説明

感温インジケータ及び感温インジケータ装置

【課題】感温材が内包されたカプセルを備える感温インジケータを使用する際に、指の温度の影響を受けることなく、またカプセルを容易に破壊することができる感温インジケータを提供する。
【解決手段】感温材が内包されたカプセル5を破壊することによって、温度が所定温度以上あるいは所定温度以下になったことを不可逆的に示す感温インジケータ3であって、凹部4aが形成された可塑性材料からなる本体ベース4と、前記凹部4a内に収容された、感温材が内包されたカプセル5と、前記凹部4aの上部に載置された吸収部材6と、前記吸収部材6を覆うと共に前記カプセル5を前記凹部4a内に封止し、前記吸収部材6の上面の一部が露出する貫通孔7aが形成された表示ラベル7とを有し、前記表示ラベル7が押圧されることにより、前記本体ベース4の凹部4aが潰され、前記カプセル5が破壊される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度が所定温度以上あるいは所定温度以下になった履歴を残すために不可逆的に示す感温インジケータ及び感温インジケータ装置に関し、特に、所定温度以上あるいは所定温度以下の環境に晒されたか否かを視認できる感温インジケータ及び感温インジケータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商品、製品の品質管理において、温度の管理は重要になってきている。例えば、生鮮食品、切花等の生鮮物、医薬品、半導体材料において、温度管理が十分に行なわれず所定の温度以上に晒されると、商品、製品の品質が低下し、あるいは劣化し、更には細菌が繁殖し、腐敗が生じる場合がある。
そのため、こうした商品、製品の温度管理は生産時のみならず、流通時、保管時において厳格に温度管理を行なう必要があり、その温度管理を継続的に監視していく手段のひとつとして、感温インジケータが用いられている。
【0003】
この感温インジケータとしては、特許文献1(特公平3−562号公報)に示すものが提案されている。この特許文献1に示された感温インジケータについて、図5及び図6に基づいて説明する。図において、符号51は基体であり、この基体1の上面には、平面視上リング形状の壁部51aが配置されている。更に、前記壁部51aの内側の基体51の上面には、多孔質パット52が設けられている。この多孔質パット52は、臨界温度以下で固相のままであり、臨界温度以上で液相に変化する染料と化学物質の溶液で飽和されている。
【0004】
また、前記壁部51aの上端面には、表示芯53が載置されている。更に、前記表示芯53の上方、壁部51aの外周面は、キャップ54で覆われている。このキャップ54は凸部形状、いわゆるドーム型に形成され、一定の外力が作用すると中央部が凹部形状に陥没変形するように形成されている。また、このキャップ54と壁部51aとで表示芯53を挟持し、表示芯53を保持している。尚、基体51の裏面には接着剤55が形成され、更にこの接着剤55を覆うように、リリースライナー56が設けられている。
【0005】
このように構成された感温インジケータ50にあっては、リリースライナー56を剥がし、基体51を商品、製品に貼付け、その後、キャップ54の中央部分を指で押し込み、表示芯53を多孔質パット52に接触させる。
そして、この感温インジケータ50が付けられた製品等が所定温度以上に晒されると、多孔質パット52の染料が固相から液相に変化し、着色された化学物質が表示芯53と多孔質パット52の間の濃度勾配により、多孔質パット52から表示芯53に移動する。その結果、表示芯53の着色状態を視認することにより、当該製品等が一度でも所定温度以上の環境に晒されたか否かを判断することができる。
【0006】
しかしながら、このような感温インジケータにあっては、その保管環境に拘わらず時間経過に伴い染料が液相に変化し、気化し、また化学物質の溶液が気化する虞があり、感温インジケータを保管する際、感温インジケータ自体の温度の温度管理をしなければならないという問題があった。
また、そのような感温インジケータにあっては、その作動後においても化学物質の溶液が気化し、履歴が消えてしまうという虞があった。
【0007】
これを解決するものとして、特許文献2(実開昭57−29829号公報)に示すように感温材をカプセルに内包した感温インジケータが提案されている。この感温インジケータを図7、図8に基づいて説明する。
図において、感温インジケータ60は、基体61と、前記基体61上に載置された、油溶性色素、顔料又は染料を、直鎖炭化水素または直鎖炭化水素の組成からなる混合体に混合したもの(いわゆる着色ワックス)が内包されたカプセル62と、前記カプセル62を覆うように設けられたろ紙63とを備えている。
【0008】
この感温インジケータ60を使用する際、前記カプセル61をろ紙63の上から、指で押圧し、カプセル62を潰す。その結果、所定温度以上になると、着色ワックスが溶解し、前記油溶性色素、顔料又は染料がろ紙へ浸透する。したがって、ろ紙62の着色状態を視認することにより、当該製品等が一度でも所定温度以上の環境に晒されたか否かを判断することができる。
【0009】
この特許文献2に示された感温インジケータ60にあっては、油溶性色素、顔料又は染料を直鎖炭化水素または直鎖炭化水素の組成からなる固溶体に混合したもの、いわゆる着色ワックスはカプセル内に内包させているため気化を抑制でき、常温で管理することができる。
【特許文献1】特公平3−562号公報
【特許文献2】実開昭57−29829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記カプセルは平状の基体上に載置されているに過ぎないため、カプセルを例えば指で押圧する際、カプセルが逃げてしまい、カプセルを破壊するのが困難であるという課題があった。
また、カプセルを破壊した際、指の温度を検出し、ろ紙が着色する場合があり、当該製品が所定温度以上の環境に晒されたと誤って判断される虞があった。
さらには、カプセルが破壊され、感温インジケータが作動した後においても、着色ワックスが気化してしまうという課題があった。
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、感温材が内包されたカプセルを備える感温インジケータを使用する際に、カプセルを容易に破壊することができる感温インジケータ及び感温インジケータ装置を提供することを目的とするものである。また、感温インジケータのカプセルを破壊する際、指の温度の影響を受けてしまうことにより、当該製品が所定温度以上の環境に晒されたと誤った認識がなされることのない感温インジケータ及び感温インジケータ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかる感温インジケータは、感温材が内包されたカプセルを破壊することによって、温度が所定温度以上あるいは所定温度以下になったことを不可逆的に示す感温インジケータであって、凹部が形成された可塑性材料からなる本体ベースと、前記凹部内に収容された、感温材が内包されたカプセルと、前記凹部の上部に載置された吸収部材と、前記吸収部材を覆うと共に前記カプセルを前記凹部内に封止し、前記吸収部材の上面の一部が露出する貫通孔が形成された表示ラベルと、前記表示ラベルの表面を覆う可塑性材料からなる透明シートとを有することを特徴がある。
このように、本発明に係る感温インジケータにあっては、カプセルが可塑性材料からなる本体ベースの凹部内に封止されているため、押圧することにより凹部を容易に潰し、カプセルを逃がすことなく確実に破壊することができる。
【0013】
また、前記表示ラベルの上面を覆う可塑性材料からなる透明シートを有することが望ましい。
このように可塑性材料からなる透明シート(例えばラミネートシール)により表示ラベルの上面を覆うことで、吸収部材に吸収された感温材を紫外線、色褪せ、乾燥、気化等から保護することができる。
また、外部から吸収部材に水分が浸入することを防ぐことができ、吸収部材内における低温時の結露を防止することができる。
【0014】
前記吸収部材の一端部が前記カプセルを収容した凹部の上部に載置されると共に、前記表示ラベルの前記貫通孔が、前記凹部の上部を除き、前記表示ラベルの外周方向に向かって形成されていることが望ましい。尚、前記吸収部材は細長形状に形成され、前記吸収部材の一端部が前記カプセルを収容した凹部の上部に載置されると共に、前記表示ラベルの前記貫通孔が、前記凹部の上部を除き、前記吸収部材の長手方向に沿って形成されているようにしてもよい。また、前記表示ラベルの前記貫通孔は、所定の距離をおいて複数形成されていることが好ましい。
このような吸収部材であれば、吸収部材の着色状態が前記貫通孔を通じて確認できるため、カプセルが置かれた位置からの着色部分の距離(貫通孔が複数並べられている場合は、着色した貫通孔の位置)により、所定温度以上あるいは所定温度以下の環境に晒された時間を容易に識別することができる。
また、所定温度未満で感温材が溶解し、カプセルが収容された凹部の上部が着色しても、表示ラベルの表示窓は前記凹部から離れているため、表示窓から吸収部材の着色が見えず、当該製品が所定温度以上の環境に晒されたと誤った認識がなされることを防止することができる。
【0015】
また、前記感温材は、所定温度以上あるいは所定温度以下で液相となる化学物質(例えばゲル)であることが望ましい。
このように、所定温度以下で液相となる化学物質を用いた感温インジケータは、レタス、じゃがいも、豆腐、炭酸飲料(ビール)等、凍結すると品質が劣化する商品、製品に好適に用いることができる。
また、前記感温材には、増粘剤を混合することが望ましく、その場合、周囲温度のばらつきに対する、液相となった感温材の前記吸収部材への浸透特性のばらつきを抑えることができる。
【0016】
また、前記感温材または前記カプセルは所定の色を持つ有色物質や着色されていることが望ましく、例えば、感温材の種類(設定温度、設定ラインアップ)毎に着色する色を設定することにより、そのカプセルまたは感温材が、何度で作動する製品かを目視により容易に識別することができる。また、容易に識別できることで、消費者だけでなく、製造工程においても作業者の誤組を防止することができる。
尚、カプセルに着色する場合、カプセル成形後に着色材を塗布してもよいし、或いは、カプセル成形時に材料に着色粉末を加えて着色してもよい。また、カプセルを2重構造とし、外側のカプセル(壁または膜)のみを着色するようにしてもよい。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明にかかる感温インジケータ装置は、前記感温インジケータと、前記感温インジケータを収容するケースとを備え、前記ケースは、前記感温インジケータが載置される板状の基体と、前記基体上に載置された前記感温インジケータを覆うカバーと、前記カバーに形成された、或いは別体で設けられた前記感温インジケータを押圧する押圧手段とを有し、前記押圧手段により前記感温インジケータが押圧されることにより、前記カプセルが破壊されることに特徴を有する。
【0018】
このように本発明にかかる感温インジケータ装置にあっては、押圧手段により前記カプセルを押圧し、前記カプセルを破壊するため、押圧する指の温度の影響を少なくして、カプセルを破壊することができる。
また、カプセルが可塑性材料からなる本体ベースの凹部内に封止され、押圧部は前記凹部の直上部に位置するため、表示パネル及び吸収部材を介して前記凹部に強い押圧力が加えられる。このため、凹部を容易に潰し、カプセルを逃がすことなく確実に破壊することができる。
【0019】
また、前記押圧手段は、陥没可能な凸状のドーム型形状に形成された前記カバーの中央部に形成された、下方に突出した押圧部であり、前記カバーを陥没させて、前記カプセルを前記押圧部により押圧することにより、前記カプセルを破壊することが望ましい。
このように、カバーに押圧手段を形成することにより、指の熱を断熱しつつ、部品点数を削減でき、安価に製作することができる。
【0020】
また、前記感温インジケータを覆うカバーに形成された、或いは別体で設けられた前記カバー内空間に向けて突出する1つまたは複数の突起部を有し、前記突起部が前記感温インジケータに係止し、前記感温インジケータが前記ケース内に保持されることが望ましい。
このように、カバーに形成された、或いは別体で設けられた突起部で感温インジケータを保持することにより、押圧手段で感温インジケータを押圧した際の感温インジケータの湾曲等による、カプセルが封止された凹部の位置ずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる感温インジケータによれば、感温材が内包されたカプセルを備える感温インジケータを使用する際に、カプセルを容易に破壊することができ、また、カプセルを破壊する際、指の温度の影響を受けてしまうことにより、当該製品が所定温度以上の環境に晒されたと誤った認識が生じないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、図1は本発明の一実施形態にかかる感温インジケータ装置を示す分解斜視図、図2は図1に示した感温インジケータ装置の設置前の状態を示す断面図、図3は図1に示した感温インジケータ装置のセット後の状態を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、この感温インジケータ装置1は、土台となる円盤状(板状)の基体2と、基体2の上部に載置される感温インジケータ3と、前記感温インジケータ3の全体を上方から覆うためハット(縁のある帽子)形状に形成され、その縁部(水平部)が前記基体2の縁部と(例えば超音波溶着等により)接合される透明な合成樹脂(例えばPET(ポリエチレンテレフタラート))から成るカバー9とを備えている。即ち、前記基体2とカバー9とが、感温インジケータ3のケースとして機能している。感温インジケータ3は、カバー9に覆われることにより、図2に示すようにカバー9に対し、少なくとも横方向の位置決めがなされる。
【0024】
尚、商品、製品に対して、この感温インジケータ装置1を確実に貼り付けるために、土台となる基体2の裏面に接着材あるいは粘着材を形成するのが好ましい。その際、接着材、粘着材の上に剥離紙(図示せず)を設け、使用する際、この剥離紙を剥がして使用するように構成するのが好ましい。
【0025】
前記感温インジケータ3は、中央部に凹部4aが形成された可塑性材料(例えばPETフィルム)からなる本体ベース4と、前記凹部4a内に収容された、感温材が内包されたカプセル5と、前記凹部4aの上部に載置された細長形状の吸収部材6と、前記吸収部材6を覆うと共に前記カプセル5を凹部4a内に封止し、前記吸収部材6の上面の一部が露出する複数の表示窓7a(貫通孔)が形成された表示ラベル7とを有している。
【0026】
さらに、表示ラベル7に貼り付けられ、表示ラベル7の上面を覆う可塑性材料からなる薄い透明シート8(例えばラミネートシール)を有している。
この透明シート8で表示ラベル7の上面を覆うことにより、吸収部材6及び吸収部材6に吸収された感温材を紫外線、色褪せ、乾燥、気化等から保護することができる。
また、外部から吸収部材6に水分が浸入することを防ぐことができ、吸収部材6内における低温時の結露を防止することができる。
【0027】
尚、感温インジケータ3は単体でも使用することができるが、前記基体2とカバー9からなるケースを利用することにより、感温材が内包されたカプセルをより容易に破壊することができ、また、指の温度による感温材の溶解を確実に防止することができる。
また、この感温インジケータ3をカバー9で覆わず単体で用いる場合には、本体ベース4の下面に接着剤あるいは粘着材を形成するのが望ましい。その際、接着材、粘着材の上に剥離紙(図示せず)を設け、使用する際、この剥離紙を剥がして使用するように構成するのが好ましい。
【0028】
前記感温インジケータ3について、より詳細に説明すると、前記本体ベース4は、平面視上円形形状に形成され、中央に前記カプセル5を収容するための凹部4aが形成されることによって、その周りに円環状の水平部4bを有している。
図示するように細長形状に形成された吸収部材6は、その一端部が、前記カプセル5の上部に位置するように本体ベース4の径方向に沿って水平部4bの上部に載置される。そして、基体ベース4の水平部4bと表示ラベル7の下面とが貼り合わされることにより、吸収部材6がサンドイッチ状に狭持され、吸収部材6の脱落、位置ずれが防止されると共に、カプセル5が凹部4a内に封止される。
【0029】
このとき、表示ラベル7の径方向(即ち吸収部材6の長手方向)に沿って所定の距離をおいて設けられた複数の(図では3つ)表示窓7aからは吸収部材6の上面が露出するようになされている。
尚、本実施の形態においては、前記表示窓7aは複数設けられるものを好ましい例として示すが、本発明の感温インジケータにあっては、前記表示窓は、前記複数の表示窓7aに替えて、吸収部材6に沿って細長く形成された1つの貫通孔であってもよい。
【0030】
また、前記表示窓7aは、図2に示すように凹部4aの上部には設けられない。そのように構成することにより、前記カプセル5を破壊した際に、所定温度未満で感温材が溶解し、吸収部材6の一端部(凹部4aを覆う部分)が着色しても、表示窓7aから吸収部材6の着色が見えず、誤認識を防止することができる。
また、表示ラベル7の上面には、表示窓7aから見える部分(前記吸収部材4)が着色(発色)している場合には、所定温度以上の環境下に置かれたことを示す注意書き等が記載されている。
【0031】
また、前記カプセル5または、それに内包される感温材は、所定の色を持つ有色物質や着色されていることが望ましい。例えば、感温材の種類(設定温度、設定ラインアップ)毎に着色する色を設定することにより、そのカプセル5または感温材が、何度で作動する製品かを目視により容易に識別することができる。また、容易に識別できることで、消費者だけでなく、製造工程においても作業者の誤組を防止することができる。
尚、カプセル5に着色する場合、カプセル成形後に着色材を塗布してもよいし、或いは、カプセル成形時に材料に着色粉末を加えて着色してもよい。また、カプセルを2重構造とし、外側のカプセル(壁または膜)のみを着色するようにしてもよい。
【0032】
また、前記カプセル5内に内包される感温材は、例えば、油溶性色素、顔料又は染料を直鎖炭化水素または直鎖炭化水素の組成からなる混合物に混合したもの、いわゆる着色ワックスを用いることができる。この着色ワックスには、増粘剤を混合することが望ましく、その場合、液相となったワックスの吸収部材6への浸透特性のばらつきを抑えることができる。尚、増粘剤としては例えば、ワックスとの相性のよいセプトン(登録商標)を用いることができる。
また、感温材としては、水に溶解せず、所定温度にて溶融、変色する化学物質であっても良い。尚、以下の説明においては、着色ワックスを例に説明する。
また、吸収部材6は感温材を吸収できるものであればよく、従来から用いられている、ろ紙、多孔質体(フィルム、スポンジ等)、シリカゲル等を用いることができる。
【0033】
また、カバー9は前記のようにハット形状に形成され、感温インジケータ3全体を覆う凸部9aと、その周りに形成された円環状の水平部9bとを有している。
前記凸部9aについて、より詳しく説明すると、凸部9aは、前記水平部9bから略垂直に立ち上がった立上部9cと、前記立上部9cの頂部に形成された断面円弧状の肩部9dと、前記肩部9dから中心部に向かって昇る、いわゆるドーム状の傾斜面部9eと、傾斜面部9eの中央に下方に突出して設けられた押圧部9f(押圧手段)とを備えている。
【0034】
前記傾斜面部9eは、上方からの外力が作用すると、図3に示すように凸状から凹状に陥没変形するように形成されている。尚、カバー9の水平部9bと基体2の縁部との接合部に、感温インジケータ3の収容空間のエアを抜くための連通孔(図示せず)が設けられ、それにより、傾斜面部9eが凹状に陥没変形した後、元に戻らないようになされている。また、前記連通孔は、そこから水分が浸入することのない径に形成されている。
また、押圧部9fを陥没変形可能な傾斜面部9eに設けることにより、指で押圧部9fを押し込んだ際に、スナップ感を与えることができ、また、傾斜面部9eの反転力により確実にカプセル5を押圧して破壊することができる。
また、前記のようにカバー9に押圧部9fを形成することにより、部品点数を削減でき、安価に製作することができる。
【0035】
また、前記カバー9を感温インジケータ3に被せることで、感温インジケータ3は凸部9aに覆われるが、そのとき感温インジケータ3の外周部が、前記立上部9cの内周面に係止して感温インジケータ3の位置決めがなされ、カバー9の押圧部9fが表示ラベル7の中央部上方に位置するように構成されている。
さらには、カバー9の肩部9dには、感温インジケータ3の収容空間(カバー9内の空間)に向けて突出する1つまたは複数(図では3つ)の突起部9gが形成され、この突起部9gが感温インジケータ3の上面に係止し、感温インジケータ3がカバー9内に保持されている。
このように感温インジケータ3が突起部9gで保持されることにより、押圧部9fで感温インジケータ3を押圧した際の感温インジケータ3の湾曲等による、カプセル5が封止された凹部4aの位置ずれを防止することができる。
【0036】
ここで、表示ラベル7の中央部は、本体ベース4の凹部4aの直上位置であるため、カバー9の押圧部9fを下方に向けて指で押し込むことにより、図3に示すように表示ラベル7の中央部が下方に押し込まれ、可塑性材料からなる凹部4aが容易に潰され、カプセル5が破壊されるようになされている。
また、カバー9は透明な部材で形成されており、吸収部材6の着色(発色)状態を上方から表示窓7aを介し容易に視認することができるようになされている。
【0037】
このように構成された感温インジケータ装置1は、図2に示す状態で保管される。この状態にあっては、着色ワックスはカプセル5によって覆われているため、所定の温度以上の環境下に晒されても、着色ワックスの気化は抑制され、吸収部材6へ浸透することもないため、常温での長期運送、保存が可能であり、且つ、誤動作による製品の不良が抑制される。
【0038】
そして、この感温インジケータ装置1を設置する際、図3に示すように、カバー9の上方から押圧部9fを指で押圧し、傾斜面部9eを凹状に変形させ、押圧部9fを下方に移動させる。
この押圧部9fの下方への移動に伴い、感温インジケータ3が基体2に対して押圧され、本体ベース4aが潰されてカプセル5が破壊され、セット状態になされる。
【0039】
このようにセット状態になす操作において、カプセル5が可塑性材料からなる本体ベース4の凹部4a内に封止され、押圧部9fは前記凹部4aの直上部に位置するため、表示パネル7及び吸収部材6を介して前記凹部4aに強い押圧力が加えられる。このため、凹部4aは容易に潰れ、カプセル5を逃がすことなく確実に破壊することができる。
【0040】
また、このセット状態になす操作において、押圧部9fは、カバー9の斜面部9eの中央から下方に突出した形状であり、且つ断熱部材で形成されているため、指の熱の着色ワックスへの伝熱は防止される。
尚、カバー9を用いず、感温インジケータ3を直接、当該製品に使用(セット)する場合も含め、所定温度未満で着色ワックスがある程度溶解しても、表示ラベル7の表示窓7aはカプセル5が収容された凹部4aから離れているため、表示窓7aから着色は見えず、誤認識を防止することができる。
【0041】
そして、この感温インジケータ装置1が設置された製品或いは所定雰囲気が所定温度以上の環境下に晒されると、着色ワックスが溶解し、吸収部材6に吸収される(図4(a)の浸透部6a)。
吸収部材6への着色ワックスの浸透が進行すると、その着色状態(発色状態)は、カバー9の上方から、透明なカバー9、透明シート8、表示ラベル7の表示窓7aを通して視認することができる(図4(b)の浸透部6a)。これにより、当該製品が一度でも所定温度以上の環境に晒されたか否かを判断することができる。
【0042】
また、吸収部材6が細長形状であって、その長手方向に沿って表示窓7aが複数形成されているため、時間経過と共にカプセル5の位置に近い表示窓7aから順に着色状態が変化する(図4(c)の浸透部6a)。即ち、所定温度以上に晒された後に所定の温度以下になれば、着色ワックスは凝固し始める為、その浸透が停止し、各表示窓7aの着色状況を見ることにより、所定温度以上の環境に晒された時間を容易に識別することができる。
また、所定温度以上に晒された後、所定温度以下になることが複数回にわたる場合、その都度、着色ワックスは吸収部材6への浸透と停止を繰り返すため、所定時間に晒された積算時間を知ることもできる。
【0043】
尚、上記実施形態にあっては、油溶性色素、顔料又は染料を直鎖炭化水素または直鎖炭化水素の組成からなる固溶体に混合したもの、いわゆる着色ワックスがカプセルに内包された場合について説明したが、感温材としては、所定温度以上で液相となる前記着色ワックス以外に、所定温度以下で液相となる着色されたゲル(アドバンスト・ソフトマテリアル社製:商品名スライドリングゲル)を用いることができる。
このように、所定温度以下で液相となる着色されたゲルを用い感温インジケータは、レタス、じゃがいも、豆腐、炭酸飲料(ビール)等、凍結すると品質が劣化する商品、製品に好適に用いることができる。
【0044】
また、前記実施の形態においてカバー9は透明な合成樹脂としたが、カバー9を例えばA−PET(アモルファスPET)等の所定温度以上で曇る、或いは白濁する特性を有する合成樹脂で形成することにより、カバー9自体を感温インジケータとしても利用することができる。
その場合、A感温インジケータ装置1を設置した環境温度が所定温度以上となった場合にカバー9が曇るため、感温インジケータ3による温度管理を含め2つの温度管理が可能である。
【0045】
また、前記実施の形態において、吸収部材6は細長形状に形成されたものを示したが、本発明に係る感温インジケータにあっては、細長形状に限定されるものではない。即ち、吸収部材6の一端部がカプセル5を収容した凹部4aの上部に載置されると共に、表示ラベル7の貫通孔が、前記凹部4aの上部を除き、前記表示ラベル7の外周方向に向かって形成されていればよい。例えば、そのように形成された吸収部材6として、螺旋状に形成されたものを用いることができ、その場合、吸収部材6の中心部が、カプセル5を収容した凹部4aの上部に載置される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる感温インジケータは、生鮮食品、冷凍食品、切花、医薬品、半導体材料等の温度管理を必要とする製品、商品の生産、流通、保管の分野において好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる感温インジケータ装置を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した感温インジケータ装置のセット前の状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した感温インジケータ装置のセット後の状態を示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示したセット後の感温インジケータ装置において、吸収部材への着色ワックスの浸透状態を示す断面図である。
【図5】図5は、従来の感温インジケータを示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示した感温インジケータのセット前の状態を示す断面図である。
【図7】図7は、従来の他の感温インジケータを示す斜視図である。
【図8】図8は、図7に示した感温インジケータの断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 感温インジケータ装置
2 基体
3 感温インジケータ
4 本体ベース
4a 凹部
4b 水平部
5 カプセル
6 吸収部材
7 表示ラベル
7a 表示窓(貫通孔)
8 透明シート
9 カバー
9a 凸部
9b 水平部
9c 立上部
9d 肩部
9e 傾斜面部
9f 押圧部(押圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温材が内包されたカプセルを破壊することによって、温度が所定温度以上あるいは所定温度以下になったことを不可逆的に示す感温インジケータであって、
凹部が形成された可塑性材料からなる本体ベースと、
前記凹部内に収容された、感温材が内包されたカプセルと、
前記凹部の上部に載置された吸収部材と、
前記吸収部材を覆うと共に前記カプセルを前記凹部内に封止し、前記吸収部材の上面の一部が露出する貫通孔が形成された表示ラベルとを有し、
前記表示ラベルが押圧されることにより、前記本体ベースの凹部が潰され、前記カプセルが破壊されることを特徴とする感温インジケータ。
【請求項2】
前記表示ラベルの上面を覆う可塑性材料からなる透明シートを有することを特徴とする請求項1に記載された感温インジケータ。
【請求項3】
前記吸収部材の一端部が前記カプセルを収容した凹部の上部に載置されると共に、前記表示ラベルの前記貫通孔が、前記凹部の上部を除き、前記表示ラベルの外周方向に向かって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された感温インジケータ。
【請求項4】
前記吸収部材は細長形状に形成され、前記吸収部材の一端部が前記カプセルを収容した凹部の上部に載置されると共に、前記表示ラベルの前記貫通孔が、前記凹部の上部を除き、前記吸収部材の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載された感温インジケータ。
【請求項5】
前記表示ラベルの前記貫通孔は、所定の距離をおいて複数形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された感温インジケータ。
【請求項6】
前記感温材は、所定温度以上あるいは所定温度以下で液相となる化学物質であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の感温インジケータ。
【請求項7】
前記感温材には増粘剤が混合されていることを特徴とする請求項6に記載の感温インジケータ。
【請求項8】
前記感温材または前記カプセルは所定の色に着色されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された感温インジケータ。
【請求項9】
前記請求項1乃至請求項8に記載の感温インジケータと、前記感温インジケータを収容するケースとを備え、
前記ケースは、前記感温インジケータが載置される板状の基体と、前記基体上に載置された前記感温インジケータを覆うカバーと、前記カバーに形成された、或いは別体で設けられた前記感温インジケータを押圧する押圧手段とを有し、
前記押圧手段により前記感温インジケータが押圧されることにより、前記カプセルが破壊されることを特徴とする感温インジケータ装置。
【請求項10】
前記押圧手段は、陥没可能な凸状のドーム型形状に形成された前記カバーの中央部に形成された、下方に突出した押圧部であり、
前記カバーを陥没させて、前記カプセルを前記押圧部により押圧することにより、前記カプセルを破壊することを特徴とする請求項9に記載の感温インジケータ装置。
【請求項11】
前記感温インジケータを覆うカバーに形成された、或いは別体で設けられた前記カバー内空間に向けて突出する1つまたは複数の突起部を有し、
前記突起部が前記感温インジケータに係止し、前記感温インジケータが前記ケース内に保持されることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の感温インジケータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−264891(P2009−264891A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114001(P2008−114001)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000228741)日本サーモスタット株式会社 (52)
【Fターム(参考)】