説明

感光性平版印刷版

【課題】 印刷時の払い汚れを悪化させずに、クリーナーを使用した場合の耐刷性を向上させた感光性平版印刷版を提供する。
【解決手段】陽極酸化し、ポリビニルホスホン酸水溶液で処理し、アルカリ金属珪酸塩水溶液で処理したアルミニウム支持体を有する感光性平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は感光性平版樹脂に関し、より詳しくは、陽極酸化したアルミニウム板を後処理し、更に感光層を設けることにより得られた感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、平版印刷版は、アルミニウム板上に感光性組成物を薄層状に塗設した感光性平版印刷版を画像露光後現像して得られる。上記アルミニウム板は通常ブラシグレイン法やボールグレイン法のごとき機械的方法や電解グレイン法のごとき電気化学的方法あるいは両者を組み合わせた方法などの粗面化処理に付され、その表面が梨地状にされたのち、酸あるいはアルカリ等の水溶液によりエッチングされさらに陽極酸化処理を経たのち所望により親水化処理が施されて平版印刷版用支持体とされ、この支持体上に感光層が設けられて感光性平版印刷版(いわゆるPS版)とされる。このPS版は、通常、像露光、現像、修正、ガム引き工程を施して平版印刷版とされ、これを印刷機に取り付けて印刷する。
【0003】平版印刷版の作成に用いられる感光性平版印刷版にはポジ型とネガ型のものがある。ポジ型感光性組成物にはo−キノンジアジド化合物からなるものが汎用されており、このような感光物は単独あるいはノボラック型のフェノール樹脂、クレゾール樹脂などのアルカリ可溶性の樹脂と混合し支持体上に塗設される。親水性表面を有する支持体を用いると、露光部分はo−キノンジアジド化合物が分解しアルカリ可溶性に変化するので、アルカリ現像液で容易に除去されて、支持体の親水性表面が露呈され、この部分は水を受け付けインキを反発する。一方、画像として残った未露光部は親油性でありインキを受容する。ネガ型感光性組成物には、ジアゾニウム塩やアジド化合物または光重合性化合物を用いた物が多く、このような感光物は単独あるいは適当な樹脂などの添加剤と混合され、支持体上に塗設される。親水性表面を有する支持体を用いると未露光部分は現像液で除去されて、支持体の親水性表面が露呈され、この部分は水を受け付けインキを反発する。一方、露光により硬化し、現像の際画像として残った部分は親油性でありインキを受容する。
【0004】このような親水性表面を有する支持体を得る方法として、米国特許3,181,461号に示されているアルカリ金属珪酸塩水溶液で陽極酸化皮膜を処理する方法、特開平2−185493号に示されている陽極酸化したアルミニウム板を水酸化物を含むアルカリ金属珪酸塩の水溶液で処理する方法、特公昭46−35685号に記載されている陽極酸化したアルミニウム板をポリビニルホスホン酸水溶液で処理する方法、さらに特開昭60−194096号に記載されている陽極酸化したアルミニウム材をアルカリ珪酸塩水浴液で処理し続いてビニルホスホン酸単位及び/又はビニルメチルホスフィン酸単位を有する少なくとも1種の有機ポリマーの水溶液で処理する方法が公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等の研究により、これらの表面親水化方法においてもいくつかの問題を抱えていることがわかった。即ち、印刷部数が多いような場合、印刷が進行するに従い版面上の非画像部がインキによって次第に疎水的になり汚染されるため印刷物が汚れてきてしまう。これを回復するために、例えば、リン酸のような支持体エッチング剤と脂肪族炭化水素のようなインキ溶解剤とを主成分とするクリーナーの使用が通常行われている。しかしながら、例えば、アルカリ金属珪酸塩水溶液で陽極酸化皮膜を処理して支持体とし、ネガ型感光性平版印刷版を形成した場合、クリーナーを使用した際の感光層と支持体との密着性が悪化し耐刷力が劣化してしまう。また陽極酸化したアルミニウム板をポリビニルホスホン酸水溶液で処理して支持体とし、ネガ型感光性平版印刷版を形成した場合では、クリーナーを使用した際の耐刷性は十分であるが、印刷時に非画像部に付いたインキが取れにくくなるいわゆる“払い汚れ”が悪化する。さらに、特開昭60−194096号の実施例1に記載されているように、アルカリ金属珪酸塩水溶液で陽極酸化皮膜を処理した後、ポリビニルホスホン酸水溶液で後処理して支持体とし、ネガ型感光性平版印刷版を形成した場合においても、アルカリ金属珪酸塩水溶液単独で処理した場合と同様で、払い汚れは悪化しないが、クリーナーを使用した際の耐刷力が劣化してしまい問題は解決できない。したがって、本発明の目的は、印刷時の払い汚れを悪化させずに、クリーナーを使用した場合での耐刷性の良い平版印刷版を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、陽極酸化し、ポリビニルホスホン酸水溶液で処理し、アルカリ金属珪酸塩水溶液で処理したアルミニウム支持体を有する感光性平版印刷版により、上記目的が達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明は、上記処理方法により、支持体表面をポリビニルホスホン酸とアルカリ金属珪酸塩とがバランスよく共存する状態を得ることができることから、クリーナーを使用した場合においては、感光層/支持体界面へのクリーナーの浸透をポリビニルホスホン酸によって抑制するため、感光層との密着性は悪化しないので耐刷力は劣化せず、同時に、共存するアルカリ金属珪酸塩によって非画像部は十分な親水性を保持できるため払い汚れも解決できたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について順を追って詳しく説明する。
(ポリビニルホスホン酸水溶液処理)陽極酸化処理後のポリビニルホスホン酸水溶液処理に使用される水溶液としては、濃度が0.01から10重量%、望ましくは0.1から5重量%、更に望ましくは0.2から2.5重量%、温度が10℃から70℃で望ましくは30℃から60℃であり、この水溶液に0.5秒から40秒、より望ましくは1秒から20秒浸漬することにより行うのが適当である。ポリビニルホスホン酸水溶液の濃度が0.01重量%より低くなると陽極酸化皮膜へのポリビニルホスホン酸の吸着量が少なくなり十分な耐刷力を得られず、一方、濃度が10重量%より高くなるとポリビニルホスホン酸の吸着量が多くなりすぎて払い汚れが劣化してしまう。また、処理温度が10℃より低くなると陽極酸化皮膜へのポリビニルホスホン酸の吸着量が少なくなり十分な耐刷力が得られず、一方、70℃より高くなるとポリビニルホスホン酸の吸着量が多くなりすぎて払い汚れが劣化してしまう。更に、浸漬時間が0.5秒よりも短くなると陽極酸化皮膜へのポリビニルホスホン酸の吸着量が少なくなり十分な耐刷力を得られず、一方、40秒より長くなるとポリビニルホスホン酸の吸着量が多くなりすぎて払い汚れが劣化してしまう。
【0008】(アルカリ金属珪酸塩処理)上記の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜をアルカリ金属珪酸塩が1〜30重量%、好ましくは2〜15重量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば50〜90℃で0.5〜40秒、より好ましくは1〜20秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し、13より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。アルカリ金属珪酸塩処理温度が50℃より低いと、処理した際にポリビニルホスホン酸の部分的脱離とアルカリ金属珪酸塩の吸着が十分に行われず、ポリビニルホスホン酸処理のみした場合と何ら変わらない表面となり、払い汚れが向上しない。一方、90℃より高いと吸着したポリビニルホスホン酸がほとんどとれてしまい、アルカリ金属珪酸塩処理のみしたものと変わらず、耐刷力の向上が見られない。濃度が1重量%濃度よりも低い場合及び/又は処理時間が0.5秒よりも短い場合においても同様に、ポリビニルホスホン酸の部分的脱離とアルカリ金属珪酸塩の吸着が十分に行われず、ポリビニルホスホン酸処理のみした場合と何ら変わらない表面となり、払い汚れが向上しない。一方、濃度が30重量%より高い場合及び/又は処理時間が40秒よりも長い場合においては、吸着したポリビニルホスホン酸がほとんどとれてしまい、アルカリ金属珪酸塩処理のみしたものと変わらず、耐刷力の向上が見られない。
【0009】本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用され、中でも珪酸ナトリウム、珪酸カリウムが好ましい。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがあり、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが使用される。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩等の水溶液が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、などを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。以上の処理が施されたアルミニウム版の上には、感光層を設けることができるが、更に必要に応じて親水性下塗り層を設けることもできる。以上の処理が施されたアルミニウム版の上には、感光層を設けることができるが、更に必要に応じて親水性下塗り層を設けることもできる。
【0010】(アルミニウム板)本発明において用いられるアルミニウム板は純アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とし微量の異原子を含むアルミニウム合金等の板状体である。この異原子には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金組成としては、10重量%以下の異原子含有率のものである。本発明に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは、製錬技術上製造が困難であるので、できるだけ異原子を含まないものがよい。また、上述した程度の異原子含有率のアルミニウム合金であれば、本発明に使用しうる素材ということができる。このように本発明に使用されるアルミニウム板は、その組成が特に限定されるものではなく、従来公知、公用の素材のものを適宜利用することができる。好ましい素材としては、JIS A 1050、同1100、同1200、同3003、同3103、同3005が含まれる。本発明に用いられるアルミニウム板の厚さは、約0.1mm〜0.5mm程度である。アルミニウム板を陽極酸化するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば界面活性剤又はアルカリ性水溶液で処理する脱脂処理、及び砂目立処理が所望により行われる。
【0011】(砂目立て処理)砂目立て処理方法には、機械的に表面を粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法がある。機械的に表面を粗面化する方法としては、ボール研摩法、ブラシ研摩法、ブラスト研摩法、バフ研摩法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により電解を行って粗面化する方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組合せた方法も利用することができる。このようにして粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理される。
【0012】(陽極酸化処理)アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成しえるものであればいかなるものでも使用することができるが、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられ、それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%、液温が5〜70℃、電流密度が5〜60A/dm2、電圧が1〜100V、電解時間が10秒〜50分の範囲にあれば適当である。これらの陽極酸化処理の内でも、特に英国特許第1,412,768号明細書に記載されている硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第4,211,619号明細書に記載されているような低濃度の硫酸中で陽極酸化する方法が好ましい。最も好ましくは5〜20重量%の硫酸と3〜15重量%のアルミニウムイオンを含有する、温度25〜50℃の電解液中で電流密度5〜20A/dm2の直流で陽極酸化する方法である。陽極酸化皮膜の量は0.1〜10g/m2とすることができる。
【0013】(親水性下塗り層)本発明に使用される親水性下塗り層の好ましいものは、特開昭60−149491号公報に開示されている、少なくとも1個のアミノ基と、カルボキシル基及びその塩の基並びにスルホ基及びその塩の基からなる群から選ばれた少なくとも1個の基とを有する化合物からなる親水層、特開昭60−232998号公報に開示されている、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基を有する化合物及びその塩から選ばれた化合物からなる親水層、特開昭62−19494号公報に開示されているリン酸塩を含む親水層、特開昭59−101651号公報に開示されているスルホ基を有するモノマー単位の少なくとも1種を繰り返し単位として分子中に含む高分子化合物からなる親水層、特開平4−282637号明細書に開示されているR1(PO(OH)2)nまたはR1-(PO(OH)(R2))nで表される置換または無置換の脂肪族化合物または芳香族化合物(nは1または2であり、n=1のときR1、R2は置換または無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アリール基、アシル基、アシロキシ基を表し、n=2のとき、R1は置換または無置換のアルキレン基またはアリーレン基を表わし、R2は前記定義のとおりである)からなる化合物群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含む有機層等が含まれる。
【0014】(感光層)本発明に使用される感光層の組成物としては、露光の前後で現像液に対する溶解性又は膨潤性が変化するものであればいずれも使用できる。以下その代表的なものについて説明する。
(A) o−キノンジアジド化合物からなる感光層ポジ型感光性組成物の感光性化合物としては、o−キノンジアジド化合物が挙げられ、その代表としてo−ナフトキノンジアジド化合物が挙げられる。o−ナフトキノンジアジド化合物としては、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルであるものが好ましい。その他の好適なo−キノンジアジド化合物としては、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号明細書中に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがある。その他の有用なo−ナフトキノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され、知られているものが挙げられる。たとえば、特開昭47−5303号、同48−63802号、同48−63803号、同48−96575号、同49−38701号、同48−13354号、特公昭37−18015号、同41−11222号、同45−9610号、同49−17481号公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号等の各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0015】分子量1,000以下のポリヒドロキシ化合物と1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとの反応により得られるo−ナフトキノンジアジド化合物も使用することができる。このような化合物の具体例は、特開昭51−139402号、同58−150948号、同58−203434号、同59−165053号、同60−121445号、同60−134235号、同60−163043号、同61−118744号、同62−10645号、同62−10646号、同62−153950号、同62−178562号、同64−76047号、米国特許第3,102,809号、同第3,126,281号、同第3,130,047号、同第3,148,983号、同第3,184,310号、同第3,188,210号、同第4,639,406号等の各公報又は明細書に記載されているものを挙げることができる。
【0016】これらのo−ナフトキノンジアジド化合物を合成する際は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基に対して1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドを0.2〜1.2当量反応させることが好ましく、0.3〜1.0当量反応させることがさらに好ましい。1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとしては、1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸クロリドが好ましいが、1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸クロリドも用いることができる。また得られるo−ナフトキノンジアジド化合物は、1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル基の位置及び導入量の種々異なるものの混合物となるが、ヒドロキシル基がすべて1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルに転換された化合物がこの混合物中に占める割合(完全にエステル化された化合物の含有率)は5モル%以上である事が好ましく、さらに好ましくは20〜99モル%である。
【0017】またo−ナフトキノンジアジド化合物を用いずにポジ型に作用する感光性化合物として、例えば特公昭56−2696号に記載されているo−ニトロカルビノールエステル基を有するポリマー化合物も本発明に使用することができる。更に光分解により酸を発生する化合物と、酸により解離する−C−O−C−基又は−C−O−Si基を有する化合物との組合せ系も本発明に使用することができる。例えば光分解により酸を発生する化合物とアセタール又はO,N−アセタール化合物との組合せ(特開昭48−89003号)、オルトエステル又はアミドアセタール化合物との組合せ(特開昭51−120714号)、主鎖にアセタール又はケタール基を有するポリマーとの組合せ(特開昭53−133429号)、エノールエーテル化合物との組合せ(特開昭55−12995号)、N−アシルイミノ炭素化合物との組合せ(特開昭55−126236号)、主鎖にオルトエステル基を有するポリマーとの組合せ(特開昭56−17345号)、シリルエステル化合物との組合せ(特開昭60−10247号)及びシリルエーテル化合物との組合せ(特開昭60−37549号、特開昭60−121446号)等が挙げられる。本発明の感光性組成物中に占めるこれらのポジ型に作用する感光性化合物(上記のような組合せを含む)の量は10〜50重量%が適当であり、より好ましくは15〜40重量%である。
【0018】o−キノンジアジド化合物は単独でも感光層を構成し得るが、結合剤(バインダー)としてのアルカリ水に可溶な樹脂と共に使用することが好ましい。このよなアルカリ水に可溶性の樹脂としては、この性質を有するノボラック樹脂があり、たとえばフェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のクレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を含有させることができる。これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜20,000で数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。このようなアルカリ可溶性の高分子化合物は全組成物の70重量%以下の添加量で用いられる。
【0019】更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物あるいはこれらの縮合物のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(例えば特開昭61−243446号に記載のもの)を併用することは画像の感脂性を向上させる上で好ましい。
【0020】本発明における感光性組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物、露光後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料やその他のフィラー等を加えることができる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等がある。これらの環状酸無水物を全組成物の重量に対して1から15重量%含有させることによって感度を最大3倍程度に高めることができる。露光後直ちに可視像を得るための焼出し剤としては露光によって酸を放出する感光性化合物と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には特開昭50−36209号公報、特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハライドと塩形成性有機染料の組合せや特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号、同63−58440号公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。画像の着色剤として前記の塩形成性有機染料以外に他の染料も用いることができる。塩形成性有機染料を含めて好適な染料として油溶性染料及び塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#130、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業株式会社製)、ビクトリアビュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、エチルバイオレット(CI42600)、メチルバイオレット(CI42535)、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
【0021】本発明において感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶解して支持体上に塗布する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコール、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等があり、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用する。そして、上記成分の溶液中の濃度(固形分)は、2〜50重量%である。また、塗布量は用途により異なるが、例えば感光性平版印刷版についていえば一般的に固形分として0.5〜3.0g/m2が好ましい。塗布量が薄くなるにつれ感光性は大になるが、感光膜の物性は低下する。本発明における感光性組成物中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光性組成物の0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0022】(B) ジアゾ樹脂とバインダーとからなる感光層ネガ作用型感光性ジアゾ化合物としては米国特許第2,063,631号及び同第2,667,415号の各明細書に開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールのような反応性カルボニル塩を含有する有機縮合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とホルムアルデヒドとの縮合生成物(所謂感光性ジアゾ樹脂)が好適に用いられる。この他の有用な縮合ジアゾ化合物は特公昭49−48001号、同49−45322号、同49−45323号の各公報等に開示されている。これらの型の感光性ジアゾ化合物は通常水溶性無機塩の形で得られ、従って水溶液から塗布することができる。また、これらの水溶性ジアゾ化合物を特公昭47−1167号公報に開示された方法により1個又はそれ以上のフェノール性水酸基、スルホン酸基又はその両者を有する芳香族又は脂肪族化合物と反応させ、その反応生成物である実質的に水不溶性の感光性ジアゾ樹脂を使用することもできる。また、特開昭56−121031号公報に記載されているようにヘキサフルオロリン酸塩又は、テトラフルオロホウ酸塩との反応生成物として使用することもできる。
【0023】フェノール性水酸基を有する反応物の例としては、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、レゾルシノール、又はジレゾルシノールのようなジフェノール酸であって、これらは更に置換基を有していてもよい。ヒドロキシベンゾフェノンには2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン又は2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンが含まれる。好ましいスルホン酸としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン、フェノール、ナフトール及びベンゾフェノン等のスルホン酸のような芳香族スルホン酸、又はそれ等の可溶性塩類、例えば、アンモニウム及びアルカリ金属塩が例示できる。スルホン酸基含有化合物は、一般に低級アルキル、ニトロ基、ハロ基、及び/又はもう一つのスルホン酸基で置換されていてもよい。このような化合物の好ましいものとしては、ベンセスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリン−2−スルホン酸、1−ナフトール−2(又は4)−スルホン酸、2,4−ジニトロ−1−ナトール−7−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、m−(p′−アニリノフェニルアゾ)ベンゼンスルホン酸ナトリム、アリザリンスルホン酸、o−トルイジン−m−スルホン酸及びエタンスルホン酸等が挙げられる。アルコールのスルホン酸エステルとその塩類もまた有用である。このような化合物は通常アニオン性界面活性剤として容易に入手できる。その例としてはラウリルサルフェート、アルキルアリールサルフェート、p−ノニルフェニルサルフェート、2−フェニルエチルサルフェート、イソオクチルエノキシジエトキシエチルサルフェート等のアンモニウム塩又はアルカリ金属が挙げられる。
【0024】これ等の実質的に水不溶性の感光性ジアゾ樹脂は水溶性の感光性ジアゾ樹脂と前記の芳香族又は脂肪族化合物の水溶液を好ましくはほぼ等量となる量で混合することによって沈殿として単離される。また、英国特許第1,312,925号明細書に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また特開平3−253857号公報に記載されているリンの酸素酸基を含有するジアゾ樹脂、また特開平4−18559号公報に記載されているカルボキシル基含有アルデヒド又はそのアセタール化合物で縮合したジアゾ樹脂、また特願平3−23031号明細書に記載されているフェノキシ酢酸等のカルボキシ基含有芳香族化合物との共重合ジアゾ樹脂も好ましい。もっとも好適なジアゾ樹脂はp−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物の2−メキトシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルベンセンスルホン酸塩である。シアゾ樹脂の含有量は、感光層中に5〜50重量%含まれているのが適当である。ジアゾ樹脂の量が少なくなれば感光性は当然大になるが、経時安定性が低下する。最適のジアゾ樹脂の量は約8〜20重量%である。
【0025】一方、バインダーとしては、種々の高分子化合物が使用され得るが、本発明においては、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸、アミド、スルホンアミド、活性メチレン、チオアルコール、エポキシ等の基を含むものが望ましい。このような好ましいバインダーには、英国特許第1,350,521号明細書に記されているシェラック、英国特許第1,460,973号及び米国特許第4,123,276号の各明細書に記されているようなヒドロキシエチルアクリレート単位又はヒドロキシエチルメタクリレート単位を主なる繰り返し単位として含むポリマー、米国特許第3,751,257号明細書に記されているポリアミド樹脂、英国特許第1,074,392号明細書に記されているフェノール樹脂及び例えばポリビニルフォルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のようなポリビニルアセタール樹脂、米国特許第3,660,097号明細書に記されている線状ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールのフタレート化樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから縮合されたエポキシ樹脂、ポリアミノスルホンやポリアルキルアミノ(メタ)アクリレートのようなアミノ基を含むポリマー、酢酸セルロース、セルロースアルキルエーテル、セルロースアセテートフタレート等のセルロース誘導体等が包含される。ジアゾ樹脂とバインダーからなる組成物には、更に、英国特許第1,041,463号明細書に記されているようなpH指示薬、米国特許第3,236,646号明細書に記載されているリン酸、染料等の添加剤を加えることができる。
【0026】(C) アジド化合物とバインダー(高分子化合物)からなる感光層例えば英国特許第1,235,281号、同第1,495,861号の各明細書及び特開昭51−32331号、同51−36128号公報等に記されているアジド化合物と水溶性又はアルカリ可溶性高分子化合物からなる組成物の他、特開昭50−5102号、同50−84302号、同50−84303号、同53−12984号の各公報等に記されているアジド基を含むポリマーとバインダーとしての高分子化合物からなる組成物が含まれる。
(D) その他の感光性樹脂層例えば、特開昭52−96696号公報に開示されているポリエステル化合物、英国特許第1,112,277号、同第1,313,390号、同第1,341,004号、同第1,377,747号等の各明細書に記載のポリビニルシンナメート系樹脂、米国特許第4,072,528号及び同第4,072,527号及び特開平2−244050号の各明細書等に記されている光重合型フォトポリマー組成物、特開平7−28248号に記載の銀トリガー重合型組成物が含まれる。
(E) 電子写真感光層電子写真感光層は、主として光導電性化合物とバインダーからなるが、感度向上、所望の感光波長域を得る等の目的のために、必要に応じて公知の顔料、染料、化学増感剤、その他の添加剤等を使用することができる。感光層は単層あるいは電荷発生と電荷輸送の機能を分離した複数の層から構成することができる。平版印刷板は、公知の電子写真プロセスにより感光層上にトナー画像を形成し、これをレジスト層として、非画像部をデコーディングすることにより得ることができる。このような感光層は、例えば、特公昭37−17162号、同38−6961号、特開昭56−107246号、同60−254142号、特公昭59−36259号、同59−25217号、特開昭56−146145号、同62−194257号、同57−147656号、同58−100862号、同57−161863号をはじめ多数の刊行物に記載されており、これらはいずれも好適に使用することができる。
【0027】感光層の膜厚は、0.1〜30μm、より好ましくは、0.5〜10μmで使用することができる。支持体上に設けられる感光層の量(固定分)は約0.1〜約7g/m2、好ましくは0.5〜4g/m2の範囲である。上記のようにして設けられた感光層の表面は、真空焼枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、かつ焼きボケを防ぐ為、マット化することが好ましい。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などがあげられる。 本発明の感光性平版印刷版は画像露光された後、常法により現像を含む処理によって平版印刷版とされる。例えば、感光層(A)を有するポジ型平版印刷版の場合には画像露光後、米国特許第4,259,434号及び特開平3−90388号公報に記載されているようなアルカリ水溶液で現像することにより露光部分の感光層が除去されて、平版印刷版が得られる。またジアゾ樹脂とバインダーからなる感光層(B) を有するネガ型平版印刷版の場合には画像露光後、例えば米国特許第4,186,006号明細書に記載されているような現像液で現像することにより、未露光部分の感光層が除去されて平版印刷版が得られる。
【0028】本発明の感光性平版印刷版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、特開昭59−58431号の各公報に記載されている方法で製版処理してもよいことは言うまでもない。即ち、現像処理後、水洗してから不感脂化処理、またはそのまま不感脂化処理、または酸を含む水溶液での処理、または酸を含む水溶液で処理後不感脂化処理を施してもよい。さらに、この種の感光性平版印刷版の現像工程では、処理量に応じてアルカリ水溶液が消費されアルカリ濃度が減少したり、あるいは、自動現像液の長時間運転により空気によってアルカリ濃度が減少するため処理能力が低下するが、その際、新鮮な未使用の現像液(補充液)を添加するか、又は特開昭54−62004号に記載のようにアルカリ度の高い補充液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、処理されるPS版の一片の長さに比例する量の補充液を添加する方法や米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、上記のような製版処理は、特開平2−7054号、同2−32357号公報に記載されているような自動現像機で行なうことが好ましい。また、本発明の感光性平版印刷版を画像露光し、現像し、水洗又はリンスしたのちに、不必要な画像部の消去を行なう場合には、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を用いることが好ましい。更に製版工程の最終工程で所望により塗布される不感脂化ガムとしては、特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7595号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。更にまた、本発明の感光性平版印刷版を画像露光し、現像し、水洗又はリンスし、所望により消去作業をし、水洗したのちにバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0029】
【実施例】以下本発明を実施例により具体的に説明する。なお実施例中の%は、特に指定のない限り重量%とする。
(実施例1)JIS 1050アルミニウムシートをパミス水懸濁液を研磨剤として回転ナイロンブラシで表面を砂目立てした。このときの表面粗さ(中心線平均粗さ)は0.5μmであった。水洗後10%苛性ソーダ水溶液を70℃に温めた溶液中に浸漬して、アルミニウムの溶解量が6〔g/m2〕になるようにエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、十分水洗した。その後に0.7%硝酸水溶液中で、陽極時電圧13ボルト、陰極時電圧6ボルトの矩形波交番波形電圧を用いて20秒間電解粗面化を行い、20%硫酸の50℃溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。更に20%硫酸水溶液中で直流を用いて多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。電流密度5A/dm2で電解を行い電解時間を調節して陽極酸化皮膜重量が2.5〔g/m2〕の基板(I)を作った。この基板(I)を0.5%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗後珪酸ナトリウム2.5%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。
【0030】
表1 感光性組成物 ・下記に示す合成方法で得られたポリウレタン樹脂(a) 5g ・4−ジアゾフェニルアミンとホルムアルデヒドの縮合物の ドデシルベンゼンスルホン酸塩 1.2g ・プロパン−1,2,3−トリカルボン酸 0.05g ・燐酸 0.05g ・4−スルホフタル酸 0.05g ・燐酸トリクレジル 0.25g ・スチレン−無水マレイン酸共重合体のn−ヘキサノール によるハーフエステル 0.1g ・ビクトリアピュアブルーBOHのナフタレンスルホン酸塩 0.18g ・[C6F17CH2CH2O]1.7PO[OH]1.3で表される化合物 0.015g ・メガフアックF−177(大日本インキ化学工業(株)製 フッ素系界面活性剤) 0.06g ・1−メトキシ−2−プロパノール 20g ・メタノール 40g ・メチルエチルケトン 40g ・イオン交換水 1g
【0031】ポリウレタン樹脂(a)の合成方法コンデンサー、攪拌機を備えた500mlの3つ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸11.5g(0.0860mole)、ジエチレングリコール7.26g(0.0684mole)および1,4−ブタンジオール4.11g(0.0456mole)を加え、N,N−ジメチルアセトアミド118gに溶解した。これに、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート30.8g(0.123mole)、ヘキサメチレンジイソシアネート13.8g(0.0819mole)および触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.1gを添加し、攪拌下、90℃、7時間加熱した。この反応液に、N,N−ジメチルアセトアミド100ml、メタノール50mlおよび酢酸50mlを加え、攪拌した後に、これを水4リットル中に攪拌しながら投入し、白色のポリマーを折出させた。このポリマーを濾別し、水にて洗浄後、減圧乾燥させることにより、62gのポリマー(ポリウレタン樹脂(a))を得た。
【0032】得られた平版印刷版の払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。クリーナーはヘキスト社製プレートクリーナーRC−95を使用し、5000枚印刷ごとに上記クリーナーをウェスに浸透させ、印刷版の画像部上を10回拭き、それから3分放置する作業を繰り返したものである。(以下の実施例及び比較例においても同じクリーナーを同じ条件で使用した。)
【0033】(実施例2)基板(I)を0.5%ポリビニルホスホン酸水溶液で40℃、5秒処理し、水洗後珪酸ナトリウム2.5%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0034】(実施例3)基板(I)を2.0%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗後珪酸ナトリウム25%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0035】(実施例4)基板(I)を0.5%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗後珪酸ナトリウム10%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0036】(実施例5)基板(I)を0.5%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗後珪酸ナトリウム2.5%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。その後表2に示す親水性下塗り液を塗設した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナ一使用時の耐刷力を表3に示した。
【0037】
表2 下塗り液 ・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/ 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 ナトリウム共重合体(60/25/15モル比) 0.02g ・メタノール 100g
【0038】(比較例1)基板(I)を珪酸ナトリウム2.5%水溶液で70℃、12秒処理して水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0039】(比較例2)基板(I)を2.0%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0040】(比較例3)基板(I)を珪酸ナトリウム2.5%水溶液で70℃、12秒処理して水洗後0.5%ポリビニルホスホン酸水溶液で60℃、5秒処理し、水洗した。このようにして作成した基板に表1に示す組成物を乾燥後の塗布重量が2.5〔g/m2〕となるように塗布、乾燥して感光層を設けた。このときの払い汚れ、クリーナー使用時の耐刷力を表3に示した。
【0041】
【表1】


【0042】表3より、本発明による感光性平版印刷版は払い汚れ及びクリーナー使用時の耐刷力共に優れていることがわかる。
【0043】
【発明の効果】本発明の感光性平版印刷版により、印刷時の払い汚れを悪化させずに、クリーナーを使用した場合の耐刷性を向上させた感光性平版印刷版を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 陽極酸化し、ポリビニルホスホン酸水溶液で処理し、アルカリ金属珪酸塩水溶液で処理したアルミニウム支持体を有する感光性平版印刷版。