説明

感温変色性組成物及びそれを用いた感温変色性繊維

【課題】 鮮明な変色効果を発現できる耐光性に優れた感温変色性組成物を提供すると共に、高温加工により製造される繊維に応用した場合であっても、高い耐光性を維持できる感温変色性繊維を提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分と、トリアジン系紫外線吸収剤とから少なくともなる感温変色性組成物。前記(イ)成分がフルオラン誘導体である。マイクロカプセルに内包されてなる前記感温変色性組成物と、樹脂とからなる感温変色性繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感温変色性組成物及びそれを用いた感温変色性繊維に関する。更には、紫外線に対する劣化が生じ難く、繊維加工時の不具合が生じ難い感温変色性組成物及びそれを用いた感温変色性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感温変色性組成物中に紫外線吸収剤を添加することにより耐光性を付与する技術が用いられている。そのうち、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分からなる感温変色性組成物中に、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系、サリチル酸系化合物等を用いたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記特許文献の感温変色性組成物は、インキや塗料の形態で用いた場合、前記紫外線吸収剤により一定の耐光性が得られるものであるが、適用される形態によっては耐光性が得られ難く、特に、溶融紡糸等の高温条件で製造される繊維に用いた場合、前記紫外線吸収剤が昇華してしまい、効果が得られなくなることがあった。
【特許文献1】特開平11−105428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、鮮明な変色効果を発現できる耐光性に優れた感温変色性組成物を提供すると共に、高温加工により製造される繊維に応用した場合であっても、高い耐光性を維持できる感温変色性繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分と、トリアジン系紫外線吸収剤とから少なくともなる感温変色性組成物を要件とする。
更に、マイクロカプセルに内包されてなる前記感温変色性組成物と、樹脂とからなる感温変色性繊維を要件とする。
更に、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を内包するマイクロカプセルと、トリアジン系紫外線吸収剤と、樹脂とからなる感温変色性繊維を要件とする。
更には、前記(イ)成分がフルオラン誘導体であること、前記マイクロカプセルが樹脂全量に対して0.1〜30重量%の範囲で含有されること、前記樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合樹脂から選ばれるいずれか一種又は二種以上であること、前記感温変色性繊維の外周に保護層を設けてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、鮮明な変色効果を安定して発現できると共に、耐光性に優れた感温変色性組成物と感温変色性繊維を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記トリアジン系紫外線吸収剤は、感温変色性組成物(マイクロカプセル内を含む)や繊維を構成する樹脂中に添加することにより、ベンゾフェノン系やサリチル酸系の化合物に比べて高い耐光性を発現すると共に、繊維加工時においても昇華することなく組成中に存在するため、感温変色性繊維が高い耐光性を維持したまま、鮮明な変化効果を呈することができるものである。
【0007】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ペントキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−ペントキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ジ−p−トレイル−6−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2′−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−ヒィドロキシ−4−[(1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
特に、前記トリアジン系紫外線吸収剤のうち、分子量が400以上のものが高い耐熱性を発現することから好適である。
【0008】
前記トリアジン系紫外線吸収剤は、感温変色性色組成物に添加する場合は組成物全量中、繊維中に添加する場合は繊維構成組成全量中に0.5〜10重量%の範囲で添加することで、ブリードアウトすることなく優れた効果を呈する。
【0009】
前記感温変色性組成物(温度変化により可逆的な色変化を呈する可逆熱変色性組成物)に用いられる(イ)電子供与性呈色性有機化合物としては、従来から公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル等。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0010】
特に、(イ)成分としてフルオラン誘導体(フルオラン類)を用いた場合、フタリド類と比べてトリアジン系紫外線吸収剤がより高い効果を発現するため、消色状態での耐光性をより向上することができる。
【0011】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0012】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、4−(4−(1−メチルエトキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ブチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ペンチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ヘキシルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−ヘプチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、4−(4−オクチルオキシフェニル)スルホニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、それらの金属塩や、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1,2,3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
更に、フルオロアルコール化合物を用いることもでき、以下に例示する。
2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1,3−ビス(2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1,3−ビス(3−ヒドロキシ−1,1−ビストリフルオロメチルプロピル)ベンゼン、
1,4−ビス(2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、
1,4−ビス(3−ヒドロキシ−1,1−ビストリフルオロメチルプロピル)ベンゼン、
2−ヒドロキシメチル−ヘキサフルオロイソプロピルベンゼン、
3−ヒドロキシ−1,1−ビストリフルオロメチルプロピルベンゼン、等がある。
【0013】
(ハ)前記(イ)、(ロ)による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体である化合物としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が適用できる。また、前記各化合物を用いてマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル系外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために、炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
【0014】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0015】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0016】
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、カプリン酸2−メチルブチル、パルミチン酸1−エチルプロピル、ステアリン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸1−エチルヘキシル、ミリスチン酸1−エチルヘキシル、パルミチン酸1−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルペンチル、カプリル酸2−メチルペンチル、カプリン酸2−メチルペンチル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、カプロン酸1−エチルペンチル、パルミチン酸1−エチルペンチル、ステアリン酸1−メチルプロピル、ステアリン酸1−メチルオクチル、ステアリン酸1−メチルヘキシル、ラウリン酸1,1−ジメチルプロピル、カプリン酸1−メチルペンチル、パルミチン酸2−メチルヘキシル、ステアリン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ラウリン酸3,7−ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7−ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0017】
更には、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から高温側へ変化させる場合とで異なり、両曲線を合体するとループ状を示す)を示して変色する、温度変化に依存して色彩記憶性熱変色性を与えるためには、先に本出願人が提案した、特公平4−17154号公報に開示した、5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0018】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデルシ、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
【0019】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0020】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0021】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N−メチルアミド、カプリル酸N−メチルアミド、カプリン酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−メチルアミド、ミリスチン酸N−メチルアミド、パルミチン酸N−メチルアミド、ステアリン酸N−メチルアミド、ベヘニン酸N−メチルアミド、オレイン酸N−メチルアミド、エルカ酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−エチルアミド、ミリスチン酸N−エチルアミド、パルミチン酸N−エチルアミド、ステアリン酸N−エチルアミド、オレイン酸N−エチルアミド、ラウリン酸N−ブチルアミド、ミリスチン酸N−ブチルアミド、パルミチン酸N−ブチルアミド、ステアリン酸N−ブチルアミド、オレイン酸N−ブチルアミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、ミリスチン酸N−オクチルアミド、パルミチン酸N−オクチルアミド、ステアリン酸N−オクチルアミド、オレイン酸N−オクチルアミド、ラウリン酸N−ドデシルアミド、ミリスチン酸N−ドデシルアミド、パルミチン酸N−ドデシルアミド、ステアリン酸N−ドデシルアミド、オレイン酸N−ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N−メチルアミド、アジピン酸N−メチルアミド、グルタル酸N−メチルアミド、マロン酸N−メチルアミド、アゼライン酸N−メチルアミド、コハク酸N−エチルアミド、アジピン酸N−エチルアミド、グルタル酸N−エチルアミド、マロン酸N−エチルアミド、アゼライン酸N−エチルアミド、コハク酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−ブチルアミド、グルタル酸N−ブチルアミド、マロン酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−オクチルアミド、アジピン酸N−ドデシルアミド等が挙げられる。
【0022】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる必須三成分を含むことにより可逆的に変色する組成物を得ることができる。
各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、(ハ)成分5〜100の範囲である(前記割合はいずれも重量部である)。
前記感温変色性組成物は、水や有機溶剤中に添加した液状組成物や、樹脂中に添加した樹脂組成物(成形用、紡糸用)等の形態で使用できる。
【0023】
また、感温変色性組成物の光劣化を防止するために、感温変色性組成物中又は繊維組成物(樹脂組成物や液状組成物)中に光安定剤を含有させることができる。
前記光安定剤としては、酸化防止剤やHALS、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等の一重項酸素消光剤、オキシドジスムスターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等のスーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等の酸化反応を抑制する化合物を挙げることができる。更に、トリアジン系以外の紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0024】
前記した(イ)、(ロ)、(ハ)三成分や、該三成分とトリアジン系紫外線吸収剤からなる感温変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて、マイクロカプセル顔料として使用することができる。これにより、種々の使用条件において感温変色性組成物を同一の組成に保ち、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、同一の作用効果を奏することができる。
前記マイクロカプセル化は、従来から公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
尚、前記マイクロカプセル中に可逆熱変色性組成物を内包する際、前記光安定剤は可逆熱変色性組成物と共にマイクロカプセルに内包してもよいし、色材として適用される際に用いられるビヒクル中に添加することもできる。又、前記光安定剤をマイクロカプセルに内包すると共に、ビヒクル中にも添加することができる。
【0025】
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5〜30μmに設定される。この範囲ではカプセル壁膜が高い強度と透明性を有し、内包物のバランスがよくなるため、発色時に十分な色濃度を示すと共に、消色時の残色が少なくなるので、熱変色機能のバランスと変色鋭敏性が特に優れたものとなる。
粒子径が0.5μmを下回ると、良好な可逆熱変色性能が得られず、また、壁膜自体が薄膜化するために、繊維加工時における耐久性が乏しくなって実用性を満足し難くなる。また、粒子径が30μmを越えると、カプセル顔料自体の光透過性が極端に低下するため消色時の光透過性が低下する。
尚、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、得られる繊維の外径より小さいものが用いられる。
【0026】
更に、前記感温変色性組成物〔(イ)、(ロ)、(ハ)三成分及びトリアジン系紫外線吸収剤〕をマイクロカプセル形態の顔料としたもの、又は、(イ)、(ロ)、(ハ)三成分をマイクロカプセルに内包した顔料とトリアジン系紫外線吸収剤とを樹脂中に添加することにより得られる樹脂組成物を用いて感温変色性繊維を形成することができる。
尚、前記マイクロカプセルは、前記樹脂全量中に0.1〜30重量%の範囲で添加することにより、鮮明な色変化を発現する感温変色性繊維を形成できる。
【0027】
前記樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合樹脂から選ばれるいずれか一種以上が用いられる。
前記ポリアミド樹脂としては、6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン、6−6,6−12三元共重合ナイロン等の共重合ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン等が用いられ、ポリエステル樹脂としては、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、飽和脂肪族ポリエステル等が用いられる。
【0028】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン−エチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレンラバー、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物等が用いられる。
アクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂等のアクリロニトリルを含む共重合樹脂が用いられる。
更に、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合樹脂を用いることもできる。
【0029】
また、前記繊維の基体としてポリオレフィン樹脂を用いた場合には、全量中0.1〜30重量%の範囲でポリアミド樹脂をブレンドすることにより、前記感温変色性材料の消色状態における残色の発生が抑制できる。この際用いられるポリアミド樹脂としては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン、612−ナイロン、6−12共重合ナイロン、6−6,6共重合ナイロン、エポキシ樹脂硬化剤用ポリアミド等が例示できる。
【0030】
前記感温変色性繊維は、外径1〜50μmの範囲で好適に用いられる。前記範囲とすることで、繊維としての触感や風合いがよく、高い感温変色効果が得られることから、実用性に優れたものとなる。
【0031】
更に、前記感温変色性繊維の外周には保護層を設け、複合繊維形態として実用化することができる。
前記複合繊維形態は、感温変色性繊維(熱変色性樹脂相)と保護樹脂相(保護層)とが接合され、一体化されたものであればよく、芯鞘型に限らず、貼合型、海島型等の形態であってもよい。芯鞘型においては、保護樹脂相によって、熱変色性樹脂相の全周が被覆されているので、耐光堅牢性、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性等の耐久性を満たすと共に、光沢性を付与することができる。
前記保護樹脂相は、ポリアミド、ポリエステル等の繊維形成性の重合体の適用を拒まないが、熱変色性樹脂相の形成に適用されている樹脂と同質の樹脂が両相の界面の接合性に優れ、剥離の危険もなく、一体化した高強度の繊維物性を与えることができ、更には、同一の屈折率をもつ同一性状の樹脂の組み合わせであるから、繊維全体としての透明性、光沢性に富むため好適である。特に、同一構造の樹脂による芯鞘型の複合繊維形態が有効である。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例を示す。尚、実施例中の部は重量部である。
【0033】
表1に感温変色性組成物の実施例の組成を、表2に比較例の組成を示す。また、各組成の変色温度及び着色時の色調について表3に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
1.感温変色性組成物の調製
前記実施例1乃至6及び比較例1乃至3の各組成について、(イ)成分3部、(ロ)成分6部、(ハ)成分50部、紫外線吸収剤1部を混合攪拌することで感温変色性組成物を得た。
【0038】
2.感温変色性繊維Aの作成
前記感温変色性組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によりカプセル化することで、平均粒子径10μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(9種類)を得た。
得られた各可逆熱変色性マイクロカプセル顔料5部、各紫外線吸収剤3部、分散剤1部、ポリプロピレン−エチレンコポリマー91部をエクストルーダーにて180℃で溶融混合し、感温変色性樹脂組成物(ペレット)を得た。
更に、得られた樹脂組成物を汎用の溶融紡糸装置を用いて、180℃で20孔のダイスから溶融紡糸し、直径50μmのフィラメント20本からなるマルチフィラメント(感温変色性繊維)を得た。
【0039】
3.感温変色性繊維Bの作成
前記実施例1乃至6及び比較例1乃至3の各組成のうち、(イ)成分3部、(ロ)成分6部、(ハ)成分50部をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によりカプセル化することで、平均粒子径10μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(9種類)を得た。
得られた各可逆熱変色性マイクロカプセル顔料5部、各紫外線吸収剤3部、分散剤1部、6−12共重合ナイロン91部をエクストルーダーにて180℃で溶融混合し、感温変色性樹脂組成物(ペレット)を得た。
更に、前記樹脂組成物を汎用の溶融紡糸装置を用いて、180℃で20孔のダイスから溶融紡糸し、直径50μmのフィラメント20本からなるマルチフィラメント(感温変色性繊維)を得た。
【0040】
4.感温変色性複合繊維の作成
前記感温変色性組成物をエポキシ樹脂/アミン硬化剤の界面重合法によりカプセル化することで、平均粒子径10μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(9種類)を得た。
得られた各可逆熱変色性マイクロカプセル顔料5部、各紫外線吸収剤3部、分散剤1部、ポリプロピレン−エチレンコポリマー91部をエクストルーダーにて180℃で溶融混合し、感温変色性樹脂組成物(ペレット)を得た。
更に、得られた樹脂組成物を汎用の芯部成形用押出機に供給し、12ナイロン樹脂を鞘部成形用押出機に供給した後、各々を溶融温度200℃にて複合繊維紡糸装置を用いて芯/鞘の体積比が60/40になるように、20孔の吐出口から紡糸し、直径90μmのフィラメント20本からなるマルチフィラメント(感温変色性複合繊維)を得た。
【0041】
前記各組成からなる感温変色性組成物、感温変色性繊維A、B、感温変色性複合繊維について、以下の試験を行った。
耐光性試験
各試料に対して、フェードメーターにて5時間照射した後、色調を目視にて観察した。
昇華試験
感温変色性繊維A、B、感温変色性複合繊維について、エクストルーダーにて180℃で溶融混合した際の紫外線吸収剤の昇華による汚染状態について目視にて観察した。
試験結果を以下の表に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表中の記号の内容を以下に説明する。
耐光性試験
○:組成物、繊維のいずれもが初期と同様の色調及び変色特性を維持している。
×:組成物、繊維の一種以上で退色が見られる、又は変色機能が失われている。
昇華試験
○:三種の繊維のいずれにおいてもダイス周辺に汚れがみられない。
×:一種以上の繊維でダイス周辺に紫外線吸収剤による汚染が確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分と、トリアジン系紫外線吸収剤とから少なくともなる感温変色性組成物。
【請求項2】
マイクロカプセルに内包されてなる請求項1記載の感温変色性組成物と、樹脂とからなる感温変色性繊維。
【請求項3】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を内包するマイクロカプセルと、トリアジン系紫外線吸収剤と、樹脂とからなる感温変色性繊維。
【請求項4】
前記(イ)成分がフルオラン誘導体である請求項1乃至3のいずれかに記載の感温変色性組成物又は感温変色性繊維。
【請求項5】
前記マイクロカプセルが樹脂全量に対して0.1〜30重量%の範囲で含有される請求項2乃至4のいずれかに記載の感温変色性繊維。
【請求項6】
前記樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合樹脂から選ばれるいずれか一種又は二種以上である請求項2乃至5のいずれかに記載の感温変色性繊維。
【請求項7】
前記感温変色性繊維の外周に保護層を設けてなる請求項2乃至6のいずれかに記載の感温変色性繊維。


【公開番号】特開2008−101147(P2008−101147A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285744(P2006−285744)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】