説明

感熱記録体

【課題】階調性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【解決手段】支持体の一方の面に、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記ロイコ染料が、ロイコ染料のみの固体分散粒子と、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子とからなり、前記感熱記録体を0.099〜0.419mJ/dotの印画エネルギーで階調発色させた場合、印画エネルギーが0.132〜0.331mJ/dotの間で、横軸に印画エネルギーを、縦軸に発色濃度を取って発色濃度曲線を描いて、該発色濃度曲線に最小二乗法で近似直線を求めた時の相関係数の2乗(R)が0.995以上(一定の濃度増加率)となることを特徴とする感熱記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用し、熱により両発色物質を接触せしめて発色像を得るようにした感熱記録体は良く知られている。かかる感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種計算機等の記録媒体としてのみならずCRT医療診断、X線画像用プリンター、CAD用のプロッター等の記録媒体としても使用されている。
【0003】
その中で、CRT医療診断用プリンターの記録媒体として使用される感熱記録体には、銀塩写真並みに階調性に優れ、記録部の保存性に優れた感熱記録体が要望されている。ところで、記録部の保存性を高めるために、1層からなる単色系の感熱記録層中に黒色発色性ロイコ染料のみからなる粒子、及び近赤外領域にも吸収能を有する黒色発色性ロイコ染料と樹脂との複合粒子を含有する感熱記録体(特許文献1参照)が提案されているが、階調性に優れた感熱記録体が得られていないのが現状である。また、階調性に優れた感熱記録体を提供するために、感熱記録層において、ロイコ染料のみの粒子、及びロイコ染料と樹脂との複合粒子を含有する一層あるいは二層構成の感熱記録体(特許文献2参照)も提案されているが、近年、階調性のより優れた感熱記録体が要望されている。また、階調性に優れ、画像保存性に優れた感熱記録体を提供するために、感熱記録層中の染料前駆体が複数の感熱感度を有する粒子よりなり、その内の少なくとも一種以上がビニル単量体を重合して得られる染料前駆体である技術が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−226175号公報
【特許文献2】特開2001−322358号公報
【特許文献3】特開2002−370461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特に階調性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するための一つの手段として、支持体の一方の面に、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記ロイコ染料が、ロイコ染料のみの固体分散粒子と、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子とからなり、前記ロイコ染料のみの固体分散粒子が、前記複合粒子に対して1〜15質量%含有されることにより、前記感熱記録体を0.099〜0.419mJ/dotの印画エネルギーで階調発色させた時、0.132〜0.331mJ/dotにかけて一定の濃度増加率で発色させることができ、階調性に極めて優れた感熱記録体を得ることができる。
【0007】
即ち、本発明は、以下の感熱記録体を提供するものである。
【0008】
項1:支持体の一方の面に、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記ロイコ染料が、ロイコ染料のみの固体分散粒子と、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子とからなり、前記感熱記録体を0.099〜0.419mJ/dotの印画エネルギーで階調発色させた場合、印画エネルギーが0.132〜0.331mJ/dotの間で、横軸に印画エネルギーを、縦軸に発色濃度を取って発色濃度曲線を描いて、該発色濃度曲線に最小二乗法で近似直線を求めた時の相関係数の2乗(R)が0.995以上(一定の濃度増加率)となることを特徴とする感熱記録体。
項2:前記ロイコ染料のみの固体分散粒子が、前記複合粒子に対して1〜15質量%含有される、項1に記載の感熱記録体。
項3:前記複合粒子において、ロイコ染料が複合粒子中に5〜50質量%含有される、項1または2の感熱記録体。
項4:前記複合粒子において、前記疎水性樹脂がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートである、項1から3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
項5:前記複合粒子において、前記疎水性樹脂がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートとm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートの含有量がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートの2倍以下である、項1から3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱記録体は、階調性に極めて優れ、医療画像診断用に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1、2、3に記載の感熱記録体の発色濃度曲線とその近似直線
【図2】比較例1、2に記載の感熱記録体の発色濃度曲線とその近似直線
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、支持体の一方の面に、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記ロイコ染料が、ロイコ染料のみの固体分散粒子と、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子とからなり、前記感熱記録体を0.099〜0.419mJ/dotの印画エネルギーで階調発色させた場合、印画エネルギーが0.132〜0.331mJ/dotの間で、横軸に印画エネルギーを、縦軸に発色濃度を取って発色濃度曲線を描いて、該発色濃度感度曲線に最小二乗法で近似直線を求めた時の相関係数の2乗(R)が0.995以上(一定の濃度増加率)となることを特徴とする。ロイコ染料の発色色調としては特に限定されないが、黒色発色性のものが好ましい。
【0012】
ロイコ染料のみの固体分散粒子と複合粒子中のロイコ染料の種類は、記録部の発色色調が低濃度(発色濃度0.2程度)から高濃度(発色濃度1.6程度)まで、ほぼ同一であることが好ましい。
【0013】
ロイコ染料のみの固体分散粒子は、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子に対して15質量%以下含有されることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。また、前記ロイコ染料のみの固体分散粒子の、前記複合粒子に対する含有量の下限値としては、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。前記ロイコ染料のみの固体分散粒子単独の使用では、本発明の感熱記録体は得られない。
【0014】
また、前記複合粒子において、ロイコ染料が複合粒子中に5〜50質量%含有されることが好ましく、20〜45質量%含有されることがより好ましい。5〜50質量%の範囲であれば、上記記載のロイコ染料のみの固体分散粒子と前記複合粒子との含有比率において、本発明の感熱記録体を得る場合に容易に発色濃度曲線をコントロールすることができる。
【0015】
感熱記録層に含有されるロイコ染料は、特に制限はなく、トリアリール系、ジフェニルメタン系、チアジン系、スピロ系、ラクタム系、フルオラン系等のロイコ体が使用できる。
その具体例としては、例えば、黒色発色を与える染料前駆体として、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2,4−ジメチル−6−(4−ジメチルアミノアニリノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、及び3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン等が挙げられる。
【0016】
赤若しくは赤紫、オレンジ色系統の発色を与える染料前駆体としては、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(p−ニトロ)アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(o−クロロ)アニリノラクタム、3−ジメチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−tert−ブチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−エチルフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−トリルアミノ−7−メチルフルオラン、3−トリルアミノ−7−エチルフルオラン、2−(N−アセチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−プロピオニルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ベンゾイルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−カルボブトキシアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ホルミルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−ベンジルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−アリルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3,3′−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3′−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3′−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3′−フタリド〕、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−p−メチルフェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3′−フタリド〕、及び7−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3′−フタリド〕等を挙げることができる。
【0017】
青色発色を与える染料前駆体としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−n−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−フタリド及び3−ジフェニルアミノ−6−ジフェニルアミノフルオラン等を挙げることができる。
【0018】
緑色発色を与える染料前駆体としては、3−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,3′−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、及び3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド等を挙げることができる。
【0019】
黄色系統の発色を与える染料前駆体としては、3,6−ジメトキシフルオラン、及び1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレン等が挙げられる。
【0020】
なお、前記の各種染料前駆体は、必要に応じて、同じ色調に発色する2種以上の染料前駆体を併用することもできるし、色調補正のために他の色調に発色する染料前駆体と併用することもできる。
【0021】
疎水性樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリアクリレート、ポリウレタ、ポリウレア、ポリウレアポリウレタン等の樹脂が好ましく、特にポリウレアまたはポリウレアポリウレタンが好ましい。
【0022】
ロイコ染料、及びポリウレアまたはポリウレアポリウレタンとからなる複合粒子は、例えば多価イソシアネート化合物とロイコ染料とを溶解した油性溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.3〜6μm程度となるように乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られる。
【0023】
多価イソシアネート化合物とは、水と反応することによりポリウレア、またはポリウレアポリウレタンを形成する化合物であり。多価イソシアネート化合物のみであってもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは多価イソシアネート化合物とポリオールの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等の多量体であってもよい。これら多価イソシアネート化合物にロイコ染料を溶解し、この溶液を、ポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解含有している水性媒体中に乳化分散し、更に必要によりポリエチレンイミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加温することにより、高分子形成性原料を重合させることによって高分子化し、それによってロイコ染料と高分子物質とからなる複合粒子を形成することができる。
【0024】
多価イソシアネート化合物としては、例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート類、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類等を例示することができる。
【0025】
本発明において、より隔離性と耐熱性の高い複合粒子を作製するためには、多価イソシアネート化合物としてジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネートを単独で使用することが好ましい。また、耐熱性の低下を最小限に抑制しつつ、しかも記録感度を向上させた複合粒子を作製する場合には、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネートとm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートを併用することが好ましい。その場合には、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート100質量部に対してm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートを10〜200質量部程度用いることが好ましく、30〜100質量部程度用いることがより好ましい。
【0026】
多価イソシアネート化合物とポリオールとの付加物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、トリレンジイソシアネートのヘキサントリオール付加物等のイソシアネートプレポリマーを用いることができる。
また、多価イソシアネート化合物の多量体としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等の多量体を挙げることができる。
【0027】
本発明に使用するポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、2,3−ジヒドロキシブタン、1,2−ジヒドロキシブタン、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族多価アルコールとアルキレンオキサイドとの縮合生成物、フェニルエチレングリコール、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、α,α′−ジヒドロキシ−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、2−(p,p′−ジヒドロキシジフェニルメチル)ベンジルアルコール、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族ポリオール、4,4′−イソプロピリデンジフェノールのエチレンオキサイド付加物、4,4′−イソプロピリデンジフェノールのプロピレンオキサイド付加物、2−ヒドロキシアクリレートのような分子内にヒドロキシ基のあるアクリレート等が挙げられる。
【0028】
勿論、多価イソシアネート化合物、多価イソシアネートとポリオールとの付加物及びポリオール化合物等は、上記化合物に限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0029】
更に、本発明では発色感度をより向上させる目的で、複合粒子作成時の溶質として、染料前駆体の他に融点が40〜150℃で、且つ沸点200℃以上の有機化合物を併用することができる。融点が40〜150℃で、且つ沸点200℃以上の有機化合物としては、芳香族ケトン化合物、芳香族エーテル化合物、及び芳香族環状エステル化合物が好ましく使用できる。その具体例を示すと、例えば芳香族ケトン化合物としてはベンゾフェノン、芳香族エーテル化合物としては1,2−ジ(m−トリルオキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(2−メチルフェノキシ)エタン、芳香族環状エステル化合物としてはクマリン、フタリド等がある。上記の有機化合物は単独で使用してもかまわないが、2種以上併用することも可能である。
【0030】
また、複合粒子作成時の溶質として、染料前駆体の他に、必要に応じて、2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系或いはベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶性蛍光染料、離型剤、有機錫化合物等の反応促進剤等を添加することもできる。
【0031】
複合粒子の調製における染料前駆体と多価イソシアネート化合物含有重合成分との比率は、発色感度と隔離性の点から、染料前駆体100質量部に対して、多価イソシアネート化合物含有重合成分を50〜500質量部程度使用するのが好ましく、60〜200質量程度使用するのがより好ましい。また、
【0032】
本発明に使用する複合粒子の調製においては、多価イソシアネート化合物含有重合成分を主たる溶媒とし、染料前駆体を溶質とする溶液を水性媒体中に乳化分散するが、溶液の粘度を下げる目的で必要に応じて、低沸点溶剤を補助溶媒として使用することもできる。かかる低沸点溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン等が挙げられる。なお、このような低沸点溶剤の使用量は、多価イソシアネート化合物含有重合成分と低沸点溶剤の合計量に対して0.1〜15質量%程度、好ましくは0.5〜5質量%程度とするのが望ましい。
【0033】
多価イソシアネート化合物含有重合成分と染料前駆体を含む溶液を乳化分散する際に用いる水性媒体は、水と乳化剤(保護コロイド剤)で構成されるが、かかる乳化剤としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン基変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性合成高分子化合物を用いることができる。水性媒体における乳化剤の固形分濃度については、特に限定するものではないが、一般に2〜20質量%程度、好ましくは5〜15質量%程度である。水性媒体中には、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等を添加してもよい。
複合粒子調製の際の乳化剤の使用量については特に限定はないが、多価イソシアネート化合物含有重合成分と染料前駆体を主成分とする溶液に対して、乳化剤が10〜50質量%程度、好ましくは15〜35質量%程度となるように水性媒体を使用するのが望ましい。
【0034】
多価イソシアネート化合物含有重合成分の高分子化反応を特定の分子量を有するポリエチレンイミンの存在下で行うが、水性媒体中にポリエチレンイミン以外の反応促進剤、例えば錫化合物、ポリアミド化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物等を併用することもできる。
【0035】
次いで、呈色剤の具体例としては、例えばヒドロキノンモノベンジルエーテル、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシフェニル−4’−ベンジルオキシフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3’,4’−テトラメチレンビフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−p−トリルスルホン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、4,4’−ビス(p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4−{3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等が挙げられる。
【0036】
勿論、ロイコ染料及び呈色剤としてはこれらに限定されるものでなく、必要に応じてそれぞれ2種以上を併用することもできる。ロイコ染料と呈色剤の使用比率は、用いられるロイコ染料と呈色剤の種類に応じて適宜選択されるもので、特に限定されるのではないが、一般に無色乃至は淡色のロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の呈色剤が使用される。
【0037】
感熱記録層用塗液中の接着剤としては、例えば部分(完全鹸化)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、ゼラチン、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン等の水溶性接着剤、並びに酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が挙げられる。
【0038】
感熱記録層用塗液中に添加し得る助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤類、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成クレー、スチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料類、グリオキザール、ジメチロール尿素、ポリアミドエピクロルヒドリン、硼酸、硼砂等の架橋剤類等が挙げられる。
【0039】
感熱記録層には、更に記録感度を高めるために増感剤、及び記録部の保存性を高めるために保存性改良剤を含有させることもできる。増感剤としては、例えば1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1、2−ジフェノキシエタン、パラベンジルビフェニル、ナフチルベンジルエーテル、ベンジル−4−メチルチオフェニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、蓚酸ジベンジルエステル、蓚酸−ジ−p−メチルベンジルエステル、蓚酸−ジ−p−クロロベンジルエステル、テレフタル酸ジブチルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル、イソフタル酸ジブチルエステル等が挙げられる。
【0040】
また、保存性改良剤としては、例えば4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,4−ジ−tert−ブチル−3−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(5−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール類;4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2,3−グリシジルオキシ)ジフェニルスルホン等のエポキシ基を有するジフェニルスルホン誘導体;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0041】
なお、感熱記録層中に含有し得る助剤、増感剤及び保存性改良剤の平均粒子径としては2μm以下が望ましい。増感剤及び呈色剤の使用量としてはロイコ染料1質量部に対して0.5〜4質量部程度である。
【0042】
感熱記録層は、水を分散媒体とし、例えば平均粒子径が0.1〜2μm程度、好ましくは0.4〜0.8μmとなるよう微粉砕されたロイコ染料のみからなる固体分散粒子、及びロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子、呈色剤、接着剤、及び必要により下記の助剤を添加して調製された感熱記録層用塗液を透明な支持体の一方の面に乾燥後の塗布量が2〜25g/m2程度となるように塗布乾燥して形成される。
【0043】
支持体としては特に限定されないが、高階調画質が必要とされる医療用には、例えば上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、インクジェット紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フイルム、透明フイルムとしては、ポリカーボネート系フイルム、ポリエステル系フイルム、ポリスチレン系フイルム、ポリオレフィン系フイルム、ポリアミド系フイルム等が挙げられる。
【0044】
本発明においては、従来から公知の感熱記録体に使用されている接着剤を含有する下塗層も利用することができる。特に紙を支持体とした場合は、下塗層を設けることが望ましい。
【0045】
接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、澱粉およびその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチンおよびそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体等を挙げることができる。なお、水不溶性重合体を接着剤として用いるときは、ラテックスの状態で用いればよい。これらの中でも、紙支持体表面の被覆性を高めて毛羽立ちを抑え、カッター適性を向上する観点から、水不溶性重合体を用いることが好ましい。
【0046】
かかる水不溶性重合体としては、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体が好ましい。特に、単量体成分としてメタアクリル酸メチルを1〜25質量%含有し、ガラス転移温度が20℃以下であるスチレン−ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体が好ましい。
【0047】
前記共重合体の単量体成分であるブタジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられるが、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。
【0048】
前記ブタジエンの使用量は、全単量体の合計量に対して、40〜60質量%の範囲が好ましい。前記ブタジエンの使用量が全単量体の合計量に対して40質量%未満であると、毛羽立ちを抑える効果が低下し、60質量%を超えると記録濃度が低下する。
【0049】
前記共重合体の単量体成分であるスチレンの使用量は、全単量体の合計量に対して、35〜55質量%の範囲が好ましい。前記スチレンの使用量が全単量体の合計量に対して35質量%未満であると、地肌カブリに劣り、55質量%を超えると記録部の画質に劣る。
【0050】
前記共重合体の単量体成分であるアクリロニトリルの使用量は、全単量体の合計量に対して、3〜20質量%の範囲が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3質量%以上10質量%未満が最も好ましい。前記アクリロニトリルの使用量が全単量体の合計量に対して3質量%未満であると、毛羽立ちを抑える効果が低下し、20質量%を超えると地肌カブリに劣る。
【0051】
前記共重合体の単量体成分であるメタアクリル酸メチルの使用量は、全単量体の合計量に対して、1〜25質量%の範囲が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。前記メタアクリル酸メチルの使用量が全単量体の合計量に対して1質量%未満であると、地肌カブリに劣り、25質量%を超えると記録部の保存性に難がる。
【0052】
前記共重合体の単量体成分としては、上記のスチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メタアクリル酸メチル以外には、エチレン系不飽和カルボン酸単量体があげられ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、これらジカルボン酸の無水物、マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のジカルボン酸のモノエステル(半エステル)等が挙げられる。前記単量体は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられるが、中では、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸が好ましい。
【0053】
前記共重合体の単量体成分であるエチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体の合計量に対して、0.2〜4.0質量%の範囲が好ましい。前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量が、全単量体の合計量に対して0.2質量%未満であると、下塗り層用塗液の調製時の機械的安定性に欠け、4.0質量%を超えると地肌部の耐熱性に劣る。
【0054】
更に、前記共重合体のガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、0℃以下が特に好ましい。一方、下限値としては−50℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が20℃を超えると、柔軟性が不足して特に折れ割れ耐性が悪化する。
【0055】
接着剤の含有量は、下塗り層の全固形量に対して5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。5質量%以上とすることにより、サイズ度が比較的低い支持体に対しても、接着剤成分が沈み込んで下塗り層の塗膜強度が低下することがなく、しかも接着剤成分がある程度沈み込むのでカッター適性を向上できる。一方、50質量%以下とすることにより、感度を向上できる。
【0056】
下塗り層は、無機顔料及び有機顔料のいずれも含有することができる。無機顔料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、水酸化アルミニウム、無定形シリカ、結晶性シリカ等が挙げられる。これらの中でも、JIS K 5101−1991の方法に従い求められる吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料が好ましい。有機顔料としては、プラスチック中空粒子が好ましい。プラスチック中空粒子としては、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる、中空率が50〜99%程度の粒子が挙げられる。ここで、中空率は、(d/D)×100で求められる値である。式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dはプラスチック中空粒子の外径を示す。プラスチック中空粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2200、島津製作所社製)による50%値で、0.5〜10μm程度、特に1〜3μm程度が好ましい。プラスチック中空粒子の含有量は、下塗り層の全固形量に対して3〜30質量%程度が好ましい。
【0057】
下塗り層は、例えば、水を媒体とし、接着剤、顔料、助剤等を混合して得られる下塗り層用塗液を紙支持体上に塗布及び乾燥することにより形成される。助剤としては、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等、公知のものを用いることができる。
【0058】
紙支持体上に下塗り層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、ロッド法、グラビア法、ロールコーター法、カーテンコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。塗布量としては、乾燥重量が1〜20g/m、好ましくは3〜12g/mの範囲で調整される。また、下塗り層を2層以上に分けて塗布して形成することもできる。
【0059】
本発明の感熱記録体は、保存性を向上させたり、記録時の走行性を向上させるために、感熱記録層上に保護層を設けることが好ましい。保護層は水を媒体とし、接着剤と顔料を主成分として、必要により添加される各種助剤を混合して得られる保護層用塗液を、感熱記録層上に塗布及び乾燥して得ることができる。
【0060】
保護層に使用する顔料としては、例えば無定形シリカ、カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、合成層状雲母、尿素−ホルマリン樹脂フィラー等のプラスティックピグメント等が挙げられる。
【0061】
また、保護層用塗液に使用する接着剤として、例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、澱粉およびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびスチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の疎水性重合体のラテックスが挙げられる。
【0062】
なかでも、顔料とのバインダー効果、可塑剤や油等の溶剤に対する記録部の保存性に特に優れていることから、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが好ましく、とりわけアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。
【0063】
接着剤の含有量は、保護層の全固形量に対して20〜85質量%程度が好ましく、より好ましくは35〜80質量%程度である。
【0064】
その他、保護層中に公知の助剤、例えば、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
【0065】
保護層用塗液の塗布量は、乾燥重量で0.5〜10g/m2程度、好ましくは1〜5g/m2程度である。
【0066】
感熱記録層用塗液及び保護層用塗液の塗布方法としては、特に限定されず、前記の下塗り層用塗液の塗布方法に挙げた従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。また、印刷機等を使用して本発明の感熱記録層用塗液を部分印刷して使用することもできる。
【0067】
各塗液は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗液を2層以上に分けて塗布してもよい。更に2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。
【0068】
同時多層塗布する方法としては、スロットコーティング、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティングにおける各種ビード塗布及びカーテン塗布を挙げることができる。これらの中でも、スライドコーティングにより同時多層塗布して形成する態様が好ましい。ここで同時多層塗布とは、2層以上の層を塗布するに際し、上下層を同時に塗布する方法であり、下層を塗布した後に乾燥することなく上層を塗布する方法を含む。
【0069】
各層を形成し終えた後、あるいは、全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダーによる平滑化処理を施すこともできる。
【0070】
本発明においては、光沢のある保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。また、より製品の付加価値を高めるため、多色感熱記録体とすることもできる。一般に多色感熱記録体は、加熱温度の差、または熱エネルギーの差を利用する試みであり、ロイコ染料のみの粒子とロイコ染料と樹脂との複合粒子を使用して多色感熱記録体を製造する方法がある。
【0071】
また、必要に応じて感熱記録体の紙支持体の裏面側に、裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールしたりするためにバック層を設けたり、印刷用塗被層、磁気記録層、帯電防止層、熱転写記録層、インクジェット記録層等を設けたり、紙支持体裏面に粘着剤処理を施して粘着ラベルに加工したり、感熱記録体にミシン目を入れたりする等、感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。特に断らない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0073】
実施例1
[下塗り層用塗液の調製]
焼成カオリン(商品名:アンシレックス,EMC社製,吸油量110ml/100g)60部、固形分濃度48%のスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル系共重合体(ブタジエン単量体45質量%、スチレン単量体44質量%、アクリル酸単量体3質量%、メタアクリル酸メチル単量体3質量%、アクリロニトリル単量体5質量%、ゲル含有量90質量%、ガラス転移温度−13℃)のラテックス25部、プラスチック中空粒子(商品名:マツモトマイクロスフェアーF−30、松本油脂製薬社製)10部、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンWSC,第一工業製薬社製)の5%水溶液5部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.5部、水100部を均一に混合し下塗り層用塗液を調製した。
【0074】
[ロイコ染料分散液(A液)調製]
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、分散剤として鹸化度60モル%、重合度200のポリビニルアルコールの20%水溶液20部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン0.5部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の5%水溶液0.5部、及び水20部からなる組成物をバッチ式のサンドミルにより5時間処理して、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmのA液を得た。
【0075】
[ロイコ染料含有複合粒子分散液(B液)の調製]
ロイコ染料として、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン25部と紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン4部、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール1部を140℃に加熱したジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート12部とm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート7部に溶解して、10%ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217EE、株式会社クラレ製)水溶液90部に2,4,7,9−テトラメチル−5−デシル−4,7−ジオール−ジ(ポリオキシエチレン)エーテル2部を混合した溶液に徐々に添加し、ホモミキサーを用いて乳化分散した後、この乳化分散液に水80部を加えて均一化した。この乳化分散液にポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−006、株式会社日本触媒製)を1.5部添加し、80℃に昇温した後、6時間の硬化反応を行わせ、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.7μmのB液を得た。この分散液の固形分濃度は28%であった。
【0076】
[呈色剤分散液(C液)調製]
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン20部、分散剤として鹸化度88モル%、重合度200のポリビニルアルコールの20%水溶液20部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の5%水溶液0.5部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン0.5部、及び水20部からなる組成物をバッチ式のサンドミルにより3時間処理して、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.8μmのC液を得た。
【0077】
[増感剤分散液(D液)調製]
蓚酸−ジ−p−メチルベンジルエステル20部、分散剤として鹸化度88モル%、重合度200のポリビニルアルコールの20%水溶液20部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の5%水溶液0.5部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン0.5部、及び水20部からなる組成物をバッチ式のサンドミルにより2時間処理して、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.7μmのD液を得た。
【0078】
[ロイコ染料含有複合粒子分散液(E液)の調製]
ロイコ染料として、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン25部と紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン4部、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール1部を140℃に加熱したジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート19部に溶解して、10%ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217EE、株式会社クラレ製)水溶液90部に2,4,7,9−テトラメチル−5−デシル−4,7−ジオール−ジ(ポリオキシエチレン)エーテル2部を混合した溶液に徐々に添加し、ホモミキサーを用いて乳化分散した後、この乳化分散液に水80部を加えて均一化した。この乳化分散液にポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−006、株式会社日本触媒製)を1.5部添加し、80℃に昇温した後、6時間の硬化反応を行わせ、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.7μmのE液を得た。この分散液の固形分濃度は28%であった。
【0079】
[感熱記録層塗液の調製]
A液5部、B液72部、C液100部、D液50部、接着剤としてスチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1537、固形分濃度48%、旭化成工業社製)21部、10%ポリビニルアルコール水溶液100部、及び水100部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0080】
[保護層用塗液の調製]
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業社製)10%液100部、カオリン200部、ステアリン酸亜鉛30%分散体(商品名:ハイドリンZ−7、中京油脂社製)10部及び水100部を混合して保護層用塗液を得た。
【0081】
[感熱記録体の作成]
52g/m原紙の片面上に、下塗り層用塗液、感熱記録層用塗液、及び保護層用塗液を、乾燥後の塗布量がそれぞれ8g/m、4g/m、及び3g/mとなるように順次塗布乾燥して、下塗り層、感熱記録層、及び保護層を形成し、感熱記録体を得た。なお、各層を形成した後、スーパーカレンダーによる平滑化処理を行った。
【0082】
実施例2
実施例1の感熱記録層塗液の調製において、A液2.5部、及びB液76部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0083】
実施例3
実施例1の感熱記録層塗液の調製において、B液72部をE液72部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0084】
比較例1
実施例1の感熱記録層塗液の調製において、A液を20部とし、B液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0085】
比較例2
実施例1の感熱記録層塗液の調製において、B液を20部とし、A液を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0086】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価試験を行い、その結果を表1並びに図1に示した。
【0087】
[発色濃度]
上記の感熱記録体について、感熱記録評価機(大倉電機社製 TH-PMH)を用いて20段階の一定階調パターン(パルス幅0.18ms[0.099mJ/dot]〜0.76ms[0.419mJ/dot]の間でパルス幅を0.03msずつ増加させる)で印画し、各階調の発色濃度をマクベス濃度計(RD−914型、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記ロイコ染料が、ロイコ染料のみの固体分散粒子と、ロイコ染料と疎水性樹脂との複合粒子とからなり、前記感熱記録体を0.099〜0.419mJ/dotの印画エネルギーで階調発色させた場合、印画エネルギーが0.132〜0.331mJ/dotの間で、横軸に印画エネルギーを、縦軸に発色濃度を取って発色濃度曲線を描いて、該発色濃度曲線に最小二乗法で近似直線を求めた時の相関係数の2乗(R)が0.995以上(一定の濃度増加率)となることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記ロイコ染料のみの固体分散粒子が、前記複合粒子に対して1〜15質量%含有される、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記複合粒子において、ロイコ染料が複合粒子中に5〜50質量%含有される、請求項1または2の感熱記録体。
【請求項4】
前記複合粒子において、前記疎水性樹脂がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートである、請求項1から3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記複合粒子において、前記疎水性樹脂がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートとm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートの含有量がジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートの2倍以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の感熱記録体。

【図1】
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【図2】
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