説明

感熱記録体

【課題】
感熱記録体に関して、感熱面に水が付着しても、べとつかず、接着しない感熱記録体を提供する。
【解決手段】
本発明に係る感熱記録体は、支持体上に、少なくとも、ロイコ染料と該ロイコ染料を加熱時に発色せしめる顕色剤を含有させた感熱記録層と該感熱記録層の上にオーバーコート層を設けた感熱記録体において、前記オーバーコート層は、樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有し、該ベオバアクリル樹脂の含有量は、前記オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50〜100質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に、少なくとも、無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体と顕色剤からなる電子受容体を含有する感熱記録層とオーバーコート層を設けた感熱記録体において、感熱面に水が付いたとしても、べた付きが少なく、感熱面の接着が少ない感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体と顕色剤からなる電子受容体を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体は、比較的簡単な装置によって記録画像が得られ、騒音発生がなく、コストが安いこと等の利点があり、たとえば、ファクシミリー、ラベルプリンター、ハンディーターミナル、レジスター、券売機、レコーダー等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体と顕色剤からなる電子受容体を含有する感熱記録層と該感熱記録層の上にオーバーコート層を設けた感熱記録体は、水に濡れた状態で感熱記録層が設けられた感熱面同士が接触したときに、接着し、感熱記録層が剥れ、画像が不鮮明となることがある。
【0004】
また、検針用ハンディーターミナルのように雨天でも外で使われることがあり、雨が感熱記録紙に付着すると、べた付き、接着が生ずることがあり、これらの改良が望まれている(例えば特許文献1又は特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開平11−078240号公報
【特許文献2】特開平11−078241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、水に濡れても、べた付きや接着が生ずることのない感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、感熱記録体の支持体上に設けたオーバーコート層の樹脂として、ベオバアクリル樹脂を含有させることで、水に濡れても、べた付きや接着が生ずることのないことを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明に係る感熱記録体は、支持体上に、少なくとも、ロイコ染料と該ロイコ染料を加熱時に発色せしめる顕色剤を含有させた感熱記録層と該感熱記録層の上にオーバーコート層を設けた感熱記録体において、前記オーバーコート層は、樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有し、該ベオバアクリル樹脂の含有量は、前記オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50〜100質量%であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る感熱記録体では、前記感熱記録体を水道水に5秒間浸漬したのち、前記感熱記録層側の面同士を接触させて常温乾燥させたとき、前記面同士が接着せず、且つ、前記感熱記録層が剥れないことが好ましい。
【0008】
本発明に係る感熱記録体では、前記支持体上に、前記感熱記録層の下層として、アンダーコート層を設けた場合が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱記録紙は、水道水に5秒間浸漬したのち、感熱面同士を接触させて常温乾燥させたとき、剥したときの感熱面同士の接着がなく、綺麗にはがれる。また、感熱面に水を一滴垂らして手で触っても、べた付きのない性質を有していた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。すなわち、感熱記録体に用いる主な主成分を以下に具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係る感熱記録体は、支持体上に、少なくとも、ロイコ染料と該ロイコ染料を加熱時に発色せしめる顕色剤を含有させた感熱記録層と該感熱記録層の上にオーバーコート層を設けた感熱記録体であり、前記オーバーコート層は、樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有し、該ベオバアクリル樹脂の含有量は、前記オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50〜100質量%であることを特徴とする。支持体上に、感熱記録層の下層として、アンダーコート層を設けた場合が含まれる。このとき、支持体上にアンダーコート層、感熱記録層及びオーバーコート層が順次形成される。なお、アンダーコート層、感熱記録層及びオーバーコート層の各層間に、本発明の趣旨に反しない範囲で他の層を設けても良く、また、アンダーコート層、感熱記録層又はオーバーコート層をそれぞれ複数層により形成しても良い。たとえば感熱記録層であれば、高温発色層と低温発色層の2層構成としても良い。そして本発明は、感熱記録体のオーバーコート層に樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有させたことを特徴とするものである。ベオバアクリル樹脂は、主としてオーバーコート層の接着剤となる。
【0012】
支持体としては、紙、プラスチックフィルム又は合成紙或いはこれらの複合体が用いられる。支持体は、シート状のものに形成できるものであれば特に限定されない。
【0013】
アンダーコート層は、発色均一性等の特性向上のために、支持体と感熱記録層の間に設けるものである。このアンダーコート層は、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレー、酸化チタン、微粒子状無水シリカ等の無機顔料及び/又はスチレン、スチレン・アクリル共重合体、尿素樹脂などの有機顔料と、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体系ラテックスなどの水溶性及び水分散性樹脂とを、各々単独或いは2種類以上選択して、アンダーコート用塗液として調製して、支持体上に、このアンダーコート用塗液を塗布し、乾燥することにより形成される。アンダーコート層の塗工量は、乾燥質量で例えば3〜10g/m、好ましくは5〜8g/mである。
【0014】
感熱記録層としては、ロイコ染料と該ロイコ染料を加熱時に発色せしめる顕色剤が含有されるほか、記録感度を高めるために使用される増感剤やステッキング防止剤が含有させる場合がある。さらに、これらをつなぎ止める接着剤が含有される場合がある。必要に応じて硬化剤を加えても良い。
【0015】
感熱記録層に用いられる無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体としては、特許文献1又は特許文献2に具体的に記載されたロイコ染料等の各種公知のロイコ染料が使用できる。その具体例としては、例えば下記のものが上げられる。[2−アニリド−6−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3−メチル]キサンテン−9−スピロ−1‘−(3’−イソベンゾフラノン)、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピルメチルアミノ−6−メチル−7−フエニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2‘−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアニリノフルオランなどである。勿論、これらに限定されるものではなく、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。
【0016】
無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体と共に併用される顕色剤となる電子受容体としては、特許文献1又は特許文献2に具体的に記載された顕色剤等の各種公知の顕色剤が使用できる。例えば、2,2ビス(4‘−オキシフエニル)2−プロパン、4−4’−ジヒドロキシジフエニルスルホン、2,4‘−ジヒドロキシジフエニルスルホン、パラオキシ安息香酸ベンジルエステル、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0017】
増感剤としては、特許文献1又は特許文献2に感度向上剤として具体的に記載された増感剤等の各種公知の増感剤が使用できる。その具体例としては、例えば下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。パラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、メタターフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、シュウ酸(P−メチルベンジル)、テレフタル酸ジメチルエステルなどである。
【0018】
上記無色ないし淡色のロイコ染料からなる電子供与体、顕色剤となる電子受容体、増感剤を含む塗液の調製は、一般に水を分散媒体とし、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等の攪拌・粉砕機により、各種感熱材料を各々別々に、または、2種類以上を分散剤とともに平均粒子径が0.5〜3μm程度となるように微分散した後、接着剤を添加し、混合攪拌して調製する。これを支持体上もしくはアンダーコート層上に塗布し、乾燥することで、感熱記録層が形成される。感熱記録層の塗工量は、乾燥質量で例えば3〜10g/m、好ましくは5〜7g/mである。
【0019】
ここに使用される接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス等の水溶性及び水分散性樹脂などである。ポリビニルアルコール、メチルセルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、アクリル酸エステル共重合体系ラテックスが全固形分の5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度配合される。
【0020】
更に、感熱記録体が記録機器や記録ヘッドとの接触によってステッキングを生じないように、塗液中にステッキング防止剤を加えても良い。ステッキング防止剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の分散液や、記録ヘッドのカス付着を改善するために、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレー、酸化チタン、微粒子状無水シリカ等の無機顔料がある。
【0021】
本実施形態に係る感熱記録体は、オーバーコート層に樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有させている。ベオバアクリル樹脂を用いず、その代わりにポリビニルアルコールのような水溶性樹脂のみを接着剤とした場合、水に触れると指にべたついたり、感熱面同士を重ねたときに接着したりしてしまう。ここで、オーバーコート層に含まれるベオバアクリル樹脂の含有量は、オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50〜100質量%とし、好ましくは70〜100質量%とする。高含有量とすることが好ましい。ベオバアクリル樹脂の含有量を50質量%未満とすると、水に触れたときのべた付きが発生し、また感熱面同士の接着が生じてしまう。
【0022】
オーバーコート層の樹脂成分は主として接着剤として加えるものであるが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス等の水溶性及び水分散性樹脂などを、ベオバアクリル樹脂に混合することで使用することができる。
【0023】
オーバーコート層中には、サーマルヘッドとのマッチング性を向上させる目的で、顔料として炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等などを含有させても良い。また、滑剤として、ステアリン酸亜鉛、パラフィンワックス等を含有させても良い。顔料や滑剤は、各々単独あるいは、2種類以上使用可能である。勿論、これらに限定されるものではない。ベオバアクリル樹脂を含む接着剤、顔料及び滑剤を含有するオーバーコート用塗液を調製して、感熱記録層上に、このオーバーコート用塗液を塗布し、乾燥することにより、オーバーコート層が形成される。オーバーコート層の塗工量は、乾燥質量で例えば0.5〜5g/m、好ましくは1〜3g/mである。
【0024】
本発明に係る感熱記録体を形成するための各塗液中には、消泡剤や分散剤を適宜添加しても良い。
【0025】
このようにして得られた本発明に係る感熱記録体は、感熱記録体を水道水に5秒間浸漬したのち、感熱記録層側の面同士を接触させて常温乾燥させたとき、感熱記録層側の面同士が接着せず、また、感熱記録層が剥れないという特徴を有する。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、特に断らない限り実施例、比較例中の部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
(実施例1)
【0027】
(1)アンダーコート層の形成
【表1】

表1の組成物を混合しアンダーコート用塗液を調製した。この液を乾燥後の塗布量が6g/mとなるように上質紙に塗布・乾燥しアンダーコート層を形成した。
【0028】
(2)A液調製
【表2】

表2の組成物をサンドグラインダーで平均粒子径が1μmとなるまで粉砕した。
【0029】
(3)B液調製
【表3】

表3の組成物をサンドグラインダーで平均粒子径が1μmとなるまで粉砕した。
【0030】
(4)感熱記録層の形成
【表4】

表4の組成物を混合、攪拌し、塗液とした。得られた塗液を上記アンダーコート層上に乾燥質量が6g/mとなるように塗布、乾燥して感熱記録層を得た。
【0031】
(5)オーバーコート層の形成
【表5】

表5の組成物を上記感熱記録層の上に乾燥質量が2.0g/mとなるように塗布、乾燥して感熱記録紙を得た。
【0032】
なお表1から表5の配合において、焼成クレー、ポリビニルアルコール、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムについては、入手した各原料をそれぞれ所定濃度の水溶液若しくは分散液に調整した後、その水溶液若しくは分散液の質量を基準として各組成物に添加した。ポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液、パラフィンワックス30%溶液、ステアリン酸亜鉛30%溶液及びベオバアクリル樹脂50%溶液については、溶液化された原料を入手し、そのままそれらの溶液の質量を基準として各組成物に添加した。
(実施例2)
【0033】
実施例1でオーバーコート層のベオバアクリル樹脂11部とした代わりに、ベオバアクリル樹脂を7部とし、さらにポリビニルアルコールの10%水溶液を20部混合した。それ以外は実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。
(実施例3)
【0034】
実施例1でオーバーコート層のベオバアクリル樹脂11部とした代わりに、ベオバアクリル樹脂を5.5部とし、さらにポリビニルアルコールの10%水溶液を27.5部混合した。それ以外は実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。
(比較例1)
【0035】
実施例1でオーバーコート層のベオバアクリル樹脂11部とした代わりに、ベオバアクリル樹脂を混合せず、ポリビニルアルコールの10%水溶液を55部混合した。それ以外は実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。
(比較例2)
【0036】
実施例1でオーバーコート層のベオバアクリル樹脂11部とした代わりに、ベオバアクリル樹脂を3.7部とし、さらにポリビニルアルコールの10%水溶液を36.5部混合した。それ以外は実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。
【0037】
かくして得られた感熱記録紙を感熱発色機[商品名:TH−PMD、大倉電気社製]を用い、印加エネルギー0.40mj/dotで発色させる。
【0038】
発色させた各感熱記録紙を水道水に5秒間浸漬させたのち、(A)発色済みの感熱面同士を接触させ或いは(B)発色済みの感熱面と未発色の感熱面とを接触させ、(1)1分後に剥したものと、(2)常温乾燥後剥したもの、について、それぞれ接着具合を目視で総合的に判定する。接着し感熱記録層が剥れるものは×、極わずかに接着するが感熱記録層が剥れないものは△、接着せず感熱記録層が剥れないものは○として評価した。
【0039】
以下に耐水接着性の結果を表6に示す。
【表6】

【0040】
表6の結果より、各実施例で得られた感熱記録紙は、比較例との比較で、感熱面に水がついても接着することがない極めて優れた感熱記録紙であった。
【0041】
実施例1ではベオバアクリル樹脂の含有量は、オーバーコート層に含まれる全樹脂量の100質量%であり、実施例2では64質量%であり、実施例3では50質量%である。一方、比較例1では、ベオバアクリル樹脂の含有量は、オーバーコート層に含まれる全樹脂量の0質量%であり、比較例2では34質量%である。ベオバアクリル樹脂の含有量を、オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50質量%以上とすることで、感熱面に水がついても接着することがない感熱記録紙が得られたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも、ロイコ染料と該ロイコ染料を加熱時に発色せしめる顕色剤を含有させた感熱記録層と該感熱記録層の上にオーバーコート層を設けた感熱記録体において、前記オーバーコート層は、樹脂成分としてベオバアクリル樹脂を含有し、該ベオバアクリル樹脂の含有量は、前記オーバーコート層に含まれる全樹脂量の50〜100質量%であることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記感熱記録体を水道水に5秒間浸漬したのち、前記感熱記録層側の面同士を接触させて常温乾燥させたとき、前記面同士が接着せず、且つ、前記感熱記録層が剥れないことを特徴とする請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記支持体上に、前記感熱記録層の下層として、アンダーコート層を設けたことを特徴とする請求項1及び2に記載の感熱記録体。


【公開番号】特開2006−218672(P2006−218672A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32709(P2005−32709)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】