説明

情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤

【課題】高価な光ディスクを使用せず印刷位置、印刷濃度などの調整ができる、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤の提供。
【解決手段】(1)支持基板と、透明なインク受理層と、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタで印刷する際に画像及び/又は文字の印刷位置合わせが可能なスケール層を備え、印刷位置合わせと同時に発色性/色合いが確認可能である情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤。
(2)支持基板材料が合成樹脂又は紙である(1)記載の試し印刷基盤。
(3)スケール層が支持基板と透明なインク受理層の間に形成されているか、又は、スケール層と透明なインク受理層とが支持基板を境として反対側に設けられている(1)〜(3)の何れかに記載の試し印刷基盤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデジタルデータを記録するための情報記録媒体として、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に代表される光記録媒体が広く用いられている。特に、ユーザによるデータの記録が可能なタイプの光記録媒体が急速に普及している。記録が可能な光記録媒体を用いれば、画像データや音楽データのようにファイルサイズの大きなデジタルデータを簡単かつ安価に保存することができることから、多くのユーザによって利用されるに至っている。このようなタイプの光記録媒体が普及するにつれ、光入射面とは反対側の面(レーベル面)側にプリンタで印刷を行うことによってオリジナルの光記録媒体を作製したいという要望が高まり、これを実現可能な光記録媒体が開発され既に販売されている。このような光記録媒体には、インクを定着させるインク受理層がレーベル面側に設けられている。インクジェット式のプリンタを用いてインク受理層にインクを供給することによってレーベル面側に印刷を行うことができる。
【0003】
従来、インク受理層を設けた光ディスクのレーベル印刷で使用されているプリンタは、インクジェットプリンタ(IJP)に同梱されているソフトを使用し、ディスクとIJP印刷画像及び/又は文字位置を調整し、実際の光ディスクへIJP印刷を行っている。
しかし、実際に印刷された光ディスクを見て位置ずれ及び/又は発色を変更しようとしても、試し刷り基盤がないため、製品である高価な光ディスクを使用して試し刷りや確認のための印刷を行わざるを得ない。
試し刷りに関する従来技術としては、特許文献1に、基板表面に試し刷りされた印画の所定の位置を、カメラを用いてコンピュータに読み込み、計算により得られた印画位置の補正量により印刷版の位置を補正する基板の印刷方法に係る発明が開示されている。しかし、この発明の目的は試し刷りの回数を減らすことにあり、本発明のような試し印刷基盤については記載も示唆もされていない。
一方、特許文献2には、インク受理層の表面粗さを確実に小さくし、これにより高品質な印刷を可能とするため、支持基板と、データを保持可能な機能層と、前記支持基板からみて前記機能層とは反対側に設けられた透明なインク受理層とを備え、前記支持基板の明度が8以上、彩度が4以下である情報記録媒体が開示されている。しかし、本発明のような試し印刷基盤については記載も示唆もされていない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−313159号公報
【特許文献2】特開2005−317193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高価な光ディスクを使用せず印刷位置、印刷濃度などの調整ができる、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、次の1)〜10)の何れかに記載の発明(以下、本発明1〜10という)によって解決される。
1) 支持基板と、透明なインク受理層と、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタで印刷する際に画像及び/又は文字の印刷位置合わせが可能なスケール層を備え、印刷位置合わせと同時に発色性/色合いが確認可能である事を特徴とする情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤。
2) 支持基板材料が合成樹脂又は紙である事を特徴とする1)記載の試し印刷基盤。
3) スケール層が支持基板と透明なインク受理層の間に形成されている事を特徴とする1)又は2)記載の試し印刷基盤。
4) スケール層と透明なインク受理層とが支持基板を境として反対側に設けられている事を特徴とする1)〜3)の何れかに記載の試し印刷基盤。
5) スケール層のスケールがグリッド状(格子状)である事を特徴とする1)〜3)の何れかに記載の試し印刷基盤。
6) グリッドの間隔が1cmで、且つ、グリッド内に1mm単位の目盛りを有する事を特徴とする5)記載の試し印刷基盤。
7) スケール層がスクリーン印刷により形成されている事を特徴とする1)〜6)の何れかに記載の試し印刷基盤。
8) スクリーン印刷で使用されるインクが紫外線硬化型樹脂である事を特徴とする7)記載の試し印刷基盤。
9) 支持基板とスケール層の間に白色層又は着色された層を有する事を特徴とする1)〜8)の何れかに記載の試し印刷基盤。
10) 全体の厚さが1.2±0.003mmである事を特徴とする1)〜9)の何れかに記載の試し印刷基盤。
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明1によれば、支持基板と、支持基板の表裏何れかに設けられた透明なインク受理層と、情報記録媒体印字用IJPで印刷する際に画像及び/又は文字の印刷位置合わせが可能なスケール層を備え、印刷位置合わせと同時に発色性/色合いが確認可能であるため、実際に光ディスクにIJP印刷する前に、印刷位置の確認・調整と印刷濃度や発色具合の確認を行う事ができ、光ディスクの美観を向上させる事が出来る。透明なインク受理層の「透明」とは、インク受理層を通して支持基板が視認できる状態をいう。
支持基板には種々の材料を用いることが出来るが、本発明2のように、合成樹脂又は紙を用いる事が好ましい。これらの材料はリサイクル可能であるから環境への影響が小さく、且つ、低コストで実際にIJP印刷する光ディスクに近い外観で確認する事が出来る。合成樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等などが挙げられるが、中でも、優れた光学特性や加工性を有するポリカーボネート樹脂やオレフィン樹脂が好ましい。
また、透明なインク受理層に用いられる材料としては、帝国インク(株)製UVSP−10628などが、スケール層に用いられる材料としては、(株)十条ケミカル製582SN黒などが挙げられる。
【0008】
また、本発明3のように、スケール層を支持基板と透明なインク受理層の間に形成すれば、IJP印刷した際にインクのはじきを防ぐ事が可能となるし、本発明4のように、スケール層とインク受理層とを、支持基板を境として反対側に設けるようにすれば、スケール層の厚みがインク受理層の厚みに影響しなくなるので、正確な位置を確認する事が可能となる。
また、本発明5のように、スケール層はグリッド(格子状)にする事が好ましい。これにより、IJP印刷する画像及び/又は文字の2軸方向(X,Y)の位置調整が可能となる。
また、本発明6のように、グリッドの間隔を1cmとし、且つ、グリッド内に1mm単位のメモリを設ける事が好ましい。これにより、IJPに同梱されているソフトと同一のスケールで印刷状態を確認する事ができ、素早い位置合わせが可能となる。
【0009】
また、本発明7のように、スケール層をスクリーン印刷により形成すれば、インク受理層と同一生産プロセスで形成でき、低コスト化が可能となる。スクリーン印刷で使用されるインクとしては、本発明8のように紫外線硬化型樹脂が好ましい。
また、本発明9のように、支持基板とスケール層の間に白色層又は着色された層を設ける事が好ましい。これにより、実際に光ディスクにIJP印刷する前に、光ディスクの印刷濃度や発色具合を確認する事ができ、光ディスクの美観を向上させる事が出来る。
白色層又は着色された層の色としては、ホワイト、スノーホワイト、ベビーピンク、シェルピンク、ネールピンク、ピーチ、エクルベイジュ、レグホーン、クリームイエロー、アイボリー、クールホワイト、チェリーブロッサムなどが挙げられる。
白色層又は着色された層の材料としては、(株)十条ケミカル製:F27(白)、DVDシリーズカラーインク(PMS色)などが挙げられる。
また、本発明10のように、試し印刷基盤全体の厚さを、光ディスクと同程度の1.2±0.003mmとする事が好ましい。これにより、実際に光ディスクにIJP印刷を行う場合と同一の印字環境で試し印刷する事が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高価な光ディスクを使用せず、印刷位置、印刷濃度などの調整ができる、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤を提供できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の試し印刷基盤の構成の一例を示す断面図であり、ポリカーボネート製の支持基板上1に、白色層(白地層)2、スケール層3、インク受理層4が順に積層されている。
図2は、スケール層の一例を示す正面図であり、図3は、図2のスケール層の黒○印で示した部分の拡大図であって、間隔が1cmのグリッド内に1mm単位の目盛りを設けた状態を示している。
上記試し印刷基盤を、厚さ1.2mmのポリカーボネート製支持基板上に、紫外線硬化型樹脂の(株)十条ケミカル製:F27(白)からなる白色層、紫外線硬化型樹脂の(株)十条ケミカル製582SN黒からなるスケール層、紫外線硬化型樹脂の帝国インク(株)製UVSP−10628からなるインク受理層の順にスクリーン印刷して製造したのちIJP印刷を行った。その結果、光ディスクの製品と同じ材料の試し印刷基盤で印刷位置や色合いなどを確認する事ができた。即ち、実際に印刷する光ディスクの場合と同じIJP環境を形成する事が出来た。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の試し印刷基盤の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】スケール層を示す正面図である。
【図3】図2のスケール層の黒○印で示した部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ポリカーボネート基板
2 白色層(白地層)
3 スケール層
4 インク受理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、透明なインク受理層と、情報記録媒体印字用インクジェットプリンタで印刷する際に画像及び/又は文字の印刷位置合わせが可能なスケール層を備え、印刷位置合わせと同時に発色性/色合いが確認可能である事を特徴とする情報記録媒体印字用インクジェットプリンタの試し印刷基盤。
【請求項2】
支持基板材料が合成樹脂又は紙である事を特徴とする請求項1記載の試し印刷基盤。
【請求項3】
スケール層が支持基板と透明なインク受理層の間に形成されている事を特徴とする請求項1又は2記載の試し印刷基盤。
【請求項4】
スケール層と透明なインク受理層とが支持基板を境として反対側に設けられている事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の試し印刷基盤。
【請求項5】
スケール層のスケールがグリッド状(格子状)である事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の試し印刷基盤。
【請求項6】
グリッドの間隔が1cmで、且つ、グリッド内に1mm単位の目盛りを有する事を特徴とする請求項5記載の試し印刷基盤。
【請求項7】
スケール層がスクリーン印刷により形成されている事を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の試し印刷基盤。
【請求項8】
スクリーン印刷で使用されるインクが紫外線硬化型樹脂である事を特徴とする請求項7記載の試し印刷基盤。
【請求項9】
支持基板とスケール層の間に白色層又は着色された層を有する事を特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の試し印刷基盤。
【請求項10】
全体の厚さが1.2±0.003mmである事を特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の試し印刷基盤。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−213727(P2007−213727A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34299(P2006−34299)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】