説明

意匠性塗膜形成方法及び塗膜構造

【課題】
多彩模様塗料を用いた意匠性に優れた塗膜形成方法及び塗膜構造を提供する。
【解決手段】
光輝性顔料を含む塗料(I)を塗装して形成される光輝性塗膜上に多彩模様塗料(II)を塗装して多彩模様塗膜を設けてなる意匠性塗膜形成方法であって、該多彩模様塗料(II)を形成塗膜の隠蔽率が10〜70%の範囲内となるように塗装することを特徴とする意匠性塗膜形成方法。多彩模様塗料が、少なくとも2色の着色塗料粒子(A)並びに塗膜形成成分(B)を含んでなり、着色塗料粒子(A)が反応性官能基(x)を含むものであり、塗膜形成成分(B)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多彩模様塗料を用いた意匠性塗膜形成方法及び塗膜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
分散媒体中に粒状ゲルを安定に分散させた塗料として例えば多彩模様塗料が良く知られている。多彩模様塗料とは1回の塗装で、2色以上の多彩な模様が得られる塗料であり、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0003】
多彩模様塗料を用いた塗装方法として特許文献1には、ビニルトルエン、ブタジエン、スチレン及びアクリル系モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合して得られる重合体、顔料及び有機溶剤とを主成分とする組成物を混合分散してエナメルとし、これを水系分散媒に分散してなるエナメル分散粒子を1種以上含有する多彩模様塗料を塗装し乾燥後、その上に乾燥塗膜の隠蔽率が0.5以下であるクリヤー塗料を塗装する多彩模様塗装仕上げ方法が記載されている。
【0004】
かかる塗装仕上げ方法によれば、屋外用途においても経時で塗膜の劣化や、模様粒子間の亀裂によるハガレ等を生じることなく、初期の塗膜状態を維持でき、クリヤー塗布によって深みのある仕上がり外観を得ることができるものであるが、多彩模様塗膜が模様粒子の融着によって形成されているので、長期に渡る耐久性には不十分な点が否めなかった。
【0005】
また、特許文献2には、複数色からなる特定粒子径分布の模様色形成分散相粒子と該分散相粒子を粒子状態で分散可能な透明の分散媒を主要構成成分とする自然石調塗料組成物を、下塗層上に塗装することを特徴とする自然石調塗装方法が記載されている。かかる塗装方法によれば、特別な塗装機や熟練した塗装専門家のごとき技量を必要とせずに、自然石調の風合いをかもしだし、ボリューム感あふれる積層塗膜を形成することができるものであるが、該塗装方法では、意匠のバリエーションが少なく、多様化したユーザーの趣向に応えるためには、ユニークな意匠性を発揮する塗膜を形成する塗装システムの開発が必要である。
【0006】
【特許文献1】特開平9−57186号公報
【特許文献2】特開2003−154308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多彩模様塗料を用いた意匠性に優れた塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記した課題について鋭意検討した結果、光輝性顔料を含む塗膜上に多彩模様塗料を特定範囲の隠ぺい率となるように塗装することで、下地の光輝性塗膜に起因するキラキラ感を多彩模様塗膜に適度に付与することができることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、
1. 光輝性顔料を含む塗料(I)を塗装して形成される光輝性塗膜上に多彩模様塗料(II)を塗装して多彩模様塗膜を設けてなる意匠性塗膜形成方法であって、該多彩模様塗料(II)を形成塗膜の隠蔽率が10〜70%の範囲内となるように塗装することを特徴とする意匠性塗膜形成方法、
2. 光輝性顔料を含む塗料(I)が、光輝性顔料を塗料(I)に含まれる樹脂固形分に対して0.01〜100質量%の範囲内で含む1項に記載の意匠性塗膜形成方法、
3. 光輝性顔料を含む塗料(I)が、着色顔料をさらに含む1項または2項に記載の意匠性塗膜形成方法、
4. 光輝性顔料を含む塗料(I)が、紫外線吸収剤及び/または光安定化剤をさらに含む1項ないし3項のいずれか1項に記載の意匠性塗膜形成方法、
5. 多彩模様塗料(II)が、着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)を含むことを特徴とする1項ないし4項のいずれか1項に記載の意匠性塗膜形成方法、
6. 着色塗料粒子(A)が反応性官能基(x)を含有し、塗膜形成成分(B)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有することを特徴とする5項に記載の意匠性塗膜形成方法、
7. 着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含有し、着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)がヒドラジン誘導体を含有することを特徴とする5項または6項に記載の意匠性塗膜形成方法、
8. 1項ないし7項のいずれか1項の意匠性塗膜形成方法により得られる意匠性に優れた塗膜構造、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の意匠性塗膜形成方法によれば、光輝性顔料を含む塗膜上に特定の多彩模様塗膜が設けられているので、見る角度や方向、光の照射方法などによって変化に富む意匠性を発揮することができる。本発明の意匠性塗膜を正面からみると、多彩模様塗膜がその下に塗装された塗膜の光輝性顔料によってキラキラ輝いているように見え、奥行きのあるバリエーションに富んだ外観とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の意匠性塗膜形成方法に適用される被塗面としては、特に制限されるものではなく例えば、石膏ボード、コンクリート壁、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などを挙げることができる。
【0011】
本発明方法に使用される光輝性顔料を含む塗料(I)は、光輝性顔料を含むものであれば、クリヤー塗料であっても、着色塗料であっても良い。(以下光輝性塗料(I)と略すことがある)。
【0012】
光輝性顔料としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはアルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;マイカ、金属酸化物コーティング雲母粉、金属酸化鉄コーティングアルミナフレーク、金属酸化物コーティングシリカフレーク、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
上記光輝性塗料(I)中に含まれる光輝性顔料の量としては、光輝性顔料の種類によって適宜調整できるが、一般には光輝性塗料(I)中に含まれる樹脂固形分に対して0.01〜100質量%、特に0.2〜70質量%の範囲内にあると、光輝性塗膜がその上に設けられた多彩模様塗膜にキラキラ感を適度に付与させることができ、好適である。
【0014】
上記光輝性塗料(I)には、光輝性顔料の他に着色顔料や体質顔料等を加えてもよい。
【0015】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料などが挙げられる。
【0016】
体質顔料としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられる。
【0017】
これらの着色顔料や体質顔料は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0018】
上記光輝性塗料(I)に着色顔料を使用する場合、その配合量としては、光輝性塗料(I)に含まれる樹脂固形分を基準として1〜200質量%、特に5〜150質量%の範囲内にあると、光輝性顔料によるキラキラ感と着色顔料による色彩とその上に設けられた多彩模様塗膜が融合することによって、多彩模様塗膜の内部からキラキラ輝き且つ奥行きのある外観を発揮することができ、好適である。
【0019】
光輝性塗料(I)に含まれる樹脂成分としては、従来公知のバインダー成分として知られているものを制限なく使用でき、架橋型であっても非架橋型であってもよく、また、有機溶剤型であっても水系であってもよい。その樹脂種には特に制限はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0020】
上記光輝性塗料(I)に含まれる樹脂成分としては水系の樹脂であると、後述の多彩模様塗料が水系である場合における両者の付着性の点から適している。
【0021】
また、上記光輝性塗料(I)は、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤をさらに含むことが適している。
【0022】
これにより光輝性塗膜の耐候性向上に伴い、本発明の塗装方法により得られる意匠性塗膜の耐久性をより一層高める効果がある。
【0023】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−ト、4−t−ブチルフェニルサリシレ−トなどのサリチル酸誘導体;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレ−ト、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノ−ルモノベンゾエ−ト、2,4−ジベンゾイルレゾルシノ−ル、4,6−ジベンゾイルレゾルシノ−ル、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのベンゾトリアゾ−ル系及びその他(シュウ酸アニリド、シアノアクリレ−トなど)の化合物などが挙げられる。
【0024】
光安定剤としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t-ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ビス−(2,2´,6,6´−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバテ−ト、4−ベンゾイルオキシ−2,2´,6,6´−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0025】
上記紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、単独で使用してもよいし、適宜選択して組み合わせて使用することもできる。
【0026】
上記紫外線吸収剤の使用割合は、光輝性塗料(I)中に含まれる樹脂固形分に対して0.1〜5.0質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%の範囲内が好適であり、上記光安定剤の使用割合は、光輝性塗料(I)中に含まれる樹脂固形分に対して0.1〜5.0質量%、好ましくは0.2〜3.0質量%の範囲内にあることが好適である。
【0027】
上記光輝性塗料(I)は、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、界面活性剤、造膜助剤、粘性調整剤、中和剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、ホルムアルデヒド吸着剤等の塗料添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0028】
上記光輝性塗料(I)は、それ自体既知の塗装手段を用いて塗装することができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。また、ローラーを使用する場合は、ウールローラー、砂骨ローラー等を使用することができる。
【0029】
上記光輝性塗料(I)の塗布量は、使用する光輝性塗料の組成や多彩模様塗膜の状態によって変えることができるが、通常塗料固形分として10〜500g/m、好ましくは20〜350g/mの範囲内に調整されることが望ましい。
【0030】
形成される塗膜の乾燥は、用いた塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0031】
本発明方法では、上記で得られた光輝性塗膜上に、多彩模様塗料(II)を形成塗膜の隠ぺい率が10〜70%、好ましくは20〜65%の範囲内となるように塗装することを特徴とする。
【0032】
本発明において光輝性塗膜上に設けられる多彩模様塗膜はそれ自体の隠ぺい率が上記範囲にあることが重要であって、塗布量、多彩模様塗膜を形成するための多彩模様塗料の材質等は任意に選択することができる。
【0033】
隠蔽率(%)を算出するための試験片の作成は、JIS K 5600 4−1の方法B(隠ぺい率試験紙)に記載の隠ぺい率試験紙を平らなガラス板の上に水平に固定し、その上に該多彩模様塗料を塗布し、塗面を上向きに水平にし、気温23℃、相対湿度60%の条件下48時間乾燥させることによって行う。
【0034】
本明細書において隠ぺい率(%)は、JIS K 5600 4−1の方法B(隠ぺい率試験紙)に準じ、試験片(塗布済み隠ぺい率試験紙)の白地(Y)及び黒地(Y)上の箇所を無作為に夫々4箇所選び、その箇所の三刺激値を測定し、平均の三刺激値Y及びYを計算する。その後、Y/Yを100分率で算出した値を隠ぺい率とする。
【0035】
本発明方法においては上記多彩模様塗膜を形成するための多彩模様塗料(II)として、少なくとも2色の着色塗料粒子(A)および塗膜形成成分(B)を含む多彩模様塗料を使用することが、最終的に形成される意匠性塗膜の意匠性と塗膜物性のバランスの点から適している。
【0036】
上記着色塗料粒子(A)としては、材料、製造方法など特に制限されるものではなく従来公知のものを使用でき、水系のものであっても溶剤系のものであってもよいが、水系のものであるとよく、例えば、水性樹脂(a1)並びに着色剤(a2)を含んでなる水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に内包してなるものを使用することが適している。
【0037】
上記水性塗料組成物に含まれる水性樹脂(a1)は、着色塗料粒子(A)の耐久性に貢献するものであり、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば上記光輝性塗料(I)中に含まれる樹脂で挙げた樹脂の中から適宜選択して使用することができる。
【0038】
上記水性樹脂(a1)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂(a1)は、着色塗料粒子(A)の製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記水性樹脂(a1)としては、着色塗料粒子(A)の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0040】
かかるアクリル系樹脂としては、重合性不飽和モノマーを共重合することにより得られる樹脂が挙げられ、かかる重合性不飽和モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0042】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤を挙げることができる。
【0043】
アニオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
両イオン性乳化剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0046】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0047】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0048】
上記着色塗料粒子(A)に含まれ得る着色剤(a2)としては、着色顔料及び染料を使用することができる。着色顔料としては、前記光輝性塗料の説明で例示したものの中から適宜選択し、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
他方、染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これら着色剤は、目的とする色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
また、上記着色塗料粒子(A)においては、着色剤(a2)と共に体質顔料を使用することもできる。体質顔料としては、前記光輝性塗料(I)の説明で列記したものの中から適宜選択して、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記着色剤(a2)の配合量は、着色塗料粒子(A)による着色性、比重、耐久性、耐水性などの観点から、水性樹脂(a1)の質量を基準にして、通常0.01〜500質量%、好ましくは0.05〜400質量%の範囲内であることが好適である。
【0052】
上記着色塗料粒子(A)は、例えば、水性樹脂(a1)、着色剤(a2)及び水溶性多糖類を含む水性塗料組成物を、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより得ることができ、それによって、該水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に内包してなる着色塗料粒子を形成せしめることができる。
【0053】
上記水溶性多糖類は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約10g/L(25℃)以上の水溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0054】
水溶性多糖類は、着色塗料粒子(A)の水中での安定性、着色塗料粒子(A)を作製する際の取扱性、着色塗料粒子(A)を含む塗料から形成される塗膜の耐水性などの点から、水性樹脂(a1)及び水溶性多糖類の合計質量を基準として、通常0.1〜7質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0055】
上記水性塗料組成物は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0056】
本発明において、着色塗料粒子(A)を製造するための水性塗料組成物は、例えば、水性樹脂(a1)と着色剤(a2)のペーストと水溶性多糖類の水溶液を、適宜、上記したその他の成分と共に混合することにより調製することができる。
【0057】
水性塗料組成物を粒状ゲル化せしめる際に用いられる金属イオンの供給源となる金属化合物としては、25℃の水100gに0.005mg以上、特に0.08mg以上溶解するものであることが望ましく、例えば、カリウム、ナトリウム等の一価金属や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム等の多価金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、塩化物、硫化物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明の塗装方法においては最終的に形成される意匠性塗膜の耐水性などの点から、上記金属化合物が、水酸化物、酸化物、炭酸塩であることが望ましく、カルシウム塩であるとさらに望ましい。
【0059】
本発明において、金属化合物として、水酸化カルシウムを使用すると意匠性塗膜の耐水性が良好となり特に好適である。
【0060】
上記金属化合物を水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。金属化合物を含有する水性媒体における金属化合物の含有量は、通常0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることが望ましい。
【0061】
上記水性塗料組成物は、上記金属化合物由来の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより着色塗料粒子(A)を形成せしめることができるものであり、この接触は、例えば、注射器の先端から水性塗料組成物を水性媒体中に滴下する方法;水性塗料組成物を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から水性塗料組成物を霧化させ、水性媒体中に滴下する方法;水性塗料組成物を水性媒体中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行なうことができる。
【0062】
上記の如くして形成される着色塗料粒子(A)の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、多彩模様塗料(II)に求められる意匠性に応じて適宜変えることができ、例えば、水性塗料組成物の組成、水性媒体中の金属イオンの濃度、水性塗料組成物の水性媒体への滴下の仕方等により調整することができる。
【0063】
得られる着色塗料粒子(A)は、例えば、適当な大きさの網目をもつ金網などを用いて金属イオンを含有する水性媒体から濾別することができる。
【0064】
上記多彩模様塗料(II)は、多彩模様塗膜の耐水性等の塗膜物性を確保し、且つ本発明の塗装方法により得られる意匠性塗膜としての耐久性などの点から着色塗料粒子(A)に加えて塗膜形成成分(B)を含有することが望ましい。塗膜形成成分(B)は、それ自体成膜性を有するものであり、非架橋型及び架橋型のいずれであってもよい。
【0065】
本発明において、着色塗料粒子(A)との親和性や多彩模様塗料(II)としての貯蔵安定性などの観点から、着色塗料粒子(A)が水性樹脂(a1)を含む場合は塗膜形成成分(B)が水性樹脂(b1)を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0066】
上記水性樹脂(b1)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを使用することができ、例えば、着色塗料粒子(A)における水性樹脂(a1)として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0067】
本発明において、着色塗料粒子(A)内部に含まれる水性塗料組成物と塗膜形成成分(B)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有することが多彩模様塗膜及び本発明の塗装方法により得られる意匠性塗膜の耐水性を向上させることができるので好適であり、着色塗料粒子(A)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(B)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有するものであることが望ましい。
【0068】
上記着色塗料粒子(A)内部に含まれる水性塗料組成物中に含まれる反応性官能基(x)と塗膜形成成分(B)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせであると、常温一液架橋することができ、好適である。
【0069】
上記多彩模様塗料としては、着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が共に反応性官能基(x)を有する樹脂を含有し、着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を有する架橋剤を有する形態であることもできる。
【0070】
本発明方法において、多彩模様塗膜の耐水性、耐候性、多彩模様塗料としての貯蔵安定性などの点から、着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含有し、着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)がヒドラジン誘導体を含有することが望ましい。
【0071】
着色塗料粒子(A)又は塗膜形成成分(B)に含まれ得るカルボニル基と反応させるためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
本発明において塗膜形成成分(B)は、着色塗膜を形成するものであっても或いはクリヤー塗膜を形成するものであってもよく、着色塗膜を形成する場合には必要に応じて着色剤を含むことができる。
【0073】
塗膜形成成分(B)に含ませることができる着色剤としては、着色塗料粒子(A)における着色剤として前記で例示したものの中から適宜選択して使用することができる。また、多彩模様塗膜の乾燥性向上、適度な艶、触感向上などの観点から、該塗膜形成成分(B)に前述の如き体質顔料を配合することが望ましい。
【0074】
塗膜形成成分(B)に着色剤及び/又は体質顔料を配合する場合、その合計配合量は、塗膜形成成分(B)中に含まれる樹脂固形分に対して、通常5〜300質量%、好ましくは10〜200質量%、さらに好ましくは15〜150質量%の範囲内であることができる。
【0075】
上記着色塗料粒子(A)と塗膜形成成分(B)の配合割合は、多彩模様塗膜の隠ぺい率が上記範囲となり、しかも最終的に得られる意匠性塗膜の耐水性などの点から、着色塗料粒子(A)/塗膜形成成分(B)の固形分質量比で、1/99〜60/40、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜45/55の範囲内にすることができる。
【0076】
上記多彩模様塗料(II)は、必要に応じて塗料用添加剤を含ませることができる。
【0077】
該塗料用添加剤としては、中和剤、粘性調整剤、バルーン粒子、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0078】
上記多彩模様塗料(II)の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。また、ローラーを使用する場合は、ウールローラー、砂骨ローラー等を使用することができ、塗布量としては、形成される多彩模様塗膜の隠ぺい率が上記範囲内になるように適宜調整することができるが一般には、塗料固形分として20〜500g/m、好ましくは30〜350g/mの範囲内に調整するとよい。
【0079】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0080】
また、本発明の意匠性塗膜形成方法においては、光輝性塗料を塗装する前に下塗り塗料を塗装し、乾燥させる工程を設けてもよい。
【0081】
ここで用いられる下塗り塗料としては、基材表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、シーラー、下地調整材等の下塗り塗料を使用することができる。また、通常の上塗り塗料を多彩模様塗料の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0082】
かかる下地形成用の上塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0083】
下塗り塗料を塗装する場合、必要に応じて、2種以上の下塗り塗装を重ねて行うこともできる。
【0084】
上記下塗り塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。
【0085】
上記下塗り塗料の塗布量は、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、塗料固形分として通常10〜1000g/m、好ましくは14〜500g/mの範囲内とすることができる。
【0086】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0088】
カルボニル基含有エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「NEWCOL707−SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に、下記組成をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた過硫酸アンモニウム水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルション及び残りの過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「NEWCOL707−SF」 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを8〜9に調整し、固形分55%、平均粒子径170nm、pH8.3のカルボニル基含有エマルション(a1)を得た。
【0089】
白顔料ペーストの製造
製造例2
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間、均一になるまで攪拌することにより白顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注1) 15部
「DISPER BYK−190」(注2) 30部
「SNデフォーマー380」(注3) 15部
「TITANIX JR−605」(注4) 500部
(注1)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤
(注2)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤
(注3)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤
(注4)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白。
【0090】
下塗り塗料の製造
製造例3〜5
1リットルのステンレス容器に、下記表1に示す成分を順次攪拌しながら仕込んだ後、さらに攪拌することにより、下塗り塗料(A−1)〜(A−3)を製造した。
【0091】
【表1】

【0092】
(注5)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注6)「Iriodin 103W2」:商品名、メルク社製、二酸化チタン被覆マイカ顔料、
(注7)「TINUVINE 123」:商品名、チバスペシャルティー・ケミカルズ社製、ピペラジン系光安定剤、
(注8)「TINUVINE 384−2」:商品名、チバスペシャルティー・ケミカルズ社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、
(注9)「アデカノールUH438」:商品名、旭電化社製、ポリエーテルウレタン変性物、粘性調整剤。
【0093】
着色塗料粒子用の水性塗料組成物の製造
製造例6
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、着色塗料粒子用の水性塗料組成物(B−1)を得た。
カルボニル基含有エマルション(a1) 250部
白顔料ペースト(b1) 154部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 4部
「TEXANOL」(注5) 20部
「SNデフォーマー380」(注3) 2部
「アデカノールUH−438」(注9) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部。
【0094】
製造例7〜8
上記製造例6において、配合組成を下記表2に示す配合組成に変える以外は製造例6と同様にして、水性塗料組成物(B−2)〜(B−3)を製造した。
【0095】
【表2】

【0096】
(注10)赤錆顔料ペースト(b2):1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより、赤錆顔料ペースト(b2)を得た。
水 520部
モノエチレングリコール 40部
「スラオフ72N」(注1) 8部
「DISPER BYK−190」(注2) 48部
「SNデフォーマー380」(注3) 16部
酸化鉄 240部。
【0097】
(注11)黒顔料ペースト(b3):1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより、黒顔料ペースト(b3)を得た。
水 520部
モノエチレングリコール 40部
「スラオフ72N」(注1) 8部
「DISPER BYK−190」(注2) 48部
「SNデフォーマー380」(注3) 16部
カーボンブラック 200部。
【0098】
着色塗料粒子の製造
製造例9
4リットルステンレス容器に、0.15%水酸化カルシウム水溶液を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度2,500rpmで攪拌しながら、上記で得られた水性塗料組成物(B−1)650部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、固形分20%の着色塗料粒子(C−1)を得た。
【0099】
製造例10〜11
製造例9において、水性塗料組成物(B−1)の代わりに下記表3に示す水性塗料組成物を使用する以外は上記製造例9と同様にして、着色塗料粒子(C−2)〜(C−3)を得た。
【0100】
【表3】

【0101】
塗膜形成成分用水性クリヤー塗料の製造
製造例12
2リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、固形分50%の水性クリヤー塗料(c1)を得た。
カルボニル基含有エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注5) 50部
水 279部
「タルク SS」(注12) 250部
「SNデフォーマー380」(注3) 10部
「アデカノールUH−438」(注9) 6部
(注12)「タルク SS」:商品名、日本タルク社製、タルク。
【0102】
水性多彩模様塗料の製造
製造例13〜15
500ミリリットルのステレンス容器に、下記表4に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、多彩模様塗料(D−1)〜(D−3)を得た。
【0103】
【表4】

【0104】
試験塗板の作製
実施例1〜4及び比較例1〜2
スレート板(150×70×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させた後、表5に示す各下塗り塗料を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し、気温23℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させ、さらに、その上に、各多彩模様塗料を表5に示す塗布量でスプレー塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して、各試験塗板を得、各試験塗板を下記性能試験に供した。結果を表5に併せて示す。尚表中の隠ぺい率は、JIS K 5600 4−1の方法B(隠ぺい率試験紙)に記載の隠ぺい率試験紙を平らなガラス板の上に水平に固定し、その上に各多彩模様塗料を表5に示す塗布量となるように塗布し、塗面を上向きに水平にし、気温23℃、相対湿度60%の条件下48時間乾燥させることによって隠ぺい率測定用の試験片を作成し、各試験片(塗布済み隠ぺい率試験紙)の白地及び黒地上の箇所を無作為に夫々4箇所選び、その箇所の三刺激値を「CR−300」(商品名、ミノルタ社製、色彩色差計)測定し、平均の三刺激値Y及びYを計算することによって算出した。
【0105】
(*1)塗膜外観
各試験塗板の塗膜を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:多彩模様塗膜の奥底から光輝性顔料の輝きを適度に認めることができ、意匠性に優れる、
△:多彩模様塗膜の奥底から光輝性顔料の輝きを認めることができるが、不十分である、
×:多彩模様塗膜の奥底から光輝性顔料の輝きを認めることができず、単調な意匠性である。
【0106】
(*2)促進耐候性
JIS K 5600の7−7(キセノンランプ法)に準じ、2000時間後の試験塗板を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:艶引けがなく、光輝感が良好、
○:わずかに艶引けが認められるが、光輝感があり、実用レベル、
△:艶引け、光輝感の低下が認められる、
×:光輝感が認められない。
【0107】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料を含む塗料(I)を塗装して形成される光輝性塗膜上に多彩模様塗料(II)を塗装して多彩模様塗膜を設けてなる意匠性塗膜形成方法であって、該多彩模様塗料(II)を形成塗膜の隠蔽率が10〜70%の範囲内となるように塗装することを特徴とする意匠性塗膜形成方法。
【請求項2】
光輝性顔料を含む塗料(I)が、光輝性顔料を塗料(I)に含まれる樹脂固形分に対して0.01〜100質量%の範囲内で含む請求項1に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項3】
光輝性顔料を含む塗料(I)が、着色顔料をさらに含む請求項1または2に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項4】
光輝性顔料を含む塗料(I)が、紫外線吸収剤及び/または光安定化剤をさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項5】
多彩模様塗料(II)が、着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項6】
着色塗料粒子(A)が反応性官能基(x)を含有し、塗膜形成成分(B)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有することを特徴とする請求項5に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項7】
着色塗料粒子(A)及び塗膜形成成分(B)が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含有し、着色塗料粒子(A)及び/又は塗膜形成成分(B)がヒドラジン誘導体を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の意匠性塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項の意匠性塗膜形成方法により得られる意匠性に優れた塗膜構造。

【公開番号】特開2008−114112(P2008−114112A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297714(P2006−297714)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】