説明

感熱記録媒体

【課題】高光沢性を維持し、ヘッドカス付着、印画によるスティッキングによる画像欠陥がなく、地肌及び画像の色調が良好で、カール及び帯電がなく、臭気による取扱い性の問題がない、特に医療用途に好適な反射型の感熱記録媒体の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に少なくとも感熱記録層と表面層とを有する感熱記録媒体であって、前記感熱記録層が、結着剤、発色剤及び顕色剤を含み、前記表面層が、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、及び融点が80℃以上のα−ヒドロキシケトン系重合開始剤を含有する感熱記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、X線、MRI、CT等の画像の診断、及び参照することを目的とした医療用画像形成に好適な感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙等の支持体上に、電子供与呈色性化合物(以下、「発色剤」と称することもある)と、電子受容性化合物(以下、「顕色剤」と称することもある)とを含有する感熱記録層を形成してなり、両者の間の発色反応を利用した感熱記録媒体が広く知られている。この感熱記録媒体の記録方式は、記録装置がコンパクトでしかも安価であり、かつ保守が容易であることなどの利点を有しており、例えば、ファクシミリ、自動券売機、科学計測のプリンタ、POS用バーコード印刷用のプリンタ、CRT医療計測器用のプリンタ等の広い用途に用いられている。
しかし、この記録方式での大きな課題としてはサーマルヘッドから直接熱を伝え、加熱により記録するため、サーマルヘッドと直接接触する感熱記録媒体の表面層(一般的にはオーバー層又は保護層と呼ばれている)に関する発明が多数されており、保護層の樹脂、滑剤、フィラー等の工夫による発明として様々なものが提案されている。
【0003】
また、医療現場における取り扱いにおいては、水、アルコール、又はその他の溶剤との接触の可能性が高く、感熱記録媒体の表面の水、アルコールに対する高いバリヤー性が求められている。これらについては、例えば、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、水溶性樹脂、非水溶性エマルションを有するコア/シェル型のエマルションと架橋剤を組み合わせることで、バリヤー性と高い光沢性を達成することが提案されている。
【0004】
しかし、近年、記録において高速化、高精細化が求められており、それに伴いサーマルヘッドの1素子に対して印加電力を高める傾向にある。
また、医療用の感熱記録媒体においては、診断用及び参照用であるため、記録の対象は人体の内臓、骨のような構造情報、又は形状情報が主体であり、認識される画像は、元の形状情報が正確に映り出せることが重要であり、画像の純黒化、高階調性、及び高光沢性に優れ、濃淡及びコントラスト等の点で優れたものが期待される。
【0005】
従来のロイコ型感熱記録媒体に比べて、特に医療用の感熱記録媒体においては、更に高階調性が求められるため、より高出力な記録が求められる。その際に感熱記録媒体の最表面とサーマルヘッドの加熱時に耐えられる高耐熱性であり、かつ光沢性に優れた表面層が求められる。
【0006】
一般的にヘッドマッチング性を解決するには、樹脂の耐熱性と共に、フィラー及び滑剤の比率を多くすることが従来から行われている。
しかし、フィラー及び滑剤は表面の光沢を低下させる。そのため、フィラー及び滑剤の粒子径を細かくしたり、又はフィラー及び滑剤の添加量をできる限り少なくすることが行われている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これらの手段は膜の耐熱機能、及び滑性機能を低下させるため、近年の医療用の記録におけるサーマルヘッドの高出力化に対してスティッキングのような1画像当りの高出力に対し効果を示すものもあったが、実使用を考慮した連続記録による発熱体へのヘッドカスの固着防止、高光沢性、及び耐水性、耐溶剤性等の厳しい様々な要求に対しては、これまで提案された発明では全てを満足するものではなく新たな改善が必要となってきている。
【0008】
また、フィラー及び滑剤の添加量をできる限り低減するため、非常に高い耐熱性をもつ樹脂として、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂を用いた技術が数多く提案されている。
電子線硬化型樹脂は、電子線の照射によって硬化させるため、フィラー及び添加材料の影響を受けにくく、所望の硬化性が得やすいが、電子線によって感熱記録層が発色したり、基材を破壊してしまうこともありコントロールし難い。また装置自体が大掛かりになるという課題がある(特許文献3参照)。
【0009】
一方、紫外線を用いる場合は装置が簡便で、また基材の冷却を行えば、基材自体を破壊したり、発色させたりすることはないが、紫外線によって感熱記録層が黄変する課題がある。特に地肌の白色性及び中間調も含めた画像の色調が求められる用途に対して、地肌及び中間調が黄変することは解決する必要がある課題である。
【0010】
また、放射線硬化型樹脂で耐熱性を上げる場合、硬化収縮による膜のひずみによるカールが起こりやすい。また柔軟性が少ないため、取扱い及び低温環境で、ひび割れするといった問題も起こる。特にシート状で取り扱うような用途では、課題となっている(特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。前記特許文献4は、加熱により透明状態と白濁状態とを可逆的に繰り返す可逆性感熱記録層を備えた可逆性感熱記録媒体に関するものである。本発明は、感熱記録媒体の耐熱性に関するものであり、感熱(ワンタイム)、可逆(リライト)に限定した技術ではないため、前記特許文献4も従来技術として挙げた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、高光沢性を維持し、ヘッドカス付着、印画によるスティッキングによる画像欠陥がなく、地肌及び画像の色調が良好で、カール及び帯電がなく、臭気による取扱い性の問題がない、特に医療用途に好適な反射型の感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明者らは、トレードオフの関係になりがちな高光沢性と良好なヘッドマッチング性を達成し、地肌の黄変、カール、帯電性を満足させる手段について鋭意検討を重ねた結果、支持体上に少なくとも感熱記録層と表面層とを有する感熱記録媒体において、表面層中に少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、及び融点が80℃以上のα−ヒドロキシフェニルケトン系重合開始剤を含有することによって、前記課題が効果的に解決できることを知見した。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に少なくとも感熱記録層と表面層とを有する感熱記録媒体であって、
前記感熱記録層が、結着剤、発色剤及び顕色剤を含み、
前記表面層が、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、及び融点が80℃以上のα−ヒドロキシケトン系重合開始剤を含有することを特徴とする感熱記録媒体である。
<2> 表面層が、アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤を含有する前記<1>に記載の感熱記録媒体である。
<3> 表面層が、更にフィラー及び滑剤の少なくともいずれかを含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<4> 表面層が、ポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<5> 表面層が、紫外線照射により形成され、紫外線照射する際の酸素濃度が0.1%〜1%であり、紫外線照射強度が50mJ/cm〜200mJ/cmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<6> 感熱記録層と表面層との間に水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを含む中間層を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<7> 感熱記録層及び中間層の少なくともいずれかが、紫外線吸収剤を含有する前記<6>に記載の感熱記録媒体である。
<8> 感熱記録層、中間層、及び表面層の少なくともいずれかが、蛍光染料を含有する前記<6>から<7>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<9> 支持体の感熱記録層を設けた側とは反対側の表面に、バインダーを少なくとも含有するバック層を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<10> バック層がフィラーを含有する前記<9>に記載の感熱記録媒体である。
<11> バック層が帯電防止剤を含有する前記<9>から<10>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<12> バック層及び表面層の少なくともいずれかが、帯電防止剤を含有する前記<9>から<11>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
<13> 表面層が脂肪酸アミドを含有する前記<1>から<12>のいずれかに記載の感熱記録媒体である。
【0014】
本発明においては、高光沢性を維持しつつ、ヘッドカス付着及び印画によるスティッキングによる画像の欠陥を維持するために、表面層について高光沢性と高耐熱性を維持するために紫外線硬化型樹脂を採用した。また、紫外線照射時の臭気及び黄変を抑制するために、高効率かつ黄変の少ない重合開始剤との組み合わせを知見した。また更に感熱記録層の材料に届く、照射量を低減するために、照射効率向上による照射量の低減及び黄変の少ない紫外線吸収剤を知見した。またこれらの記録媒体を取り扱う上で記録面側を高光沢にし、反射により照射量を低減し、更には印画によるスティッキングが良好で、また耐水性及び耐溶剤性に優れた、臭気による取り扱い性の問題がない、特に医療用途に好適な反射型の感熱記録媒体を提供することができるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高光沢性を維持し、ヘッドカス付着による画像の欠陥がなく、印画によるスティッキングが良好で、地肌及び画像の色調、カール、及び帯電がなく、優れた高階調性の感熱記録媒体を提供することができる。特に、X線、MRI、CT等の画像の診断及び参照などに用いることができ、銀塩フィルムと同レベルの高い画質、光沢性、高濃度、高階調性を持ちつつ、優れたヘッドマッチング性が得られる、医療用途に好適な反射型の感熱記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の感熱記録媒体は、支持体と、該支持体上に少なくとも感熱記録層と表面層とを有し、中間層、バック層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0017】
<表面層>
前記表面層が、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、及び融点が80℃以上のα−ヒドロキシケトン系重合開始剤を少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0018】
本発明で使用される紫外線硬化型の樹脂としては、高い光沢性と耐熱性が必要なことから、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートを主成分することが好ましい。前記紫外線硬化型の樹脂の含有量は、樹脂全体の中で30質量%〜100質量%であることが好ましい。前記含有量が、30質量%未満であると、本発明の目的とする効果が得られにくい。
前記3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと多塩基酸、又は多塩基酸無水物〔以下、多塩基酸(無水物)と記載する〕と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られるものが挙げられる。
前記3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、マレイン酸(無水物)とエチレングリコールとのポリエステルジオールのポリエステルジ(メタ)アクリレート、フタル酸(無水物)とジエチレングリコールとのポリエステルのポリエステル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸(無水物)とジエチレングリコールとのポリエステルジオールのジ(メタ)アクリレート、アジピン酸とトリエチレングリコールとのポリエステルジオールのジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸(無水物)とジエチレングリコールとのポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、アロニックスM−7100、同M−7200、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050〔いずれも、東亞合成化学工業株式会社製〕などが挙げられる。
【0020】
前記(メタ)アクリロイル基が2つ以下の場合には、架橋密度が十分でないため、所望の耐熱性を得ることができず、主成分として使用することはできないが、表面層に柔軟性を与え、カール及びひび割れを防止する目的で3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート100質量部に対し、0質量部〜100質量部含有することが好ましい。
また(メタ)アクリロイル基が多くなると架橋密度が上がり、耐熱性は更によくなるが、膜の柔軟性を損なうため、カール及びひび割れを起こすため、3つ〜8つが好ましく、3つ〜6つがより好ましく、3つ〜4つが更に好ましく、これらが90質量%以上の主成分として含まれているものが特に好ましい。
これらの材料は単独で用いるよりは、耐熱性と柔軟性、硬化性を踏まえて2種以上の樹脂を併用してもよい。
【0021】
紫外線を照射して、紫外線硬化型の樹脂の硬化を進めるためには、重合開始剤が必要であり、α−ヒドロキシケトン系重合開始剤、α−アミノケトン系重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、オキシム系重合開始剤、スルフォニウム塩系重合開始剤、ヨードニウム塩系重合開始剤、ジアゾニウム塩系重合開始剤、フェロセニウム塩系重合開始剤等様々な材料が使用されているが、硬化性と黄変、臭気及び印画による耐熱特性の点で、α−ヒドロキケトン系重合開始剤が好ましく、かつ融点が80℃以上のα−ヒドロキケトン系重合開始剤が特に好ましい。このような開始剤は揮発性が少ないことと反応後の副生成物自体の臭気が少ないという特性があるため、感熱記録媒体の臭気を低減する効果がある。また印画の熱によるヘッドカスの発生が少ない等の効果がある。
【0022】
前記α−ヒドロキケトン系重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばCiba社製のイルガキュア2959、イルガキュア127などが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、前記紫外線硬化樹脂全体100質量部に対し、0.5質量部〜8質量部が好ましく、硬化を効率的に進め、UV照射量を最低限とする点で、1質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.5質量部未満であると、紫外線による硬化が十分進まないことがあり、8質量部を超えると、過剰な開始剤が印画の熱によって、溶融してヘッドカスとなり、画像不良の原因となることがある。
【0023】
更に、硬化性を進めつつ、溶融するヘッドカスを抑える手段して、前記硬化剤と共にアシルホスフォンオキサイド系重合開始剤を併用することが好ましい。これらの材料としてはCiba社製のイルガキュア819、イルガキュア1800、イルガキュア1870、DAROCUR TPO、DAROCUR4265等が挙げられる。
また、融点80℃以上のα−ヒドロキシケトン系重合開始剤及びアシルホスフォンオキサイド系重合開始剤を併用することで、硬化性、臭気、黄変、ヘッドカス付着に大きな効果を発揮することができる。
前記α−ヒドロキケトン系重合開始剤とアシルホスフォンオキサイド系重合開始剤とを併用する場合には、α−ヒドロキケトン系重合開始剤:アシルホスフォンオキサイド系重合開始剤が、質量比率で、90:10〜10:90が好ましく、80:20〜20:80がより好ましい。前記質量比率範囲で併用することにより本発明の効果を顕著に発揮することができる。
また、重合開始剤を選定する上では、重合開始剤自体の吸光特性が黄変を考慮すると300nm〜365nmに吸収を持つものが好ましい。これらの材料は効果に応じて2種以上を併用してもよい。
【0024】
紫外線照射源としては、特に制限はなく、公知のものを使用でき、具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀・キセノンランプ、キセノンランプ、UV−LEDランプ等が挙げられる。
これらの中でも、ランプの種類は重合開始剤の吸収波長に応じた発光特性を有するものが好ましいが、使用する開始剤は、300nm〜365nmに強い発光特性を有するものがより好ましい。
照射条件は、ランプの種類、紫外線硬化樹脂の種類、硬化剤の種類、添加量、基材温度、酸素濃度によってかわるが、酸素存在下では硬化性は低下しやすいことが知られており、酸素阻害を低減するために、ラミネートして、上から照射する。又は硬化雰囲気下を窒素、CO等の不活性ガスで充満させる等の手段が行われており、本発明においては、特に酸素雰囲気を窒素、CO等の不活性ガスで充満させる手段が簡易的で効果が見られた。
【0025】
紫外線照射による黄変を防止するためには感熱記録層、又は感熱記録層上に設けた中間層及び表面層のいずれかの層に公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を含有することが好ましい。特に、感熱記録媒体では記録層中のロイコ染料が紫外線によって変化しやすい特徴をもつため、感熱記録層へ届く紫外線の量を低減することが効果を示すため、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛系、酸化チタン系の無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、ヒドロキシフェニルトリアジン系などが挙げられる。これらは溶解、分散体、エマルジョン化、マイクロカプセルへの内包、ポリマーとの共重合体化等のいずれの形態でもよく、目的とする層と材料との相溶性に応じて選択することができる。
これらの紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジンは材料自体の着色が少なく、記録層の黄変の原因となる300nm付近の吸収が強く、効果が高いことが判った。
【0026】
また、黄変した色調を調製するために、一般的に知られている蛍光染料を添加することも効果的である。これらの蛍光染料を添加することで、全体の色調のバランスを損なうことなく、黄変した色調を調製し、白色性の高い感熱記録媒体を達成することができる。
【0027】
また、前記表面層に用いる顔料(フィラー)として、一般的な様々な無機顔料を使用することができる。前記無機顔料としては、例えば、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リトポン、タルク、ロウ石、カオリン、水酸化アルミニウム、焼成カオリンなどが挙げられる。なお、尿素ホルマリン樹脂、ポリエチレン粉末等の有機顔料を併用することもできる。
本発明においては、表面光沢性を必要とすることから、吸油量が100cc/100g以下、かつ比表面積が100m/g以上のものが好ましく、水酸化アルミニウム、カオリン、炭酸カルシウム等が微細化しやすく、また表面の光沢性に優れている。
【0028】
本発明において無機顔料の他に有機系の顔料を使用することも可能であり、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合ポリマー等の一般的に知られている様々な有機系の顔料を使用することができる。
前記フィラーの平均粒子径は、0.1μm〜3.5μmが好ましい。前記平均粒子径が、0.1μm未満であると、フィラーとしての添加効果が殆ど発現できず、3.5μmを超えると、感度低下につながるばかりではなく、本発明で重要な光沢度を損なったり、特に中間調での白抜け、画像の均一性に問題が発生したりする。
【0029】
前記表面層には、必要に応じて目的の光沢性を低下させない程度に滑剤を含有させることができる。
前記滑剤としては、例えば、高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、滑性機能、及び離型効果が高く、スティッキング防止品質、カス付着防止効果が高い点で、高級脂肪酸の金属塩が好ましく、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0030】
また、特に階調性が求められる医療用画像の記録においては、記録する画像によりサーマルヘッドからの様々な熱エネルギーに対応する必要があり、融点が異なる2種以上の滑剤微粒子を組み合わせて用いることでこれらに効果を発揮する。即ち、低印画率から高印画率の全ての画像に対し、滑剤を溶融することで、印画率に関わらずヘッドカス付着防止、スティッキング防止、及び高い画像の光沢性、画像の純黒化を達成することができる。
【0031】
前記滑剤の融点は、50℃〜180℃が好ましい。前記融点が、50℃未満であると、感熱記録媒体を高温環境下に保管した場合のブロッキング、又はサーマルヘッドの加熱記録後に感熱記録媒体の表面に低融点の滑剤がブリードしやすく、表面に白い粉のような析出物が発生しやすくなってしまう問題がある。一方、前記融点が、180℃を超えると、サーマルヘッドの加熱記録により、溶融し難いため、ヘッドカスの離型性の効果も少ないという問題がある。
【0032】
また、前記表面層には、光沢性を達成するために、前記滑剤の体積平均粒子径は、0.01μm〜0.9μmが好ましい。前記体積平均粒子径が、0.01μm未満であると、十分な滑性或いは離型性の必要な機能が十分でなくなり、1.0μmを超えると、添加量を多くした場合、光沢性が低下する問題がある。
前記滑剤の平均粒子径に関しては添加する滑剤粒子が2種以上の場合には、これらを混合した液での平均粒子径を表す。このため、数種の滑剤粒子の分散体が混合による凝集を起してしまうようなものはふさわしくない。
また、1種の滑剤のみでは発明の範囲より少々大きくても、数種の滑剤粒子の総量中の比率を下げることでもこれらの平均粒子径の範囲とすることも可能である。
【0033】
前記滑剤を体積平均粒径が0.01μm〜0.9μmに微細化する方法としては乳化方式、各種ビーズによる粉砕方式等、公知の様々な方法を使用することができる。
前記滑剤を水系媒体で微細化する際には、滑剤単体のみで微細化することは困難であり、公知の水溶性樹脂或いは界面活性剤と合わせて微細化することが好ましい。
【0034】
前記滑剤の含有量は、前記表面層に使用する樹脂1質量部に対し0.05質量部〜1.0質量部が好ましく、0.1質量部〜0.5質量部がより好ましい。前記滑剤は体積平均粒径を0.01μm〜0.9μmと微細化することにより、添加量を多くしても加熱前の光沢性を保つことができる。
【0035】
また、前記表面層は、ポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体を含有することが、スティッキング性の点で好ましい。
【0036】
更に、表面層には帯電防止剤を添加することもできる。
前記表面層に添加する帯電防止剤は、後述するバック層と同様に公知の様々な材料を添加することができるが、紫外線硬化樹脂と溶解する材料、或いは紫外線硬化型の帯電防止剤が使いやすい。
また、前記表面層が、脂肪酸アミドを含有することで滑性効果と共に、帯電防止機能を発揮することができる。
【0037】
前記表面層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来公知の方法で塗工することができる。前記表面層の厚みは、0.5μm〜20μmが好ましく、1.0μm〜10μmがより好ましい。前記表面層が、薄すぎると、表面の酸素阻害により硬化性が十分でなく、必要な耐熱性を達成することができないことがあり、厚すぎると、感熱記録媒体の熱感度が低下するのに加え、コスト的にも不利である。
【0038】
−中間層−
前記感熱記録層と前記表面層の間に樹脂を主体とする中間層を設ける手段も有効であり、樹脂の比率の高い層とすることで非常に高い光沢性を達成することが可能となる。
前記中間層を設ける場合、高光沢性を達成するために水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂が主体であることが好ましい。特に表面層の材料、塗工液に含有する溶剤等による感熱記録層のかぶりを防止するためのバリヤー機能を持たせることが好ましく、公知の様々な樹脂を使用することができる。また必要に応じて架橋剤と反応させて、使用してもよい。
【0039】
前記中間層の塗工方法は、特に制限はなく、従来公知の方法で塗工することができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましい。前記中間層が、薄すぎると、光沢性へ、耐水、耐溶剤性の機能が不充分であり、厚すぎると、感熱記録媒体の熱感度が低下するのに加え、コスト的にも不利である。
【0040】
<感熱記録層>
前記感熱記録層は、結着剤、発色剤及び顕色剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0041】
−顕色剤−
前記顕色剤としては、前記ロイコ染料に対して加熱時に反応してこれを発色させる種々の電子受容性物資が適用され、その具体例を示すと、以下に示すようなフェノール性物質、有機又は無機酸性物質、あるいはそれらエステル又は塩などが挙げられる。
【0042】
前記顕色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、没食子酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロへキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1’−イノプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4,4’−シクロへキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロへキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−メチルンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチルンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2,−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸m−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3,5−ジオキサへプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3−オキサヘプタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(O−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
感熱記録層中の前記顕色剤の含有量は、ロイコ染料100質量部に対して0.5質量部〜5質量部が好ましく、2質量部〜4質量部がより好ましい。前記顕色剤の含有量が、この範囲内であると、ハーフトーンの画像保存性が特に向上する。またこのとき、発色効率が上がるため、薄膜で最高濃度を出すことができる。階調メディアにおける薄膜化することの利点は塗工時の膜厚制御、乾燥工程における残留水分、残留溶剤の低減にあり、更には塗布量低減からコスト低減にもつながる。
【0044】
前記ロイコ染料は電子供与性を示す化合物であり、1種単独又は2種以上混合して適用されるが、それ自体無色又は淡色の染料前駆体であり、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられる。これらの中でも、フルオラン系及びフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。
【0045】
前記ロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
医療用の感熱記録媒体の場合、ロイコ染料を3種類以上併用することが、単一色調を得るために好ましい。
そのため、感熱記録媒体に対して必要な第二の条件として、黒色のロイコ染料に加えて、赤発色のロイコ染料及び/又は橙発色ロイコ染料更に近赤外発色染料を、それぞれ1種以上混合して用いることが好ましい。また更に黒色のロイコ染料として、少なくとも下記一般式(1)で表されるロイコ染料を用いることが好ましい。
【0047】
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0048】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トリルアミノ)フルオランなどが挙げられる。
【0049】
本発明においては、トータルとしてロイコ染料を3種以上混合し、必要であれば4〜6種類混合することが好ましい。なお、赤発色染料、橙発色染料又は近赤外発色染料とは、加熱して発色する色調が、それぞれの吸収波長領域を示すものを言う。赤発色又は橙発色、近赤外発色染料を加える理由は、可視域において前記一般式(1)で表されるロイコ染料を用いて得られる発色体には、2つの吸収帯がみられるが、450nm〜600nm付近と650nm〜700nm付近にみられる谷部分を埋めて、可視域の吸収を銀塩のようにフラットにするためである。
【0050】
画像の黒色化の目安として、吸収スペクトルの430nm〜650nm部分における吸光度の最小値/最大値比率でおおよそ表すことが可能であり、この比率が0.65以上であると、少なくともシャウカステン上での実用的な黒色を満足することができる。前記比率が、0.75以上であれば、昼光色、昼白色等の蛍光灯の種類による影響も減らすことが可能であり好ましい。これら染料の混合比率としては、高濃度、色調調製、保存性の観点から吸収の大きい黒発色ロイコ染料を多くすることが好ましく、前記一般式(1)で表されるロイコ染料の含有量が全ロイコ染料含有量の40質量%〜80質量%の範囲で赤発色又は橙発色染料及び近赤外発色染料が、それぞれ10質量%〜30質量%がより好ましい。
【0051】
前記一般式(1)で表されるロイコ染料が上記範囲より多いと画像部の黒色化が難しくなり、少ないと最高濃度が確保することが難しい。
前記一般式(1)で表される黒発色ロイコ染料と混合して使用される赤又は橙染料としては、例えば、ローダミン−Bオルトクロロアニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)アニリノラクタム、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−N−シクロヘキシルアミノフルオラン、6−ジエチルアミノベンゾ[α]フルオラン、6−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)ベンゾ[α]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、スピロ{クロメノ[2,3C]ピラゾール−4(H)−1’−フタラン}−7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニル−3’−オン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の感熱記録媒体を製造するために、ロイコ染料及び顕色剤を支持体上に結合支持させる場合、慣用の種々の結合剤を適宜用いることができる。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体のエマルジョン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、これらと界面活性剤、架橋剤、補助剤の併用もできる。上記の結着剤と反応する架橋剤と併用することで支持体との接着性が優れ、また耐水性、耐溶剤性が向上する。
架橋剤は慣用の様々なものが使用できる。
【0053】
また、前記感熱記録層においては、前記ロイコ染料及び顕色剤と共に、必要に応じ、更に、この種の感熱記録媒体に慣用される補助添加成分、例えば、フィラー、熱可融性物質、界面活性剤等を併用することができる。この場合、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウム、表面処理されたシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂等の有機系の微粉末を挙げることができ、また熱可融性物質としては、例えば、高級脂肪酸又はそのエステル、アミド若しくは金属塩の他、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、安息香酸フェニルエステル、高級直鎖グリコール、3,4−エポキシ−ヘキサヒドロフタル酸ジアルキル、高級ケトン、p−ベンジルビフェニル、その他の熱可融性有機化合物等の50℃〜200℃の程度の融点を持つものが挙げられる。
【0054】
前記感熱記録層の塗工方法は、特に制限はなく、従来公知の方法で塗工することができる。前記感熱記録層の厚みは、1μm〜30μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましい。前記厚みが、薄すぎると、画像濃度が十分でなく、厚すぎると、感熱記録媒体の熱感度が低下する、地肌濃度がかぶる、またコスト的にも不利である。
【0055】
<支持体>
前記支持体としては、従来のロイコ型感熱記録媒体に用いられるものが適用可能であるが、例えば、プラスチックフィルム、紙、プラスチック樹脂ラミネート紙、合成紙、等が使用できる。透過型の感熱記録媒体に場合には、透明支持体を用いることが好ましい。前記透明支持体の具体例としては、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリスチレン又はこれらを貼り合わせたフィルム等が挙げられ、好ましくはポリプロピレン樹脂を主体とした合成紙であるが、これらに限られるものではない。これらの中で反射画像での用途での画質のコントラストを考慮すると、不透明性、白色度が高いものが好ましい。また表面の光沢性、印画の再現性、高精彩性等を考慮すると支持体表面が平滑であり光沢性が高いものが好ましい。
【0056】
前記支持体の感熱記録層側の光沢度JIS−P−8142に基づく表面光沢度が50{GS(75゜)}%以上であるとすると感熱記録媒体の表面光沢性に優れるばかりでなく、サーマルヘッドとの密着性に優れるため、記録時の精細性、画像の抜け、高感度化への効果も示す。
また、一般的にスーパーカレンダー等を用いて感熱記録媒体を平滑化することにより、光沢性、高感度化の品質を向上する手段が用いられているが、前述のようなJIS−P−8142に基く表面光沢度が50{GS(75゜)}%以上の支持体を用いることで、これらの工程を省き、簡略化できるという効果ももたらすことができる。
【0057】
また、前記支持体には感熱記録層塗布液の塗布層の接着性向上のために、少なくとも片面をコロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理等による表面改質をすることができる。
また、医療分野での用途に関しては、取り扱い性等から50μm〜250μm程度のポリプロピレン主体の合成紙が使いやすい。
【0058】
−バック層−
本発明においては、支持体の感熱記録層、保護層と反対側の面にバック層を設けることが好ましい。
前記バック層には、帯電防止機能、カール防止機能、重ねによる密着防止等の機能を設けることができる。
【0059】
前記バック層に使用される樹脂としては、特に制限はなく、公知の種々の樹脂を使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリメタクリル酸又はそのエステル類、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリビニルアルコール、デンプン、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。使用する支持体或いは帯電防止剤との親和性等を考慮して選択できる。
前記バック層のバインダーとしては、ガラス転移温度Tgが80℃以上のものが好ましく、紫外線硬化が樹脂の硬化収縮が大きく感熱記録側にカールしやすい場合に非常に有効である。
【0060】
本発明では特に記録側の表面層が光沢性に優れ、ロール状、シート状にした際に密着しやすいため、密着防止効果を持たせるために、前記バック層にフィラーを添加することが有効である。前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスビーズフレーク、炭酸カルシウム、板状炭カル、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、カオリン、焼成クレー、ハイドロタルイサイト等の球状の無機フィラー、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合ポリマー等の球状の有機フィラーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
これらのフィラーに関しては、密着性を防止するために、平均粒径6μm〜20μmのものが好ましく、更には球状のフィラーが効率的に表面に凸部を構成できるために好ましい。
【0062】
本発明の感熱記録媒体では、画像均一性、階調性を考慮すると、基材はポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート等のプラスチックフィルムを使用することが好ましい。これらのプラスチックフィルムを使用すると、非常に帯電しやすく、帯電による浮遊しているゴミを引き寄せて、画像不良を引き起こしたり、帯電によるヘッド破壊を起したりする恐れがある。
そのため、本発明の感熱記録媒体には帯電防止機能を持たせることが好ましい。
帯電防止機能としては、通常記録面と反対側のバック面に帯電防止剤を添加することが一般的に行われる。
【0063】
前記帯電防止剤に関しては、現在様々な帯電防止剤が様々な用途で使用されている。帯電防止機能としては、表面抵抗値1010Ωcm以下が好ましい。
この程度の導電性を持たせられる帯電防止剤として、大きく分けると界面活性剤を用いるものと、導電性金属酸化物を用いるもの、導電性ポリマーを用いるものに分けられる。
まず、前者の界面活性剤を用いるものは現在の帯電防止剤の大半を占めている。これら界面活性剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性の4種類に分けられるが、帯電防止剤としてはカチオン系、あるいは両性の界面活性剤が制電性、耐久性の点で優れている。これらの界面活性剤タイプのものは比較的安価であり、種類も豊富でまた性能的にもよいものがあるが、界面活性剤自体の水分の吸着によって導電性を実現しているものが多いため、湿度の影響を受けやすく、低湿下での制電性は低下する傾向にある。
【0064】
また、導電性ポリマーに関しては、近年開発が進んできた材料であり有機高分子中に電子供与体をドーピングした材料等がこの例として挙げられ、これらに用いられる有機高分子としてはポリアセチレン等に代表される脂肪族系、ポリパラフェニレンなどの芳香族、ポリピロール等の複素環、ポリアニリンなどの芳香族アミン類等の共役系高分子、また、主鎖が共役系でなくとも、側鎖に環状π共役基などが挙げられ、これらの高分子材料に電子供与体をドーピングさせる。これらの材料も導電性金属酸化物などと同様に水分による、導電性機能ではないため、低湿下でも導電性機能を示す。また、高分子、電子供与体によっても違うが、導電機能が非常に高くすることが可能で、薄い膜でも帯電防止には十分な機能を持たすことができる。
【0065】
一方、導電性金属酸化物を用いたものは、前者の界面活性剤タイプと比べると種類が少なく、また高価である。しかし金属酸化物自体が導電性を持っているため導電率が高く、低付着量でも優れた導電性を示すため高い透明性を保つことができる。また、湿度の影響を受けず低湿下においても制電性は優れている。前記導電性金属酸化物としては、例えばSnO、In、ZnO、TiO、MgO、Al、BaO、MoO等が単独、又はP、Sb、Sn、Zn等と混合した複合酸化物などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの金属酸化物は着色している物が多く、また透明性を損なうため、本発明における要求を満たす限り、できる限り少ないことが好ましい。
【0066】
そのために導電性金属酸化物と界面活性剤又は導電性ポリマー等との2種或いは3種以上の帯電防止剤を併用してもよい。
また微粉末はなるべく細かいほうがよく、細かいほど優れた透明性及び帯電防止効果を示す。本発明では帯電防止剤の平均粒径を0.2μm以下とすることで優れた透明性を実現している。
前記帯電防止剤の含有量は、前記バック層の1質量部中の0.05質量部〜0.9質量部が好ましく、0.1質量部〜0.5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.05質量部未満であると、十分な帯電防止機能を待たないことがあり、0.9質量部を超えると、支持体と接着させる機能が十分でない場合がある。
【0067】
本発明の感熱記録媒体の製造直後は、通常長尺状物であるが、商品としての形態は、ロール状に巻き固められたものと、所定の大きさに裁断し所定の枚数を袋に入れたものとがある。双方とも商品の性質上通常遮光性の包装材料に包んで保管及び流通することがより好ましい。使用時に開封し袋から取り出した感熱記録媒体を画像形成装置に搭載する。
【0068】
本発明の感熱記録媒体を用いて画像を形成する方法は、文字及び/又は形状情報に基づいて画像様に加熱手段によって該感熱記録媒体を加熱して行われる。前記加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱などが挙げられる。これらの中でも、医療画像等の高精細かつ高階調な画像を印画するのに適しており、装置のコスト、出力スピード、コンパクト化の観点から、サーマルヘッドが特に好ましい。
なお、医療用途を考慮すると、画像に階調性を持たせることが必要であり、階調性を持たせる手段としてはパルス制御方式でも電圧制御方式でもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下における部及び%はいずれも質量基準である
【0070】
(実施例1)
(1)感熱記録層の形成
以下に記載した〔A液〕及び〔B液〕の配合からなる各配合物を、それぞれ、平均粒径が1.5μm以下となるように磁性ボールミルで粉砕して、〔A液〕及び〔B液〕を調製した。
〔A液〕染料分散液
・2−アリニノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン・・・20部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
〔B液〕顕色剤分散液
・4−ヒドロキシ4’−イソプロポキシジフェニルスルホン・・・12部
・シリカ・・・4部
・ステアリン酸アミド・・・4部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液・・・20部
・水・・・60部
次に、以下の配合で〔A液〕、〔B液〕変性ポリビニルアルコール(クラレKポリマー KL−318、固形分10%)を混合攪拌し、感熱記録層塗布液〔C液〕を調製した。
〔C液〕感熱記録層塗布液
・A液・・・12.5部
・B液・・・62.5部
・ポリビニルアルコールの10%水溶液・・・25部
感熱記録層塗布液〔C液〕を、厚み170μmの合成紙(Nanya社製、PX170、表面光沢度60%)上に、ワイヤーバーを用いて塗工し、70℃の温度に保持したドライヤーを3分間通して乾燥して厚み8.5g/mの感熱記録層(表面光沢度25%)を形成した。
【0071】
(2)中間層の形成
以下の配合物を混合して中間層塗布液[D液]を調製した。
〔D液〕中間層塗布液
・変性ポリビニルアルコール(クラレKポリマーKL−318、固形分10%)・・・80部
・アセチレンジオール・・・0.01部
・水・・・20部
次に、感熱記録層の上に〔D液〕をワイヤーバーを用いて塗工し、50℃の温度に保持したドライヤーを2分間通して乾燥して厚み3g/mの中間層を積層した、中間層(表面光沢度70%)を形成した。
【0072】
(3)表面層の形成
以下の配合物を混合して表面層塗布液〔E液〕を調製した。
〔E液〕表面層塗布液
・3官能ポリエステルアクリレート(東亜合成社製、アロニックス M8060)・・・45部
・α−ヒドロキシケトン系開始剤(融点82〜90℃、イルガキュア127、チバジャパン社製)・・・5部
・ステアリン酸亜鉛・・・2部
・メチルエチルケトン・・・50部
〔E液〕を直径2mmのジルコニアビーズを用い、ボールミルにて100rpmで2時間分散したのち中間層上に、ワイヤーバーを用いて塗工し、50℃の温度に保持したドライヤーを1分間通して乾燥して、大気雰囲気下で高圧水銀ランプ80W、6.6m/min、300mJ/cmで照射し、厚み3g/mの表面層を(表面光沢度90%)を形成した。以上により、実施例1の感熱記録媒体を作製した。
【0073】
(実施例2)
実施例1において、表面層の形成に用いた3官能ポリエステルアクリレート(東亜合成社製、アロニックス M8060)の代わりに、4官能ポリエステルアクリレート(東亜合成社製、アロニックス M9050)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録媒体を作製した。
【0074】
(実施例3)
実施例1において、表面層の形成に用いた重合開始剤の代わりに以下の重合開始剤を用いて表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録媒体を作製した。
・α−ヒドロキシケトン系開始剤(融点87℃〜92℃、イルガキュア2929、チバ社製)・・・3部
・アシルフォスフェンオキサイド系開始剤(融点127℃〜133℃、イルガキュア819、チバ社製)・・・2部
【0075】
(実施例4)
実施例1において、表面層の形成に用いた重合開始剤の代わりに以下の重合開始剤を用いて表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録媒体を作製した。
・α−ヒドロキシケトン系開始剤(融点87℃〜92℃、イルガキュア2929、チバ社製)・・・4部
・アシルフォスフェンオキサイド系開始剤(融点127℃〜133℃、イルガキュア819、チバ社製)・・・1部
【0076】
(実施例5)
実施例1において、表面層の形成に用いた重合開始剤の代わりに以下の重合開始剤を用いて表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録媒体を作製した。
・α−ヒドロキシケトン系開始剤(融点87℃〜92℃、イルガキュア2929、チバ社製)・・・1部
・アシルフォスフェンオキサイド系開始剤(融点127℃〜133℃、イルガキュア819、チバ社製)・・・4部
【0077】
(実施例6)
実施例3において、表面層を形成した表面層塗布液に更に平均粒子径3μmのシリコーン微粒子(KMP−590、信越化学工業社製)5部を加えて表面層を形成した以外は、実施例3と同様にして、実施例6の感熱記録媒体を作製した。
【0078】
(実施例7)
実施例6において、表面層Cを形成した表面層塗布液に更にポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体(57 ADDITIVE、東レダウ社製)3部を添加して表面層を形成した以外は、実施例6と同様にして、実施例7の感熱記録媒体を作製した。
【0079】
(実施例8)
実施例7において、表面層を形成する紫外線照射の際に酸素濃度を0.5%として、80W、20m/minの条件で(100mj/cm)照射した以外は、実施例7と同様にして、実施例8の感熱記録媒体を作製した。
【0080】
(実施例9)
実施例7において、中間層塗布液に紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン(チバジャパン社製、チヌビン 400DW)0.2部を添加して中間層を形成した以外は、実施例7と同様にして、実施例9の感熱記録媒体を作製した。
【0081】
(実施例10)
実施例9において、中間層塗布液に蛍光染料(BLANKOPHOR UW Liquid、ケミラジャパン株式会社製)0.05部を添加して中間層を形成した以外は、実施例9と同様にして、実施例10の感熱記録媒体を作製した。
【0082】
(実施例11)
実施例10において、支持体の感熱記録層とは反対面に、以下の組成からなるバック層塗布液をワイヤーバーを用いて塗工し、50℃の温度に保持したドライヤーを2分間通して乾燥してバック層を形成した以外は、実施例10と同様にして、実施例11の感熱記録媒体を作製した。
〔バック層塗布液〕
・ガラス転移温度200℃のアクリルアミドコアシェル樹脂(B1000、三井化学社製)・・・75部
・水・・・25部
【0083】
(実施例12)
実施例11において、〔バック層塗布液〕に以下の粒子を添加したバック層塗布液を用いてバック層を形成した以外は、実施例11と同様にして、実施例12の感熱記録媒体を作製した。
・ポリメチルメタアクリレート球形微粒子(総研化学社製、MX−1000、体積平均粒子径10μm)・・・0.02部
・ポリメチルメタアクリレート球形微粒子(株式会社日本触媒製、MA−1006、体積平均粒子径6μm)・・・0.2部
【0084】
(実施例13)
実施例12において、〔バック層塗布液〕に帯電防止剤としてSA−101(三洋化成社製、ケミスタットSA−101)30部を添加したバック層塗布液を用いてバック層を形成した以外は、実施例12と同様にして、実施例13の感熱記録媒体を作製した
【0085】
(実施例14)
実施例13において、表面層を形成した表面層塗布液に更にウレタンアクリレート系導電性ポリマー(U601PA、新中村化学社製)10部を添加して表面層を形成した以外は、実施例13と同様にして、実施例14の感熱記録媒体を作製した
【0086】
(実施例15)
実施例14において、表面層を形成した表面層塗布液におけるステアリン酸亜鉛の代わりにヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(スリパックスZHH、日本化成社製)5部を添加して表面層を形成した以外は、実施例14と同様にして、実施例15の感熱記録媒体を作製した
【0087】
(比較例1)
実施例1において、表面層を形成した表面層塗布液における3官能ポリエステルアクリレート(東亜合成社製、アロニックス M−8060)の代わりに、3官能イソシアヌル酸アクリレート(東亜合成社製、アロニックス M−325)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録媒体を作製した。
【0088】
(比較例2)
実施例1において、表面層を形成した表面層塗布液における重合開始剤のイルガキュア127の代わりにα−ヒドロキシケトン系開始剤(融点45〜49℃、イルガキュア184、チバジャパン社製)添加して表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録媒体を作製した
【0089】
(比較例3)
実施例1において、表面層を形成した表面層塗布液における重合開始剤のイルガキュア127の代わりにα−アミノケトン系開始剤(融点82℃〜87℃、イルガキュア369、チバジャパン社製)を添加し、表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録媒体を作製した。
【0090】
(比較例4)
実施例1において、表面層を形成した表面層塗布液における3官能ポリエステルクリレート(東亜合成社製、アロニックス M8060)の代りに2官能ポリエステルアクリレート(M6500、東亞合成社製)を使用して表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱記録媒体を作製した。
【0091】
(比較例5)
実施例1において、表面層を形成した表面層塗布液における開始剤のイルガキュア127の代わりにアシルフォスフェンオキサイド系開始剤(融点127℃〜133℃、イルガキュア819、チバ社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱記録媒体を作製した。
【0092】
次に、作製した各感熱記録媒体について、以下のようにして、光沢度、臭気、ヘッドカス、黄変、スティッキング、カール、搬送性、及び帯電性を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(1)光沢度
日本電色工業株式会社製光沢度計 Model 1001DP 75°で測定した。なお、光沢度の値が高いほど光沢性が高い。
【0094】
(2)臭気
作製した感熱記録媒体各10枚をビニル袋に入れ、臭気を官能テストにて下記基準で評価した。〔評価基準〕
5:全く臭いがない
4:わずかに臭気を感じる
3:臭気を感じる
2:強い臭気を感じる
1:強い刺激臭を感じ、不快である。
【0095】
(3)ヘッドカス
解像度300dpiの階調ヘッドを搭載したエネルギー可変、horizon(コドニクス社製)にて、幅方向で半分が印画率100%、残りの半分を印画率0%のパターンを作製し、A4サイズで連続50枚印画した後、サーマルヘッドの付着物をマイクロスコープで観察し、下記の判断基準でランク評価した。
〔評価基準〕
5:サーマルヘッドに付着物が全くない。
4:サーマルヘッドにわずかに付着物がみられるが、画像に影響がなく、拭取りで容易に除去できる。
3:サーマルヘッドに付着物がみられるが、画像に影響がなく、拭取りで容易に除去できる。
2:サーマルヘッドに付着物がみられ、画像に影響し、研磨剤等を使用しないと除去できない。
1:サーマルヘッドに大量の付着物がみられ、画像にひどく影響があり、研磨剤等を使用しないと除去できない。
【0096】
(4)黄変
サンプルの地肌部分の色調をGretagMacbeth社製透過濃度計TD−904でB値を測定し、下記基準で評価した。なお、B値は大きいほど、黄変が大きく、0に近いほど白色に近い。
〔評価基準〕
◎ :B値±0.5未満
○ :B値±0.5以上1.5未満
△ :B値±1.5以上2.5未満
× :B値±2.5以上
【0097】
(5)スティッキング
解像度300dpiの階調ヘッドを搭載したhorizon(コドニクス社製)にて、A4サイズのフィルムで流れ方向に階調を印画するパターンで印画して、画像長さをJIS1級金尺で計測し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
5:印画長が基準と同等
4:印画長が基準より0mm以上0.5mm未満短い
3:印画長が基準より0.5mm以上1mm未満短い
2:印画長が基準より1mm以上2mm未満短い
1:印画長が基準より2mm以上短い
【0098】
(6)カール
各感熱記録媒体をA4サイズにカットし、平らな台の上に感熱記録面を上にして置き、浮き上がった4角の高さを測定し、その最大値をカールの測定値とし、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:カール測定値が2mm未満
○:カール測定値が2mm以上5mm未満
△:カール測定値が5mm以上10mm未満
×:カール測定値が10mm以上
【0099】
(7)搬送性
各感熱記録媒体をA4サイズにカットし2枚重ねて、horizon(コドニクス社製)にて、テストパターンを1枚印画後の搬送性を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:問題なく搬送できる
△:印画の途中まで下の一枚が動いている
×:完全に2枚重送し、印画される又は途中で搬送エラーとなる
【0100】
(8)帯電性
低温低湿(10℃、10%RH)環境下で、horizon(コドニクス社製)を用い、各感熱記録媒体に評価画像をA4サイズで連続3枚印字し、排出時の帯電量をDesco Electric field Meter Model No.19445を使用して測定し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:±0.5kV未満
○:±0.5kV以上1.0kV未満
△:±1kV以上5kV未満
×:±5kV以上
【0101】
【表1】

表1の結果から、比較例1〜5に比べて、実施例1及び2では、臭気、ヘッドカス、地肌の黄変に優れ、高諧調の医療用メディアとして用いることができる。
また、実施例3〜5では、α−ヒドロキシケトン系開始剤とアシルフォスフェンオキサイド系開始剤を併用することで、更にヘッドカスが優れる効果を示している。
また、実施例6では、表面層にフィラーを添加したことにより、ヘッドカスの付着が殆どなくなった。
また、実施例7では、表面層にポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体を添加したことで、スティッキングが更に向上した。
また、実施例8の表面層の紫外線照射時の酸素濃度を0.5%環境下とすることで100mj/cmの照射エネルギーで十分な硬化膜が得られ、臭気、ヘッドカス品質が維持したまま、地肌の黄変が改善できた。
また、実施例9では、中間層に紫外線吸収剤を添加したことで、紫外線照射による地肌の黄変が改善できた。
また、実施例10では、中間層に蛍光染料を添加したことで、地肌の色調が白色に近づいた。
また、実施例11では、バック層を設けることで、感熱記録媒体のカールが低減し、取扱い性が向上した。
また、実施例12では、バック層にフィラーを添加したことでシート貼り付きが低減した。
また、実施例13〜14では、バック層及び表面層に帯電防止剤を添加したことで印画時の帯電が低減し、印画後の取扱い性が向上した。更に、表面層に脂肪酸アミドを添加したことでより帯電量が低減し、印画時の搬送、帯電によるヘッド破壊のリスクが低減した。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の感熱記録媒体は、例えば、図書、文書等の複写、電子計算機、ファクシミリ、発券機、ラベルプリンター、レコーダ、ハンディターミナル用などの記録材料、衣類等の表示ラベル、部品管理用ラベル、物流ラベル、医療用ラベルなどに用いられ、特にX線、MRI、CT等の医療用画像形成シートの用途として好適に利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2008−73858号公報
【特許文献2】特公平7−023025号公報
【特許文献3】特開平5−177943号公報
【特許文献4】特許第3646815号公報
【特許文献5】特開平7−81227号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に少なくとも感熱記録層と表面層とを有する感熱記録媒体であって、
前記感熱記録層が、結着剤、発色剤及び顕色剤を含み、
前記表面層が、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、及び融点が80℃以上のα−ヒドロキシケトン系重合開始剤を含有することを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項2】
表面層が、アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤を含有する請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
表面層が、更にフィラー及び滑剤の少なくともいずれかを含有する請求項1から2のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
表面層が、ポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体を含有する請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
表面層が、紫外線照射により形成され、紫外線照射する際の酸素濃度が0.1%〜1%であり、紫外線照射強度が50mJ/cm〜200mJ/cmである請求項1から4のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
感熱記録層と表面層との間に水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを含む中間層を有する請求項1から5のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項7】
感熱記録層及び中間層の少なくともいずれかが、紫外線吸収剤を含有する請求項6に記載の感熱記録媒体。
【請求項8】
感熱記録層、中間層、及び表面層の少なくともいずれかが、蛍光染料を含有する請求項6から7のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項9】
支持体の感熱記録層を設けた側とは反対側の表面に、バインダーを少なくとも含有するバック層を有する請求項1から8のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項10】
バック層がフィラーを含有する請求項9に記載の感熱記録媒体。
【請求項11】
バック層が帯電防止剤を含有する請求項9から10のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項12】
バック層及び表面層の少なくともいずれかが、帯電防止剤を含有する請求項9から11のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項13】
表面層が脂肪酸アミドを含有する請求項1から12のいずれかに記載の感熱記録媒体。

【公開番号】特開2011−207215(P2011−207215A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40151(P2011−40151)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】