説明

感熱印刷媒体処理装置

【課題】 感熱印刷媒体に非接触で表示情報を印刷する感熱印刷媒体処理装置の小型化を図ることを目的とする。
【解決手段】 保温装置2の温度調整可能な収納部2A内にリライトカード1を収納して予め予熱し、予熱したリライトカード1を収納部2Aから排出して搬送経路3で搬送し、レーザマーカ装置10からレーザ光をリライトカード1の感熱層に照射し、予熱温度と変色温度の差分の熱エネルギを感熱層に与えて変色させて表示情報を印刷することにより、レーザマーカ装置10を低出力化して小型化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギに感応して発色する感熱層を備える感熱印刷媒体の感熱層に表示情報を印刷する感熱印刷媒体処理装置に関し、特に、感熱層に非接触で熱エネルギを与えて表示情報を印刷する感熱印刷媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギに感応して可逆的に変色可能な感熱層を有し、カード表面の表示情報が書換えできるリライト構造のカードが、定期券、ポイントカード、プリペードカード、駐車券或いは各種整理券等に用いられている。このようなリライトカードとしては、ロイコ染料を用いた可逆性感温材料で形成した感熱層を有するリライトカードが一般的に知られている。また、温度に応じて可逆的に異なる色に変色する感温変色インクで感熱層を形成したものもある。
【0003】
かかるリライトカードの表示情報の書換え処理を行なう処理装置としては、従来、サーマルヘッドを用いて感熱層に熱エネルギを与えて変色処理し表示情報の書換えを行なうものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−9456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サーマルヘッドを用いる従来の処理装置では、サーマルヘッドをリライトカードに接触させるので、繰返し使用によりカード表面に塵が付着し易いリライト構造のカードを処理する場合には、カード表面に付着した塵がサーマルヘッド側に移動して付着しサーマルヘッドが汚れるという問題がある。
そこで、サーマルヘッドに代えて非接触でリライトカードの感熱層に熱エネルギを与えられる装置、例えばレーザマーカ装置を用いることが考えられる。レーザマーカ装置は、物体にレーザ光を照射し移動させて表示情報の印刷を行なう装置であり、レーザマーカ装置を用いれば、非接触でリライトカードの感熱層を変色処理して表示情報を印刷することができ、サーマルヘッドのようにリライトカードに付着した塵による汚れの問題を解消できる。しかし、レーザマーカ装置を用いた場合に処理装置の大型化を招く。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、非接触印刷処理手段の低出力化による小型化を図ることによりコンパクトな感熱印刷媒体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1の発明は、熱エネルギに感応して発色することにより表示情報の印刷が可能な感熱層を有する感熱印刷媒体の前記感熱層に、前記表示情報を印刷する感熱印刷媒体処理装置であって、前記感熱印刷媒体を予め加熱する予熱手段と、該予熱手段で加熱された前記感熱印刷媒体の前記感熱層に非接触で熱エネルギを与えて発色させ前記表示情報の印刷処理を行なう非接触印刷処理手段と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0007】
かかる構成では、予熱手段で表示情報を印刷する感熱印刷媒体を予め加熱しておき、余熱処理した感熱印刷媒体の感熱層に対して非接触印刷処理手段で熱エネルギを与えて発色させて表示情報を印刷する。こうすることにより、例えば、請求項2のように、前記非接触印刷処理手段が、レーザ光を前記感熱層に照射して発色させ、前記表示情報に応じてレーザ光の照射点を移動させて当該照射点の移動軌跡により前記表示情報の印刷を行なうレーザマーカ装置である場合、レーザマーカ装置から感熱印刷媒体の感熱層に与える熱エネルギが少なくて済み、レーザマーカ装置の発生レーザ光は低出力でよく、レーザマーカ装置を小型化できるようになる。
【0008】
請求項3のように、前記予熱手段は、予め設定した予熱温度に制御した収納部内に、複数の前記感熱印刷媒体を収納して予熱する構成とするとよい。また、請求項4のように、前記予熱手段は、ヒートローラを用いて前記感熱印刷媒体を予熱する構成としてもよく、請求項5のように、前記予熱手段は、ヒートプレートを用いて前記感熱印刷媒体を予熱する構成としてもよい。
【0009】
請求項6のように、前記感熱印刷媒体は、前記感熱層を熱エネルギに感応して可逆的に変色可能な感温材料で形成した前記表示情報の書換えが可能なリライト構造とする。この場合、請求項7のように、前記感温材料が、第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度と、該第1変色点温度より低温で前記第2の色から前記第1の色に変色する第2変色点温度とを有する感温変色インクとするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感熱印刷媒体処理によれば、表示情報の印刷処理前に感熱印刷媒体を予め予熱するので、印刷処理時に非接触印刷処理手段で発生する感熱層の発色に必要な熱エネルギを少なくでき、非接触印刷処理手段の低出力化により非接触印刷処理手段の小型化が可能となり、延いては感熱印刷媒体処理装置の小型化ができる。また、感熱印刷媒体に非接触で熱エネルギを与えられるので、感熱印刷媒体がリライト構造の場合等に媒体側に付着している塵が非接触印刷処理手段側に移動して付着することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る感熱印刷媒体処理装置の一実施形態を示す要部の概略構成図を示す。
図1において、本実施形態の感熱印刷媒体処理装置は、感熱印刷媒体として例えば表示情報の書換えが可能なリライトカード1を予熱する予熱手段である保温装置2と、該保温装置2から排出されて搬送経路3により搬送されたリライトカード1の感熱層に非接触で熱エネルギを与えて発色させ表示情報の印刷処理を行なう非接触印刷処理手段である例えばレーザマーカ装置10とを備えて構成される。
【0012】
前記保温装置2は、複数枚のリライトカード1が収納可能な収納部2A内にリライトカード1を排出する搬送ローラ2Bを備え、収納部2Aにリライトカード1の排出口2aが形成されている。収納部2Aは、図示しない加熱装置により内部空間を設定温度に調節可能な構成である。この保温装置2では、多数のリライトカード1を一括して予熱処理できる利点があり、また、予熱温度の管理が容易である。
【0013】
前記レーザマーカ装置10は、レーザ発振部11と、レーザ光を偏向操作するレーザ偏向部12と、前記レーザ発振部11及びレーザ偏向部12の駆動を制御するコントローラ13とを備えて構成される。前記レーザ発振部11は、コントローラ12の発振指令によりレーザ光をレーザ偏向部12に放射する。前記レーザ偏向部12は、コントローラ13により駆動制御される例えば2つのガルバノミラーを用いてレーザ発振部11から放射されたレーザ光を偏向し、リライトカード1の表面上にレーザ光を照射する。コントローラ13は、搬送経路3の適所に配置されてリライトカード1の搬送位置を検出する位置センサ14のカード位置検出出力によりレーザ発振部11に発振指令を出力すると共に、メモリに予め記憶された表示情報データに基づいてレーザ偏向部12の2つのガルバノミラーを駆動制御してリライトカード1表面上のレーザ光照射点位置を移動制御する。これにより、リライトカード1の感熱層のレーザ光が照射した位置が発色して前記表示情報が印刷(印字)処理される。
【0014】
前記リライトカード1は、熱エネルギに感応して発色して表示情報の印刷が可能な感熱層を備え、感熱層を例えば温度に応じて可逆的に変色する感温材料である例えば感温変色インクをカード基材上に塗布して形成してある。前記感温変色インクは、従来公知のもので、図2に示すように温度を上昇させて行き第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度t2(例えば60℃)と、温度を降下させて行き第2の色から第1の色に変色する第2変色点温度t1(例えば−20℃)(t1<t2)とが異なるヒステリシス特性を示し、第2変色点温度t1と第1変色点温度t2の間の温度域で、変色後の第1の色又は第2の色が維持される変色温度特性を有する。
【0015】
次に、本実施形態の感熱印刷媒体処理装置による印刷動作について説明する。尚、以下では感熱印刷媒体処理装置を発券機として用いた場合を例に説明する。
保温装置2の収納部2A内を、例えば設定温度50℃に予め調節しておき、第1の色に変色処理したリライトカード1を収納部2A内に積層して収納し、リライトカード1が略50℃になるまで余熱する。尚、予熱温度は50℃に限るものではなく、印刷処理する感熱印刷媒体の感熱層の変色温度特性に応じて、常温から感熱層が変色しない温度の範囲内で適宜設定すればよいが、変色点温度に近ければ近い程、次の印刷処理で感熱層の変色に必要な熱エネルギを少なくできるので望ましい。
また、レーザマーカ装置10のメモリには、リライトカード1の感熱層に印字する表示情報データを予め記憶しておく。
【0016】
そして、図示しない操作部で発券操作が行われ発券指令が発生すると、搬送ローラ2Bを駆動して搬送ローラ2Bに接した最下端のリライトカード1を排出口2aから排出し、搬送経路3に沿って搬送手段により搬送する。
【0017】
レーザマーカ装置10は、位置センサ14からリライトカード1の検出信号がコントローラ13に入力すると、コントローラ13はレーザ発振部11に発振指令を出力し、レーザ発振部11がレーザ光の発振を開始する。同時に、コントローラ13はレーザ偏向部12に、メモリ内の表示情報データに基づいたガルバノミラーの駆動制御指令を出力してレーザ偏向部12からリライトカード1に照射するレーザ光の照射点位置を移動制御する。レーザ光の照射によりリライトカード1の感熱層が第1変色点温度t1以上に加熱され、レーザ光の移動軌跡に従って感熱層が変色してリライトカード1の感熱層に表示情報が印字される。この際に、レーザマーカ装置10は、リライトカード1が略50℃まで予熱されているので、第1変色点温度を60℃とした場合にその差分の10℃、リライトカード1を温度上昇させる熱エネルギを発生するだけでよい。
【0018】
尚、感熱層を感温変色インクで形成したリライトカード1は、第2変色点温度以下に冷却するだけで感熱層を元の第1の色に復元できるので、回収した多数のリライトカード1を冷却装置で一括して冷却するだけで再使用が可能となり、リサイクルが容易である。
【0019】
かかる構成の本実施形態の感熱印刷媒体処理装置によれば、レーザマーカ装置10は、少なくともリライトカード1の変色点温度と予熱温度との差分の温度だけリライトカード1を温度上昇させればよく、予熱しない常温状態のリライトカード1を印字処理する場合に比べて、レーザマーカ装置10の発生熱エネルギを少なくでき、照射するレーザ光を低出力にできるので、レーザマーカ装置10を小型化できる。従って、レーザマーカ装置を使用する感熱印刷媒体処理装置を小型化できる。また、非接触でリライトカード1に表示情報を印字できる。
【0020】
上記実施形態では、予熱手段として収納部2Aで一括予熱する構成の保温装置2を用いたが、これに限らず、搬送経路3に例えば図3に示すようにヒートローラ21や図4に示すようにヒートプレート22を予熱手段として配置し、リライトカード1を搬送しながら予熱する構成としてもよい。この場合は、リライトカード1の予熱が1枚ずつとなるが、発券機だけでなく、発行したリライトカードの表示情報の書換え処理装置としても適用できる。図4中、23は搬送ローラである。
【0021】
尚、本発明の感熱印刷媒体処理装置で処理可能な感熱印刷媒体としては、感熱層が感温変色インクで形成されたリライトカードに限らず、ロイコ染料を用いた可逆性感温材料を利用したリライトカードや非可逆性の感温材料を利用した書換えできない感熱印刷媒体でもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る感熱印刷媒体処理装置の一実施形態を示す要部の概略構成図
【図2】感温変色インクの変色温度特性を示す図
【図3】予熱手段の別の例を示す概略図
【図4】予熱手段の更に別の例を示す概略図
【符号の説明】
【0023】
1 リライトカード(感熱印刷媒体)
2 保温装置
2A 収納部
3 搬送経路
10 レーザマーカ装置
21 ヒートローラ
22 ヒートプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギに感応して発色することにより表示情報の印刷が可能な感熱層を有する感熱印刷媒体の前記感熱層に、前記表示情報を印刷する感熱印刷媒体処理装置であって、
前記感熱印刷媒体を予め加熱する予熱手段と、
該予熱手段で加熱された前記感熱印刷媒体の前記感熱層に非接触で熱エネルギを与えて発色させ前記表示情報の印刷処理を行なう非接触印刷処理手段と、
を備えて構成したことを特徴とする感熱印刷媒体処理装置。
【請求項2】
前記非接触印刷処理手段が、レーザ光を前記感熱層に照射して発色させ、前記表示情報に応じてレーザ光の照射点を移動させて当該照射点の移動軌跡により前記表示情報の印刷を行なうレーザマーカ装置である請求項1に記載の感熱印刷媒体処理装置。
【請求項3】
前記予熱手段は、予め設定した予熱温度に保持した収納部内に、前記感熱印刷媒体を収納して予熱する構成である請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体処理装置。
【請求項4】
前記予熱手段は、ヒートローラを用いて前記感熱印刷媒体を予熱する構成とした請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体処理装置。
【請求項5】
前記予熱手段は、ヒートプレートを用いて前記感熱印刷媒体を予熱する構成とした請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体処理装置。
【請求項6】
前記感熱印刷媒体が、前記感熱層を熱エネルギに感応して可逆的に変色可能な感温材料で形成した前記表示情報の書換えが可能なリライト構造である請求項1〜5のいずれか1つに記載の感熱印刷媒体処理装置。
【請求項7】
前記感温材料が、第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度と、該第1変色点温度より低温で前記第2の色から前記第1の色に変色する第2変色点温度とを有する感温変色インクである請求項6に記載の感熱印刷媒体処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate