニングするクリーニング機構を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の表示媒体粒子群の充填方法の好適例としては、第2の基板の電極部と導電性マスクとが電気的に等電位な状態で、かつ、その電位が充填すべき表示媒体粒子群を構成する帯電性粒子の帯電極性と逆の極性の電圧が印加されて逆極性となっているか又はアースされて電位がゼロとなっていること、クリーニング機構が、充填槽の下部に設けた開閉扉と、開閉扉を介して充填槽内部に挿入可能な掃除機ノズルと、から構成されたこと、がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示媒体粒子群の充填不要部分に導電性マスクを設け、充填槽の底面を導電性マスクと同一とし、充填槽に導電性マスク表面をクリーニングするクリーニング機構を設けたことで、表示媒体粒子群充填工程を連続して行う時でも、ステージ機構部および基板と接触する側の導電マスクの表面に粒子が付着せず、ステージ駆動動作不良は起こさないで表示媒体粒子群の充填工程ができるようになり、表示欠陥不良を引き起こさない情報表示用パネルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<本発明の製造方法の対象となる情報表示用パネルの説明>
まず、本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。前記情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体粒子群を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0010】
本発明の対象となる帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に基づき説明する。ここでは、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として対向電極間に形成させた電界で表示媒体を移動させて画像をドットマトリックス表示をする例を示している。
【0011】
図1(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子を含む粒子群であって、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示媒体を少なくとも2種以上(ここでは帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セル7において、基板1に設けた電極5(個別電極)と基板2に設けた電極6(個別電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0012】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子を含む粒子群であって、互いに光学的反射率および帯電特性の異なる表示媒体を2種以上(ここでは帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セル7において、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。
【0013】
<本発明の情報表示用パネルの製造方法の説明>
図3(a)〜(d)はそれぞれ本発明の表示媒体粒子群の充填方法において充填槽内に配置する基板の一例を説明するための図である。まず、図3(a)に示すように、酸化インジウム錫(ITO)電極を予め設けた基板11上の6箇所のパネル表示領域に隔壁12を形成してセルを構成した基板と、図3(b)に示すように、パネル表示領域に対応して6箇所のマスク開口部13を有する導電性マスク14と、を準備する。そして、図3(c)にその正面図を示すとともに図3(d)に図3(c)のA−A線に沿った断面図を示すように、導電性マスク14の下側に、マスク開口部13と隔壁12を形成した基板11のパネル表示領域とを位置合わせして、基板11を重ね合わせる。さらに、導電性マスク14を重ね合わせた基板11を充填装置ステージ15に設置する。その際、基板11上のITO電極と導電性マスク14とは、導電性突起16で接触し、等電位としている。
【0014】
図4は本発明の表示媒体粒子群の充填方法における充填槽を用いた表示媒体粒子群の充填の一例を説明するための図である。図4に示す例では、上部にノズル17を備える充填槽18の下部に、隔壁12により形成したセルを有する基板11を、図3(d)に示すように、導電性マスク14とともに充填装置ステージ15上に設けた状態で、設置する。その際、充填槽18の底面18aを導電性マスク14と同一となるよう構成する。また、充填槽18の内壁に、表示媒体粒子群を構成する充填すべき帯電性粒子と同一の帯電極性の電圧を印加する。この状態で、ノズル17から表示媒体粒子群を散布することで、導電性マスク14のマスク開口部13を介して、各セル内に表示媒体粒子群を充填している。
【0015】
図4に示す例では、以上の構成に加えて、充填槽18に導電性マスク14の表面をクリーニングするクリーニング機構を設けている。図4において、クリーニング機構21は、充填槽18の下部に設けた開閉扉22と、開閉扉22を介して充填槽18内部に挿入可能な掃除機ノズル23と、から構成されている。また、充填槽18の上部に排気口24を形成し、図示しないフィルターユニットを通して充填槽18内の雰囲気を排気可能に構成している。このクリーニング機構21を利用して、開閉扉22を開き掃除機ノズル23を充填槽18の内部に挿入することで、充填操作の合間に、導電性マスク14の表面をクリーニングすることができる。
【0016】
図4に示す例では、充填槽18の底面18aを導電性マスク14と同一となるよう構成するとともに、充填操作の合間に、クリーニング機構21により導電性マスク14の表面をクリーニングすることで、連続して表示媒体粒子群を充填する時でも、充填装置ステージ15および基板11と接触する側の導電性マスク14の表面には粒子が付着しない。その結果、ステージ駆動動作不良は起こらず、導電性マスク14を取り外す際に不要な粒子が基板上に落下することがないので、表示媒体粒子群の充填不均一を妨げ、表示欠陥不良を引き起こすことがない情報表示用パネルが得られる。
【0017】
散布法以外の表示媒体粒子群を落下させる方法として、篩を用いた方法、スクリーンを用いた方法などもあり、篩やスクリーン上の粒子群を、篩やスクリーンに振動を加えて落下させて充填することもできる。
【実施例】
【0018】
以下、実際の例について説明する。
【0019】
図4に示す散布ノズルを用いた例に従って実際に表示媒体粒子群の充填を行った。その際、ステンレス鋼板(SUS304)で構成された充填槽は、導電性マスクと同一の底面以外の内壁全てを塩化ビニル板で構成した。充填槽の底面は、10cm×7cmの表示画面領域を持つパネル基板が6面付けされた、28cm×30cmのITO電極と隔壁とが形成されたガラス基板と開口部が一致するステンレス鋼板(SUS304)製の導電性マスク(10cm×7cmの開口部を6つ持つ32cm×35cmの導電性マスク)を用い、ガラス基板の表示画面領域と充填槽底面の開口部とを一致させて接触させることで、充填槽底面の導電性マスクとガラス基板電極とを等電位とした。また、充填操作の合間に、定期的に、クリーニング機構による導電性マスクの表面に対しクリーニングを行った。
【0020】
粒子群の充填を行い、連続して製造した時のステージ駆動動作不良および粒子群の充填を終了した基板における粒子群充填不良の発生状況を観察した。その結果、ガラス基板が密着した充填槽底面からの粒子のもれは無く、ステージ駆動部および導電性マスク端部には、粒子は付着せず、100シート連続して表示媒体粒子群充填工程を行っても、ステージ駆動動作不良は起こらず、かつ、表示媒体粒子群の充填不良も起こらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の方法に従って製造される情報表示用パネルは、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP(Point of presnece, Point of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、外部表示書換え形成手段を用いて表示媒体駆動を行うリライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明を用いて製造された情報表示用パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明を用いて製造された情報表示用パネルの他の例を説明するための図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ本発明において充填槽内に配置する基板の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の表示媒体粒子群の充填方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
1、2 基板
3W 白色表示媒体
3Wa 帯電性白色粒子
3B 黒色表示媒体
3Ba 帯電性黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 セル
11 基板
12 隔壁
13 マスク開口部
14 導電性マスク
15 充填装置ステージ
16 導電性突起
17 ノズル
18 充填槽
18a 底面
21 クリーニング機構
22 開閉扉
23 掃除機ノズル
24 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な対向する基板であって、表面に電極部を形成した第1の基板と表面に電極部を形成するとともにセルを構成する隔壁を形成した第2の基板とを、互いの電極部が向かい合うように重ね合わせ、その間のセル内に帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体を封止する構造の情報表示用パネルの製造方法において、表示媒体粒子群充填槽内の下部に、セルを有する第2の基板を設置し、充填槽の上部から表示媒体粒子群を落下させて各セル内に表示媒体粒子群を充填する表示媒体粒子群の充填方法であって、
表示媒体粒子群の充填不要部分に導電性マスクを設け、充填槽の底面を導電性マスクと同一とし、充填槽に導電性マスク表面をクリーニングするクリーニング機構を設けたことを特徴とする表示媒体粒子群の充填方法。
【請求項2】
第2の基板の電極部と導電性マスクとが電気的に等電位な状態で、かつ、その電位が表示媒体粒子群を構成する充填すべき帯電性粒子の帯電極性と逆の極性の電圧が印加されて逆極性となっているか又はアースされて電位がゼロとなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体粒子群の充填方法。
【請求項3】
クリーニング機構が、充填槽の下部に設けた開閉扉と、開閉扉を介して充填槽内部に挿入可能な掃除機ノズルと、から構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体粒子群の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−192801(P2009−192801A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33117(P2008−33117)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】