説明

感温変色性電線ケーブル被覆用組成物およびそれを用いた感温変色性電線ケーブル

【課題】電線ケーブルに惹起される過熱状態を視覚的にかつ容易に感知することができるとともに、該過熱状態を電線ケーブルの全体領域において容易に感知できる感温変色性電線ケーブル被覆用組成物、およびそれを用いた感温変色性電線ケーブルを提供する。
【解決手段】電線ケーブルの金属導体束を被覆する電線ケーブル被覆用組成物において、ベース樹脂をマトリックスとし、温度変化により色相が変わる感温変色性色素を含有することを特徴とする電線ケーブル被覆用組成物、およびそれを用いた感温変色性電線ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ケーブル被覆用組成物およびそれを用いた電線ケーブルに関する。より詳しくは、電線ケーブルの被覆層を構成する感温変色性組成物、およびそれを用いた感温変色性電線ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電線ケーブルは電力または信号などを伝達するためのものであって、その代表的な例が図1に示されている。図1によれば、一般的な電線ケーブルは、電線ケーブルの全体に引張力を提供する中心引張線1、上記中心引張線1の周辺に集合した多数の金属導体2、多数の金属導体2を結束するテーピング層3、およびケーブルを外部環境から保護する被覆層4を含む。
【0003】
一方、電線ケーブルは地上または地下に鋪設されるが、鋪設環境が悪化すると過度に電流が通電する。このような過通電現象が発生すると、電線が過熱して電線ケーブルが焼損したり、火災が発生したりする可能性がある。従って、電線の過熱状態をより早く、かつより正確に感知して迅速な措置を取る必要があった。
【0004】
このため、電線ケーブルの過熱状態を測定する様々な方法が提示された。その一例として、ケーブルの温度を測定する装置が開示されている(特許文献1参照)。この温度測定装置を示した図2によれば、該温度測定装置は、電線に隣接して設けられる温度計10、温度計10を支持するケース20、およびケース20を電線ケーブル40に固定する固定部30を含む。このような構成を有する該温度測定装置は、電線ケーブル40に接触した温度計10がケーブルの過熱状態を感知する仕組みとなっている。
【0005】
しかし、従来技術によるこれらの温度測定装置は、電線ケーブルの全体にわたって設置するには無理があるため、主に過通電が発生する可能性がある部分にのみ設置される。そのため、電線ケーブルの全体領域の温度を全て測定することが容易ではなかった。また、高価な温度モニタリングシステムを備えなければ、電線の過熱状態を感知することが非常に難しくなるという問題点があった。
【特許文献1】韓国実用新案登録第344236号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電線ケーブルに惹起される過熱状態を視覚的にかつ容易に感知することができるとともに、該過熱状態を電線ケーブルの全体領域において容易に感知できる感温変色性電線ケーブル被覆用組成物、およびその組成物を用いた感温変色性電線ケーブルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による感温変色性電線ケーブル被覆用組成物は、電線ケーブルの金属導体束を被覆する電線ケーブル被覆用組成物において、ベース樹脂をマトリックスとし、温度変化により色相が変わる感温変色性色素を含有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記感温変色性色素は、異なる感温範囲を有する2種以上の色素混合物にすることができる。
一方、前記感温変色性色素は、温度変化による変色が可逆的である。
【0009】
本発明の実施例では、上記電線ケーブル被覆用組成物のベース樹脂は、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系及びエチレンビニルアセテート系からなる群より選択されたいずれか一つの化合物または二つ以上の化合物の組み合わせにする。
【0010】
本発明の他の側面によると、多数の金属導体と、上記多数の金属導体を包む被覆層とを含み、上記被覆層は、ベース樹脂をマトリックスとし、温度変化により色相が変わる感温変色性色素を含有する電線ケーブル被覆用組成物からなることを特徴とする感温変色性電線ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過通電状態が誘発されて電線ケーブルが臨界温度より高い温度に過熱されても、別途の温度測定装置を要することなく、電線ケーブルの過熱状態を全体的に確認することができる。従って、より迅速に過熱状態を解除することができ、電線ケーブルの寿命を延長させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
これに先立って、本明細書および特許請求の範囲に用いられた用語は、一般的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならない。すなわち、本発明者らは本発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、該用語は本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されるべきである。従って、本明細書に記載された構成は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例とがあり得ると理解されるべきである。
【0013】
本発明に係る電線ケーブル被覆用組成物は、ベース樹脂をマトリックスとし、感温変色性色素を含む。
前記感温変色性色素とは、周囲温度に感応して色相を表す化合物であってカメレオン化合物ともいう。感温変色性色素は電子供与性化合物(発色剤)および電子受容性化合物(顕色剤)から構成されている。これらの二つの構成物質は、温度変化に感応すれば相互作用して結晶を形成して変色するが、これは電子供与性化合物と電子受容性化合物との相互間に電子の授受作用が起こり、有色で発色するためである。また、該化合物間に電子の移動がない場合は、無色を保つ。このような色相の変化は、温度変化により可逆的に生じる。
【0014】
前記電子供与性化合物とは、ロイコ化合物(leuco compound)であり、
有色染料を還元させることによって無色に変色させる機能を有する特殊染料である。このような染料としては、例えば、トリフェニル系メタン、フルオラン系またはローダミンラクタム系などが挙げられる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0015】
前記電子受容性物質とは、ロイコ化合物から電子を受けることによって発色反応を引き起こす物質であり、例えば、ビスフェノール類、アルキルフェノール類、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール化合物、芳香族カルボン酸誘導体及び金属塩、ヒドロキシ安息香酸エステル、または活性白土などが挙げられる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0016】
前記電子供与性物質と電子受容性物質とを可逆的に発色させるためには、電子供与性化合物と電子受容性化合物が混合された状態のまま、外部と隔離することができるセルが必
要である。従って、該物質はマイクロカプセル化することが望ましい。マイクロカプセル化に関する方法はよく知られているため、これに対する詳細な説明は省略する。
【0017】
前記感温変色性色素として、電線ケーブルを製造する際の押出工程温度で該色素の性能低下が発生しないよう、200℃以上の温度下でも十分な耐熱性を有するものを用いるのが望ましく、また、表面摩擦が激しい条件下においても破壊されないカプセルを用いることが望ましい。
【0018】
本発明に係る電線ケーブル被覆用組成物のベース樹脂は、ポリ塩化ビニル系(PVC)、ポリオレフィン系、およびエチレンビニルアセテート系(EVA)からなる群より選択されたいずれか一つまたは二つ以上の化合物の組み合わせにすることができる。
【0019】
前記ベース樹脂は、耐薬品性、誘電率、誘電損失および絶縁耐力に優れており、加工が比較的に容易であるという長所を有する。
また、本発明に係る電線ケーブル被覆用組成物は、事故などによる火災の際、電線ケーブル被覆層が容易に燃焼することを防止するため、無毒性難燃剤、および難燃剤の機能を補助する補助難燃剤を含有することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る電線ケーブル被覆用組成物は、必要に応じて、電子線、紫外線、有機過酸化物などにより架橋処理することができる。さらに、本発明の目的範囲内において、一般的に用いられる架橋助剤、酸化防止剤、活剤、安定剤、充填剤、着色剤などを添加することができる。
【0021】
本発明に係る電線ケーブル被覆用組成物を用いて電線ケーブル外部の被覆層を構成すれば、電線ケーブルが不適切な鋪設環境または過通電状態に置かれて過熱状態が誘発される場合、感温変色性色素が所定の温度範囲の過熱温度に感応して、所定の色相に変化する。従って、別途の温度測定装置がなくても、電線ケーブルの被覆層の色相変化により、電線ケーブルの温度状態を確認することができる。
【0022】
前記感温変色性色素は、異なる変色範囲を有する2種以上の色素混合物から構成することもできる。該感温変色性色素としては、変色温度範囲が多様な種々のものがあり、その色相として、ブラック、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、オレンジ、マゼンタ、スカイブルー、およびバイオレットなどを有する色素が開発されている。これらの中から選択された2種以上の色素を混合して、一定温度で一定色が発現されるように構成することにより、電線ケーブルの温度状態を多様にチェックすることができる。
【0023】
本発明に係る感温変色性電線ケーブルは、多数の金属導体及び感温変色性被覆層を含む。
前記多数の金属導体は、信号または電力を伝達する導電体である。
【0024】
前記被覆層は前記多数の金属導体を保護し、電気絶縁のために導体上に被覆される外装ジャケットである。前記被覆層は上述した感温変色性組成物から構成される。これに対する説明は上述と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0025】
本発明に係る感温変色性電線ケーブルは、多数の金属導体が集合した電線ケーブルに引張力を提供する中心引張線を含むことができる。さらに、多数の金属導体と被覆層間に金属導体を結束するテーピング層を含むことができる。
【0026】
前記感温変色性電線ケーブルは、被覆層の色相変化により、電線ケーブルの過熱状態を視覚的にかつ容易にチェックすることができる。また、電線ケーブルの一部分に限られる
ことなく、電線ケーブルの全体にわたって過熱状態の確認ができるようになる。
【0027】
また、複数の電線ケーブルをともに結束させて用いる場合、複数の電線ケーブル間に感温変色性電線ケーブルを一本以上挿入すれば、感温変色性電線ケーブルが周辺の温度変化により変色することによって、ケーブルシステム全体の過熱状態を容易に確認することができる。
【0028】
以上のように、本発明は限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なことはいうまでもない。
【0029】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすため、本発明はこのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、一般的な電線ケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】図2は、従来技術による温度測定装置を示す斜示図である。
【符号の説明】
【0031】
1: 中心引張線
2: 金属導体
3: テーピング層
4: 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線ケーブルの金属導体束を被覆する電線ケーブル被覆用組成物において、
ベース樹脂をマトリックスとし、温度変化により色相が変わる感温変色性色素を含有することを特徴とする電線ケーブル被覆用組成物。
【請求項2】
前記感温変色性色素は、異なる感温範囲を有する2種以上の色素混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電線ケーブル被覆用組成物。
【請求項3】
前記感温変色性色素は、温度変化による変色が可逆的であることを特徴とする請求項1に記載の電線ケーブル被覆用組成物。
【請求項4】
前記電線ケーブル被覆用組成物のベース樹脂は、
ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系及びエチレンビニルアセテート系からなる群より選択されたいずれか一つの化合物、または二つ以上の化合物の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の電線ケーブル被覆用組成物。
【請求項5】
多数の金属導体と
該多数の金属導体を包む被覆層とを含み、
該被覆層は、ベース樹脂をマトリックスとし、温度変化により色相が変わる感温変色性色素を含有する電線ケーブル被覆用組成物からなることを特徴とする感温変色性電線ケーブル。
【請求項6】
前記感温変色性色素は、相違なる感温範囲を有する2種以上の色素混合物であることを特徴とする請求項5に記載の感温変色性電線ケーブル。
【請求項7】
前記感温変色性色素は、温度変化による変色が可逆的であることを特徴とする請求項5に記載の感温変色性電線ケーブル。
【請求項8】
前記電線ケーブル被覆用組成物のベース樹脂は、
ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系及びエチレンビニルアセテート系からなる群より選択されたいずれか一つの化合物、または二つ以上の化合物の組み合わせであることを特徴とする請求項5に記載の感温変色性電線ケーブル。

【図1】
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【図2】
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