説明

感熱記録媒体保護層用樹脂組成物及びそれを用いた感熱記録媒体

【課題】ラミネート塗工を行わずに高光沢で、折れ割れに優れた感熱記録媒体保護層用樹脂組成物の提供。
【解決手段】重量平均分子量200〜600の(メタ)アクリロイル基を分子中に2個有する化合物(A)と、単位質量当たりの(メタ)アクリロイル基濃度が7.0mol/kg以上である(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物(B)と、無機微粒子(C)とを含有する感熱記録媒体保護層用樹脂組成物であって、化合物(A)100重量部に対して化合物(B)は10〜50重量部であり、化合物(A)及び化合物(B)の合計中の、付加モル数が3以上のアルキレンオキサイド構造を含む(メタ)アクリレート化合物が20重量%未満であり、且つ化合物(A)及び化合物(B)の合計100重量部に対して、無機微粒子(C)を1〜10重量部含有する感熱記録媒体保護層用樹脂組成物、該感熱記録媒体保護層用樹脂組成物を用いた感熱記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録媒体の保護層用に好適な感熱記録媒体保護層用樹脂組成物、及び、該保護層用樹脂組成物を用いた感熱記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発色剤と該発色剤と接触して呈色する呈色剤との呈色反応を利用し、熱により両発色物質を接触せしめて発色像を得るようにした感熱記録媒体は良く知られている。
【0003】
前記感熱記録媒体において、感熱発色層を保護するために活性エネルギー線硬化型樹脂組成物による保護層を設けることが知られている(特許文献1参照)。このような感熱記録媒体では、表面が平滑になっているため、感熱ヘッドが感熱記録媒体に接触する際の実質的な接触面積が大きくなり、それに伴い、感熱ヘッド又は熱ペンにより加熱発色する際の摩擦抵抗が大きくなり、スティッキング現象(ヘッドが走行不良を起こしたり、ヘッドの走行音が大きくなったり、画像が縮んだり、画像に白筋が入ったりする等の現象)が起きやすいといった問題が発生していた。
これらの問題点を解決するため、官能基密度を制御した多官能アクリレート類と無機微粒子とを特定の比率で配合した感熱記録媒体保護層用樹脂組成物が提案されているが(特許文献2参照)、表面凹凸によって光沢が低いという欠点を有している。近年では、低濃度から高濃度に至る階調再現性に優れ、且つ銀塩写真に匹敵するような高画質及び高光沢の記録画像が得られる感熱記録体への要望が高まっており、平滑性を高め高光沢化するためラミネート塗工する技術も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−197687号公報
【特許文献2】特開平02−192988号公報
【特許文献3】特開2001−322355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された発明では、形成された表面凹凸によってスティッキング現象は改善するものの、光沢が低く、たとえ無機微粒子量を減らしても折れ割れ性を損なった。また、特許文献3に記載された発明では、平滑性を高めるためのラミネート塗工によって高光沢となるが、コスト面・作業性が悪い点が課題である。
【0006】
従って、本発明の目的は、ラミネート塗工を行わずに高光沢で、折れ割れに優れた感熱記録媒体の保護層が得られる感熱記録媒体保護層用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、特定の2官能のアクリレートと3官能以上のアクリレートと無機微粒子とを特定の比率で配合した樹脂組成物を感熱記録媒体の保護層用(オーバーコート)として用いた場合、前述の塗面の光沢性と折れ割れが良好となることを見出し、発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、重量平均分子量200〜600の(メタ)アクリロイル基を分子中に2個有する化合物(A)と、単位質量当たりの(メタ)アクリロイル基濃度が7.0mol/kg以上である(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物(B)と、無機微粒子(C)とを含有する感熱記録媒体保護層用樹脂組成物であって、
前記化合物(A)100重量部に対して、前記化合物(B)は10〜50重量部含有するものであり、
前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計中の、付加モル数が3以上のアルキレンオキサイド構造を含む(メタ)アクリレート化合物の含有量が20重量%未満であり、
且つ、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計100重量部に対して、前記無機微粒子(C)を1〜10重量部含有することを特徴とする感熱記録媒体保護層用樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、前記感熱記録媒体保護層用樹脂組成物を用いた感熱記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物によれば、平滑性を高めるためのラミネート塗工をしなくとも、保護層の平滑性を高めて、折れ割れ性も良好な、高光沢の感熱記録媒体及び、該媒体による記録画像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物(以下、「保護層用樹脂組成物」と記載する)で使用する、重量平均分子量200〜600の(メタ)アクリロイル基を分子中に2個有する化合物(A)としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;また、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0011】
本発明の保護層用樹脂組成物で使用する分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つ単位質量当たりの(メタ)アクリロイル基濃度が7.0mol/kg以上の多官能(メタ)アクリレートである化合物(B)としては、種々の化合物を使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=10.1mol/kg>、トリメチロールプロパンメタアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=9.0mol/kg>、トリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.0mol/kg>、トリプロピレンオキシド変性グリセリントリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.0mol/kg>、トリエチレンオキシド変性グリセリントリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.8mol/kg>、トリエピクロロヒドリン変性グリセリントリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.9mol/kg>、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン<(メタ)アクリロイル基濃度=12.0mol/kg>、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.1mol/kg>、ペンタエリスリトールトリアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=10mol/kg>、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=8.9mol/kg>、ペンタエリスリトールテトラアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=11.4mol/kg>、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=9.9mol/kg>、テトラエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.6mol/kg>、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=8.6mol/kg>、ジエチレンオキシド変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.2mol/kg>、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=9.5mol/kg>、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:カヤラッドD−310=日本化薬製)<(メタ)アクリロイル基濃度=9.1mol/kg>、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:カヤラッドD−320=日本化薬製)<(メタ)アクリロイル基濃度=7.3mol/kg>、εカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:カヤラッドDPCA−20=日本化薬製)<(メタ)アクリロイル基濃度=7.7mol/kg>、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=10.4mol/kg>、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=9.1mol/kg>、ヘキサエチレンオキサイド変性ソルビトールヘキサアクリレート<(メタ)アクリロイル基濃度=7.8mol/kg>等が挙げられる。
【0012】
これらの化合物の中でも、単位質量当たりの(メタ)アクリロイル基濃度は、7.0〜12.0mol/kgであることが好ましく、8.0〜12.0mol/kgであることがより好ましい。中でも、8.5〜12.0mol/kgであることが特に好ましい。
【0013】
更に、化合物(B)としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが特に好ましい。
【0014】
また、前記化合物(A)及び前記化合物(B)として、アルキレンオキサイド付加モル数が3以上の化合物を用いれば、下地へ濡れやすさから平滑に塗工でき高光沢な面となるが、高温多湿環境における耐湿熱を損ない地肌カブレを起こすことが分かった。
そこで、前記化合物(A)及び前記化合物(B)としては、アルキレンオキサイド付加モル数が3以上の化合物を用いることができるが、その使用量は、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計中の20重量%未満とすることが必要である。
【0015】
高光沢な表面を作るには、塗工性を考慮し前記化合物(A)の配合量を増やすことで低粘度とすることが望ましい。また、感熱ヘッドが保護層の表面を溶融してしまい、感熱記録媒体上を移動しない、若しくは、印字画像が縮んだり画像に白筋が入ったりする等のスティッキング現象が起きないように耐熱性を付与するには、前記化合物(B)の添加は不可欠である。
そこで、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の配合比率としては、前記化合物(A)100重量部に対して、化合物(B)を10〜50重量部含有することが必要である。
【0016】
本発明の保護層用樹脂組成物で使用する無機微粒子(C)としては、マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した粒子の体積平均粒径が0.5μm以上であることが耐スティキング性には望ましく、3.0μm以下であることは光沢が良好となる点から好ましく、1.0〜3.0μmであることが特に好ましい。
【0017】
無機微粒子(C)のモース硬度が2未満の場合、該保護層用樹脂組成物を用いて形成された保護層の表面硬度が低くなり、耐スティッキング性が劣ることになりやすい。一方、モース硬度が8より高いと保護層用樹脂組成物を配合する際、或いは、塗工する際に分散機あるいは塗工機を傷める不具合が起きやすいので注意を要する。
また、無機微粒子(C)と、前記化合物(A)及び前記化合物(B)からなる樹脂との屈折率の差が±5%以上であると、該保護層用樹脂組成物を用いた保護層の内部ヘーズが高くなり光沢を低下させる不具合が発生しやすいため、前記化合物(A)及び前記化合物(B)からなる樹脂の屈折率に応じて、その屈折率の差が±5%となるような無機微粒子(C)を選択することが好ましい。ここで、樹脂の屈折率としては、JIS K 7142に準拠して、常法により測定することができる。
【0018】
本発明において保護層に含有させる無機微粒子(C)として好適な例としては、例えば、無水ケイ酸(屈折率1.5〜1.6)、含水ケイ酸(屈折率1.4〜1.5)、ケイ酸アルミニウム(屈折率1.4〜1.5)、これらケイ酸のアルカリ金属塩類、重質炭酸カルシウム(屈折率1.48〜1.65)、軽質炭酸カルシウム(屈折率1.530〜1.658)、極微細軽質炭酸カルシウム(屈折率1.530〜1.658)、等がある。これらは所望の保護層の屈折率に合わせて適宜選択するとよい。
【0019】
上記の中で、無機微粒子(C)としては、屈折率が1.49〜1.53のものが好ましく、モース硬度が2以上のケイ酸アルミニウムのナトリウム塩(屈折率1.50)が特に好ましい。
【0020】
また、体積平均粒径が0.5〜5.0μmのケイ酸粒子の市販品としては、例えば、コロイド状シリカとして、富士シシリア化学(株)製サイリシア530、サイリシア310P、サイリシア320、サイリシア730、サイリシア550、サイリシア430、サイリシア435、サイリシア350、球状シリカとして、三菱レイヨン(株)製シリカエースQS―3、シリカエースQS−4、球状シリカとして、宇部日東化成(株)製ハイプレシカFQ、無定形シリカとして、塩野義製薬(株)製カープレックスFPS−1、カープレックスFPS−2、カープレックスFPS−3、カープレックスFPS−4、カープレックスFPS−5、カープレックスCS−5、カープレックスCS−7、カープレックスCS−701等があるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
無機微粒子(C)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の保護用樹脂組成物において、無機微粒子(C)の配合量は、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計を100重量部とした際に、1〜10重量部であることが好ましく、4〜8重量部であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の保護用樹脂組成物は、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び前記無機微粒子(C)に加えて、さらに、長鎖脂肪酸金属塩(D)を含有することができる。
本発明で用いる長鎖脂肪酸金属塩(D)の体積平均粒径は、0.3〜2.5μmであることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。体積平均粒径が前記の範囲であれば、記録走行性が優れ、且つ、感熱記録媒体の光沢を高くすることができる。
体積平均粒径が0.3〜2.5μmの長鎖脂肪酸の金属塩(D)としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、12−ヒドロキステアリン酸等の炭素数12〜22の脂肪酸の金属塩が好ましく、特に、金属塩としては、亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等が好ましい。
これらの組合せとしては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム等が好ましい。特に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0023】
本発明の保護用樹脂組成物において、長鎖脂肪酸金属塩(D)を用いる場合、長鎖脂肪酸金属塩(D)の配合量は、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計を100重量部とした際に対して、0.5〜1.0重量部であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の保護層用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である。ここでいう活性エネルギー線とは、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。紫外線を用いる場合には、保護層用樹脂組成物中に光開始剤、及び/又は、光増感剤を併用することもできる。電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を併用しなくとも速やかに硬化するので、特に添加する必要はない。
【0025】
紫外線を用いる場合には、光発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光が挙げられる。また、感熱記録媒体への熱の影響を押さえるために、閃光的に照射するキセノン−フラッシュランプを使用することもできる。
【0026】
紫外線で硬化する場合、有効な光重合開始剤としては、分子内解裂型と水素引き抜き型に大別できるが、前者としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンの如きアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、などが挙げられる。
【0027】
一方、後者としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系化合物、ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、などが挙げられる。なお、本発明の保護層用樹脂組成物に用いられる光重合開始剤としては以上の化合物に限定されるものではない。窒素原子を持つ2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等を一部併用すると、記録走行性が上がり、有効である。
【0028】
また、本発明の保護層用樹脂組成物に好適に用いられる光増感剤としては、特に限定される訳ではないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物等が挙げられる。窒素原子を持つ脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類を一部併用すると、記録走行性が上がり、有効である。
【0029】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、保護層用樹脂組成物中、各々0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0030】
また、本発明の保護層用樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を併用してもよく、所望により溶剤により希釈してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、ぬれ性改良剤等の塗面改良剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0031】
希釈に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、エチルソルブアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの溶剤は単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0032】
本発明の保護層用樹脂組成物を得るには、上記の各成分を混合すればよく、混合の順序や方法は特に限定されない。無機粒子(C)と長鎖脂肪酸金属塩(D)に、適当量の化合物(A)もしくは化合物(B)もしくはその両方とを加え、高粘度の液体とした後に高剪断力をかけ、混練混合を行う。その後、必要に応じて塗工可能な粘度に調整すると、無機粒子(C)と長鎖脂肪酸の金属塩(D)が凝集状態にならずに均一に分散する。
【0033】
なお、保護層用樹脂組成物の硬化時の屈折率は、1.45〜1.60であることが好ましい。
【0034】
本発明の感熱記録媒体は、上記本発明の保護層用樹脂組成物を用いたものであり、例えば、基材の上に感熱記録層を形成し、その上に、本発明の保護層用樹脂組成物からなる保護層を形成することにより製造することができる。
本発明の保護層用樹脂組成物を用いて感熱記録媒体を製造する場合に用いる、基材、及び感熱記録層、更に感熱記録媒体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の材料、及び方法を用いることができる。
【0035】
基材としては、例えば、上質紙、中質紙、中性紙、再生紙、塗工紙等のパルプ繊維から製造された紙、並びにポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料を加熱混練してダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料からなるフィルムを片面当たり1〜2層積層し、横方向に延伸して半透明化、あるいは不透明化して製造される合成紙、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂単独または混合物を加熱混練してダイから押し出し、2軸延伸して得られたフィルム、これらの樹脂に白色無機顔料を混合し、2軸延伸した不透明フィルムのほか、前記パルプ繊維から製造された紙の、片面あるいは両面に、熱可塑性樹脂を被覆した熱可塑性樹脂被覆紙等を使用することができる。かかる基材の坪量としては、30〜200g/m程度が好ましい。基材表面には、塗布適性や密着性を向上させるため、コロナ放電処理等の表面処理が施されていても良い。
【0036】
また、感熱記録層は、発色剤と呈色剤とをバインダー樹脂中に含むものである。発色剤と呈色剤の組み合わせについては、何ら限定されるものではなく、熱によって両者が接触して呈色反応を起こすものであれば何れも使用できる。そのような発色剤(電子供与性化合物)及び呈色剤(電子受容性化合物)の組み合わせとしては、例えば、無色ないし淡色の塩基性染料と無機ないし有機の酸性物質との組み合わせ、ステアリン酸第2鉄等の高級脂肪酸金属塩と没食子酸のような有機還元剤の組み合わせ等があるが、画像の鮮明性の点から、塩基性染料と酸性物質の組み合わせが好ましい。
【0037】
塩基性染料としては、例えばロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。ロイコ染料の含有量は特に限定されないが、感熱記録層の全固形量に対して5〜40質量%程度が好ましい。
【0038】
呈色剤としては、例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、2,2’−〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル等のフェノール性化合物、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(p−トリルスルホニル)−N’−p−ブトキシフェニルウレア等の分子内にスルホニル基とウレイド基を有する化合物、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−(p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩化合物等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。呈色剤の含有量は特に限定されず、使用するロイコ染料及び呈色剤の種類に応じて適宜選択すればよく、通常はロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部程度である。
【0039】
ここで、バインダー樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂のいずれの水性樹脂も使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビヤゴム、完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体塩、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体塩、ポリアクリルアマイド等が挙げられる。水分散性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等が挙げられる。
【0040】
感熱記録層は、発色剤、呈色剤、及びバインダー樹脂に加えて、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエチレンオキサイド等の界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキルリン酸塩、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤類、カルナウバロウ、パラフィンワックス等のワックス類、カオリン、水酸化アルミニウム、焼成カオリン、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、無定形シリカ、硫酸バリウム、タルク等の無機顔料、スチレン樹脂フィラー、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等、硼酸、硼砂、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉等のジアルデヒド系化合物、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジピン酸ジヒドラジド等の架橋剤類、消泡剤、蛍光増白剤、着色染料等が挙げられる。
【0041】
基材と感熱記録層の間には接着層を設けても良い。接着層の材料としては、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が有効である。基材の種類に応じて、密着性がよい材料を選択すればよい。
【0042】
感熱記録層の形成方法等については、特に限定されるものではなく、従来から周知慣用の技術に従って形成することができる。例えば、エアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ショートドゥエルコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング等により塗液を塗布、乾燥する方法等によって形成される。
本発明の感熱記録層の塗布量は、2〜20g/mであることが好ましく、3〜10g/mであることがより好ましい。
【0043】
感熱記録層の上に、本発明の保護層用樹脂組成物が塗布されるが、この場合、硬化後の塗布量は必ずしも限定されないが、保護層の膜厚が0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜5.0μmになるように調整するのが更に好ましく、1.0〜5.0μmが特に好ましい。0.5μm未満では、光沢及び保護層としての硬度を保持することが難しく、20μm以上では、感熱ヘッドの熱が感熱記録層に瞬時に伝わらず、感熱発色に不具合を生じる。
【0044】
本発明の保護層用樹脂組成物は、感熱記録層に直接、塗布しても良いが、感熱記録層と保護層の間に、中間層を設けてもかまわない。中間層に用いられる塗剤は感熱記録層を侵さないものであれば何れも使用できるが、一般に水溶性樹脂を主成分とするものが用いられる。
【0045】
そのような水溶性樹脂としては、例えば、完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールと多価カルボン酸との反応物あるいはこれらの反応物のエステル化物、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、アルデヒド化ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン−無水マレイン酸共重合体、あるいはこれらに水溶性を損なわない程度に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、アクロレイン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等を共重合した重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒドデンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、等の水溶性重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−塩化ビニル−エチレン共重合体エマルジョン、メタクリレート−ブタジエン共重合体エマルジョン等のエマルジョンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
これら水溶性樹脂のなかでも各種変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体及びカゼインが好ましく、特にアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール及びエポキシ変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0047】
かかる水溶性樹脂の使用量については特に限定されないが、塗液中の全固形分含有率は、通常10〜95質量%、好ましくは15〜90質量%の範囲である。
【0048】
また、中間層に平滑度を高めるために顔料を添加することができる。顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化珪素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、タルク、カオリン、クレー、焼成クレー、コロイダルシリカ等の無機顔料、スチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、生デンプン粒等の有機粉末等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、その使用量については、一般に樹脂成分100質量部に対して5〜500質量部、好ましくは80〜350質量部程度の範囲である。
【0049】
さらに中間層を形成する塗液中には必要に応じてグリオキザール、メチロールメラミン、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム等の耐水化剤を添加してもよく、必要に応じてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル・ナトリウム塩、アルギン酸塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤、ベンゾフェノン系、トリアゾール系等の紫外線吸収剤、消泡剤、蛍光染料、着色染料等の各種助剤を適宜添加することもできる。
【0050】
中間層を形成するための塗液は、一般に水性系塗液として調整され、必要に応じてミキサー、アトライター、ボールミル、ロールミル等の混合・攪拌機によって十分混合分散された後、各種公知の塗布装置により感熱記録層上に塗布される。塗布後、紫外線や電子線を照射して乾燥することもできる。
【0051】
なお、硬化剤を使用する場合には、硬化剤を中間層塗液中に混合するのみならず、中間層塗液とは別に硬化剤を塗布することができ、後者の場合、塗液のポットライフを懸念する必要がなく、強力な硬化剤を選択できる利点がある。
【0052】
中間層の塗布量は、バリア性と記録感度を向上する観点から、1〜10g/mであることが好ましく、2〜5g/mであることがより好ましい。
【0053】
本発明の感熱記録媒体は、基材の上に感熱記録層を形成し、その上に保護層を形成した記録媒体であることが好ましい。かかる保護層を形成する場合、基材の上に感熱記録層、その上に保護層を順次、形成しても良いし、基材の上に形成した感熱記録層に、他の離型性基材の上に形成した保護層を転写しても良い。その際、感熱記録層と保護層の間に、接着層を設けて良いし、中間層をもった感熱記録層を用い、接着層を設けても良い。
【0054】
本発明の感熱記録体には、各層を形成し終えた後、あるいは全ての層を形成し終えた後の任意の過程でスーパーカレンダーによる平滑化処理を施すこともできる。また、磁気記録層や粘着剤層、静電気による貼り付きやサーマルヘッドの損傷を防止するために、帯電防止層を備えることもできる。本発明では、優れた光沢性を活かして、ヘッドマッチング性をより一層高めるため、保護層上に更に最上層を備えた態様とすることもできる。その他、感熱記録体の製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断わりがない限り「%」、「部」は「重量%」、「重量部」を表わす。
【0056】
(1)(I)液(発色剤分散液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、ポリビニルアルコールの10%水溶液5部、および水20部からなる組成物をサンドミルで平均粒径が1.3μmとなるように分散して(I)液を得た。
(2)(II)液(呈色剤分散液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン50部、ポリビニルアルコールの10%水溶液5部、および水70部からなる組成物をサンドミルで平均粒径が1.3μmとなるように分散して(II)液を得た。
(3)感熱記録層用塗液の調製
(I)液30部、(II)液90部、炭酸カルシウムの60%スラリー52部、ポリビニルアルコールの10%水溶液40部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(固形濃度48%)28部、ステアリン酸アミド(固形濃度20%)11部、ステアリン酸亜鉛(固形濃度36%製)13部および水82部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
(4)中間層用塗液の調製
カオリンの60%スラリー70部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの10%水溶液180部、および水150部からなる組成物を混合攪拌して中間層用塗液を得た。
(5)保護層用塗液の調製
表1に示す配合比率の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をスリーロールミルで分散し、最外層となる保護層用塗液を得た。
(6)感熱記録媒体の作製
支持体としての合成紙(商品名;ユポFPG−80、王子油化合成紙社製)の片面に、感熱記録層用塗液および中間層用塗液を、それぞれ乾燥後の塗布量が6.0g/m、2.5g/mとなるようにバー塗工方式で順次塗布乾燥して、感熱記録層および中間層を形成した後、スーパーカレンダー処理して、更にその上に最外層となる保護層用塗液の硬化後の塗布量が2.6g/mとなるように塗布し、エレクトロカーテン型電子線加速器(ESI社製)により加速電圧175kV、吸収線量40kGyの電子線を照射して保護層を硬化させて感熱記録媒体を得た。
【0057】
【表1】

※1:アルキレンオキサイド付加モル数が3以上の化合物
ソジウムアルミノシリケート(C):シルトンAMT−08L(水澤化学株式会社製、屈折率1.50、体積平均粒径1.0μm)
ステアリン酸亜鉛(D):SPZ−100F(堺化学工業株式会社製、体積平均粒径0.7μm)
【0058】
表1中の各項目の評価は、以下のようにして行った。
・光沢度
光沢度計(商品名;GM−26D、村上色彩技術研究所製)を用いて、得られた感熱記録媒体の未記録部の光沢度(JIS P8142−1993に基づく)入射角75度で測定した。
・白紙外観
得られた感熱記録媒体の光沢ムラ、ピンホールの有無を以下の評価基準により目視判定した。
○:光沢ムラ、ピンホールがない。
○’:光沢ムラがなく、ピンホールが殆どない。
○△:光沢ムラ、ピンホールが殆どない。
△:光沢ムラ、ピンホールが多くみられる。
×:実用上問題がある。
・印画外観
得られた感熱記録媒体をプリンター(商品名;UP−880、ソニー社製)で印字を行い、ムラ(トラマーク状の濃淡)、ザラツキ(斑点状の濃淡)の有無を以下の評価基準により目視判定した。
○:印画部にムラ、ザラツキがない。
○’:印画部にムラが殆どなく、ザラツキがない。
○△:印画部にムラ、ピンホールが殆どない。
△:印画部にムラ、ザラツキが多くみられる。
×:実用上問題がある。
・耐湿熱性
得られた感熱記録媒体印字部を40℃90%で24時間保管し、以下の評価基準により目視判定した。
○:印画部地肌割れがない。
△:印画部地肌割れが殆どない。
×:実用上問題がある。
・折れ割れ
得られた感熱記録媒体を手で折り曲げ、塗膜の破断有無を以下の評価基準により評価した。)
○:塗膜の破断無し。
△:折り曲げるとパキッと音が鳴る。
×:塗膜が破断する。
【0059】
上記結果から、本発明に係る保護層用樹脂組成物を用いた実施例1〜3の感熱記録媒体は、比較例1〜3の感熱記録媒体に比べて、優れた光沢、外観、折れ割れ、及び耐湿熱性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量200〜600の(メタ)アクリロイル基を分子中に2個有する化合物(A)と、単位質量当たりの(メタ)アクリロイル基濃度が7.0mol/kg以上である(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物(B)と、無機微粒子(C)とを含有する感熱記録媒体保護層用樹脂組成物であって、
前記化合物(A)100重量部に対して、前記化合物(B)は10〜50重量部含有するものであり、
前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計中の、付加モル数が3以上のアルキレンオキサイド構造を含む(メタ)アクリレート化合物の含有量が20重量%未満であり、
且つ、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計100重量部に対して、前記無機微粒子(C)を1〜10重量部含有することを特徴とする感熱記録媒体保護層用樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(B)は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1に記載の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機微粒子(C)の屈折率が1.49〜1.53、且つ、体積平均粒径が0.5〜3.0μmである請求項1または2記載の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、体積平均粒径0.3〜2.5μmの長鎖脂肪酸金属塩(D)を含有する請求項1、2または3に記載の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱記録媒体保護層用樹脂組成物を用いた感熱記録媒体。

【公開番号】特開2012−16868(P2012−16868A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155058(P2010−155058)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】