説明

情報読み取り方法

【課題】本発明の目的は、光散乱による特定な光散乱体を用いて、情報を読み取ることで、同一であること或いは真正であることを確実に識別することである。
【解決手段】表面に形成した凹部または凸部を光散乱要素として、入射光について光散乱を生じせしめる光散乱体を情報記録部とする情報読み取り方法において、光散乱要素に対し、特定角度を成す少なくとも二つの入射光を同時に、或いは別々に照射し、それら各々の散乱光の強弱を識別情報として読み取ることを特徴とする情報読み取り方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱による特定な光散乱体を用いて情報読み取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フーリエ変換ホログラム等のホログラフィックな撮影手法を用いて記録され、ビーム上の光により空間的に投影された情報を読みとることができる情報記録媒体は知られている。しかし、このような光情報記録媒体はの多くは、全体で一つの情報を記録したものであり、複数の情報の再生はできなかった。また、光情報記録媒体に対する再生用ビームの入射角度・方向はホログラム記録時の参照光のそれに対応した条件に限定されていた。
【0003】
一方、干渉縞データをコンピュータ等で計算して形成してなる計算機ホログラムの手法により同様の効果を持つ光情報記録媒体も知られている。しかし、これに関しても、前述の撮影手法に準じた光情報記録媒体を作製することしか行われていなかった。
【0004】
以上のような従来技術では、情報が単純に再生できるため、偽造・模造も容易となりセキュリティ性に問題を残すことになる。また、単位面積当たりの情報量も増やすことができなかった。
【0005】
一方、情報記録用途にあらず、ホログラムや回折格子を用いて画像等を表示する表示体は知られている。これらの表示体は、貼付した商品(例えば、クレジットカードや商品券)の修飾性及びセキュリティ性を向上する効果があり、偽造・模造の防止に役立ってきた。しかし、ホログラムや回折格子に対しても、さらなるセキュリティ性の向上が望まれている。
【0006】
以下に特許文献を記す。
【特許文献1】特開昭60−156004号公報
【特許文献2】特開平2−72319号公報
【特許文献3】特開平5−72406号公報
【特許文献4】特開平2−72320号公報。
【0007】
このため、表示体の作製方法を複雑にして、偽造や模造を困難にする方法が考えられている。一例として、コヒーレント光の二光束干渉を利用して、基板の表面に回折格子からなる複数の微少なセル(ドット)を配置し、回折格子からなるパターンからなるディスプレイ(以下、用語「ディスプレイ」や「表示体」を混合して用いることもある)を得る方法がある。(例えば、特許文献1〜3参照)
これらの方法は、2本のレーザービームを感光材料上で交差させ、セル単位で露光することにより、双方のレーザービームを干渉させて、各セルに形成される微少な干渉縞からなる回折格子を、その空間周波数・方向・光強度を適宜変化させながら次々と露光記録し、回折格子セルの集まりからなるパターンを作製する方法である。作製されたパターンの観察時には、前記空間周波数は見える色に、前記方向は見える方向に、それぞれ関係する。また、露光の際の光強度は、干渉縞の深さ等を変更することになり、観察時の明るさと関係することになる。
【0008】
回折格子パターンの作製方法は、上記の二光束干渉を用いた方法に限定されるものではなく、電子線(エレクトロン・ビーム=EB)により、基板の表面に回折格子を直接描画し、回折格子セルを配置する方法を採用しても良い。このような方法では、回折格子を構成する格子線は直線に限らず、曲線を用いることもできるが、何れにしろ単純な格子線を並べて構成されていることに変わりはない。これらの様な単純な回折格子からなるセルでは、ビーム状の証明光が入射した場合にビーム状や発散光状などの比較的単純な性質を持つ1次回折光が生成できる。(特許文献4参照)
また、光散乱に基づいて表示されるパターンは、通常、基材の表面を凹凸形状に加工することで表現される。その加工方法としては、エッチングによる方法やEB描画装置により凹凸を形成する方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光散乱による特定な光散乱体を用いて、情報を読み取ることで、同一であること或いは真正であることを確実に識別することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明は、
請求項1記載の発明は、表面に形成した凹部または凸部を光散乱要素として、入射光について光散乱を生じせしめる光散乱体を情報記録部とする情報読み取り方法において、
光散乱要素に対し、特定角度を成す少なくとも二つの入射光を同時に、或いは別々に照射し、それら各々の散乱光の強弱を識別情報として読み取ることを特徴とする情報読み取り方法である。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記特定角度が、光散乱体が形成された平面の法線と成す角度の異なる複数の角度を用いることを特徴とする請求項1記載の情報読み取り方法である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記特定角度が、光散乱体が形成された平面の法線を軸として方位角の異なる複数の角度を用いることを特徴とする請求項1記載の情報読み取り方法である。
【0013】
請求項4記載の発明は、散乱光を読み取る方向が光散乱体の形成された平面に略垂直な方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報読み取り方法である。
【0014】
請求項5記載の発明は、散乱光を読み取る方向が予め決められた方向であり、それぞれの入射光を切り換えて入射させ、それぞれの散乱光を読み取ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報読み取り方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光散乱体における光散乱要素に対し、特定角度を成す少なくとも二つの入射光を照射することで、各々の散乱光を読み取る方向によって、読み取り情報を識別できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、光散乱体を構成する光散乱要素により散乱される光の広がりは、光散乱要素を開口として回折現象を扱うことにより得られる回折光の分布と等しいと見なせる。従って、光散乱要素の大きさが大きければ散乱光は広がらず、大きさが小さければ散乱光は広がることとなる。
【0017】
光散乱要素の大きさの範囲は、0.5μm以上有ることが望ましい。これは、光散乱要素の大きさが1μm程度の時に、0.5μmの差が有れば最小の大きさの光散乱要素の散乱光強度分布の極小位置と、別の大きさの光散乱要素の極大の位置が重複する条件が含まれることになるためである。
【0018】
また、光散乱体による散乱光の強度は、光散乱体内にある光散乱要素の密度、もしくは光散乱体の凹凸の深さにより変化させることができる。
【0019】
上記の原理に基づいて、光散乱パターンの構成単位として、図1に示す散乱体において、表面に形成する凹部または凸部を光散乱要素とする際、大きさの異なる複数の前記光散乱要素をランダムに配列した散乱体を用いた情報読み取り結果を説明する。
【0020】
具体的に、10×2μm、5×2μm、2×2μmの矩形開口に、633nmの波長の光が入射した場合の光強度分布について試算した結果を、図2〜図4のグラフに示す。
図2は、10×2μmの矩形開口に、633nmの波長の光が、それぞれ入射した場合、正反射光の光強度に対する相対光強度を射出角度について示したグラフである。図3は、5×2μmの矩形開口に、488nmの波長の光が、それぞれ入射した場合、正反射光の光強度に対する相対光強度を射出角度について示したグラフである。図4は、2×2μmの矩形開口に、633nmの波長の光が、それぞれ入射した場合、正反射光の光強度に対する相対光強度を射出角度について示したグラフである。これらのグラフでは、正反射光の角度を0度とし、プラス側の角度について光強度分布を示している(マイナス側は対称形)。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、例えば免許証及びパスポート等に光散乱体を搭載し、真正の確実な識別及び証明することが可能な偽造防止性に優れた情報読み取り方法への応用が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の読み取り方法に用いる光散乱体の説明図である。
【図2】10×2μmの矩形開口に、633nmの波長の光が入射した場合の回折光の強度分布を示すグラフである。
【図3】5×2μmの矩形開口に、488nmの波長の光が入射した場合の回折光の強度分布を示すグラフである。
【図4】2×2μmの矩形開口に、633nmの波長の光が入射した場合の回折光の強度分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成した凹部または凸部を光散乱要素として、入射光について光散乱を生じせしめる光散乱体を情報記録部とする情報読み取り方法において、
光散乱要素に対し、特定角度を成す少なくとも二つの入射光を同時に、或いは別々に照射し、それら各々の散乱光の強弱を識別情報として読み取ることを特徴とする情報読み取り方法。
【請求項2】
前記特定角度が、光散乱体が形成された平面の法線と成す角度の異なる複数の角度を用いることを特徴とする請求項1記載の情報読み取り方法。
【請求項3】
前記特定角度が、光散乱体が形成された平面の法線を軸として方位角の異なる複数の角度を用いることを特徴とする請求項1記載の情報読み取り方法。
【請求項4】
散乱光を読み取る方向が光散乱体の形成された平面に略垂直な方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報読み取り方法。
【請求項5】
散乱光を読み取る方向が予め決められた方向であり、それぞれの入射光を切り換えて入射させ、それぞれの散乱光を読み取ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−95834(P2006−95834A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283993(P2004−283993)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】