感光体および画像形成装置
【課題】画像チリ防止手段として、像担持体と中間転写体の第1転写部に対し像担持体回転方向上流側の空隙に、像担持体上トナーを中間転写体へ吸引しない方向の電界を作用させるようにした感光体および画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】像担持体を帯電する帯電手段と、像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、像担持体上の潜像を潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする。
【解決手段】像担持体を帯電する帯電手段と、像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、像担持体上の潜像を潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスに使用される感光体および画像形成装置において、像担持体上に形成したトナー像を、中間転写体を経て最終転写材に画像を得る画像形成手段としての感光体および画像形成装置に関し、特に前記中間転写体に各色カラー画像を複数回転写した後、最終転写材に転写しフルカラー画像を得る画像形成装置のトナーチリ防止による高画質形成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、近年、中間転写体を用いたカラー画像形成方法が主流になってきている。中間転写体を用いた場合、像担持体から中間転写体、または中間転写体から転写材へと2回のトナーの転写が行われるため、高画質の達成には転写時の画像劣化を防止することが重要になってくる。転写時の画像劣化としては、チリによる乱れが従来問題となっている。
【0003】
これは、転写領域にトナー像が入る以前に像担持体から転写材あるいは中間転写体へ転写(プレ転写)することが主な原因と考えられている。この対策として、転写部の上流側で像担持体と転写体を押圧する部材を設けて転写前の空隙を減少させ、飛散を防止する画像転写装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、この発明では押圧部材にトナーの帯電極性と反対の極性を印加しているため、押圧部材の形成する電界が、トナーに対し転写体方向に飛散させる方向となっている。従って、プレ転写による画像チリは完全には防止できない。
【0004】
また特許文献2には、トナー画像転写時に転写チリの少ない画像形成装置の発明が開示されており、この発明では、転写ニップ部の上流側に像担持体の帯電極性と同極性の電位あるいはゼロ電位となる導電性部材を設けることが提案されている。
この発明によれば、作像に使用されているトナーと同極性のバイアスを印加するので、トナーを積極的に引きつける力は生じにくい。しかし、一般の像担持体において、トナーが付着している画像部の電位は、ゼロではなく、像担持体帯電極性と同極性の残留電位が存在している。従って、前記導電性部材の電位がゼロの場合には、トナーによるチリが発生する。
【0005】
また、電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型電子写真感光体において、電荷輸送層中に光硬化性樹脂と他の樹脂成分とを含有し、電荷輸送層形成時にこの光硬化性樹脂を硬化させ得る波長域の光を格子状に照射して光硬化性樹脂の含有量が未露光部よりも多い部分を格子状に形成し、該格子状露光部分が表面抵抗又は体積抵抗が未露光部分よりも大きい領域となっていることを特徴とする電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
また画像形成装置において、像担持体表面の感光層の電荷発生層を形成する分子の構造を破壊する等して、感光層に像露光に対し電位が減衰しない微小領域を分散して形成した画像形成装置が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
また特許文献5には、導電性基板上に少なくとも感光層を形成してなる電子写真感光体において、感光層が電荷発生領域と電荷輸送領域とからなり、前記電荷発生領域は前記電荷輸送領域に設けられた孔に埋め込まれた構造であることを特徴とする電子写真感光体の発明が開示されている。
【0008】
また特許文献6には、転写チリを抑制でき、さらに経時変化や現像剤のバラツキによらず安定してドットのバラツキを抑えるとともに、粒状性の向上による画像品質の向上を実現できる画像形成装置・画像形成方法の発明が開示されている(図3〜図11など)。
【0009】
また特許文献7には、導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を有する電荷発生層と、少なくとも電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷発生層が微小領域としてドット状に分散されて形成されていることを特徴とする電子写真感光体及びその製造方法の発明が開示されている。また電荷発生層の占有面積率に関する記載がされている。
【0010】
また特許文献8には像担持体上の表面電位が像担持体の光減衰特性に基づく所定倍以上に照射するように設定したことを特徴とする画像形成装置の発明が開示されており、潜像電荷量とその分布の式の関係に関しても記載されている。
【特許文献1】特開平8−166728号公報
【特許文献2】特開平10−186878号公報
【特許文献3】特開平11−258837号公報
【特許文献4】特開平11−338170号公報
【特許文献5】特開2000−231203号公報
【特許文献6】特開2004−109702号公報
【特許文献7】特開2005−099078号公報
【特許文献8】特開2005−091882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、感光体の像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持する感光体および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、前記像担持体は、導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質を少なくとも有する電荷発生層と、電荷輸送物質を少なくとも含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷輸送層が電荷輸送材料と絶縁材料とからなり、前記絶縁材料は前記電荷輸送材料を囲撓する領域として設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感光体において、前記電荷発生層が、微小領域として前記電荷輸送層内にドット状に分散されて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の感光体において、前記電荷発生層の絶縁材料の前記領域は10%以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載の感光体において、前記電荷発生層は誘電体領域を有し、前記誘電体領域の大きさは1画素以下の大きさであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の感光体において、前記ドット状に形成されている前記電荷発生層の占有面積率は90%以下であり、当該占有面積率(X)と露光ビームエネルギJとは下記(1)式を満たすことを特徴とする。
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・(1)
(上記(1)式においてXは電荷発生層の水平断面における占有面積率(%)であり、ηは量子効率であり、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)である。)
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の感光体において、前記像担持体と前記中間転写体とは接触し、前記第1の転写手段による第1の転写時において前記像担持体の回転方向上流側の空隙に対応する中間転写体の部分に、前記像担持体の帯電極性と同極性でかつその絶対値が非画像部電位VLより大きい電圧を印加する手段を有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の感光体を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の感光体および画像形成装置によれば、感光体の像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持することが可能となり、画像チリやドットのバラツキを防止して高画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施形態の感光体および画像形成装置は、画像チリ防止手段として、像担持体と中間転写体の第1の転写部に対し像担持体回転方向上流側の空隙に、像担持体上トナーを中間転写体へ吸引しない方向の電界を作用させるようにした感光体およびこれを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
また、この際に発生する可能性のあるエッジ周辺での放電を防止することにより、経時変動や現像剤のバラツキによらず安定して、ドットのバラツキを抑え粒状性が向上するような高画質な画像形成方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0022】
以下、図面を参照して、本実施形態の感光体および画像形成装置を詳細に説明する。
図1は、転写時の像担持体の非画像部電位と転写チリ(転写トナーチリ)との関係を示す図である。
チリ量は非画像部へ飛散したトナーを画素当たりの面積を示す。非画像部電位とチリ量には相関があり、図1に示すように、非画像部電位が負電位の場合にはトナーチリが少なく、0Vに近づくに従ってチリ量が増加し、画像劣化の原因となっていると考えられている。
【0023】
図1の像担持体非画像部とトナーチリとの関係を述べたが、像担持体の非画像部領域を負電位に保つことによってトナーチリが減少し、高画質な画像を形成することが可能となることを確認した。
【0024】
この現象について詳細な解析を行うため、像担持体における電荷キャリア生成とその輸送の概念図を図2に示し、また、ドット画像の像担持体表面電位と中間転写材表面電位との関係を、像担持体上にドット潜像を形成したときの像担持体表面の電位分布として図3に示す。
【0025】
図2にあるように、像担持体に光が照射されると電荷発生層(CGL)内で、キャリアが生成し、生成したキャリア間のクーロン反発力により拡散しながら、電界にしたがって像担持体表層および基体へと移動し、像担持体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成する。
【0026】
ここで検討した画像形成では、像担持体を負電位に帯電させ、負帯電のトナーを現像させるネガポジ方式を使用して説明している。図3に示すように、感光体表面電位Vは像担持体上の非画像部電位であり、VLは画像部電位であり、潜像の絶対値が小さい部分にトナーが付着する。図3は上向きがマイナスとなるように示してある。マイナスのトナーは、この図の下方(表面電位がより0により近づく方向)に、より多く付着する。ここで、中間転写体電位がGNDの場合、トナーにとって、中間転写体はVLより安定であるため、GND方向にトナーは移動し、中間転写体に付着してしまう。理想的な感光体を考え十分に露光した場合、画像部の電位はGNDとなるのだが、現実的には、例えばベタ時のVLは−100〜−150Vであるためである。具体的には、VLは感光体の種類により決定する初期値と、経時に劣化することによる変化分とで決まる。従って、像担持体と中間転写体との接触部に対し、トナーは像担持体から中間転写体の方へプレ転写してしまう。
【0027】
非画像部の電位が負の方向に大きくなると、図1に示すように、チリが少なくなる傾向であることが確認されている。これは電界からの力がトナー同士の静電反発力に打ち勝つため、チリが抑制されると思われる。
潜像がシャープな場合(実線)に比べて、キャリアの拡散が大きく、ブロードな潜像(点線)になると、画像部近傍や非画像部の電位がより+側へシフトしてしまうため、チリが発生しやすくなってしまう。
よって、像担持体上の非画像部電位をシャープにしかも負電位に保つことにより、チリが抑制され、高画質な画像を形成することが可能となる。
特に、非画像部電位が−側に高いほど電界強度は強くなり、チリが抑制されることは図1からも確認することができ、図1に示されるように、−200V以下の負電位を保持すると、チリが抑制され高画質画像を得ることが可能となる。
【実施例1】
【0028】
次に、本実施形態の感光体および画像形成装置の実施例について、中間転写を搭載した画像形成装置の一例を用いてより詳細に説明する。本実施形態の画像形成装置は、感光体1と、現像装置2と、クリーニング装置3と、帯電装置4と、書き込み装置5と、中間転写体6と、転写部7と、定着部8とを備えている。
【0029】
図4に示すように、1が感光体(左から順に1a,1b,1c,1dの4つの独立した感光体の例)である。感光体回りの作像部はすべてa,b,c,dともに同様に備えているため、以下、aについてのみ説明する。感光体は反時計回りに回転する。4が帯電装置であり、5が書き込み装置であり、2が現像装置であり、3がクリーニング装置である。感光体1上に現像されたトナー像は第1の転写工程として、中間転写体6上に、転写バイアスローラに印加された電圧による電界で引きつけられ転写される。中間転写体6上には更に、b,c,d部でトナーが転写され、中間転写体6上にはフルカラーの画像が形成される。このフルカラー画像は、転写部7で転写材に転写され、転写された転写材は定着部8で加熱されて定着される。
【0030】
電子写真方式において使用された感光体としては、導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛・硫化カドミウム等の無機系光導電材料をバインダ中に分散させたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたもの等が知られているが、コスト、生産性、感光体設計の自由度の高さ、無公害性等から有機系感光体が広く用いられるようになっている。
【0031】
有機系の電子写真感光体としては、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(ポリビニルカルバゾ−ル 2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダ樹脂に代表される顔料分散型、そして電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られている。このうち、感度・耐久性・設計の自由度等から、導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層された機能分離型の感光体が主に使用されている。
【0032】
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、図2に示すように、感光体を帯電した後に光照射すると、光は透明な電荷輸送層を透過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収されて電荷担体(電荷キャリア)を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、さらに電界に従って電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視域から近赤外域に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ、この組み合わせは有用である。
【0033】
しかし、上述の機能分離型感光体の場合、電荷発生層から電荷輸送層の表面までの距離が長いため、キャリアが輸送中に拡散して解像度が低下するという問題がある。すなわち、図5に示すように、キャリアは、電荷輸送層の表面の帯電電位に引かれて輸送されるが、その際に横方向にも拡散されて、1ドットに対応するビームスポット径よりキャリア径が拡がり、隣接する画像ドットの領域に進入することになる。
【0034】
また、露光ビームのエネルギ分布はガウス関数(正規分布)に従うので、広く裾をひくことになり、この裾の部分の光によって発生したキャリアはさらに隣接する画像ドットの領域に拡散、重畳した潜像を形成するため、さらに解像度を低下させる原因となっている。なお図6は、隣接するビームスポット径による露光強度分布説明図であり、露光ビームのエネルギ分布において、600dpi、ビーム径68.9μmの隣接するビーム径による露光強度分布を示した図である。
【0035】
上記したように、キャリアの拡散やビーム形状により非画像部の電位が0Vの方向へシフトしてしまう傾向にある。この現象により像担持体表面の電界が弱まり、トナーのクーロン反発力の方が強くなってくると、画像チリが発生してしまう。
【0036】
本発明者らは、像担持体内部の電荷輸送層の構成が誘電体と絶縁体とからなり、電荷輸送層内に格子状に絶縁領域を設けた像担持体を使用すると、キャリアの拡散を抑制し、非画像部の電位低下を防止し、画像チリを抑制することが可能となることを見いだした。
このように、電荷輸送層内にキャリアの移動を抑制する材料を組み込んで、キャリア拡散を抑制する高機能な像担持体と中間転写ベルトとを組み合わせると、非画像部の電位が負電位に保持され高電界強度を維持するため、トナーチリを抑制し、高画質画像を得ることが可能となる。
【0037】
図7に、電荷輸送層内に格子状に絶縁材料を設けた像担持体の概略図の例を示す。この像担持体を採用した構成例について、転写性能や画像評価を行い、高画質の画像形成手段について検討した。図7に示すように、絶縁領域とCTL(carrier transport layer(charge transport layer))領域は像担持体の膜厚方向に続いて配列されており、格子の断面形状は特に限定されない。すなわち、断面形状は○でも◇でもよく、その形状は問わない。
【0038】
ここで、CTL内のCTL領域の占有率を種々変更して感光体を試作し、細線の良好な再現性の評価を行った。
CTL領域の占有率についてはCTL領域の大きさ(径)を種々に変えた感光体を準備し、画像は、リコー製 Ipsio Color 5100 を用いてこれを改造した実験機を使用した。
【0039】
まず、細線の良好な再現性に注目して、次のような画像出力実験を行った。
細線の良好な再現性については、6cycle/mmのライン画像を再現し、このライン画像を目視によって評価を行った。ライン画像が再現された場合を○、ライン画像が再現されなかった場合を×とした。
【0040】
【表1】
【0041】
CTL領域の大きさを画素(解像できる最小単位)以下にすることにより、ラインの再現性が良好なことを確認した。
【0042】
次に、CTL領域の大きさを20μm程度に固定し、絶縁領域の大きさを変えた感光体を試作し、各感光体においてベタの再現性の確認を行った。画像出力は上記した実験機を用いてベタ画像を出力し、目視およびマクベス反射濃度計を用いてベタID測定(濃度)を行った。良好なものを○とし、抜け等が発生した不良なものを×として評価した。この結果を表2に示す。ここで面積占有率は、画素(解像できる最小単位の大きさ)に占める絶縁領域面積の割合を算出したものである。
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示すように、絶縁領域の面積占有率を10%以下に抑えると、ベタ再現性は満足されることを確認した。
【実施例2】
【0045】
前述したように、機能分離型感光体(積層型感光体)では、フォトキャリアが電荷輸送層を通過する際に電荷輸送層の面方向に拡散されて隣接する画素の領域にまでフォトキャリアの侵入が発生したり、また、ビームスポットの裾が広がることにより非画像部の電荷減少が発生していた。本実施例ではこれらを防止するため、電荷発生層を微小領域としてドット状に分散して形成する。これによって、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させつつ、ライン画像やドット画像でコントラストの十分大きな静電潜像の形成可能な像担持体を使用できる。また、中間転写体を使用してカラー画像を形成する画像形成手段では、トナーのチリが抑制された高画質な画像形成手段を提供することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態を構成する材料は、遮光材料や硬化性材料等を用いないため、これまでの感光体と変わることなく用いることが可能であり、簡便にかつ蓄積された感光体技術を用いることで、高感度・高画質に対応した感光体設計を容易に行うことができる。
【0047】
以下、本実施形態の電子写真感光体を図面に沿って説明する。
図8は、本実施形態の電子写真感光体の層構成を示す図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層37とが積層されている。
【0048】
また図9は、本実施形態の電子写真感光体の層構成を示す他の例であり、図8において導電性支持体31と電荷発生層35の間に中間層33を設けた構成となっている。これらの図に示される電荷発生層は、均一な層として描かれているが、実際は微少領域としてドット状に分散されて形成された構成となっている。
【0049】
すなわち本実施形態は、上記のような導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を有する電荷発生層と、少なくとも電荷輸送物質を含有する電荷輸送層からなり、前記電荷発生層が微小領域としてドット状に分散されて形成されていることを特徴とする電子写真感光体を使用することにより、中間転写体を使用してカラー画像を形成する画像形成手段において、トナーチリが抑制された高画質な画像形成手段を提供するものである。
【0050】
上記本実施形態の効果、および好ましい条件については、孤立ドットの再現性および黒ベタ画像の均一性・濃度を、以下のシミュレーションおよび実験から検討を行った。
シミュレーションの方法は以下の通りである。
【0051】
感光体感度および露光エネルギ量を可変させた時のドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率とトナー付着量の関係をシミュレーションより算出する。
露光後の感光体上の電荷密度分布は、PIDC(光発生放電)曲線を用いることで、大まかな分布は把握できることが知られている。しかし、感光体厚さを変えた場合の、CGL層で生成されたキャリアがCTL層を移動する間に拡散していく影響による潜像分布の違いや、強露光の場合の、CGL近傍での正負キャリアの再結合が発生することによる潜像分布の違いの影響をPIDC曲線で解析する場合には、各条件、各膜厚さごとにPIDCを測定する必要がある。更に、ドット画像時のPIDC曲線を実測することで対応可能であるが、現在の技術では1ドットの感光体上潜像分布や電位分布を測定することは不可能である。
【0052】
よって、感光体内部のキャリア(電荷)の動きは、キャリア間のクーロン反発力、キャリア同士の再結合、感光体内部でのキャリアの移動度を正しく考慮し、シミュレーションによって潜像分布や電位分布を予測する必要がある。
以下に、算出方法を述べる。算出方法は次の3つのステップからなる。
【0053】
1.潜像電荷分布の算出
露光後の感光体上の潜像電荷分布を算出する。感光体内部のキャリア(電荷)の動きは、キャリア間のクーロン反発力、キャリア同士の再結合、感光体内部でのキャリアの移動度(移動速度)の影響をうけるため、これらの影響を全て考慮した潜像形成シミュレーションが必要となる。
潜像電荷分布を算出するために用いた物理モデルは、(1)ガウシアンレーザビーム(ガウス分布のレーザビーム)による露光量計算、(2)電荷キャリアの生成とその輸送過程の計算からなる。
【0054】
本実施形態は、下記式(1)にて示される占有面積率(X)以上であることを特徴とする電子写真感光体に関するものであり、十分にコントラストの大きい静電潜像を形成しながら、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させることができるような、電子写真感光体を得ることができるものである。
η×J ≧ 0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・式(1)
(式(1)においてηは量子効率、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)を示す。)
【0055】
上記式(1)における量子効率ηは下記式(2)によって算出される。
式(2)中、Cは感光体の単位面積当りの静電容量であり、eは電子の素電荷であり、Jは単色光エネルギであり、Vは表面電位であり、tは時間である。量子効率ηは膜厚に依存しない物理量であり、キャリア発生効率(光電変換の量子効率)を表すものである。量子効率ηは、単色光(単位時間あたりのエネルギJ)を露光した際の過渡減衰特性と、感光体静電容量Cからで求められ、電界依存性の式、η=αEnにフィッティングして算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
露光量計算は、静止ビーム単体の露光量分布を下記式(3)と近似し、X方向に点灯時間での移動距離(Vx*点灯時間)分だけ積分することによって算出する。
【0058】
【数2】
【0059】
この露光量がドット状の電荷発生層に照射された場合、電荷発生層が存在する部分だけ露光されたことになるため、電荷発生層のない領域の露光分布を削除し、電荷発生相領域の露光分布だけ取り出し、これを露光分布とした。
次に、OPCにおける(2)の電荷キャリア生成とその輸送の概念図を図3に示す。その過程は、次に示す正負キャリアの連続の式とPoisson方程式によって支配される。
【0060】
【数3】
【0061】
ここで、上記式中、n、μ、E、Γ、R、ε、eはそれぞれ、キャリアの個数密度、移動度、電界強度、単位時間あたりのキャリアの生成量、キャリアの単位時間あたりの再結合係数、誘電率、および電荷素量を示す。また添え字p,nは、それぞれ正負キャリアを示す。
【0062】
電荷キャリアは、CGL層が薄いことを考慮して、層内で一様に生成されると仮定した。このため、キャリア生成量Γは、入射光強度F,量子効率η,CGL層の厚さdと以下の関係で結ばれる。
Γ=β・η・F/(d・hυ)・・・式(7)
上記式(7)中、β、hυは、それぞれ、CGL層内での光の吸収効率、およびレーザビームのフォトン一個あたりのエネルギである。
また上記式(4)、式(5)の右辺第二項目のキャリア再結合項は、正負キャリアが同じ近傍に共存する際に、実験的には生成キャリア量が減少することを説明するために導入されたものである。
【0063】
上記の物理量のうち、光の吸収係数βおよび再結合係数Rは、黒ベタ露光時の表面電位から実験的なフィッティングを行い算出する。
また、量子効率ηは式(2)から得られる値であり、上述したとおりである。
露光前には、均一に感光体が帯電していると仮定し、感光体表面の電荷量を算出する。その後露光領域にキャリアが発生するとして上記の式を計算することによって、露光後の感光体上電荷密度分布を算出する。
【0064】
計算手法としては、np、nn、φに関する差分法を採用した。ここでφは電位をあらわす。電荷キャリアの連続の式(4)、式(5)の時間微分項に対しては時間前進差分を、左辺2項目の移流項に対しては上流差分法を用いる。時間微分項以外は、陰的に評価する完全陰解法を用いる。
【0065】
【数4】
【0066】
ここでδt、n、n+1はそれぞれ、時間ステップ、計算された現在のステップを示すステップ数、および、次の未来のステップを示すステップ数である。
【0067】
こうして得られた非線形代数方程式は、2重の反復法を用いて計算する。まず、この3つの式全体は逐次近似法を用いて計算する。この反復の中で、式(8)、式(9)の各式は、時間微分項に現れる以外の変数、例えば式np以外の量は、既知の反復結果の値を用いて評価し、この式ごとにまず、Successive Over Relaxationに基づいて計算する。ポアソン方程式(10)は、φについても同様の計算を行う。式全体に関する逐次近似法による残差が指定の値になるまで反復計算する。ここでは指定の値を、φ、nn、npそれぞれに指定しており、5×10-3、1×10-2、1×10-2とした。
【0068】
2.現像電界強度分布算出
上記1.で得られた感光体上潜像電荷分布と、現像条件から現像電界強度分布を算出する。現像スリーブと感光体を平行平板で近似し、その間に現像剤(キャリアとトナー)が均一に充填していると仮定する。すなわち、現像剤は平均誘電率をもった均一な誘電層として扱う。ここで平均誘電率は、平均比誘電率と真空の誘電率の積であり、平均比誘電率ε’は
ε’=a・ε1+(1−a)・・・式(11)
で得られる。ここで、ε1はキャリアの比誘電率、aは現像ニップ中でのキャリアの占める体積の割合である。
【0069】
スリーブ表面が現像バイアス電位、感光体下面が0V一定の境界条件、左右の境界は周期境界条件として、ポアソン方程式を解くことで、電位分布が得られる。感光体表面で
E=−gradφ
を解くと、感光体表面の現像電界強度分布が得られる。
【0070】
3.トナー付着量算出
上記2.で得られた電界強度分布と現像条件からトナー付着量を算出する。
【0071】
【数5】
【0072】
ここでkはトナー付着係数であり、vr/vpはスリーブ線速比であり、lは現像ニップ幅であり、Rはキャリア半径であり、ε0は誘電率であり、qはトナー帯電量とする。
上記シミュレーションにより得られた、電荷発生層面積率とトナー付着量の関係を図10に示す。
【0073】
電荷発生層面積率増加に従い、トナー付着量は増加する。また露光エネルギを強くすることにより、トナー付着量は増加する。
ここで、電荷発生層の面積比率xとトナー付着量Mの関係は、
M=ax2+bx+c
で近似できる。
【0074】
ここで、係数a,b,cはPowerの一次式で近似できる。
よって、電荷発生層の面積比率xとトナー付着量Mの関係は、下記式(13)と表すことができる。
M=a(p)X2+b(p)X+c・・・式(13)
【0075】
ここで、黒ベタ画像の再現性および黒ベタ画像に要求される画像濃度に対して、単位面積あたりのトナー付着量として0.45mg/cm2以上必要であることから、2*2dotでのトナー付着必要量は以下の式で計算できる。
トナー付着量M≧0.45mg/cm2=0.45/1000000*(2.54/1200)2*4=8.065E−12(kg)
【0076】
次に、トナー付着量M≧0.45mg/cm2を満たす電荷発生層面積率(DM比率)と量子効率*Powerの関係を図11に示す。
OPC種に依らず、量子効率*Powerと電荷発生層面積率は一定の関係を有することが分かる。これを下記式(14)で示す近似式で示すと、以下のように近似できることが分かる。
【0077】
【数6】
【0078】
なお、ここでは2種のOPCを、解像度を変えて計算してみたが、a=0.01,b=60,c=0.002が得られた。
【0079】
次に、上記においてCGLドット部の面積占有率として100%(通常のドット状にCGLを形成しない感光体)〜60%(前述のシミュレーション結果からベタIDが確保可能な領域)までの範囲で振った感光体ドラムの試作を行い、得られた感光体を用いて画像出力を行い、画質評価を行った。
【0080】
画像出力は、細線の良好な再現および、ハイライト部での安定した濃度変化、の2つの項目に注目して、それぞれ次のような画像出力実験を行った。まず、細線の良好な再現については、下記で説明する解像度1200dpiの画像出力実験機を用いて、図12に記載した線数400線の画像パターンを用いて、目視による評価を行った。
【0081】
400線のライン画像が再現された場合を○、400線のライン画像が再現されなかった場合を×とした。ここで判定の基準として設定した、400線ライン画像の再現の有無は、低コントラスト文字・カラー文字をプリンタで印字したときに、文字部の輪郭(ガタガタした輪郭とならないこと)、文字の色再現性(狙いの色を再現できる)、といった項目を両立して再現するための代用特性として設定したものである。
【0082】
つぎに、ハイライト部での安定した濃度変化については、やはり下記で説明する解像度1200dpiの画像出力実験機を用いて、0〜256階調のパッチ(15mm四方)を含む8bitTiff画像データに対して、ディザ処理(スクリーン線数約170線、スクリーン角45度の、ラインスクリーン型、量子化数2bit、解像度1200dpi)を施した、出力用画像データ(擬似中間調処理後データ)をあらかじめ用意しておき、この出力用画像データを用いて画像出力を行う。出力画像の評価は、ハイライト部分(データ0〜32)の反射濃度(ID値)を分光反射濃度計(X−Rite社製 モデル938)で測色した結果を用いて行った。この反射濃度値と入力データ値との関係に対して1次式近似を行い、R-2の値が0.95以上である場合を○とし、R-2の値が0.95未満である場合を×とした。ここでの判定基準として設定した、ハイライト部分(データ0〜32)での1次式近似のR^2の値が0.95以上、の条件は、階調画像における擬似輪郭とよばれる異常画像が発生することがなく良好に再現するための、代用特性として設定したものである。
【0083】
次に画像出力の際に使用した実験機についての説明を行う。この実験機は、リコー製 Ipsio Color 5100 をベースにして改造した実験機であり、主に書き込みユニットの改造を施したものである。この実験機では、LD素子として4つの発光点(レーザダイオード)を1チップ上にライン状に形成した、4チャンネルLDアレイを使用している。これにより、解像度1200dpiを実現した。また、この実験機では、ビーム径は感光体位置上で40(主走査方向)×40(副走査方向)μmとなるように、光学素子、アパーチャを調整してある。また、レーザビームの静止ビーム光量J(露光ビームエネルギのことを以下静止ビーム光量とする)の測定は、次のようにして行った。静止ビーム光量の測定には、横河電機社製光パワーメータ(モデル3292)を用いた。この光パワーメータのプローブ(受光部)をレーザビームの結像位置(感光体ドラムが配置される位置に相当)に配置して、レーザビームがこのプローブ中心に入射するようにセットした。このような状態で、LD(レーザダイオード)の連続点灯を行いながら、光パワーメータの出力値を記録し、静止ビーム光量とした。これらの測定により、光量を調整して設定した。
【0084】
次に、画像出力実験およびその結果について説明する。電荷発生層の占有面積を100〜60%の範囲で変化させた試作感光体ドラムを作製した。
このように作製した感光体ドラムを使用して、レーザの静止ビーム光量を変えながら、画像出力を行い、上記の2項目(400線ライン画像の再現、ハイライト部分を1次式で近似し、R^2の値が0.95以上)について、評価を行った結果を下記の表3〜4に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
前記ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率が90%より大きい場合には、十分にコントラストの大きな静電潜像を形成することができず、ハイライト部(反射濃度が0〜0.2程度の領域)において急激な濃度変化してしまい、本実施形態に独自の効果が得られない。
【0088】
表3および表4の結果に示すように、電荷発生層の占有面積率が90%以下である場合には、従来技術で記載したような、発明の解決しようとする課題に対して、改善が可能であることが分かる。また、電荷発生層の占有面積率が一定の関係(別途記載)以上である場合には、ベタID=1.4以上を確保することができ、良好な画質を実現することができる。
【0089】
次に、上記の評価を行ったうちの幾つかの条件を用いて、ハイライト部、低コントラスト文字部、ベタ部などの画質要素を含むような総合テストチャートを出力した。結果を表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
表3および表4において、良好な結果を得ることができた条件においては、総合テストチャートの出力結果においても高画質な画像得ることが可能であることが分かる。
よって、前記ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率が90%以下であり、かつ下記式(1)で示される占有面積率(X)以上であることを特徴とする電子写真感光体に関する発明であり、十分にコントラストの大きい静電潜像を形成しながら、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させることができるような、電子写真感光体を得ることができる。
【0092】
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・式(1)
上記式(1)において、ηは量子効率を示し、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)を示す。
【実施例3】
【0093】
実施例1、2で非画像部を負電位に保持することにより、画像チリを抑制し高画質な画像を形成する画像形成手段を得ることができた。
この方式を搭載した実験機において、実際の画像を詳細に確認してみたところ、ドット面積にバラツキが生じ、粒状性が悪い画像となっている場合があった。
【0094】
この現象について考察するため、図13にドット画像の像担持体上電位と、像担持体との接触部より上流側の中間転写体表面電位の関係図を示す。
図13に示した図から分かるように、ドット中央部と中間転写体との電位差と比較して、エッジ部と中間転写体との電位差が大きく、この電位差が大きくなると放電が発生しやすくなる。これにより、エッジ周辺に付着している像担持体上のトナー極性が変わるため転写されにくくなり、ドット面積にバラツキが生じ粒状性を悪化させる原因になっていると考えられる。
【0095】
よって、エッジ周辺での放電を防止するため、次のような構成について検討を行った。図14は転写構成周辺を拡大して示す拡大構成図である。本実施形態の画像形成装置は、感光体1と、現像装置2と、クリーニング装置3と、帯電装置4と、書き込み装置5と、中間転写ユニット(中間転写体)6と、転写部7と、定着部8とを備えている。また、中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61と、張架ローラ62,63,64と、カウンターバイアスブレード65と、中間転写ブレード66と、ベルトクリーニング装置67とを備えている。
【0096】
1が感光体で左から順に1a,1b,1c,1dである。感光体回りの作像部はすべてa,b,c,dともに同様に備えているため、aについてのみ説明する。感光体は反時計回りに回転する。4が帯電装置、5が書き込み装置からのレーザ書込光、2が現像装置、3がクリーニング装置である。感光体上に現像されたトナー像は第1の転写工程として、6の中間転写体上に、転写バイアスローラに印加された電圧による電界で引きつけられ転写される。中間転写体6上には更に、b,c,d部でトナーが転写され、中間転写体6上にはフルカラーの画像が形成される。このフルカラー画像は転写部7で転写材に転写され、転写材は定着部8で加熱されることで定着する。
【0097】
図14において、タンデム画像形成部は、4つのプロセスユニットを有している。1が感光体で左から順に1a,1b,1c,1dであり、a,b,c,dは、使用するトナーの色が互いに異なっているが、その他の構成についてはほぼ同様である。よって、aだけについてその構成を詳述し、他のプロセスユニットの説明については説明を省略する。プロセスユニットは4が帯電装置、5が書き込み装置、2が現像装置、3がクリーニング装置などを有している。像担持体1aは、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動されながら、帯電器4によってその表面が一様帯電し、非画像部電位Vとなる。そして、一様帯電後の表面にレーザ書込光5が照射されて画像部電位VLとなることによって静電潜像が形成される。この静電潜像は、像形成物質たるトナーを用いる現像器2によって現像される。感光体ドラム1a上のトナー像は、中間転写ベルト61上に中間転写される。中間転写工程を経た感光体ドラム1a表面は、当該感光体ドラムのクリーニング装置3によってその表面の転写残トナーがクリーニングされる。他のプロセスユニットでも同様のプロセスが実施されて、Bk,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0098】
一方、上記したように中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61、3つの張架ローラ62,63,64、ベルトクリーニング装置67などを備えている。また、4つのカウンターバイアスブレード65や、4つの中間転写ブレード66、ベルトクリーニング装置67なども備えている。中間転写体たる中間転写ベルト61は、3つの張架ローラ62,63,64に張架されながら、何れか1つの張架ローラが図示しない駆動手段によって回転駆動されることにより、図中時計回りに移動する。4つのカウンターバイアスブレード65a,65b,65c,65dや、4つの中間転写ブレード66a,66b,66c,66dは、それぞれ中間転写ベルト61の裏面(内周面)に当接するように配設されている。そして、同じ記号が付されたカウンターバイアスブレードと中間転写ブレードとが一つの対をなしている。例えば、カウンターバイアスブレード66と中間転写ブレード66とが一つの対をなしているのである。中間転写ブレード66a,66b,66c,66dが中間転写ベルト61を感光体ドラム1a,1b,1c,1d方向にそれぞれ抑えるような配設により、タンデムの画像形成部と中間転写ユニット6との間には、Bk,Y,M,C用の4つの中間転写ニップが形成される。
【0099】
これら中間転写ニップには、図示しない電源によって中間転写ブレード66a,66b,66c,66dにそれぞれ中間転写バイアスが印加されることによって中間転写電界が作用する。ここで、中間転写ニップの中間転写体の回転方向上流側に位置する65はカウンターバイアスブレードである。このカウンターバイアスブレード65には、図示しない電源よりバイアスが印加される。このカウンターバイアスブレード65に像担持体上トナーを中間転写体へ吸引しない方向の電界を作用させることにより、エッジ周辺での放電を防止し、経時変動や現像剤のバラツキによらず、安定してドットのバラツキを抑え粒状性が向上することが可能となった。
【0100】
以上、本実施形態の感光体および画像形成装置によれば、像担持体を帯電する帯電手段と、像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、像担持体上の潜像を潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成手段において、前記静電潜像の地肌部に相当する未露光部の電位が、絶対値で最高値の1/2以上に保持されている画像形成手段により、中間転写体を使用するカラー画像形成方法において、転写プロセスでの画像劣化を抑制し、高画質が画像を提供することが可能になる。
【0101】
また、ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率を90%以下にし、かつ占有面積率と露光エネルギの関係を上述した式(1)の範囲内とすることで、「細線の良好な再現」および「ハイライト部での安定した濃度変化」を両立した画像を得、黒ベタ画像に置いても十分な画像濃度を得ることが可能となる。
さらに、転写前の像担持体上トナーのプレ転写や、転写前の感光体上トナーへの放電を防止し、画像チリを防止し、経時変動や現像剤のバラツキによらず安定した画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態のトナー転写時の像担持体非画像部電位と転写チリとの関係を示す説明図である。
【図2】本実施形態の像担持体における電荷キャリア生成とその輸送のモデルを示す概念図である。
【図3】本実施形態のドット画像の像担持体表面電位と中間転写材表面電位の関係を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る中間転写体搭載の画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る像担持体内のキャリア移動過程を示す概念図である。
【図6】隣接するビームスポット径による露光強度分布説明図であり、露光ビームのエネルギ分布において、600dpi、ビーム径68.9μmの隣接するビーム径による露光強度分布を示した図である。
【図7】本実施形態に係る電荷輸送層内に格子状に絶縁領域を設けた像担持体の透視図である。
【図8】本実施形態に使用する像担持体の一例の構成を示す断面図である。
【図9】本実施形態に使用する像担持体の他の一例の構成を示す断面図である。
【図10】本実施形態に使用する像担持体の電荷発生層面積率とトナー付着の関係を示す説明図である。
【図11】本実施形態におけるトナー付着、電荷発生層面積率、量子効率の関係を示す説明図である。
【図12】本実施形態に使用する400線画像パターンの説明用平面図である。
【図13】本実施形態におけるドット画像の像担持体上電位と上流側の中間転写体表面電位の関係を示す説明図である。
【図14】本実施形態の転写構成周辺を拡大して示す概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1a,1b,1c,1d 感光体
2 現像装置
3 クリーニング装置
4 帯電装置
5 書き込み装置(レーザ書込光)
6 中間転写体
7 転写部
8 定着部
31 導電性支持体
33 中間層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
61 中間転写ベルト
62,63,64 張架ローラ
65 カウンターバイアスブレード
66 中間転写ブレード
67 ベルトクリーニング装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスに使用される感光体および画像形成装置において、像担持体上に形成したトナー像を、中間転写体を経て最終転写材に画像を得る画像形成手段としての感光体および画像形成装置に関し、特に前記中間転写体に各色カラー画像を複数回転写した後、最終転写材に転写しフルカラー画像を得る画像形成装置のトナーチリ防止による高画質形成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、近年、中間転写体を用いたカラー画像形成方法が主流になってきている。中間転写体を用いた場合、像担持体から中間転写体、または中間転写体から転写材へと2回のトナーの転写が行われるため、高画質の達成には転写時の画像劣化を防止することが重要になってくる。転写時の画像劣化としては、チリによる乱れが従来問題となっている。
【0003】
これは、転写領域にトナー像が入る以前に像担持体から転写材あるいは中間転写体へ転写(プレ転写)することが主な原因と考えられている。この対策として、転写部の上流側で像担持体と転写体を押圧する部材を設けて転写前の空隙を減少させ、飛散を防止する画像転写装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、この発明では押圧部材にトナーの帯電極性と反対の極性を印加しているため、押圧部材の形成する電界が、トナーに対し転写体方向に飛散させる方向となっている。従って、プレ転写による画像チリは完全には防止できない。
【0004】
また特許文献2には、トナー画像転写時に転写チリの少ない画像形成装置の発明が開示されており、この発明では、転写ニップ部の上流側に像担持体の帯電極性と同極性の電位あるいはゼロ電位となる導電性部材を設けることが提案されている。
この発明によれば、作像に使用されているトナーと同極性のバイアスを印加するので、トナーを積極的に引きつける力は生じにくい。しかし、一般の像担持体において、トナーが付着している画像部の電位は、ゼロではなく、像担持体帯電極性と同極性の残留電位が存在している。従って、前記導電性部材の電位がゼロの場合には、トナーによるチリが発生する。
【0005】
また、電荷発生層と電荷輸送層とを含む積層型電子写真感光体において、電荷輸送層中に光硬化性樹脂と他の樹脂成分とを含有し、電荷輸送層形成時にこの光硬化性樹脂を硬化させ得る波長域の光を格子状に照射して光硬化性樹脂の含有量が未露光部よりも多い部分を格子状に形成し、該格子状露光部分が表面抵抗又は体積抵抗が未露光部分よりも大きい領域となっていることを特徴とする電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
また画像形成装置において、像担持体表面の感光層の電荷発生層を形成する分子の構造を破壊する等して、感光層に像露光に対し電位が減衰しない微小領域を分散して形成した画像形成装置が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
また特許文献5には、導電性基板上に少なくとも感光層を形成してなる電子写真感光体において、感光層が電荷発生領域と電荷輸送領域とからなり、前記電荷発生領域は前記電荷輸送領域に設けられた孔に埋め込まれた構造であることを特徴とする電子写真感光体の発明が開示されている。
【0008】
また特許文献6には、転写チリを抑制でき、さらに経時変化や現像剤のバラツキによらず安定してドットのバラツキを抑えるとともに、粒状性の向上による画像品質の向上を実現できる画像形成装置・画像形成方法の発明が開示されている(図3〜図11など)。
【0009】
また特許文献7には、導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を有する電荷発生層と、少なくとも電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷発生層が微小領域としてドット状に分散されて形成されていることを特徴とする電子写真感光体及びその製造方法の発明が開示されている。また電荷発生層の占有面積率に関する記載がされている。
【0010】
また特許文献8には像担持体上の表面電位が像担持体の光減衰特性に基づく所定倍以上に照射するように設定したことを特徴とする画像形成装置の発明が開示されており、潜像電荷量とその分布の式の関係に関しても記載されている。
【特許文献1】特開平8−166728号公報
【特許文献2】特開平10−186878号公報
【特許文献3】特開平11−258837号公報
【特許文献4】特開平11−338170号公報
【特許文献5】特開2000−231203号公報
【特許文献6】特開2004−109702号公報
【特許文献7】特開2005−099078号公報
【特許文献8】特開2005−091882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、感光体の像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持する感光体および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、前記像担持体は、導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質を少なくとも有する電荷発生層と、電荷輸送物質を少なくとも含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷輸送層が電荷輸送材料と絶縁材料とからなり、前記絶縁材料は前記電荷輸送材料を囲撓する領域として設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感光体において、前記電荷発生層が、微小領域として前記電荷輸送層内にドット状に分散されて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の感光体において、前記電荷発生層の絶縁材料の前記領域は10%以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載の感光体において、前記電荷発生層は誘電体領域を有し、前記誘電体領域の大きさは1画素以下の大きさであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の感光体において、前記ドット状に形成されている前記電荷発生層の占有面積率は90%以下であり、当該占有面積率(X)と露光ビームエネルギJとは下記(1)式を満たすことを特徴とする。
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・(1)
(上記(1)式においてXは電荷発生層の水平断面における占有面積率(%)であり、ηは量子効率であり、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)である。)
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の感光体において、前記像担持体と前記中間転写体とは接触し、前記第1の転写手段による第1の転写時において前記像担持体の回転方向上流側の空隙に対応する中間転写体の部分に、前記像担持体の帯電極性と同極性でかつその絶対値が非画像部電位VLより大きい電圧を印加する手段を有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の感光体を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の感光体および画像形成装置によれば、感光体の像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持することが可能となり、画像チリやドットのバラツキを防止して高画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施形態の感光体および画像形成装置は、画像チリ防止手段として、像担持体と中間転写体の第1の転写部に対し像担持体回転方向上流側の空隙に、像担持体上トナーを中間転写体へ吸引しない方向の電界を作用させるようにした感光体およびこれを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
また、この際に発生する可能性のあるエッジ周辺での放電を防止することにより、経時変動や現像剤のバラツキによらず安定して、ドットのバラツキを抑え粒状性が向上するような高画質な画像形成方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0022】
以下、図面を参照して、本実施形態の感光体および画像形成装置を詳細に説明する。
図1は、転写時の像担持体の非画像部電位と転写チリ(転写トナーチリ)との関係を示す図である。
チリ量は非画像部へ飛散したトナーを画素当たりの面積を示す。非画像部電位とチリ量には相関があり、図1に示すように、非画像部電位が負電位の場合にはトナーチリが少なく、0Vに近づくに従ってチリ量が増加し、画像劣化の原因となっていると考えられている。
【0023】
図1の像担持体非画像部とトナーチリとの関係を述べたが、像担持体の非画像部領域を負電位に保つことによってトナーチリが減少し、高画質な画像を形成することが可能となることを確認した。
【0024】
この現象について詳細な解析を行うため、像担持体における電荷キャリア生成とその輸送の概念図を図2に示し、また、ドット画像の像担持体表面電位と中間転写材表面電位との関係を、像担持体上にドット潜像を形成したときの像担持体表面の電位分布として図3に示す。
【0025】
図2にあるように、像担持体に光が照射されると電荷発生層(CGL)内で、キャリアが生成し、生成したキャリア間のクーロン反発力により拡散しながら、電界にしたがって像担持体表層および基体へと移動し、像担持体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成する。
【0026】
ここで検討した画像形成では、像担持体を負電位に帯電させ、負帯電のトナーを現像させるネガポジ方式を使用して説明している。図3に示すように、感光体表面電位Vは像担持体上の非画像部電位であり、VLは画像部電位であり、潜像の絶対値が小さい部分にトナーが付着する。図3は上向きがマイナスとなるように示してある。マイナスのトナーは、この図の下方(表面電位がより0により近づく方向)に、より多く付着する。ここで、中間転写体電位がGNDの場合、トナーにとって、中間転写体はVLより安定であるため、GND方向にトナーは移動し、中間転写体に付着してしまう。理想的な感光体を考え十分に露光した場合、画像部の電位はGNDとなるのだが、現実的には、例えばベタ時のVLは−100〜−150Vであるためである。具体的には、VLは感光体の種類により決定する初期値と、経時に劣化することによる変化分とで決まる。従って、像担持体と中間転写体との接触部に対し、トナーは像担持体から中間転写体の方へプレ転写してしまう。
【0027】
非画像部の電位が負の方向に大きくなると、図1に示すように、チリが少なくなる傾向であることが確認されている。これは電界からの力がトナー同士の静電反発力に打ち勝つため、チリが抑制されると思われる。
潜像がシャープな場合(実線)に比べて、キャリアの拡散が大きく、ブロードな潜像(点線)になると、画像部近傍や非画像部の電位がより+側へシフトしてしまうため、チリが発生しやすくなってしまう。
よって、像担持体上の非画像部電位をシャープにしかも負電位に保つことにより、チリが抑制され、高画質な画像を形成することが可能となる。
特に、非画像部電位が−側に高いほど電界強度は強くなり、チリが抑制されることは図1からも確認することができ、図1に示されるように、−200V以下の負電位を保持すると、チリが抑制され高画質画像を得ることが可能となる。
【実施例1】
【0028】
次に、本実施形態の感光体および画像形成装置の実施例について、中間転写を搭載した画像形成装置の一例を用いてより詳細に説明する。本実施形態の画像形成装置は、感光体1と、現像装置2と、クリーニング装置3と、帯電装置4と、書き込み装置5と、中間転写体6と、転写部7と、定着部8とを備えている。
【0029】
図4に示すように、1が感光体(左から順に1a,1b,1c,1dの4つの独立した感光体の例)である。感光体回りの作像部はすべてa,b,c,dともに同様に備えているため、以下、aについてのみ説明する。感光体は反時計回りに回転する。4が帯電装置であり、5が書き込み装置であり、2が現像装置であり、3がクリーニング装置である。感光体1上に現像されたトナー像は第1の転写工程として、中間転写体6上に、転写バイアスローラに印加された電圧による電界で引きつけられ転写される。中間転写体6上には更に、b,c,d部でトナーが転写され、中間転写体6上にはフルカラーの画像が形成される。このフルカラー画像は、転写部7で転写材に転写され、転写された転写材は定着部8で加熱されて定着される。
【0030】
電子写真方式において使用された感光体としては、導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛・硫化カドミウム等の無機系光導電材料をバインダ中に分散させたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたもの等が知られているが、コスト、生産性、感光体設計の自由度の高さ、無公害性等から有機系感光体が広く用いられるようになっている。
【0031】
有機系の電子写真感光体としては、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(ポリビニルカルバゾ−ル 2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダ樹脂に代表される顔料分散型、そして電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られている。このうち、感度・耐久性・設計の自由度等から、導電性支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層された機能分離型の感光体が主に使用されている。
【0032】
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、図2に示すように、感光体を帯電した後に光照射すると、光は透明な電荷輸送層を透過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収されて電荷担体(電荷キャリア)を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、さらに電界に従って電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視域から近赤外域に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ、この組み合わせは有用である。
【0033】
しかし、上述の機能分離型感光体の場合、電荷発生層から電荷輸送層の表面までの距離が長いため、キャリアが輸送中に拡散して解像度が低下するという問題がある。すなわち、図5に示すように、キャリアは、電荷輸送層の表面の帯電電位に引かれて輸送されるが、その際に横方向にも拡散されて、1ドットに対応するビームスポット径よりキャリア径が拡がり、隣接する画像ドットの領域に進入することになる。
【0034】
また、露光ビームのエネルギ分布はガウス関数(正規分布)に従うので、広く裾をひくことになり、この裾の部分の光によって発生したキャリアはさらに隣接する画像ドットの領域に拡散、重畳した潜像を形成するため、さらに解像度を低下させる原因となっている。なお図6は、隣接するビームスポット径による露光強度分布説明図であり、露光ビームのエネルギ分布において、600dpi、ビーム径68.9μmの隣接するビーム径による露光強度分布を示した図である。
【0035】
上記したように、キャリアの拡散やビーム形状により非画像部の電位が0Vの方向へシフトしてしまう傾向にある。この現象により像担持体表面の電界が弱まり、トナーのクーロン反発力の方が強くなってくると、画像チリが発生してしまう。
【0036】
本発明者らは、像担持体内部の電荷輸送層の構成が誘電体と絶縁体とからなり、電荷輸送層内に格子状に絶縁領域を設けた像担持体を使用すると、キャリアの拡散を抑制し、非画像部の電位低下を防止し、画像チリを抑制することが可能となることを見いだした。
このように、電荷輸送層内にキャリアの移動を抑制する材料を組み込んで、キャリア拡散を抑制する高機能な像担持体と中間転写ベルトとを組み合わせると、非画像部の電位が負電位に保持され高電界強度を維持するため、トナーチリを抑制し、高画質画像を得ることが可能となる。
【0037】
図7に、電荷輸送層内に格子状に絶縁材料を設けた像担持体の概略図の例を示す。この像担持体を採用した構成例について、転写性能や画像評価を行い、高画質の画像形成手段について検討した。図7に示すように、絶縁領域とCTL(carrier transport layer(charge transport layer))領域は像担持体の膜厚方向に続いて配列されており、格子の断面形状は特に限定されない。すなわち、断面形状は○でも◇でもよく、その形状は問わない。
【0038】
ここで、CTL内のCTL領域の占有率を種々変更して感光体を試作し、細線の良好な再現性の評価を行った。
CTL領域の占有率についてはCTL領域の大きさ(径)を種々に変えた感光体を準備し、画像は、リコー製 Ipsio Color 5100 を用いてこれを改造した実験機を使用した。
【0039】
まず、細線の良好な再現性に注目して、次のような画像出力実験を行った。
細線の良好な再現性については、6cycle/mmのライン画像を再現し、このライン画像を目視によって評価を行った。ライン画像が再現された場合を○、ライン画像が再現されなかった場合を×とした。
【0040】
【表1】
【0041】
CTL領域の大きさを画素(解像できる最小単位)以下にすることにより、ラインの再現性が良好なことを確認した。
【0042】
次に、CTL領域の大きさを20μm程度に固定し、絶縁領域の大きさを変えた感光体を試作し、各感光体においてベタの再現性の確認を行った。画像出力は上記した実験機を用いてベタ画像を出力し、目視およびマクベス反射濃度計を用いてベタID測定(濃度)を行った。良好なものを○とし、抜け等が発生した不良なものを×として評価した。この結果を表2に示す。ここで面積占有率は、画素(解像できる最小単位の大きさ)に占める絶縁領域面積の割合を算出したものである。
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示すように、絶縁領域の面積占有率を10%以下に抑えると、ベタ再現性は満足されることを確認した。
【実施例2】
【0045】
前述したように、機能分離型感光体(積層型感光体)では、フォトキャリアが電荷輸送層を通過する際に電荷輸送層の面方向に拡散されて隣接する画素の領域にまでフォトキャリアの侵入が発生したり、また、ビームスポットの裾が広がることにより非画像部の電荷減少が発生していた。本実施例ではこれらを防止するため、電荷発生層を微小領域としてドット状に分散して形成する。これによって、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させつつ、ライン画像やドット画像でコントラストの十分大きな静電潜像の形成可能な像担持体を使用できる。また、中間転写体を使用してカラー画像を形成する画像形成手段では、トナーのチリが抑制された高画質な画像形成手段を提供することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態を構成する材料は、遮光材料や硬化性材料等を用いないため、これまでの感光体と変わることなく用いることが可能であり、簡便にかつ蓄積された感光体技術を用いることで、高感度・高画質に対応した感光体設計を容易に行うことができる。
【0047】
以下、本実施形態の電子写真感光体を図面に沿って説明する。
図8は、本実施形態の電子写真感光体の層構成を示す図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層37とが積層されている。
【0048】
また図9は、本実施形態の電子写真感光体の層構成を示す他の例であり、図8において導電性支持体31と電荷発生層35の間に中間層33を設けた構成となっている。これらの図に示される電荷発生層は、均一な層として描かれているが、実際は微少領域としてドット状に分散されて形成された構成となっている。
【0049】
すなわち本実施形態は、上記のような導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を有する電荷発生層と、少なくとも電荷輸送物質を含有する電荷輸送層からなり、前記電荷発生層が微小領域としてドット状に分散されて形成されていることを特徴とする電子写真感光体を使用することにより、中間転写体を使用してカラー画像を形成する画像形成手段において、トナーチリが抑制された高画質な画像形成手段を提供するものである。
【0050】
上記本実施形態の効果、および好ましい条件については、孤立ドットの再現性および黒ベタ画像の均一性・濃度を、以下のシミュレーションおよび実験から検討を行った。
シミュレーションの方法は以下の通りである。
【0051】
感光体感度および露光エネルギ量を可変させた時のドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率とトナー付着量の関係をシミュレーションより算出する。
露光後の感光体上の電荷密度分布は、PIDC(光発生放電)曲線を用いることで、大まかな分布は把握できることが知られている。しかし、感光体厚さを変えた場合の、CGL層で生成されたキャリアがCTL層を移動する間に拡散していく影響による潜像分布の違いや、強露光の場合の、CGL近傍での正負キャリアの再結合が発生することによる潜像分布の違いの影響をPIDC曲線で解析する場合には、各条件、各膜厚さごとにPIDCを測定する必要がある。更に、ドット画像時のPIDC曲線を実測することで対応可能であるが、現在の技術では1ドットの感光体上潜像分布や電位分布を測定することは不可能である。
【0052】
よって、感光体内部のキャリア(電荷)の動きは、キャリア間のクーロン反発力、キャリア同士の再結合、感光体内部でのキャリアの移動度を正しく考慮し、シミュレーションによって潜像分布や電位分布を予測する必要がある。
以下に、算出方法を述べる。算出方法は次の3つのステップからなる。
【0053】
1.潜像電荷分布の算出
露光後の感光体上の潜像電荷分布を算出する。感光体内部のキャリア(電荷)の動きは、キャリア間のクーロン反発力、キャリア同士の再結合、感光体内部でのキャリアの移動度(移動速度)の影響をうけるため、これらの影響を全て考慮した潜像形成シミュレーションが必要となる。
潜像電荷分布を算出するために用いた物理モデルは、(1)ガウシアンレーザビーム(ガウス分布のレーザビーム)による露光量計算、(2)電荷キャリアの生成とその輸送過程の計算からなる。
【0054】
本実施形態は、下記式(1)にて示される占有面積率(X)以上であることを特徴とする電子写真感光体に関するものであり、十分にコントラストの大きい静電潜像を形成しながら、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させることができるような、電子写真感光体を得ることができるものである。
η×J ≧ 0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・式(1)
(式(1)においてηは量子効率、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)を示す。)
【0055】
上記式(1)における量子効率ηは下記式(2)によって算出される。
式(2)中、Cは感光体の単位面積当りの静電容量であり、eは電子の素電荷であり、Jは単色光エネルギであり、Vは表面電位であり、tは時間である。量子効率ηは膜厚に依存しない物理量であり、キャリア発生効率(光電変換の量子効率)を表すものである。量子効率ηは、単色光(単位時間あたりのエネルギJ)を露光した際の過渡減衰特性と、感光体静電容量Cからで求められ、電界依存性の式、η=αEnにフィッティングして算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
露光量計算は、静止ビーム単体の露光量分布を下記式(3)と近似し、X方向に点灯時間での移動距離(Vx*点灯時間)分だけ積分することによって算出する。
【0058】
【数2】
【0059】
この露光量がドット状の電荷発生層に照射された場合、電荷発生層が存在する部分だけ露光されたことになるため、電荷発生層のない領域の露光分布を削除し、電荷発生相領域の露光分布だけ取り出し、これを露光分布とした。
次に、OPCにおける(2)の電荷キャリア生成とその輸送の概念図を図3に示す。その過程は、次に示す正負キャリアの連続の式とPoisson方程式によって支配される。
【0060】
【数3】
【0061】
ここで、上記式中、n、μ、E、Γ、R、ε、eはそれぞれ、キャリアの個数密度、移動度、電界強度、単位時間あたりのキャリアの生成量、キャリアの単位時間あたりの再結合係数、誘電率、および電荷素量を示す。また添え字p,nは、それぞれ正負キャリアを示す。
【0062】
電荷キャリアは、CGL層が薄いことを考慮して、層内で一様に生成されると仮定した。このため、キャリア生成量Γは、入射光強度F,量子効率η,CGL層の厚さdと以下の関係で結ばれる。
Γ=β・η・F/(d・hυ)・・・式(7)
上記式(7)中、β、hυは、それぞれ、CGL層内での光の吸収効率、およびレーザビームのフォトン一個あたりのエネルギである。
また上記式(4)、式(5)の右辺第二項目のキャリア再結合項は、正負キャリアが同じ近傍に共存する際に、実験的には生成キャリア量が減少することを説明するために導入されたものである。
【0063】
上記の物理量のうち、光の吸収係数βおよび再結合係数Rは、黒ベタ露光時の表面電位から実験的なフィッティングを行い算出する。
また、量子効率ηは式(2)から得られる値であり、上述したとおりである。
露光前には、均一に感光体が帯電していると仮定し、感光体表面の電荷量を算出する。その後露光領域にキャリアが発生するとして上記の式を計算することによって、露光後の感光体上電荷密度分布を算出する。
【0064】
計算手法としては、np、nn、φに関する差分法を採用した。ここでφは電位をあらわす。電荷キャリアの連続の式(4)、式(5)の時間微分項に対しては時間前進差分を、左辺2項目の移流項に対しては上流差分法を用いる。時間微分項以外は、陰的に評価する完全陰解法を用いる。
【0065】
【数4】
【0066】
ここでδt、n、n+1はそれぞれ、時間ステップ、計算された現在のステップを示すステップ数、および、次の未来のステップを示すステップ数である。
【0067】
こうして得られた非線形代数方程式は、2重の反復法を用いて計算する。まず、この3つの式全体は逐次近似法を用いて計算する。この反復の中で、式(8)、式(9)の各式は、時間微分項に現れる以外の変数、例えば式np以外の量は、既知の反復結果の値を用いて評価し、この式ごとにまず、Successive Over Relaxationに基づいて計算する。ポアソン方程式(10)は、φについても同様の計算を行う。式全体に関する逐次近似法による残差が指定の値になるまで反復計算する。ここでは指定の値を、φ、nn、npそれぞれに指定しており、5×10-3、1×10-2、1×10-2とした。
【0068】
2.現像電界強度分布算出
上記1.で得られた感光体上潜像電荷分布と、現像条件から現像電界強度分布を算出する。現像スリーブと感光体を平行平板で近似し、その間に現像剤(キャリアとトナー)が均一に充填していると仮定する。すなわち、現像剤は平均誘電率をもった均一な誘電層として扱う。ここで平均誘電率は、平均比誘電率と真空の誘電率の積であり、平均比誘電率ε’は
ε’=a・ε1+(1−a)・・・式(11)
で得られる。ここで、ε1はキャリアの比誘電率、aは現像ニップ中でのキャリアの占める体積の割合である。
【0069】
スリーブ表面が現像バイアス電位、感光体下面が0V一定の境界条件、左右の境界は周期境界条件として、ポアソン方程式を解くことで、電位分布が得られる。感光体表面で
E=−gradφ
を解くと、感光体表面の現像電界強度分布が得られる。
【0070】
3.トナー付着量算出
上記2.で得られた電界強度分布と現像条件からトナー付着量を算出する。
【0071】
【数5】
【0072】
ここでkはトナー付着係数であり、vr/vpはスリーブ線速比であり、lは現像ニップ幅であり、Rはキャリア半径であり、ε0は誘電率であり、qはトナー帯電量とする。
上記シミュレーションにより得られた、電荷発生層面積率とトナー付着量の関係を図10に示す。
【0073】
電荷発生層面積率増加に従い、トナー付着量は増加する。また露光エネルギを強くすることにより、トナー付着量は増加する。
ここで、電荷発生層の面積比率xとトナー付着量Mの関係は、
M=ax2+bx+c
で近似できる。
【0074】
ここで、係数a,b,cはPowerの一次式で近似できる。
よって、電荷発生層の面積比率xとトナー付着量Mの関係は、下記式(13)と表すことができる。
M=a(p)X2+b(p)X+c・・・式(13)
【0075】
ここで、黒ベタ画像の再現性および黒ベタ画像に要求される画像濃度に対して、単位面積あたりのトナー付着量として0.45mg/cm2以上必要であることから、2*2dotでのトナー付着必要量は以下の式で計算できる。
トナー付着量M≧0.45mg/cm2=0.45/1000000*(2.54/1200)2*4=8.065E−12(kg)
【0076】
次に、トナー付着量M≧0.45mg/cm2を満たす電荷発生層面積率(DM比率)と量子効率*Powerの関係を図11に示す。
OPC種に依らず、量子効率*Powerと電荷発生層面積率は一定の関係を有することが分かる。これを下記式(14)で示す近似式で示すと、以下のように近似できることが分かる。
【0077】
【数6】
【0078】
なお、ここでは2種のOPCを、解像度を変えて計算してみたが、a=0.01,b=60,c=0.002が得られた。
【0079】
次に、上記においてCGLドット部の面積占有率として100%(通常のドット状にCGLを形成しない感光体)〜60%(前述のシミュレーション結果からベタIDが確保可能な領域)までの範囲で振った感光体ドラムの試作を行い、得られた感光体を用いて画像出力を行い、画質評価を行った。
【0080】
画像出力は、細線の良好な再現および、ハイライト部での安定した濃度変化、の2つの項目に注目して、それぞれ次のような画像出力実験を行った。まず、細線の良好な再現については、下記で説明する解像度1200dpiの画像出力実験機を用いて、図12に記載した線数400線の画像パターンを用いて、目視による評価を行った。
【0081】
400線のライン画像が再現された場合を○、400線のライン画像が再現されなかった場合を×とした。ここで判定の基準として設定した、400線ライン画像の再現の有無は、低コントラスト文字・カラー文字をプリンタで印字したときに、文字部の輪郭(ガタガタした輪郭とならないこと)、文字の色再現性(狙いの色を再現できる)、といった項目を両立して再現するための代用特性として設定したものである。
【0082】
つぎに、ハイライト部での安定した濃度変化については、やはり下記で説明する解像度1200dpiの画像出力実験機を用いて、0〜256階調のパッチ(15mm四方)を含む8bitTiff画像データに対して、ディザ処理(スクリーン線数約170線、スクリーン角45度の、ラインスクリーン型、量子化数2bit、解像度1200dpi)を施した、出力用画像データ(擬似中間調処理後データ)をあらかじめ用意しておき、この出力用画像データを用いて画像出力を行う。出力画像の評価は、ハイライト部分(データ0〜32)の反射濃度(ID値)を分光反射濃度計(X−Rite社製 モデル938)で測色した結果を用いて行った。この反射濃度値と入力データ値との関係に対して1次式近似を行い、R-2の値が0.95以上である場合を○とし、R-2の値が0.95未満である場合を×とした。ここでの判定基準として設定した、ハイライト部分(データ0〜32)での1次式近似のR^2の値が0.95以上、の条件は、階調画像における擬似輪郭とよばれる異常画像が発生することがなく良好に再現するための、代用特性として設定したものである。
【0083】
次に画像出力の際に使用した実験機についての説明を行う。この実験機は、リコー製 Ipsio Color 5100 をベースにして改造した実験機であり、主に書き込みユニットの改造を施したものである。この実験機では、LD素子として4つの発光点(レーザダイオード)を1チップ上にライン状に形成した、4チャンネルLDアレイを使用している。これにより、解像度1200dpiを実現した。また、この実験機では、ビーム径は感光体位置上で40(主走査方向)×40(副走査方向)μmとなるように、光学素子、アパーチャを調整してある。また、レーザビームの静止ビーム光量J(露光ビームエネルギのことを以下静止ビーム光量とする)の測定は、次のようにして行った。静止ビーム光量の測定には、横河電機社製光パワーメータ(モデル3292)を用いた。この光パワーメータのプローブ(受光部)をレーザビームの結像位置(感光体ドラムが配置される位置に相当)に配置して、レーザビームがこのプローブ中心に入射するようにセットした。このような状態で、LD(レーザダイオード)の連続点灯を行いながら、光パワーメータの出力値を記録し、静止ビーム光量とした。これらの測定により、光量を調整して設定した。
【0084】
次に、画像出力実験およびその結果について説明する。電荷発生層の占有面積を100〜60%の範囲で変化させた試作感光体ドラムを作製した。
このように作製した感光体ドラムを使用して、レーザの静止ビーム光量を変えながら、画像出力を行い、上記の2項目(400線ライン画像の再現、ハイライト部分を1次式で近似し、R^2の値が0.95以上)について、評価を行った結果を下記の表3〜4に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
前記ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率が90%より大きい場合には、十分にコントラストの大きな静電潜像を形成することができず、ハイライト部(反射濃度が0〜0.2程度の領域)において急激な濃度変化してしまい、本実施形態に独自の効果が得られない。
【0088】
表3および表4の結果に示すように、電荷発生層の占有面積率が90%以下である場合には、従来技術で記載したような、発明の解決しようとする課題に対して、改善が可能であることが分かる。また、電荷発生層の占有面積率が一定の関係(別途記載)以上である場合には、ベタID=1.4以上を確保することができ、良好な画質を実現することができる。
【0089】
次に、上記の評価を行ったうちの幾つかの条件を用いて、ハイライト部、低コントラスト文字部、ベタ部などの画質要素を含むような総合テストチャートを出力した。結果を表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
表3および表4において、良好な結果を得ることができた条件においては、総合テストチャートの出力結果においても高画質な画像得ることが可能であることが分かる。
よって、前記ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率が90%以下であり、かつ下記式(1)で示される占有面積率(X)以上であることを特徴とする電子写真感光体に関する発明であり、十分にコントラストの大きい静電潜像を形成しながら、ベタ画像においても全面に均一にトナーを付着させることができるような、電子写真感光体を得ることができる。
【0092】
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・式(1)
上記式(1)において、ηは量子効率を示し、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)を示す。
【実施例3】
【0093】
実施例1、2で非画像部を負電位に保持することにより、画像チリを抑制し高画質な画像を形成する画像形成手段を得ることができた。
この方式を搭載した実験機において、実際の画像を詳細に確認してみたところ、ドット面積にバラツキが生じ、粒状性が悪い画像となっている場合があった。
【0094】
この現象について考察するため、図13にドット画像の像担持体上電位と、像担持体との接触部より上流側の中間転写体表面電位の関係図を示す。
図13に示した図から分かるように、ドット中央部と中間転写体との電位差と比較して、エッジ部と中間転写体との電位差が大きく、この電位差が大きくなると放電が発生しやすくなる。これにより、エッジ周辺に付着している像担持体上のトナー極性が変わるため転写されにくくなり、ドット面積にバラツキが生じ粒状性を悪化させる原因になっていると考えられる。
【0095】
よって、エッジ周辺での放電を防止するため、次のような構成について検討を行った。図14は転写構成周辺を拡大して示す拡大構成図である。本実施形態の画像形成装置は、感光体1と、現像装置2と、クリーニング装置3と、帯電装置4と、書き込み装置5と、中間転写ユニット(中間転写体)6と、転写部7と、定着部8とを備えている。また、中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61と、張架ローラ62,63,64と、カウンターバイアスブレード65と、中間転写ブレード66と、ベルトクリーニング装置67とを備えている。
【0096】
1が感光体で左から順に1a,1b,1c,1dである。感光体回りの作像部はすべてa,b,c,dともに同様に備えているため、aについてのみ説明する。感光体は反時計回りに回転する。4が帯電装置、5が書き込み装置からのレーザ書込光、2が現像装置、3がクリーニング装置である。感光体上に現像されたトナー像は第1の転写工程として、6の中間転写体上に、転写バイアスローラに印加された電圧による電界で引きつけられ転写される。中間転写体6上には更に、b,c,d部でトナーが転写され、中間転写体6上にはフルカラーの画像が形成される。このフルカラー画像は転写部7で転写材に転写され、転写材は定着部8で加熱されることで定着する。
【0097】
図14において、タンデム画像形成部は、4つのプロセスユニットを有している。1が感光体で左から順に1a,1b,1c,1dであり、a,b,c,dは、使用するトナーの色が互いに異なっているが、その他の構成についてはほぼ同様である。よって、aだけについてその構成を詳述し、他のプロセスユニットの説明については説明を省略する。プロセスユニットは4が帯電装置、5が書き込み装置、2が現像装置、3がクリーニング装置などを有している。像担持体1aは、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動されながら、帯電器4によってその表面が一様帯電し、非画像部電位Vとなる。そして、一様帯電後の表面にレーザ書込光5が照射されて画像部電位VLとなることによって静電潜像が形成される。この静電潜像は、像形成物質たるトナーを用いる現像器2によって現像される。感光体ドラム1a上のトナー像は、中間転写ベルト61上に中間転写される。中間転写工程を経た感光体ドラム1a表面は、当該感光体ドラムのクリーニング装置3によってその表面の転写残トナーがクリーニングされる。他のプロセスユニットでも同様のプロセスが実施されて、Bk,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0098】
一方、上記したように中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61、3つの張架ローラ62,63,64、ベルトクリーニング装置67などを備えている。また、4つのカウンターバイアスブレード65や、4つの中間転写ブレード66、ベルトクリーニング装置67なども備えている。中間転写体たる中間転写ベルト61は、3つの張架ローラ62,63,64に張架されながら、何れか1つの張架ローラが図示しない駆動手段によって回転駆動されることにより、図中時計回りに移動する。4つのカウンターバイアスブレード65a,65b,65c,65dや、4つの中間転写ブレード66a,66b,66c,66dは、それぞれ中間転写ベルト61の裏面(内周面)に当接するように配設されている。そして、同じ記号が付されたカウンターバイアスブレードと中間転写ブレードとが一つの対をなしている。例えば、カウンターバイアスブレード66と中間転写ブレード66とが一つの対をなしているのである。中間転写ブレード66a,66b,66c,66dが中間転写ベルト61を感光体ドラム1a,1b,1c,1d方向にそれぞれ抑えるような配設により、タンデムの画像形成部と中間転写ユニット6との間には、Bk,Y,M,C用の4つの中間転写ニップが形成される。
【0099】
これら中間転写ニップには、図示しない電源によって中間転写ブレード66a,66b,66c,66dにそれぞれ中間転写バイアスが印加されることによって中間転写電界が作用する。ここで、中間転写ニップの中間転写体の回転方向上流側に位置する65はカウンターバイアスブレードである。このカウンターバイアスブレード65には、図示しない電源よりバイアスが印加される。このカウンターバイアスブレード65に像担持体上トナーを中間転写体へ吸引しない方向の電界を作用させることにより、エッジ周辺での放電を防止し、経時変動や現像剤のバラツキによらず、安定してドットのバラツキを抑え粒状性が向上することが可能となった。
【0100】
以上、本実施形態の感光体および画像形成装置によれば、像担持体を帯電する帯電手段と、像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、像担持体上の潜像を潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成手段において、前記静電潜像の地肌部に相当する未露光部の電位が、絶対値で最高値の1/2以上に保持されている画像形成手段により、中間転写体を使用するカラー画像形成方法において、転写プロセスでの画像劣化を抑制し、高画質が画像を提供することが可能になる。
【0101】
また、ドット状に形成されている電荷発生層の占有面積率を90%以下にし、かつ占有面積率と露光エネルギの関係を上述した式(1)の範囲内とすることで、「細線の良好な再現」および「ハイライト部での安定した濃度変化」を両立した画像を得、黒ベタ画像に置いても十分な画像濃度を得ることが可能となる。
さらに、転写前の像担持体上トナーのプレ転写や、転写前の感光体上トナーへの放電を防止し、画像チリを防止し、経時変動や現像剤のバラツキによらず安定した画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態のトナー転写時の像担持体非画像部電位と転写チリとの関係を示す説明図である。
【図2】本実施形態の像担持体における電荷キャリア生成とその輸送のモデルを示す概念図である。
【図3】本実施形態のドット画像の像担持体表面電位と中間転写材表面電位の関係を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る中間転写体搭載の画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る像担持体内のキャリア移動過程を示す概念図である。
【図6】隣接するビームスポット径による露光強度分布説明図であり、露光ビームのエネルギ分布において、600dpi、ビーム径68.9μmの隣接するビーム径による露光強度分布を示した図である。
【図7】本実施形態に係る電荷輸送層内に格子状に絶縁領域を設けた像担持体の透視図である。
【図8】本実施形態に使用する像担持体の一例の構成を示す断面図である。
【図9】本実施形態に使用する像担持体の他の一例の構成を示す断面図である。
【図10】本実施形態に使用する像担持体の電荷発生層面積率とトナー付着の関係を示す説明図である。
【図11】本実施形態におけるトナー付着、電荷発生層面積率、量子効率の関係を示す説明図である。
【図12】本実施形態に使用する400線画像パターンの説明用平面図である。
【図13】本実施形態におけるドット画像の像担持体上電位と上流側の中間転写体表面電位の関係を示す説明図である。
【図14】本実施形態の転写構成周辺を拡大して示す概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1a,1b,1c,1d 感光体
2 現像装置
3 クリーニング装置
4 帯電装置
5 書き込み装置(レーザ書込光)
6 中間転写体
7 転写部
8 定着部
31 導電性支持体
33 中間層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
61 中間転写ベルト
62,63,64 張架ローラ
65 カウンターバイアスブレード
66 中間転写ブレード
67 ベルトクリーニング装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、
像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする感光体。
【請求項2】
像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、
前記像担持体は、導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質を少なくとも有する電荷発生層と、電荷輸送物質を少なくとも含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷輸送層が電荷輸送材料と絶縁材料とからなり、前記絶縁材料は前記電荷輸送材料を囲撓する領域として設けられていることを特徴とする感光体。
【請求項3】
前記電荷発生層が、微小領域として前記電荷輸送層内にドット状に分散されて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感光体。
【請求項4】
前記電荷発生層の絶縁材料の前記領域は10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光体。
【請求項5】
前記電荷発生層は誘電体領域を有し、前記誘電体領域の大きさは1画素以下の大きさであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の感光体。
【請求項6】
前記ドット状に形成されている前記電荷発生層の占有面積率は90%以下であり、当該占有面積率(X)と露光ビームエネルギJとは下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の感光体。
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・(1)
(上記(1)式においてXは電荷発生層の水平断面における占有面積率(%)であり、ηは量子効率であり、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)である。)
【請求項7】
前記像担持体と前記中間転写体とは接触し、前記第1の転写手段による第1の転写時において前記像担持体の回転方向上流側の空隙に対応する中間転写体の部分に、前記像担持体の帯電極性と同極性でかつその絶対値が非画像部電位VLより大きい電圧を印加する手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の感光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、
像担持体非画像部の電位を−200V以下に保持したことを特徴とする感光体。
【請求項2】
像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に静電潜像を形成するための露光手段と、前記像担持体上の潜像を当該潜像と同極性のトナーで現像する現像手段と、トナー像を中間転写体上に転写する第1の転写手段と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録体に転写する第2の転写手段により画像を形成する画像形成装置に使用される感光体であって、
前記像担持体は、導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質を少なくとも有する電荷発生層と、電荷輸送物質を少なくとも含有する電荷輸送層とからなり、前記電荷輸送層が電荷輸送材料と絶縁材料とからなり、前記絶縁材料は前記電荷輸送材料を囲撓する領域として設けられていることを特徴とする感光体。
【請求項3】
前記電荷発生層が、微小領域として前記電荷輸送層内にドット状に分散されて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感光体。
【請求項4】
前記電荷発生層の絶縁材料の前記領域は10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光体。
【請求項5】
前記電荷発生層は誘電体領域を有し、前記誘電体領域の大きさは1画素以下の大きさであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の感光体。
【請求項6】
前記ドット状に形成されている前記電荷発生層の占有面積率は90%以下であり、当該占有面積率(X)と露光ビームエネルギJとは下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の感光体。
η×J≧0.01×EXP(−(X−60)/10)+0.002・・・(1)
(上記(1)式においてXは電荷発生層の水平断面における占有面積率(%)であり、ηは量子効率であり、Jは露光ビームエネルギ(J/m2)である。)
【請求項7】
前記像担持体と前記中間転写体とは接触し、前記第1の転写手段による第1の転写時において前記像担持体の回転方向上流側の空隙に対応する中間転写体の部分に、前記像担持体の帯電極性と同極性でかつその絶対値が非画像部電位VLより大きい電圧を印加する手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の感光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−286506(P2007−286506A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115868(P2006−115868)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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