説明

情報記録用紙

【課題】パール調の光輝性を有しインクジェット印刷に適する情報記録用紙であって、紙のような風合いを持ち、光輝性に優れ、かつ、印字品位が良い情報記録用紙を提供する。
【解決手段】繊維状パルプおよび填料を主体とする原紙の少なくとも片面に、微細繊維状セルロースと親水性樹脂と真珠顔料とを含有する塗工液を塗工してなる被覆層を有することにより、紙全体としてマット感を有し光輝性に優れ、発色性が良く、インク滲みがなく、印刷特性に優れ、印字品位が良く、高い印刷適性を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール調の光輝性を有しインクジェット印刷に適する情報記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
パール調の光輝性を有する紙は、高級感があり美粧性が高いので、化粧品の包装紙等に用いられてきた。パール調の光輝性には、真珠のようにキラキラと輝く性質、細光感、微光感、キラキラ感あるいは輝き感として表現される性質を含む。
【0003】
光輝性を有する紙としては、真珠顔料やフレーク状ガラス等を用いたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−329492号公報(段落[0007])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパール調の光輝性を有する紙は、オフセット印刷用であり、インクジェット印刷を行うと、印刷部分の光輝性が損なわれるという問題がある。また、発色性が悪く、インク滲みが発生し、印刷適性が悪いという問題がある。
【0005】
パール調の光沢を有する基材上に透明なインクジェット受容層を塗工したものでは、印字部の光輝性が大きく低下する問題がある。また、表面は光沢性があり、マット感はなく、紙のような風合いはない。
【0006】
一般的な無機顔料を主体に構成されたインクジェット用塗料に真珠顔料を配合し塗工、乾燥して得たインクジェット用紙では、十分な印字品位が得られる塗工量においては真珠顔料が塗膜中に埋没し、光輝部が目立たず、したがって、十分な光輝感が得られにくいという問題がある。また、真珠顔料を配合すると印字品位が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記した課題を解決し、紙のような風合いを持ち、光輝性に優れ、かつ、印字品位が良い情報記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、情報記録用紙において、繊維状パルプおよび填料を主体とする原紙の少なくとも片面に、微細繊維状セルロースと親水性樹脂と真珠顔料とを含有する塗工液を塗工してなる被覆層を有することにより、紙全体としてマット感を有し、良好な風合いを持ち、光輝性に優れ、高い印刷適性を実現することを見出し、本発明に想到した。
【0009】
ここで「親水性樹脂」には、水性インクと親和性を示す樹脂を含む。親水性樹脂を含有することで印字品位を損なうことなく皮膜強度及び基材との結着性を付与できる。また、ここで「光輝性」とは、マット調の中でキラキラと輝く性質をいう。
【0010】
前記微細繊維状セルロースがバクテリアセルロースであることが好ましい。
【0011】
また、親水性樹脂がカチオン性を示すポリマーとしても良い。カチオン性を示すポリマーでは、さらに、色素の耐水性が向上する。また、前記親水性樹脂が、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、アリル系ポリマーまたはそれらの混合物であるものとしてもよい。
【0012】
前記真珠顔料が、前記塗工液中に0.5重量%以上50重量%以下の割合で含有されることが好ましい。かかる範囲では、パール調の光輝性を得るのに十分な真珠顔料が含まれ、かつ、全体的に艶がでずマット感を損なわないので、マット感及び光輝性の面で好ましく、また印刷適性の面でも好ましい。前記真珠顔料が、前記塗工液中に3重量%以上30重量%以下の割合で含有されることがより好ましい。かかる範囲では、光輝部分とマット感のある部分とのコントラストが一層良好となる。紙全体としてさらにマット感を有しより光輝性に優れ、しかもより高い印刷適性を実現できる。
【0013】
なお、本発明において、単に「部」としたときは、重量部を意味する。また、単に「%」としたときも重量%を意味する。
【0014】
前記塗工液を、塗工量が1g/m以上10g/m以下で前記原紙に塗工することが好ましい。かかる範囲より少ないと真珠顔料の絶対量が少ないため、光輝性がやや少ない。またかかる範囲より多いと光輝性がやや低下し、さらにカール等の問題が発生する可能性がある。
【0015】
また、前記真珠顔料が、少なくとも雲母を含むものとしてもよい。これにより、より優れたパール調の光輝性を与えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紙のような風合いを持ち、光輝性に優れ、かつ、印字品位が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の情報記録用紙について、詳細に説明する。
【0018】
本発明の情報記録用紙は、下記の原紙及び下記の塗工液を用いて作成される。
【0019】
(1.原紙)
本発明に用いられる原紙は、LBKP、NBKP等に代表される化学パルプ及び填料を主体とし、その他、内面サイズ剤や抄紙助剤を必要に応じて用い、常法により抄紙される。使用されるパルプ材としては、機械パルプや古紙再生パルプを併用しても良く、また、これらを主体とするものであってもよい。填料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン等が挙げられる。
【0020】
(2.塗工液)
本発明の塗工液は、微細繊維状セルロースと親水性樹脂と真珠顔料とを含有する。微細繊維状セルロースは塗料中で微小網目構造を形成し、この網目に真珠顔料を取り込み分散安定化する効果を持つ。また、微細繊維状セルロースが沈降した場合でも、網目構造に真珠顔料を取り込んだ状態にあり、真珠顔料同士の凝集を防ぎ、再分散を容易にする働きがある。親水性樹脂を含有することで離解操作による微細繊維状セルロースの分散性が向上し、さらにバインダーとして機能することから皮膜強度が向上する。親水性樹脂をカチオン性ポリマーとすることで色素の耐水性を向上することができる。
【0021】
(2.(1)微細繊維状セルロース)
本発明でいう微細繊維状セルロースとは、平均繊維幅10μm以下の繊維状セルロースをいう。植物由来のものでは、パルプに超高圧ホモジナイザー等による強力な機械的せん断力を加えミクロフィブリル化したものがある(たとえば特開2000−17592号等)。植物由来微細繊維状セルロースの平均繊維幅は0.01〜0.1μmであるのが好ましい。植物由来微細繊維状セルロースの市販品としては、「セリッシュ」(ダイセル化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0022】
他の微細繊維状セルロースとしては、バクテリアセルロースが挙げられる。バクテリアセルロースは、一般には厚さ1〜20nm、幅10nm〜50nmのリボン状のミクロフィブリル(小繊維)からなっている。微生物培養により得られるものはゲル状であり、その含水率は95重量%以上である。1種類のバクテリアセルロースを用いても良いし、複数種類のバクテリアセルロースを組み合わせても良い。
【0023】
バクテリアセルロースはセルロース及びセルロースを主鎖としたヘテロ多糖を含むもの及びβ−1,3,β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖及び有機酸等である。なお、これらの多糖が単一物質である場合もあるし、2種以上の多糖が水素結合等により混在していてもよい。
【0024】
バクテリアセルロースは上記のようなものであればいかなるものであっても使用可能である。
【0025】
このようなバクテリアセルロースを産生する微生物は特に限定されないが、アセトバクター・アセチ・サブスピーシス・キシリナム(Acetobacteraceti subsp/xylinum)ATCC 10821あるいは同パストウリアヌス(A・pasteurianus)、同ランセンス(A・rancens)、サルシナ・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウム・キシロイデス(Bacterium xyloides)、シュードモナス属細菌、アグロバクテリウム属細菌等でバクテリアセルロースを産生するものを利用することができる。
【0026】
これらの微生物を培養してバクテリアセルロースを生成蓄積させる方法は、一般的な培養方法に従えばよい。すなわち、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の栄養培地に微生物を接種し、静置又はゆるやかに通気攪拌を行なう。炭素源としては、グルコース、シュクロース、マルトース、澱粉加水分解物、糖密等が利用されるが、エタノール、酢酸、クエン酸等も単独あるいは上記の糖と併用して利用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩、尿素、ペプトン等の有機あるいは無機の窒素源が利用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が利用される。有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、さらにはこれらの栄養素を含むペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆蛋白加水分解物等が利用され、生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株を用いる場合には要求される栄養素をさらに補添する必要がある。
【0027】
培養条件も常法でよく、pHを5ないし9そして温度を20ないし37℃に制御しつつ1ないし30日間、静置培養あるいは通気攪拌培養する。静置培養の場合は、培養表層にバクテリアセルロースがマット状あるいはゲル状に蓄積される。一方、通気攪拌培養の場
合は、バクテリアセルロースは種々の大きさの塊状物の形で培養液に分散して生産される。ここで得られるバクテリアセルロースは、通常厚さ1〜20nm、幅10〜50nmのミクロフィブリルからなるが(特開昭62−36467号、米国特許4,863,565号等)、培地中にクロラムフェニコールまたはナルジクス酸等の細胞分裂阻害剤を添加することにより、厚さは同等だが、幅が1000nm程度まで広がったバクテリアセルロース繊維状物を産生させることもできる(米国特許出願09/436,756)。また、培地中にジチオスレイトール等の有機還元剤を添加すると、幅の短いバクテリアセルロース繊維状物を得ることができる。
【0028】
本発明で使用するバクテリアセルロースは微生物の培養物から単離された精製品のほか、用途に応じある程度不純物を含むものであっても良い。例えば培養液中の残糖、塩類、酵母エキス等が微生物セルロースに残留していてもさしつかえない。また、菌体がある程度含まれていても良い。
【0029】
バクテリアセルロースを単離する場合、培養物から取り出して水洗する。洗浄水には目的に応じて殺菌剤、前処理剤などの薬剤を添加してもよい。水洗後は乾燥するか、他の混練物等と混練した後乾燥する。セルロースが分解しない温度範囲でおこなう限り、乾燥方法に限定はない。ただし、バクテリアセルロースが分解しない温度範囲でおこなう限り、乾燥方法に限定はない。ただしバクテリアセルロースは表面に多数の水酸基を有する微細な繊維からなっており、乾燥中に繊維が相互膠着して繊維形態が失われることがあるため、乾燥方法としては凍結乾燥及び臨界点乾燥が好ましい。
【0030】
塗料塗工乾燥時のバクテリアセルロース繊維の相互膠着を防ぐため、アルコール類等のバクテリアセルロースに対する貧溶媒中でゲル状バクテリアセルロースを細かく離解(微粉砕)してスラリーにしたり、乾燥してパウダー状にするのが好ましい。バクテリアセルロースの離解方法は特に限定されず、例えば特開平5−51885号に記載のようにホモジナイザーを用いて水中で超高速回転する手法や、特公平5−80484号に記載のように酸加水分解処理した後、機械的せん断する手法等を用いることができる。必要に応じて、特開2003−11494号に記載のように冷凍粉砕するか、高圧乳化機により粉砕する手法を用いてもよい。
【0031】
(2.(2)親水性樹脂)
本発明に用いることのできる親水性樹脂には、例えば、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマーあるいはアリル系ポリマー等が含まれる。親水性樹脂を含有することで離解操作による微細繊維状セルロースの分散性が向上し、さらにバインダーとして機能することから皮膜強度が向上する。親水性樹脂をカチオン性ポリマーとすることができる。ここで、「カチオン性ポリマー」には、カチオン基を含有する構造単位を有する親水性樹脂が含まれる。
【0032】
カチオン性ポリマーは、インクの定着性および発色性に寄与する成分である。インクに含まれる色材が記録用紙の内部に浸透しながら、記録用紙の表面近傍のカチオン性ポリマーとイオン的相互作用により会合を起こして、瞬間的に溶液相から分離を起こすため、インクの定着性および発色性を一層向上させることができる。カチオン基は、インクジェットプリンター用のインクと親和性を有するものであれば、特に限定されない。カチオンポリマーで特に好ましいものは、カチオン基として四級アンモニウム塩を有するものである。
【0033】
親水性樹脂は、(i)四級アンモニウム塩を有する構造単位、及び/又は(ii)親水性のアクリル系モノマー、ビニル系モノマーあるいはアリル系モノマーから導出される構造単位、及び/又は(iii)疎水性モノマーから導出される構造単位を含有せしめることによって得られるものである。以下、構造単位(i)〜(iii)を詳細に説明する。
【0034】
(2.(2)(i)四級アンモニウム塩を有する構造単位)
構造単位(i)は、染料の定着に寄与するセグメントである。ここで「四級アンモニウム塩」とは、下記一般式(1)により表されるものである。ただし、下記一般式(1)において、R1〜R5は、炭素数1〜7のアルキル基、アリール基、ベンジル基、あるいはこれらの組み合わせにより構成される基であって、これらの基は同一でも異なっていても良く、Xはハロゲン基等の対イオンである。
【0035】
【化1】

【0036】
四級アンモニウム塩はアルキルアミノ基にハロゲン化アルキル等を付加させることにより得られる。構造単位(i)を導出する具体的なモノマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・メチルクロライド四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド・メチルクロライド四級化物、N,N−ジアリルメチルアミン・メチルクロライド四級化物等が好ましい。
【0037】
(2.(2)(ii)親水性のアクリル系モノマー、ビニル系モノマーあるいはアリル系モノマーから導出される構造単位)
構造単位(ii)は、水及びそれに溶解又は懸濁された染料を速やかに吸収する作用を有するセグメントである。具体的なモノマーの例としては、1.アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸等の脂肪族カルボン酸類又はその無水物、2.(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホン酸等のアクリルアミド類、3.モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の燐酸基含有アクリル系モノマー類、4.N−ビニル−2−ピロリドン等のビニルピロリドン類等が好ましい。
【0038】
(2.(2)(iii)疎水性モノマーから導出される構造単位)
構造単位(iii)は、親水性樹脂に耐水性を付与するセグメントであり、親水性を著しく阻害しない範囲で含有させることができる。構造単位(iii)は、親水性基を有さないモノマーであれば特に限定されない。また親水性基(−OH等)又は親水性部分(−O−等)を有するモノマーであっても、炭素数4以上の疎水基を有するモノマーであれば、共重合体中で疎水性部分を形成することができる。このような疎水基の炭素数としては6以上が好ましい。疎水基の例としては長鎖アルキル基、長鎖アルキレン基、芳香族基等が挙げられる。
【0039】
(2.(2)(iv)各構造単位の割合)
上記親水性樹脂の構造単位(i)〜(iii)の配合比は、(i)が0〜100重量%であり、(ii)が0〜100重量%であり、(iii)が0〜30重量%であることが好ましい。
【0040】
(2.(3)真珠顔料)
真珠顔料には、パール調の光輝性を与える天然の真珠顔料や合成の真珠顔料を含み、例えば、雲母(マイカ)や塩基性炭酸塩、酸化チタン、ジルコニア、これらの混合物を含む。真珠顔料は、一般的に薄板状である。雲母には、天然雲母のほか、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等を被覆した合成雲母、これらの変性物を含む。合成雲母として、例えば、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、フッ素化合物等を混合して加工し金属酸化物で被覆した物が挙げられる。また、真珠顔料として、魚鱗箔、天然パールエッセンス、オキシ塩化ビスマス等を用いてもよい。
【0041】
真珠顔料の粒度分布は一般の情報記録用紙の製造に用いることができる範囲であればよい。優れたパール調の光輝性を得るには、粒度分布が5〜1000μm以下であることが好ましく、粒度分布が10〜600μm以下であることがより好ましい。
【0042】
(2.(4)塗工液の組成)
本発明の塗工液の組成比は、微細繊維状セルロース:親水性樹脂=1:0.1〜50(重量比)となるようにする。好ましくは微細繊維状セルロース:親水性樹脂=1:0.5〜15(重量比)である。真珠顔料をこれに加える。好ましくは、真珠顔料を、塗工液中に0.5〜50重量%の割合で含まれるように調整する。より好ましくは、塗工液中に3重量%〜30重量%の割合で含有されるように調整する。真珠顔料の割合が少なすぎると、パール調の光輝性を十分得られにくく、多すぎると、マット感を損ない、全体的に艶がでてしまい、相対的に光輝部分が目立たなくなり光輝感が損なわれるおそれがある。
【0043】
塗工液の溶媒はアルコール等のバクテリアセルロース等に対する貧溶媒を含むことが好ましい。これにより塗料を基材に塗工後、乾燥する時点での微細繊維間の膠着を抑制することができ、その網目構造により、印字性が向上する。
【0044】
塗料の好ましい濃度は、固形物の乾燥重量で、0.1〜30重量%であり、特に好ましくは1〜15重量%である。
【0045】
(2.(5)塗工液のその他の成分)
本発明の塗工液には、本発明の効果を著しく損ねない範囲で、必要に応じて、微細繊維状セルロース、親水性樹脂及び真珠顔料以外の成分を添加することができる。その他の成分としては、アルミナ粉末、シリカ粉末、天然無機粉末、有機微粒子、樹脂エマルジョン、界面活性剤、pH調整剤,防腐剤,酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。
【0046】
用いる界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。界面活性剤を加えることによって、インクによっては、画像濃度が高くなりブリーディングが改善される。
【0047】
(情報記録用紙)
本発明の情報記録用紙は、上記の塗工液を、上記の原紙の表面に塗布又は含浸させたものである。塗工は原紙の片面だけでも、両面でもよい。例えば、上記原紙に、本発明の塗工液を、固形分重量で0.1〜20g/m、好ましくは1〜10g/mとなるように塗布あるいは含浸させる。また、原紙と塗工層の間に結着性を向上させるために薄いプライマー層を含んでもよい。
【0048】
本発明の情報記録用紙は、水抽出pHが5〜9、より好ましくは6〜8のものとして調整される。水抽出pHとは、JISP−8133に規定された試験片約1.0gを、蒸留水70mlに浸した際の抽出液のpHをJIS−Z−8802に従って測定したものである。
【0049】
本発明の情報記録用紙は、従来の中性のPPC用紙と比べても、記録特性以外の表面形状や物理特性について大きな変更を伴わないため、電子写真記録用のトナー転写紙及びインクジェット記録用紙の双方に適用可能である。
【0050】
(作用)
普通紙にインクジェットプリンターで印刷を施すと、紙の繊維に沿ってインクが滲み、ドットが過大に滲んだり、ドットの周辺がギザギザになったり、ボケたりする、いわゆるフェザリングが発生して印字品位が悪くなるが、本発明においては、塗工により原紙の表面に、微細繊維状セルロースの細かな網目構造(ネットワーク)が形成されるため、フェザリングの発生を抑制できる。一般に、広葉樹パルプの繊維幅は30μm程度であるので、微細繊維状セルロースが平均繊維幅10μm以下であると、フェザリング抑制効果が高い。バクテリアセルロースは、一般にさらに細かいので、フェザリング抑制効果は、尚一層高い。
【0051】
また、本発明においては、微細繊維状セルロースにより紙の表面に形成された網目構造の中に真珠顔料がとどまるため、全体として普通紙のようなマット感を持ちつつ光輝性を有する。
【0052】
微細繊維状セルロースを含有する塗料はチキソトロピー性を有する流動挙動を示し原紙上に塗工した後、ゲル状となることと、微細繊維状セルロースの網目構造により真珠顔料が沈降することなく均質に分布した状態で乾燥されるものと考えられる。また、真珠顔料は薄板状であることから塗工膜厚が薄い方が真珠顔料が膜平面に対して平行に配列するため光輝度が高くなると考えられる。また、微細繊維状セルロースと水溶性樹脂と真珠顔料よりなる皮膜は隠蔽性が比較的低いため膜内の真珠顔料の光輝性が遮断されにくく光輝性が高くなると考えられる。
【0053】
印字部分もインクによって光輝性を失わない。これは、真珠顔料の上に載ったインク滴の一部を微細繊維状セルロースの細かな網目構造が吸収するためと考えられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
<親水性樹脂の合成>
N,N―ジメチルアクリルアミド130部、N―t―オクチルアクリルアミド30部、N―[2−(N’,N’―ジメチルアミノ)エチル]アクリレート・メチルクロライド四級化物(78%水溶液)51.3部、脱イオン水389部及びメタノール390部を反応容器に仕込み、窒素気流下で50℃に昇温し、2,2’―アゾビス(2,4―ジメチルバレロニトリル、4%メタノール溶液)5部を添加した。その後、60℃まで昇温し、1.5時間保持した。続けて2,2’―アゾビス(2,4―ジメチルバレロニトリル、4%メタノール溶液)5部を添加し70℃まで昇温し、2時間保持し、無色、粘稠な樹脂を得た。
【0056】
バクテリアセルロース(通気攪拌培養で生産したもの。固形分5.5重量%)50部、上記で合成した親水性樹脂138部、メタクリル酸系架橋型有機微粒子(製品名「J−4P」、根上工業(株)製)2.75部、イソプロピルアルコール150部及び水52部よりなる混合物をホモジナイザー(ハイフレックスホモジナイザーHF93、(株)エスエムテー)を用いて15000rpmで20分間処理した。さらにイソプロピルアルコール412部を加えホモジナイザー(ハイフレックスホモジナイザーHF93、(株)エスエムテー)を用いて15000rpmで20分間処理し、分散液を調製した。
【0057】
上記分散液に、二酸化チタンを被覆した合成雲母からなる真珠顔料(アルティミカSE−100、15〜100μm、日本光研工業(株)製)を11.9g添加(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合26.6重量%)し攪拌することで濃度5.5重量%の塗料を調製した。
【0058】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約5.1g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0059】
〔実施例2〕
実施例1で用いた塗料を、坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約6.1g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0060】
〔実施例3〕
実施例1で用いた塗料を、坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約8.6g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0061】
〔実施例4〕
実施例1で用いた塗料を、坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約9.2g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0062】
〔実施例5〕
実施例1と同様に調製した分散液に、二酸化チタンを被覆した合成雲母からなる真珠顔料(アルティミカSH−100、150〜600μm、日本光研工業(株)製)を8.6g(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合20.7重量%)添加し攪拌することで濃度5.1重量%の塗料を調製した。
【0063】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約4.5g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0064】
〔実施例6〕
微細繊維状セルロース(セリッシュFD−200L、固形分18.6重量%、ダイセル化学工業(株)製)42.9部、実施例1で合成した親水性樹脂186部、メタクリル酸系架橋型有機微粒子(製品名「J−4P」、根上工業(株)製)26.57部、イソプロピルアルコール143部よりなる混合物をホモジナイザー(ハイフレックスホモジナイザーHF93、(株)エスエムテー)を用いて15000rpmで20分間処理し、分散液を調製した。
【0065】
上記分散液に真珠顔料(アルティミカSE−100、15〜100μm、日本光研工業(株)製)を18.7部(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合20.6重量%)及びイソプロピルアルコール199部を攪拌混合し、濃度14.7重量%の塗料を調製した。
【0066】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約8.7g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0067】
〔比較例1〕
実施例1で合成した親水性樹脂100部、メタクリル酸系架橋型有機微粒子(製品名「J−4P」、根上工業(株)製)2.0部、真珠顔料(アルティミカSE−100、15〜100μm、日本光研工業(株)製)を8.67部(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合28.3重量%)及びイソプロピルアルコール196部を攪拌混合し、濃度10重量%の塗料を調製した。
【0068】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約5.8g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0069】
〔比較例2〕
実施例1と同様に調製した分散液を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約5.1g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0070】
〔比較例3〕
非晶質合成シリカ(AZ−6A0、東ソー(株)製)100部、ポリビニルアルコール(PVA−117、(株)クラレ製)水溶液10部(固形分重量)、エチレン―酢酸ビニルエマルジョン(スミカフレックス401HQ、住友化学(株)製)40部(固形分重量)、カチオン性インク定着剤水溶液(ユニセンス101L、センカ(株)製)20部(固形分重量)及び水を用い、固形分21.0重量%の分散液を調製した。
【0071】
上記分散液400部に真珠顔料(アルティミカSE−100、15〜100μm、日本光研工業(株)製)を30.4部添加(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合26.6重量%)し水を加えて攪拌し濃度13.0重量%の塗料を調製した。
【0072】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約5.2g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0073】
〔比較例4〕
比較例3で用いた塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約5.8g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0074】
〔比較例5〕
比較例3で調製した分散液400部に真珠顔料(アルティミカSE−100、15〜100μm、日本光研工業(株)製)を30.4部添加(塗料全固形分に対する真珠顔料の配合割合26.6重量%)し攪拌して濃度26.6重量%の塗料を調製した。
【0075】
上記塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約10.8g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0076】
〔比較例6〕
比較例5で用いた塗料を坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)にバーコーターで約16.1g/m(固形分重量)になるように塗布し、140℃のオーブンで2分間乾燥した。
【0077】
〔比較例7〕
実施例及び比較例で用いた坪量209g/mの原紙(OKプリンス、王子製紙(株)製)を比較例7とした。
【0078】
〔実験結果〕
上記実施例1〜6及び比較例1〜6の情報記録用紙について、インクジェットプリンター(「PIXUS 950i」、キヤノン(株)製)を使用して、フルカラー印刷をした。印刷後のサンプルについて、記録画像の評価を行った。評価は、それぞれ以下の基準で行った。
【0079】
〔パール調光輝性〕
非印字部及びベタ印字部(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及び混色)を目視にて評価した。
○:光輝部がキラキラと目立ち美粧性が良好である。
△:光輝部のキラキラがやや少なく美粧性がやや劣る。
×:光輝部が目立たない或は表面が不均質であり美粧性に劣る。又は紙全体としてマット感がない。
【0080】
〔フェザリング〕
フォントサイズ4ポイントの文字及び細線を黒インクで印字し、目視にて評価した。
◎:文字、細線において滲みがなく、文字、細線の太りがない。
○:文字、細線において一部で滲みが観察される。
△:文字、細線において多く滲みが観察され、文字、細線が太くなっている。
×:文字、細線に滲みがひどく実用上問題である。
【0081】
〔インク吸収性〕
ベタ印字部の各色の境界及び文字のにじみの程度を目視にて評価した。
○:境界がくっきりしてにじみが全くなく、文字が鮮明である。
△:境界ににじみが発生しており、文字もやや不鮮明である。
×:境界のにじみがひどく、文字の読み取りが難しい状態である。
【0082】
〔耐ブロッキング性〕
印字後、自然乾燥した画像に未処理PETフィルムを重ね、約50g/mの重量をかけ、室温で24時間放置し、重ねたPETフィルムへの接着状態を評価した。
○:ブロッキング性なし
△:ややブロッキング性あり
×:ブロッキング性あり
【0083】
表1は、本実施例1〜実施例6及び比較例1〜7の情報記録用紙の実験結果を示す表である。
【0084】
【表1】

【0085】
図1は、本実施例1〜実施例6及び比較例1〜7の情報記録用紙のOD値をサンプル別に示す特性図である。図2は、本実施例1〜実施例6及び比較例1〜7の情報記録用紙のOD値を色別に示す特性図である。
【0086】
実施例1〜6では風合いの良いマット感を有し、光輝部分がキラキラと目立ち、美粧性が高かった。比較例1では真珠顔料のキラキラした光沢感はあったが、全体に光沢が高く風合いは良いとは言えない。また、印字性、発色性及び耐ブロッキング性が悪かった。比較例2ではパール調光輝性がない。従来のシリカ主体の紙に真珠顔料を配合すると発色性が低下し、比較例3及び4での結果のように発色性が悪くなった。また、印字部に印刷ヘッドの動作方向に細かな地割れのような光沢ムラが多数あった。文字の太りも発生した。これは塗工量の少なさ及び真珠顔料の影響と考えられる。比較例3及び4と同程度の塗工量の実施例1及び2では、真珠顔料を加えても発色性は低下せず、印字部のパール調光輝性は良好であり、印字性、発色性も良好であった。また、印字品位を上げるために塗工量を増やした比較例5及び6では、真珠顔料が被覆層の下部に沈んでしまい、パール調の光輝性に劣り、また、発色性も悪かった。しかし、塗工量を増やした実施例3及び4では、パール調の光輝性に優れ、また、印字性、発色性も良かった。
【0087】
本結果から、本発明によれば、パール調の光輝性を有し、インクジェット印刷を行った印字部分も光輝性に優れることが分かった。発色性が良く、インク滲みがなく、印刷特性に優れ、印字品位が良かった。また、全体としてマット感があり、普通紙の風合いが損なわれなかった。したがって、光輝部分が目立ち、高い光輝感が得られ、高級感があり美粧性が高かった。本発明によれば、紙のような風合いを持ち、光輝性に優れ、かつ、印字品位が良いということが分かった。
【0088】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。また、上記各実施の形態の構成要素を発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施例1〜実施例6及び比較例1〜7の情報記録用紙のOD値をサンプル別に示す特性図である。
【図2】本実施例1〜実施例6及び比較例1〜7の情報記録用紙のOD値を色別に示す特性図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状パルプおよび填料を主体とする原紙の少なくとも片面に、微細繊維状セルロースと親水性樹脂と真珠顔料とを含有する塗工液を塗工してなる被覆層を有することを特徴とする情報記録用紙。
【請求項2】
前記微細繊維状セルロースがバクテリアセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録用紙。
【請求項3】
前記真珠顔料が、前記塗工液中に0.5重量%以上50重量%以下の割合で含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録用紙。
【請求項4】
前記真珠顔料が、前記塗工液中に3重量%以上30重量%以下の割合で含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録用紙。
【請求項5】
前記塗工液を、塗工量が1g/m以上10g/m以下で前記原紙に塗工することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の情報記録用紙。
【請求項6】
前記親水性樹脂が、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、アリル系ポリマーまたはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報記録用紙。
【請求項7】
前記真珠顔料が、少なくとも雲母を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の情報記録用紙。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−7899(P2008−7899A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181312(P2006−181312)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(599093535)株式会社宇宙環境工学研究所 (7)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】