説明

感温変色籤及びそれを用いた感温変色籤セット

【課題】 加温によって判別される籤情報が通常の使用状態で維持されるため、再利用できると共に、異なる情報の籤が必要になった場合は籤情報を書き換えることによって、新たな籤として使用でき、省資源化と利便性を備えた感温変色籤、及び、前記感温変色籤と、籤情報の書き換えに用いる装置とからなる短時間で簡易に籤の作製が可能な感温変色籤セットを提供する。
【解決手段】 温度変化により籤情報を可視状態又は不可視状態とする感温変色籤であって、隠蔽層2上に、熱印加により形成した籤情報を常温域で記憶保持する感温変色表示層3と、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層4を順次設けた感温変色籤1、前記感温変色籤と、加熱装置と、冷却装置とからなる感温変色籤セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感温変色籤及びそれを用いた感温変色籤セットに関する。更に詳細には、再利用可能な感温変色籤、及び、感温変色籤と籤の再利用に用いる装置とからなる感温変色籤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱により当落等の籤情報を判別できる籤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記籤は、基材上に感熱によって変色、消色、または着色する感温インキを用いて籤情報を印刷したものであり、実施例には不可逆性感温インキと不変色インキを用いて「当たり」、「外れ」の文字を印刷し、加熱することによっていずれかの文字が変色して当落を判別する籤が開示されている。前記籤は不可逆性感温インキを用いているため加熱後に当落の情報が維持され、その情報は恒久的に判別することができるものの、一度使用した籤は再利用できないため廃棄されてしまう。
また、同特許文献の比較例には可逆性感温インキと不変色インキを用いて「当たり」、「外れ」の文字を印刷し、加熱することによっていずれかの文字が変色して当落を判別する籤が開示されている。このような籤は可逆性感温インキを用いているため繰り返し使用することができるものの、加熱後の環境温度によって当落等の情報が不用意に消失して利用者が混乱することがある。
更に、前述した籤は所望の文字や記号を予め印刷して実用に供するタイプであって、用途によって様々な当落の方法が存在する籤の分野では、その都度、用途に適した文字や記号を印刷する工程が必要になるため、籤の作製に手間と時間を要するものであった。
【特許文献1】特開2005−153203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記した従来の籤の不具合を解消しようとするものであって、当落等の情報が不用意に消失することがなく、該情報は通常の使用状態で維持され、繰り返しの使用が可能であると共に、不要になった場合は籤情報を書き換えることによって、新たな用途の籤として使用できる感温変色籤及びそれを用いた感温変色籤セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、温度変化により籤情報を可視状態又は不可視状態とする感温変色籤であって、隠蔽層上に、熱印加により形成した籤情報を常温域で記憶保持する感温変色表示層と、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層を順次設けた感温変色籤を要件とする。
更には、前記隠蔽層と感温変色表示層の間、又は、感温変色表示層と感温変色隠蔽層の間に透明性支持体を介在してなること、前記感温変色隠蔽層上に透明性支持体を設けてなること、前記隠蔽層は、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層であること、前記感温変色表示層及び感温変色隠蔽層中に(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した、色濃度−温度曲線に関して着色状態から温度が上昇する過程で温度(T、t)に達すると消色し始め、温度(T、t)より高い温度(T、t)以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程で温度(T、t)より低い温度(T、t)に達すると、着色し始め、温度(T、t)より低い温度(T、t)以下の温度域で完全に着色状態となる変色挙動を示すマイクロカプセル顔料を含有してなり、前記感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(T、T)と、感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(t、t)が下記式(1)及び(2)を満たすこと、
(℃)≦t−10(℃) (1)
(℃)+5≦T(℃) (2)
前記感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(T、T)と、感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(t、t)が下記式(3)及び(4)を満たすこと、
(℃)≦t−20(℃) (3)
(℃)+15≦T(℃) (4)
前記感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度tが30〜40℃の範囲にあること等を要件とする。
更には、前記感温変色籤と、加熱装置と、冷却装置とからなる感温変色籤セットを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、加温によって判別される籤情報が通常の使用状態で維持されるため、再利用できると共に、異なる情報の籤が必要になった場合は籤情報を書き換えることによって、新たな籤として使用でき、省資源化と利便性を備えた感温変色籤を提供できる。また、前記感温変色籤と、籤情報の書き換えに用いる装置とからなる短時間で簡易に籤の作製が可能な感温変色籤セットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の感温変色籤は、隠蔽層、熱印加により形成した籤情報を常温域で記憶保持する感温変色表示層、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層を順次積層した構成である。
前記感温変色籤は、感温変色隠蔽層を設けた側から視覚すると、感温変色隠蔽層が隠蔽状態では下層の感温変色表示層に形成された籤情報が不可視状態であり、感温変色隠蔽層を加温して透明化させることにより、前記籤情報が可視状態となる。
前記隠蔽層は籤情報を裏面から視認して不正に使用されることを防止する層である。
なお、常温域とは0〜35℃、通常は10〜30℃の温度範囲を示す。
【0007】
以下に各層について具体的に説明する。
前記隠蔽層は、感温変色表示層に形成された籤情報を隠蔽層側から視認して不正に使用することを防止する層であって、不透明性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、紙、合成紙、布帛、不織布、合成皮革、天然皮革、陶磁器、木材、石材、金属等を挙げることができる。
また、プラスチックやガラス等の透明性を有する材料であっても不透明性を有していれば用いることができ、着色剤をブレンドしたり、表面に着色層を設けて不透明化することにより隠蔽層として使用することができる。
前記材料のうち、軽量且つ安全性に優れると共に、量産性を満たす紙、合成紙、合成皮革、プラスチックが好適に用いられる。
更に、前記隠蔽層は後述する感温変色隠蔽層と同様に常温域では隠蔽性を有し、加温により透明化する層であってもよく、表裏両面から籤情報を判別可能な新奇性を有する感温変色籤が得られる。
【0008】
前記感温変色表示層は、熱印加により形成した籤情報を常温域で記憶保持される層である。
前記感温変色表示層中には可逆的に有色から無色に変色する熱変色性材料を含有してなり、前記材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱により消色する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態を特定温度域で保持できる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物が用いられる。
【0009】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記TとT間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるTとTの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0010】
前記可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度Tを冷凍室等でしか得られない温度、即ち−30〜10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、環境温度や手触程度では変色しない温度、即ち30〜90℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜70℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは60乃至70℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0011】
以下に(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分としては、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0015】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0016】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0017】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物、或いは、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(2)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【0019】
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
また、前記式(2)中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物としては、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチル等を挙げることができる。
【0020】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
又、各成分は各々二種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。
【0021】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径が0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは最大外径の平均値が50μmを越えると、インキ、塗料への使用に対して分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
また、前記マイクロカプセルは、内包物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には内包物:壁膜=6:1〜1:1(質量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0022】
前記マイクロカプセル顔料は、ビヒクル中に分散して、塗料や印刷インキ等の液状組成物を調製し、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、等の手段により、隠蔽層上に感温変色表示層を形成できる。なお、前記感温変色表示層は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の化合物により形成される層であり、前記マイクロカプセル顔料は樹脂に分散状態に固着されてなる。
また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に前記マイクロカプセル顔料をブレンドした成形用樹脂組成物により成形した成形物を隠蔽層上に貼着して感温変色表示層を形成することもできる。
なお、前記感温変色表示層中に一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0023】
前記感温変色隠蔽層は、温度変化により有色から無色に可逆的に変色する層であり、常温域では有色を示して下層を隠蔽し、着色状態から加温すると無色になって下層の状態を視認できる層である。
該層中には可逆的に有色から無色に変色する材料を含有してなり、前記材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱により消色する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
【0024】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、着色状態から温度が上昇する過程で温度tに達すると消色し始め、温度tより高い温度t以上の温度域で完全に無色となり、無色から温度が下降する過程で温度tより低い温度tに達すると、着色し始め、温度tより低い温度t以下の温度域で完全に着色する変色挙動を示し、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する。
【0025】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について説明する。
前記(イ)成分と(ロ)成分は前述の感温変色表示層に用いられる可逆熱変色性組成物と同様である。
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
前記アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を例示できる。
前記エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が例示できる。
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、カプリン酸2−メチルブチル、パルミチン酸1−エチルプロピル、ステアリン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸1−エチルヘキシル、ミリスチン酸1−エチルヘキシル、パルミチン酸1−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルペンチル、カプリル酸2−メチルペンチル、カプリン酸2−メチルペンチル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、カプロン酸1−エチルペンチル、パルミチン酸1−エチルペンチル、ステアリン酸1−メチルプロピル、ステアリン酸1−メチルオクチル、ステアリン酸1−メチルヘキシル、ラウリン酸1,1−ジメチルプロピル、カプリン酸1−メチルペンチル、パルミチン酸2−メチルヘキシル、ステアリン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ラウリン酸3,7−ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7−ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル
オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が例示できる。
【0026】
前記感温変色表示層中に含まれるマイクロカプセル顔料(T:完全発色温度、T:発色開始温度、T:消色開始温度T:完全消色温度)と、感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料(t:完全発色温度、t:発色開始温度、t:消色開始温度、t:完全消色温度)は、下記式(1)及び(2)を満たすことが好ましく、
(℃)≦t−10(℃) (1)
(℃)+5≦T(℃) (2)
より好ましくは下記式(3)及び(4)を満たす。
(℃)≦t−20(℃) (3)
(℃)+15≦T(℃) (4)
前記式を満たすことにより、感温変色表示層による籤情報の保持性、感温変色隠蔽層による籤情報の隠蔽性、加温時に感温変色隠蔽層が透明化した際の籤情報の視認性を永続して満たすことができる。
また、前記感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料は、完全消色温度(t)を30〜40℃の範囲に設定することにより、手触や手で擦るといった簡便な手段により感温変色隠蔽層を透明化させて籤情報を視認することができ、実用性の高い籤が得られる。
【0027】
前記感温変色隠蔽層上には、光安定剤及び/又は光遮蔽性顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記光遮蔽性顔料としては、天然雲母、合成雲母、ガラス、アルミナ等を芯物質とし、その表面に酸化チタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、鉄等の金属酸化物を被覆した透明性金属光沢顔料が好適に用いられる。
【0028】
前記感温変色籤は、隠蔽層、感温変色表示層、感温変色隠蔽層の少なくとも一層が支持体を兼ねる場合は、製造時や使用時に必要な強度を備えているため別途支持体を設ける必要はないが、必要な強度を備えていない場合、隠蔽層と感温変色表示層の間、感温変色表示層と感温変色隠蔽層の間、或いは、感温変色隠蔽層上に透明性支持体を設けることが好ましい。
なお、感温変色籤の最上層や最下層は、サーマルヘッド等の加熱装置が接触した部分と接触しない部分の表面状態の差によって籤情報を視覚判別できることがある。これを防止するため、最上層や最下層に微細な文字、記号、模様等を密集配置したり、凹凸を形成して感温変色隠蔽層が消色する前に最上層や最下層から籤情報を判別し難い構成とすることもできる。
【0029】
本発明の感温変色籤の使用方法としては、感温変色隠蔽層と感温変色表示層が着色(発色)状態の籤に加熱装置により熱印加することにより、感温変色表示層が部分的に変色又は消色して所望の文字や記号からなる籤情報が形成される。該感温変色表示層に形成された籤情報は常温域で記憶保持される。熱印加時に感温変色隠蔽層も消色して籤情報が形成されるが、放冷或いは冷却装置の適用により感温変色隠蔽層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)以下の温度に冷却して感温変色隠蔽層を発色させることにより、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽される。
前記方法により使用前の感温変色籤が作製される。
なお、前記冷却装置は、感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)以下の温度にまで冷却すると籤情報自体は消失してしまうため、T以上、t以下の冷却温度制御が必要になる。
前記のようにして得られた感温変色籤は、感温変色隠蔽層を加温して透明化することにより感温変色表示層に形成された籤情報を視認できる。
前記籤情報は再び放冷或いは冷却装置の適用により感温変色隠蔽層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)以下の温度に冷却することにより隠蔽することができ、籤を再度利用することができる。
【0030】
次に、異なる内容の籤が必要になった場合、使用済の籤を冷却装置により感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)以下の温度まで冷却して感温変色表示層を着色(発色)状態とした後、加熱装置により熱印加することにより、別の文字や記号からなる籤情報を形成し、同様に放冷或いは冷却装置の適用により感温変色隠蔽層を発色させることにより、新たな感温変色籤を作製することができる。
なお、使用済の籤の感温変色表示層を着色(発色)状態にする際、加熱装置により感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全消色温度(T)以上の温度に加熱して全面を消色させた後、冷却装置により感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)以下の温度まで冷却して感温変色表示層の全面を着色(発色)する操作を行うことにより、以前の籤情報の残像が見られない商品性の高い籤を得ることができる。
【0031】
前記感温変色籤と、加熱装置と、冷却装置と組み合わせて感温変色籤セットが得られる。
前記加熱装置としては、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ、電熱ヒーター、レーザー光等が挙げられ、コンピューターを介して精密な記録を行うため、特にサーマルヘッドによる加熱印刷手段が好適である。
前記冷却装置としては、冷凍庫、ペルチエ素子、コールドローラー等の適用が挙げられる。
【実施例】
【0032】
実施例1(図3参照)
遮蔽層2として白色ポリエステルフィルム(厚さ0.2mm)上に、温度変化により青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:14℃、T:38℃、ΔH:20℃)を含む感温変色表示層3を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:24℃、T4:30℃、ΔH:3℃)を含む感温変色隠蔽層4を設けて感温変色籤1を得た。
【0033】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「あたり」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「あたり」の文字が形成されたが、室温(20℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、30℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「あたり」の文字)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0034】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により15℃以下に冷却して感温変色表示層の全面を青色に変色させた後、前記加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「○」の記号(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「○」の記号が形成されたが、室温(20℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、30℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「○」の記号)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0035】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0036】
実施例2
遮蔽層として白色合成紙(厚さ0.2mm)上に、温度変化により青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:62℃、ΔH:65℃)と非変色性ピンク色顔料を含み、紫色からピンク色に変色する感温変色表示層を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:26℃、T4:32℃、ΔH:3℃)を含む感温変色隠蔽層を設けて感温変色籤を得た。
【0037】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「○」の記号(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「○」の記号が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(紫地にピンク色の「○」の記号)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0038】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により−14℃以下に冷却して感温変色表示層の全面を紫色に変色させた後、前記加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「大吉」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「大吉」の文字が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(紫地にピンク色の「大吉」の文字)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0039】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0040】
実施例3(図4参照)
遮蔽層2として白色ポリエステルフィルム(厚さ0.2mm)上に、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)を含む感温変色表示層3を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:26℃、T4:33℃、ΔH:4℃)を含む感温変色隠蔽層4を設け、更に、前記感温変色隠蔽層上に紫外線吸収剤を含むトップコート層5を設けて感温変色籤1を得た。
【0041】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「はずれ」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「はずれ」の文字が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面がピンク色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、33℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(ピンク地に白色の「はずれ」の文字)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面がピンク色になり、籤を再度利用することができた。
【0042】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により−14℃以下に冷却して感温変色表示層の全面をピンク色に変色させた後、前記加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「一等」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「一等」の文字が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面がピンク色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、33℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(ピンク地に白色の「一等」の文字)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面がピンク色になり、籤を再度利用することができた。
なお、前記籤は最上層に紫外線吸収剤を含むトップコート層を設けたことにより、サーマルヘッドの接触による繰り返しの使用によって感温変色隠蔽層が損傷することなく、耐久性に優れると共に、層中に含まれる可逆熱変色性組成物の耐光性を向上させることができた。
【0043】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0044】
実施例4(図5参照)
透明性支持体6として透明ポリエステルフィルム(厚さ0.2mm)上に非変色性白色顔料を含む隠蔽層2を設けた。
前記隠蔽層2上に、温度変化により青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:62℃、ΔH:65℃)を含む感温変色表示層3を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:22℃、T4:32℃、ΔH:7℃)を含む感温変色隠蔽層4を設け、更に、前記感温変色隠蔽層上に雲母の表面を二酸化チタンで被覆した透明性金属光沢顔料(金色)を含む金属光沢層7を設けて感温変色籤1を得た。
【0045】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「×」の記号(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「×」の記号が形成されたが、室温(20℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
なお、感温変色隠蔽層上には金属光沢層が存在するため、感温変色隠蔽層が黒色の時は金色の籤が視認される。
前記籤の金属光沢層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「×」の記号)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0046】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により−14℃以下に冷却して感温変色表示層の全面を青色に変色させた後、前記加熱装置により熱印加して感温変色表示層に「三等」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「三等」の文字が形成されたが、室温(20℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「三等」の文字)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
なお、前記籤は最上層に金属光沢顔料を含む金属光沢層を設けたことにより高級感を付与でき、耐久性に優れると共に、層中に含まれる可逆熱変色性組成物の耐光性を向上させることができた。
【0047】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0048】
実施例5(図6参照)
透明性支持体6として0.2mm透明ポリエステルフィルム基材上に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:26℃、T4:32℃、ΔH:3℃)を含む感温変色隠蔽層4を設けた。
前記感温変色隠蔽層上に、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)と非変色性黄色顔料を含み、赤色から黄色に変色する感温変色表示層3を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、前記と同様の感温変色隠蔽層4を設けて感温変色籤1を得た。
【0049】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「○」の記号(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも「○」の記号が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(赤地に黄色の「○」の記号)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
【0050】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により−14℃以下に冷却して感温変色表示層の全面を赤色に変色させた後、前記加熱装置により熱印加して感温変色表示層にトロフィーの絵柄(籤情報)を形成した。
熱印加して暫くの間、感温変色隠蔽層にも絵柄が形成されたが、室温(25℃)下で放置すると感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を手で暖めると、32℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(赤地に黄色のトロフィーの絵柄)が現出した。
前記籤を室温で放置すると、再び感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、籤を再度利用することができた。
なお、前記籤は両面に感温変色隠蔽層を設けているため、いずれの面の感温変色隠蔽層を暖めても籤情報が視認できる新奇性を有する籤であった。
【0051】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0052】
実施例6
遮蔽層として白色ポリエステルフィルム(厚さ0.2mm)上に、温度変化により青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:62℃、ΔH:65℃)を含む感温変色表示層を設けた。
次いで、前記感温変色表示層上に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:5℃、T4:42℃、ΔH:30℃)を含む感温変色隠蔽層を設けて感温変色籤を得た。
【0053】
前記感温変色籤にサーマルヘッドを備えた加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「LUCKY」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加した際、感温変色隠蔽層にも「LUCKY」の文字が形成されたが、0℃迄冷却することにより感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を指で摩擦して暖めると、42℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「LUCKY」の文字)が現出した。
前記籤は室温下(25℃)で放置しても感温変色隠蔽層が着色することなく、籤情報を継続して視認できた。
【0054】
別の籤が必要になった場合は、前記籤を冷却装置により−14℃以下に冷却して感温変色表示層の全面を青色に変色させた後、前記加熱装置を用いて熱印加して感温変色表示層に「UNLUCKY」の文字(籤情報)を形成した。
熱印加した際、感温変色隠蔽層にも「UNLUCKY」の文字が形成されたが、0℃迄冷却することにより感温変色隠蔽層は全面が黒色になり、感温変色表示層に形成された籤情報は隠蔽されて視認できなくなった。
前記籤の感温変色隠蔽層上を指で摩擦し暖めると、42℃以上で感温変色隠蔽層は透明化して感温変色表示層に形成された籤情報(青地に白色の「UNLUCKY」の文字)が現出した。
前記籤は室温下(25℃)で放置しても感温変色隠蔽層が着色することなく、籤情報を継続して視認できた。
【0055】
感温変色籤セットの作製
前記感温変色籤と、サーマルヘッドを備えた加熱装置と、冷却装置とを組み合わせて感温変色籤セットを得た。
前記感温変色籤セットは、加熱装置と冷却装置の適用により様々な用途の籤を短時間で簡易に作製することができた。
【0056】
比較例1
白色ポリエステルフィルム(厚さ0.2mm)上に、非変色性黒色インキにより非変色像(「○」の記号)を印刷した。
次いで、前記非変色像の近傍に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:24℃、T4:30℃、ΔH:3℃)を含む感温変色インキにより熱変色像(「×」の記号)を設けて感温変色籤を得た。
前記籤は手で暖めることで熱変色像が消色して籤情報を読み取ることができ、繰り返し使用できるものの、籤情報を変更することはできず、応用性の低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に用いられる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図2】本発明に用いられる可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図3】本発明の感温変色籤の一実施例の縦断面図である。
【図4】本発明の感温変色籤の他の実施例の縦断面図である。
【図5】本発明の感温変色籤の他の実施例の縦断面図である。
【図6】本発明の感温変色籤の他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
1 感温変色籤
2 隠蔽層
3 感温表示層
4 感温変色隠蔽層
5 トップコート層
6 透明性支持体
7 金属光沢層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化により籤情報を可視状態又は不可視状態とする感温変色籤であって、隠蔽層上に、熱印加により形成した籤情報を常温域で記憶保持する感温変色表示層と、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層を順次設けた感温変色籤。
【請求項2】
前記隠蔽層と感温変色表示層の間、又は、感温変色表示層と感温変色隠蔽層の間に透明性支持体を介在してなる請求項1記載の感温変色籤。
【請求項3】
前記感温変色隠蔽層上に透明性支持体を設けてなる請求項1記載の感温変色籤。
【請求項4】
前記隠蔽層は、常温域で籤情報を隠蔽して不可視状態とし、加温により透明化して籤情報を可視状態とする感温変色隠蔽層である請求項1記載の感温変色籤。
【請求項5】
前記感温変色表示層及び感温変色隠蔽層中に(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をカプセルに内包した、色濃度−温度曲線に関して着色状態から温度が上昇する過程で温度(T、t)に達すると消色し始め、温度(T、t)より高い温度(T、t)以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程で温度(T、t)より低い温度(T、t)に達すると、着色し始め、温度(T、t)より低い温度(T、t)以下の温度域で完全に着色状態となる変色挙動を示すマイクロカプセル顔料を含有してなり、前記感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(T、T)と、感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(t、t)が下記式(1)及び(2)を満たす請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感温変色籤。
(℃)≦t−10(℃) (1)
(℃)+5≦T(℃) (2)
【請求項6】
前記感温変色表示層に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(T、T)と、感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度(t、t)が下記式(3)及び(4)を満たす請求項5記載の感温変色籤。
(℃)≦t−20(℃) (3)
(℃)+15≦T(℃) (4)
【請求項7】
前記感温変色隠蔽層中に含まれるマイクロカプセル顔料の温度tが30〜40℃の範囲にある請求項5又は6記載の感温変色籤。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の感温変色籤と、加熱装置と、冷却装置とからなる感温変色籤セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−207339(P2008−207339A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43352(P2007−43352)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】