説明

感熱プリンタ

【課題】発熱素子が感熱記録媒体に張り付いてしまっても、容易に感熱記録媒体を発熱素子から剥離させることができ、かつ、搬送力を向上させることができる感熱プリンタを提供すること。
【解決手段】感熱プリンタ100は、感熱記録媒体1を搬送するフィードローラ32及びピンチローラ31と、感熱記録媒体1に熱を加えて感熱記録媒体1に画像を記録する発熱素子41を有するサーマルヘッド4と、サーマルヘッド4との間で感熱記録媒体1を挟み込むプラテンローラ5とを備える。ローラ6は、感熱記録媒体1への画像の記録時に、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1を上方から押し付けてパスラインを調整する。これにより、発熱素子41と感熱記録媒体1とが張り付いてしまっても、感熱記録媒体1を発熱素子41から容易に剥離することができ、かつ、搬送力を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドを用いて、感熱記録紙等にダイレクトに熱を加えることで感熱記録紙に画像を記録する感熱プリンタが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1には、ライン状に配列される多数の発熱素子を有するサーマルヘッド17と、プラテンローラ16と、ニップローラ11a及び駆動ローラ11bを有する搬送ローラ対11とを有する感熱プリンタが記載されている(段落[0017]〜[0018]、図1)。この感熱プリンタは、駆動ローラ11bの回転により搬送ローラ対11に挟み込まれた感熱記録紙10を搬送する。そして、感熱プリンタは、画像データに基づいてサーマルヘッド17の発熱素子により、プラテンローラ16上に支持された感熱印刷紙10に対して上方からダイレクトに熱を加えることで、1ラインずつ感熱記録紙10に画像を記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−322301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の感熱プリンタは、図1に示されているように、サーマルヘッド17及びプラテンローラ16と、搬送ローラ対11との間の感熱記録紙10のパスラインが直線的である。この場合、画像記録時に発熱素子の先端部と、感熱記録紙10とが張り付いてしまった場合に、発熱素子が張り付いた面に対して平行な方向に感熱記録紙が搬送されることになる。これにより、発熱素子の先端部と、感熱記録紙10とを剥離することが困難になり、例えば、感熱記録紙10に負荷変動が生じて画像の記録が予定されていない箇所に画像が記録されてしまう等の問題が発生する。
また、特許文献1に記載の感熱プリンタでは、サーマルヘッド17及びプラテンローラ16と、搬送ローラ対11との間の感熱記録紙10のパスラインが直線的であることにより、感熱記録紙10が搬送ローラ対11に接する面積が小さくなってしまっている。これにより、搬送ローラ対11による感熱記録紙10の搬送力が弱いといった問題もある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、発熱素子が感熱記録媒体に張り付いてしまっても、容易に感熱記録媒体を発熱素子から剥離させることができ、かつ、搬送力を向上させることができる感熱プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る感熱プリンタは、一対の搬送ローラと、サーマルヘッドと、プラテンローラと、調整機構とを具備する。
前記一対の搬送ローラは、基材層と、前記基材層上に設けられた感熱層とを有する感熱記録媒体を前記基材層側及び前記感熱層側の両側から挟みこみ、前記感熱記録媒体を搬送する。
前記サーマルヘッドは、前記感熱層に熱を加えて前記感熱記録媒体に画像を記録する発熱素子を有する。
前記プラテンローラは、前記サーマルヘッドとの間で前記感熱記録媒体を挟み込み、前記基材層側から前記感熱記録媒体を支持する。
前記調整機構は、少なくとも前記感熱記録媒体に前記画像が記録されるときに、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラの、前記一対の搬送ローラ側の前記感熱記録媒体が前記プラテンローラ側に傾くように、かつ、前記一対の搬送ローラの、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラ側の前記感熱記録媒体が、前記一対の搬送ローラのうち、一方の搬送ローラ側に傾くように、前記一対の搬送ローラと、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラとの間の前記感熱記録媒体のパスラインを調整する。
【0008】
本発明では、調整機構により、一対の搬送ローラと、サーマルヘッド及びプラテンローラとの間の感熱記録媒体のパスラインが調整される。そして、少なくとも感熱記録媒体に発熱素子によって画像が記録されるときに、サーマルヘッド及びプラテンローラの、一対の搬送ローラ側の感熱記録媒体が、プラテンローラ側に傾けられる。また、一対の搬送ローラの、サーマルヘッド及びプラテンローラ側の感熱記録媒体が、一対の搬送ローラのうち一方の搬送ローラ側に傾けられる。
【0009】
このように、本発明では、サーマルヘッド及びプラテンローラの、一対の搬送ローラ側の感熱記録媒体が、プラテンローラ側に傾くので、発熱素子の先端部と、感熱記録媒体の感熱層とが張り付いた場合に、発熱素子から感熱記録媒体を引き剥がす力が、発熱素子が張り付いた面に対して斜め方向に加わることになる。これにより、発熱素子からの感熱記録媒体の剥離が容易となり、感熱記録媒体の感熱層に負荷をかけずに発熱素子から感熱記録媒体を剥離することが可能となる。これにより、感熱記録媒体の感熱層に負荷変動が生じてしまい、画像の記録が予定されていない箇所に画像が記録されてしまうこと等を防止することができる。
なお、感熱記録媒体がプラテンローラ側に傾くことによって、感熱記録媒体がサーマルヘッドに対して所定の角度傾くことになる。この角度は、発熱素子の先端部と、感熱記録媒体の感熱層とが張り付いた場合に、発熱素子から感熱記録媒体を引き剥がすことができる程度の角度とされる。
【0010】
さらに、本発明では、一対の搬送ローラの、サーマルヘッド及びプラテンローラ側の感熱記録媒体が、一方の搬送ローラ側に傾くので、感熱記録媒体がこの搬送ローラに接する(巻きつく)面積が増える。これにより、感熱記録媒体の搬送力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、発熱素子が感熱記録媒体に張り付いてしまっても、容易に感熱記録媒体を発熱素子から剥離させることができ、かつ、搬送力を向上させることができる感熱プリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る感熱プリンタを示す模式図である。
【図2】感熱プリンタの動作を説明するための図である。
【図3】感熱プリンタの動作を説明するための図である。
【図4】感熱印刷版の一例を示す平面図である。
【図5】他の例に係る感熱プリンタを示す模式図である。
【図6】調整機構の他の例を示す模式図である。
【図7】調整機構のさらに別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る感熱プリンタを示す模式図である。なお、本明細書中の説明では、図面を見やすく表示するために、感熱プリンタが有する各部材等について、実際の寸法とは、異なって表示する場合がある。
【0014】
図1に示すように、感熱プリンタ100は、シート状の感熱記録媒体1がロール状に巻回されたロール体11を回転可能に収納する収納部2を備える。また、感熱プリンタ100は、感熱記録媒体1を搬送するフィードローラ32(搬送ローラ)及びピンチローラ31(搬送ローラ)と、感熱記録媒体1に画像を記録するサーマルヘッド4と、サーマルヘッド4との間で感熱記録媒体1を挟み込むプラテンローラ5とを備える。また、感熱プリンタ100は、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間に配置されたローラ6(調整機構)と、画像の記録が終了した感熱記録媒体1を切断するカッター7とを備える。
【0015】
感熱記録媒体1は、紙等で構成された基材層と、基材層上に積層された感熱層とを有している。図1では、基材層が下方に配置され、感熱層が上方に配置されている。
【0016】
収納部2の内部には、ロール体11に当接する給紙ローラ21が設けられる。給紙ローラ21は、ステッピングモータ等のモータ21aの回転により駆動され、感熱記録媒体1を収納部2から送り出す。
【0017】
フィードローラ32及びピンチローラ31は、感熱記録媒体1を基材層側及び感熱層側の両側から挟みこんで、感熱記録媒体を搬送する。フィードローラ32は、感熱記録媒体1の基材層側から感熱記録媒体を挟み込み、ピンチローラ31は、感熱記録媒体1の感熱層側から感熱記録媒体1を挟み込む。フィードローラ32の外周面には、フィードローラ32の外周側に向けて突出する複数の微小な突起(図示せず)が設けられている。
【0018】
フィードローラ32は、ステッピングモータ等のモータ32aに接続されており、モータ32aの回転により駆動される。フィードローラ32及びピンチローラ31の間に挟まれた感熱記録媒体1は、フィードローラ32の駆動により、前方へ送り出され、あるいは、後方へ戻される。すなわち、感熱記録媒体1は、フィードローラ32の駆動により往復運動される。ここで、ピンチローラ31は、典型的には駆動はされないが、フィードローラ32の駆動とともに駆動されても構わない。
【0019】
なお、本実施形態では、フィードローラ32の駆動により感熱記録媒体1が後方へ戻されているときに感熱記録媒体1に画像が記録される。
【0020】
サーマルヘッド4は、ライン状に配列された多数の発熱素子41を有する。サーマルヘッド4は、感熱記録媒体1を感熱層側から押圧しつつ、発熱素子41により感熱層を加熱することで感熱記録媒体1に文字、図形、記号等の画像を記録する。
プラテンローラ5は、サーマルヘッド4との間で感熱記録媒体1を挟み込み、サーマルヘッド4の押圧力に抗して、基材層側から感熱記録媒体1を支持する。
【0021】
サーマルヘッド4は、図示しないヘッド移動機構に保持されており、ヘッド移動機構により、上下方向に移動可能とされる。プラテンローラ5は、ステッピングモータ等のモータ5aに接続されており、モータ5aの回転により必要に応じて駆動される。
【0022】
ローラ6は、ローラ移動機構6aに保持されており、ローラ移動機構6aにより、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間で移動可能とされる。ローラ6は、ローラ移動機構6aによる移動により、感熱記録媒体1への画像の記録時に、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1を感熱層側から押し付ける。
【0023】
これにより、ローラ6は、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1のパスラインを調整する。具体的には、ローラ6は、感熱記録媒体1への画像記録時に、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5の、フィードローラ32及びピンチローラ31側(図2中左側)の感熱記録媒体1をプラテンローラ5側に傾かせる。また、ローラ6は、感熱記録媒体1への画像記録時に、フィードローラ32及びピンチローラ31の、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5側(図2中右側)の感熱記録媒体1をフィードローラ32側に傾かせる。
【0024】
なお、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5の、フィードローラ32及びピンチローラ31側の感熱記録媒体1がプラテンローラ5側に傾くことによって、感熱記録媒体1がサーマルヘッド4に対して所定の角度傾くことになる。この角度は、発熱素子41の先端部と、感熱記録媒体1の感熱層とが張り付いた場合に、発熱素子41から感熱記録媒体1を引き剥がすことができる程度の角度とされる。このような角度が付与されるように、ローラ6の移動距離が適宜設定されればよい。
【0025】
ローラ移動機構6aとしては、例えばボールネジ、ラックアンドピニオン、ソレノイド等が用いられる。
【0026】
カッター7は、図示しないカッター移動機構により保持されており、カッター移動機構による移動により、画像の記録が終了した感熱記録媒体1をカットする。
【0027】
ここで、本実施形態に係る感熱プリンタ100において画像が記録される感熱記録媒体1について説明する。感熱記録媒体1は、上記したように、紙等で構成された基材層上に感熱層が積層されて構成されているが、感熱層が一般的に用いられる形態と異なっている。すなわち、感熱記録媒体1の感熱層は、熱が加えられることで、イエロー、シアン、マゼンタ等の色に発色する性質を有する一般的な感熱層とは性質が異なっており、熱が加えられることで、その熱が加えられた部分が親水性から親油性に変換される性質を有している。
【0028】
本実施形態では、感熱層に対して発熱素子41により熱が加えられ、熱が加えられた部分が親水性から親油性に変換されることで、感熱層に画像が記録される。
親水性から親油性への変換により感熱層に画像が記録された感熱記録媒体1は、カッター7によりカットされ、例えば、オフセット印刷用の印刷版として使用される。
【0029】
なお、以降の説明では、親水性から親油性への変換により感熱層に画像が記録され、印刷版として使用される感熱記録媒体1を感熱印刷版1’(図4参照)と呼ぶ。
【0030】
感熱プリンタ100は、感熱プリンタ100の各部を統括的に制御する制御部や、制御部の処理に必要な情報を記憶する記憶部等を内蔵している。典型的には、制御部は、モータ32a、5a、21aの回転を制御することで、フィードローラ32、プラテンローラ5、給紙ローラ21の駆動を制御する。
【0031】
また、制御部は、ローラ移動機構6a、ヘッド移動機構、カッター移動機構を制御することで、ローラ6、サーマルヘッド4、カッター7の上下方向への移動を制御する。さらに、制御部は、記憶部に記憶された画像データに基づいて、発熱素子41の発熱を制御する。
【0032】
[動作説明]
次に、感熱プリンタ100の動作について説明する。
図2及び図3は、感熱プリンタ100の動作を説明するための図である。
【0033】
まず、ユーザにより、感熱記録媒体1のロール体11が収納部2にセットされる。次に、モータ21aの回転により給紙ローラ21が反時計回りに駆動され、感熱記録媒体1が収納部2から送り出される。感熱記録媒体1が収納部2から送り出され、感熱記録媒体1の先端部がフィードローラ32及びピンチローラ31に挟み込まれる位置まで到達すると、給紙ローラ21の駆動が停止される。
そして、図2(A)に示すように、モータ32aの回転によりフィードローラ32が時計回りに駆動される。
【0034】
フィードローラ32が駆動されると、ピンチローラ31がフィードローラ32に従動で回転し、フィードローラ32及びピンチローラ31に挟まれた感熱記録媒体1が前方へ送り出される。感熱記録媒体1が送り出されるとき、ローラ6は、フィードローラ32及びプラテンローラ5よりも上方に移動されており、また、サーマルヘッド4は、ヘッドアップされている。
【0035】
フィードローラ32及びピンチローラ31から送り出された感熱記録媒体1は、ヘッドアップされたサーマルヘッド4とプラテンローラ5との間を通り、さらに前方へ送り出される。
感熱記録媒体1がサーマルヘッド4及びプラテンローラから所定の長さ分、前方へ送り出されると、フィードローラ32の駆動が停止される。
【0036】
次に、図2(B)に示すように、サーマルヘッド4がヘッドダウンされる。このとき、サーマルヘッド4は、プラテンローラ5に支持された感熱記録媒体1を感熱層側から押圧する。
【0037】
次に、図2(C)に示すように、ローラ移動機構6aにより、ローラ6が下方へ移動される。ローラ6が下方へ移動されると、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1は、その中央がローラ6により感熱層側から押し付けられて、下方へ押し下げられる。
【0038】
ローラ6が下方へ移動されるとき、ローラ6の下方への移動に連動して、モータ5aが駆動され、プラテンローラ5が反時計回りに駆動される。プラテンローラ5が反時計回りに駆動されると、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5よりも前方に送り出された感熱記録媒体1が後方へ少し戻される。
【0039】
ここで、サーマルヘッド4がヘッドダウンされ(図2(B))、その後、ローラ6の下方への移動に連動して、プラテンローラ5が反時計回りに駆動される(図2(C))理由について説明する。
【0040】
仮に、サーマルヘッド4がヘッドアップされた状態で、ローラ6が下方へ移動され、その後、サーマルヘッド4がヘッドダウンされたとする。この場合、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1がたるんでしまい、感熱記録媒体1の位置を精密に制御することができない。
【0041】
そこで、本実施形態では、サーマルヘッド4がヘッドダウンされ、感熱記録媒体1がサーマルヘッド4とプラテンローラ5との間に挟み込まれた後に、ローラ6を下方へ移動させることとしている。
これにより、感熱記録媒体1がローラ6により下方へ押し下げられるときに、感熱記録媒体1がフィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5とにより両側から引っ張られることになる。これにより、感熱記録媒体1がたるんでしまうことを防止することができるので、感熱記録媒体1の位置を精密に制御することができる。
【0042】
しかしながら、サーマルヘッド4がヘッドダウンされた後に、ローラ6が下方へ移動される場合において、プラテンローラ5が反時計回りに駆動されないとした場合、感熱記録媒体1に過度の負担がかかり、感熱記録媒体1が傷ついてしまう。この場合、感熱記録媒体1は、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5に挟みこまれる部分と、ローラ6により押し付けられる部分とで傷が生じてしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、ローラ6の下方への移動に連動して、プラテンローラ5を反時計回りに駆動させることとしている。これにより、感熱記録媒体1が傷ついてしまうことを防止することができる。
【0044】
なお、サーマルヘッド4が感熱記録媒体1を感熱層側から押圧する力は、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1がたるまない程度の張力を感熱記録媒体1に付与することができる程度の大きさとされる。
【0045】
ローラ6がローラ移動機構6aにより下方へ移動されると、その後、サーマルヘッド4が感熱記録媒体1を感熱層側から押圧する力が調整される。
【0046】
次に、図2(D)に示すように、モータ32aの回転により、フィードローラ32が反時計回りに駆動される。フィードローラ32が反時計回りに駆動されると、ピンチローラ31がフィードローラ32に従動して時計回りに回転し、前方に送り出された感熱記録媒体1が後方へ戻される。なお、このとき、プラテンローラ5及びローラ6もフィードローラ32の駆動に従動で回転される。
【0047】
感熱記録媒体1が後方へ戻されるとき、サーマルヘッド4の発熱素子41が、制御部の制御により画像データに基づいて発熱される。これにより、感熱記録媒体1の感熱層に対して、文字、図形、記号等の画像が1ラインずつ記録される。画像は、上記したように、熱が加えられた部分が親水性から親油性に変換される性質を有する感熱層に熱が加えられることで、その熱が加えられた部分が親水性から親油性に変換されることで記録される。
【0048】
画像記録時における、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1は、図2(D)に示すように、上方からローラ6により押し付けられている。
【0049】
この場合、図2(D)に示すように、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5の、フィードローラ32及びピンチローラ31側(図2中左側)の感熱記録媒体1は、プラテンローラ5側に傾くことになる。したがって、発熱素子41の先端部と、感熱記録媒体1の感熱層とが張り付いてしまっても、発熱素子41から感熱記録媒体1を引き剥がす力が、発熱素子41が張り付いた面に対して斜め方向に加わることになる。
【0050】
これにより、発熱素子41からの感熱記録媒体1の剥離が容易となり、感熱記録媒体1の感熱層に負荷をかけずに発熱素子41から感熱記録媒体1を剥離することが可能となる。これにより、感熱記録媒体1の感熱層に負荷変動が生じてしまい、画像の記録が予定されていない箇所に画像が記録されてしまうこと等を防止することができる。
【0051】
感熱層が親水性から親油性に変換される性質を有している場合、発熱素子41が感熱層に張り付いてしまう場合が多いので、上記したように、発熱素子41からの感熱記録媒体1の剥離の容易化を図ることは、特に有効である。
【0052】
また、画像記録時には、図2(D)に示すように、フィードローラ32及びピンチローラ31の、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5側(図2中右側)の感熱記録媒体1が、フィードローラ32側に傾くことになる。これにより、感熱記録媒体1の基材層がフィードローラ32に接する(巻きつく)面積が増えるので、感熱記録媒体1の搬送力を向上させることができる。これにより、感熱記録媒体1に対して、高精度に画像を記録することが可能となる。
【0053】
感熱記録媒体1への画像の記録が終了すると、図3(E)に示すように、フィードローラ32の駆動が停止され、サーマルヘッド4がヘッドアップされる。また、ローラ移動機構6aにより、ローラ6が上方へ向けて移動され、ローラ6がフィードローラ32及びプラテンローラ5よりも上方の位置まで移動される。
【0054】
次に、図3(F)に示すように、モータ32aの回転により、フィードローラ32が時計回りに駆動され、感熱記録媒体1が前方へ送り出される。画像の記録が終了した部分がカッター7よりも前方へ送り出される位置まで搬送されると、フィードローラ32の駆動が停止される。そして、カッター7が下方へ移動され、画像の記録が終了した感熱記録媒体1が切り離される。
【0055】
画像の印刷が終了した感熱記録媒体1が切り離されると、モータ32aの回転によりフィードローラ32が駆動され、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5から前方に送り出される感熱記録媒体1の長さが調整される。そして、再び、サーマルヘッド4がヘッドダウンされ(図2(B))、ローラ6が下方へ移動されて、かつ、プラテンローラ5が反時計回りに駆動される(図2(C))。そして、再び、感熱記録媒体1に画像が記録される(図2(D))。
【0056】
本実施形態に係る感熱プリンタ100は、フィードローラ32により感熱記録媒体1を往復運動させつつ、感熱記録媒体1に画像を記録するように構成されているので、感熱記録媒体1に画像の記録ができない無駄な部分が生じてしまうことを防止することができる。
【0057】
画像の記録が終了し、カッター7により切り離された感熱記録媒体1は、上記した感熱印刷版1’に相当する。
【0058】
図4は、感熱印刷版1’の一例を示す平面図である。
感熱印刷版1’は、サーマルヘッド4の発熱素子41により熱が加えられずに、親水性の性質がそのまま残った親水部1’bと、発熱素子41により熱が加えられたことで、親油性から親油性に変換され、文字、図形、記号等の画像が記録された親油部1’aとを有する。
【0059】
この感熱印刷版1’では、親油部1’aにインクが染み込み、親水部1’bでは、インクをはじくことになる。これにより、親油部1’aに染み込んだインクを印刷用紙等の被印刷体に印刷することができるので、感熱印刷版1’に記録された文字、図形、記号等を被印刷体に印刷することができる。
【0060】
<各種変形例>
次に、感熱プリンタの変形例について説明する。なお、以降の説明では、上述の第1実施形態と同様の構成及び機能を有する部材等は、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0061】
上述の説明では、感熱記録媒体1のたるみや、傷つき等の防止のために、ローラ6の下方への移動に連動して、プラテンローラ5がモータ5aにより反時計回りに駆動される場合について説明した(図3(C)参照)。しかしながら、感熱記録媒体1のたるみ等の防止は、他の方法によっても実現可能である。
【0062】
図5は、感熱記録媒体1のたるみ等を防止するための他の例に係る感熱プリンタを示す模式図である。
図5に示すように、この変形例に係る感熱プリンタは、フィードローラ32及びプラテンローラ5で共通に用いられるモータ32bと、モータ32bとプラテンローラ5との間に介在されたトルクリミッタ5bとを含む。図5に示す例では、トルクリミッタ5bにより、感熱記録媒体1のたるみ等を防止する。
【0063】
図5に示す感熱プリンタの動作を簡単に説明する。
まず、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5から前方に送り出される感熱記録媒体1の長さが調整された後、サーマルヘッド4がヘッドダウンされる。次に、ローラ移動機構6aによりローラ6が下方へ移動され、感熱記録媒体1がローラ6により感熱層側から押し付けられて、下方へ押し下げられる。この例では、ローラ6が下方へ移動されるとき、プラテンローラ5は、駆動されない。
【0064】
ローラ6が下方へ移動されるとき、プラテンローラ5及びサーマルヘッド4に挟まれた感熱記録媒体1が後方に戻され、プラテンローラ5が反時計回りに回転する。このとき、プラテンローラ5にはトルクリミッタ5bにより負荷がかけられているので、プラテンローラ5は、感熱記録媒体1の張力を保ったまま感熱記録媒体1を後方へ戻すことができる。
これにより、感熱記録媒体1がたるんでしまうことを防止することができ、また、感熱記録媒体1が傷ついてしまうことも防止することができる。
【0065】
なお、この例では、画像記録時には、モータ32bにより、フィードローラ32及びプラテンローラ5の2つのローラが反時計回りに駆動される。この画像記録時には、負荷となっていたトルクリミッタ5bがフィードローラ32の駆動を補助する働きをするので、感熱記録媒体1の搬送精度を向上させることができる。また、図5に示す例では、フィードローラ32及びプラテンローラ5は、共通のモータ32bで駆動されるので、コストもかからず、感熱プリンタの安定した動作を実現することができる。
【0066】
上述の説明では、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1のパスラインを調整する調整機構の一例として、ローラ6を挙げて説明した。しかし、調整機構は、これに限られない。
【0067】
図6は、調整機構の他の例を示す模式図である。
図6に示す例では、調整機構は、先端側に湾曲部81を有する板部材8で構成されている。板部材8は、板部材移動機構8aにより上下方向に移動可能に保持されている。板部材8は、板部材移動機構8aにより下方へ移動され、先端側の湾曲部81で、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1の中央を感熱層側から押し付ける。これにより、板部材8は、画像記録時に、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1のパスラインを調整する。
【0068】
図7は、調整機構のさらに別の例を示す模式図である。
図7に示す例では、調整機構がガイド9によって構成されている。ガイド9は、板状の部材が中央で折り曲げられて構成された上部ガイド91及び下部ガイド92を有する。上部ガイド91及び下部ガイド92の中央は、湾曲するように形成されている。フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1は、上部ガイド91及び下部ガイド92の間に形成されたパスラインに案内される。この例では、フィードローラ32及びピンチローラ31と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5との間の感熱記録媒体1のパスラインは、常時調整されている。
【0069】
図6及び図7に示した例においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5の、フィードローラ32及びピンチローラ31側(図6、図7中左側)の感熱記録媒体1がプラテンローラ5側に傾くので、発熱素子41の先端部と、感熱記録媒体1の感熱層とが張り付いてしまっても、発熱素子41から感熱記録媒体1を容易に剥離することができる。これにより、画像の記録が予定されていない箇所に画像が記録されてしまうこと等を防止することができる。
【0070】
また、フィードローラ32及びピンチローラ31の、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5側(図6、7中右側)の感熱記録媒体1が、フィードローラ32側に傾くので、感熱記録媒体1がフィードローラ32に接する(巻きつく)面積を増加させることができる。これにより、感熱記録媒体1の搬送力を向上させることができ、感熱記録媒体1に対して、高精度に画像を記録することが可能となる。
【0071】
以上の説明では、感熱プリンタ100が有する各部について、収納部2、フィードローラ32及びピンチローラ31、ローラ6(あるいは、板部材8、ガイド9)、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5、カッター7の順番に配置される場合について説明した。しかし、各部の配置は、これに限られない。例えば、各部の配置は、フィードローラ32及びピンチローラ31の位置と、サーマルヘッド4及びプラテンローラ5の位置とが逆であってもよい。
【0072】
以上の説明では、感熱記録媒体1の感熱層は、熱が加えられることで親水性が親油性に変換される性質を有しているとして説明した。しかし、感熱記録媒体の感熱層については、これに限られない。感熱層は、例えば、シアン感熱発色層、マゼンタ感熱発色層、イエロー感熱発色層が順次積層されて構成されていてもよい。
【0073】
なお、感熱層として感熱発色層が用いられ場合、すなわち、感熱記録媒体1として、カラー感熱記録紙が用いられる場合、カラー感熱記録紙に対して、各感熱発色層に特有な波長の定着光を照射する光定着器等が、感熱プリンタ100に適宜追加される。
【符号の説明】
【0074】
1…感熱記録媒体
2…収納部
4…サーマルヘッド
5…プラテンローラ
6…ローラ(調整機構に相当)
8…板部材(調整機構に相当)
9…ガイド(調整機構に相当)
31…ピンチローラ(搬送ローラに相当)
32…フィードローラ(搬送ローラに相当)
41…発熱素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層上に設けられた感熱層とを有する感熱記録媒体を前記基材層側及び前記感熱層側の両側から挟みこみ、前記感熱記録媒体を搬送する一対の搬送ローラと、
前記感熱層に熱を加えて前記感熱記録媒体に画像を記録する発熱素子を有するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間で前記感熱記録媒体を挟み込み、前記基材層側から前記感熱記録媒体を支持するプラテンローラと、
少なくとも前記感熱記録媒体に前記画像が記録されるときに、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラの、前記一対の搬送ローラ側の前記感熱記録媒体が前記プラテンローラ側に傾くように、かつ、前記一対の搬送ローラの、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラ側の前記感熱記録媒体が、前記一対の搬送ローラのうち、一方の搬送ローラ側に傾くように、前記一対の搬送ローラと、前記サーマルヘッド及び前記プラテンローラとの間の前記感熱記録媒体のパスラインを調整する調整機構と
を具備する感熱プリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−178082(P2011−178082A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45915(P2010−45915)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】