説明

情報記録ヘッド、情報記録再生ヘッドおよび情報記録装置

【課題】構造が複雑でなく且つ製造しやすい、光源の温度をタイムラグなしに測定可能な情報記録ヘッドを得る。
【解決手段】光源制御部50は、光源20への注入電流を制御する。光源抵抗値測定部50aは、光源20の抵抗値を測定する。第1記憶部50bは、光源20の抵抗値と光源20の温度との関係を予め記憶している。温度算出部50cは、第1記憶部50bに記憶された関係に基づいて、光源抵抗値測定部50aによる測定によって得られた抵抗値から光源20の温度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録ヘッド、情報記録再生ヘッドおよび情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ストレージデバイスのさらなる高記録密度化を目指して、光の回折限界を超える微小な光スポットを形成可能な近接場光を利用した記録方式が検討されている。近接場光記録では、近接場光を利用して、光記録媒体の微小領域を加熱し、情報を書き込むことが可能なため、従来の光記録よりも高い記録密度を実現可能である。また、近接場アシスト磁気記録では、近接場光により一時的に磁気記録媒体を加熱して保磁力を低下させた後、磁界により情報を記録するため、従来の磁気記録媒体よりも高い保磁力を持ち、高記録密度を実現可能な磁気記録媒体を採用することができる。これら近接場光を利用した記録方式では、高い効率で近接場光を発生させ、近接場光を記録媒体に可能な限り近づける必要がある。そのためには、近接場光を発生するための光源を、記録媒体上をnmオーダーで浮上する浮上スライダに搭載した情報記録ヘッドを採用することが好ましい。
【0003】
ところが、一般的に光源となるデバイスは光と同時に熱を発生し、しかも熱によって光出力低下や短寿命化といった問題が発生する。さらに、浮上スライダを構成する部材は、一般的に熱伝導性が高くなく、光源に熱がたまりやすい。そのため、光源を浮上スライダに搭載した情報記録ヘッドでは、光源の温度を測定し、その測定値に応じて動作電流の最適化や使用の停止といった動作を行うことが重要である。
【0004】
例えば特許文献1では、光源の近傍に温度センサを設置し、温度センサから得られた温度情報に基づいて光出力の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−43377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、温度センサを設置するために、情報記録ヘッドの構造が複雑化し且つ製造が煩雑となるという問題がある。特に、微小な領域の温度測定に使用される測温抵抗体には高価なPtを使用するため、材料コスト増につながる。また、微細な温度センサを形成するためには、リソグラフィに代表される微細加工プロセスが必要であり、製造が煩雑となる。また、温度センサとの接続のために、電極および配線を一組増やす必要があり、ヘッド部分のみならず、配線を備えるサスペンションの構造も複雑なものとなる。
【0007】
さらに、特許文献1の技術では、光源の温度を温度センサを介して測定しているため、温度センサを介して間接的にしか光源の温度を評価することができない。そのため、光源の温度変化が温度センサに伝わるまでにタイムラグが生じ、光源出力制御等へのフィードバックに遅れが生じる。
【0008】
本発明の目的は、構造が複雑でなく且つ製造しやすい、光源の温度をタイムラグなしに測定可能な情報記録ヘッドおよびこれを備えた情報記録装置を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、構造が複雑でなく且つ製造しやすい、光源の温度を測定可能な情報記録再生ヘッドおよびこれを備えた情報記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の情報記録ヘッドは、回転する記録媒体表面で浮上する浮上スライダと、上記浮上スライダの浮上に必要な荷重を印加するサスペンションと、上記浮上スライダと接合され、情報記録時に上記記録媒体を加熱するための光源と、上記光源への注入電流を制御する光源制御部とを備える情報記録ヘッドにおいて、上記光源制御部が、上記光源の抵抗値を測定する光源抵抗値測定手段と、上記光源の抵抗値と上記光源の温度との関係を記憶する第1記憶手段と、上記第1記憶手段に記憶された上記関係に基づいて、上記光源抵抗値測定手段による測定によって得られた上記抵抗値から上記光源の温度を算出する温度算出手段とを有している。
【0011】
上記構成によると、光源の抵抗値から光源の温度を算出できるので、温度センサを設置する必要がなくなる。そのため、構造が複雑でなく且つ製造しやすい情報記録ヘッドが得られる。また、光源の抵抗値から光源の温度をリアルタイムで算出できるので、温度測定にタイムラグがなく精度の高い測定結果が得られる。
【0012】
上記光源は半導体レーザーダイオードであってよい。
【0013】
上記構成によると、小型かつ高出力のレーザー光を照射可能な半導体レーザーダイオードを光源として使用することで、情報記録ヘッドに比較的自由な配置で搭載できるとともに、記録媒体の加熱を十分かつ効率的に行うことができる。
【0014】
上記光源抵抗値測定手段が、上記半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値未満の電流値で抵抗値を測定することが好ましい。
【0015】
上記構成によると、光源制御部が抵抗値を測定する際に、半導体レーザーダイオードがレーザー発振し、記録媒体が過熱され、データが消失するといった誤動作を防止することができる。また、抵抗値を測定する際の電流による半導体レーザーダイオードの加熱を抑えることができる。
【0016】
上記光源抵抗値測定手段が、上記光源をパルス駆動する際にバイアスとして印加するバイアス電流により、上記光源の抵抗値を測定してよい。
【0017】
上記構成によると、光源のパルス応答性を向上させるバイアスとして常に印加されるバイアス電流により、光源抵抗値測定手段が抵抗値を測定するため、記録動作を阻害することなく、光源の温度を算出することができる。また、記録媒体を加熱し記録を行うためのパルスを発信する直前まで、バイアス電流により抵抗値を測定し、光源の温度を測定することができるため、1パルス毎に光源の温度を算出して、光源の制御にフィードバックすることができる。
【0018】
上記光源抵抗値測定手段が、情報記録のために上記光源を駆動する際に上記光源に流れる電流により抵抗値を測定してよい。
【0019】
上記構成によると、情報記録のために光源を駆動する際に光源抵抗値測定手段が抵抗値を測定するため、記録動作を阻害することなく、光源の温度を算出することができる。また、記録動作中の光源の温度を逐次測定・フィードバックすることができる。
【0020】
上記光源制御部が、上記光源の温度と所定光出力が得られるときの上記光源への注入電流量との関係を記憶する第2記憶手段をさらに有しており、前記第2記憶手段に記憶された上記関係及び上記温度算出手段により算出された温度に基づいて、上記光源から上記所定光出力が得られるように上記注入電流を調整することが好ましい。
【0021】
上記構成によると、温度算出手段により算出される温度に基づき注入電流を調整することで、温度に依存して変化する光源の光出力を所定の光出力に保つことが可能となる。
【0022】
上記温度算出手段により算出された上記光源の温度が予め定められた一定値を超えた際、上記光源の温度が一定値を下回るまで、上記光源制御部が上記光源の使用を停止することが好ましい。
【0023】
上記構成によると、光源の温度が予め定められた一定値を超えた場合、光源の使用を停止するため、温度の上昇による光源の短寿命化を抑えることができる。
【0024】
本発明の情報記録ヘッドの製造時に、個々の情報記録ヘッドについて複数の温度において光源の抵抗値を測定することで得られた関係を第1記憶手段に記憶させることが好ましい。上記構成によると、温度と抵抗値の関係に個体差を持つ光源を使用した場合でも、高い精度での光源の温度算出が可能となる。
【0025】
本発明の情報記録装置は、上述した情報記録ヘッドと、上記情報記録ヘッドによって情報が記録される記録媒体と、上記記録媒体を回転させる駆動機構とを備えている。
【0026】
本発明の情報記録再生ヘッドは、回転する記録媒体表面で浮上する浮上スライダと、上記浮上スライダの浮上に必要な荷重を印加するサスペンションと、上記浮上スライダと接合され、情報記録時に上記記録媒体を加熱するための光源と、上記記録媒体に記録された情報を読み出す再生素子と、上記光源への注入電流を制御する光源制御部とを備える情報記録再生ヘッドにおいて、上記再生素子が、上記光源と熱的に結合して設けられ、上記光源制御部が、上記再生素子の抵抗値を測定する再生素子抵抗値測定手段と、上記再生素子の抵抗値と上記再生素子の温度の関係を記憶する第1記憶手段と、上記第1記憶手段に記憶された上記関係に基づいて、上記再生素子抵抗値測定手段による測定によって得られた上記抵抗値から上記光源の温度を算出する温度算出手段とを有している。
【0027】
上記構成によると、再生素子の抵抗値から再生素子の温度を算出できるので、再生素子と熱的に結合するように設けられた光源の温度を再生素子の温度と同じであるとして算出することができ、温度センサを設置する必要がなくなる。そのため、構造が複雑でなく且つ製造しやすい情報記録ヘッドが得られる。また、記録動作時には使用しない再生素子の抵抗値を利用して光源の温度を算出するため、光源の温度を算出するにあたって記録動作を阻害することがない。
【0028】
上記光源制御部が、上記光源の温度と所定光出力が得られるときの上記光源への注入電流量との関係を記憶する第2記憶手段をさらに有しており、前記第2記憶手段に記憶された上記関係及び上記温度算出手段により算出された温度に基づいて、上記光源から上記所定光出力が得られるように上記注入電流を調整することが好ましい。
【0029】
上記構成によると、温度算出手段により算出される温度に基づき注入電流を調整することで、温度に依存して変化する光源の光出力を所定の光出力に保つことが可能となる。
【0030】
上記温度算出手段により算出される上記光源の温度が予め定められた一定値を超えた際、上記光源の温度が一定値を下回るまで、上記光源制御部が上記光源の使用を停止することが好ましい。
【0031】
上記構成によると、光源の温度が予め定められた一定値を超えた場合、光源の使用を停止するため、温度の上昇による光源の短寿命化を抑えることができる。
【0032】
本発明の情報記録再生ヘッドの製造時に、個々の情報記録再生ヘッドについて複数の温度において再生素子の抵抗値を測定することで得られた関係を第1記憶手段に記憶させることが好ましい。上記構成によると、温度と抵抗値の関係に個体差を持つ再生素子を使用した場合でも、高い精度での光源の温度算出が可能となる。
【0033】
本発明の情報記録装置は、上述した情報記録再生ヘッドと、上記情報記録再生ヘッドによって情報が記録及び再生される記録媒体と、上記記録媒体を回転させる駆動機構とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る情報記録ヘッドを含む情報記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に描かれた情報記録ヘッドにおける光源の抵抗値と温度との関係の一例を示すグラフである。
【図3】図1に描かれた情報記録ヘッドにおける記録動作を示すフローチャートである。
【図4】抵抗値測定と記録媒体への情報記録とを短い周期で交互に行う場合において、光源への注入電流の3つのパターンを示すグラフである。
【図5】抵抗値測定と記録媒体への情報記録とを同時に行う場合において、光源への注入電流の2つのパターンを示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る情報記録ヘッドを含む情報記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態に係る情報記録ヘッド10を含む情報記録装置100が描かれている。情報記録装置100は、情報記録ヘッド10のほか、情報記録ヘッド10によって情報が記録されるディスク状の記録媒体80と、記録媒体80を回転させる駆動機構90とを有している。情報記録ヘッド10は、光源20、近接場光発生素子21、光源用配線22、浮上スライダ30、サスペンション40、光源制御部50を含んでいる。
【0036】
光源20は、電流を注入することにより光を発生する素子である。本実施形態では、光源20として半導体レーザーダイオードを用いているが、それ以外に例えばLEDを使用することができる。半導体レーザーダイオードは、共振器を利用したレーザー発振により、高い効率で、高強度の光(レーザー光)を発生することができるため、記録媒体を加熱する光源に適している。半導体により構成されたレーザーダイオード及びLEDは、一般的に、温度上昇に伴いキャリア密度が増加し、抵抗値が低下する。小型かつ高出力のレーザー光を照射可能な半導体レーザーダイオードを光源として使用することで、情報記録ヘッドに比較的自由な配置で搭載できるとともに、記録媒体の加熱を十分かつ効率的に行うことができる。なお、半導体レーザーダイオードなどの光源20は、通常非常に小さく熱伝導性も高いので、光源20の温度は光源内で均一であるとみなして、応用上問題ない。
【0037】
図1では、浮上スライダ30のトレーリング側の端面に光源20が接合されているが、浮上スライダ30とサスペンション40との間など、別の場所に光源20接合されていてもよい。また、浮上スライダ30に直接光源20が接合されている必要はなく、形状変化しない部材を介して、間接的に浮上スライダ30と光源20とが接合されていてもよい。
【0038】
近接場光発生素子21は、光源20から照射される光を近接場光に変換する素子である。本実施形態では、一般的な微小開口や微小金属片が使用されている。
【0039】
光源用配線22は、光源20と光源制御部50とを電気的に接続する配線である。本実施形態では、サスペンション40に備え付けられたフレキシブル配線が用いられている。
【0040】
浮上スライダ30は、適切な荷重が与えられることで、回転する記録媒体上を数nmから数10nmの高さで浮上する部材である。本実施形態において、浮上スライダ30は、一般的に、AlTiCにより構成されている。浮上スライダ30の記録媒体側の面(ABS面)には、微細なパターンが形成されている。このパターンにより、回転する記録媒体上で浮上するための浮力が浮上スライダ30に発生する。
【0041】
サスペンション40は、浮上スライダ30に適切な荷重を与えるための部材である。本実施形態において、サスペンション40は、ステンレスにより形成された板ばねである。
【0042】
光源制御部50は、光源20に注入する電流及びパルスを制御する部材である。光源制御部50を構成する部材としては、たとえば、ICチップ、LSIチップを使用することができる。なお、図1では、光源制御部50とサスペンション40とを分けて描写しているが、光源制御部50をサスペンション40に搭載することも可能である。また、光源制御部50は、配線で接続された複数のICチップ、あるいはLSIチップにより構成されていてもよい。
【0043】
光源制御部50は、光源抵抗値測定部50aと、第1記憶部50bと、温度算出部50cと、第2記憶部50dとを有している。光源抵抗値測定部50aは、光源20の抵抗値を測定する。第1記憶部50bは、光源20の抵抗値と光源20の温度との関係を予め記憶している。
【0044】
図2は、第1記憶部50bに記憶された光源20の抵抗値と光源20の温度との関係の一例を示している。図2に示されている例においては、光源20の温度が上昇するほど光源20の抵抗値が低下する。つまり、両者は逆相関関係にある。具体的には、光源20の抵抗値R1のときの光源20の温度T1は、光源20の抵抗値R2(<R1)のときの光源20の温度T2よりも低い。なお、第1記憶部50bは、上記関係を、等式として記憶していてもよいし、光源20の抵抗値と光源20の温度とが複数ポイントにおいて対応付けられたテーブルとして記憶していてもよい。後者の場合、対応付けられたポイント以外では内挿法などの演算を行ってそれ以外のポイントでの光源20の温度が算出される。
【0045】
当該関係は、たとえば、複数の光源20について抵抗値と温度の関係を調査した結果の平均値であってよい。また、当該関係は、情報記録ヘッド10の製造時に第1記憶部50bに記憶させればよい。好ましくは、情報記録ヘッド10の組立てが終了したのち、組み立て終わった情報記録ヘッド10について複数の温度における光源20の抵抗値を測定し、光源20の抵抗値と温度の関係として当該情報記録ヘッド10の第1記憶部50bに記憶させておけばよい。こうすることで、温度と抵抗値の関係に個体差を持つ光源20を使用している場合でも、それぞれの個体に適切な抵抗値と温度の関係を記憶させておくことができる。
【0046】
光源20の抵抗値と光源20の温度の関係は、特に限定されるものではないが、例えば以下のような測定を行うことによって得られる。なお、以下のいずれの測定手法も、光源と温度センサを完全に接触させるものではないが、CANパッケージの温度、銅製の板の温度、もしくは恒温槽の温度がほぼLDの温度となるため、実用上の支障はない。
・CANパッケージにレーザーダイオード(LD)を接合し、ペルチェ素子で温度制御を行いながら、CANパッケージに温度センサを接触させて、LDの抵抗値の温度依存性を測定
・温度制御した銅製の板にLDチップを押し付けて、LDの抵抗値の温度依存性を測定
・組立て終わった記録ヘッドを、恒温槽のような温度を一定に保った空間に放置した後、LDの抵抗値を測定
【0047】
温度算出部50cは、第1記憶部50bに記憶された関係に基づいて、光源抵抗値測定部50aによる測定によって得られた抵抗値から光源20の温度を算出する。第2記憶部50dは、光源20の温度と所定光出力が得られるときの光源20への注入電流量との関係を記憶している。この関係も複数の光源20について予め測定した平均値であってもよく、個々の光源20について予め測定したものであってもよい。
【0048】
本実施形態の情報記録ヘッド10における記録動作について、さらに図3を参照して説明する。まず、駆動機構90で記録媒体80を回転させ、浮上スライダ30を記録媒体80上に浮上させる。次に、光源抵抗値測定部50aが光源用配線22を介して光源20への注入電流の供給を開始する(S1)。これによって、近接場光発生素子21が近接場光を発生させ、記録媒体80の微小領域を加熱する。記録媒体80の加熱された領域が記録ビットとなり、情報が記録される。また、情報記録と共に、光源抵抗値測定部50aが光源20の抵抗値を測定し、温度算出部50cが得られた抵抗値から光源20の温度を算出する(S2)。たとえば、図2のような関係が第1記憶部50bに記憶されている場合、抵抗値がR1と測定された場合、光源20の温度はT1と算出される。また、抵抗値がR2と測定された場合、光源20はT2と算出される。
【0049】
本実施形態では、抵抗値測定と記録媒体80への情報記録とを短い周期で交互に、又は、同時に行う。図4は、抵抗値測定と記録媒体80への情報記録とを短い周期で交互に行う場合において、光源20への注入電流の3つのパターンを例示している。図4(a)に示す例(記録前測定)では、光源20である半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値未満の電流値を有する抵抗値を測定するためのパルスと、このパルスの直後に連続して配置された、レーザー発振閾値以上の電流値を有する記録媒体80への情報記録を行うためのパルスとが一体となった複数の電流パルスが所定周期で注入電流として光源20に供給される。図4(b)に示す例(記録後測定)では、光源20である半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値以上の電流値を有する記録媒体80への情報記録を行うためのパルスと、このパルスの直後に連続して配置された、レーザー発振閾値未満の電流値を有する抵抗値を測定するためのパルスとが一体となった複数の電流パルスが所定周期で注入電流として光源20に供給される。図4(c)に示す例(記録間測定)では、光源20である半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値以上の電流値を有する記録媒体80への情報記録を行うための一定周期を有する複数パルスと、これらパルスの間にバイアス電流として配置された、レーザー発振閾値未満の電流値を有する抵抗値を測定するためのパルスとが一体となった電流信号が注入電流として光源20に供給される。
【0050】
図4(a)〜(c)の3つのパターンのいずれについても、光源抵抗値測定部50aが光源20の抵抗値を測定する際に、半導体レーザーダイオードがレーザー発振して記録媒体が過熱され、データが消失するといった誤動作を防止することができる。また、抵抗値を測定する際の一定電流による半導体レーザーダイオードの加熱を抑えることができる。また、記録媒体80を加熱し記録を行うためのパルスを発信する直前まで抵抗値を測定し、光源20の温度を算出することができるため、1パルス毎に光源20の温度をフィードバックすることができる。
【0051】
また、図4(c)のように、光源20のパルス応答性を向上するバイアスとして印加されるバイアス電流により光源抵抗値測定部50aが抵抗値を測定する場合、光源20のパルス応答性を向上するバイアスとして、常に印加されているバイアス電流により、光源抵抗値測定部50aが抵抗値を測定するため、記録動作を阻害することなく、光源20の温度を算出することができる。
【0052】
図5は、抵抗値測定と記録媒体80への情報記録とを同時に行う場合において、光源20への注入電流の2つのパターンを例示している。図5(a)に示す例では、光源20である半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値以上の電流値を有する、記録媒体80への情報記録を行い且つ抵抗値を測定するための複数パルスが所定周期で注入電流として光源20に供給される。図5(b)に示す例では、光源20である半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値以上の電流値を有する、記録媒体80への情報記録を行い且つ抵抗値を測定するための一定電流信号が連続発振(CW)用の注入電流として光源20に供給される。なお、この場合、情報記録は磁界変調などの、光源20の光出力以外の変調によって行われる。
【0053】
図5(a)及び(b)のように、情報記録のために光源20を駆動するのと同時に抵抗値を測定する場合、記録動作を阻害することなく、光源20の温度を算出することができる。また、記録動作中の光源20の温度を逐次測定・フィードバックすることができるという利点がある。
【0054】
図3で示す動作は、S2の温度算出のタイミングが上述した図4及び図5に示す5つのパターンごとに異なるものの、これら5つのパターンのすべてに当て嵌まる。
【0055】
次に、光源制御部50は、S2で算出された光源20の温度と、第2記憶部50dに記憶された関係とに基づいてフィードバック制御を行い、光源20から上記所定光出力が得られるように注入電流を調整する(S3)。S3は、図3のフローチャートに含まれるループの1ステップとして周期的に行われるので、温度に依存して変化する半導体レーザーダイオードのレーザー光出力を所定の光出力に保つことができる。
【0056】
S4では、S2で算出された光源20の温度が予め定められた一定値を超えているかどうかが判断される。光源20の温度が一定値を超えていれば(S4:YES)、S5に進んで光源制御部50が注入電流を停止させる。光源20の温度が一定値を超えていなければ(S4:NO)、S2に戻る。たとえば、上記一定値を図2におけるTSとした場合、算出された光源20の温度がTS以下の場合、光源20の使用を続ける。一方、測定された光源20の温度がTSを超えている場合、光源20の使用を停止する。
【0057】
続いて、S6では、上記閾値未満の注入電流を一時的に光源20に供給して再度光源20の抵抗値を測定し、これに基づいて光源20の温度を算出する。そして、その結果得られた光源20の温度が一定値(S4での一定値と同じでもよいし、それ未満でもよい)を超えているかどうかが判断される。つまり、光源20の温度が一定値を下回るまで待機する。光源20の温度が一定値を超えていれば(S6:YES)、S6を繰り返して行う。光源20の温度が一定値を超えていなければ(S6:NO)、S3と同じ手順で調整された大きさを有する注入電流の供給を再開させてからS2に戻る。
【0058】
一般的に、光源20として使用される半導体レーザーダイオード及びLEDは、動作時の温度が高温であるほど短寿命となる。そのため、本実施形態の情報記録ヘッド10のように、予め定められた一定値以上の温度での光源20の使用を禁止することで、温度上昇による光源20の短寿命化を抑えることができる。
【0059】
本実施形態の情報記録ヘッド10の構成は、記録媒体を加熱するための光源を搭載する情報記録ヘッドとしては最少の構成である。この最少の構成で、温度センサ等の追加の部材を使用することなく、光源20の抵抗値を測定し、光源20の温度を算出することが可能であるため、構造が複雑でなく且つ製造しやすい情報記録ヘッド10である。したがって、製造コストを抑えることができる。また、光源20の抵抗値から光源20の温度をリアルタイムで算出できるので、温度測定にタイムラグがなく精度の高い測定結果が得られる。さらに、算出された温度により、光源20の種々の駆動制御を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態に係る情報記録ヘッド10は近接場光記録用の情報記録ヘッドであるが、情報記録ヘッド10における光源20の温度測定動作を、近接場アシスト磁気記録ヘッドに採用することもできる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る情報記録再生ヘッド11について、図6を参照して説明する。図6には、本発明の第2実施形態に係る情報記録ヘッド11を含む情報記録装置200が描かれている。情報記録装置200は、情報記録ヘッド11のほか、情報記録ヘッド11によって情報が記録されるディスク状の記録媒体80と、記録媒体80を回転させる駆動機構90とを有している。情報記録ヘッド11は、光源20、近接場光発生素子21、光源用配線22、浮上スライダ30、サスペンション40、記録再生制御部51、磁気ポール60、磁気ポール用配線61、再生素子70、再生素子用配線71を含んでいる。本実施形態において、情報記録再生ヘッド11は、近接場アシスト磁気記録用の情報記録再生ヘッドである。
【0062】
光源20、近接場光発生素子21、光源用配線22、浮上スライダ30、サスペンション40に関しては、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
再生素子70は、記録媒体80に記録されている情報を再生する素子である。再生素子70は光源20に熱的に結合されるように隣接して(具体的には互いに接触して又は薄層を介して)設けられている。記録媒体80が磁気記録媒体である場合、GMR素子、TMR素子といった磁気抵抗効果素子が再生素子70として、使用される。GMR素子は金属で構成されるため、一般的に、温度上昇に伴い格子振動が強まり、抵抗値が上昇する。一方、TMR素子はトンネル効果を利用した素子であるため、一般的に、温度上昇に伴いトンネル確率が上昇し、抵抗値が減少する。
【0064】
再生素子用配線71は、再生素子70と記録再生制御部51を電気的に接続する配線である。本実施形態において、再生素子用配線71は、サスペンション40に備え付けられたフレキシブル配線である。
【0065】
記録再生制御部51は、記録再生動作を行うために、光源20、磁気ポール60、再生素子70の動作を制御する部材である。記録再生制御部51は、光源20を制御する光源制御部としての機能を含んでいる。記録再生制御部51を構成する部材としては、例えば、ICチップ、LSIチップを使用することができる。なお、図6では、記録再生制御部51とサスペンション40とを分けて描写しているが、記録再生制御部51をサスペンション40に搭載することも可能である。また、記録再生制御部51は、配線で接続された複数のICチップ、あるいはLSIチップにより構成されていてもよい。
【0066】
記録再生制御部51は、再生素子抵抗値測定部51aと、第1記憶部51bと、温度算出部51cと、第2記憶部51dとを有している。再生素子抵抗値測定部51aは、再生素子70の抵抗値を測定する。第1記憶部51bは、再生素子70の抵抗値と再生素子70の温度との関係を予め記憶している。
【0067】
第1記憶部51bに記憶された再生素子70の抵抗値とその温度との関係は、たとえば、複数の再生素子70について抵抗値と温度の関係を調査した結果の平均値であってよい。また、当該関係は、製造時に第1記憶部51bに記憶させればよい。好ましくは、情報記録再生ヘッド11の組立てが終了したのち、組み立て終わった情報記録再生ヘッド11について複数の温度における再生素子70の抵抗値を測定し、再生素子70の抵抗値と温度の関係として当該情報記録再生ヘッド11の第1記憶部51bに記憶させておけばよい。こうすることで、温度と抵抗値の関係に個体差を持つ再生素子70を使用している場合でも、それぞれの個体に適切な抵抗値と温度の関係を記憶させておくことができる。なお、測定の具体的な方法としては、光源について説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0068】
温度算出部51cは、第1記憶部51bに記憶された関係に基づいて、再生素子抵抗値測定部51aによる測定によって得られた抵抗値から再生素子70の温度を算出し、さらに得られた再生素子70の温度を光源20の温度として算出する。再生素子70の温度を光源20の温度と同じであると見なすことができるのは、上述したように、再生素子70が光源20に熱的に結合されているからである。第2記憶部51dは、光源20の温度と所定光出力が得られるときの光源20への注入電流量との関係を記憶している。この関係も複数の光源20について予め測定した平均値であってもよく、個々の光源20について予め測定したものであってもよい。
【0069】
磁気ポール60は、記録媒体に情報を記録するための磁場を印加する部材である。本実施形態では、NiFeやCoFeといった高磁化率の軟磁性体のポールとコイルで構成されている。コイルに電流を流すことで、ポールを磁化し、磁場を発生する。
【0070】
磁気ポール用配線61は、磁気ポール60と記録再生制御部51を電気的に接続する配線である。本実施形態において、磁気ポール用配線61は、サスペンション40に備え付けられたフレキシブル配線である。
【0071】
本実施形態の情報記録再生ヘッド11における記録動作について説明する。基本的な流れは、図3で説明したのと同様であるので、主に相違点について以下説明する。まず、駆動機構90で記録媒体80を回転させ、浮上スライダ30を記録媒体80上に浮上させる。次に、光源用配線22を介して光源20への注入電流の供給し、近接場光発生素子21により近接場光を発生させ、記録媒体の微小領域を加熱する。加熱した微小領域に磁気ポール60により磁場を印加することで、微小領域の磁化を任意の方向に固定する。磁化が固定された微小領域が記録ビットとなり、情報が記録される。
【0072】
本実施形態では、再生素子70の抵抗値測定に基づいて光源20の温度を算出するので、光源20への注入電流は単純なパルス信号(例えば図5(a)に示したものと同様)としてよい。また、再生素子抵抗値測定部51aが再生素子用配線71を介して、再生素子70に一定の電流を印加し、再生素子70の抵抗値を測定する。そして、情報記録と共に、再生素子抵抗値測定部51aが測定した再生素子70の抵抗値に基づいて、温度算出部51cが得られた抵抗値から第1記憶部51bに記憶されている関係を用いて再生素子70及び光源20の温度を算出する。
【0073】
本実施形態の情報記録再生ヘッド11は、記録媒体を加熱するための光源を搭載する情報記録再生ヘッドとしては最少の構成である。この最少の構成で、温度センサ等の追加の部材を使用することなく、光源20に隣接する再生素子70の抵抗値を測定し、光源20の温度を算出することが可能であるため、構造が複雑でなく且つ製造しやすい情報記録ヘッド10である。したがって、情報記録再生ヘッド11の製造コストを抑えることができる。また、記録動作時には使用しない再生素子70の抵抗値を利用し、光源20の温度を算出するため、記録動作を阻害することなく、光源20の温度を算出することができる。なお、記録動作時に再生素子70をトラッキング用に利用している場合でも、トラッキング信号読取時の抵抗を測定し、光源20の温度を評価することができるため、記録動作を阻害することはない。さらに、算出された温度により、光源20の種々の駆動制御を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態の情報記録再生ヘッド11においても、第1実施形態と同様に、測定された光源20の温度に基づいて光源20に注入する電流を調整することができる。したがって、温度に依存して変化する半導体レーザーダイオードのレーザー光出力を一定に保つことができる。
【0075】
また、本実施形態の情報記録再生ヘッド11においても、第1実施形態と同様に、測定された光源20の温度が、予め定められた一定値を超えたときに、光源20の使用を停止することができる。そのため、温度上昇による光源20の短寿命化を抑えることができる。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式の情報記録ヘッドおよび情報記録再生ヘッドに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 情報記録ヘッド
11 情報記録再生ヘッド
20 光源
21 近接場光発生素子
22 光源用配線
30 浮上スライダ
40 サスペンション
50 光源制御部
51 記録再生制御部
60 磁気ポール
61 磁気ポール用配線
70 再生素子
71 再生素子用配線
100、200 情報記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する記録媒体表面で浮上する浮上スライダと、
上記浮上スライダの浮上に必要な荷重を印加するサスペンションと、
上記浮上スライダと接合され、情報記録時に上記記録媒体を加熱するための光源と、
上記光源への注入電流を制御する光源制御部とを備える情報記録ヘッドにおいて、
上記光源制御部が、
上記光源の抵抗値を測定する光源抵抗値測定手段と、
上記光源の抵抗値と上記光源の温度との関係を記憶する第1記憶手段と、
上記第1記憶手段に記憶された上記関係に基づいて、上記光源抵抗値測定手段による測定によって得られた上記抵抗値から上記光源の温度を算出する温度算出手段とを有していることを特徴とする情報記録ヘッド。
【請求項2】
上記光源が半導体レーザーダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録ヘッド。
【請求項3】
上記光源抵抗値測定手段が、上記半導体レーザーダイオードのレーザー発振閾値未満の電流値で抵抗値を測定することを特徴とする請求項2に記載の情報記録ヘッド。
【請求項4】
上記光源抵抗値測定手段が、上記光源をパルス駆動する際にバイアスとして印加するバイアス電流により、上記光源の抵抗値を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録ヘッド。
【請求項5】
上記光源抵抗値測定手段が、情報記録のために上記光源を駆動する際に上記光源に流れる電流により抵抗値を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録ヘッド。
【請求項6】
上記光源制御部が、
上記光源の温度と所定光出力が得られるときの上記光源への注入電流量との関係を記憶する第2記憶手段をさらに有しており、
前記第2記憶手段に記憶された上記関係及び上記温度算出手段により算出された温度に基づいて、上記光源から上記所定光出力が得られるように上記注入電流を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報記録ヘッド。
【請求項7】
上記温度算出手段により算出された上記光源の温度が予め定められた一定値を超えた際、上記光源の温度が一定値を下回るまで、上記光源制御部が上記光源の使用を停止することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録ヘッド。
【請求項8】
回転する記録媒体表面で浮上する浮上スライダと、
上記浮上スライダの浮上に必要な荷重を印加するサスペンションと、
上記浮上スライダと接合され、情報記録時に上記記録媒体を加熱するための光源と、
上記記録媒体に記録された情報を読み出す再生素子と、
上記光源への注入電流を制御する光源制御部とを備える情報記録再生ヘッドにおいて、
上記再生素子が、上記光源と熱的に結合して設けられ、
上記光源制御部が、
上記再生素子の抵抗値を測定する再生素子抵抗値測定手段と、
上記再生素子の抵抗値と上記再生素子の温度の関係を記憶する第1記憶手段と、
上記第1記憶手段に記憶された上記関係に基づいて、上記再生素子抵抗値測定手段による測定によって得られた上記抵抗値から上記光源の温度を算出する温度算出手段とを有していることを特徴とする情報記録再生ヘッド。
【請求項9】
上記光源制御部が、
上記光源の温度と所定光出力が得られるときの上記光源への注入電流量との関係を記憶する第2記憶手段をさらに有しており、
前記第2記憶手段に記憶された上記関係及び上記温度算出手段により算出された温度に基づいて、上記光源から上記所定光出力が得られるように上記注入電流を調整することを特徴とする請求項8に記載の情報記録再生ヘッド。
【請求項10】
上記温度算出手段により算出される上記光源の温度が予め定められた一定値を超えた際、上記光源の温度が一定値を下回るまで、上記光源制御部が上記光源の使用を停止することを特徴とする請求項8又は9に記載の情報記録再生ヘッド。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の情報記録ヘッドと、
上記情報記録ヘッドによって情報が記録される記録媒体と、
上記記録媒体を回転させる駆動機構とを備えていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の情報記録再生ヘッドと、
上記情報記録再生ヘッドによって情報が記録及び再生される記録媒体と、
上記記録媒体を回転させる駆動機構とを備えていることを特徴とする情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93078(P2013−93078A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234080(P2011−234080)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】