説明

情報読取装置

【課題】 小さな読取対象に対しては手動による装置全体を移動しての走査を必要としない、片手で操作可能であり、そして、読取対象の位置合わせが簡単で、かつ、早い読取操作でも読み取りを行うことができる、情報読取装置を提案する。
【解決手段】 第1の位置と第2の位置を移動可能な操作手段と、その移動に基づき、前記操作手段の移動方向とは異なる移動方向に情報読取手段を移動させる手段と、前記情報読取手段の移動に基づき、位置信号を出力する位置信号出力手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象となる媒体上に置いてバーコード、文字又は画像等の媒体情報を光学的に読み取る情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置は、読取対象となる媒体上を手動操作によって走査して媒体情報を読み取る装置が一般的である。すなわち、情報読取手段が所定の一方向を読み取るラインセンサによる場合は、媒体に接して走査方向に回転するローラの回転から装置と一体的に移動する読取手段の媒体に対する走査位置を逐次検出し、検出された走査位置に基づいた情報を読み取っており、また、情報読取手段がある一定の面積を読み取るエリアセンサによる場合は、移動する情報読取手段の走査位置をローラの回転から逐次検出しながら読み取りを行う上記ラインセンサと同様のタイプと、移動する情報読取手段により規定時間間隔で読み取られた情報を重ね合わせ合成処理を行い、その処理結果から走査位置を検出するタイプがある。
【0003】
しかし上述したいずれの装置も情報読取手段が装置と一体的に移動するので、装置より大きい、例えばA4サイズ以上の読取対象ならいざ知らず、写真等のコンパクトな読取対象、又は比較的小さな面積の読取対象、例えばバーコード等に対しても、装置を手で媒体上を動かして読み取りを行う必要があった。
【0004】
正しい読み取りを行う為には、小さな面積の読取対象と雖も走査方向に対して真っ直ぐの方向への情報読取手段の移動が必要であり、装置移動も同様に真っ直ぐの移動が要求されるが、操作者は小さな読取対象であるが故に早く読み取ろうとしてしまう傾向があり、結果として読取対象に対して斜めに走査したり、読取処理能力を超える早さで走査したり、また、ローラの回転にて読取走査位置を検出するタイプの場合は、ローラが媒体から離間してしまい、正しい位置検出ができない等の読取不良が発生していた。それらによる読取不良の為、操作者は数度の読み取りのやり直しを強いられていた。
【0005】
また、媒体自体が小さい場合には手で媒体端部を押さえながら走査する必要がある為、その読取対象近傍で媒体を押さえる手が読み取り操作に邪魔になり、読み取りに苦労していた。もし媒体端部を押さえることができなければ、装置は手動走査時に媒体自身をも引き摺ってしまう為、読み取りそのものができないことになる。その場合は、操作者は媒体を机等に媒体を接着して媒体を動かない様に固定してから、読み取りを行う必要があった。
【0006】
上述した媒体自体が小さい場合の問題を解決する従来技術としては、公報特開2000−78369号において、小さな媒体に対しては装置全体を手で動かす必要のない技術を紹介している。
【0007】
同従来技術の実施例であるハンドスキャナ装置を、図9及び10を用いて説明する。図9は同従来技術装置の側面透視図で、50は光学光源と読取センサを内蔵した情報読取手段、51は媒体60と接して走査方向(図面左右方向)に回転するローラ、52はそれらを支持する装置筐体で、底面部全体に透過性パネルを配置している。尚、同装置はローラ51の回転が増速伝達されるエンコーダ、及びエンコーダの有するスリットを検出し走査方向の位置信号を出力する位置検出センサ等を有するが、図示していない。
【0008】
上記構成において、例えば装置筐体52の横幅以上の長い読取対象を読み取る場合は、装置全体を手動で、ローラ51を媒体60と接して回転させて読取手段50の媒体60に対する走査位置を逐次検出しつつ、図9の右側方向に移動させて読み取りを行う。
【0009】
装置筐体52の横幅より小さな読取対象を有する媒体を読み取る場合は、装置筐体52をその読取対象上に配置後、まずローラ51を浮き上がらせて媒体60から離間させる処理を施し、その後、左手で装置筐体52を保持しつつ操作手段53を図9の右側方向へ引っ張ることによって、情報読取手段60を同図の右側方向へ、ギア54のレール55との噛合いによる回転から情報読取手段50の媒体60に対する走査位置を逐次検出しながら、装置筐体52内を移動させて読み取る。
【0010】
図10は操作手段53を右側に引っ張っている途中の側面透視図を示す。
【0011】
つまり、公報特開2000−78369号は、大きな面積の媒体を読み取る場合は装置全体を移動させ、小さな媒体を読み取る場合は操作手段53を情報読取手段50の走査方向と同方向に引っ張って読取手段50を移動させながら読み取り行う構造で、小さな読取対象に対して装置全体を動かす必要性を排している。更には、ローラ51が媒体60から離間する為、媒体60自体が装置筐体52より小さい場合に発生する、装置全体移動に伴う媒体60の移動、すなわち媒体60がローラ51の回転に引き摺られて移動する問題をも解決すると共に、丸まった媒体を装置底面部で押さえ付けて矯正する効果をも有している、としている。
【特許文献1】特開2000−78369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、同公報の構造では左手で装置筐体52を保持しつつ右手で操作手段53を引っ張るという、両手による操作を必要としていた。更に、同公報では言及していないが、従来技術においては装置筐体52の外周面に読取開始を指示するスイッチを有し、同スイッチを操作して読取開始を指示した後に操作手段53を引っ張る作業が必要であるので、スイッチの配置位置によっては右手を同スイッチから操作手段53へ移動する必要性があった。
【0013】
また、操作手段53を情報読取手段50の走査方向と同方向に引っ張って読取手段50を移動させる為、操作手段53を引っ張るスペースが必要であり、従って媒体60をそのスペースを確保する位置へ移動する必要もあった。
【0014】
更に、操作手段53が読取手段54と直接繋がっており、かつ情報読取手段50の走査距離と操作手段53の移動距離が等しい構造の為、走査距離が比較的長い装置の場合は操作手段53の移動量も長くなってしまう。その場合は、上述したスペースが更に必要となると共に、操作手段53の移動距離が長くなればなるほど、その移動間での引っ張り速度変化が起きやすく、スムースな情報読取手段50の走査を損なう。
【0015】
また、同公報の装置筐体52は底面部に透過性パネルを有しているが、その目的は情報読取手段50が有する光源を媒体60の投射し、その反射光を同じく情報読取手段50に内蔵された読取センサに導く為で、底面部以外の透視部については言及していない。すなわち、媒体60の読取対象上に装置を配置すると、読取対象が装置筐体によって覆われる為、上方からの読取対象位置の目視確認を行うことができない。その為、正しい読取開始位置及び読取走査方向に会わせて装置を配置することが困難である問題も有していた。
【0016】
更に、情報読取手段50を初期状態に戻す為には、操作者に装置から突出した操作手段53を押し戻す作業を要いる問題も有していた。
【0017】
本発明は上述した問題点を解決し、小さな読取対象に対しては手動による装置全体を移動しての走査を必要としない共に、片手で操作可能であり、かつ媒体近傍に特別なスペースを要せず、また、早い読取操作においても読取処理能力を超えることのない走査が可能な、情報読取装置を提供することを目的とする。
【0018】
更に、操作手段の移動距離が短く、その移動操作がたとえ不安定であっても安定した読取走査結果を得ることができ、また、読取手段を初期状態に戻す専用作業を必要としない、情報読取装置を提供することを目的とする。
【0019】
そして、読取対象に対する位置合わせ及び走査方向合わせがしやすいと共に、読取開始指示スイッチを操作する専用操作を要しない、情報読取装置を提供する。
【0020】
更に本発明は大きな読取対象に対しては手動走査が可能である情報読取装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成する為に、本発明の情報読取装置は、読取対象となる媒体上に置いて媒体の情報を光学的に読み取る情報読取装置において、前記媒体上の情報を読み取る情報読取手段と、第1の位置と第2の位置との間を移動可能な操作手段と、前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動に基づき、前記操作手段の移動方向とは異なる移動方向に前記情報読取手段を移動させる移動手段と、前記情報読取手段の移動に基づき、位置信号を出力する位置信号出力手段とを有することを特徴とする。
【0022】
また、前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動距離は、該移動に基づく前記情報読取手段の移動距離よりも短いことを特徴とする。
【0023】
更に、前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動操作後に該操作手段への操作を解放すると、該操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段と、概復帰させる手段に基づき、前記情報読取手段を初期位置に復帰させる手段とを有することを特徴とする。
【0024】
そして、前記情報読取手段を前記初期位置に復帰させる手段は前記情報読取手段を定速復帰させる手段を有することを特徴とする。
【0025】
また、前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段は弾性部材を有し、該弾性部材は前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動に応じて付勢されることを特徴とする。
【0026】
更に、前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段は、付勢された前記弾性部材の反力によることを特徴とする。
【0027】
また、前記位置信号出力手段は、前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動に伴う前記情報読取手段の移動に応じて位置信号を出力する往路位置出力手段と、前記情報読取手段の前記初期位置への復帰移動に応じて位置信号を出力する復路位置出力手段とを有することを特徴とする。
【0028】
更に、前記往路位置出力手段と前記復路位置出力手段を選択的に採用する手段を有することを特徴とする。
【0029】
また、前記位置信号出力手段は、前記情報読取手段に搭載され前記移動手段に従い前記媒体に接して回転するローラと、該ローラの回転に応じて前記情報読取手段の移動方向の位置信号を出力する手段とを有することを特徴とする。
【0030】
更に、前記位置信号出力手段は、認識パターンを有する帯状体と、前記情報読取手段に搭載されて前記認識パターンを検知するパターン検知手段とを有することを特徴とする。
【0031】
また、前記情報読取手段の移動を禁止する手段と、該禁止状態において、前記ローラの回転に応じて前記情報読取手段の位置信号を出力する位置信号出力する手段を有することを特徴とする。
【0032】
更に、本発明は、前記操作手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる手段、前記移動手段、前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段、又は前記情報読取手段を初期位置に復帰させる手段、の何れかの手段に基づき、前記情報読取手段の読み取りの開始又は終了の信号を出力する読取ON/OFF信号出力手段を有することを特徴とする。
【0033】
また、前記情報読取手段を内蔵する筐体と、該筐体上面部又は前記操作手段の上面部の何れか又は両方に透視部を有し、装置の略上方から前記筐体の底面部に配置された前記媒体の読取対象を、前記透視部を介して目視可能であることを特徴とする。
【0034】
更に、前記情報読取手段の読取範囲明示手段を有し、該読取範囲内の前記読取対象を装置の略上方から目視可能であることを特徴とする。
【0035】
また、前記情報読取手段の移動方向明示手段を有し、概明示された移動方向と前記読取対象を装置の略上方から目視可能であることを特徴とする。
【0036】
更に、前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動を伝達する操作伝達部と、該操作伝達部と噛合い前記移動を回転運動に変換するギア部と、該ギア部に連結し前記回転運動を前記情報読取手段の直線運動に変換する変換手段とを有することを特徴とする。
【0037】
また、前記変換手段はリードスクリューを有することを特徴とし、更に、前記変換手段はベルトを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように本発明によれば、小さな読取対象に対しては装置を片手で掴んで媒体に置き、読取対象を透視部から目視で読取範囲と読取方向の位置合わせを行い、その後任意の指で操作手段を短い移動量のみ押付ける操作により、媒体近傍に特別なスペースを要せずに、手動による装置全体を移動しての走査を必要としない読取走査を行う情報読取装置を提供できる。
【0039】
また、操作手段を早く押す、早い読取操作においても、情報読取手段の復路時に読み取りを行うことで、読取処理能力を超えることのない走査が可能な、情報読取装置を提供することができる。
【0040】
更に、読取手段を初期状態に戻す専用作業を必要としないと共に、操作手段の移動を検出して読取開始又は終了を行うことで、読取開始指示スイッチを操作する専用操作を要しない装置を提供できる。
【0041】
また、大きな読取対象に対しては手動走査が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1乃至図7は本発明の第1の実施の形態に係る情報読取装置の基本形態を説明する為の図であり、図1は本発明の特徴を有する情報読取装置の斜視図、図2は本装置を媒体100の読取対象19に対する読み取り開始位置に配置した状態における、本装置の内部構成を説明する為の、他の角度から見た斜視図で、筐体1と透視部3を透視化している。
【0044】
図1において、1は本装置の筐体、2は本発明の特徴の一つである操作手段で、操作者の指による媒体100側への押付け操作により、移動可能に支持されている。3は透視部、4は大きい読取対象に対し装置を移動させながら読み取る場合に使用する読取スイッチ、5は弾性部材を示す。
【0045】
図2において、操作手段2はフレーム6の6a部にて媒体100に対して上下方向移動が可能に支持されている。操作手段2はギア10aと噛合うギア形状を有する操作伝達部2aを有し、操作手段2の移動をギア10aを含むギア部10にて回転運動に変換する。ギア10aの回転はギア部10による数段増速後、リードスクリュー7と同軸のギア10bに伝達され、リードスクリュー7を回転運動させる。
【0046】
8は光学光源と後述する読取センサ8bを内蔵した情報読取手段で、リードスクリュー7の溝7aに飛び込ませた突起8aにより、リードスクリュー7の回転運動を情報読取手段8の直線運動に変換する。
【0047】
以上の操作手段2の移動をギア部10の回転運動を介して情報読取手段の直線運動に変換する手段が、本実施の形態における変換手段を示す。
【0048】
尚、本実施の形態で示したリードスクリュー7の代わりにベルトを採用する手段も有効である。
【0049】
情報読取手段8は媒体100と平行に配置した駆動軸13aと13bの軸方向に移動可能に支持されており、操作手段2の移動方向とは異なる移動方向に移動する。これが本実施の形態における移動手段を示す。
【0050】
また、情報読取手段8は媒体100と接して回転するローラ12と、ローラ12の回転を増速伝達するギア部9と、ギア部9の回転が最終的に伝達されるエンコーダ15と、その回転を検出するセンサ16を有している。
【0051】
以上の基本構成を基に、操作手段2の移動に基づく情報読取手段8の移動を、図2に加えて図3乃至6を用いて更に詳しく説明する。
【0052】
図3は図2の状態における本装置を媒体100の垂直方向から見た図を示す。また、図5は図3に示す装置の手前方向から見た側面図で、フレーム6とリードスクリュー7を透視化している。
【0053】
まず、図3を用いて読取対象19に対する本装置の読み取り開始位置への配置方法を説明する。
【0054】
同図において、読取対象19が点線で外周を示した透視部3の外周枠内配置されると、操作者は透視部3を介して読取対象19を略上方から目視で確認することができる。本実施の形態においては、情報読取手段8の有する読取センサ8bの主走査読取方向(図面上下方向)の有効読み取り幅を情報読取手段8に設けた溝8cと8dにより把握できると共に、情報読取手段8の移動による走査範囲を、情報読手段8の右端部とフレーム6に設けた溝6bにより把握でき、操作者は読取対象19をそれらから形成される範囲内に、駆動軸13a又は13bに平行になる様に配置するだけで良い。
【0055】
上述した溝8c、8d、6bによる有効読取幅及び走査範囲の把握が本発明における読取範囲明示手段を示し、駆動軸13a又は13bが移動方向明示手段を示す。
【0056】
尚、溝8c、8dの代わりに、点線で示した少し長めの突起8e等を設けると、読み取り走査方向を読取対象19近傍にてより良く把握することができる、他の読取範囲明示手段、及び移動方向明示手段の実施の形態となる。
【0057】
従来技術による通常のハンディスキャナでは読取対象の手前で装置の位置合わせを行うのに対し、本実施の形態では読取対象全体にて読取範囲及び読取方向の位置合わせができるので、[背景技術]の章で説明した読取対象に対して斜めに走査することが限りなく少なくなる。もちろん、図9及び10にて説明した従来技術では読取対象を目視不可能の為、同様の位置合わせを行うことはできない。
【0058】
尚、本実施の形態においては、透視部3を筐体1の上面部に設けた例を示している。この透視部3は筐体1と一体、又は他の部材のいずれでもかまわない。また、本実施の形態では上面の面積が比較的小さい操作手段2を例に上げているが、筐体1の上面全面を覆う大きな上面の操作手段も考えられる。その場合には、操作手段上面部にも透視部を設けることにより、読取対象を、透視部を介して目視可能にすることができる。
【0059】
読取対象19の位置合わせ終了後、操作者は操作手段2を、図5における第1の位置Wから押付け終了位置の第2の位置Xへ押付ける。その押付け操作により、情報読取手段8が図3及び図5における初期位置Yから位置Zまで移動し、その間に読取センサ8bにて読取対象19の読み取りを行う。
【0060】
その操作手段2の第1の位置Wから第2の位置Xへの移動量を増速伝達して情報読取手段8の初期位置Yから位置Zへの移動に変換している為、第1の位置Wと第2の位置X間の距離は、情報読取手段8の移動距離よりも短くできる。
【0061】
また、情報読取装置8の移動に伴い媒体100と接しているローラ12が回転する。その回転はエンコーダ15に増速伝達され、センサ16はエンコーダ15の有するスリットを逐次検出して情報読取手段8の走査方向の位置信号を出力する。これが本実施の形態における位置信号出力手段を示し、上述した情報読取手段8の初期位置Yから位置Zへの移動に伴う信号出力が、往路位置検出手段である。
【0062】
尚、弾性部材14a及び14bは、リードスクリュー7の溝7aに飛び込んでいる突起8aを、溝7aの図3における左側内側面に当節させる為に情報読取手段8を押付けており、リードスクリュー7の回転に伴う情報読取手段8の移動時に、溝7aと突起8a間に発生する隙間分の情報読取装置8のガタ付きを防止している。
【0063】
図4は情報読取手段8が位置Zまで移動した状態の媒体100の垂直方向から見た図、図6は同状態における装置の手前方向から見た側面図を示し、読取対象19に対する読み取り終了状態を示している。
【0064】
読み取り終了後、操作手段2に対する押付けを解放すると、操作手段2は弾性部材5の反力により初期位置に復帰する。その復帰移動に伴い、ローラ12等及びリードスクリュー7を逆回転させ、情報読取手段8を初期位置に復帰させる。
【0065】
その復帰時に逆回転するローラ12によるエンコーダ15の回転をセンサ16にて検出し、情報読取手段8の復路方向への走査位置を逐次検出しつつ、情報読取手段8にて読取対象19を逆方向から読み取ることができる。その情報読取手段8の復帰移動における位置信号出力が、復路位置出力手段である。
【0066】
通常の読み取りは操作手段2の押付け操作による読取手段8の初期位置Yから位置Zへの移動時に読み取りを行い、押付け解放により、単にそれらを初期位置に復帰させれば良い。
【0067】
操作手段2の移動距離が短いので、従来技術と比較するとその移動が不安定、例えばその移動速度が途中で極端に変化する等、に伴う読取手段8の不安定な移動が発生し難いことが、本発明の効果の一つである。しかし、操作者の指で操作手段2を移動させる為、不安定な動きがないとは限らない。また、操作手段2の移動距離が短い為、非常に早い速度で操作手段2を押付ける傾向がある。それに対し、操作手段2を解放した復帰時に読み取りを行うと、情報読取手段8の移動は操作手段2により付勢された弾性部材5の反力による定められた一定の移動を行う為、人為的な不安定移動要素がなく、より安定した読み取りを行うことができる。
【0068】
更に、復帰する情報読取手段8の移動速度を一定化する手段、例えば情報読取手段8の移動を支持する駆動軸13a及び13bの初期位置Yと位置Z間の外周面の摩擦係数を、復帰する情報読取手段8が読取走査範囲内において定速移動する様に、弾性部材14a、14b等の弾性係数との関係を考慮に入れて、連続的に漸変させる手段を施す等、を付加すると、更に安定した読み取りとなる。
【0069】
ただし、往路時に読み取りを行う場合は往路移動終了直後から読取処理を開始できるので比較的早く読み取り結果を得ることができるのに対し、復路に読み取りを行う場合は、往路に読み取りを行う場合より、読み取り結果を得るまでの時間を要する可能性がある。
【0070】
そこで、筐体1に位置出力手段の往路又は復路を選択するスイッチを設けることにより、操作者の希望する読取方法を選択することができる。
【0071】
また、往路読み取り終了後の処理結果、何らかの読取不良が発生した場合のみに復路時に読み取りを行う方法も可能である。
【0072】
尚、本実施の形態においては弾性部材を操作手段2部と、駆動軸13a、13b部の両側に設けた例を示したが、弾性部材の弾性係数によってはその片側のみに設けることも可能である。
【0073】
次に読取開始、終了指示方法について説明する。
【0074】
図2、5又は6において、操作手段2の下端部にはスリットを有し、そのスリット近傍のセンサ11はそのスリットを検知することで操作手段2の移動を検出しており、その検出信号を用いて読取開始、終了の指示を行う。
【0075】
その方法を、図7を用いて詳しく説明する。図7は操作手段2とセンサ11を抽出した図で、(A)は操作手段2が第1の位置Wの状態、(B)はそれが第2の位置Xに押された状態を示している。
【0076】
(A)において、操作手段2の下端部にはスリット2b、2cを有し、下側に配置されたスリット2bはセンサ11の読取部11aの上側に配置されている。その状態から操作手段2が下側に押されると、情報読取手段8の読取センサ8bが読取対象19の端部に行き着く前に読取部11aがスリット2bを検出して読取開始信号を出力する。その後更に操作手段2を下降移動させ、読取対象19に対する読み取りを終了すると、読取部11aがスリット2cを検出して読取終了信号を出力する。その後、操作手段2が更に下降移動し、(B)の状態になる。以上が本実施の形態における読取ON/OFF信号出力手段である。
【0077】
次に操作手段8の復路走査時における読取ON/OFF信号出力手段を説明する。
【0078】
(B)の状態から操作手段2に対する押付けを解放すると、操作手段2は上昇移動し、操作手段8の読取センサ8bが読取対象19の端部に行き着く前に読取部11aがスリット2cを検出して読取開始信号を出力し、読取対象19への読み取りを終了後にスリット2bを検出して読取終了信号を出力する。
【0079】
本実施の形態では操作手段2の移動を検出する方法を採用したが、情報読取手段8の移動を検出する方法によっても同効果を得ることができる。
【0080】
次に大きな読取対象に対して手動で装置を動かす、手動走査による読み取りについて、図1、図2及び図3を参照して説明する。
【0081】
図2と図3に示した読取対象19は透明部3内で目視可能な、操作手段2の移動に伴う情報読取手段8の読取範囲内に入る大きさであるので、操作手段2への押付け操作で読み取ることができるが、読取範囲を越えた大きさの読取対象に対しは、同操作で読取対象全体を読み取ることができない。
【0082】
そのような場合は、まず情報読取手段8の装置内での移動を禁止する。その方法は、本実施の形態のように操作者が操作手段2を押さない手段が有効かつ簡単な方法であるが、筐体1に操作手段8の動きをロックさせるスイッチを設け、それを操作する方法も有効である。
【0083】
その後、大きな読取対象の左端部を、図3における読取対象19の左端部と同位置に合わせて位置合わせを行った後、読取スイッチ4を押してその下端部に配置されたセンサ17をON状態として読取開始の信号を出力する。その状態にて装置全体を媒体上を移動すると、媒体に接して回転するローラ12に伴うエンコーダ15の回転を検出して情報読取手段8の位置信号を逐次出力しつつ、従来技術の通常のハンディスキャナと同様の読み取り走査を行うことができる。
【0084】
読み取り終了後は読取スイッチ4を再度押して、読み取りを終了する。
【0085】
(第2の実施の形態)
図8は本発明の第2の実施の形態に係わる情報読取装置を説明する為の部分透視斜視図である。
【0086】
同図において、102は操作手段で第1の実施の形態同様に上下方向に移動してリードスクリュー107の回転を介して情報読取手段108を移動する。
【0087】
第1の実施の形態と異なり、本実施の形態においては情報読取手段108は媒体と接して回転するローラと、その回転が伝達されて回転するエンコーダを有していない。その代わりにフレーム106にリニア状にスリット等の認識パターンを有する帯状体21を備え、同認識パターンを検知するセンサ22が情報読取手段108に保持されており、情報読取手段108の移動時の位置信号を出力する。
【0088】
本実施の形態においては媒体と接して回転するローラを有さないので、情報読取装置108の装置内の移動による読取範囲を越えた読取対象を読み取ることはできないが、媒体と接して動く部品がない為、媒体を読取走査時に傷をつけることがなく、写真等の読み取りに適している。
【0089】
また、本実施の形態においては媒体に接する底面プレート23を設けることができるので、その底面プレート23に透視部24を設け、その枠にて情報読取手段108の読取範囲と移動方向を明示することにより、より読取対象に近い位置での各々の明示を行うことができると共に、底面プレート23により底面部からのごみ等の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施の形態に係わる装置の斜視図
【図2】第1の実施の形態に係わる装置の内部構造を説明する為の斜視図
【図3】第1の実施の形態の読取対象に対する位置合わせと情報読取手段の移動を説明する為の、媒体垂直方向から見た部分透視図
【図4】第1の実施の形態の読取終了状態を説明する為の、媒体垂直方向から見た部分透視図
【図5】図3に示す状態を手前方向から見た側面図
【図6】図4に示す状態を手前方向から見た側面図
【図7】操作手段移動による読取開始又は終了指示する手段を説明する為の図
【図8】第2の実施の形態に係わる装置の斜視図
【図9】従来技術装置の側面透視図
【図10】操作手段を右側に引っ張っている途中の側面透視図
【符号の説明】
【0091】
1 筐体
2 操作手段
3 透視部
4 読取スイッチ
5 弾性部材
7 リードスクリュー
8 情報読取手段
10 ギア類
11 センサ
12 ローラ
13a 駆動軸
13b 駆動軸
14a 弾性部材
14b 弾性部材
15 エンコーダ
16 センサ
17 センサ
19 読取対象
21 帯状体
22 センサ
100 媒体
102 操作手段
108 情報読取手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象となる媒体上に置いて媒体の情報を光学的に読み取る情報読取装置において、前記媒体上の情報を読み取る情報読取手段と、第1の位置と第2の位置との間を移動可能な操作手段と、前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動に基づき、前記操作手段の移動方向とは異なる移動方向に前記情報読取手段を移動させる移動手段と、前記情報読取手段の移動に基づき、位置信号を出力する位置信号出力手段とを有することを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動距離は、該移動に基づく前記情報読取手段の移動距離よりも短いことを特徴とする請求項1記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動操作後に該操作手段への操作を解放すると、該操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段と、概復帰させる手段に基づき、前記情報読取手段を初期位置に復帰させる手段とを有することを特徴とする請求項1又は2記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記情報読取手段を前記初期位置に復帰させる手段は前記情報読取手段を定速復帰させる手段を有することを特徴とする請求項3記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段は弾性部材を有し、該弾性部材は前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動に応じて付勢されることを特徴とする請求項3又は4記載の情報読取装置。
【請求項6】
前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段は、付勢された前記弾性部材の反力によることを特徴とする請求項5記載の情報読取装置。
【請求項7】
前記位置信号出力手段は、前記操作手段の前記第1の位置から前記第2位置への移動に伴う前記情報読取手段の移動に応じて位置信号を出力する往路位置出力手段と、前記情報読取手段の前記初期位置への復帰移動に応じて位置信号を出力する復路位置出力手段とを有することを特徴とする請求項3乃至6記載の情報読取装置。
【請求項8】
前記往路位置出力手段と前記復路位置出力手段を選択的に採用する手段を有することを特徴とする請求項7記載の情報読取装置。
【請求項9】
前記位置信号出力手段は、前記情報読取手段に搭載され前記移動手段に従い前記媒体に接して回転するローラと、該ローラの回転に応じて前記情報読取手段の移動方向の位置信号を出力する手段とを有することを特徴とする請求項1乃至8記載の情報読取装置。
【請求項10】
前記位置信号出力手段は、認識パターンを有する帯状体と、前記情報読取手段に搭載されて前記認識パターンを検知するパターン検知手段とを有することを特徴とする請求項1乃至8記載の情報読取装置。
【請求項11】
前記情報読取手段の移動を禁止する手段と、該禁止状態において、前記ローラの回転に応じて前記情報読取手段の位置信号を出力する手段を有することを特徴とする請求項9記載の情報読取装置。
【請求項12】
前記操作手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる手段、前記移動手段、前記操作手段を前記第2の位置から前記第1の位置へ復帰させる手段、又は前記情報読取手段を初期位置に復帰させる手段、の何れかの手段に基づき、前記情報読取手段の読み取りの開始又は終了の信号を出力する読取ON/OFF信号出力手段を有することを特徴とする請求項3乃至11記載の情報読取装置。
【請求項13】
前記情報読取手段を内蔵する筐体と、該筐体上面部又は前記操作手段の上面部の何れか又は両方に透視部を有し、装置の略上方から前記筐体の底面部に配置された前記媒体の読取対象を、前記透視部を介して目視可能であることを特徴とする請求項1乃至12記載の情報読取装置。
【請求項14】
前記情報読取手段の読取範囲明示手段を有し、該読取範囲内の前記読取対象を装置の略上方から目視可能であることを特徴とする請求項13記載の情報読取装置。
【請求項15】
前記情報読取手段の移動方向明示手段を有し、概明示された移動方向と前記読取対象を装置の略上方から目視可能であることを特徴とする請求項13又は14記載の情報読取装置。
【請求項16】
前記操作手段の前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動を伝達する操作伝達部と、該操作伝達部と噛合い前記移動を回転運動に変換するギア部と、該ギア部に連結し前記回転運動を前記情報読取手段の直線運動に変換する変換手段とを有することを特徴とする請求項1乃至15記載の情報読取装置。
【請求項17】
前記変換手段はリードスクリューを有することを特徴とする請求項16記載の情報読取装置。
【請求項18】
前記変換手段はベルトを有することを特徴とする請求項16記載の情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−202029(P2006−202029A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12793(P2005−12793)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】