説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、感光性樹脂硬化物、及び可視光導光路

【課題】高い透明性、高温高湿信頼性に優れ、屈折率を向上させた感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらの感光性樹脂硬化物、並びに可視光導光路を提供すること。
【解決手段】(A)アクリル重合体、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有量が30〜70質量%、(B)成分の含有量が30〜70質量%であり、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、(C)成分の含有量が0.03〜3.0質量部、及び(D)成分の含有量が0.01〜1.0質量部であり、(B)重合性化合物は、芳香族を有する重合性化合物を含み、その含有量が、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜40質量%である感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらの硬化物、その硬化物よりなる可視光導光路に関する。より詳細には、可視光波長領域において優れた透明性を有し、かつ高温高湿信頼性試験における着色等の劣化が少なく、更に光透過性を向上させるために屈折率を向上させた感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらの硬化物に関する。また本発明における硬化物は、特に可視光導光路に用途展開される。
【背景技術】
【0002】
近年実用が広まっている照明用光源としてLEDが挙げられる。LEDは高輝度と低消費電力という特徴を併せ持つことから、携帯電話や携帯情報末端(PDA:Personal Digital Assisant)、携帯ゲーム機器、携帯オーディオ等様々なモバイル機器で多用されている。これに加えて近年では、液晶ディスプレイのバックライト等大型機器への用途展開も進んでいる。
【0003】
こうした機器に対しては更なる低消費電力化や軽量化、薄型化が求められることから、より効率的な照明デバイスの実用が望まれる。このような背景のもと、導光路や導光板、導波路を用いた照明デバイスに注目が集まっている。
【0004】
その中でもポリマーを用いたデバイスは、加工性に優れ、かつフレキシブルな構造が可能であることから、ポリマー導光路やポリマー導光板、ポリマー導波路はこれらの用途に最適であると考えられる。
【0005】
照明用デバイスに用いられるポリマー材料に対しては、適用される機器の使用環境の観点から380〜780nmの可視光波長領域において高い透明性を有することが求められる。こうした要求特性を満たすポリマー材料として、従来は脂環式ポリオレフィンや(メタ)アクリルポリマー等に代表されるビニル共重合体が用いられてきた。これらのポリマー材料の多くは高い透明性という特徴を活かして、主にプリズムやレンズ、導光板等へ用途展開されている。しかし、成形方法は射出成形や押出成形といった溶融成形が中心であるため、小型で複雑な形状の部材や極めて薄い部材への加工は難しい。またこれらのポリマー材料は熱可塑性樹脂であるために、耐熱信頼性や耐湿信頼性に劣るという問題を有していた。
【0006】
複雑な部材を形成可能な加工技術として、注型法やインプリント法、スタンプ法、トランスファー法等が考えられる。また、塗工法や印刷法、スピンコーター法等を用いると、薄い部材を形成することが可能である。感光性を持たせた液体を任意形状の型に注入する、あるいは液を流延したところに金型で押さえ込む、あるいはフィルムないしシート状に加工した材料を金型で押さえ込み、光を照射することで三次元架橋化・不溶化し、容易に複雑な形状の部材を形成可能である。そこで感光性を有し、かつ光学特性、特に可視光領域における透明性の良好な素材が検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−128342号公報
【特許文献2】特開2001−288206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来の材料で可視光の透明性を確保するためには、硬化を進行させるために、光開始剤の添加量を増やして、未反応の重合性化合物のブリードアウトの発生を抑えていた。しかしながら、残存する未反応の光開始剤やその分解物により熱劣化が発生し、高温高湿信頼性が劣る等の問題を有していた。
更に光を透過させる場合、光透過部分の屈折率が周辺より高いことが重要となる。光透過部分の屈折率が周辺と同等若しくは低いと、光が周辺部へ漏れてしまう。また、一部でも光透過部分に屈折率が同等若しくは高いものが接していると、そこから光が漏れて光透過性が低下する。以上のことから、光透過部分の材料として屈折率の高いものが求められている。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、可視光波長領域380〜780nmにおける高い透明性、並びに高温高湿信頼性に優れ、更に光透過性を向上させるために屈折率を向上させた感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらの硬化物、並びにその硬化物よりなる可視光導光路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の(1)〜(5)が上記課題を解決することを見出した。
(1)(A)アクリル重合体、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む感光性樹脂組成物であって、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有量が30〜70質量%、(B)成分の含有量が30〜70質量%であり、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、(C)成分の含有量が0.03〜3.0質量部、及び(D)成分の含有量が0.01〜1.0質量部であり、(B)重合性化合物は、芳香族を有する重合性化合物を含み、その含有量が、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜40質量%であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2)上記(1)の感光性樹脂組成物、及び有機溶媒を含有する感光性樹脂ワニス。
(3)上記(2)の感光性樹脂ワニスを基材フィルム上に塗布し、乾燥してなる感光性樹脂フィルム。
(4)上記(1)の感光性樹脂組成物、上記(2)の感光性樹脂ワニス、又は上記(3)の感光性樹脂フィルムに光を照射し、硬化してなる感光性樹脂硬化物。
(5)上記(4)の感光性樹脂硬化物よりなる可視光導光路。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、可視光波長領域において高い透明性、及び高温高湿信頼性を有し、更に光透過性を向上させるために屈折率を向上させた感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらを光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物、並びに可視光導光路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】白色LED透過光強度比を測定する装置の平面図(上)及び正面図(下)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アクリル重合体、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【0014】
本発明においては、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有量が30〜70質量%、(B)成分の含有量が30〜70質量%であり、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、(C)成分の含有量が0.03〜3.0質量部、及び(D)成分の含有量が0.01〜1.0質量部であり、(B)重合性化合物は、芳香族を有する重合性化合物を含み、その含有量が、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜40質量%であることを特徴とする。
【0015】
〔(A)アクリル重合体〕
(A)アクリル重合体の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、30〜70質量%の範囲である。(A)成分の含有量が30質量%未満であると、感光性樹脂組成物をフィルムに加工することが困難であるため好ましくない。また(A)成分の含有量が70質量%を超えると、高温高湿試験における信頼性が低下するため好ましくない。感光性樹脂組成物のフィルムへの加工性と高温高湿信頼性の維持という点から、(A)成分の含有量は、好ましくは40〜60質量%の範囲であり、より好ましくは45〜55質量%の範囲である。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の(A)アクリル重合体は、単一モノマーからなる単独重合体、2種以上のモノマーからなる共重合体のいずれでもよい。
その中でも、(A)アクリル重合体は、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマーとして重合した重合体であることが好ましい。すなわち、上記モノマーの単独重合体又は上記モノマーから選択される2種以上のモノマー共重合体が好ましい。
特に、メチルメタクリレートは該アクリル重合体の高い透明性に寄与する。ブチルメタクリレート及びブチルアクリレートは、該アクリル重合体に任意のガラス転移温度を持たせることに寄与する。2‐ヒドロキシエチルアクリレートとメタクリル酸は、該アクリル重合体と後述する(B)成分との相溶性向上に寄与する。以上の観点から、適宜必要に応じて、各種モノマーを用いて特定の(A)アクリル重合体を得、これを用いることで、可視光波長領域における高い透明性と、任意のガラス転移温度、(B)成分との相溶性のすべてを満足した感光性樹脂組成物を提供することが可能である。
【0017】
(A)アクリル重合体の重量平均分子量は、3万〜30万の範囲にあることが好ましい。(A)成分の重量平均分子量が3万以上であれば、フィルムへの加工が容易であり、十分な強度や可撓性を有する感光性樹脂硬化物が得られるため好ましい。また高温高湿試験においては、(A)成分のブリードアウトの発生を抑制し信頼性を維持することができる。一方重量平均分子量が30万以下であれば、感光性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物ワニスの適当な粘度が得られるため、フィルムへの加工性が優れており、得られた硬化物は優れた柔軟性を有するため好ましい。また後述する(B)成分との優れた相溶性を有し、その結果として感光性樹脂硬化物のヘイズを抑えることができ、高い透明性を得ることができるため好ましい。よって、以上の観点から、(A)成分の重量平均分子量は、より好ましくは4万〜15万の範囲であり、特に好ましくは6万〜12万の範囲である。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0018】
(A)アクリル重合体のガラス転移点は30〜100℃の範囲であることが好ましい。(A)成分のガラス転移点が30℃以上であれば、得られる感光性樹脂硬化物の硬度が十分であり、高温高湿信頼性試験において硬化物がその形状を保持できるため好ましい。一方、ガラス転移点が100℃以下であれば、感光性樹脂硬化物は優れた柔軟性が有するため好ましい。よって、得られる感光性樹脂硬化物の強度の点から、(A)アクリル重合体のガラス転移点は、より好ましくは45〜85℃の範囲であり、特に好ましくは55〜75℃の範囲である。
【0019】
上記(A)アクリル重合体は、上述の好ましい重量平均分子量、及びガラス転移点の範囲となるようなものであれば、重合体の構造や重合方法、重合反応の種類に制限はない。例えば重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、気相重合法等を用い、重合反応としてはラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等が利用できる。
【0020】
〔(B)重合性化合物〕
(B)重合性化合物の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、30〜70質量%の範囲である。(B)成分の含有量が30質量%未満であると、感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物の架橋密度が低く、また硬化反応が進行しにくいことから未反応重合性化合物のブリードアウトが発生しやすいことから、高温高湿試験における信頼性が低下するため好ましくない。また硬化反応を進めるには、(C)光重合開始剤の添加量を増やすことよって解決できるが、この手法では残存する未反応(C)光重合開始剤やその分解物により熱劣化が発生し、高温高湿信頼性が劣るため好ましくない。一方、(B)成分の含有量が70質量%を超えると、感光性樹脂組成物をフィルムに加工することが困難であるため好ましくない。感光性樹脂組成物のフィルムへの加工性と、感光性樹脂組成物の硬化性、及び高温高湿信頼性の維持という点から、(B)成分の含有量は、好ましくは40〜60質量%の範囲であり、より好ましくは45〜55質量%の範囲である。
【0021】
(B)重合性化合物は、光重合開始剤に光が照射されて発せられるラジカルによって連鎖重合可能な重合性基を1分子中に少なくとも1つを有するもので、かつ可視光波長領域380〜780nmの範囲で光の吸収がないものが好ましい。具体的な(B)重合性化合物としては、例えば、国際公開WO2009/066638号公報に記載のものが挙げられる。その中でも特に、ラジカルによる適度な重合速度を有するという観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合基を有する化合物が好ましい。
なお、性状については固形、半固体、液体いずれも使用可能である。
【0022】
また、(B)重合性化合物は、単官能、及び2官能以上の多官能のもののいずれも用いることができるが、特に2官能以上の多官能性の重合性化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。多官能性の重合性化合物を用いることで三次元架橋が進行し、熱に対して形状変化の少ない硬化物を得ることができる。また、単官能性の重合性化合物は、感光性樹脂組成物の粘度を低下させ、取り扱いを容易にするため、必要に応じて適宜混合される。これらの化合物は、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができ、更にその他の重合性化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物において(B)重合性化合物は、芳香族を有する重合性化合物を含み、その含有量が、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜40質量%である。
含有量が10質量%未満であると、屈折率の上昇が少なく十分に光透過性を向上させることができない。一方、40質量%を超えると、屈折率は上昇するが、透明性が低下するため好ましくない。芳香族を有する重合性化合物の含有量としては、屈折率を向上させつつ、高い透明性を保つ観点から、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、15〜35質量%の範囲がより好ましく、20〜30質量%の範囲が更に好ましい。
【0024】
(B)成分中の芳香族を有する重合性化合物としては、ビスフェノールA骨格を有する重合性化合物が好ましい。ビスフェノールA骨格を有する重合性化合物は、熱や光による劣化が少なく、また誘導体の種類も多いために容易に製造することができる。更に、ビスフェノールA骨格を有する重合化合物の中でも、下記一般式(1)で表される重合性化合物がエチレンオキシドの鎖長を変えることにより、相溶性や屈折率の調整が容易であるという観点から、特に好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式(1)中、X1、X2は、それぞれ水素原子又はメチル基であり、m、nは正の整数で、m+nは2〜14の範囲内である。
【0027】
本発明で使用される上記一般式(1)で表される重合性化合物としては、一般的な合成方法により得ることもできるが、例えば「FA−321A」(EO変性ジアクリレート;平均EO鎖長=10、日立化成工業(株)製)、「FA−324A」(EO変性ジアクリレート;平均EO鎖長=4、日立化成工業(株)製)、「FA−321M」(EO変性ジメタクリレート;平均EO鎖長=10、日立化成工業(株)製)等の市販されている化合物を用いることもできる。
【0028】
(B)成分中の芳香族を有する重合性化合物として、具体的には、ビスフェノールA骨格を有する化合物以外に、フェニル、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル基等を有する化合物を用いることができる。その中で、ビスフェノールFやフルオレニル基等、共役の伸びが少ないものが、短波長の吸収が少なく透明性が高いため好ましい。
【0029】
(B)成分中の芳香族を有する重合性化合物として、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、下記一般式(2)に示される2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
上記一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。またR3は以下の一般式(3)に示すものである。
【0032】
【化3】

【0033】
上記一般式(3)において、a+bは2〜30の範囲であり、R4及びR5はそれぞれ水素原子又はメチル基である。また、R6は、以下の一般式(4)で示される2価の基のいずれかである。
【0034】
【化4】

【0035】
以上の(B)成分中の芳香族を有する重合性化合物は、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができ、更にその他の重合性化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0036】
(B)成分中の芳香族を有しない重合性化合物として、具体的には、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、アリール化ビニル等が挙げられるが、これらのうち透明性の観点から、(メタ)アクリレートやアリール化ビニルであることが好ましい。(メタ)アクリレートとしては、単官能のもの、2官能以上の多官能のもののいずれも用いることができる。
【0037】
(B)成分中の芳香族を有しない重合性化合物として、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、下記一般式(5)に示される2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
上記一般式(5)中、R7及びR8は、それぞれ水素原子又はメチル基である。またR9は以下の一般式(6)、(7)又は(8)に示すものである。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
上記一般式(6)、(7)及び(8)において、R10〜R15はそれぞれ水素原子又はメチル基である。また、cは、1〜30の範囲である。d及びeは平均値であり、それぞれ1〜15の範囲である。また、f、g及びhもそれぞれ平均値であり、1〜10の範囲である。
【0044】
以上の(B)成分中の芳香族を有さない重合性化合物は、上述の芳香族を有する重合性化合物を所定量含んだ上で、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができ、更にその他の重合性化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0045】
〔(C)光重合開始剤〕
(D)光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.03〜3.0質量部の範囲である。(C)成分の含有量が0.03質量部未満であると、光の照射によって十分に硬化反応が進行せず好ましくない。3.0質量部を超えると、(C)成分に由来する着色の影響が大きくなる結果、可視光波長領域における透明性が低下するため好ましくない。感光性樹脂組成物の光硬化性と可視光波長領域における透明性という点から、(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.5質量部であり、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0046】
(C)光重合開始剤として、(C−1)α−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤及びグリオキシエステル系光開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(C−2)フォスフィンオキシド系光開始剤を含有することが好ましい。このような特定の(C)光重合開始剤を用いることで着色が少なく、可視光波長領域において透明性の高い硬化物が得られる。
【0047】
(C−1)成分であるα−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,5,2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、等が挙げられる。
また、グリオキシエステル系光開始剤としては、オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルやこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、着色が少なく、可視光波長領域において透明性が高いという点から、オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0048】
(C−2)成分であるフォスフィンオキシド系光開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシドや、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィンオキシド、これらの混合物等が挙げられる。このような光開始剤を用いると少ない光照射量で硬化が可能となるだけでなく、フォトブリーチ能を有するため、得られた光硬化物は可視光領域で優れた透明性を有する。その中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシドは、特に可視光領域で優れた透明性を有し、また硬化性が高いことから好ましい。
【0049】
〔(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤〕
(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.0質量部の範囲である。(D)の含有量が0.01質量部未満であると、高温高湿信頼性が劣るため好ましくない。また、1.0質量部を超えると、光硬化の際に重合を阻害してしまうため好ましくない。感光性樹脂組成物の硬化性と高温高湿信頼性の観点から、(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.0質量部であり、更に好ましくは0.2〜1.0質量部である。
【0050】
(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、メチル基とt−ブチル基を同一芳香環上に1個ずつ有するフェノール基を1分子中に一つ以上有することを必須とするヒンダードフェノール系酸化防止剤であって、下記式(9)で示されるものであることが特に好ましい。これらの化合物を用いると、耐熱信頼性を向上させることができ、かつ光硬化の際の重合阻害が小さいために、硬化性が良好である。また硬化に必要な光の照射量が少なくて済むために生産性が高い。
【0051】
【化9】

【0052】
上記式(9)のXは、以下に示す式(10)、(11)の2価の基のいずれかである。
【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
〔その他の添加剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、必要に応じて、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、レベリング剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤、蛍光増白剤等のいわゆる添加剤を本発明の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0056】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、適当な有機溶媒を用いて希釈し、感光性樹脂ワニスとして使用することができる。ここで用いる有機溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p−シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド等が挙げられる。
【0057】
これらの中で、溶解性及び沸点の観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドであることが好ましい。
これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、樹脂ワニス中の固形分濃度は、通常20〜80質量%であることが好ましい。
【0058】
〔感光性樹脂ワニス〕
感光性樹脂ワニスを調合する際は、撹拌により混合することが好ましい。撹拌方法については特に制限はないが、撹拌効率の観点からプロペラを用いた撹拌が好ましい。撹拌する際のプロペラの回転速度には特に制限はないが、10〜1,000min-1であることが好ましい。10min-1以上であると、(A)〜(D)成分及び有機溶剤のそれぞれの成分が十分に混合されるため好ましく、1,000min-1以下であるとプロペラの回転による気泡の巻き込みが少なくなるため好ましい。以上の観点から50〜800min-1であることがより好ましく、100〜500min-1であることが特に好ましい。
【0059】
撹拌時間についても特に制限はないが、1〜24時間であることが好ましい。1時間以上であると、(A)〜(D)成分及び有機溶剤のそれぞれの成分が十分に混合されるため好ましく、24時間以下であると、ワニス調合時間を短縮することができ、十分な生産性が得られるため好ましい。
【0060】
調合した感光性樹脂ワニスは、孔径50μm以下のフィルタを用いて濾過するのが好ましい。孔径50μm以下のフィルタを用いることで、大きな異物等が除去されて、ワニス塗布時にはじき等を生じることがなく、またコア部を伝搬する光の散乱が抑制されるため好ましい。以上の観点から、孔径30μm以下のフィルタを用いて濾過するのが更に好ましく、孔径10μm以下のフィルタを用いて濾過するのが特に好ましい。
【0061】
調合した感光性樹脂ワニスは、減圧下で脱泡することが好ましい。脱泡方法には、特に制限はなく、具体例としては真空ポンプとベルジャー、真空装置付き脱泡装置を用いることができる。減圧時の減圧度には特に制限はないが、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤が沸騰しない範囲が好ましい。減圧脱泡時間には特に制限はないが、3〜60分であることが好ましい。3分以上であると、樹脂ワニス内に溶解した気泡を取り除くことができるため好ましく、60分以下であると、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤が揮発することがないため好ましい。
【0062】
〔感光性樹脂フィルム〕
以下、本発明の感光性樹脂フィルムについて説明する。
本発明の感光性樹脂フィルムは、前記感光性樹脂組成物からなり、前記(A)〜(D)成分を含有する感光性樹脂ワニスを好適な基材フィルムに塗布し、乾燥等の方法を用いて溶媒を除去して、感光性樹脂層(以下単に「樹脂層」という場合がある。)を形成することにより容易に製造することができる。また感光性樹脂組成物をワニス化することなく、直接基材フィルムに塗布して製造してもよい。
【0063】
基材フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0064】
これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホンであることが好ましい。
【0065】
基材フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、3〜250μmであることが好ましい。3μm以上であれば、十分なフィルム強度が得られ、250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる。以上の点から、基材フィルムの厚みは5〜200μmであることがより好ましく、7〜150μmであることが更に好ましい。なお、樹脂層との剥離性向上にために、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により離型処理が施されたフィルムを必要に応じて用いてもよい。
【0066】
基材フィルム上に感光性樹脂ワニス又は感光性樹脂組成物を塗布して製造した感光性樹脂フィルムは、必要に応じて保護フィルムを樹脂層上に貼り付け、基材フィルム、感光性樹脂組成物又は感光性樹脂硬化物からなる樹脂層及び保護フィルムの3層構造としてもよい。
【0067】
保護フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンであることが好ましい。なお、樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により離型処理が施されたフィルムを必要に応じて用いてもよい。
【0068】
保護フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、10〜250μmであることが好ましい。10μm以上であれば、十分なフィルム強度が得られ、250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる。以上の点から、保護フィルムの厚みは15〜200μmであることがより好ましく、20〜150μmであることが更に好ましい。
【0069】
本発明の感光性樹脂フィルムの樹脂層の厚みについては特に制限はないが、乾燥後の厚みで、通常は5〜500μmであることが好ましい。5μm以上であれば、必要な厚みを有しているため、感光性樹脂フィルム又は該フィルムの硬化物の強度が十分となり、500μm以下であれば、乾燥を十分に行え、樹脂フィルム中の残留溶媒量が減少し、該フィルムの硬化物を加熱した時に発泡等が起こり難くなる。
【0070】
このようにして得られた感光性樹脂フィルムは、例えばロール状に巻き取ることによって容易に保存することができる。又はロール状のフィルムを好適なサイズに切り出して、シート状にして保存することもできる。
【0071】
〔感光性樹脂硬化物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、素早く光硬化することができる。ここで厚み0.5mm、光照射量3000mJ/cm2にて得られる硬化物の反応率を100%として、100mJ/cm2照射時の反応率が80%以上であることが好ましい。このような材料を用いると成形品の生産性に優れた材料を得ることができる。
【0072】
本発明で使用する硬化のための光の種類については、硬化反応が進むものであれば特に光に制限はないが、速硬化性の点から光はUV光であることが好ましく、また(C)光開始重合剤の吸収波長の点からUV光の中でも365nmのi線により硬化させることがより好ましい。365nmのi線を放出する光源としては特に制限はなく、光源の例としては低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等の水銀ランプの他、タングステンランプ、キセノンランプ、ガスレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。硬化に必要な照射量は、求める硬化物の厚みや屈折率等にも異なるが、一般的には照度1〜1000mW/cm2にて、10〜10000mJ/cm2照射することで硬化物を得ることができる。
【0073】
得られた硬化物について、硬化物の屈折率が1.49以上であることが好ましいく、1.495以上であることがより好ましい。屈折率が1.49以上であることにより、光透過性を十分に向上させることができる。
【0074】
得られた硬化物は、380〜780nmの可視光領域において、厚み200μmの試験片における光線透過率が92%以上であることが好ましい。光線透過率が92%以上の硬化物を用いると、光の照度を落とすことなく、かつ光源の色味を変えることなく光を伝播することが可能となる。
【0075】
得られた硬化物は、厚み200μmにおいてヘイズが3%以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましい。ヘイズが3%以下であることにより、十分な透明性を有する硬化物を得ることができる。
【0076】
また、本発明の感光性樹脂組成物は光、熱等によって硬化反応又は重合反応させることによって、硬化物を得ることが可能である。その際、前もってシート、フィルム、短冊等の任意の形状にしておき、その後硬化反応等させることで、任意形状を有する硬化物を得ることも可能である。このようにして得られた硬化物は、空気クラッド中で用いることで、照明デバイス用の可視光導光路として用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施例を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0078】
[実施例1]
(1)感光性樹脂組成物の調製
容量200mLの茶褐色ポリ瓶に、(A)アクリル重合体として、「ヒタロイドHA−3204EB−1E」(重量平均分子量:86,000、水酸基価:30mgKOH/g、酸価:3.8mgKOH/g、ガラス転移点:70℃、樹脂分含有量37質量%、酢酸エチル/酢酸ブチル混合溶液、日立化成工業(株)製)を111g、(B)重合性化合物として、「NKエステル APG−400」(ポリプロピレングリコールジアクリレート;平均PO鎖長=7、新中村化学工業(株)製)を30.0g、「ファンクリル FA−321A」(ビスフェノールA骨格、EO変性ジアクリレート;平均EO鎖長=10、日立化成工業(株)製)を20.0g、(C)光重合開始剤として、「IRGACURE754」(オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)を0.1g、「DAROCURE−TPO」(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)を0.1g、(D)フェノール系酸化防止剤として、「アデカスタブ AO−80」(ヒンダートフェノール系酸化防止剤、ADEKA(株)製)を0.2g、アセトン10gを配合し、ミックスローターを用いて室温で12時間撹拌した。得られた混合物を孔径2μmのメンブレンフィルターを用いて加圧ろ過し、10mmHgにて真空脱気して感光性樹脂組成物を調製した。
【0079】
(2)感光性樹脂フィルムの作成
(1)で調製した感光性樹脂組成物を、PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名A53、厚み50μm)の離型処理面上に塗工機(株式会社ヒラノテクシード製、商品名マルチコーターTM−MC)を用いて塗布し、100℃で20分乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名A31、厚み25μm)を貼付け、感光性樹脂組成物フィルムを得た。このとき樹脂層の厚みは、塗工機のギャップを調節することで任意に調製可能であるが、本実施例では硬化後の膜厚が200μmとなるように調製した。
【0080】
(3)硬化物の作成
(2)で得られたフィルムを用い、離型PETフィルム上から紫外線露光機(大日本スクリーン株式会社製、商品名MAP−1200−L)を用いて2000mJ/cm2UVを照射した。その後、基材フィルムと保護フィルムを剥がし、フィルム状光硬化物を得た。その後任意形状に試験片を切り出し、各種測定に用いた。
【0081】
(4)透過率の評価
(3)で得られた硬化物を4cmx4cmサイズに切り出したサンプルを評価に用いた。日立製作所(株)社製分光光度計 U−3310を用い、測定波長200〜800nmにて透過率を測定した。測定結果から、420nm、560nm、780nmの3点について評価した。得られた硬化物について評価したところ、透過率は92%(420nm)、92%(560nm)、92%(780nm)であり、透明性は良好であった。
【0082】
(5)屈折率測定
(3)で得られた硬化物を1cmx2cmサイズに切り出したサンプルについて、(株)アタゴ製 アッベ屈折計T2を用いて、測定温度23℃、波長589nm(D線)にて屈折率を測定したところ、屈折率は1.495であった。
【0083】
(6)へイズ測定
(3)で得られた硬化物(厚さ200μm)を2cmx2cmサイズに切り出したサンプルについて、日本電色工業(株)製 色度計300Aを用いて、測定温度23℃にてヘイズを測定したところ、ヘイズは、厚み200μmにおいて、2.4%であった。
【0084】
(7)白色LED透過強度の測定方法
図1を用いて説明する。図1は、白色LED透過光強度比を測定する装置の平面図(上)及び正面図(下)である。(3)で得られた硬化物を1cmx10cmサイズに切り出したサンプル3を評価に用いた。光源2として、サイド発光型白色LEDを用い、入力電流15mAにて発光させた。サンプル3を基板1上に載置し、端面より白色LED光(光源の透過強度比=4.2)を入光した。反対側の端面から出てきた光を、大塚電子(株)社製 マルチ測光システム MCPD−3000を用いて透過光のスペクトルを測定し、出てくる光のピーク強度から、透過強度比を以下式に従って算出した。
【0085】
透過強度比=(Int460/Int560
(Int460:460nm付近に見られる主にB帯に起因するピークの強度
Int560:560nm付近に見られる主にG帯、R帯の混合光に起因するピークの強度。)
透過強度比は2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。そこで、透過強度比が1.5未満のものは×、1.5以上2.0未満のものは△、2.0以上2.5未満のものは○、2.5以上のものは◎とした。
得られた硬化物について評価したところ、透過強度比は3.1であり、透過光は、白色LED光源と同様の白い光であったため、判定を◎とした。
【0086】
(8)高温高湿信頼性試験
(7)で評価した試験片を85℃/85%RHに調製されたオーブンに入れた。250時間後に取り出し、(7)と同様に白色LED透過強度を測定したところ、透過強度比は2.0であり、透過光は、白色LED光源と同様の白い光であった。
【0087】
[実施例2〜4、及び比較例1〜3]
表1及び表2の配合組成に従い、実施例1と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物を得た後、実施例1と同様に硬化物を作成し、評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
(表1、2中の説明)
A−1:アクリルアクリレート共重合体(商品名ヒタロイドHA3204EB−1E、重量平均分子量:86,000、水酸基価:30mgKOH/g、酸価:4.6mgKOH/g、ガラス転移点:70℃、樹脂分含有量45質量%、酢酸エチル/酢酸ブチル混合溶液、日立化成工業(株)製)
B−1:PO変性ジアクリレート(商品名APG−400、平均PO鎖長=7、新中村化学工業(株)社製)
B−2:PO変性ジアクリレート(商品名FA−P240A、平均PO鎖長=7、日立化成工業(株)社製)
B−3:EO変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名FA−321A、平均EO鎖長=10、日立化成工業(株)社製)
B−4:EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(商品名FA−321M、平均EO鎖長=10、日立化成工業(株)社製)
C−1:グリオキシエステル系光開始剤(オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(商品名IRGACURE754、チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)
C−2:フォスフィンオキシド系光開始剤(2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィンオキシド)(商品名DAROCUR−TPO、チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)
D−1:フェノール系酸化防止剤(3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)(商品名アデカスタブAO−80、ADEKA(株)製)
【0091】
実施例1〜4では、可視光波長領域において高い透明性及び高い屈折率を有し、かつ優れた高温高湿信頼性を有している。一方で、比較例1、2においては、高い屈折率を得ることができなかった。比較例3では、屈折率は高いが、透明性が劣る結果となった。
【0092】
以上述べたように、可視光波長領域における高い透明性、及び高熱高湿信頼性を有し、更に光透過性を向上させるために屈折率を向上させた感光性樹脂組成物、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びそれを光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物は、可視光波長領域における高い透明性、高熱高湿信頼性を有し、更に光透過性を向上させるために屈折率を向上させた感光性樹脂組成物であり、感光性樹脂ワニス、感光性樹脂フィルム、及びこれらを光硬化させた感光性樹脂硬化物を得ることができる。従って、これらは、可視光導光路や導光材料等の用途に最適である。
【符号の説明】
【0094】
1.基板
2.光源
3.フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル重合体、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む感光性樹脂組成物であって、
(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有量が30〜70質量%、(B)成分の含有量が30〜70質量%であり、
(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、(C)成分の含有量が0.03〜3.0質量部、及び(D)成分の含有量が0.01〜1.0質量部であり、
(B)重合性化合物は、芳香族を有する重合性化合物を含み、その含有量が、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜40質量%であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)重合性化合物が、不飽和二重結合基を有する化合物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)重合性化合物が、2官能以上の多官能性の重合性化合物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族を有する重合性化合物が、ビスフェノールA骨格を有する化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスフェノールA骨格を有する重合性化合物が、下記式(1)で表される重合性化合物である請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(上記式中、X1、X2は、それぞれ水素原子又はメチル基であり、m、nは正の整数で、m+nは2〜14の範囲内である。)
【請求項6】
前記感光性樹脂組成物に光を照射して硬化させた硬化物の屈折率が1.49以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光性樹脂組成物に光を照射して硬化させた硬化物の波長470nmにおける光透過率が、厚み200μmにおいて92%以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記感光性樹脂組成物に光を照射して硬化させた硬化物のヘイズが、厚み200μmにおいて3%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物及び有機溶媒を含有する感光性樹脂ワニス。
【請求項10】
請求項9に記載の感光性樹脂ワニスを基材フィルム上に塗布し、乾燥してなる感光性樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物、請求項9に記載の感光性樹脂ワニス、又は請求項10に記載の感光性樹脂フィルムに光を照射し、硬化してなる感光性樹脂硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の感光性樹脂硬化物よりなる可視光導光路。

【図1】
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【公開番号】特開2012−7017(P2012−7017A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141947(P2010−141947)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】